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特許7614325シリコン複合材料の製造方法及びそれを含む負極シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】シリコン複合材料の製造方法及びそれを含む負極シート
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1395 20100101AFI20250107BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250107BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250107BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250107BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250107BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20250107BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20250107BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/66 A
H01M4/134
C01B33/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023503224
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2021134934
(87)【国際公開番号】W WO2022135096
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】202011547186.4
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520145171
【氏名又は名称】上▲海▼瑞浦青▲創▼新能源有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520145160
【氏名又は名称】瑞浦蘭鈞能源股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲語▼蔚
(72)【発明者】
【氏名】侯 ▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲嬋▼
(72)【発明者】
【氏名】王 金▲鑽▼
(72)【発明者】
【氏名】余 招宇
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107658452(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111048764(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110993949(CN,A)
【文献】特開2012-059721(JP,A)
【文献】国際公開第2012/018035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134-4/62
H01M 4/66
C01B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン複合材料を含む負極シートの製造方法であって、前記負極シートが黒鉛をさらに含み、前記シリコン複合材料と黒鉛との粒径比は1:10~1:5であり、
S1、シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、シランカップリング剤、分散剤を有機溶媒に加え、均一に攪拌し、噴霧乾燥して混合粉末を得て、混合粉末を高温で炭化し、ボールミルしてシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得るステップと、
S2、シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を活性化処理し、活性化処理されたシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体とリチウム源とを混合し、ボールミルして混合物を得て、混合物を熱処理して1時間~2時間保温し、熱処理後の混合物を分級して二次粒子、すなわち前記シリコン複合材料を得るステップと、
S3:前記シリコン複合材料に黒鉛、導電性カーボン及びポリアクリル酸エマルジョンを混合してスラリーを調製し、負極集電体に塗布し、ロールプレスした後、真空高温下で乾燥して負極シートを作製するステップと、
を含むことを特徴とする負極シートの製造方法。
【請求項2】
ステップS3において、前記負極集電体が銅箔、ニッケル箔又は銅-ニッケル合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の負極シートの製造方法。
【請求項3】
ステップS3において、前記スラリー中のシリコン複合材料、黒鉛、導電性カーボン及びポリアクリル酸エマルジョンの質量比が1:7:1:1~0.2:7.8:1:1であることを特徴とする請求項1に記載の負極シートの製造方法。
【請求項4】
ステップS1において、前記シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、シランカップリング剤、分散剤、有機溶媒の重量比が、(1~5):(0.01~0.05):(1~5):(0.1~1):100であることを特徴とする請求項1に記載の負極シートの製造方法。
【請求項5】
ステップS2において、前記リチウム源が固相及び/又は液相のリチウム源を含み、前記液相リチウム源は、硫酸リチウム、硝酸リチウム、ハロゲン化リチウムのうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の負極シートの製造方法。
【請求項6】
