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特許7614266濾過システムを有する灌流バイオリアクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】濾過システムを有する灌流バイオリアクタ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20250107BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20250107BHJP
   C12M 1/36 20060101ALI20250107BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20250107BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20250107BHJP
   B01D 61/14 20060101ALN20250107BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/12
C12N1/00 B
C12M1/36
B01D61/22
B01D69/00
B01D61/14 500
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126029
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2020561775の分割
【原出願日】2019-05-03
(65)【公開番号】P2023145667
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】62/667,319
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジウイー・ルー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ウォルサー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ヴィクター・チェン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530893(JP,A)
【文献】特開昭48-064564(JP,A)
【文献】特開平07-060073(JP,A)
【文献】実開平06-021728(JP,U)
【文献】特開平06-320157(JP,A)
【文献】特開2007-117904(JP,A)
【文献】特表2017-521057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流細胞培養装置であって:
(a)細胞培養物を含む液体媒体を受けるように構成されたバイオリアクタ容器と;
(b)該バイオリアクタ容器に流体連通している第1の濾過アセンブリであって:
(i)第1の濾過システム;
(ii)該第1の濾過システムと直列に連結されており、該バイオリアクタ容器から該第1の濾過システムを通って該液体媒体を圧送するように構成された第1のハーベストポンプ;および
(iii)該第1の濾過アセンブリ内で該液体媒体と相互作用するように構成されたセンサを含む第1の濾過アセンブリと;
(c)該第1の濾過アセンブリと並列に動作するように構成された第2の濾過アセンブリであって、該バイオリアクタ容器に流体連通しており:
(i)第2の濾過システム;および
(ii)該第2の濾過システムと直列に連結されており、該バイオリアクタ容器から該第2の濾過システムを通って該液体媒体を圧送するように構成された第2のハーベストポンプを含む第2の濾過アセンブリと;
(d)コントローラであって:
(i)該センサから、該第1の濾過システムにおける細胞密度の変化を示す情報を受けること;
(ii)少なくとも該センサから受けた情報に基づいて、該第1の濾過システムにおける細胞密度の変化を判定すること
iii)該第1の濾過システムにおける細胞密度の変化の判定に応答して、該第1のハーベストポンプに、該第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送するのを止めさせること;および
(iv)該第1の濾過システムにおける細胞密度の変化の判定に応答して、該第2のハーベストポンプに、該第2の濾過システムを通る液体媒体の流量を増大させること
を含む動作を実行するコントローラとを含む、前記灌流細胞培養装置。
【請求項2】
第1の濾過システムおよび第2の濾過システムのうちの少なくとも1つは、交互タンジェンシャルフローフィルタを含む、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項3】
第1の濾過システムおよび第2の濾過システムのうちの少なくとも1つは、タンジェンシャルフローフィルタを含む、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項4】
第1の濾過システムおよび第2の濾過システムの各々は、約0.1ミクロン~約1ミクロンの孔径を含む、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項5】
センサは光センサを含み、第1の濾過システムにおける細胞密度の変化を判定することは、第1の濾過アセンブリにおける細胞密度が所定の閾値範囲外であることを判定することを含む、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項6】
センサは第1の濾過システムにおける細胞密度の増加を検出する、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項7】
センサは第1の濾過システムにおける細胞密度の減少を検出する、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項8】
第2のハーベストポンプに第2の濾過システムを通る液体媒体の流れを増大させることは、流量を約2倍にすることを含む、請求項に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項9】
コントローラは:
第1の濾過システムにおける細胞密度の変化の判定に応答して、通知を出力するようにさらに構成される、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項10】
通知は、視覚アラートまたは聴覚アラートを含む、請求項に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項11】
第1の濾過アセンブリと直列に連結された隔離弁をさらに含み、該弁は、第1の濾過アセンブリを通る液体媒体の流れを制御するように構成され、コントローラは:
第1の濾過システムにおける細胞密度の変化の判定に応答して、該隔離弁を閉じるようにさらに構成される、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項12】
第1の濾過アセンブリは、第1の濾過システムと直列に連結されたガードフィルタをさらに含み、該ガードフィルタは、第1の濾過システムおよびセンサの下流に連結される、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項13】
ガードフィルタは、約0.1ミクロン~約1ミクロンの孔径を含む、請求項12に記載の灌流細胞培養装置。
【請求項14】
液体媒体から生成物を収集するように構成された捕捉動作をさらに含み、該捕捉動作は、少なくとも第1の濾過アセンブリによって、バイオリアクタ容器に流体連通しており、該捕捉動作は、マルチカラムクロマトグラフィ(MCC)を含む、請求項1に記載の灌流細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、灌流細胞培養装置および細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体外細胞培養は、細胞の自然環境外の制御された条件下で細胞を成長させる複雑なプロセスである。培養条件は、細胞のタイプごとに異なり、所望の生成物の正しい細胞表現型および/または発現を確保するために、精密に制御されなければならない。
【0003】
