(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】サーボ制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4093 20060101AFI20250107BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20250107BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20250107BHJP
G05D 3/12 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G05B19/4093 M
G05B19/4155 V
B23B1/00 A
G05D3/12 Z
(21)【出願番号】P 2023509218
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013296
(87)【国際公開番号】W WO2022202850
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021052693
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 高志
(72)【発明者】
【氏名】森田 有紀
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180633(JP,A)
【文献】国際公開第2015/177912(WO,A1)
【文献】特開平11-089291(JP,A)
【文献】特開2018-181210(JP,A)
【文献】国際公開第2015/120759(WO,A1)
【文献】特開2020-009248(JP,A)
【文献】特許第5781241(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23B 1/00
G05D 3/12
B23Q 15/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータの制御を行うサーボ制御装置において、
上位制御装置と前記サーボ制御装置の通信容量を抑えることができるようにするために、
前記上位制御装置から、指令波形の形状の種類の情報、並びに、指令波形の振幅、周期、及び、指令波形の形状・寸法に関するその他の特徴量を表す数値情報のパラメータ情報のみを取得し、繰返し性のある指令を作成し出力する繰返し性指令作成部と、
前記上位制御装置から移動指令を取得し、前記繰返し性指令作成部が出力する繰返し性のある指令を前
記移動指令に重畳する指令重畳部と、
を備えるサーボ制御装置。
【請求項2】
前記移動指令は、繰り返し性のない指令、低周波の繰り返し性のある指令、又は繰り返し性のない指令と低周波の繰り返し性のある指令の足し合わせの指令のいずれかである請求項1に記載のサーボ制御装置。
【請求項3】
前記繰返し性指令作成部はさらに、
前記上位制御装置から取得した、前記繰返し性のある指令の周期または周波数のデータと、前記サーボ制御装置のサーボ制御周期から、前記サーボ制御周期ごとの位相データを作成する位相データ作成部を備える、請求項1又は2に記載のサーボ制御装置。
【請求項4】
前記位相データ作成部で作成された位相データをもとに学習制御を行う学習制御部をさらに含む、請求項3に記載のサーボ制御装置。
【請求項5】
前記指令重畳部は、前記上位制御装置からの信号に基づき、指令の重畳を開始または中断もしくは終了する請求項1~4のいずれかに記載のサーボ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボ制御装置に関し、特に、繰返し性のある動作指令を含んだ指令にてモータ制御を行うサーボ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータなど駆動装置の制御において、その制御指令には、繰返し性のない移動指令に、必要に応じて、往復振動の指令(揺動指令)などの繰返し性のある指令を重畳して形成された指令が用いられてきた。
【0003】