ステップS2において、前記活性化処理のステップは、活性化剤とシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体とを均一に混合することと、均一に混合された生成物は、乾燥処理および熱処理された後、ガス保護下で室温まで冷却されることを含み、前記活性化剤は、0.1~3MのHF、0.1~1MのHCl、0.1~1Mの硝酸ナトリウム、0.1~1Mの過マンガン酸カリウムのうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の負極シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の方法により製造されたシリコン複合材料を含む負極シートであって、リチウム電池に用いられる負極シート。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一つに記載の負極シートの製造方法に適用されるシリコン複合材料であって、シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、酸化シリコン、酸化リチウム及びリチウムシリケートを含み、カーボンナノチューブとシリコンナノ粒子とが互いに架橋して三次元ネットワーク構造を形成し、酸化シリコン、酸化リチウム及びリチウムシリケートで前記三次元ネットワーク構造を被覆して二次粒子を形成することを特徴とするシリコン複合材料。
【請求項9】
前記二次粒子の平均粒径が2~20μmであることを特徴とする請求項8に記載のシリコン複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基複合材料の技術分野に属し、シリコン複合材料の製造及びそれを含む負極シートに関し、特にシリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料及びそれを含む負極シートの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー車用バッテリーの普及と消費者の航続距離に対する継続要求に伴い、バッテリーのエネルギー密度をさらに高めることがカギとなっている。シリコンはグラム容量が高く(>3000mAh/g)、資源が豊富、対リチウムの電位が低いなどのメリットがあり、黒鉛に代わる人気の選択肢となっている。しかし、シリコンがリチウム挿入で膨張すると急激な体積膨張(約300%)が発生することで、サイクル安定性が悪い。シリコンナノ粒子を酸化シリコンで被覆して二次粒子を形成することで、電解液とシリコンとの直接の接触を遮断し、酸化シリコンによってシリコン粒子の膨張を抑制できることが研究により明らかになった。しかし、サイクル後期には依然として二次粒子が破砕されることにより、シリコンが新たな破砕界面で電解液と直接接触して副反応が生じてサイクルを悪化させることがある。
【0003】
上記の問題を解決するために、特許CN107658452は、カーボンナノチューブによってシリコンナノ粒子間の結合を強化し、二次粒子の安定性を維持するシリコン/カーボンナノチューブ/炭素酸化シリコン複合材料を提案した。しかし、この複合材料中の酸化シリコンは電池が初めてリチウム挿入時にリチウムイオンと反応して不可逆的な副生成物である酸化リチウムとリチウムシリケートを生成する。この副生成物は大量のリチウムを消費し、バッテリーの初効(初回充放電効率)が低すぎる原因となった。そのため、シリコン材料の体積膨張を抑制した上での初効の向上は、早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことに鑑みて、本発明の目的は、シリコン複合材料の製造方法及びそれを含む負極シートを提供することである。本願は、シリコンの高いグラム容量(1グラムあたりの容量)を発揮し、シリコンのリチウム挿入での膨張を抑制し、高い初効を維持するつつ、シリコンの導電性を向上させることができるシリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を提供する。このシリコン複合材料(シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料)と黒鉛を特定の粒径比でスラリー化して負極シートを作製し、この負極シートは容量発現性が高く、導電性に優れ、クーロン効率が高く、体積膨張が小さく、サイクル安定性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、以下の技術方案によって達成される:
【0006】
第1の態様では、本発明は、前記シリコン複合材料を含む負極シートの製造方法であって、前記負極シートが黒鉛をさらに含み、前記シリコン複合材料と黒鉛との粒径比は1:10~1:5であり、
S1、シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、シランカップリング剤、分散剤を有機溶媒に加え、均一に攪拌し、噴霧乾燥して混合粉末を得て、混合粉末を高温で炭化し、ボールミルしてシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得るステップと、
S2、シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を活性化処理し、活性化処理されたシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体とリチウム源とを混合し、ボールミルして混合物を得て、混合物を熱処理し、熱処理後の混合物を分級して前記二次粒子、すなわち前記シリコン複合材料を得るステップと、
S3:前記シリコン複合材料に黒鉛、導電性カーボン及びポリアクリル酸エマルジョンを混合してスラリーを調製し、負極集電体に塗布し、ロールプレスした後、真空高温下で乾燥して負極シートを作製するステップと、を含むことを特徴とする負極シートの製造方法を提供する。
【0007】
本発明の一実施方案として、ステップS1では、前記シランカップリング剤は、ジ(アルキレンイミノ)アルケニルメチルシラン、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン、アリーレンイミノアルケニルジメチルシラン、トリス(アルキレンイミノ)アルケニルシラン、ジアリールアミノアルケニルジメチルシラン、ジ(アリーレンイミノ)アルケニルメチルシラン、ジ(ジアリールアミノ)アルケニルメチルシラン、トリス(アリーレンイミノ)アルケニルシランのいずれかである。
【0008】
本発明の一実施方案として、ステップS1において、前記分散剤は、重量平均分子量800~5000の範囲のポリエチレングリコールである。
【0009】
本発明の一実施方案として、ステップS1において、前記有機溶媒は、四塩化炭素、N-メチルピロリドン、アセトン、ジフェニルアミン、トルエン、ジエタノールの1種又は混合物である。
【0010】
本発明の一実施方案として、ステップS1において、前記高温炭化の温度を300~700℃とし、この温度での炭化時間を3~7時間とする。
【0011】
ステップS1では、前記シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、シランカップリング剤、分散剤、有機溶媒の重量比が、(1~5):(0.01~0.05):(1~5):(0.1~1):100である。
