(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】教示工具または作業者の手を用いて教示点を設定する教示装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20250107BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 H
(21)【出願番号】P 2023505554
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009812
(87)【国際公開番号】W WO2022191148
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021039318
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】内海 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】天方 康裕
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136275(JP,A)
【文献】特開2011-104759(JP,A)
【文献】特開平8-1563(JP,A)
【文献】特開2011-110620(JP,A)
【文献】特開平5-23983(JP,A)
【文献】特開平7-129231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットおよび作業ツールを含むロボット装置の教示点を設定する教示装置であって、
教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢を示すための教示工具または作業者の手を撮像する3次元センサと、
前記3次元センサからの信号を処理する処理装置とを備え、
前記処理装置は、前記3次元センサの出力に基づいて、教示工具または作業者の手における特徴部位の位置を検出する特徴部位検出部と、
作業者が教示工具または手を移動した時に、特徴部位に対する前記3次元センサの位置および姿勢を維持するように、ロボットの位置および姿勢を変更する指令を生成する移動指令生成部と、
ロボット装置が作業を行う時のロボットの位置および姿勢に対応するように作業者が教示工具または手を配置している状態で、前記特徴部位検出部により検出された特徴部位の位置に基づいて、教示工具または作業者の手に予め設定された補助座標系の位置および姿勢を算出する算出部と、
前記算出部にて算出された補助座標系の位置および姿勢に基づいて、教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢を設定する設定部とを含む、教示装置。
【請求項2】
教示工具を備え、
教示工具は、作業者が持つための把持部と、特徴部位を有する指定部とを有し、
前記指定部は、前記3次元センサの出力に基づいて前記指定部の位置および姿勢を検出できる立体形状を有する、請求項1に記載の教示装置。
【請求項3】
前記特徴部位検出部にて検出された特徴部位の位置に基づいて、教示工具または作業者の手に対して補助座標系を設定する座標系設定部を備え、
前記座標系設定部は、教示工具または作業者の手に定められた補助座標系の原点から3次元カメラに向かう方向を補助座標系の1つの座標軸に設定する、請求項1または2に記載の教示装置。
【請求項4】
前記処理装置は、前記3次元センサの出力に基づいて、教示工具の予め定められた指令動作を検出する動作検出部を含み、
前記動作検出部は、指令動作を検出した時に、指令動作に対応する制御を実施する、請求項1から3のいずれか一項に記載の教示装置。
【請求項5】
前記特徴部位検出部は、作業者による教示工具または手の移動と共に、予め定められた間隔ごとに特徴部位の位置を検出し、
前記算出部は、前記間隔ごとに検出された特徴部位の位置に基づいて、前記補助座標系の位置および姿勢を算出し、
前記設定部は、前記間隔に対応するように、教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢を設定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の教示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教示工具または作業者の手を用いて教示点を設定する教示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置は、ロボットと、ロボットに取り付けられた作業ツールと、ロボットを制御する制御装置とを備える。制御装置は、作業プログラムに基づいてロボットおよび作業ツールを駆動する。作業者は、ロボットの位置および姿勢を定めるために、予め教示点を教示することができる。作業プログラムには、教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢の情報が含まれる。
【0003】
従来の技術において、作業者が教示操作盤を操作して、作業ツールが所望の位置および姿勢になるようにロボットの位置および姿勢を変更する。そして、ロボットの位置および姿勢が所望の位置および姿勢になったときに、教示点を設定することができる。
【0004】
また、作業ツールの位置および姿勢を示すための教示用の工具を用いて、教示作業を行う方法が知られている。この方法では、所定の位置に固定されたステレオカメラにて教示用の工具を撮像する。ステレオカメラにて撮像された画像に基づいて、教示用の工具の位置および姿勢を検出する。そして、教示用の工具の位置および姿勢に基づいて、ロボットの位置および姿勢を設定する(例えば、特開2014-136275号公報および特開2011-104759号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-136275号公報
【文献】特開2011-104759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業者が教示点を設定する場合に、作業者は、教示操作盤を操作して教示点ごとにロボットの位置および姿勢を変更する必要がある。このために、教示点の設定のために長い作業時間がかかるという問題がある。
【0007】
例えば、ワークの搬送を行うロボット装置において、教示点を設定する場合には、ロボットの位置および姿勢を手動にて調整する必要が有る。教示点は多く設定しなければないために作業時間が長くなるという問題がある。特に、ワークを移動する経路が曲線を含む場合には、所望の経路に沿ってワークを移動するために、多くの教示点を設定する必要が有る。ワークの搬送以外の作業を行うロボット装置についても、作業プログラムを生成するために多くの教示点を設定する場合が有り、作業時間が長くなるという問題がある。
【0008】
