(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20250107BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01F27/24 J
H01F37/00 A
H01F37/00 C
(21)【出願番号】P 2023500179
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005880
(87)【国際公開番号】W WO2022176053
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】傍島 貴士
(72)【発明者】
【氏名】赤木 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 有希
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将寛
(72)【発明者】
【氏名】星 則光
(72)【発明者】
【氏名】川村 真央
(72)【発明者】
【氏名】田邊 隼翔
(72)【発明者】
【氏名】上原 直久
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143220(JP,A)
【文献】国際公開第2021/015206(WO,A1)
【文献】特開2007-254814(JP,A)
【文献】特開2006-339525(JP,A)
【文献】特開2004-197218(JP,A)
【文献】国際公開第2010/103709(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって磁束を発生させる導体と、
前記導体の周囲に設けられ、前記磁束が循環する磁路を形成するコアと、
前記導体及び前記コアを収容する
無蓋ケースと、
を有するコイル部品で
あって、
前記導体は、第1方向に沿った軸を有する一つ以上のコイルを構成している巻線であり、
前記導体は、前記磁路を含む平面において、四角形の巻窓を形成する断面を有し、
前記平面は、前記軸を含むものであり、
前記コイルは、前記平面において、前記巻窓を二つ以上形成するものであり、
前記巻窓は、前記第1方向に直交する第2方向に並んでおり、
前記コアは、第1透磁率を有する第1コアと、前記第1透磁率よりも低い第2透磁率を有する第2コアとを有し、
前記第1コアは、前記平面において、前記巻窓の夫々の第2方向へ延びる一辺全体に接し、前記巻窓のうちの少なくとも一つにおいて前記一辺の両端から前記第2方向へ突出し、かつ前記巻窓の夫々の前記一辺を含む直線に関して前記巻窓の反対側に位置しており、
前記第2コアは、前記平面において、前記巻窓の各々の前記一辺以外の三辺に接しており、
前記
無蓋ケースは、底部と、前記底部から一方向へ延びる側部とを有しており、
前記第1コアは、前記底部と接しており、
前記第1コアは、圧粉コアであり、
前記圧粉コアの20mm離れた2点間における表面抵抗は、高温放置試験
として200℃×500時間以上の加熱試験を行った後において、5Ω以上であ
り、
前記圧粉コアの表面は、エポキシ樹脂又はポリアミド樹脂よりなるコーティング材で覆われており、
前記コーティング材の気体透過係数は、100cc(STP)cm/(cm
2
・sec・cmHg)以下であり、
前記無蓋ケースは、前記第1方向と直交する方向に開いた開口部を有しており、
前記導体の端部は、前記無蓋ケースの外部へ引き出されており、
前記開口部には、前記導体の端部が前記第1コア及び前記第2コアと直接接触しないように、前記導体の端部の周囲を囲うキャップ部材が設けられており、
前記キャップ部材は、前記第1方向と直交する方向において、前記開口部の外側から前記第1コアの外周面又はその近傍まで延びており、
前記第1コアが外気と接触しないように、前記第1コアと前記開口部との間に前記第2コアが設けられており、
前記キャップ部材と前記第2コアとの境界の長さの最短距離は、5mm以上である
コイル部品。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル部品であって、
前記圧粉コアに用いられる磁性粉の電気抵抗率は、20μΩcm以上である
コイル部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコイル部品であって、
前記圧粉コアの初期電気抵抗率は、10
10μΩcm以上である
コイル部品。