【0012】
本発明の一実施方案として、ステップS2において、活性化処理のステップは、 活性化剤とシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体とを均一に混合し、均一に混合された生成物は、乾燥処理および熱処理された後、ガス保護下で室温まで冷却されるステップを含む。
【0013】
本発明の一実施方案として、前記活性化剤は0.1~3MのHF、0.1~1MのHCl、0.1~1Mの硝酸ナトリウム、0.1~1Mの過マンガン酸カリウムのうちの1種以上を含有する。
【0014】
本発明の一実施方案として、前記乾燥処理及び熱処理において、乾燥温度が60~100℃、乾燥時間が6~10時間であり、熱処理温度が500~800℃であり、熱処理時間が5~10時間である。
【0015】
本発明の一実施方案として、ステップS2において、前記リチウム源は固相及び/又は液相リチウム源を含む。液相リチウム源は、硫酸リチウム、硝酸リチウム、ハロゲン化リチウムのうちの1種以上を含む。
【0016】
本発明の一実施方案として、ステップS2において、前記加熱処理のステップは、真空下で、温度2500~4500℃の条件下で、1時間~2時間、保温される。本発明の系では、カーボンナノチューブの影響により、真空温度が低すぎ、保温時間が短すぎ、リチウム源がシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体と十分に反応できず、生成される複合粒子には、充電グラム容量が高く、初効が低く、サイクルが悪く、膨張が大きいという問題がある。一定の保温時間を設けることで、複合体粒子中のカーボンナノチューブの応力緩和が促進され、より均一に分散することができる。しかし、保温時間が長すぎると、複合体中のシリコン単体の粒径が増加し、リチウム挿入後の局部膨張が大きくなり、粒子破砕サイクルが悪くなる。
【0017】
本発明の一実施方案として、ステップS2では、前記分級のステップは機械的なミル整形処理又はジェットミル処理により表面酸化膜を除去し、ふるいにかける分級処理を行う。
【0018】
本発明の一実施方案として、シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:10~1:5となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。ステップS3では、前記シリコン複合材料と黒鉛との粒径比が1:10~1:5である。この粒径比が1:5よりも低いと、サイクル過程の中でシリコンがリチウム挿入後に粒子が激しく膨張することにより、周囲の黒鉛粒子の配列構造が破壊され、極片のサイクル安定性が低下し、1:10を超えると、シリコン粒子が小さすぎたり、黒鉛粒子が大きすぎ、シリコン粒子が小さすぎることにより、その比表面積が大きすぎ、過剰な電解液が消費され、サイクル後期の加速減衰をもたらし、黒鉛粒子が大きすぎると、極片の導電性が低下する。前記シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子の粒径比の最適範囲は、1:8~1:6であることが好ましい。
【0019】
本発明の一実施方案として、ステップS3において、前記負極集電体は、銅箔、ニッケル箔又は銅-ニッケル合金を含む。
【0020】
本発明の一実施方案として、ステップS3において、前記シリコン複合材料、黒鉛、導電性カーボン及びポリアクリル酸エマルジョン(PAA)の有効質量比の範囲は10%:70%:10%:10%~2%:78%:10%:10%である。すなわち、前記スラリーにおいて、シリコン複合材料、黒鉛、導電性カーボン及びポリアクリル酸エマルジョンの質量比が1:7:1:1~0.2:7.8:1:1である。
【0021】
本発明の一実施方案として、ステップS3において、前記銅箔に塗布される面密度を80g/m2~200g/m2とする。
【0022】
本発明の一実施方案として、ステップS3において、前記ロールプレス密度を1.45g/cc~1.75g/ccとする。
【0023】
本発明の一実施方案として、ステップS3において、前記真空高温の温度範囲を80℃~150℃とする。
【0024】
本発明の一実施方案として、ステップS3において、前記乾燥時間を10時間~48時間とする。
【0025】
第2の態様では、本発明は、前記シリコン複合材料を含む負極シートを提供する。前記負極シートは、上記の方法により製造されることができる。
【0026】
前記負極シートにおけるシリコン複合材料と黒鉛との特定の粒径比は、シリコンD50の粒径と黒鉛D50の粒径との粒径比であって、1:10~1:5である。
【0027】
前記負極シートは、リチウム電池に用いられる。
【0028】
第3の態様では、本発明は、シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、酸化シリコン、酸化リチウム及びリチウムシリケートを含み、カーボンナノチューブとシリコンナノ粒子とが互いに架橋して三次元ネットワーク構造を形成し、前記三次元ネットワーク構造を酸化シリコン、酸化リチウム及びリチウムシリケートで被覆して二次粒子を形成するシリコン複合材料を提供する。
【0029】
前記二次粒子において、シリコンナノ粒子は、酸化シリコン、酸化リチウム及びリチウムシリケートで被覆されているつつ、カーボンナノチューブとの接続を維持している。シリコンナノ粒子がサイクル膨張する際に、酸化シリコン、酸化リチウム、リチウムシリケートのコーティング下で緩衝され、サイクル膨張が抑制されると同時に、カーボンナノチューブがさらに拘束され、シリコンナノ粒子間の分離が回避される。
【0030】
本発明の一実施方案において、前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブである。前記単層カーボンナノチューブの平均直径は0.5~5nmであり、長さは10nm~200μmであることが好ましい。前記多層カーボンナノチューブの平均直径が5~20nmであり、長さが10nm~200μmであることが好ましい。二次粒子の構造的安定性を維持することに加えて、イオン伝導経路を提供し、導電性を向上させるための従来のシリコン-酸素粒子の炭素コーティングのステップを省略することができる。
【0031】
本発明の一実施方案として、前記シリコンナノ粒子の平均粒子径は10~100nmである。
【0032】
本発明の一実施方案として、前記酸化シリコンの化学式はSiOxであり、ここで、1≦x≦2であり、ここで、xは本化学式のSiOxの独立変数である。
【0033】
前記リチウムシリケートはリチウムと酸化シリコンとの反応生成物であり、Li4SiO4、Li2SiO3及びLi2Si2O5の混合物である。
【0034】
