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特許7614217電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック、及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック、及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20250107BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20250107BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20250107BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250107BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/052
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022556621
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2021080530
(87)【国際公開番号】W WO2022188163
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ゼリ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チャンロン
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111640977(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第03713004(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0036365(US,A1)
【文献】特開2019-175592(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090678(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/137560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質塩と、有機溶媒とを含む電解液であって、
前記電解質塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含み、前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの前記電解液における質量%含有量は、4.5%~11%であり、
前記有機溶媒は、エチレンカーボネートを含み、
前記電解液は、0.9≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9
(ただし、WLiFSIは、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの前記電解液における質量%含有量であり、WECは、前記エチレンカーボネートの前記電解液における質量%含有量である)を満たし、
前記電解液は、ジフルオロリン酸リチウムを含む添加剤をさらに含み、
前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドと前記ジフルオロリン酸リチウムとの質量比は、11~26であり、
前記電解液は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸プロピル、ブタン酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸プロピル、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフランのうちの少なくとも1つをさらに含む、電解液。
【請求項2】
1.05≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9を満たす、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記エチレンカーボネートと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの質量の合計と、前記ジフルオロリン酸リチウムの質量との比は、20~68である、請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
前記ジフルオロリン酸リチウムの前記電解液における質量%含有量は、1%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項5】
前記エチレンカーボネートと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの前記電解液における質量%含有量の合計は、16%~24%である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの前記電解液における質量%含有量は、6%~11%である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項7】
前記エチレンカーボネートの前記電解液における質量%含有量は、8.3%~15.2%である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項8】
前記電解質塩は、さらに、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの電解液における質量%含有量の合計は、15.7%~17.2%である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電解液を含む、二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項12】
請求項9に記載の二次電池、請求項10に記載の電池モジュール、又は請求項11に記載の電池パックから選択される少なくとも1つを含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電池の技術分野に関し、特に、電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石エネルギーが日々枯渇し、環境汚染の圧力がますます高くなるにつれて、二次電池は、いまだかつてない注目と発展を得ている。二次電池の適用範囲は、ますます広くなり、例えば、水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電気自転車、電気オートバイ、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に適用されている。
【0003】