【請求項4】
請求項1から
請求項3までのいずれか一つに記載のコイル部品であって、
前記コイルのターン数は、30ターン以下である
コイル部品。
【請求項5】
請求項1から
請求項4までのいずれか一つに記載のコイル部品であって、
前記コイルの数は、複数であり、
複数の前記コイルは互いに磁気結合している
コイル部品。
【請求項6】
請求項1から
請求項5までのいずれか一つに記載のコイル部品であって、
前記圧粉コアの20mm離れた2点間における表面抵抗は、前記高温放置試験後において、30Ω以上である
コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関し、特に、二種類のコア部を組み合わせて構成されたコアを備えるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、二種類のコア部を組み合わせて構成されたコアを備えるコイル部品を開示している。このコイル部品は、無蓋のケースと、ケースの底に置かれた圧粉コアと、圧粉コア上に配置されたコイルと、コイルを覆うようにケース内に充填・硬化された注型コアとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、鉄は高温環境下において黒錆を生じる。これは、コイル部品に含まれるコアに使用される鉄においても同様である。なお、黒錆は、注型コアと圧粉コアの構成上の違いから、注型コアよりも圧粉コアにおいて生じやすい。
【0005】
コアに生じた黒錆は、コイル部品の特性を変化させる。例えば、コアに生じた黒錆は、コアにおける渦電流損失を増加させる。また、コアに生じた黒錆は、コイル部品の交流抵抗を増加させる。このような黒錆による特性の変化の影響は、コイル部品に印加される駆動周波数が高いほど大きい。
【0006】
そこで、本発明は、高い駆動周波数に対しても特性変化の小さい安定した特性を持つコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の側面は、第1のコイル部品として、
通電によって磁束を発生させる導体と、
前記導体の周囲に設けられ、前記磁束が循環する磁路を形成するコアと、
前記導体及び前記コアを収容するケースと、
を有するコイル部品であって、
前記コイル部品の駆動周波数は、20kHz以上であり、
前記導体は、第1方向に沿った軸を有する一つ以上のコイルを構成している巻線であり、
前記導体は、前記磁路を含む平面において、四角形の巻窓を形成する断面を有し、
前記平面は、前記軸を含むものであり、
前記コイルは、前記平面において、前記巻窓を二つ以上形成するものであり、
前記巻窓は、前記第1方向に直交する第2方向に並んでおり、
前記コアは、第1透磁率を有する第1コアと、前記第1透磁率よりも低い第2透磁率を有する第2コアとを有し、
前記第1コアは、前記平面において、前記巻窓の夫々の第2方向へ延びる一辺全体に接し、前記巻窓のうちの少なくとも一つにおいて前記一辺の両端から前記第2方向へ突出し、かつ前記巻窓の夫々の前記一辺を含む直線に関して前記巻窓の反対側に位置しており、
前記第2コアは、前記平面において、前記巻窓の各々の前記一辺以外の三辺に接しており、
前記ケースは、底部と、前記底部から一方向へ延びる側部とを有しており、
前記第1コアは、前記底部と接しており、
前記第1コアは、圧粉コアであり、
前記圧粉コアの20mm離れた2点間における表面抵抗は、高温放置試験後において、5Ω以上であり、
駆動周波数は、20kHz以上である
コイル部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、20mm離れた2点間における表面抵抗が高温放置試験後において5Ω以上である圧粉コアを用いることで、高い駆動周波数に対して安定した特性を持つコイル部品を提供することができる。
【0009】
添付の図面を参照しながら下記の最良の実施の形態の説明を検討することにより、本発明の目的が正しく理解され、且つその構成についてより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態によるコイル部品を示す断面概略図である。コイル部品は、コイルの軸とコアが形成する磁路とを含む平面で切断されている。
【
図2】