バイオリアクタは、細胞の温度、pH、栄養、ガス、および他の必要に応じて細胞を成長させて維持するために、制御された環境を提供する。長期間にわたって細胞を培養するためには、新しい媒体を連続して細胞に供給しなければならず、使用済み媒体は、ほぼ同じ速度で除去しなければならない。バイオリアクタ内の細胞培養の生成持続時間を延ばすために、新しい媒体に細胞を連続して灌流し、バイオリアクタ内で細胞を保持しながら所望の生成物を取り入れる灌流バイオリアクタが開発されてきた。そのようなバイオリアクタは、能動的灌流システムのないバイオリアクタに比べて、より高い細胞濃度で細胞を成長させ、より長い期間にわたって細胞を維持することを可能にする。
【0004】
図1は、当業者には知られている典型的な現況技術の灌流バイオリアクタ100の概略図を示す。灌流バイオリアクタは、バイオリアクタ容器110、交互タンジェンシャルフロー(alternating tangential flow)(ATF)フィルタ120、ハーベストポンプ130、および連続捕捉動作160を含む。灌流バイオリアクタ100は、(i)ATFフィルタデバイス120をバイオリアクタ容器110に取り付け;(ii)バイオリアクタ容器110を新しい媒体で充填し;(iii)バイオリアクタ容器110に細胞を接種し;(iv)新しい媒体をバイオリアクタ容器110内へ灌流し、ATFフィルタ120と直列のハーベストポンプ130を介して使用済み媒体を除去することによって動作することができる。
【0005】
これらの条件下で、細胞をより長い期間にわたって培養および維持することができる。媒体を絶えず加えることで、細胞が成長するために必要とする栄養分を細胞に与え、使用済み媒体を除去することで、細胞性廃棄物および副生成物をシステムから除去し、それらが有害なレベルに到達することを防止することを可能にする。ATFフィルタは、バイオリアクタ内に細胞を保持しながら、使用済み媒体をバイオリアクタから除去することを可能にする。他の細胞培養パラメータはまた、典型的に、温度、溶存酸素、pH、pCO、および細胞密度を含む性能および丈夫さを改善するように制御される。
【0006】
図1に示すように、灌流バイオリアクタ100は、連続して動作する捕捉動作160と一体化することができる。このシナリオでは、バイオリアクタ容器110から除去される使用済み媒体は、関心生成物を含んでおり、連続捕捉動作160へ連続して送出され、連続捕捉動作160において何らかの形で処理および精製される。
【0007】
図1に示すバイオリアクタなどの標準的な灌流バイオリアクタは、長い持続時間(短くても30~60日)にわたって動作することが意図される。しかし、機器の丈夫さは限定的であるとわかることがある。特に、ATFフィルタは障害をきたし、プロセスの崩壊または混乱を招く可能性がある。場合によって、ATFフィルタは破局的な障害をきたし、細胞がフィルタを通過しハーベストポンプに入ることを可能にする可能性がある。そのような出来事は、様々な悪影響を与える可能性がある。第1に、細胞がATFによってバイオリアクタ内に保持されなくなるため、細胞はバイオリアクタからすぐに流出する可能性
があり、バイオリアクタの細胞密度および生産率が減少することがある。第2に、下流の連続精製工程と一体化されたシステムでは、細胞がその動作内へ直接流れ込み、精製システムを損傷することがある。一例では、細胞は、周期的連続カウンタクロマトグラフィ(periodic continuous counter-chromatography)(PCC)スキッド上のカラムへ進み、詰まり、加圧、および不純物の侵入の増大を招くことがある。そのような状況では、問題を迅速に識別し、ATFを迅速に交換してバイオリアクタを保護しなければならない。それとは独立して、下流の動作を停止して清浄にすることが必要になる可能性が高く、使い捨ての部材は交換することが必要になることがある。完全に応答するには数日の生産損失を招き、最悪の場合は完全な動作停止を招く可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当技術分野で知られている欠点の1つまたはそれ以上を克服する細胞培養のための装置および方法が提供される。細胞培養動作を停止することなく、ATFフィルタの動作不良を自動的に検出して応答する灌流細胞培養装置のための濾過システムを準備することが可能であることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の実施形態では、灌流細胞培養装置が提供される。この装置は、バイオリアクタ容器、第1の濾過アセンブリ、第2の濾過アセンブリ、およびコントローラを含む。バイオリアクタ容器は、液体媒体を受けるように構成される。第1の濾過アセンブリは、バイオリアクタ容器に流体連通しており、第1の濾過システム、第1のハーベストポンプ、およびセンサを含む。第1のハーベストポンプは、第1の濾過システムと直列に連結されており、バイオリアクタ容器から第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送するように構成される。センサは、第1の濾過アセンブリ内で液体媒体と相互作用するように構成される。第2の濾過アセンブリもまた、バイオリアクタ容器に流体連通しており、第1の濾過アセンブリと並列に動作するように構成される。第2の濾過アセンブリは、第2の濾過システムおよび第2のハーベストポンプを含む。第2のハーベストポンプは、第2の濾過システムと直列に連結され、バイオリアクタ容器から第2の濾過システムを通って液体媒体を圧送するように構成される。コントローラは、動作を実行する。動作は、センサから、第1の濾過システムの動作状態を示す情報を受けることを含む。動作は、少なくとも受けた情報に基づいて、第1の濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することをさらに含む。動作はまた、第1の濾過システムが動作可能な状態にないという判定に応答して、第1のハーベストポンプに、第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送するのを止めさせることを含む。
【0010】
本開示の第2の実施形態では、灌流細胞培養装置が提供される。この装置は、バイオリアクタ容器、濾過アセンブリ、およびコントローラを含む。バイオリアクタ容器は、液体媒体を受けるように構成される。濾過アセンブリは、バイオリアクタ容器に流体連通しており、濾過システム、ハーベストポンプ、およびセンサを含む。ハーベストポンプは、濾過システムと直列に連結されており、バイオリアクタ容器から濾過システムを通って液体媒体を圧送するように構成される。センサは、濾過アセンブリ内で液体媒体と相互作用するように構成される。コントローラは、動作を実行する。動作は、センサから、濾過システムの動作状態を示す情報を受けることを含む。動作は、少なくとも受けた情報に基づいて、濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することをさらに含む。動作は、濾過システムが動作可能な状態にないという判定に応答して、ハーベストポンプに、濾過システムを通って液体媒体を圧送するのを止めさせることをさらに含む。
【0011】
本開示のさらに別の実施形態では、方法が提供される。この方法は、バイオリアクタ容
器を細胞および液体媒体で少なくとも部分的に充填することを含む。バイオリアクタ容器は、第1の濾過システムおよび第2の濾過システムに流体連通している。第2の濾過システムは、第1の濾過システムに並列に連結される。この方法は、第1のハーベストポンプを使用して、バイオリアクタ容器から第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送することをさらに含む。第1のハーベストポンプは、第1の濾過システムと直列に連結される。この方法はまた、第2のハーベストポンプを使用して、バイオリアクタ容器から第2の濾過システムを通って液体媒体を圧送することを含む。第2のハーベストポンプは、第1の濾過システムと直列に連結される。この方法は、追加として、液体媒体と相互作用するように構成されたセンサから、第1の濾過システムの動作状態を示す情報を受けることを含む。さらに、この方法は、少なくとも受けた情報に基づいて、第1の濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することを含む。さらに、この方法は、第1の濾過システムが動作可能な状態にないという判定に応答して、第1のハーベストポンプに、第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送するのを止めさせることを含む。
【0012】
