(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】数値制御装置及び加工システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
G05B19/18 T
(21)【出願番号】P 2023512550
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2021014625
(87)【国際公開番号】W WO2022215166
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】木野内 涼
(72)【発明者】
【氏名】立木 伸吾
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-161527(JP,A)
【文献】特開平06-155231(JP,A)
【文献】特開2011-039582(JP,A)
【文献】特開2015-225617(JP,A)
【文献】特開2012-198734(JP,A)
【文献】特開2015-087820(JP,A)
【文献】特開2015-172867(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103760818(CN,A)
【文献】韓国公開特許第1997-0033455(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/4155
B23Q 15/00-16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル、前記テーブルを軸周りに回転位置決めする駆動機構、及び前記テーブルの回転を制止するクランプ機構を有する回転テーブル装置を備える加工システムにおいて、複数の命令文を含む加工プログラムに従って前記回転テーブル装置を制御する数値制御装置であって、
前記加工プログラムに含まれ、前記駆動機構の動作を指定するテーブル回転命令文の実行直前に前記テーブルの制止を解除するアンクランプ動作を追加するアンクランプ追加部と、
前記テーブル回転命令文の実行直後に前記テーブルを制止するクランプ動作を追加するクランプ追加部と、
前記加工プログラムに含まれ、前記クランプ機構の動作を指定するクランプ命令文の削除を行うクランプ命令削除部と、
前記クランプ命令削除部の有効化及び無効化を行う指定クランプ有効化部と、
を備える、数値制御装置。
【請求項2】
テーブル、前記テーブルを軸周りに回転位置決めする駆動機構、及び前記テーブルの回転を制止するクランプ機構を有する回転テーブル装置を備える加工システムにおいて、複数の命令文を含む加工プログラムに従って前記回転テーブル装置を制御する数値制御装置であって、
前記加工プログラムに含まれ、前記駆動機構の動作を指定するテーブル回転命令文の実行直前に前記テーブルの制止を解除するアンクランプ動作を追加するアンクランプ追加部と、
前記テーブル回転命令文の実行直後に前記テーブルを制止するクランプ動作を追加するクランプ追加部と、
を備え
、
前記加工プログラムに含まれ、前記クランプ機構の動作を指定するクランプ命令文による前記クランプ動作及び前記アンクランプ動作と、前記アンクランプ追加部による前記アンクランプ動作及び前記クランプ追加部による前記クランプ動作を同一加工プログラム中で実行可能な、数値制御装置。
【請求項3】
前記アンクランプ追加部は、対象となる前記テーブル回転命令文の実行直前の状態がアンクランプ状態である場合、アンクランプ動作を追加せず、
前記クランプ追加部は、対象となる前記テーブル回転命令文の直後が他の前記テーブル回転命令文である場合、クランプ動作を追加しない、請求項
1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記アンクランプ追加部は、連続する複数の前記テーブル回転命令文において回転を指定される軸について、最初の前記テーブル回転命令文の実行直前に一括して前記アンクランプ動作を追加し、
前記クランプ追加部は、連続する複数の前記テーブル回転命令文において回転を指定される軸について、最後の前記テーブル回転命令文の実行直後に一括して前記クランプ動作を追加する、請求項
3に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記クランプ追加部は、前記テーブル回転命令文が切削動作中に行われるものである場合には、その実行直後に前記クランプ動作を追加しない、請求項