特許文献1には、ワークに対して旋削加工を行うことによってねじ切り加工を実行する工作機械の制御において、旋削加工により生ずる切屑を細断するために、工具の加工動作に揺動動作を取り入れる技術であって、切屑の細断に適正な揺動振幅及び揺動方向の揺動動作に係る繰返し性のある指令を、旋削加工のためにワークと工具を相対的に移動させる移動指令に加算(重畳)する工作機械の制御技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、揺動切削を行う工作機械の制御装置に関し、揺動切削に起因する工作機械の負荷を低減させることを目的として、加工により生じる切屑を細断するために主軸と送り軸との協調動作により工具とワークを相対的に揺動させながらワークの加工を行う工作機械の制御装置が記載されている。すなわち、ワークと工具の相対的な揺動の指令を重畳させるのであるが、特許文献2の技術においては、加工条件が複数の送り軸のうちの1つの送り軸の補間動作による加工を示す場合には、加工経路に沿う方向に工具及びワークを相対的に揺動させ、加工条件が複数の送り軸の同時補間動作による加工を示す場合には、加工経路に対して揺動方向を変更する、または揺動を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-185355号公報
【文献】特開2020-9248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、工作機械の制御装置において、その制御指令に、繰返し性のない移動指令に加えて、往復振動の指令(揺動指令)などの繰返し性のある指令も重畳して含めさせる技術は知られている。
【0007】
しかしながら、特許文献1においては、制御装置(サーボ制御装置)において揺動指令(繰返し性のある指令)を生成するに当たり、外部から加工プログラムを入力して、揺動条件を算出した上で揺動指令を生成する必要があり、外部から大きなデータ量の情報の入力が必要となり、通信容量が大きくなりすぎるという問題が生じる。その上、入力された加工プログラムから揺動条件を算出する必要があって、その計算量から、制御指令の生成に時間を要し、制御動作の高い追従性を実現することは難しかった。
【0008】
また、特許文献2においては、上位の制御部で揺動指令(繰返し性のある指令)を作成し、作成された揺動指令を制御部(サーボ制御部)に送信しているために、周波数が非常に大きい高周波の揺動指令の場合は、上位の制御部とサーボ制御部の間の通信容量が大きくなりすぎて送信に困難が生じるという問題が生じていた。
【0009】
本発明は、工作機械の制御装置において、その制御指令として、通常の移動指令に、繰返し性のある指令を重畳した制御指令を得るに当たり、通信容量の制限を受けずに高周波の繰返し性のある指令を採用することができ、かつ、高い追従性を実現することができるサーボ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本開示のサーボ制御装置は、サーボモータの制御を行うサーボ制御装置において、上位制御装置から、指令波形の形状の種類の情報、並びに、指令波形の振幅、周期、及び、指令波形の形状・寸法に関するその他の特徴量を表す数値情報のパラメータ情報のみを取得し、繰返し性のある指令を作成し出力する繰返し性指令作成部と、前記上位制御装置から通常の移動指令を取得し、前記繰返し性指令作成部が出力する繰返し性のある指令を前記通常の移動指令に重畳する指令重畳部と、を備えるサーボ制御装置である。
【発明の効果】
【0011】
本開示のサーボ制御装置によれば、サーボ制御を行うのに、上位制御装置から小さなデータ量の情報の送信ですみ、すなわち、上位制御装置とサーボ制御装置間の通信容量の制限を受けずに、サーボ制御装置内で繰返し性のある指令を作成するため、繰返し性のある指令として非常に周波数の大きな高周波の指令でも採用することができる。また、サーボ制御装置においては、与えられた波形の形状の種類や数値データなどのパラメータ情報が直接与えられ、与えられたパラメータ情報のみから繰返し性のある指令を作成するものであるから、繰返し性のある指令を作成するための計算量が抑えられ、制御動作の高い追従性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係るサーボ制御装置の制御ブロック図である。
【
図2】本開示の通常の移動指令及び繰返し性のある指令を説明する図である。
【
図3】繰返し性のある指令(高周波の繰返し性のあるの指令)を示す図である。
【
図4】繰り返しのない指令の一例である、台形の指令を示す図である。
【
図5】繰返し性のない指令の一例である、直線加減速部と一定速度部からなる指令を示す図である。
【
図6】低周波の繰り返し性のある指令を示す図である。
【
図7】繰返し性のある指令における周期T1を示す図である。
【
図8】繰返し性のある指令に対応した位相データを示す図である。