他の態様、実施形態、および実装形態は、添付の図面を適宜参照して、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】標準的な灌流バイオリアクタ構成の概略図である。
図2】本開示の一実施形態によるデュアル濾過システムおよび一体化された捕捉を有する灌流細胞培養装置の概略図である。
図3】本開示の別の実施形態によるデュアル濾過システムおよび一体化された捕捉を有する灌流細胞培養装置の概略図である。
図4】本開示の別の実施形態による単一の濾過システムを有する灌流細胞培養装置構成の概略図である。
図5】本開示の一実施形態による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、一般に、細胞培養装置のための濾過システムおよび細胞培養方法に関する。本開示の灌流細胞培養装置は、バイオリアクタ容器と、並列に連結された2つまたはそれ以上の濾過システム(たとえば、交互タンジェンシャルフローフィルタ)とを含む。いずれのフィルタの障害も、インラインセンサによって検出することができ、自動化された応答システムが、フィルタを通る液体媒体の流れを止めることによって、動作不良を生じているフィルタを隔離するように機能する。バイオリアクタを通る灌流の速度が比較的変化しないままになるように、残りの動作可能なフィルタを通る媒体の流れを増大させることができる。本開示の細胞培養装置は、従来の灌流バイオリアクタでフィルタ障害から生じる問題を防止し、それによって細胞培養の長期的な生存能力を改善することができる。
【0015】
例示的な方法、デバイス、およびシステムが開示される。「例」または「例示的」という用語は、本開示では、「事例または例示として働く」ことを意味するために使用されることを理解されたい。「例示的」または「例」として開示するあらゆる実装形態または構成は、必ずしも他の実装形態または構成より好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。本開示に提示する主題の範囲から逸脱することなく、他の実装形態を利用することができ、他の変更を加えることもできる。
【0016】
したがって、開示する例示的な実装形態は、限定的であることを意味しない。図に開示および例示する構成要素は、本開示で企図される多種多様な異なる構成で配置、置換え、組合せ、分離、および設計することができる。
【0017】
さらに、文脈上別途示唆しない限り、各図に示す構成は、互いに組み合わせて使用する
ことができる。したがって、これらの図は概して、1つまたはそれ以上の全体的な実装形態の構成要素として見なされるべきであり、示されるすべての構成が各実装形態に必要であるとは限らないことを理解されたい。
【0018】
本開示に対する技術的内容を提供するための取組みとして、本章の情報は、開示する実装形態の様々な構成要素を広く説明することができる。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。そのような情報は、読み手の利益のためだけに提供されており、したがって特許請求の範囲の主題を明示的に限定するものではない。さらに、図に示す構成要素は、例示のみを目的として示されている。したがって、これらの例示は、限定的であると解釈されるべきではない。理解されるように、本開示の範囲から逸脱することなく、構成要素を追加、削除、または再編成することができる。
【0019】
I.概説
特定の応用例では、濾過システム障害を自動的に検出して応答する細胞培養装置を提供することが有利である。そのような細胞培養装置は、第1のフィルタに障害が生じた場合(たとえば、破裂、詰まり、汚損、または何らかの他の手段による)に、第2のおよび/またはさらなる濾過システムを使用することができるように、組み込まれた冗長性を含むことができる。フィルタ障害が生じたとき、自動化された応答システムは、影響を受けたフィルタへの媒体の流れを止めながら、残りの任意のフィルタを通る処理量を増大させるように機能することができる。この応答により、細胞培養装置の操作者による即時の介入を必要とすることなく、液体媒体の灌流がほぼ同じ速度で継続することを可能にすることができる。そのようなシステムは、細胞の生存能力を改善し、灌流バイオリアクタシステムにおける障害の確率を低減させることができる。
【0020】
本開示の装置および方法は、一般に、改善されたタンジェンシャルフロー濾過システムを有する灌流細胞培養装置に関する。この装置は、細胞集団および液体成長媒体を収容するように構成されたバイオリアクタ容器を含むことができる。バイオリアクタ容器には新しい液体媒体を提供することができ、使用済み液体媒体は、ほぼ等しい速度で一連の濾過アセンブリを通って除去することができる。各濾過アセンブリは、濾過システム、ハーベストポンプ、センサ、および/またはガードフィルタを含むことができる。
【0021】
通常動作中、使用済み液体媒体は、濾過アセンブリの1つまたはそれ以上を通って除去され、下流の捕捉動作へ圧送される。各濾過アセンブリ内に設けられたセンサは、濾過アセンブリの動作を連続して監視し、動作不良(たとえば、破裂、詰まり、または何らかの他の障害モード)が濾過システムのうちの1つで生じたことを判定することができる。
【0022】
センサのうちの1つまたはそれ以上によって動作不良が検出されたとき、自動化された応答システムは、液体媒体の灌流が中断なく継続するように、装置の動作パラメータを変化させるように作用する。自動化された応答システムは、センサおよびハーベストポンプと通信しているコントローラによって実施される。濾過システムのうちの1つまたはそれ以上が動作可能な状態にないと判定したことに応答して、コントローラは、動作可能でないフィルタに関連するハーベストポンプに、影響を受けたフィルタへの液体媒体の圧送を中止させることができる。追加として、コントローラは、たとえば関連するハーベストポンプに、動作可能な濾過システムへの液体媒体の流れを増大させることによって、残りの動作可能な濾過アセンブリに、増大された量の液体媒体を処理させることができる。コントローラはまた、この装置に、通知、たとえばアラーム、インジケータ光、または何らかの他のアラートを出力させることができる。コントローラはまた、濾過システムを停止することができる(たとえば、濾過システムのタンジェンシャルフローポンプに、フィルタ膜を横切って液体媒体を圧送するのを止めさせることによる。)いくつかのシナリオでは
、コントローラはまた、下流の捕捉動作を止めることができ、または弁を作動させて、液体媒体の流れを止めかつ/もしくは液体媒体を廃棄物容器へそらすことができる。さらに別のシナリオでは、コントローラは、バイオリアクタセンサ(たとえば、静電容量、光学密度、酸素吸収速度など)が特定の閾値を下回る場合、バイオリアクタ容器に出入りする流れを完全に停止することができる。他の自動化された応答も企図される。
【0023】
II.細胞培養装置
本開示の一実施形態による細胞培養装置が、図2に示されている。細胞培養装置200は、バイオリアクタ容器210、連続捕捉動作260、ならびにバイオリアクタ容器210の少なくとも1つの出口と連続捕捉動作260の入口との間に並列に連結された少なくとも第1の濾過アセンブリ206および第2の濾過アセンブリ208を含む。細胞培養装置200のバイオリアクタ容器210は、容器内で細胞集団を維持するために、新しい液体媒体を受けるように構成される。本明細書では、液体媒体は、細胞の成長を支持するように設計された栄養成長媒体または培養媒体を指すことができる。ほぼ等しい流れの使用済み液体媒体が、バイオリアクタ容器210から複数の濾過アセンブリ206、208を通って圧送され、それによって代謝およびタンパク質廃棄物質を除去しながら、バイオリアクタ容器210内で一定の体積の媒体を維持する。細胞培養の環境を監視するために、バイオリアクタセンサ215は、バイオリアクタ容器210内で液体媒体と相互作用するように位置することができる。そのようなバイオリアクタセンサ215は、バイオリアクタ容器210および/またはバイオリアクタ容器210内の液体媒体の温度、溶存酸素、pH、pCO、および/または細胞密度を測定するように構成することができる。
【0024】