前記酸化リチウムは、化学式がLi2Oであり、リチウムと酸化シリコンとの反応生成物である。
【0035】
本発明の一実施方案として、前記シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料が二次粒子であり、当該二次粒子の平均粒子径が2~20μmである当該粒径は2μmより小さく、粒子の比表面積が大きすぎて、サイクル中に過剰な電解液を消費することにより、後期サイクルの加速減衰を引き起こす。粒径は20μmより高く、粒子の膨張による体積変化が大きすぎて、負極シート構造を破壊する。さらに好ましくは、平均粒径が5~10μmである。
【0036】
前記シリコン複合材料は、前記シリコン複合材料を含有する負極シートの製造方法のステップS1、S2により製造される。したがって、
【0037】
第4の態様では、本発明は、
S1、シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、シランカップリング剤、分散剤を有機溶媒に加え、均一に攪拌し、噴霧乾燥して混合粉末を得て、混合粉末を高温で炭化し、ボールミルしてシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得るステップと、
S2、シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を活性化処理し、活性化処理されたシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体とリチウム源とを混合し、ボールミルして混合物を得て、混合物を熱処理し、熱処理後の混合物を分級して前記二次粒子、すなわち前記シリコン複合材料を得るステップと、を含むシリコン複合材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0038】
従来技術と比較して、本発明は以下のような有益な効果を有する:
1)本発明では、シリコンナノ粒子、カーボンナノチューブ、シリカを分散乾燥させ、高温炭化、ボールミルによりシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を得て、リチウム源と混合して、ボールミルでかき混ぜ、熱処理、分級ふるいにより、ナノシリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料二次粒子を得て、これに黒鉛を特定の粒径比で混合して負極シートを作製し、シリコンの高いグラム容量を十分に発揮し、導電性を向上させ、シリコン酸素とリチウムとの不可逆的な副反応を早期に発生させることにより、電池における初回のクーロン効率を確保した;
2)ナノシリコンのリチウム挿入での体積膨張はシリコン二次粒子の中で抑制されていると同時に黒鉛粒子もシリコン二次粒子の膨張を緩衝する役割を果たすことにより、この負極シートの体積膨張は著しく低減している;
3)本発明により製造された複合材料からなる電池は、サイクル安定性に優れ、体積膨張が小さく、レート性能に優れており、自動車分野に応用できる;
4)本発明は、プロセスが簡単であり、CVDコーティング炭素層ステップを省略し、制御が容易で再現性に優れ、自動車用電池のエネルギー密度を向上させるための新しい解決策を提供する。
【0039】
本発明の特徴、性能は、以下の実施例およびその添付図面によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施例1のシリコン複合材料の二次粒子構造の概略図である。
図2】実施例1のシリコン複合材料の表面SEM後方散乱(backscatter )図である。
図3】実施例1の負極シートのロールプレス後のSEM後方散乱図である。
図4】対比例2の負極シートのロールプレス後のSEM後方散乱図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ここで、1はシリコンナノ粒子、2はカーボンナノチューブ、3は酸化シリコン、酸化リチウム、リチウムシリケートである。
【0042】
以下、実施例に関連して本発明を詳細に説明する。以下の実施例は、当業者が本発明をさらに理解することを容易にするが、いかなる形態でも本発明を限定するものではない。なお、当業者にとっては、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの調整および改良を行うことができる。これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0043】
実施例1
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの有機溶媒N-メチルピロリドンに、ナノシリコン1g、カーボンナノチューブ0.05g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1g、分子量900のポリエチレングリコール0.1gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を600℃で5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0044】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.15M HCl、濃度0.05M HFと濃度0.05M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で10時間均一に混合し、その後90℃で8時間乾燥し、550℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硫酸リチウムと50wt%の硝酸リチウムの混合液)とを室温で5時間均一に混合攪拌した後、真空下で3000℃で1時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末を機械的なミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン二次粒子とも呼ばれるシリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。図1は、本実施例が提供するシリコン複合材料の二次粒子構造の概略図であり、カーボンナノチューブとシリコンナノイオンとが互いに架橋して三次元構造を形成し、酸化シリコン、酸化リチウム及びリチウムシリケートが三次元ネットワーク構造を被覆して二次粒子を形成する。図2は本実施例で提供されるシリコン複合材料の表面SEM後方散乱図であり、後方散乱電子イメージングでは、粒子が光り、表面がすべてシリコン粒子であることが示された。この粒子は円形であり、粒径は10μm未満であった。