1から4のいずれかに記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記クランプ追加部は、前記テーブル回転命令文の直後の前記クランプ動作が完了するまでの間、予め設定される種類の動作を禁止する、請求項
1から5のいずれかに記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記アンクランプ追加部及び前記クランプ追加部の有効化及び無効化を行う自動クランプ有効化部をさらに備える、請求項
1から6のいずれかに記載の数値制御装置。
【請求項8】
請求項
1から7のいずれかに記載の数値制御装置と、
前記数値制御装置によって制御される回転テーブル装置と、
を備える加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置及び加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工システムの中には、加工の自由度を高めるために、ワークを保持するテーブルを回転位置決めする回転テーブル装置を備えるものがある。このような回転テーブル装置には、テーブルの角度位置が位置ずれすることを防止するために、テーブルの回転を制止するクランプ機構が設けられ得る。このため、回転テーブル装置を加工システム用の加工プログラムには、クランプ機構のクランプ動作及びアンクランプ動作を指定する命令文を記述する必要がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランプ機構を有する回転テーブル装置を備える加工システム用の加工プログラムは、クランプ動作及びアンクランプ動作を指定する命令文を含む必要があるため、長くなる。このため、加工プログラムの作成時に入力ミスが発生するリスクが高まると共に、可読性が低下するので入力ミスを発見することも容易でなくなる。加工プログラムの作成ミスにより不適切なタイミングでクランプ動作又はアンクランプ動作を行うと、加工精度を低下させたり、装置や工具を破損させたりするリスクがある。また、クランプ動作及びアンクランプ動作は、機械的な動作であるので実行するために時間がかかる。このため、加工プログラムに不必要にクランプ動作及びアンクランプ動作を指定する命令文が挿入されると、サイクルタイムが長くなるという不都合も生じる。このため、適切なタイミングでクランプ動作及びアンクランプ動作を実行できる手段が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る数値制御装置は、テーブル、前記テーブルを軸周りに回転位置決めする駆動機構、及び前記テーブルの回転を制止するクランプ機構を有する回転テーブル装置を備える加工システムにおいて、複数の命令文を含む加工プログラムに従って前記回転テーブル装置を制御する数値制御装置であって、前記加工プログラムに含まれ、前記駆動機構の動作を指定するテーブル回転命令文の実行直前に前記テーブルの制止を解除するアンクランプ動作を追加するアンクランプ追加部と、前記テーブル回転命令文の実行直後に前記テーブルを制止するクランプ動作を追加するクランプ追加部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、適切なタイミングでクランプ動作及びアンクランプ動作を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態の加工システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の数値制御装置におけるクランプ機構の制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】テーブル早送り命令文の実行時の信号変化を示すタイムチャートである。
【
図4】テーブル切削送り命令文の実行時の信号変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の一実施形態の加工システム1の構成を示す模式図である。加工システム1は、加工プログラムに従って、ワークWを工具Tによって加工する。
【0009】
加工システム1は、ワークWを回転位置決め可能に保持する回転テーブル装置10と、ワークWを加工する工具Tを位置決め及び駆動する加工装置20と、回転テーブル装置10及び加工装置20を制御する数値制御装置30と、を備える。
【0010】