細胞培養装置200は、液体媒体から生成物(たとえば、所望の生物学的または治療用生成物)を収集するように構成された連続して動作する捕捉動作260と一体化することができる。捕捉動作260は、少なくとも第1の濾過アセンブリ206によって、バイオリアクタ容器210に流体連通している。捕捉動作260は、並列の濾過アセンブリ206、208を通過した後、使用済み液体媒体を受けて、媒体を処理および/または精製して、所望の関心生成物を取り入れることができる。様々な実施形態では、捕捉動作260は、様々な技法を用いて関心生成物を取り入れることができる。たとえば、いくつかの例では、捕捉動作260は、1つまたはそれ以上のクロマトグラフィカラムを含む連続クロマトグラフィシステムを含むことができる。特定の例では、捕捉動作260は、周期的連続カウンタクロマトグラフィ(PCC)スキッド、または擬似移動床(simulated moving bed)(SMB)スキッドを含むことができる。他の例では、捕捉動作260は、マルチクロマトグラフィ(MCC)スキッド(すなわち、複数のカラムを含む連続クロマトグラフィシステム)を含むことができる。当業者であれば、他の精製方法を考えることができる。
【0025】
連続捕捉動作260に到達する前に、液体媒体は、バイオリアクタ容器210内で細胞を保持するように設計された1つまたはそれ以上の濾過アセンブリ206、208を通って流れる。各濾過アセンブリ206、208は、バイオリアクタ容器210に流体連通しており、容器210と連続捕捉動作260との間で容器210の出口に連結することができる。図2に示すように、いくつかの例では、2つの濾過アセンブリを並列に連結して、2つの並列の流体経路を提供することができる。第1の濾過アセンブリ206は、第1の濾過システム220、第1のハーベストポンプ230、第1のセンサ240、および第1のガードフィルタ250を含む。同様に、第2の濾過アセンブリ208は、第2の濾過システム222、第2のハーベストポンプ232、第2のセンサ242、および第2のガードフィルタ252を含む。各濾過アセンブリ206、208の要素は、1つまたはそれ以上の導管、滅菌した管材、または別の連結手段を介して、直列に連結することができる。図2に示すように、第1のハーベストポンプ230は、第1の濾過システム220の下流に連結することができ、センサ240は、第1のハーベストポンプ230の下流に位置す
ることができ、第1のハーベストポンプ230と、さらに下流に連結されたガードフィルタ250との間に配置することができる。この文脈で、「下流」は、濾過アセンブリ206、208を通る液体媒体の流れに対する要素の相対的な位置または向きを指し、「下流」は概して、バイオリアクタ容器210から離れて捕捉動作260に向かう方向を指す。しかし、第1の濾過アセンブリ206の要素は、任意の数の構成で連結することができる。第2の濾過アセンブリ208および/またはさらなる濾過アセンブリを配置することができ、第2の濾過アセンブリ208および/またはさらなる濾過アセンブリは、第1の濾過アセンブリ206と実質上同じ構成または完全に異なる構成の要素を有することができる。
【0026】
いくつかの例では、第2の濾過アセンブリ208は、第1の濾過アセンブリ206と並列(すなわち、同時)に動作するように構成される。細胞培養装置200の通常動作中、第1の濾過アセンブリ206および第2の濾過アセンブリ208を通る液体媒体の流量は、ほぼ等しくすることができる。言い換えれば、各濾過アセンブリ206、208は、ほぼ等しい流量の使用済み液体媒体をバイオリアクタ容器210から受けることができる。しかし、他の実施形態では、一度に単一の濾過アセンブリ(たとえば、第1の濾過アセンブリ206)が動作することができ、第2の濾過アセンブリ208および/またはさらなる濾過アセンブリは、予備として動作することができる。
【0027】
いくつかの例では、処理量を増大させ、システム障害の場合の追加の予備濾過手段を提供し、または何らかの他の利益を提供するために、第3のまたはさらなる濾過アセンブリを、第1の濾過アセンブリ206および第2の濾過アセンブリ208に並列に連結することができる。
【0028】
第1の濾過アセンブリ206および第2の濾過アセンブリ208は、第1の濾過システム240および第2の濾過システム242をそれぞれ含む。第1および第2の濾過システム220、222は、バイオリアクタ容器210内の細胞が連続捕捉動作260に入ることを防止しながら、細胞性廃棄物および1つまたはそれ以上の所望の関心生成物の自由な通過を可能にするように構成することができる。本明細書では、「濾過システム」という用語は、バイオリアクタ容器210内で細胞を保持するためのフィルタに基づく手段を指すために使用される。いくつかの例では、第1の濾過システム220および第2の濾過システム222は、フィルタ膜を横切って接線方向に流体(たとえば、液体媒体)を流すことによって機能するフィルタを含むことができる。そのような濾過システム220、222は、従来のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システム、クロスフローフィルタ(cross-flow filter)、および類似の細胞保持手段を含むことができる。別の例では、第1の濾過システム220および第2の濾過システム222のうちの少なくとも1つが、交互タンジェンシャルフロー(ATF)フィルタを含む。そのようなフィルタは典型的に、フィルタ膜と、フィルタ膜を横切って接線方向に流体を誘導するように構成されたタンジェンシャルフローポンプ(たとえば、ダイアフラムポンプ)とを含む。タンジェンシャルフローポンプは、バイオリアクタ容器210からフィルタ膜の表面を横切って繰返し前後パターンで液体媒体を流すように作動するダイアフラムを含むことができる。フィルタ膜付近で流体が繰返し摂動することで、細胞の蓄積を防止し、動作中のフィルタ表面の汚損を最小限にすることができる。いくつかの例では、第1の濾過システムによって提供される第1のタンジェンシャルフローポンプは、第2の濾過システムによって提供される第2のタンジェンシャルフローポンプから独立して動作することができる。しかし、他の実施形態では、2つまたはそれ以上のタンジェンシャルフローポンプを一様に制御することができ、したがってそれらの圧送動作は、完全に同期化または非同期化される。
【0029】
第1の濾過アセンブリ206および第2の濾過アセンブリ208について、ATFまた
は他のタンジェンシャルフローに基づくフィルタを含む限りにおいて説明してきたが、バイオリアクタ容器210内で細胞を保持するために、他の濾過手段を実施することもできる。たとえば、他の実施形態では、第1の濾過システム220および第2の濾過システム222は、内部スピンフィルタ(internal spin filter)(ISF)、中空糸フィルタ、多孔膜フィルタ、デプスフィルタ、および/または他の精密濾過もしくは限外濾過システムを含むことができる。
【0030】
第1の濾過システム220および第2の濾過システム222は、第1のフィルタ膜および第2のフィルタ膜をそれぞれ含む。フィルタ膜の孔径は、細胞はバイオリアクタ容器210内に保持されたまま、所望の関心生成物、細胞性廃棄物、および使用済み液体媒体が膜を通って自由に流れるように選択することができる。濾過システム220、222のフィルタ膜は、好適な孔径を有する任意の材料、たとえば多孔質ポリマー膜から構成することができる。いくつかの例では、フィルタ膜は、ハウジングまたはカートリッジの内側に平行配列で組織された一連の選択的透過性中空糸から構成される。中空糸膜の孔径は、濾過システム220、222の所望の透過性を実現するように選択することができる。いくつかの例では、第1の濾過システム220および第2の濾過システム222は各々、約500キロダルトン~約10ミクロン、またはより好ましくは約0.1ミクロン~約1ミクロンの範囲の孔径を含む。
【0031】
本開示の装置による各濾過アセンブリ206、208は、ハーベストポンプ230、232を含む。第1の濾過アセンブリ206は、第1の濾過システム220と直列に連結された第1のハーベストポンプ230を含む。同様に、第2の濾過アセンブリ208は、第2の濾過システム222と直列に連結された第2のハーベストポンプ232を含む。第1のハーベストポンプ230および第2のハーベストポンプ232は、バイオリアクタ容器210からそれぞれ第1の濾過システム220および第2の濾過システム222を通って下流の捕捉動作260内へ液体媒体を圧送するように構成される。様々な例では、第1のハーベストポンプ230および/または第2のハーベストポンプ232は、蠕動ポンプ、ベアリングレスポンプ、ダイアフラムポンプ、または遠心ポンプを含むことができる。しかし、他のポンプを使用して、濾過アセンブリ206、208を通って媒体を引き込みながら、液体媒体の滅菌状態を維持することもできる。
【0032】