【0045】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:8(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は3.1μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。図3は、本実施例で提供された負極シートのロールプレス後のSEM後方散乱図である。黒鉛粒子の隙間にシリコン二次粒子が位置し、シリコン粒子がリチウム挿入で膨張すると、周囲の黒鉛粒子が一定の拘束力を与え、体積膨張を抑制することができる。同時に、この粒子の体積膨張は黒鉛粒子の再配置を招くこともなく、サイクル過程における極片の構造安定性を保証する。
【0046】
実施例2
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの有機溶媒アセトンに、ナノシリコン1.5g、カーボンナノチューブ0.03g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1.5g、分子量900のポリエチレングリコール0.2gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を500℃で6時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0047】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.25M HCl、濃度0.02M HFと濃度0.02M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で8時間均一に混合し、その後80℃で10時間乾燥し、500℃で7時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硫酸リチウムと50wt%の硝酸リチウムの混合液)とを室温で6時間均一に混合攪拌した後、真空下で3500℃で1.5時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末をジェットミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0048】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:7(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は3.5μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。
【0049】
実施例3
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの四塩化炭素に、ナノシリコン2g、カーボンナノチューブ0.02g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1.8g、分子量900のポリエチレングリコール0.6gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を550℃で5.5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0050】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.2M HCl、濃度0.03M HFと濃度0.03M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で9時間均一に混合し、その後85℃で9時間乾燥し、600℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硝酸リチウムと50wt%のハロゲン化リチウムの混合液)とを室温で7時間均一に混合攪拌した後、真空下で2500℃で2時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末をジェットミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0051】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:6(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は6.1μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。
【0052】
実施例4
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの有機溶媒N-メチルピロリドンに、ナノシリコン1g、カーボンナノチューブ0.05g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1g、分子量900のポリエチレングリコール0.1gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を600℃で5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0053】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.15M HCl、濃度0.05M HFと濃度0.05M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で10時間均一に混合し、その後90℃で8時間乾燥し、550℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硫酸リチウムと50wt%の硝酸リチウムの混合液)とを室温で5時間均一に混合攪拌した後、真空下で3000℃で1時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末を機械的なミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン二次粒子とも呼ばれるシリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0054】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:8(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は3.1μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比6:74:10:10の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。