回転テーブル装置10は、ワークWを保持するテーブル11と、テーブル11のワークWを保持する保持面に垂直なA軸Xaの周りにテーブル11を回転位置決めするA軸駆動機構12と、テーブル11をA軸駆動機構12と共にA軸Xaと垂直なB軸Xbの周りに回転位置決めするB軸駆動機構13と、テーブル11のA軸Xa周りの回転を制止するA軸クランプ機構14と、テーブル11のB軸Xb周りの回転を制止するB軸クランプ機構15と、を有する。
【0011】
テーブル11は、ワークWを自身に対して相対移動不能に保持する。このため、テーブル11は、例えば磁力、ネジ、チャック等によりワークを固定する固定構造を有してもよい。これにより、回転テーブル装置10は、ワークWを保持するテーブルを回転位置決めすることにより、ワークWの向きを定める。
【0012】
A軸駆動機構12は、末端にテーブル11が接続され、A軸Xaに沿って延びるA方向回転軸121と、A方向回転軸121を回転させるA軸サーボモータ122と、を有する構成とされ得る。
【0013】
B軸駆動機構13は、B軸Xbに沿って延び、一端にA軸サーボモータ122を保持するB方向回転軸131と、B方向回転軸131を回転させるB軸サーボモータ132と、を有する構成とされ得る。
【0014】
A軸クランプ機構14は、A軸駆動機構12のA方向回転軸121に固定されるブレーキディスクにブレーキパッドを圧接することにより、A方向回転軸121の回転を制止する周知の構成とされ得る。
【0015】
B軸クランプ機構15は、A軸クランプ機構14と同様に、B軸駆動機構13のB方向回転軸131に固定されるブレーキディスクにブレーキパッドを圧接することにより、B方向回転軸131の回転を制止する周知の構成とされ得る。
【0016】
加工装置20は、テーブル11ひいてはワークWに対する工具Tの相対的な位置を定める複数の駆動軸と、工具Tを回転駆動する工具軸と、を有する構成とされ得る。図示する実施形態において、加工装置20は、回転テーブル装置10を水平方向に移動させ、工具Tを上下方向に移動させることにより、工具TのワークWに対する位置を定めるよう構成されている。複数の駆動軸及び工具軸は、それぞれサーボモータによって駆動され得る。
【0017】
数値制御装置30は、加工プログラムに従って、回転テーブル装置10及び加工装置20を制御する。加工プログラムは、例えばGコード等の言語によって記述される複数の命令文(ブロック)を含む。数値制御装置30は、それ自体が本開示に係る数値制御装置の一実施形態である。命令文には、切削を行わない工具Tの移動時に用いられる高速移動を指定する工具早送り命令文、切削を伴う工具Tの移動時に用いられる低速移動を指定する工具切削送り命令文、テーブル11の回転を指定するテーブル回転命令文、クランプ機構14,15の動作を指定するクランプ命令文などの複数の種類が存在する。テーブル回転命令文は、切削を伴わないテーブル早送り命令文と、切削を伴うテーブル切削送り命令文と、にさらに種類分けされ得る。
【0018】
数値制御装置30は、プログラム読込部31、命令文判別部32、クランプ命令削除部33、指定クランプ有効化部34、アンクランプ追加部35、クランプ追加部36、自動クランプ有効化部37、指令値算出部38、及び運転制御部39を備える。数値制御装置30は、例えばメモリ、CPU、入出力インターフェイス等を有するコンピュータ装置に、適切な制御プログラムを実行させることによって実現され得る。数値制御装置30の上述の構成要素は、数値制御装置30の機能を類別したものであって、物理構成及びプログラム構成において明確に区分できるものでなくてもよい。
【0019】
プログラム読込部31は、外部又は内部の記憶装置から加工プログラムを命令文単位で作業メモリ内に読み込む。プログラム読込部31は、作業メモリが許す範囲内で複数の命令文を読み込む。つまり、プログラム読込部31による加工プログラムの読み込みは、回転テーブル装置10及び加工装置20の動作に合わせることなく、先行して行われる。なお、プログラム読込部31は、数値制御装置30において処理しやすいデータ形式に加工プログラムの命令文を翻訳してもよい。
【0020】
従来の加工プログラムと、本実施形態の数値制御装置30において同じ動作を行うことができるプログラムとを例示する。なお、加工プログラムにおいて、括弧の中はオペレータが理解しやすいよう記載され、数値制御装置30が命令文として認識しないコメント文である。
【0021】
<従来の加工プログラム>
M11; (アンクランプ指令)
G00B90.; (B軸早送り指令)
M10; (クランプ指令)
Z-50.; (Z軸早送り指令)
G01Z-100.F1000; (Z軸切削送り指令)
【0022】
<本実施形態の加工プログラム>
(自動アンクランプ)
G00B90.; (B軸早送り指令)
(自動クランプ)