第1のハーベストポンプ230は、バイオリアクタ容器210から第1の濾過システム220を通って第1の流量で液体媒体を圧送する。第2のハーベストポンプ232も同様に、バイオリアクタ容器210から第2の濾過システム222を通って第2の流量で液体媒体を圧送する。いくつかの例では、第1の流量は、第2の流量にほぼ等しくすることができる。言い換えれば、第1のハーベストポンプ230および第2のハーベストポンプ232は、それぞれの濾過システム220、222を通ってほぼ等しい量の液体媒体を圧送するように構成することができ、したがって濾過アセンブリは、正常動作条件下で、等しい量の使用済み液体媒体を処理する。しかし、別の実施形態では、第1の流量および第2の流量が異なってもよい。特定の例では、第1のハーベストポンプ230は、単独で独立して動作することができ、第2のハーベストポンプ232(すなわち、第2のまたはさらなる濾過装置に連結された第2のまたはさらなるハーベストポンプ)は、第1のハーベストポンプ230、第1の濾過システム220、および/または第1の濾過アセンブリ206が動作可能な状態にないという判定に応答して動作するように構成することができる。
【0033】
濾過アセンブリ206、208を通る液体媒体の流量は、バイオリアクタ容器210に入る新しい媒体の流量にほぼ等しくすることができ、したがって灌流中に容器210内では安定した量の液体媒体が維持される。言い換えれば、第1の流量と第2の流量との和は、バイオリアクタ容器210に入る液体媒体の流量(すなわち、供給動作によって容器210へ導入される媒体の流量)にほぼ等しくすることができる。
【0034】
各濾過システム220、222を通る液体媒体の流量(すなわち、第1の流量および第2の流量)は、第1のハーベストポンプ230および第2のハーベストポンプ232と通信しているコントローラ270によって独立して制御することができる。コントローラ270は、第1のハーベストポンプ230および/または第2のハーベストポンプ232に、装置200の動作条件に応じて、第1の濾過システム240および/または第2の濾過システム242を通る液体媒体の流れを増大、減少、または停止させるように構成することができる。たとえば、濾過システム220、222の1つまたはそれ以上に障害が生じたとき、影響を受けたアセンブリのハーベストポンプの電源を切ることができ、残りの濾過アセンブリを通る液体媒体の流量は、動作不良が生じている濾過アセンブリを補償するように増大させることができる。
【0035】
灌流バイオリアクタシステムは典型的に、より長い期間にわたって動作するように構成されるが、機器障害が予想される。特に、濾過システム220、222は動作不良を受けやすく、ともすれば下流の捕捉動作260で問題を生じ、ハーベスト内で不純物を増大させ、場合によって完全な動作停止を招く可能性がある。濾過システム220、222を破った細胞が連続捕捉動作260に干渉することを防止するために、ガードフィルタ250、252を第1の濾過システム220および/または第2の濾過システム222と直列に連結することができる。そのようなガードフィルタ250、252は、細胞および細胞片が下流に捕捉動作260へ進むことを防止しながら、栄養分、代謝生成物、および液体媒体の拡散は自由に可能にするように構成することができる。図2に示すように、ガードフィルタ250は、第1の濾過システム220および/または第1の濾過アセンブリ206と直列に連結することができる。いくつかの例では、ガードフィルタ250は、第1の濾過システム220および/またはセンサ240の下流に連結される。第2の濾過アセンブリ208もまた、濾過システム222の下流で第2の濾過システム222と直列に連結されたガードフィルタ(すなわち、第2のガードフィルタ252)を含むことができる。しかし、他の実施形態では(図3に示すように)、複数の濾過アセンブリが、たとえば連続捕捉動作260の入口に位置する単一の共用ガードフィルタに集まることができる。ガードフィルタ250の他の位置および構成も考えられる。
【0036】
ガードフィルタ250、252は、好適な多孔率を有する任意の材料、たとえば多孔質ポリマー膜および/または中空糸膜から構成することができる。場合によって、ガードフィルタ250は、約500キロダルトン~約10ミクロン、またはより好ましくは約0.1ミクロン~約1ミクロンの孔径を含む。ガードフィルタ250は、第1の濾過システム220および/または第2の濾過システム222の孔径にほぼ等しい孔径を有するように(すなわち、濾過システム220、222の選択的透過性を模倣するように)構成することができる。しかし、他の場合、ガードフィルタ250は、濾過システム220、222より小さいまたは大きい孔径を含むことができ、それによって追加の代謝生成物の選択的な濾過を可能にすることができる。
【0037】
場合によって、1つまたはそれ以上の濾過システム220、222の動作の監視および/またはフィルタ障害の検出のために、少なくとも1つのセンサ240を濾過アセンブリ206、208内に設けることができる。特に、第1の濾過アセンブリ206は、センサ240を含むことができる。いくつかの例では、第2の濾過アセンブリ208は、さらなるセンサ(たとえば、第2のセンサ242)を含むことができる。センサ240は、濾過アセンブリ206、208の導管に沿って位置することができ、濾過アセンブリ206、208内で液体媒体と相互作用するように、すなわち濾過アセンブリ206、208を通過する液体媒体の様々な態様を検出するように構成することができる。図2に示すように、第1の濾過システム220の下流およびガードフィルタ250の上流に、センサ240を配置することができる。場合によって、センサ240は、圧力センサ、またはより詳細
には、圧電抵抗式圧力センサを含むことができる。センサ240は、ガードフィルタ250の詰まりおよび/または上流の第1の濾過システム220内の破裂を示すことができる第1の濾過アセンブリ206内の圧力(たとえば、第1の濾過アセンブリ206内の液体媒体の圧力)を検出するように構成することができる。様々な例では、センサ240は、第1のガードフィルタ250の上流もしくは下流の圧力、第1の濾過システム220の上流もしくは下流の圧力、および/または第1の濾過システム220もしくはガードフィルタ250の膜圧を検出するように構成することができる。他の例では、センサ240は、光センサ(たとえば、光学密度プローブ)とすることができ、センサ240は、第1の濾過アセンブリ206を通って流れる液体媒体中の細胞密度を判定するように構成することができる。さらなる例では、センサ240は、濾過システム220、222および/または濾過アセンブリ206、208を通る液体媒体の流量を測定するように動作可能な流量計を含むことができる。さらなる例では、センサ240は、静電容量センサ、ラマンセンサ、またはFTIR(フーリエ変換赤外)センサを含むことができる。別の例では、センサ240は、連続捕捉動作内へ(たとえば、捕捉カラムの上流の圧力センサとして)一体化することができる。他のセンサのタイプおよび応用例も考えられる。
【0038】
図2のセンサ240、242について、第1の濾過アセンブリ206および第2の濾過アセンブリ208内に含まれている(すなわち、濾過システム220、222とガードフィルタ250、252との間の導管内に配置される)ものとして示すが、センサは様々な位置に配置することができる。たとえば、いくつかの例では、バイオリアクタセンサ215は、バイオリアクタ容器210内で液体媒体と相互作用するように構成することができ、したがってバイオリアクタセンサ215は、容器210内の液体媒体の圧力、温度、pH、溶存酸素、pCO、細胞密度、または他の特性の変化を監視することができる。
【0039】
フィルタ障害から生じる潜在的な問題を軽減するために、細胞培養装置200は、自動化された応答システムを含むことができる。この応答システムを使用して、細胞灌流を比較的変化しない状態で継続するために、濾過システム障害(たとえば、フィルタ膜の破裂)の検出、動作不良が生じている濾過システムの隔離、および/または装置200の動作パラメータの調整を行うことができる。自動化された応答システムは、少なくともハーベストポンプ230、232およびセンサ240、242と通信しているコントローラ270によって実施することができる。本明細書に記載するように、コントローラ270は、動作(たとえば、コントローラのデータ記憶部内にプログラム命令として記憶された動作)を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含むことができる。しかし、他の例では、コントローラ270は、比較器または別の簡略化された制御システムを含むことができる。
【0040】
