IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-動力用ハーネスおよびロボット 図1
  • 特許-動力用ハーネスおよびロボット 図2
  • 特許-動力用ハーネスおよびロボット 図3
  • 特許-動力用ハーネスおよびロボット 図4
  • 特許-動力用ハーネスおよびロボット 図5
  • 特許-動力用ハーネスおよびロボット 図6
  • 特許-動力用ハーネスおよびロボット 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】動力用ハーネスおよびロボット
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20250107BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20250107BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01B7/00 301
B25J19/00 F
H02G11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022569997
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2021045931
(87)【国際公開番号】W WO2022131231
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020208283
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 諒
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-108987(JP,A)
【文献】特開2003-244831(JP,A)
【文献】実開平05-012803(JP,U)
【文献】特開2008-130491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H01B 7/00
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続可能な第1コネクタと、
単一のアクチュエータに設けられた動力用コネクタに接続可能な第2コネクタと、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとを接続する接続ケーブルとを備え、
該接続ケーブルの長さ方向の少なくとも一部、並列に配置された複数本の小径ケーブルにより構成された可動領域を備え、前記長さ方向の他の部分に、前記小径ケーブルが1本にまとめられた領域を備え
全ての前記小径ケーブルの許容電流値の合計が、前記接続ケーブルの許容電流値を充足する動力用ハーネス。
【請求項2】
前記可動領域の少なくとも一部を取り囲み、該可動領域の移動をガイドするキャリアを備え、
該キャリアの内部空間が、各前記小径ケーブルを前記キャリアの長さ方向に沿って貫通させる複数の小空間に区画されている請求項1に記載の動力用ハーネス。
【請求項3】
複数の前記小空間が同等の大きさを有し、前記小空間の数が、前記小径ケーブルの数よりも多い請求項2に記載の動力用ハーネス。
【請求項4】
相対移動可能に支持された第1部材および第2部材と、
請求項2または請求項3に記載の動力用ハーネスとを備え、
前記キャリアの一端が前記第1部材に固定され、前記キャリアの他端が前記第2部材に固定されているロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力用ハーネスおよびロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のスライドドア等の可動部に配線される複数本のケーブルを備えるハーネスとして、ケーブルを並列に並べることによりフラットな形態に形成されたフラット部を設けたものが知られている。フラット部の薄さおよび湾曲し易さを利用して、ハーネスの移動、湾曲あるいは扁平スペースへの配線が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-179117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハーネスに用いられる各ケーブルとしては、一般に、可撓性を向上するために複数の芯線を撚り合わせて、絶縁シースにより被覆した多芯構造のものが採用されている。そして、大電流を必要とする単一のアクチュエータに動力を供給するための動力用ハーネスには、芯線の本数を多くして許容電流値を向上したケーブルが使用される。
【0005】