二次電池の継続的な発展につれて、ユーザーは、より厳しい使用要求(例えば、電池は、出力性能、サイクル性能及び保管性能などを兼ね備えること)を提出している。このため、総合的性能が良好な二次電池の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【0004】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック、装置を提供することにあり、該電解液を含む二次電池は、良好な出力性能(低セル内部抵抗)、高温サイクル性能、及び高温保管性能を兼ね備えられる。
【0005】
上記目的を達成するために、本願発明の第1態様では、電解質塩と、有機溶媒とを含む電解液であって、前記電解質塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含み、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量は、4.5%~11%であり、前記有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)を含み、前記電解液は、0.9≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9(ただし、WLiFSIは、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の前記電解液における質量%含有量であり、WECは、前記エチレンカーボネート(EC)の前記電解液における質量%含有量である)を満たす、電解液が提供される。
【0006】
電解液が上記の条件を全て満たすと、二次電池は、良好な出力性能(低セル内部抵抗)、高温サイクル性能、及び高温保管性能を兼ね備えられる。
【0007】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記電解液は、1.05≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9を満たす。電解液がこの条件を満たすと、電池の出力性能、高温サイクル性能、及び高温保管性能をさらに向上させることができる。
【0008】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記電解液は、さらに、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を含む添加剤を含む。
【0009】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と前記ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)との質量比は、7~26であり、任意選択で、11~22である。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)とジフルオロリン酸リチウム(LiPO)との質量関係が上記範囲に制御されると、電池の高温サイクル性能をさらに向上させることができる。
【0010】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記エチレンカーボネートと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの質量の合計と、前記ジフルオロリン酸リチウムの質量との比は、20~68であり、任意選択で、28~51である。エチレンカーボネート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジフルオロリン酸リチウムの質量関係が上記範囲内に制御されると、電池の高温サイクル性能をさらに向上させることができる。
【0011】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の前記電解液における質量%含有量は、1%以下であり、任意選択で、0.3%~0.7%である。電解液における添加剤にジフルオロリン酸リチウムが含まれ、特に、その質量の割合が上記の範囲内に制御されると、電池の高温サイクル性能をさらに向上させることができる。
【0012】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記エチレンカーボネート(EC)と前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の前記電解液における質量%含有量の合計は、16%~24%であり、任意選択で、17%~24%である。エチレンカーボネートとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの質量関係が上記の範囲内に制御されると、電池の出力性能、高温サイクル性能、及び高温保管性能をさらに向上させることができる。
【0013】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量は、6%~11%である。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が上記範囲内に制御されると、電池の出力性能、高温サイクル性能、及び高温保管性能をさらに向上させることができる。
【0014】
いずれかの実施形態では、任意選択で、前記前記エチレンカーボネート(EC)の前記電解液における質量%含有量は、8.3%~15.2%であり、任意選択で、10%~15.2%である。エチレンカーボネートの質量の割合が上記範囲内に制御されると、電池の出力性能、高温サイクル性能、及び高温保管性能をさらに向上させることができる。
【0015】
いずれかの実施形態では、任意選択で、電解質塩は、さらに、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を含み、任意選択で、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの電解液における質量%含有量の合計は、15.7%~17.2%である。ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの質量関係が前記範囲内に制御されると、電解液におけるLi濃度が適切な範囲内に維持され、電解液が良好な電導率を有する。
【0016】
本願発明の第2態様では、本願発明の第1態様に係る電解液を含む二次電池が提供される。
【0017】
本願発明の第3態様では、本願発明の第2態様に係る二次電池を含む電池モジュールが提供される。
【0018】
本願発明の第4態様では、本願発明の第3態様に係る電池モジュールを含む電池パックが提供される。
【0019】
本願発明の第5態様では、本願発明の第2態様に係る二次電池、本願発明の第3態様に係る電池モジュール、又は本願発明の第4態様に係る電池パックから選択される少なくとも1つを含む装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の一実施形態に係る二次電池の模式図である。
図2図1に示す本願発明の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
図3】本願発明の一実施形態に係る電池モジュールの模式図である。
図4】本願発明の一実施形態に係る電池パックの模式図である。