また、作業ツールが筐体等にて囲まれた空間または狭い領域に侵入して作業を行う場合がある。このような場合に、ロボットの教示点を設定する時に、作業者は作業ツールが見にくくなる場合が有る。この結果、作業ツールの位置および姿勢を確認することが難しい場合が有る。
【0009】
例えば、工作機械は切削液の飛散を防止するための加工室を構成する筐体を備える。加工室の内部にロボットにてワークを配置する場合がある。このようなロボット装置に対して教示点を設定する時に、作業者は筐体の内部に侵入した作業ツールの位置および姿勢を確認することが難しいという問題がある。このために、教示点の設定に長い時間がかかるという問題が有る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、ロボットおよび作業ツールを含むロボット装置の教示点を設定する教示装置である。教示装置は、教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢を示すための教示工具または作業者の手を撮像する3次元センサと、3次元センサからの信号を処理する処理装置とを備える。処理装置は、3次元センサの出力に基づいて、教示工具または作業者の手における特徴部位の位置を検出する特徴部位検出部を含む。処理装置は、作業者が教示工具または手を移動した時に、特徴部位に対する3次元センサの位置および姿勢を維持するように、ロボットの位置および姿勢を変更する指令を生成する移動指令生成部を含む。処理装置は、ロボット装置が作業を行う時のロボットの位置および姿勢に対応するように作業者が教示工具または手を配置している状態で、特徴部位検出部により検出された特徴部位の位置に基づいて、教示工具または作業者の手に予め設定された補助座標系の位置および姿勢を算出する算出部を含む。処理装置は、算出部にて算出された補助座標系の位置および姿勢に基づいて、教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢を設定する設定部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の態様によれば、短時間に教示作業を行うことができる教示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態における第1のロボット装置がワークの搬送を開始する時の斜視図である。
【
図2】実施の形態における第1のロボット装置のブロック図である。
【
図3】第1のロボット装置がワークの搬送を終了した時の斜視図である。
【
図4】ワークを搬送する時のロボットの位置の移動経路を説明する斜視図である。
【
図5】実施の形態における第1の教示工具の斜視図である。
【
図6】補助座標系を設定するときの教示工具およびカメラの斜視図である。
【
図7】実施の形態における経路モードで教示点を設定するときの教示工具、カメラ、およびワークの斜視図である。
【
図8】1つの教示点を設定する作業のフローチャートである。
【
図9】実施の形態における点モードで教示点を設定するときの教示工具、カメラ、およびワークの斜視図である。
【
図10】教示工具の第1の指令動作を説明する教示工具およびカメラの斜視図である。
【
図11】教示工具の第2の指令動作を説明する教示工具およびカメラの斜視図である。
【
図12】実施の形態における第2の教示工具の斜視図である。
【
図14】実施の形態における第2のロボット装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から
図14を参照して、実施の形態における教示装置について説明する。本実施の形態においては、ワークを開始位置から目標位置まで搬送するロボットを備えるロボット装置を例示して説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態における第1のロボット装置の斜視図である。
図2は、本実施の形態におけるロボット装置のブロック図である。
図1は、ワーク81の搬送を開始する時の斜視図である。
図1および
図2を参照して、ロボット装置8は、作業ツールとしてのハンド2と、ハンド2を移動するロボット1とを備える。ロボット装置8は、ワーク81を搬送するコンベヤ84を備える。第1のロボット装置8は、矢印91に示すように直方体状のワーク81を棚80からコンベヤ84に搬送する。
【0015】
図3は、本実施の形態における第1のロボット装置の他の斜視図である。
図3は、ワーク81の搬送を終了した時の斜視図である。ロボット1によるワークの搬送が終了すると、コンベヤ84は、矢印92に示すようにワーク81を所定の位置まで移動する。
【0016】
図1から
図3を参照して、本実施の形態のロボット1は、複数の関節部を含む多関節ロボットである。ロボット1は、ベース部14と、ベース部14に支持された旋回ベース13とを含む。旋回ベース13は、ベース部14に対して回転する。ロボット1は、上部アーム11および下部アーム12を含む。下部アーム12は、関節部を介して旋回ベース13に支持されている。上部アーム11は、関節部を介して下部アーム12に支持されている。ロボット1は、上部アーム11の端部に連結されているリスト15を含む。リスト15は、関節部を介して上部アーム11に支持されている。リスト15は、回転するように形成されたフランジ16を含む。
【0017】
ハンド2は、ワーク81を把持するように形成されている。本実施の形態のハンド2は、互いに対向する方向に移動する2個の爪部2aを有する。ハンド2は、リスト15のフランジ16に固定されている。なお、作業ツールは、ハンドに限られずに、ロボット装置が行う作業に応じた任意の装置を採用することができる。例えば、接着剤を塗布する場合には、作業ツールとしてディスペンサ等の作業ツールを採用することができる。
【0018】
ロボット1は、上部アーム11等のロボット1の構成部材を駆動するロボット駆動装置を含む。本実施の形態のロボット駆動装置は、上部アーム11、下部アーム12、旋回ベース13、およびリスト15を駆動するための複数のロボット駆動モータ22を含む。ハンド2は、ハンド2を駆動するためのハンド駆動装置を含む。本実施の形態のハンド駆動装置は、爪部2aを開いたり閉じたりするためのハンド駆動モータ24を含む。
【0019】
ロボット装置8は、ロボット1およびハンド2を制御するロボット制御装置4を備える。ロボット制御装置4は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)を有する演算処理装置(コンピュータ)を含む。演算処理装置は、CPUにバスを介して接続されたRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を有する。
【0020】
ロボット制御装置4は、作業者がロボット装置8を手動にて操作する操作盤としての教示操作盤3を含む。教示操作盤3は、ロボット1およびハンド2に関する情報を入力する入力部3aを含む。入力部3aは、キーボードおよびダイヤルなどの部材により構成されている。教示操作盤3は、ロボット装置8の制御に関する情報を表示する表示部3bを含む。表示部3bは、液晶表示パネル等の表示パネルにて構成されている。なお、表示部3bは、タッチパネル方式の表示パネルを含んでいても構わない。この場合には、表示部3bは、入力部3aの機能を有する。