【
図9】繰返し性のある指令に対応した位相データと等価な図である。
【
図10】サーボ制御周期ごとの位相データを示す図である。
【
図11】実施例における繰返し性のある指令を示す図である。
【
図12】実施例における繰返し性のある指令の特徴量を示す図である。
【
図13】受信情報と制御周期から繰返し性のある指令を作成する方法示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係るサーボ制御装置の制御ブロック図である。
図1に示すように、本開示の一実施形態に係るサーボ制御装置においては、上位制御装置20から移動指令や繰返し性指令(繰返し性のある指令)に関するデータがサーボ制御装置10に通知され、サーボ制御装置10において、繰返し性指令及び位相データが作成され、繰返し性指令が移動指令に重畳され、また、位相データに基づく学習制御が適用され、さらに、位置・速度・電流制御が適用された後、アンプ30に送られ、その出力でモータ40が駆動制御される。
【0015】
サーボ制御装置10は、繰返し性指令・位相データ作成部11、学習制御部12、位置・速度・電流制御部13、第1加算器14、及び、第2加算器15を備える。
【0016】
上位制御装置20から、サーボ制御装置10の第1加算器14に繰返し性のない移動指令などの通常の移動指令の信号が送られるとともに、繰返し性のある指令の信号に関するデータが繰返し性指令・位相データ作成部11に送られる。通常の移動指令には、例えば、加工物の形状を決定する基本設計のための指令などがある。繰返し性指令・位相データ作成部11では、繰返し性指令が作成されて第1加算器に送られるとともに、サーボ周期ごとの位相データが作成され、学習制御部12に送られる。上記の「繰返し性のある指令の信号に関するデータ」、「位相データの作成」及び「繰返し性指令の作成」については後に詳述する。一方で、第1加算器14では、上位制御装置20から送られた移動指令に、繰返し性指令・位相データ作成部11で作成された繰返し性指令が加算(重畳)され、重畳指令が形成されるとともに、この重畳指令とモータ40からフィードバックされた信号との偏差が求められ、学習制御部12及び第2加算器15のそれぞれに送られる。
【0017】
学習制御部12では、繰返し性指令・位相データ作成部11で作成された位相データに基づいて、第1加算器14で求められた重畳指令とフィードバック信号との偏差に対しての、学習制御が行われる。位相データに基づいた学習制御は、1周期前までの積算偏差により補正量を求めて、入力された指令(偏差)を補正することにより周期的な指令への追従性を向上させるもので、その技術自体は従来より公知のものであり、ここでの詳述は省略する。学習制御を適用することで、高い追従性、高精度の動作が可能となる。
【0018】
第1加算器14で求められた上位制御装置20からの移動指令と繰返し性指令・位相データ作成部11からの繰返し性指令が重畳された指令と、モータ40からフィードバックされた信号との偏差と、学習制御部12からの出力信号が、第2加算器15で加算され、その出力は位置・速度・電流制御部13に送られる。位置・速度・電流制御部13では、入力された位置指令・速度指令・電流指令からモータ40の適正な駆動電圧を算出し、さらに、アンプ30で拡張・調整された出力により、モータ40が駆動される。
【0019】
上位制御装置20は、繰返し性のない移動指令などの通常の移動指令21と繰返し性のある指令22に関するデータをサーボ制御装置10に出力する。本開示においては、「繰返し性のある指令22に関するデータ」として、指令波形の形状の種類のデータ、振幅及び周期の数値データ、並びに、指令波形の形状及び寸法のその他の特徴量を表す数値データのパラメータ情報のみを、上位制御装置20からサーボ制御装置10に出力する。指令波形の形状の種類としては、正弦波、三角波、矩形波などが挙げられる。従来例のように上位制御装置で繰返し性のある指令を作成し、その指令(波)そのものをサーボ制御装置へ送った場合には、繰返し性のある指令が周波数の非常に大きな高周波であれば、通信容量が大きくなりすぎ、送信(通信)が困難になることがあった。本開示においては、パラメータ情報のみを送信するため、上位制御装置20とサーボ制御装置10との間の通信容量は小さくてすみ、通信容量の制限を受けず、高周波の繰返し性指令を作成して、用いることが可能となった。
【0020】
次に、
図2において、通常の移動指令と繰返し性のある指令について説明する。