図5図4に示す本願発明の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
図6】本願発明の一実施形態に係る二次電池を電源として使用した装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、具体的に開示される本願発明の電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック、及び装置の実施形態を、好適な添付図面を参照して詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実質同一の構造に対する重複の説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなるのを防ぎ、当業者に理解されやすくするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本願発明を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載されている趣旨を限定することを意図するものではない。
【0022】
本願発明では、説明を簡潔にするために、いくつかの数値範囲が具体的に開示されている。ただし、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて明記のない範囲を形成してもよく、並びに、任意の下限と別の下限とを組み合わせて、明記のない範囲を形成してもよく、それと同様に、任意の上限と任意の別の上限と組み合わせて、明記のない範囲を形成してもよい。なお、個別に開示された点又は単一の数値はそれぞれ、それ自体が下限又は上限として、任意の別の点又は単一の数値、又は別の下限又は上限と組み合わせて、明記のない範囲を形成してもよい。
【0023】
本願発明の一実施形態では、本願発明は、電解質塩と、有機溶媒とを含む電解液であって、電解質塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含み、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量は、4.5%~11%であり、有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)を含み、エチレンカーボネート(EC)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の質量%含有量は、0.9≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9(ただし、WLiFSIは、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量であり、WECは、エチレンカーボネート(EC)の電解液における質量%含有量である)を満たす、電解液を提供する。
【0024】
本願発明の電解液は、特定の種類の電解質塩及び有機溶媒を含み、且つ、該電解質塩と有機溶媒の含有量を特別に設計することにより、該電解液を使用した電池は、良好な出力性能(低セル内部抵抗)、高温サイクル性能、及び高温保管性能を兼ね備えられる。
【0025】
本発明者は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)が、良好なイオン導電率と解離度を有し、電解液において効果的に解離できるが、正極の表面で酸化されやすく、二次電池の高温サイクル性能に影響を与えるものであり、電解液にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を用いて出力性能を向上させる場合、有機溶媒にエチレンカーボネート(EC)を加えるとともに、これらの含有量を電解液が0.9≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9を満たすように調整することで、電池は、良好な出力性能(低セル内部抵抗)、高温サイクル性能、及び高温保管性能を兼ね備えられることを大量の研究で見出した。
【0026】
ある実施形態において、WLiFSI/(16.77%-WEC)は、0.9、0.92、1.05、1.11、1.14、1.4、1.44、1.47、1.75、1.77、1.78、1.79、1.80、1.82、2.16、2.2、2.45、2.49、2.5、2.84、2.9のうちのいずれか2つを端点値とした数値範囲内にあり得る。例えば、1.05≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9,1.4≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.5,1.75≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.2であり、なお、本発明者が上記の数値を並列に示したが、WLiFSI/(16.77%-WEC)が上記いずれか2つの数値を端点とした範囲内にあるものであれば、いずれも同等又は同様の性能を得られることを意味するものではなく、本願発明におけるWLiFSI/(16.77%-WEC)の好ましい範囲は、下記の具体的な検討及び具体的な実験データに基づいて選択できる。
【0027】
ある実施形態において、電解液は、さらに、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を含む添加剤を含む。
【0028】
ある実施形態において、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)とジフルオロリン酸リチウム(LiPO)との質量比であるWLiFSI/WLiPO2F2は、7~26であり、任意選択で、11~22であり、ただし、WLiPO2F2は、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の電解液における質量%含有量である。任意選択で、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)とジフルオロリン酸リチウム(LiPO)との質量比は、7、7.70、11.00、12.32、12.83、15.40、19.25、21.56、22、25.67、26のうちのいずれか2つを端点値とした数値範囲内にあり得る。例えば、7≦WLiFSI/WLiPO2F2≦26,11≦WLiFSI/WLiPO2F2≦26,11≦WLiFSI/WLiPO2F2≦22であり、なお、本発明者が上記の数値を並列に示したが、WLiFSI/WLiPO2F2が上記いずれか2つの数値を端点とした範囲内にあるものであれば、いずれも同等又は同様の性能を得られることを意味するものではなく、本願発明におけるWLiFSI/WLiPO2F2の好ましい範囲は、下記の具体的な検討及び具体的な実験データに基づいて選択できる。
【0029】
発明者は、電解液の添加剤がジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を含み、特に、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)とジフルオロリン酸リチウム(LiPO)との質量関係が上記の範囲内に制御されると、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)に優先して正極の表面に界面膜を形成し、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)が正極表面で触媒酸化する確率を効果的に低減し、電池の高温サイクル性能をさらに向上させることを見出した。