【0021】
ロボット制御装置4は、動作プログラム40に従ってロボット1およびハンド2を駆動する。本実施の形態の動作プログラム40は、ワークの搬送などの予め定められた作業を実施するための作業プログラム41を含む。ロボット制御装置4は、ロボット装置8にて実際の作業を行う場合に、作業プログラム41に定められた教示点に基づいてロボット1の位置および姿勢を変更する。ロボット制御装置4は、ロボット装置8の制御に関する情報を記憶する記憶部42を含む。記憶部42は、情報の記憶が可能で非一時的な記憶媒体にて構成されることができる。例えば、記憶部42は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気記憶媒体、または光記憶媒体等の記憶媒体にて構成されることができる。動作プログラム40は、記憶部42に記憶される。作業プログラム41には、ロボット1を駆動するための教示点の位置および教示点におけるロボット1の姿勢が定められている。
【0022】
ロボット制御装置4は、ロボット1およびハンド2の動作指令を送出する動作制御部43を含む。動作制御部43は、動作プログラム40に従って駆動するプロセッサに相当する。プロセッサは、動作プログラム40を読み込んで、動作プログラム40に定められた制御を実施することにより、動作制御部43として機能する。また、プロセッサは、処理部51からの指令に基づいてロボット1およびハンド2を駆動することにより、動作制御部43として機能する。
【0023】
動作制御部43は、ロボット1を駆動するための動作指令をロボット駆動部45に送出する。ロボット駆動部45は、ロボット駆動モータ22を駆動する電気回路を含む。ロボット駆動部45は、動作指令に基づいてロボット駆動モータ22に電気を供給する。また、動作制御部43は、作業プログラム41に基づいてハンド2を駆動する動作指令をハンド駆動部44に送出する。ハンド駆動部44は、動作指令に基づいてハンド駆動モータ24に電気を供給する。
【0024】
ロボット1は、ロボット1の位置および姿勢を検出するための状態検出器を含む。本実施の形態における状態検出器は、ロボット駆動モータ22に取り付けられた位置検出器23を含む。複数の位置検出器23の出力に基づいて、ロボット1の位置および姿勢が検出される。
【0025】
本実施の形態のロボット装置8には、ワールド座標系71が設定されている。第1のロボット装置8においては、ロボット1のベース部14にワールド座標系71の原点が配置されている。ワールド座標系71は、ロボット装置8の基準座標系とも称される。ワールド座標系71は、原点の位置が固定され、更に、座標軸の向きが固定されている座標系である。ワールド座標系71は、座標軸として、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を有する。また、X軸の周りの座標軸としてW軸が設定される。Y軸の周りの座標軸としてP軸が設定される。Z軸の周りの座標軸としてR軸が設定される。
【0026】
本実施の形態では、作業ツールの任意の位置に設定された原点を有するツール座標系が設定されている。本実施の形態のツール座標系72の原点は、ツール先端点に設定されている。本実施の形態のツール先端点の設定では、2つの爪部2aの先端において高さ方向の中央点を設定する。そして、2つの爪部2aの中央点同士を結んだ直線における中点をツール先端点に設定している。ツール座標系72は、座標軸として、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を有する。また、ツール座標系72は、X軸の周りのW軸、Y軸の周りのP軸、およびZ軸の周りのR軸を有する。
【0027】
ロボット1の位置および姿勢が変化すると、ツール座標系72の原点の位置および向きが変化する。例えば、ロボット1の位置は、ツール先端点の位置(ツール座標系72の原点の位置)に対応する。また、ロボット1の姿勢は、ワールド座標系71に対するツール座標系72の向きに対応する。
【0028】
本実施の形態のロボット装置8は、ロボット装置8の教示点を設定する教示装置を備える。本実施の形態では、ロボット制御装置4が教示装置として機能する。教示装置は、教示工具または作業者の手を撮像する3次元センサとしてのカメラ27を備える。本実施の形態のカメラ27は、2個の2次元カメラにて撮像される画像に基づいて対象物の3次元の位置を検出することができるステレオカメラである。
【0029】
一方の2次元カメラにて撮像された画像と他方の2次元カメラにて撮像された画像とにおける物体の位置の視差を算出する。この視差に基づいて、物体の表面に設定される測定点におけるステレオカメラから物体までの距離が算出される。更に、カメラ27の位置および姿勢に基づいて測定点の3次元的な位置を算出することができる。
【0030】
3次元センサとしては、ステレオカメラに限られず、作業ツールの位置および姿勢を指定する物(教示工具または作業者の手)の特徴部位を検出可能な任意のセンサを用いることができる。例えば、3次元センサとしては、光飛行時間方式により距離画像を撮像するTOF(Time of Flight)カメラなどを採用することができる。
【0031】
本実施の形態におけるカメラ27は、ロボット1に支持されている。カメラ27は、ハンド2に支持部材28を介して固定されている。カメラ27は、ハンド2と共に位置および姿勢が変化する。カメラ27は、予め定められた撮像範囲にて物体の表面の測定点の位置情報を取得することができる。例えば、カメラ27は、3次元の測定点の位置情報に基づいて、撮像範囲の距離画像を撮像することができる。
【0032】
本実施の形態の教示装置は、カメラ27からの信号を処理する処理装置を備える。ロボット制御装置4は、カメラ27の出力を処理して教示点を設定する処理部51を含む。本実施の形態では、ロボット制御装置4の処理部51が処理装置として機能する。また、処理部51は、カメラ27に対して撮像する指令を送出する。本実施の形態の動作プログラム40は、教示点を設定するための制御を実施する設定プログラム46を含む。処理装置は、設定プログラム46に基づいて駆動する。設定プログラム46は、予め作成されて記憶部42に記憶されている。
【0033】
処理部51は、カメラ27の出力に基づいて、教示工具または作業者の手における特徴部位の位置を検出する特徴部位検出部52を含む。処理部51は、教示工具または作業者の手に補助座標系を設定する座標系設定部53を含む。処理部51は、特徴部位に対するカメラ27の位置および姿勢を維持するように、ロボット1の位置および姿勢を変更する指令を生成する移動指令生成部54を含む。
【0034】