図2の左側に、繰返し性のある指令に、その繰返し性のある指令による往復動作の方向と垂直の方向の通常の移動指令を重畳して、往復動作を1周期ごとに垂直方向に一定量移動させて一定領域を塗りつぶすような動作(ラスター動作)を描写している。
【0021】
繰返し性のある指令は、往復する動作を繰り返す指令で、例えば、
図2の右側に代表図として記載されている波形(正弦波など)の指令がある。また、
図3には、その一例の高周波のものが記載されている。通常の移動指令は、繰り返し性のない指令、低周波の繰り返し性のある指令、あるいはそれらの足し合わせのいずれかに相当するものである。繰り返し性のない指令は、例えば、
図2の右側に代表図として記載されている台形の指令の他、
図4に代表図として記載されている直線加減速部と一定速度部からなる指令がある。低周波の繰り返し性のある指令は、例えば、
図5に代表図として記載されている波形(低周波の正弦波など)の指令があり、
図2右側の波形に代表される繰り返し性のある指令と比較して周波数の低い指令である。繰り返し性のない指令と低周波の繰り返し性のある指令を足し合わせた指令は、例えば
図6に代表図として記載されている波形(
図4と
図5の波形を足し合わせた波形)がある。
【0022】
次に、「位相データの作成」に関して、繰返し性のある指令から位相データを作成する方法について、
図7から
図10を用いて説明する。
図7には、繰返し性のある指令における周期T1が示されている。縦軸は指令位置(距離)を表し、横軸は経過した時間tを表す。
図7の繰返し性のある指令においては、指令の繰返し性(往復性)により、時間T1が経過するごとに指令位置がもとの指令位置に戻っており、その周期がT1であるといえる。
【0023】
図7の繰返し性のある指令に対応する位相データを
図8に示す。縦軸は位相を表し、横軸は経過した時間tを表す。繰返し性のある指令の位相においては、一定の時間が経過するごとに一定の位相が進み、そして、周期T1の時間が経過して位相が360°進むごとに、もと(0°)の位相に戻る。すなわち、周期T1の期間内では位相は時間tに比例する。
図8にはこの様子が示されている。
【0024】
図8においては、周期T1の時間が経過して位相が360°進むごとにもと(0°)の位相に戻るとしたが、360°からさらに位相が加算されるとすることも可能である。周期T1の時間が経過して位相が360°進んだ後は、時間が経過すると、位相は360°から加算される。この場合は、周期T1の期間内に限定されずに、全期間において、位相は時間tに比例する。この様子が
図9に示されている。縦軸は位相を表し、横軸は経過した時間tを表す。
【0025】
図9の例において、繰返し性のある指令の周期をT1、経過した時間をtとすると、位相θは、時間tの関数θ(t)として次の式(1)で表される。
[数1]
θ(t)=360×(t/T1)・・・式(1)
【0026】
ここで、サーボ制御装置10におけるサーボ制御周期をTsとすると、サーボ制御周期の1周期ごとに時間Tsが経過することになるから、サーボ制御周期の1周期の経過時における位相θ(t)は、t=Tsを代入して、
[数2]
θ(Ts)=360×(Ts/T1)・・・式(2)
となる。
【0027】
そして、サーボ制御周期のn周期(n=1,2,3・・・)が経過したときの位相θは、周期の数nの関数θ(n)として、
[数3]
θ(n)=360×(n・Ts/T1)・・・式(3)
となる。この様子を
図10に示す。縦軸は位相を表し、横軸は経過した時間tを表す。
【0028】
次に、「繰返し性指令の作成」に関して、繰返し性のある指令に関するデータから、繰返し性指令を作成する方法について、
図11から
図13を用いて説明する。
図11には、繰返し性のある指令として、指令の波形の形状が鋸波のものが示されている。上位制御装置20においては、
図11の鋸波の繰返し性のある指令から、指令の波形の形状のデータ(鋸波)、振幅の数値データ(A(deg))、周期の数値データ(T1)及びその他の特徴量についての数値データ(T2,T3)のパラメータ情報のみを抽出し、サーボ制御装置10に送る。高周波の繰返し性指令の実現のため、上位制御装置20とサーボ制御装置10の間の通信量をできるだけ抑えることが望まれている。
【0029】
次に、
図11の繰返し性のある指令から抽出される特徴量についての数値データ(T2,T3)について、
図12を用いて説明する。
図11の繰返し性のある指令においては、鋸波の上りの傾きと下りの傾きが異なり、これは、鋸波における上りの時間(T2)と下りの時間(T3)によって表され、この鋸波における上りの時間(T2)と下りの時間(T3)が、