図1のコイル部品の変形例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明については多様な変形や様々な形態にて実現することが可能であるが、その一例として、図面に示すような特定の実施の形態について、以下に詳細に説明する。図面及び実施の形態は、本発明をここに開示した特定の形態に限定するものではなく、添付の請求の範囲に明示されている範囲内においてなされる全ての変形例、均等物、代替例をその対象に含むものとする。
【0012】
図1を参照すると、本発明の一実施の形態によるコイル部品10は、通電によって磁束を発生させる導体20と、その導体20の周囲に設けられ、磁束が循環する磁路を形成するコア30と、導体20及びコア30を収容するケース40を有している。
【0013】
図1から理解されるように、導体20は、上下方向(第1方向)に沿った軸を中心として巻き回されてコイル200を構成する巻線である。本実施の形態において、コイル200の数は一つである。ただし、本発明はこれに限られない。コイル200の数は、複数であってもよい。複数のコイル200は、上下方向に並べられてもよいし、上下方向と直交する横方向(第2方向)に並べられてもよい。いずれの場合も、複数のコイル200は互いに磁気結合するよう配置してもよいし、磁気結合しないよう配置してもよい。本実施の形態において、上下方向は、Z方向であり、+Z方向が上方、-Z方向が下方である。また、横方向は、X方向である。
【0014】
図1から理解されるように、本実施の形態において、導体20は、その断面が略長方形の平角線である。コイル200は、平角線を厚み方向に巻いたフラットワイズコイルである。平角線として、例えば銅線の周囲を絶縁被膜で覆ったポリアミドイミド線(AIW)などを用いることができる。また、コイル200は、その外面がさらに図示しない絶縁被膜で覆われていてもよい。
【0015】
図1から理解されるように、コイル200は、一対の端面202,204と、これらをつなぐ内周面206及び外周面208とを有している。上下方向に沿って見たとき、端面202又は204の形状は、環状の多角形若しくは円形である。本実施の形態において、上下方向に沿って見たとき、端面202又は204の形状は、環状の角丸四角形である。
【0016】
図1に示されるように、磁路を含みかつコイル200の軸を含む平面でコイル部品10を切断したとき、コイル200は二つの断面を有する。これら二つの断面はいずれも巻窓を形成する。本発明において、巻窓とは、磁路を含みかつコイル200の軸を含む平面において、その周囲に循環する磁束が形成されるコイル200の断面をいう。本実施の形態において、各巻窓の形状は実質的に四角形である。即ち、各巻窓は、上下方向に延びる二つの辺と横方向に延びる二つの辺とを有している。
【0017】
図1に示されるように、コイル200の数が一つの場合、巻窓の数は二つである。コイル200の数が複数の場合、巻窓の数は、コイル200の数とその配置に依存する。例えば、同一形状の二つのコイル200が互いに軸を一致させて上下に重ねられている場合、上下に近接する複数のコイル200の断面が一つの巻窓を形成する。この場合、巻窓の数は二つである。また、同一形状の二つのコイル200が互いの軸を平行にするように並置されている場合、互いに近接するコイル200の断面が一つの巻窓を形成する。この場合、巻窓の数は三つである。なお、一つの巻枠を形成する複数のコイル200の断面は、必ずしも互いに接していなくてもよい。互いに近接するコイル200の断面は、それらの間に隙間が存在しても一つの巻枠を形成する。また、コイル200の外面を覆う絶縁被膜等が存在する場合、その絶縁被膜等も巻窓に含まれる。いずれにせよ、コイル部品10は、磁路を含みかつコイル200の軸を含む平面において、二つ以上の巻窓を形成する。二つ以上の巻窓は、横方向に沿って並んでいる。
【0018】
図1に示されるように、コア30は、第1コア32と第2コア34とを有している。第1コア32は、上下方向においてコイル200の下方に配置され、端面204に接している。第1コア32は、コイル200の端面204よりも下にのみ存在し、端面204よりも上方には存在しない。換言すると、第1コア32は、磁路を含む平面において、コイル200に接している一辺を含む直線に関して、巻窓の反対側に位置している。
【0019】
図1から理解されるように、上下方向に沿って見たとき、第1コア32の外形は、コイル200の外形よりも大きい。換言すると、上下方向に沿って見たとき、コイル200は、第1コア32の外周よりも内側に配置されている。磁路を含む平面において、第1コア32は、巻窓の横方向へ延びる一辺全体に接し、その一辺の両端から横方向外側へ突出している。ただし、本発明はこれに限られない。第1コア32は、各巻窓の横方向へ延びる一辺全体に接し、少なくとも一つの巻枠の一辺の両端から横方向外側へ突出していればよい。