【0030】
ある実施形態において、エチレンカーボネートとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの質量の合計と、ジフルオロリン酸リチウムの質量との比である(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2は、20~68であり、任意選択で、28~51である。任意選択で、エチレンカーボネートとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの質量の合計と、前記ジフルオロリン酸リチウムの質量との比である(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2は、20、20.08、28、28.75、33.57、37.32、40.32、46.30、50.43、67.29、68のうちのいずれか2つを端点値とした数値範囲内にあり得る。例えば、20≦(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2≦68,28≦(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2≦68,28≦(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2≦51,28≦(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2≦46.3であり、なお、本発明者が上記の数値を並列に示したが、(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2が上記いずれか2つの数値を端点とした範囲内にあるものであれば、いずれも同等又は同様の性能を得られることを意味するものではなく、本願発明における(WLiFSI+WEC)/WLiPO2F2の好ましい範囲は、下記の具体的な検討及び具体的な実験データに基づいて選択できる。エチレンカーボネートとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの質量関係が上記の範囲内に制御されると、電池の高温サイクル性能をさらに向上させることができる。
【0031】
ある実施形態において、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の電解液における質量%含有量であるWLiPO2F2は、1%以下であり、任意選択で、0.3%~0.7%である。任意選択で、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の電解液における質量%含有量であるWLiPO2F2は、0%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、1.0%のうちのいずれか2つを端点値とした数値範囲内にあり得る。例えば、0%≦WLiPO2F2≦1%、0.3%≦WLiPO2F2≦1%、0.3%≦WLiPO2F2≦0.7%、0.4%≦WLiPO2F2≦0.7%、0.5%≦WLiPO2F2≦0.7%であり、なお、本発明者が上記の数値を並列に示したが、WLiPO2F2が上記いずれか2つの数値を端点とした範囲内にあるものであれば、いずれも同等又は同様の性能を得られることを意味するものではなく、本願発明におけるWLiPO2F2の好ましい範囲は、下記の具体的な検討及び具体的な実験データに基づいて選択できる。
【0032】
ある実施形態において、エチレンカーボネート(EC)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量の合計は、16%~24%であり、任意選択で、17%~24%である。任意選択で、エチレンカーボネート(EC)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の質量%含有量の合計(WLiFSI+WEC)は、16%、16.06%、17.24%、17.73%、18.66%、18.74%、19.76%、20.08%、20.13%、20.14%、20.16%、20.17%、20.19%、20.23%、21.73%、23.15%、23.23%、24%のうちのいずれか2つを端点値とした数値範囲内にあり得る。エチレンカーボネート(EC)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)との質量関係が上記範囲内に制御されると、電池の出力性能、高温サイクル性能、及び高温保管性能をさらに向上させることができる。
【0033】
ある実施形態において、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量は、6%~11%である。任意選択で、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量は、4.5%、4.62%、6%、6.16%、7.70%、9.24%、10.78%、11%のうちのいずれか2つを端点値とした数値範囲内にあり得る。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの含有量が上記の範囲内に制御されると、電池の出力性能、高温サイクル性能、及び高温保管性能をさらに向上させることができる。
【0034】
ある実施形態において、エチレンカーボネート(EC)の電解液における質量%含有量は、8.3%~15.2%である。任意選択で、10%~15.2%である。任意選択で、エチレンカーボネート(EC)の電解液における質量%含有量は、8.36%、10%、10.03%、12.37%、12.38%、12.43%、12.44%、12.45%、12.46%、12.47%、12.49%、12.50%、12.53%、12.58%、12.62%、15.14%、15.2%であってもよく、あるいは、その数値が上記いずれか2つの数値を組み合わせて得られた範囲内にある。エチレンカーボネートの含有量が上記の範囲内に制御されると、電池の出力性能、高温サイクル性能、及び高温保管性能をさらに向上させることができる。
【0035】
ある実施形態において、電解質塩は、さらにヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を含み、任意選択で、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムと前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの電解液における質量%含有量の合計であるWLiFSI+WLiPF6は、15.7%~17.2%であり、ただし、WLiPF6は、ヘキサフルオロリン酸リチウムの電解液における質量%含有量である。任意選択で、ヘキサフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの電解液における質量%含有量の合計は、15.7%、15.87%、16.16%、16.45%、16.74%、17.03%、17.2%であってもよく、あるいは、その数値が上記いずれか2つの数値を組み合わせて得られた範囲内にある。ヘキサフルオロリン酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの電解液における質量%含有量が前記範囲内に制御されると、電解液におけるLi濃度が適切な範囲内に維持され、電解液が良好な導電率を有する。