教示工具または作業者の手には、補助座標系が予め設定されている。処理部51は、特徴部位検出部52により検出された特徴部位の位置に基づいて、補助座標系の位置および姿勢を算出する算出部55を含む。処理部51は、算出部55にて算出された補助座標系の位置および姿勢に基づいて、教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢の情報を含むように教示点を設定する教示点設定部としての設定部56を含む。
【0035】
処理部51、特徴部位検出部52、座標系設定部53、移動指令生成部54、算出部55、および設定部56のそれぞれのユニットは、設定プログラム46に従って駆動するプロセッサに相当する。プロセッサが設定プログラム46を読み込んで、設定プログラム46に定められた制御を実施することにより、それぞれのユニットとして機能する。
【0036】
図4に、本実施の形態におけるロボットの移動経路を説明する斜視図を示す。ロボット1の位置は、移動経路98に沿って移動する。すなわち、ロボット1のツール先端点は移動経路98に沿って移動する。ロボット1の位置が移動するとともに、ロボット1の姿勢も変化する。本実施の形態では、棚80に配置されたワーク81をハンド2にて把持できるようにロボット1の位置および姿勢が変化する。ハンド2がワーク81を把持する。次に、ロボット1は、ハンド2の姿勢を維持しながらワーク81を棚80から引き出す動作を実施する。次に、ロボット1は、ハンド2の位置および姿勢を変更しながらワーク81をコンベヤ84に載置する動作を実施する。
【0037】
移動経路98は、複数の教示点に基づいて定められる。
図4に示す例では、ワーク81の搬送を開始する開始教示点TPSおよびワーク81の搬送を終了する終了教示点TPEが示されている。開始教示点TPSと終了教示点TPEとの間には、複数の教示点TPが設定されている。本実施の形態の教示装置では、このようなロボット1の教示点を設定する。
【0038】
図5に、本実施の形態における第1の教示工具の斜視図を示す。本実施の形態においては、作業者は、教示工具31を用いてハンド2の位置および姿勢を指定する。ハンド2の位置および姿勢は、ロボット1の位置および姿勢に対応する。本実施の形態では、ロボット1の位置はツール先端点の位置である。すなわち、作業者は、教示工具31を用いてツール先端点の位置およびロボット1の姿勢を指定する。
【0039】
第1の教示工具31は、細長く伸びる形状を有する。教示工具31は、作業者が持つための把持部32と、把持部32から延びる支持部33とを有する。教示工具31は、ハンド2の位置および姿勢を示す形状を有する指定部34を有する。ロボット制御装置4の処理部51は、カメラ27の出力に基づいて指定部34の位置および姿勢を検出する。そして、処理部51は、指定部34の位置および姿勢に基づいて、教示点の位置および教示点におけるロボット1の姿勢を設定する。指定部34は、支持部33の先端に配置されている。
【0040】
指定部34は、カメラ27の出力に基づいて、指定部34の位置および姿勢を検出できる立体形状を有する。第1の教示工具31の指定部34は、互いに垂直な方向に延びる棒状部34a,34b,34cを有する。棒状部34aの先端には、円錐形の特徴部位34dが形成されている。棒状部34bの先端の端面は、特徴部位34eを構成する。棒状部34cの先端には、球の形状を有する特徴部位34fが形成されている。このように、棒状部34a,34b,34cの先端には、互いに形状の異なる特徴部位34d,34e,34fが形成されている。また、棒状部34a,34b,34cが互いに交わる基準部は、特徴部位34gを構成する。
【0041】
図6に、教示工具に対して補助座標系を設定するときの第1の教示工具およびカメラの斜視図を示す。
図2および
図6を参照して、本実施の形態における処理部51は、教示工具31の特徴部位34d~34gの位置を検出する特徴部位検出部52を有する。処理部51は、教示工具31に対して補助座標系73を設定する座標系設定部53を含む。
【0042】
作業者は、教示工具31の指定部34を撮像可能なようにロボット1の位置および姿勢を、教示操作盤3を用いて手動にて変更する。作業者は、カメラ27の撮像範囲27aの内部に、教示工具31の指定部34が配置されるように教示工具31を配置する。作業者は、それぞれの特徴部位34d~34gが撮像可能なように、教示工具31の位置および姿勢を変更する。カメラ27は、指定部34を撮像する。
【0043】
次に、特徴部位検出部52は、教示工具31の特徴部位34d~34gの位置を検出する。本実施の形態においては、教示工具31の指定部34を、様々な角度および様々な距離から撮像した距離画像が予め記憶部42に記憶されている。この画像は、基準画像と称される。
【0044】
特徴部位検出部52は、複数の基準画像からカメラ27にて実際に撮像した画像に最も適合する基準画像を選定する。特徴部位検出部52は、カメラ27にて実際に撮像した画像と、基準画像とをパターンマッチングにて比較することにより、特徴部位34d~34gを検出する。次に、特徴部位検出部52は、実際に撮像した画像における特徴部位34d~34gの位置を特定する。特徴部位検出部52は、それぞれの特徴部位34d~34gの3次元点の位置情報を取得する。この特徴部位34d~34gの位置は、例えば、カメラ27における予め定められた点を原点としたカメラ座標系にて検出することができる。カメラ座標系は、カメラ27と共に移動する。
【0045】
カメラ27は、ハンド2に固定されている。ツール座標系72に対するカメラ座標系の相対位置および相対姿勢は一定である。ツール座標系72に対するカメラ座標系の相対位置および相対姿勢は、予め測定することができる。ロボット1の位置および姿勢に基づいて、カメラ座標系にて表現した位置をワールド座標系71にて表現した位置に変換することができる。特徴部位検出部52は、カメラ座標系にて検出された特徴部位の位置を、ワールド座標系71にて表現された特徴部位の位置に変換することができる。
【0046】
なお、基準画像は、作業者が予めCAD(Computer Aided Design)データ等を用いて作成しても構わない。作業者は、例えば、3次元の設計データに基づいて、様々な位置および姿勢における指定部の基準画像を生成することができる。または、2次元の基準画像を予め生成することができる。そして、特徴部位検出部52は、ステレオカメラに含まれる1個のカメラにて取得された2次元画像に基づいて、パターンマッチングを行うことにより、3次元の画像における特徴部位の位置を特定しても構わない。
【0047】
次に、座標系設定部53は、教示工具31に対して補助座標系73を設定する。補助座標系73の設定方法は、予め定めておくことができる。本実施の形態における座標系設定部53は、特徴部位34gを補助座標系73の原点に設定する。また、座標系設定部53は、補助座標系73の原点からカメラ27の光学中心に向かう軸をZ軸に設定する。座標系設定部53は、Z軸に垂直な軸のうちカメラ27から見たときに、鉛直方向の上側に延びる軸を、X軸に設定する。さらに、座標系設定部53は、X軸およびZ軸に垂直な方向をY軸に設定する。
【0048】