【0020】
図1に示されるように、第2コア34は、上下方向において、第1コア32及びコイル200の上方に配置される。上下方向に沿って見たとき、第2コア34の外形は、第1コア32の外形と実質的に一致する。第2コア34は、コイル200を覆うように形成され、コイル200の端面202、内周面206及び外周面208に接している。換言すると、第2コア34は、磁路を含む平面において、巻窓の第1コア32が接している一辺以外の三辺に接している。
【0021】
第1コア32と第2コア34とは、その透磁率(μ)が異なる。第1コア32が第1透磁率μ1を有するとき、第2コア34は第1透磁率μ1よりも低い第2透磁率μ2を有する。換言すると、第1コア32は高μコアであり、第2コア34は低μコアである。本実施の形態において、第1コア32は圧粉コアであり、第2コア34は注型コアである。ここで、圧粉コアは、軟磁性合金粉末を結合材とともに圧縮成型したものである。また、注型コアは、軟磁性合金粉末及びバインダ(樹脂)等を含むスラリーを硬化させたものである。一般に圧粉コアの方が注型コアよりもその透磁率(μ)を高くすることができる。
【0022】
図1から理解されるように、ケース40は、底部42と、底部42の周縁から上方へ突出する側部44とを有する無蓋のケースである。換言すると、ケース40は、上方に開いた開口部46を有している。ケース40は、アルミニウム等の金属からなる。第1コア32は、少なくともケース40の底部42に接触している。これにより、コイル200において発生した熱は、第1コア32を介して効率よくケース40に伝わる。通常、ケース40は、図示しない放熱機構等に連結される。ただし、本発明はこれに限られない。ケース40は、上方に開いた開口部46に代えて、上下方向と直交する方向に開いた開口部を有していてもよい。例えば、
図2に示されるように、ケース40は横方向に開く開口部46Aを有していてもよい。上下方向と直交する方向に開いた開口部は、導体20の端部22をケース40の外部へ引き出すのに利用することができる。
【0023】
図2を参照すると、開口部46Aには、導体20の端部22が第1コア32及び第2コア34と直接接触しないように、導体20の端部22の周囲を囲うキャップ部材24が設けられている。キャップ部材24は、横方向において、開口部46の外側から第1コア32の外周面又はその近傍まで延びている。第1コア32が外気と接触しないように、第1コア32と開口部46Aとの間には第2コア34が設けられている。しかしながら、キャップ部材24と第2コア34との境界は、ケース40の外部から第1コア32への外気の進入経路となりえる。特に、その進入経路の長さ(最短距離)が5mmより短くなると、外気が第1コア32に到達する可能性が高まる。第1コア32に到達した外気は、第1コア32の表面に形成される黒錆の要因となりえる。
【0024】
図1から理解されるように、コイル200に通電することによって生じる磁束は、主に第1コア32と第2コア34の内部を通過する。即ち、第1コア32と第2コア34とは、磁束が循環する磁路を形成する。
【0025】
コイル200には、20kHz以上の周波数、例えば、30kHzの交流電圧が印加される。換言すると、コイル部品10の駆動周波数は20kHz以上である。このような高い駆動周波数に対して安定した特性を得るため、本発明では、第1コア32の表面抵抗を所定値以上とする。詳しくは、第1コア32の20mm離れた2点間における表面抵抗を、高温放置試験後において5Ω(室温)以上とする。より好ましくは、第1コア32の20mm離れた2点間における表面抵抗は、高温放置試験後において30Ω(室温)以上である。このように第1コア32に所定値以上の表面抵抗を持たせることにより、駆動周波数が高い場合でもコイル部品10の特性変化は抑制される。
【0026】
本実施の形態において、高温放置試験は、JIS(日本産業規格) C 60068-2-2:2010に規定される高温試験方法に準じて行う。詳しくは、高温放置試験は、コイル部品10を導入し試験槽内の温度を200℃に設定し、500時間以上維持することにより行われる。維持時間を1000時間以上、例えば2000時間としてもよいが、表面抵抗の変化は、500時間を超えるころには飽和していることが多い。したがって、維持時間は500時間あれば充分と考えられる。
【0027】