芯線の本数が多くなるほど、ケーブルの外径が大きくなるとともに、許容曲げ半径が増大する。その結果、ケーブルを収容するためのスペースが増大するだけでなく、ケーブルを湾曲させて移動させるために必要なスペースも増大する。また、まとめて配線される他の信号用ケーブルあるいは他の動力用ケーブル等と比較して一部の動力用ケーブルの外径のみが大きくなると、曲げに対する安全率の相違による寿命差により、メインテナンス性が低下する。
したがって、大電流を必要とする動力用ハーネスであっても、収容スペースおよび可動スペースの増大を防止して、メインテナンス性を向上することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、電源に接続可能な第1コネクタと、単一のアクチュエータに設けられた動力用コネクタに接続可能な第2コネクタと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとを接続する接続ケーブルとを備え、該接続ケーブルの長さ方向の少なくとも一部、並列に配置された複数本の小径ケーブルにより構成された可動領域を備え、前記長さ方向の他の部分に、前記小径ケーブルが1本にまとめられた領域を備え、全ての前記小径ケーブルの許容電流値の合計が、前記接続ケーブルの許容電流値を充足する動力用ハーネスである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る動力用ハーネスの接続例を示す正面図である。
図2図1の動力用ハーネスにキャリアを取り付けた状態を示す正面図である。
図3】本開示の一実施形態に係るロボットの一例を示す模式図である。
図4】動力用ハーネスが単一の接続ケーブルである場合を示す参考例である。
図5図2のキャリアの内部空間における小径ケーブルの配置の一例を示す横断面図である。
図6図4の場合のキャリアの内部空間の一例を示す参考図である。
図7図2の動力用ハーネスの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る動力用ハーネス1およびロボット100について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る動力用ハーネス1は、例えば、直動機構を有するロボット100に使用されるハーネスであって、図1に示されるように、単一の第1コネクタ2と、単一の第2コネクタ3と、第1コネクタ2と第2コネクタ3とを接続する接続ケーブル4とを備えている。
【0009】
第1コネクタ2は、ロボット100のベース111に設けられた分線盤111aに固定され、外部に配置された電源140からの電源ケーブル141を接続することによって、電源に電気的に接続可能である。第2コネクタ3は、直動機構110によって移動させられる機構部120に備えられたモータ(アクチュエータ)130の動力用コネクタ131に接続可能である。
【0010】
接続ケーブル4は、並列に配置される複数本(例えば、3本)の小径ケーブル5を備えている。小径ケーブル5の外径寸法はほぼ等しく、各小径ケーブル5の許容電流値の合計は、第1コネクタ2と第2コネクタ3とを単一のケーブルによって接続したときに当該ケーブルに必要とされる許容電流値以上である。
【0011】
次に、本実施形態に係る動力用ハーネス1を備えるロボット100について説明する。
ロボット100は、図3に示されるように、直動機構110と、直動機構110によって直線移動させられる1軸以上の機構部120とを備えている。機構部120は、スライダ112に固定されたモータ130を備えている。
【0012】
直動機構110は、図3に示されるように、ベース111と、機構部120を搭載するスライダ112と、スライダ112をベース111に対して一方向に直線移動可能に支持するガイドレール113と、モータ116によって駆動され、スライダ112を直線移動させる駆動力変換機構114とを備えている。駆動力変換機構114は、ボールネジ115(あるいはラックアンドピニオン)等のモータ116の回転運動を直線運動に変換する機構である。
【0013】
本実施形態に係る動力用ハーネス1は、図2に示されるように、接続ケーブル4の長さ方向の一部にキャリアXを取り付けている。本実施形態に係る動力用ハーネス1を直動機構110に取り付けるには、図3に示されるように、第1コネクタ2をベース111の分線盤111aに固定し、第2コネクタ3を機構部120のモータ130の動力用コネクタ131に接続する。また、キャリアXの一端をベース111に固定し、キャリアXの他端をスライダ112に固定する。
【0014】
キャリアXは、例えば、複数の中空の枠体を相互に平行な軸線回りに回転可能に取り付けることにより、湾曲可能な鎖状に形成されている。キャリアXは、接続ケーブル4を貫通させることができる内部空間を有し、内部空間に接続ケーブル4の長さ方向の一部を収容することにより、収容された部分(可動領域)の接続ケーブル4の移動をガイドすることができる。
【0015】