【0036】
ある実施形態において、前記有機溶媒は、さらに、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸プロピル、ブタン酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸プロピル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフランのうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
ある実施形態において、任意選択で、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)に加えて、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロ(オキサラート)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ビス(オキサラート)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロビス(オキサラート)リン酸リチウム(LiDFOP)、及びテトラフルオロ(オキサラート)リン酸リチウム(LiTFOP)のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0038】
ある実施形態において、電解液には、さらに、任意選択で、他の種類の添加剤が含まれてもよい。例えば、添加剤には、負極成膜添加剤が含まれてもよく、正極成膜添加剤が含まれてもよく、電池のある性能を向上させる添加剤、例えば、電池の過充電性能を向上させる添加剤、電池の高温性能を向上させる添加剤、及び電池の低温性能を向上させる添加剤などが含まれてもよい。
【0039】
また、以下、適当図面を参照して本願発明の二次電池、電池モジュール、電池パック、及び装置を説明する。
【0040】
本願発明の一実施形態では、二次電池が提供される。
【0041】
一般的に、二次電池は、正極シート、負極シート、電解質、及びセパレータを含む。電池の充放電の過程において、活性イオンは、正極シートと負極シートとの間で往復して挿入・脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、主に、正負極の短絡を防ぐ役割を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0042】
[正極シート]
正極シートは、正極集電体、及び正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた正極膜層を含み、正極膜層は、正極活性材料を含み、正極活性材料は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガンアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸マンガンリチウム、ケイ酸鉄リチウム、ケイ酸バナジウムリチウム、ケイ酸コバルトリチウム、ケイ酸マンガンリチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、スピネル型ニッケルマンガン酸リチウム、チタン酸リチウムなどを含むが、これらに限定されない。正極活物質は、これらの1つ又は複数を使用できる。
【0043】
例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設けられた。
【0044】
本願発明の二次電池において、正極集電体に、金属箔シート又は複合集電体が用いられる。例えば、金属箔シートとして、アルミ箔が用いられる。複合集電体は、高分子材料である下層と、高分子材料である下層の少なくとも一方の表面に形成された金属層とを含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することで形成することができる。
【0045】
正極膜層は、さらに、任意選択で、導電剤を含む。しかし、導電剤の種類について具体的な制限はなく、当業者は、実際の必要に応じて選択することができる。例として、正極膜層に用いられる導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーから選択される1つ以上であってもよい。
【0046】
本願発明において、当該分野における公知の方法で正極シートを作製できる。例として、本願発明における正極活性材料、導電剤、及びバインダーを溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))に分散させて、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布して、オーブン乾燥、コールドプレスなどのプロセスを経て、正極シートを得ることができる。
【0047】
[負極シート]
負極シートは、負極集電体、及び負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられた負極膜層を含み、負極膜層は、負極活性材料を含む。
【0048】
本願発明の二次電池において、前記負極活物質は、当該分野で一般的に使用される二次電池の負極の作製に用いられる負極活物質を用いることができ、負極活物質として、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコンベース材料、スズベース材料、及びチタン酸リチウムなどが挙げられる。シリコンベース材料は、シリコン単体、シリコン酸化物(例えば、一酸化ケイ素)、ケイ素-炭素複合体、ケイ素-窒素複合体、及びケイ素合金から選択される1つ以上であってもよい。スズベース材料は、スズ単体、スズ酸化物、及びスズ合金から選択される1つ以上であってもよい。
【0049】
例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設けられた。
【0050】
本願発明の二次電池において、負極集電体に、金属箔シート又は複合集電体が用いられる。例えば、金属箔シートとして、銅箔が用いられる。複合集電体は、高分子材料である下層と、高分子材料である基材の少なくとも一方の表面に形成された金属層とを含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することで形成することができる。
【0051】
本願発明の二次電池において、負極膜層は、通常、負極活性材料の他に、任意選択でバインダー、任意選択で導電剤、及び任意選択で、その他の補助剤を含み、通常、負極スラリーを塗布して乾燥してなる。負極スラリーは、通常、負極活性材料及び任意選択で導電剤並びにバインダーなどを溶媒に分散させて、均一に攪拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0052】