このように、座標系設定部53は、教示工具31に定められた補助座標系73の原点からカメラ27に向かう方向を補助座標系の1つの座標軸に設定する。1つの座標軸としては、X軸またはY軸でも構わない。ロボット制御装置4は、作業者がカメラ27にて教示工具31の指定部34を撮像することにより、自動的に補助座標系73を設定することができる。
【0049】
補助座標系73の設定方法は、この形態に限られず、任意の方法を採用することができる。例えば、棒状部34aに重なるようにZ軸を設定しても構わない。また、棒状部34bに重なる様にX軸を設定し、棒状部34cに重なる様にY軸を設定しても構わない。または、作業者は、カメラ27にて撮像した画像を見ながら手動にて補助座標系を設定しても構わない。教示操作盤3の表示部3bは、カメラ27にて撮像した距離画像を表示することができる。作業者は、入力部3aを操作して教示工具31に対して補助座標系73を設定することができる。
【0050】
本実施の形態においては、補助座標系の原点は、教示工具に設定されているが、この形態に限られない。補助座標系の原点は、教示工具から離れていても構わない。また、作業者は、開始教示点TPSの位置にロボット1の位置を配置して、開始教示点TPSにおけるロボット1の位置および姿勢に対応するように教示工具31を配置することができる。この後に、作業者は、補助座標系を設定しても構わない。
【0051】
次に、座標系設定部53は、特徴部位34d~34gの位置に対する補助座標系73の相対位置および相対姿勢を算出する。記憶部42は、特徴部位34d~34gの位置に対する補助座標系73の相対位置および相対姿勢を記憶する。特徴部位34d~34gの位置が検出されると、補助座標系73の位置および姿勢を算出することができる。
【0052】
図7に、本実施の形態の教示工具にて教示点を設定する時のカメラ、ワーク、および教示工具の斜視図を示す。本実施の形態のロボット制御装置4は、作業者が教示工具31を動かすと連続的に教示点を設定する経路モードと、作業者が教示工具31を停止して教示点を設定する点モードとを実施できるように形成されている。始めに、経路モードについて説明する。
【0053】
図4および
図7を参照して、作業者は、ロボット1の位置および姿勢を変更して、棚80に配置されているワーク81をハンド2にて把持する。すなわち、ワーク81を搬送する開始教示点TPSの位置にロボット1の位置を配置する。作業者は、開始教示点TPSにおけるロボット1の位置および姿勢に対応するように教示工具31を配置する。作業者は、カメラ27にて指定部34を撮像できる位置に教示工具31を配置する。ここでの例では、作業者は、ワーク81の上面に教示工具31を配置している。また、作業者は、ツール座標系72のZ軸の方向が特徴部位34dを含む棒状部34aの延びる方向とほぼ平行なるように配置している。
【0054】
処理部51は、カメラ27にて撮像した画像を取得する。特徴部位検出部52は、指定部34の特徴部位34d,34e,34fの位置を検出する。算出部55は、特徴部位34d,34e,34fの位置に基づいて、補助座標系73の位置および姿勢を算出する。次に、処理部51は、補助座標系73に対するツール座標系72の相対位置および相対姿勢を算出する。記憶部42は、この初期の相対位置および相対姿勢を記憶する。なお、作業者は、任意の方法により、ハンド2がワーク81を把持した時の補助座標系73に対するツール座標系72の相対位置および相対姿勢を設定することができる。例えば、作業者が教示操作盤3の入力部3aを操作することにより、相対位置および相対姿勢を入力しても構わない。
【0055】
図8に、1個の教示点を設定する制御のフローチャートを示す。
図2、
図4、および
図8を参照して、教示点を設定するときには、ロボット制御装置4は、設定プログラム46に基づいて駆動する。ステップ111において、作業者は、教示工具31を移動経路98に沿う経路にて移動する。本実施の形態では、後述する追従制御を実施することにより、教示工具31の移動に対応してカメラ27が移動するように、ロボット1の位置および姿勢が変化する。
【0056】
ステップ112において、カメラ27は、教示工具31の指定部34を撮像する。ステップ113において、特徴部位検出部52は、カメラ27にて撮像した画像に基づいて、指定部34の特徴部位34d,34e,34fの位置を検出する。
【0057】
特徴部位34d~34gの位置に対する補助座標系73の相対位置および相対姿勢は、座標系設定部53にて算出されている。ステップ114において、算出部55は、この相対位置および相対姿勢に基づいて、補助座標系73の位置および姿勢を算出する。
【0058】
補助座標系73に対するツール座標系72の相対位置および相対姿勢は、予め測定されている。ステップ115において、設定部56は、この相対位置および相対姿勢に基づいて、ツール座標系72の位置および姿勢(教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢)を算出する。このように、設定部56は、算出部55にて検出された補助座標系73の位置および姿勢に基づいて、教示点の位置および教示点におけるロボットの姿勢の情報を含むように教示点を設定する。
【0059】
ステップ116において、記憶部42は、教示点の情報を記憶する。このように、作業者が配置した教示工具31をカメラ27にて撮像することにより、教示点の設定を行うことができる。
【0060】
ところで、本実施の形態のロボット装置8は、作業者が教示工具31を移動すると、カメラ27にて指定部34を撮像可能な様に、ロボット1の位置および姿勢が変化する追従制御を実施する。追従制御では、特徴部位34d,34e,34fに対するカメラ27の相対位置および相対姿勢を維持するように、ロボット1の位置および姿勢を変更する。本実施の形態では、カメラ27はハンド2に固定されているために、補助座標系73に対するツール座標系72の相対位置および相対姿勢が維持されるようにロボット1の位置および姿勢を変更する。
【0061】
図7を参照して、作業者は、所望の移動経路に沿って、矢印93に示すように、教示工具31を移動する。追従制御では、カメラ27は、予め定められた微小の時間間隔ごとに画像を撮像する。例えば、ロボット1の制御周期ごとに画像を撮像しても構わない。特徴部位検出部52は、特徴部位34d,34e,34fの位置を検出する。算出部55は、特徴部位34d,34e,34fの位置に基づいて、補助座標系73の位置および姿勢を検出する。
【0062】
移動指令生成部54は、開始教示点TPSに対応する位置に教示工具31を配置したときの補助座標系73に対するツール座標系72の相対位置および相対姿勢を記憶部42から取得する。移動指令生成部54は、この相対位置および相対姿勢と、補助座標系73の位置および姿勢に基づいて、ロボット1の位置および姿勢を算出する。移動指令生成部54は、このロボット1の位置および姿勢になるように、ロボット1の動作指令を動作制御部43に送出する。
【0063】