第1コア32の表面抵抗を所定値以上にするため、電気抵抗率の高い磁性粉を用いることができる。第1コア32に用いられる磁性粉として、電気抵抗率が20μΩcm(室温)以上の磁性粉を用いることができる。このような磁性粉として、Fe-Si系合金がある。Fe-Si系合金は、純鉄に比べて高い電気抵抗率を示す。例えば、純鉄の電気抵抗率が10μΩcmであるのに対して、Siを1wt%添加したFe-Si合金の電気抵抗率は約20μΩcmである。また、Siを3wt%添加したFe-Si合金の電気抵抗率は約50μΩcmである。
【0028】
第1コア32の表面抵抗に関連する指標として、第1コア32の初期電気抵抗率がある。第1コア32の初期電気抵抗率が所定値以上であれば、駆動周波数が高い場合でもコイル部品10の特性変化が抑制される。詳しくは、第1コア32の初期電気抵抗率は、1010μΩcm以上であることが好ましい。純鉄を用いた圧粉コアの初期電気抵抗率は、109μΩcm程度であるから、第1コア32はそれより一桁程度以上高い初期電気抵抗率を有することになる。例えば、上述したFe-Si系合金を用いた圧粉コアの初期電気抵抗率は、1012μΩcm以上である。
【0029】
また、第1コア32における黒錆の発生を抑制するため、第1コア32の表面をコーティング材で覆ってもよい。この場合、純鉄を用いた圧粉コアの表面をコーティング材で覆って第1コア32を形成してもよいし、Fe-Si合金等を用いた圧粉コアの表面をコーディング材で覆って第1コア32を形成してもよい。コーティング材の気体透過係数は、100cc(STP)cm/(cm2・sec・cmHg)以下であることが好ましい。このようなコーディング材として、例えば、エポキシ樹脂やポリアミド系樹脂を用いることができる。コーティング材によって第1コア32における黒錆の発生が抑制される結果、高い駆動周波数であってもコイル部品10の特性変化を抑制することができる。
【0030】
第1コア32の表面抵抗を所定値以上にしたことによる効果は、コイル部品10の交流抵抗Racにおけるコイル200自体の成分割合が小さいときに顕著である。換言すると、コイル部品10の交流抵抗Racにおけるコイル200自体の成分割合が大きいときは、本願発明の効果は限定的となる。したがって、コイル部品の交流抵抗Racにおけるコイル200自体の成分割合が小さいことが望ましい。ここで、コイル部品の交流抵抗Racにおけるコイル200自体の成分割合は、コイルのターン数に依存する。つまり、本実施の形態において、コイル200のターン数は少ないことが好ましい。具体的には、コイル200のターン数は30以下であることが好ましい。
【0031】
コイル200のターン数の本発明の効果への影響は、コイル部品10の磁気特性に対するコア30の影響が小さいときは限定的となる。換言すると、コイル部品10の磁気特性に対するコア30の影響が大きいとき、本願発明は特に有効である。具体的には、コイル200自体のインダクタンスに対するコイル部品10のインダクタンスの比が4以上のとき、本願発明は特に有効である。
【0032】
コイル部品10が複数のコイル200を備えており、かつそれらコイル200が互いに磁気結合している場合、コイル部品10が、例えば、二相インターリーブ方式で駆動されると、単相方式で駆動した場合に比べて磁束の変化周波数は二倍になる。本発明は、このような互いに磁気結合している複数のコイル200を備えるコイル部品10に特に有効である
【0033】
以上説明したように、本発明は、駆動周波数が高くても特性変化の小さい安定した特性を持つコイル部品を得ることができる。
【0034】
以上、本発明について、いくつかの実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。例えば、コイル200はエッジワイズコイルであってもよい。また、導体20の断面は、長方形に限られず、円形や正方形であってもよい。
【0035】
本発明の最良の実施の形態について説明したが、当業者には明らかなように、本発明の精神を逸脱しない範囲で実施の形態を変形することが可能であり、そのような実施の形態は本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0036】
10,10A コイル部品
20 導体
22 端部
24 キャップ部材
200 コイル
202,204 端面
206 内周面
208 外周面
30 コア
32 第1コア(圧粉コア)
34 第2コア(注型コア)
40 ケース
42 底部
44 側部
46,46A 開口部