Z-50.; (Z軸早送り指令)
G01Z-100.F1000; (Z軸切削送り指令)
【0023】
このように、従来の加工プログラムでは、Gコードと呼ばれる命令文を用いて駆動軸の駆動を指定すると共に、Mコードと呼ばれる命令文を用いてアンクランプ動作及びクランプ動作を指定している。一方、本実施形態の加工プログラムでは、アンクランプ動作及びクランプ動作を指定する命令文が省略されている。なお、例示した加工プログラムには、分かりやすいよう「自動アンクランプ」及び「自動クランプ」が行われるタイミングを示すコメント文が挿入されているが、数値制御装置30はこのような動作を意識せずに加工プログラムを作成できることを企図しているため、通常このようなコメント文は挿入されない。
【0024】
命令文判別部32は、プログラム読込部31が読み込んだ命令文の種類を判別する。命令文判別部32は、複数の命令文の種類を記憶する。
【0025】
クランプ命令削除部33は、処理対象となる命令文がクランプ命令文である場合に、当該命令文を削除する。なお、「削除」とは、その命令文を存在しないものとして取り扱うようにすることであって、例えば無効化フラグを追加する等の手法によって指令値算出部38が命令文として認識しないようにすることを含む。
【0026】
指定クランプ有効化部34は、クランプ命令削除部33の有効化及び無効化を行う。つまり、指定クランプ有効化部34は、クランプ命令削除部33を有効化してクランプ命令文を削除する状態と、クランプ命令削除部33を無効化してクランプ命令文を削除しない状態と、のいずれかを選択する。指定クランプ有効化部34は、クランプ命令削除部33の有効化及び無効化をユーザが選択できるよう構成されてもよく、加工プログラムのヘッダにおいてクランプ命令削除部33の有効化又は無効化を指定できるよう構成されてもよい。
【0027】
アンクランプ追加部35は、テーブル回転命令文の実行直前にテーブル11の制止を解除するアンクランプ動作を追加する。具体的には、アンクランプ追加部35は、テーブル回転命令文が回転を指定するA軸Xa又はB軸Xbに対応するA軸クランプ機構14又はB軸クランプ機構15によるA方向回転軸121又はB方向回転軸131の開放を指定する命令(指令値算出部38に対する指令値生成命令)をテーブル回転命令文の直前に追加するものとされ得る。なお、「命令を追加する」とは、必ずしも加工プログラムの段階で命令文を追加することを要求するものではなく、クランプ機構14,15に対する指令信号を出力できるよう、加工プログラムに基づく内部処理段階におけるフラグの生成等であってもよい。具体例として、アンクランプ追加部35は、指令値出力の逐次処理を行うプログラマブルロジックコントローラ(シーケンサ)のラダープログラムにおいて、当該テーブル回転命令文の実行中であることを示す内部信号(フラグ)の立ち上がりをトリガとしてアンクランプ動作を行うリレーとして記述され、指令値を出力させる内部信号を生成するよう構成され得る。
【0028】
アンクランプ追加部35は、対象となるテーブル回転命令文の実行直前の状態がクランプ状態でない場合、アンクランプ動作を追加しないよう構成されてもよい。また、アンクランプ追加部35は、対象となる回転軸(A軸Xa又はB軸Xb)におけるテーブル回転命令文の実行直前の状態がクランプ状態であってもアンクランプ動作を追加しないようにしてもよく、回転を指定する軸にかかわらずアンクランプ動作を追加しないようにしてもよい。つまり、アンクランプ追加部35は、それぞれの回転軸Xa,Xbについて個別にアンクランプ動作を追加してもよく、連続する複数のテーブル回転命令文において回転を指定される複数の軸Xa,Xbについて、最初のテーブル回転命令文の実行直前に一括してアンクランプ動作を追加してもよい。
【0029】
クランプ追加部36は、対象となるテーブル回転命令文の実行直後にテーブル11を制止するクランプ動作を追加する。具体的には、クランプ追加部36は、テーブル回転命令文が回転を指定するA軸Xa又はB軸Xbに対応するA軸クランプ機構14又はB軸クランプ機構15によるA方向回転軸121又はB方向回転軸131の固定を指定する命令をテーブル回転命令文の直後に追加するものとされ得る。クランプ追加部36は、プログラマブルロジックコントローラのラダープログラムにおいて、当該テーブル回転命令文の実行中であることを示す内部信号(フラグ)の立ち下がりをトリガとしてクランプ動作を行うリレーとして記述されてもよい。
【0030】