コントローラ270は、センサ240、242から、第1の濾過システム220および/または第2の濾過システム222の動作状態を示す情報を受けるように構成することができる。そのような情報は、第1の濾過アセンブリ206および/または第2の濾過アセンブリ208を通って流れる液体媒体の特性を含むことができる。たとえば、この情報は、濾過アセンブリ206、208内の液体媒体の流体圧力、液体媒体の細胞密度、液体媒体の流量、液体媒体内の被検体の存在、または何らかの他の情報を含むことができる。他の例では、前述のように、バイオリアクタセンサ215は、バイオリアクタ容器210内の液体媒体に関する情報、たとえば細胞密度または別の特性を収集するように構成することができる。
【0041】
コントローラ270は次いで、少なくともセンサ240、242から受けた情報に基づいて、第1の濾過システム220および/または第2の濾過システム222が動作可能な状態にあるかどうかを判定することができる。この文脈で、「動作可能」という用語は、意図されたとおり、すなわち細胞性廃棄物および関心生成物を含む液体媒体を選択的に通
過させながら、バイオリアクタ容器210内で細胞を保持するように機能している濾過システムを指すために使用される。逆に、動作可能な状態にない濾過システム220、222は、所望または予期の流量の液体媒体を通過させることができない(すなわち、フィルタ膜の詰まりまたは汚損を示す)、または細胞を保持することができない(すなわち、フィルタが破裂したことを示す)可能性がある。濾過システム220、222が動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、受けた情報が予期の値範囲内にあるか、それとも所定の閾値を上回るまたは下回るかを判定することを含むことができる。
【0042】
特定の例では、第1の濾過システム220は破裂している可能性があり、それによって細胞が第1の濾過システム220を破ってガードフィルタ250上に集まることが可能になる。コントローラ270は次いで、細胞がガードフィルタ250に詰まったことによって液体媒体内の圧力が増大したことを示す情報を、センサ240から受けることができる。このとき、第1の濾過システム220が動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、第1の濾過アセンブリ206内の圧力(すなわち、第1の濾過アセンブリ206内の液体媒体の圧力)が閾値より大きいかどうかを判定することを含むことができる。類似の例では、センサ240の1つまたはそれ以上は、光センサ(たとえば、光学密度プローブ)を含むことができ、濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、第1の濾過アセンブリ206内の液体媒体の細胞密度が閾値レベルを上回ると判定することを含むことができ、これは細胞が第1の濾過システム220を破ったことを示す。さらに別の例では、バイオリアクタセンサ215は、光センサとすることができ、濾過システム220、222が動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、バイオリアクタ容器210内の液体媒体の細胞密度が閾値レベルを下回ると判定することを含むことができる。
【0043】
他の障害モードも予想される。たとえば、第1の濾過システム220は、第1のタンジェンシャルフローポンプの障害および/またはフィルタ膜の汚損により、動作可能でない状態になる可能性がある(たとえば、第1の濾過システム220がATFまたは他のタンジェンシャルフローに基づくフィルタである場合)。そのような状況では、細胞がフィルタ膜上に蓄積し、第1の濾過システム220を通る液体媒体の流れを阻止しまたは減少させることがある。そのような例では、センサ240は、第1の濾過システム220の膜圧を測定するように構成することができる。第1の濾過システム220が動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、濾過システム220の膜圧が閾値を上回ると判定することを含むことができる。さらなる例では、センサ240は、流量計を含むことができ、第1の濾過システム220が動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、第1の濾過システム220(および/または第1の濾過アセンブリ206)を通る液体媒体の流れが閾値レベルを下回ると判定することを含むことができる。当業者であれば、他の障害モード、センサパラメータ、および決定要因を考えることができる。
【0044】
1つまたはそれ以上の濾過システム障害を検出した後、自動化された応答システム(すなわち、コントローラ270)は、液体媒体が影響を受けた濾過システム220、222を通って流れることを防止することによって、動作不良が生じている濾過アセンブリ206、208を隔離するように機能することができる。言い換えれば、第1の濾過システム220が動作可能な状態にないという判定に応答して、コントローラ270は、第1のハーベストポンプ230に、たとえばハーベストポンプ230への電力を切断することによって、第1の濾過システム220を通って液体媒体を圧送するのを止めさせることができる。コントローラ270は、濾過システム220のタンジェンシャルフローポンプに、フィルタ膜を横切って液体媒体を圧送するのを止めさせることによって、第1の濾過システム220を停止するようにさらに構成することができる(すなわち、濾過システム220がATFを含む場合)。他の例では、コントローラ270は、第1の濾過システム220または第2の濾過システム222と直列に連結された逃がし弁を作動させることによって
、液体媒体を廃棄物回収システムへそらすように構成することができる。さらに別のシナリオでは、コントローラ270は、バイオリアクタセンサ215からの情報(たとえば、バイオリアクタ容器210内の液体媒体の静電容量、光学密度、酸素吸収速度、または他の態様)が特定の閾値を上回るまたは下回る場合、バイオリアクタ容器210に出入りする流れを完全に停止することができる。
【0045】
追加または別法として、第1の濾過アセンブリ206は、第1の濾過システム220と直列に連結された1つまたはそれ以上の第1の隔離弁265を含むことができる。第1の隔離弁265は、第1の濾過システム220を通る液体媒体の流れを制御するように構成することができる。第1の濾過システム220が動作可能な状態にないという判定に応答して、コントローラ270は、第1の隔離弁265を閉じるように動作可能とすることができる。第2の濾過システム222と直列に第2の隔離弁267をさらに連結することができ、第2の隔離弁267は、第2の濾過システム222を通る液体媒体の流れを制御するように構成される。図2に示すように、場合によって隔離弁265、267は、第1の濾過アセンブリ206および/または第2の濾過アセンブリ208と連続捕捉動作260との間に直列に連結することができる。しかし、そのような1つまたはそれ以上の隔離弁265、267は、第1の濾過アセンブリ206または第2の濾過アセンブリ208の前、後、または中の任意の場所に位置することができる。たとえば、第1の隔離弁265および/または第2の隔離弁267は、バイオリアクタ容器210と、それぞれの濾過アセンブリ206、208との間に位置することができ、濾過システム220、222の下流に位置することができ、ガードフィルタ250、252の下流に位置することができ、または連続捕捉動作260の入口に連結することができる。フィルタの動作不良を検出したとき、隔離弁265、267は、影響を受けた濾過システム220、222を通る液体媒体および細胞性生成物の流れを防止するように作動することができ、それによって細胞および汚染物質が連続捕捉動作260に到達することを防止し、障害のあるあらゆる機器の交換を容易にすることができる。
【0046】
故障した濾過システム220、222を隔離することに加えて、コントローラ270はまた、フィルタ障害後に細胞培養装置200の様々な動作パラメータを変化させるように動作可能とすることができる。前述のように、安定した流量の液体媒体がバイオリアクタ容器210へ供給されるべきであり、バイオリアクタ容器210内の細胞の増殖を促進するために、ほぼ等しい流量の廃棄物を含む使用済み媒体を連続して除去することができる。第1の濾過システム220内の障害の検出後、コントローラ270は、追加として、バイオリアクタ容器210内で液体媒体の安定した灌流が維持されるように、残りの動作可能な第2の濾過システム222を通る液体媒体の流量を増大させるように構成することができる。残りの動作可能な濾過システム(たとえば、第2の濾過システム222)を通る増大させた流量は、元の濾過システム220、222を通る障害前の全流量(たとえば、第1の濾過システム220を通る第1の流量と第2の濾過システム222を通る第2の流量との和)にほぼ等しくなるべきである。一例では、コントローラ270は、第1の濾過システム220が動作可能な状態にないという判定に応答して、第2のハーベストポンプ232に、第2の濾過システム242を通る液体媒体の流量を増大させるように動作可能とすることができる。いくつかの例では、第2のハーベストポンプ232に第2の濾過システム242を通る液体媒体の流れを増大させることは、流量を約2倍にすることを含むことができる。