導電剤は、例として、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される1つ以上であってもよい。
【0053】
バインダーは、例として、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される1つ以上であってもよい。
【0054】
その他の任意選択な補助剤は、例えば、増ちょう剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などである。
【0055】
[セパレータ]
二次電池に、一般的に、セパレータがさらに含まれる。セパレータは、正極シートと負極シートを分離し、電池の内部の短絡を防ぐとともに、活性イオンがセパレータを通過して正負極の間を移動できる。本願発明では、セパレータの種類について特に制限はなく、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有するいずれの公知の多孔構造のセパレータを用いてもよい。ある実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンから選択される1つ以上であってもよい。セパレータは、単層フィルムであっても、多層複合フィルムであってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料はそれぞれ同じであっても異なってもよく、特に制限はない。
【0056】
ある実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻取プロセス又は積層プロセスによって電極ユニットを作製することができる。
【0057】
ある実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。該外装は、上記電極ユニット及び電解液をパッケージングするために用いられる。
【0058】
ある実施形態において、二次電池の外装は、硬質ハウジング、例えば、硬質プラスチックハウジング、アルミニウムハウジング、鋼ハウジングなどであってもよい。二次電池の外装は、軟包装、例えば、パウチ型軟包装であってもよい。軟包装の材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンサクシネート(PBS)などが挙げられる。
【0059】
本願発明では、二次電池の形状について特に制限はなく、円筒形、角形又はその他の任意の形状であってもよい。例えば、図1は一例としての方形構造の二次電池5である。
【0060】
図2を参照すると、ある実施形態において、外装は、ハウジング51とカバー53とを含み得る。ただし、ハウジング51は、底板と底板に接続される側板とを含み、収容チャンバーは、底板と側板によって囲まれて形成される。ハウジング51は、収容チャンバーに繋がる開口を有し、カバー53は、収容チャンバーを閉じるために開口に覆設される。正極シート、負極シート、及びセパレータは、巻取プロセス又は積層プロセスによって、電極ユニット52を形成する。電極ユニット52は、収容チャンバーにパッケージングされる。電解液は、電極ユニット52に含浸される。二次電池5に含まれる電極ユニット52の数は、1つであっても複数であってもよく、当業者により実際の必要に応じ選択することができる。
【0061】
ある実施形態において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、1つであっても複数であってもよく、具体的な数は、当業者により、電池モジュールの適用及び容量に応じて選択することができる。
【0062】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4では、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次に並んで設けられてもよい。もちろん、その他の任意の方式に従って配列されてもよい。さらに、留め具によって、これら複数の二次電池5を固定することができる。
【0063】
任意選択で、電池モジュール4は、さらに、収容空間を有する筐体を含んでもよく、複数の二次電池5は、該収容空間に収容される。
【0064】
ある実施形態において、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、当業者により、電池パックの適用及び容量に応じて選択することができる。
【0065】
図4及び図5は、一例としての電池パック1である。図4及び図5を参照すると、電池パック1は、電池ケース、及び電池ケースに配置された複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ケースは、上ケース2及び下ケース3を含み、上ケース2は、下ケース3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ケースに配列される。
【0066】
また、本願発明は、本願発明によって提供される二次電池、電池モジュール、又は電池パックの1つ以上を含む装置をさらに提供する。二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、装置の電源としても、装置のエネルギー貯蔵ユニットとしても使用できる。装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0067】
装置は、その使用の要求に応じて二次電池、電池モジュール、又は電池パックを選択することができる。
【0068】
図6は、一例としての装置である。この装置は、純電気自動車、ハイブリッド自動車、又はプラグインハイブリッド自動車などである。この装置の二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0069】
別の一例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどである。この装置に、一般的に軽量化・薄型化が要求され、二次電池を電源として用いることができる。
実施例
【0070】
以下、本願発明の実施例について説明する。以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願発明を説明するためだけに用いられ、本願発明を限定するものと解されるべきではない。実施例において、具体的に技術又は条件が示されていない場合、当該分野における文献に記載された技術又は条件、あるいは製品の説明書に従って行われる。使用される試薬又は機器についてメーカーが記載されていないものは、いずれも市販で通常製品を購入することができる。本発明の実施例における各成分の含有量は、特に明記しない限り、質量基準である。
【0071】
実施例1
リチウムイオン電池(単に電池ともいう)は、いずれも下記の方法によって作製された。
【0072】
(1)正極シートの作製