図3に示す例では、キャリアXは、U字状に湾曲した形態で、ベース111とスライダ112との間に配置され、ベース111に対してスライダ112が直線移動させられると、湾曲位置を変化させながらスライダ112に固定された他端を直線移動させる。これにより、内部空間に収容されている可動領域の小径ケーブル5が、キャリアXによってガイドされながら変形させられる。
【0016】
そして、分線盤111aに固定された第1コネクタ2に、電源140に接続された電源ケーブル141を接続することにより、電源140からの電力が動力用ハーネス1によってスライダ112に搭載されている機構部120のモータ130に供給される。これにより、スライダ112の各位置において、機構部120を作動させることができる。
【0017】
本実施形態に係る動力用ハーネス1によれば、第1コネクタ2に供給された電力は、3本の小径ケーブル5に分割されて伝送され、第2コネクタ3を経由して機構部120のモータ130に供給される。特に、接続ケーブル4が3本の小径ケーブル5によって構成されていることにより、図4に示されるように、3本分の許容電流値を有する1本の接続ケーブル150を使用した場合の曲げ半径R0と比較して、キャリアXの曲げ半径R1を十分に小さく抑えることができる。その結果、直動機構110内部におけるキャリアXの占有スペースを低減し、直動機構110の小型化を図ることができるという利点がある。
【0018】
また、本実施形態に係る動力用ハーネス1によれば、本来、単一のケーブルによって接続されている第1コネクタ2と第2コネクタ3とを3本の小径ケーブル5によって接続することにより、ケーブルの外径寸法を低減している。これにより、図5に示されるように、キャリアXの内部空間を仕切りによって複数の小空間に区画したときに、各小径ケーブル5(図中、ハッチングにより示す。)を貫通させる小空間の大きさを小さく抑えることができる。
【0019】
キャリアXには、大電流が必要とされる動力用ハーネス1の他、機構部120の他軸のモータ130等に接続される、より小径のケーブル5あるいはチューブ等が収容される。本実施形態に係る動力用ハーネス1によれば、単一のケーブルに代えて複数の小径ケーブル5を採用することにより、小径ケーブル5を収容するキャリアXの小空間の大きさを他のケーブル等を収容する小空間に近づけることができる。
【0020】
これにより、例えば、図6に示されるように、接続ケーブル4(図中、ハッチングにより示す。)が単一のケーブルからなる場合のキャリアXの幅寸法W0と比較して、キャリアXの内部空間内のスペースを効率よく利用して、幅寸法W1を低減することができる場合もある。
また、小径ケーブル5の外径を他のケーブルの外径に近づけることにより、繰り返し曲げによる寿命を全てのケーブルにおいて同程度に設定することができる。これにより、メインテナンス周期およびコストを削減することができるという利点もある。
【0021】
なお、本実施形態においては、動力用ハーネス1の第1コネクタ2と第2コネクタ3との間が全長にわたって3本の小径ケーブル5によって接続されている場合を例示した。これに代えて、図7に示されるように、キャリアXに収容される部分近傍のみを3本の小径ケーブル5によって構成し、他の部分については3本の小径ケーブル5をまとめた1本のケーブルによって構成してもよい。
【0022】
これにより、複数の小径ケーブル5により構成された可動領域については、曲げ半径を低減し、直動機構110の小型化を図ることができ、1本にまとめられた領域においては、取扱い性を向上することができるという利点がある。
また、本実施形態においては、動力用ハーネス1が接続ケーブル4と、接続ケーブル4に組付けられたキャリアXとを備えていてもよい。この場合には、キャリアXの内部空間を仕切りによって区画した複数の同等の大きさの小空間の数が、小径ケーブル5の数よりも多いことが好ましい。小径ケーブル5を貫通させた小空間以外の小空間に小径ケーブル5と同等の外径の他のケーブルあるいはチューブを貫通させることができる。
【0023】
また、本実施形態のロボット100は、直動機構110を有する場合を例示した。これに代えて、ロボット100としては、相対移動可能に支持された第1部材および第2部材と、上記動力用ハーネス1とを備え、キャリアXの一端が第1部材に固定され、キャリアXの他端が第2部材に固定されていればよい。すなわち、ロボット100としては、第1部材と第2部材とが直線移動可能である場合に限定されるものではなく、相対回転可能であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 動力用ハーネス
2 第1コネクタ
3 第2コネクタ
4 接続ケーブル
5 小径ケーブル
100 ロボット
130 モータ(アクチュエータ)
131 動力用コネクタ
X キャリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7