図11の繰返し性のある指令における特徴量となる。特徴量として、どのような数値データが必要になるかは、指令の波形の種類によって異なることはいうまでもない。
【0030】
サーボ制御装置10が受信した上記のパラメータ情報とサーボ制御周知Tsから、繰返し性のある指令を作成する方法について、
図13を用いて説明する。サーボ制御装置10において、繰返し性のある指令の波形の形状のデータ(鋸波)、振幅の数値データ(A(deg))、周期の数値データ(T1)及び特徴量についての数値データ(T2,T3)のパラメータ情報を受信すれば、これらの情報と、サーボ制御周期Tsから、サーボ周期Tsごとの指令の波における変位(位置)が求まる。サーボ周期Tsごとの指令の波における変位(位置)を点で表したのが、
図13であり、これらの点の集合によって繰返し性のある指令が作成されている。すなわち、サーボ制御装置10においては、繰返し性のある指令を、サーボ周期Tsと指令の波における変位(位置)の関係を示した点の集合として把握しているということである。
【0031】
次に、本開示のサーボ制御の1つの実施形態について、
図14のフロー図を用いて説明する。初めに、サーボ制御装置において、上位制御装置から繰返し性のある指令の形状、振幅、周期等の情報を受信する(ステップS1)。繰返し性のある指令の形状、振幅、周期等の情報として、指令の波形の形状のデータ(鋸波)、振幅の数値データ、周期の数値データ及びその他の特徴量についての数値データのパラメータ情報のみを受信することにより、通信容量を抑えることができ、これによって、高周波の繰返し性のある指令の作成、採用が可能となる。
【0032】
次に、サーボ制御装置が受信した情報と制御周期から、繰返し性指令および補正データ作成の基準となる位相データを作成する(ステップS2)。繰返し性指令は、上述したように、サーボ周期Tsごとの繰返し性のある指令の波における変位(位置)の点の集合として作成される。また、位相データは、上述のように、受信した周波数の周期をT1、サーボ制御周期をTs、経過したサーボ制御周期の数をn(n=1,2,3・・・)とすると、位相θ(n)=360×(n・Ts/T1)で求められるものである。
【0033】
次に、繰返し性指令を通常の移動指令に重畳する。なお、上位制御装置からの信号に基づき、指令の重畳は開始され、または中断もしくは終了される(ステップS3)。ここで、上述のように、繰返し性指令を通常の移動指令に重畳した重畳指令と、モータからフィードバックされた信号との偏差が求められ、求められた偏差の信号に基づいて、モータは駆動制御される。
【0034】
最後に、ステップS3で作成された位相データをもとに学習制御を適用し(ステップS4)、このフローを終了する。学習制御を適用することにより、高周波の繰返し性のある指令が移動指令に重畳された重畳指令に対応する追従性が高まり、また、より高精度の制御が可能となる。
【0035】
本開示の発明のサーボ制御装置においては、上位制御装置から、指令の形状の情報、並びに、振幅、周期及びそれらの特徴量に関する数値情報からなるパラメータ情報のみを取得するという構成によって、上位制御装置とサーボ制御装置間の通信容量を抑えることができる。その結果、サーボ制御装置において、周波数の非常に大きな高周波の指令を作成して採用することができるようになった。すなわち、通信容量の制限を受けずに、サーボ制御装置内で繰返し性のある指令として、周波数の非常に大きな高周波の指令でも採用することができるという顕著な効果を有するものである。
【0036】
また、サーボ制御装置においては、与えられた波形形状種類や数値データなどのパラメータ情報が直接与えられ、与えられたパラメータ情報のみから繰返し性のある指令を作成するものであるから、繰返し性のある指令を作成するための計算量が抑えられ、制御動作の高い追従性を実現することができる。
【0037】
さらに、学習制御を適用することで、より高い追従性、より高精度の制御動作を実現することができる。
【0038】
以上、本発明の実施に関して、実施態様について説明したが、本発明はこうした実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々なる態様で実施できるものであることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10 サーボ制御装置
11 繰返し性指令・位相データ作成部
12 学習制御部
13 位置・速度・電流制御部
14 第1加算器
15 第2加算器
20 上位制御装置
21 通常の移動指令
22 繰り返し性のある揺動指令
30 アンプ
40 モータ