【0047】
場合によって、細胞培養装置200は、並列に連結された同時に動作する複数の濾過アセンブリ(すなわち、少なくとも第1の濾過アセンブリ206および第2の濾過アセンブリ208)を含むことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、細胞培養装置200は、所望の灌流速度を実現するために、3つ、4つ、6つ、またはそれ以上の濾過アセンブリを含むことができる。濾過アセンブリ206、208の濾過システム220、22
2のうちの1つまたはそれ以上に障害が生じたとき、コントローラ270は、システム内の液体媒体の安定した灌流を維持するように、任意の数の残りの動作可能なフィルタアセンブリを通る流量を調整するように動作可能とすることができる。たとえば、第1の濾過システム220が動作可能な状態にないと判定したことに応答して、コントローラ270は、1つまたはそれ以上のさらなる濾過アセンブリに関連する1つまたはそれ以上のハーベストポンプに、それぞれの濾過システムを通る液体媒体の流量を増大させることができる。
【0048】
いくつかの例では、フィルタの動作不良が検出されたとき、細胞培養装置200の操作者に通知することが望ましい。たとえば、第1の濾過システム220が動作可能な状態にないという判定に応答して、コントローラ270は、通知を出力するように構成することができる。そのような通知は、視覚アラート、たとえば明滅光、着色光、視覚メッセージ、ディスプレイ上の文字または図形情報を含むことができる。追加または別法として、通知は、アラーム音、ブザー音、ベル音、聴覚メッセージ、または何らかの他の聴覚構成要素などの聴覚アラートを含むことができる。さらに別の例では、通知は、細胞培養装置に関連する受取人へ送られる文字メッセージ、電話の呼出し、または電子メールを含むことができる。
【0049】
図2に示す細胞培養装置200は、別個の濾過システム220、222、センサ240、242、およびガードフィルタ250、252を含む2つの濾過アセンブリ206、208を含むが、より簡単な細胞培養装置も本開示の範囲内に包含することができる。たとえば、図3は、共用のセンサ340、ガードフィルタ350、および捕捉動作360に集まるデュアル濾過システム320、322を含む細胞培養装置300を示す。第1の濾過システム320は、第1のハーベストポンプ330と直列に連結され、第2の濾過システム322は、第2のハーベストポンプ332と直列に連結される。そのような構成は、センサ350による細胞培養装置300の全体的な障害の検出を可能にすることができる。たとえば、第1の濾過システム320または第2の濾過システム322に破裂が生じたとき、バイオリアクタ容器310からの細胞は、すぐに濾過システム320、322を通って流れ、ガードフィルタ350上に集まる可能性がある。ガードフィルタ350の詰まりは、ガードフィルタ350の上流で液体媒体の圧力の増大を引き起こし、圧力センサ(たとえば、センサ340)によってこれを検出することができる。しかし、下流センサ340を共用しているため、そのようなシステムは、第1の濾過システム320内の障害と第2の濾過システム322内の障害とを見分けることができない。そのような例示的なシステムでは、自動化された応答システムは、たとえば通知を出力することによって細胞培養装置300の操作者に警告し、液体媒体を廃棄物回収システムへそらし、または連続捕捉動作を止めるように機能することができる。他の自動化された応答も企図される。
【0050】
図3に示すバイオリアクタ容器310、第1および第2の濾過システム320、322、第1および第2のハーベストポンプ330、332、センサ340、ガードフィルタ350、ならびに捕捉動作360は、図2に関連して上述した対応する構成要素と同様に構成することができる。
【0051】
いくつかの他の例では、細胞培養装置は、使用済み液体媒体を処理するための単一の濾過アセンブリに依拠することができる。図4は、そのような細胞培養装置400の一例を示す。ここでは、バイオリアクタ容器410が、単一の濾過システム420、ハーベストポンプ430、センサ440、およびガードフィルタ450によって、捕捉動作460に流体連通している。少なくともセンサ440およびハーベストポンプ430には、コントローラ470を通信可能に接続することができる。そのような例では、フィルタの動作不良(たとえば、濾過システム420の破裂、詰まり、または別の欠陥)により、細胞培養装置400の濾過機構全体が動作可能でない状態になる可能性がある。濾過システム42
0が動作可能な状態にないという判定に応答して、コントローラ470は、捕捉動作460に、液体媒体からの生成物を収集するのを止めさせるように動作可能とすることができる。
【0052】
細胞培養装置のすべての濾過アセンブリが動作可能でない状況では(たとえば、唯一の濾過システム420に障害が生じたとき、または複数の濾過システムのすべてに障害が生じたとき)、液体媒体の流れを廃棄物回収システム480へそらすことが有利である。そのようなシナリオを提供するために、1つまたはそれ以上の濾過アセンブリは、濾過システム420と直列に連結された逃がし弁485を含むことができる。逃がし弁485は、液体媒体の流れを廃棄物回収システム480へそらすように構成することができる。逃がし弁485は、3方弁とすることができるが、他の例では、逃がし弁485は、1つまたはそれ以上の2方弁を含むことができる。そのような逃がし弁485は、好ましくは、ハーベストポンプ430の下流およびガードフィルタ450の上流に連結することができるが、様々な位置を考えることができる。濾過システム420が動作可能な状態にないという判定に応答して、コントローラ470は、逃がし弁485を開くように構成することができ、それによって液体媒体を廃棄物へそらすことができる。
【0053】
液体媒体を廃棄物回収システム480へそらすことで、細胞培養システム400を通る灌流の一時的な継続を可能にすることができる。しかし、最終的に、より多くの細胞が廃棄物へ圧送されると、バイオリアクタ容器410内の細胞密度は、許容できないレベルまで低下することがある。望ましくない量の細胞密度の損失を防止するために、センサ(たとえば、センサ440またはさらなるバイオリアクタセンサ)が、バイオリアクタ容器410内の液体媒体との相互作用および/または容器410内の細胞密度の監視を行うように構成することができる。細胞密度が閾値を下回るという判定に応答して、コントローラ470は、たとえば逃がし弁485を閉じること、隔離弁を閉じること、1つまたはそれ以上のハーベストポンプ430に、1つまたはそれ以上の濾過システム420を通って液体媒体を圧送するのを止めさせること、または何らかの他の手段によって、灌流を完全に止めるように構成することができる。
【0054】
図4に示すバイオリアクタ容器410、濾過システム420、ハーベストポンプ430、センサ440、ガードフィルタ450、捕捉動作460、およびコントローラ470は、図2に関連して上述した対応する構成要素と同様に構成することができる。
【0055】
III.細胞培養方法
図5は、図2図3、または図4に示した本明細書に記載する装置のいずれかなどの細胞培養装置を動作させる方法500の流れ図である。例示の目的で、方法500で動作する細胞培養装置は:(i)バイオリアクタ容器と;(ii)バイオリアクタ容器に流体連通している第1の濾過システムと;(ii)バイオリアクタ容器に流体連通している第2の濾過システムと;(iii)第1の濾過システムと直列に連結された第1のハーベストポンプと;(iv)第2の濾過システムと直列に連結された第2のハーベストポンプと;(v)少なくとも第1の濾過システムを通って流れる液体媒体と相互作用するように構成されたセンサとを含む。
【0056】