【0055】
実施例5
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの有機溶媒N-メチルピロリドンに、ナノシリコン1g、カーボンナノチューブ0.05g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1g、分子量900のポリエチレングリコール0.1gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を600℃で5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0056】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.15M HCl、濃度0.05M HFと濃度0.05M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で10時間均一に混合し、その後90℃で8時間乾燥し、550℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硫酸リチウムと50wt%の硝酸リチウムの混合液)とを室温で5時間均一に混合攪拌した後、真空下で3000℃で1時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末を機械的なミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン二次粒子とも呼ばれるシリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0057】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:8(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は3.1μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比2:78:10:10の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。
【0058】
比較例1
(1)シリコン複合材料を作製する:
100gの有機溶媒アセトンに、ナノシリコン1.5g、カーボンナノチューブ0.03g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1.5g、分子量900のポリエチレングリコール0.2gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を500℃で6時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0059】
(2)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体と黒鉛粒子との粒径比が1:7(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径が3.5μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径が24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。
【0060】
比較例2
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの四塩化炭素に、ナノシリコン2g、カーボンナノチューブ0.02g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1.8g、分子量900のポリエチレングリコール0.6gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を550℃で5.5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0061】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.2M HCl、濃度0.03M HFと濃度0.03M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で9時間均一に混合し、その後85℃で9時間乾燥し、600℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硝酸リチウムと50wt%のハロゲン化リチウムの混合液)とを室温で7時間均一に混合攪拌した後、真空下で2500℃で2時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末をジェットミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0062】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:3(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は8.1μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。図4は、本比較例で提供された負極シートのロールプレス後のSEM後方散乱図である。図中には比較的大きな粒径(約8μm)のシリコン二次粒子があり、サイクル過程でこのシリコン粒子は急激に膨張し(約200%の体積膨張率)、周囲の黒鉛粒子はその体積膨張を効果的に抑制できず、この急激な膨張によりその周囲の黒鉛粒子の分布が変化し、従来の極片配列構造が破壊され、導電ネットワークが損傷する。
【0063】
比較例3
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの四塩化炭素に、ナノシリコン2g、カーボンナノチューブ0.02g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1.8g、分子量900のポリエチレングリコール0.6gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を550℃で5.5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0064】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.2M HCl、濃度0.03M HFと濃度0.03M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で9時間均一に混合し、その後85℃で9時間乾燥し、600℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硝酸リチウムと50wt%のハロゲン化リチウムの混合液)とを室温で7時間均一に混合攪拌した後、真空下で2500℃で2時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末をジェットミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0065】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:11(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は2.2μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した