このように、移動指令生成部54は、作業者が教示工具31を移動した時に、特徴部位34d,34e,34fに対してカメラ27の位置および姿勢が追従するように、ロボット1の位置および姿勢を変更する。なお、追従制御においては、様々な制御を実施することができる。例えば、特徴部位に対するツール座標系またはカメラ座標系の相対位置および相対姿勢が維持されるように、ロボットの位置および姿勢を変更することができる。連続的に教示点を設定する経路モードでは、追従制御は、教示点を設定している期間中に実施することができる。
【0064】
図4および
図7を参照して、経路モードを行う場合に、作業者は、教示操作盤3の入力部3aを操作して、経路モードに切り替える。作業者は、開始教示点TPSを手動にて設定する。作業者は、矢印93に示すように、教示工具31を開始教示点TPSに対応する位置から移動経路98に沿って移動する。追従制御により、カメラ27にて教示工具31の指定部34を撮像できるように、ロボット1の位置および姿勢が自動的に変化する。
【0065】
処理部51は、教示工具31の移動と共に、予め定められた間隔ごとに教示点TPを設定する。処理部51は、
図8に示す制御にて教示点TPを設定する。処理部51は、予め定められた時間間隔または教示工具31の予め定められた移動距離ごとに教示点を設定することができる。特徴部位検出部52は、この間隔ごとに特徴部位34d,34e,34fの位置を検出する。算出部55は、この間隔ごとに検出された特徴部位34d,34e,34fの位置に基づいて、補助座標系73の位置および姿勢を算出する。設定部56は、この間隔に対応するように、教示点TPの位置および教示点TPにおけるロボット1の姿勢を設定する。
【0066】
教示工具31が終了教示点TPEに対応する位置まで移動したときに、作業者が教示操作盤3の入力部3aを操作することにより、処理部51は、終了教示点TPEを設定すると共に経路モードを終了する。このように、作業者が、教示工具31を移動している期間中に、自動的に複数の教示点TPを設定することができる。
【0067】
経路モードでは、作業者は、教示点の設定を行うごとに教示操作盤を操作する必要はなく、自動的に複数の教示点を設定することができる。また、細かい間隔にて多くの教示点を設定することができる。経路モードでは、本実施の形態の移動経路のように、ツール先端点が曲線状に移動する経路にて作業を行うロボット装置に好適である。
【0068】
次に、1個ずつ教示点の設定を実施するモードを点モードについて説明する。点モードでは、教示点を設定するごとに、作業者が教示操作盤3を操作する。開始教示点TPS等の予め定められた位置に対応する位置に教示工具31を配置したときの補助座標系73に対するツール座標系72の相対位置および相対姿勢を予め取得することは、前述の経路モードと同様である。
【0069】
作業者は、教示操作盤3を操作することにより、ロボット制御装置4を点モードに切り替える。次に、
図8におけるステップ111からステップ116の作業を実施して、教示点を設定する。ステップ111において、追従制御を実施することにより、作業者が教示工具31を移動すると、カメラ27にて指定部34が撮像可能なようにロボット1の位置および姿勢が自動的に変化する。作業者が教示操作盤3を操作することにより、処理部51は、ステップ112からステップ116の制御を実施する。このような作業者による教示工具31の配置とロボット制御装置4による教示点の設定を繰り返すことにより、複数の教示点を設定する。
【0070】
図9に、接近点である教示点を設定するときのワーク、カメラ、および教示工具の斜視図を示す。ロボット装置8は、実際の作業を開始する前にツール先端点を開始教示点TPSの近くの教示点TPAに配置する。実際の作業では、ロボット装置8は、ハンド2を教示点TPAから開始教示点TPSに近づける制御を実施する。教示点TPAでは、ハンド2は開いた状態である。ロボット1の位置が開始教示点TPSに配置された時にハンド2は閉じる制御を実施する。このような開始教示点TPSの近くの教示点TPAは、接近点と称される。
【0071】
教示点TPAの教示は、点モードで実施することができる。また、追従制御を実施することができる。作業者が教示工具31を移動したときに、移動指令生成部54は、カメラ27が教示工具31の移動に追従するように、ロボット1の位置および姿勢を変更する。追従制御を実施することにより、作業者は、1個の教示点の設定ごとにロボット1の位置および姿勢の調整を行う必要がなく、容易に教示点を設定することができる。
【0072】
作業者は、開始教示点TPSを設定した後に、矢印94に示すように、教示工具31をワーク81から離れた位置に移動する。追従制御により、カメラ27が固定されたハンド2は、教示工具31の移動に対応して移動する。教示工具31が所望の位置に配置された時に、作業者が教示操作盤3を操作することにより、処理部51は、教示点TPAを設定することができる。
【0073】
更に、実際の作業が終了した場合には、ロボット装置8は、ハンド2の先端点をワーク81から離れた位置に配置する。ロボット制御装置4は、ロボット1の位置を終了教示点TPEから退避した教示点に配置する。この後にロボット制御装置4は、次の動作を行うためにロボット1の位置および姿勢を変更する。この教示点は、逃げ点と称される。逃げ点となる教示点についても、接近点と同様に点モードにて設定することができる。
【0074】
点モードでは、作業者は、1個の教示点を設定する時に教示工具31を停止することができる。作業者は、教示工具31の位置および姿勢を細かく調整することができる。このために、点モードでは、教示点におけるロボットの位置および姿勢を細かく調整することができる。また、直線状にロボットの位置が移動する場合等では移動経路が簡易になる。移動経路が簡易な場合には、少ない教示点を設定すれば良い。この場合に、作業者は、点モードで教示点を設定することにより、短時間で教示点を設定することができる。
【0075】
本実施の形態におけるロボット制御装置4では、点モードと経路モードとを切替えて、教示点の設定を行うことができる。更に、教示点の設定する時に、作業ツールが駆動する条件を設定することができる。例えば、爪部がモータにて駆動されるハンドでは、作業者は、ハンドにてワークを把持する力の大きさ等の条件を設定することができる。作業者は、教示操作盤3を操作して点モードまたは経路モードを設定する時に、作業ツールを駆動する条件を入力することができる。記憶部42は、設定された教示点の情報とともに作業ツールを駆動する条件を記憶することができる。ロボット制御装置4は、教示点の情報および作業ツールを駆動する条件に基づいて作業プログラム41を生成することができる。
【0076】
ロボット装置8が実際の作業を行う場合に、動作制御部43は、様々なツール先端点の移動方法にてロボットの位置および姿勢を制御することができる。例えば、動作制御部43は、ツール先端点が教示点を通って教示点同士の間を直線状に移動するようにロボット1の位置および姿勢を制御する第1の移動制御を実施することができる。また、動作制御部43は、ツール先端点が教示点を通って教示点同士の間を曲線状に移動するようにロボット1の位置および姿勢を制御する第2の移動制御を実施することができる。また、動作制御部43は、ツール先端点が教示点または教示点の近傍を通って曲線状に移動するようにロボットの位置および姿勢を制御する第3の移動制御を実施することができる。第3の移動制御では、ツール先端点が教示点を通る必要は無く、滑らかな移動経路にて作業ツールが移動する。