正極活性材料としての三元系材料(LiNi0.8Co0.1Mn0.1)、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン、導電剤としてのアセチレンブラックを重量比90:5:5で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を加えて、真空ミキサーによって系が均一で透明状になるように攪拌して正極スラリーを得、正極スラリーをアルミ箔に均一に塗布し、アルミ箔を室温で乾かしてから120℃のオーブンに移して1時間乾燥し、その後、コールドプレスし、切断して、正極シートを得た。
【0073】
(2)負極シートの作製
負極活性材料としての人造黒鉛、導電剤としてのカーボンブラック、バインダーとしてのSBRを質量比92:2:6で混合し、脱イオン水を加え、真空ミキサーによって負極スラリーを得、負極スラリーを負極集電体としての銅箔に均一に塗布し、銅箔を室温で乾かしてから、120℃のオーブンに移して1時間乾燥し、その後、コールドプレスし、切断して、負極シートを得た。
【0074】
(3)電解液の調製:
含水量<10ppmのアルゴン雰囲気のグローブボックスで、有機溶媒としてのエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を質量比EC:EMC:DEC=15:55:30で混合し、有機溶媒混合液を得た。所定量のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)及びヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)をこの順に、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量が4.62%、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の電解液における質量%含有量が11.25%、エチレンカーボネート(EC)の電解液における質量%含有量が12.62%、WLiFSI/(16.77%-WEC)=1.11になるように、混合液に加えた。
【0075】
(4)二次電池の作製:
セパレータが正、負極シートの間に隔離する役割を果たすように、正極シート、セパレータ、負極シートをこの順に重ね合わせ、巻き取ることで、電極ユニットを得、電極ユニットを外装にセットし、上記で調製した電解液を注入し、真空パッケージング、放置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得た。
【0076】
(実施例2~17、比較例1~5)
実施例2~17及び比較例1~5は、実施例1と作製方法が同様であるが、エチレンカーボネート(EC)の質量の割合、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の質量の割合、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の質量の割合、及びジフルオロリン酸リチウム(LiPO)の質量の割合などの製品パラメータが表1のように調整された。ただし、実施例10~17では、有機溶媒の混合液に所定量のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)及びヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を加えた後、混合液にジフルオロリン酸リチウム(LiPO)を加えた。
【0077】
【表1-1】
【表1-2】
【0078】
【表2】
【0079】
性能試験
(1)リチウムイオン電池の60℃膨張率試験
60℃で、リチウムイオン電池を0.5Cの定電流で4.35Vになるまで充電し、次に、定電圧で電流が0.05Cに低下するまで充電し、この時のリチウムイオン電池の厚さを測定し、hとし、その後、リチウムイオン電池を60℃のインキュベーターに入れて、30日間保管後取り出し、この時のリチウムイオン電池の厚さを測定し、hとした。30日間保管後のリチウムイオン電池の厚さ膨張率=[(h-h)/h]×100%である。
【0080】
(2)リチウムイオン電池の初期DCR性能試験
新しく作製した電池を1Cの定電流で4.35Vになるまで充電し、次に、定電圧で電流が0.05Cに低下するまで充電し、その後、1Cの定電流で30分間放電し、この時の電圧をVとし、その後、4C(I)の定電流で30秒間放電し、放電終了時の電圧をVとし、0.1秒でサンプリングし、セルの50%SOCにおける放電DCRは即ち(V-V)/Iである。
【0081】
(3)電池のサイクル容量試験
45℃で、二次電池を1Cの定電流で4.25Vになるまで充電し、次に、4.25Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5分間放置してから、1Cの定電流でカットオフ電圧の下限になるまで放電し、これが二次電池の最初の充電/放電サイクルであり、この時の放電容量を二次電池の最初のサイクルの放電容量とし、上記の方法で二次電池を800サイクル充電/放電させ、二次電池の800サイクル後の放電容量を得た。二次電池の45℃での800サイクル後の容量維持率(%)=(二次電池の800サイクル後の放電容量/二次電池の最初の放電容量)×100%である。
【0082】
【表3】
【0083】
上記の結果から分かるように、実施例1~17で得られた電解液では、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の電解液における質量%含有量は4.5%~11%であり、且つ、エチレンカーボネート(EC)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の質量%含有量は、0.9≦WLiFSI/(16.77%-WEC)≦2.9を満たした。該電解液を用いて作製した電池は、良好な出力性能、高温保管性能及び高温サイクル性能を有した。一方、比較例1~5では、各成分の含有量が上記範囲外であり、その出力性能、高温保管性能及び高温サイクル性能が、実施例1~17より劣った。
【0084】
また、上記の結果から分かるように、実施例10~17の電解液には、さらにジフルオロリン酸リチウム(LiPO)が加えられ、該電解液を用いて作製した電池は、実施例1~9に比べて、より良好な高温サイクル性能を有した。
【0085】
なお、本願発明は、上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態は、単なる例示であり、本願発明の技術方案の範囲内で技術思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を達成する実施形態は、いずれも本願発明の技術範囲内に含まれる。さらに、本願発明の要旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に当業者が想到できる様々な変形を行い、実施形態における一部の構成要素を組み合わせてなる他の形態も本願発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 電池パック
2 上ケース
3 下ケース
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極ユニット
53 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6