【0066】
比較例4
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を作製する:
100gの四塩化炭素に、ナノシリコン2g、カーボンナノチューブ0.02g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1.8g、分子量900のポリエチレングリコール0.6gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を550℃で5.5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0067】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.2M HCl、濃度0.03M HFと濃度0.03M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で9時間均一に混合し、その後85℃で9時間乾燥し、600℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硝酸リチウムと50wt%のハロゲン化リチウムの混合液)とを室温で7時間均一に混合攪拌した後、真空下で2,000℃で0.5時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末をジェットミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0068】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:6(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は6.1μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。
【0069】
比較例5
(1)ナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体の作製:
100gの四塩化炭素に、ナノシリコン2g、カーボンナノチューブ0.02g、アルキレンイミノアルケニルジメチルシラン1.8g、分子量900のポリエチレングリコール0.6gを順次添加して均一に攪拌混合し、噴霧乾燥して混合粉体を得て、この混合粉体を550℃で5.5時間高温炭化し、ボールミルしてナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体を得る。
【0070】
(2)シリコン/カーボンナノチューブ/シリコン-酸素複合体にリチウムを補給する:
活性化剤(濃度0.2M HCl、濃度0.03M HFと濃度0.03M硝酸ナトリウムの混合物)とナノシリコン/カーボンナノチューブ/シリコン酸素複合体を室温で9時間均一に混合し、その後85℃で9時間乾燥し、600℃で6時間熱処理し、最後にArガス保護下で室温まで冷却した。冷却により得られた粉末とリチウム源(50wt%の硝酸リチウムと50wt%のハロゲン化リチウムの混合液)とを室温で7時間均一に混合攪拌した後、真空下で3500℃で5時間加熱し、Arガス保護下で室温まで冷却する。得られた粉末をジェットミル整形処理により表面酸化膜を除去した後、ふるいにかける分級処理して、シリコン/カーボンナノチューブ/酸化シリコン/酸化リチウム/リチウムシリケート複合材料を得る。
【0071】
(3)シリコン複合材料を負極シートとして作製する:
シリコン二次粒子の粒径と黒鉛粒子との粒径比が1:6(体積数50%のシリコン二次粒子の粒径は6.1μm、体積数50%の黒鉛粒子の粒径は24.2μm)となるように、シリコン複合材料と黒鉛とを分級する。シリコン複合材料、黒鉛、導電性炭素と0.6%ポリアクリル酸エマルジョン(PAA)を有効質量比1:7:1:1の割合で混合してスラリーを調製し、これを面密度100g/m2で厚さ10μmの銅箔に塗布し、ロールプレス密度1.6g/ccになるようにロールプレスし、真空120℃で24時間乾燥して負極シートを作製した。
【0072】
実施例6、アプリケーション性能の検出:
上記の各実施例及び比較例で作製された負極シートとを、電池組立および試験に使用されるステップは以下のようになる:
【0073】
対電極は純度99.9%の金属リチウム片であり、電解質は1.1molヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)のエチレンカーボネート(EC)/メチルエチルカーボネート(EMC)/ジエチルカーボネート(DEC)(体積比3:5:2)溶液である。負極シート、金属リチウムシート、電池ケース、セパレータを乾燥させた後、アルゴンガスで保護されたグローブボックスに電解液を添加してボタン型リチウムイオン電池を組み立てる。前記電池の充放電サイクル試験を行い、充電電圧を2.0Vに、放電電圧を0.005Vにカットオフし、充放電サイクル倍率を0.1Cとする。初回のリチウム挿入容量とリチウム脱離容量、50サイクル後のリチウム脱離容量のデータを表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1から分かるように、本発明の実施例1-3で作製されたシリコン複合材料は、高いクーロン効率、低い体積膨張、良好なサイクル特性を示す。
【0076】
以上、本発明の具体的な実施例について説明した。なお、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、当業者は請求項の範囲内で様々な変形または修正を行うことができ、それは本発明の本質に影響を及ぼさない。
【符号の説明】
【0077】
1 シリコンナノ粒子
2 カーボンナノチューブ
3 酸化シリコン、酸化リチウム、リチウムシリケート
図1
図2
図3
図4