【0077】
作業者は、教示点の設定を行う時に、第1の移動制御から第3の移動制御のうちいずれかの移動制御を指定することができる。例えば、作業者は、教示操作盤3の操作にて移動制御の種類を指定することができる。記憶部は、設定された教示点の情報と共に移動制御の種類を記憶することができる。ロボット制御装置4は、教示点の情報および移動制御の種類に基づいて、作業プログラム41を生成することができる。
【0078】
なお、点モードは、離散的な教示点を設定する場合に使用することができる。点モードでは、第1の移動制御にてロボットの位置および姿勢を変更する作業プログラムの指令文を生成することが好ましい。一方で、経路モードは、ロボットの位置および姿勢が変化しながら作業ツールが連続的に作業を行う場合に使用することができる。経路モードでは、第2の移動制御または第3の移動制御にてロボットの位置および姿勢を変更する作業プログラムの指令文を生成することが好ましい。
【0079】
前述の実施の形態では、作業者が教示操作盤3の入力部3aを操作することにより、ハンド2を開いたり閉じたりする。または、作業者が教示操作盤3の入力部3aを操作することにより点モードと経路モードとの間の切り替えを行っている。本実施の形態におけるロボット制御装置4では、このような指令を教示工具31の動作により行うことができる。すなわち、教示操作盤3の入力部3aの操作の代わりに、教示工具31の動作により教示操作盤3aへの入力を行うことができる。
【0080】
図10は、教示工具の動作により処理部に指令するときの教示工具およびカメラの斜視図である。
図2および
図10を参照して、処理部51は、カメラ27の出力に基づいて、教示工具31の予め定められた指令動作を検出する動作検出部57を含む。動作検出部57は、設定プログラム46に従って駆動するプロセッサに相当する。プロセッサが設定プログラム46を読み込んで、設定プログラム46に定められた制御を実施することにより、動作検出部57として機能する。
【0081】
動作検出部57は、予め定められた時間間隔ごとに特徴部位検出部52から少なくとも一つの特徴部位34d~34gの位置を取得する。動作検出部57は、特徴部位34d~34gの移動を検出する。動作検出部57は、教示工具31の予め定められた動作を検出する。本実施の形態では、ロボット制御装置4に指令するための教示工具31の動作を指令動作と称する。
図10に示す例においては、作業者は、矢印95に示すように、教示工具31を任意の方向に小さく往復移動させる指令動作を実施する。ここでの例では、作業者は、特徴部位34fが配置されている棒状部34cが延びる方向に教示工具31を移動する。
【0082】
動作検出部57は、特徴部位検出部52にて検出された特徴部位34dの位置に基づいて指令動作を検出する。例えば、動作検出部57は、予め定められた時間内に特徴部位34dが一つの方向と、一つの方向に反対側の方向に移動することを検出する。このような動作を検出したときに、動作検出部57は、予め定められた指令動作であると判定し、指令動作に対応する制御を実施する。このような指令動作に対応する制御は、予め定められている。
【0083】
例えば、動作検出部57は、指令動作がハンド2を閉じる指令であると判定する。記憶部42は、現在の教示点の情報と共にハンド2を閉じる動作の指令を記憶する。ロボット制御装置4は、教示点の情報と共にハンド2を閉じる指令を含む作業プログラム41を生成することができる。
【0084】
または、点モードにて教示点の設定を実施する場合に、作業者による教示操作盤の操作の代わりに、動作検出部57は、指令動作が教示点を記憶する指令であると判定することができる。算出部55および設定部56は、矢印95に示す往復の動作を行う前に、教示工具31の位置および姿勢を取得する。算出部55および設定部56は、この位置および姿勢に基づいて教示点を設定する。
【0085】
または、経路モードにおいて、作業者は、開始教示点TPSに対応するように教示工具31を配置した後に指令動作を実施することができる。動作検出部57は、経路モードにおいて開始教示点TPSを設定する指令であると判定することができる。そして、作業者は、開始教示点TPSに対応する位置から終了教示点TPEに対応する位置まで教示工具31を移動する。算出部55および設定部56は、教示工具31が配置される位置および姿勢に基づいて自動的に複数の教示点を設定する。終了教示点TPEの教示においては、教示工具31が終了教示点TPEに到達した後に指令動作を実施する。算出部55および設定部56は、指令動作を行う直前の教示工具31の位置および姿勢に基づいて終了教示点TPEを設定することができる。
【0086】
図11に、教示工具の他の指令動作を説明する教示工具およびカメラの斜視図を示す。他の指令動作としては、矢印96に示すように、教示工具31の指定部34をカメラ27に急激に近づけることができる。例えば、動作検出部57は、予め定められた時間内に予め定められた距離の範囲内まで特徴部位34dがカメラ27に近づいた時に、指令動作であると判定することができる。または、動作検出部57は、予め定められた時間内に特徴部位34dがカメラ27に向かって予め定められた距離判定値よりも大きな距離にて移動した場合に、指令動作であると判定する。
【0087】
図11に示す指令動作を検出した場合についても、動作検出部57は、予め定められた制御の指令であると判定することができる。例えば、動作検出部57は、点モードと経路モードとを切り替えることができる。すなわち、作業者が、矢印96に示すように、カメラ27に向けて指定部34を急激に近づける操作を行うことにより、経路モードと点モードとを切り替えることができる。
【0088】
このように、本実施の形態のロボット制御装置4では、教示工具の予め定められた指令動作により、ロボット制御装置4に指令することができる。作業者は、教示操作盤3を操作しなくてもロボット制御装置4に指令することができる。このために、教示作業を迅速に行うことができる。
【0089】
指令動作としては、上記の形態に限られず、任意の動作を採用することができる。例えば、作業者は、指令動作として、短時間の間に指定部をカメラの撮像範囲の外側に配置した後に撮像範囲の内部に戻すことができる。または、指令動作としては、1つの特徴部位が円状に移動するように、教示工具を移動することができる。
【0090】
図12に、本実施の形態における第2の教示工具の斜視図を示す。教示工具は、上記の形態に限られず、カメラにて撮像した画像により教示工具の指定部の位置および姿勢を検出できる任意の形状を有することができる。第2の教示工具37は、人が握る部分である把持部32と、把持部32から棒状に延びる支持部33とを有する。支持部33の端部には指定部38が配置されている。