方法500のブロック501は、バイオリアクタ容器を細胞および液体媒体で少なくとも部分的に充填することを含む。バイオリアクタ容器は、第1の濾過システムおよび第1の濾過システムに並列に連結された第2の濾過システムに流体連通している。バイオリアクタ容器を細胞および液体媒体で少なくとも部分的に充填することは、細胞を人工基質上に単層として提供することを含むことができる(すなわち、接着培養)。他の例では、バイオリアクタ容器を細胞および液体媒体で少なくとも部分的に充填することは、媒体中に自由に浮遊する細胞を提供することを含むことができる(すなわち、懸濁培養)。連続す
る灌流のための液体媒体は、新しい液体媒体をバイオリアクタ容器へ連続して導入するように構成された供給動作によって提供することができる。供給動作からの液体媒体は、バイオリアクタ容器内の細胞の栄養の必要に合わせて調節された所定の流量で提供することができる。
【0057】
方法500のブロック502は、第1のハーベストポンプを使用してバイオリアクタ容器から第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送することを含む。方法500のブロック503は、第2のハーベストポンプを使用してバイオリアクタ容器から第2の濾過システムを通って液体媒体を圧送することを含む。第1のハーベストポンプは、第1のタンジェンシャルフローと直列に連結することができる。同様に、第2のハーベストポンプは、第2の濾過システムと直列に連結することができる。
【0058】
第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送することは、液体媒体を第1の流量で圧送することを含むことができる。第2の濾過システムを通って液体媒体を圧送することは、液体媒体を第2の流量で圧送することを含むことができる。いくつかの例では、第1の流量は、正常動作条件下で、第2の流量に実質上等しくすることができる。しかし、他の例では、第1の濾過システムを通る液体媒体の流量は、第2の濾過システムを通る液体媒体の流量とは異なってもよい。追加または別法として、第1の流量と第2の流量との和は、供給動作(たとえば、方法500のブロック501に関連して上述した供給動作)によってバイオリアクタ容器に入る媒体の流量にほぼ等しくすることができる。
【0059】
方法500のブロック504は、少なくとも第1の濾過システムを通って流れる液体媒体と相互作用するように構成されたセンサから、第1の濾過システムの動作状態を示す情報を受けることを含む。そのようなセンサは、第1の濾過システム、第1のハーベストポンプ、および/または他の要素を含む濾過アセンブリ内に位置することができる。追加または別法として、センサは、第1の濾過システムおよび/または第1のハーベストポンプと直列に連結された導管内に配置することができる。
【0060】
いくつかの例では、センサは圧力センサ(たとえば、圧電抵抗式圧力センサ)である。第1の濾過システムの動作状態を示す情報は、第1の濾過システムを通って流れる液体媒体の圧力に関する情報を含むことができる。より詳細には、情報は、第1の濾過システムの上流の液体媒体の圧力、第1の濾過システムの下流の液体媒体の圧力、または第1の濾過システムの液体媒体の膜差圧を含むことができる。いくつかの例では、細胞培養装置は、第1の濾過システム下流で第1の濾過システムと直列に連結されたガードフィルタを含む。そのような例では、情報は、ガードフィルタの上流の液体媒体の圧力を含むことができる。追加または別法として、センサは、静電容量センサ、ラマンプローブ、FTIRプローブ、または光学密度プローブを含むことができる。そのような例では、情報は、液体媒体(たとえば、第1の濾過システムの下流の液体媒体)中の細胞の細胞密度に関する情報を含むことができる。
【0061】
方法500のブロック505は、少なくとも受けた情報に基づいて、第1の濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することを含む。第1の濾過システムが動作可能な状態にないとき、フィルタは、所望または予期の流量の液体媒体を通過させることができない(すなわち、フィルタ膜の詰まりまたは汚損を示す)、または細胞を保持することができない(すなわち、フィルタが破裂したことを示す)可能性がある。濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、センサから受けた情報が予期の値範囲内にあるか、それとも所定の閾値を上回るまたは下回るかを判定することを含むことができる。いくつかの例では、センサは圧力センサであり、第1の濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、液体媒体の圧力が所定の閾値を上回ると判定することを含む。場合によって、第1の濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判
定することは、第1の濾過システムの膜圧が所定の閾値を上回ると判定することを含むことができる。さらなる例では、第1の濾過システムが動作可能な状態にあるかどうかを判定することは、液体媒体(たとえば、バイオリアクタ容器内の液体媒体、または第1の濾過システムを通って流れる液体媒体)の細胞密度が所定の閾値範囲外であると判定することを含むことができる。
【0062】
方法500のブロック506は、第1の濾過システムが動作可能な状態にないという判定に応答して、第1のハーベストポンプに、第1の濾過システムを通って液体媒体を圧送するのを止めさせることを含む。そのような応答は、第1の濾過システムを通る液体媒体の流れを実際上止めることができる。追加または別法として、第1の濾過システムと直列に隔離弁を連結することができ、隔離弁は、第1の濾過システムを通る液体媒体の流れを制御するように構成することができる。そのような例では、方法500は、第1の濾過システムが動作可能な状態にないという判定に応答して、隔離弁を閉じることを含むことができる。フィルタの動作不良に対する他の応答も予想される。
【0063】
いくつかの例では、方法500は、1つまたはそれ以上の残りの動作可能なフィルタの流量を調整することをさらに含むことができる。たとえば、方法500は、第1の濾過システムが動作可能な状態にないという判定に応答して、第2のハーベストポンプに、第2の濾過システムを通る液体媒体の流量を増大させることをさらに含むことができる。第2の濾過システムを通る液体媒体の流量を増大させることで、バイオリアクタ容器を通る液体媒体の灌流が、フィルタ障害後に安定した速度で継続することを可能にすることができる。言い換えれば、第2の濾過システムを通る液体媒体の調整された流量は、動作可能な第1および第2の濾過システムを通る液体媒体の流量にほぼ等しくすることができる。いくつかの例では、第2のハーベストポンプに第2の濾過システムを通る液体媒体の流量を増大させることは、第2の濾過システムを通る液体媒体の流量を約2倍にすることを含むことができる。
【0064】
いくつかの例では、方法500は、第1の濾過システムが動作可能な状態にないという判定に応答して、通知を出力することをさらに含む。通知は、視覚アラート(たとえば、明滅光、着色光、視覚メッセージ、ディスプレイ上の文字または図形情報)および/または聴覚アラート(たとえば、アラーム音、ブザー音、ベル音、聴覚メッセージ、または何らかの他の聴覚構成要素)を含むことができる。さらなる例では、方法500は、液体媒体を廃棄物回収システムへそらすこと、下流の捕捉動作を止めること、または細胞培養装置の動作の他の態様に影響を与えることを含むことができる。
【0065】
図5に示す例示的な方法500は、例示的で非限定的な例であることを意味する。本明細書に記載するブロックおよび工程は、順次または並行して実施することができる。さらに、様々なブロックおよび工程を、本明細書に記載するものとは異なる順序で実施することができ、いくかのブロックおよび工程を削除、省略、および/または反復することができる。方法の追加または代替の要素およびシステムの追加または代替の構成要素も企図される。
【0066】
本明細書に開示する装置および方法について、様々な実施形態の点から説明したが、変形形態および修正形態が当業者には想到されることが理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、請求する装置および方法の範囲内のそのようなすべての均等な変形形態も包含することが意図される。追加として、本明細書に使用する項目名は、編成のみを目的とし、記載する主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0067】
本出願に引用されるすべての参照文献は、参照により本明細書に明示的に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5