【0091】
第2の教示工具37の指定部38は、特徴部位38d,38e,38fを有する。特徴部位38d,38eは、円環状に形成されている。特徴部位38fは、側面から飛び出すように形成されている。
【0092】
第2の教示工具37においても、第1の教示工具31と同様に、特徴部位検出部52は、カメラ27にて取得した3次元情報に基づいて、特徴部位38d~38fの位置を検出する。座標系設定部53は、教示工具37に対して補助座標系73を設定する。補助座標系73の原点は、例えば、特徴部位38fに配置することができる。座標系設定部53は、特徴部位38d,38e,38fに対する補助座標系73の相対位置および相対姿勢を算出することができる。次に、作業者は、作業ツールに対して所望の位置および姿勢に教示工具37を配置してカメラ27にて画像を撮像する。処理部51は、カメラ27の画像に基づいて、補助座標系73に対する作業ツールの相対位置および相対姿勢(ツール座標系72の相対位置および相対姿勢)を算出する。その他の作業については、第1の教示工具31と同様の作業を実施することにより、教示点を設定することができる。
【0093】
図13に、本実施の形態における作業者の手の斜視図を示す。前述の実施の形態においては、第1の教示工具31または第2の教示工具37を用いることにより、ワークに対して作業ツールの位置および姿勢を指定しているが、この形態に限られない。作業者は手39を使って、作業ツールの位置および姿勢を指定しても構わない。
【0094】
図13に示す例においては、親指、人差し指および中指が、互いにほぼ垂直な方向を示すように手39の形状を生成している。親指の先端部は、特徴部位39dに設定されている。人差し指の先端部は、特徴部位39fに設定されている。また、中指の先端部は、特徴部位39eに設定されている。作業者の手39の形状は、この形態に限られず、特徴部位を検出できる任意の形状にて作業ツールの位置および姿勢を指定することができる。作業者は、手39の形状を維持しながら作業ツールの位置および姿勢を指定することができる。
【0095】
教示工具31,37と同様に、作業者の手39に対して補助座標系73を設定することができる。例えば、座標系設定部53は、カメラ27にて作業者の手39を撮像した距離画像に基づいて、自動的に補助座標系73を設定することができる。ここでの例では、補助座標系73の原点は、人差し指の先端部の特徴部位39fに設定されている。
【0096】
その他の教示点を設定する制御は、教示工具を用いて教示点を設定する制御と同様である。本実施の形態の教示装置では、教示工具の代わりに作業者が手を用いても、ロボット装置の教示作業を実施することができる。
【0097】
図14に、本実施の形態における第2のロボット装置の斜視図を示す。第2のロボット装置9は、ロボット5と工作機械7とを備える。本実施の形態のロボット装置9では、工作機械7にて加工するワーク82をロボット5にて交換する。ロボット装置9は、ロボット5およびハンド6を備える。ハンド6は、ワーク82を吸着にて把持する吸着パッド6aを含む。ハンド6には、ステレオカメラであるカメラ27が固定されている。
【0098】
ロボット装置9は、ワーク82を搬送するコンベヤ85を備える。コンベヤ85は、矢印97に示す様に複数のワーク82を搬送する。コンベヤ85は、ハンド6がワーク82を把持することができる位置までワーク82を搬送する。
【0099】
本実施の形態の工作機械7は、数値制御式である。工作機械7は、予め作成された加工プログラムに基づいて自動的にワーク82を加工することができる。工作機械7は、枠体75の側面に配置された扉76を含む。扉76は、開いたり閉じたりする。枠体75にて囲まれる加工室には、工具が装着される主軸ヘッドおよびワーク82を支持するテーブル77が配置されている。テーブル77には、ワーク82が配置される固定部材78が固定されている。ワーク82は、固定部材78の凹部78aに配置される。ワーク82の加工中には、主軸ヘッドおよびテーブル77のうち少なくとも一方が移動して、ワーク82に対する工具の相対位置が変化する。ワーク82は、所望の形状に加工される。
【0100】
ロボット5は、加工前のワーク82を固定部材78に配置したり、加工後のワーク82を固定部材78から取り出したりする。ワーク82を交換する期間中には、扉76は開いた状態になる。コンベヤ85にて搬送されたワーク82は、矢印99に示すように、ロボット5により加工室の内部の固定部材78に配置される。この時に、ロボット5は、開口部から上部アーム11および下部アーム12を加工室に挿入する。教示作業を行う場合に、作業者は、ハンド6の位置および姿勢を加工室の外部から確認しなくてはならない。このために、ハンド6の位置および姿勢が見づらい場合が有る。
【0101】
しかしながら、本実施の形態の教示装置では、教示工具または手を用いて教示点を設定することができるために、作業者は、容易にロボット5の位置および姿勢を指定することができる。特に、教示工具を用いることにより、作業者は加工室の外側に立った状態で、ロボットの位置および姿勢を指定することができる。このために、教示作業を短時間に行うことができる。
【0102】
本実施の形態では、ワークを搬送するロボット装置およびワークを加工するロボット装置を例に取り上げて説明しているが、この形態に限られない。任意の作業を行うロボット装置に本実施の形態の制御を適用することができる。例えば、接着剤を塗布する作業ツールを備えるロボット装置、またはレーザ加工を行うレーザヘッドを備えるロボット装置等に、本実施の形態における制御を適用することができる。
【0103】
また、上記の実施の形態では、教示工具または作業者の手を用いて、作業を行う位置を指定している。作業を行う位置を指定する方法としては、文字または記号などが記載されたシールを2次元マーカとしてワークに貼り付けることができる。そして、カメラにて2次元マーカの位置を検出することにより、教示点の位置を設定することができる。ロボットは、周囲を撮像するようにカメラを移動する。そして、教示装置は、カメラの画像からマーカを探索する。2次元マーカが探索された時に2次元マーカの位置を教示点の位置として設定することができる。
【0104】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。
【符号の説明】
【0105】
1,5 ロボット
2,6 ハンド
4 ロボット制御装置
8,9 ロボット装置
27 カメラ
31,37 教示工具
32 把持部
34,38 指定部
34a,34b,34c 棒状部
34d,34e,34f,34g 特徴部位
38d,38e,38f 特徴部位
39 手
39d,39e,39f 特徴部位
42 記憶部
51 処理部
52 特徴部位検出部
53 座標系設定部
54 移動指令生成部
55 算出部
56 設定部
57 動作検出部
73 補助座標系
81,82 ワーク
98 移動経路
TP,TPA 教示点
TPS 開始教示点
TPE 終了教示点