クランプ追加部36は、アンクランプ追加部35が対象となるテーブル回転命令文の直後が他のテーブル回転命令文である場合、クランプ動作を追加しないよう構成されてもよい。具体的には、クランプ追加部36は、対象となるテーブル回転命令文が回転を指定する回転軸(A軸Xa又はB軸Xb)と直後のテーブル回転命令文が回転を指定する軸とが一致する場合にのみクランプ動作を追加しないようにしてもよく、回転を指定する軸にかかわらずクランプ動作を追加しないようにしてもよい。つまり、クランプ追加部36も、アンクランプ追加部35と同様に、それぞれの回転軸Xa,Xbについて個別にクランプ動作を追加してもよく、連続する複数のテーブル回転命令文において回転を指定される軸Xa,Xbについて、最後のテーブル回転命令文の実行直後に一括してクランプ動作を追加してもよい。
【0031】
クランプ追加部36は、対象となるテーブル回転命令文が切削動作中に行われる場合には、その実行直後にはクランプ動作を追加しないようにしてもよい。また、対象となるテーブル回転命令文の次の命令文が予め設定される種類の命令文、例えば加工装置20の加工を伴う工具Tの移動を指定する切削送り等である場合に、テーブル回転命令文の直後のクランプ動作が完了するまでの間、次以降の命令文に指定される動作のうち、予め設定される種類の動作を禁止してもよい。具体的には、クランプ追加部36は、追加するクランプ動作が完了するまでの間は予め設定される種類の動作を禁止すべきことを示すフラグを設定するよう構成され得る。つまり、対象となるテーブル回転命令文の次以降の命令文が、予め設定される種類の命令文でない場合は、クランプ追加部36が追加したクランプ動作と次以降の命令文の動作とを同時に行うことを許可してもよい。
【0032】
自動クランプ有効化部37は、アンクランプ追加部35及びクランプ追加部36の有効化及び無効化を行う。自動クランプ有効化部37は、指定クランプ有効化部34と同様に、加工プログラム又はユーザの入力に応じてアンクランプ追加部35及びクランプ追加部36の有効化及び無効化を行う構成とされ得る。
【0033】
次に、指定クランプ有効化部34及び自動クランプ有効化部37によりクランプ命令削除部33、アンクランプ追加部35及びクランプ追加部36を有効化する場合(機能ON)と、指定クランプ有効化部34及び自動クランプ有効化部37によりクランプ命令削除部33、アンクランプ追加部35及びクランプ追加部36を無効化する場合(機能OFF)を含む代案の加工プログラムを例示する。
【0034】
<代案の加工プログラム>
*機能ON
(自動アンクランプ)
G00B45.; (B軸早送り指令)
(自動クランプ)
*機能OFF
M11; (アンクランプ指令)
G00B90.; (B軸早送り指令)
M10; (クランプ指令)
【0035】
このように、指定クランプ有効化部34及び自動クランプ有効化部37を機能させることにより、加工プログラムに含まれ、クランプ機構14,15の動作を指定するクランプ命令文によるクランプ動作及びアンクランプ動作と、アンクランプ追加部35によるアンクランプ動作及びクランプ追加部36によるクランプ動作とを同一の加工プログラムの中で実行可能である。
【0036】
数値制御装置30は、指定クランプ有効化部34と自動クランプ有効化部37とを独立して機能させ、クランプ命令削除部33を無効にした状態でアンクランプ追加部35及びクランプ追加部36を有効化することで、加工プログラムに含まれるクランプ動作及びアンクランプ動作と、アンクランプ追加部35及びクランプ追加部36によるにより追加されるアンクランプ動作及びクランプ動作との両方を実行できるように構成されてもよい。
【0037】
指令値算出部38は、上述の他の構成要素によってクランプ動作及びアンクランプ動作が追加又は削除された加工プログラムの内容を実現し得るよう、回転テーブル装置10の各軸Xa,Xb及び加工装置20の各軸に対する時間毎の指令値の適切な値を算出する。この指令値の算出方法については、従来の数値制御と同様とすることができる。
【0038】
運転制御部39は、指令値算出部38が算出した指令値を記憶し、回転テーブル装置10及び加工装置20に対して記憶している指令値を時刻通りに出力する。
【0039】
図2に、数値制御装置30におけるクランプ機構14,15の制御に係る処理の流れを示す。クランプ機構14,15の制御は、対象命令文確認工程(ステップS1)と、クランプ状態確認工程(ステップS2)と、アンクランプ動作追加工程(ステップS3)と、切削動作確認工程(ステップS4)と、直後回転命令文確認工程(ステップS5)と、クランプ動作追加工程(ステップS6)と、指定動作禁止フラグ付加工程(ステップS7)と、クランプ完了確認工程(ステップS8)と、指定動作禁止フラグ削除工程(ステップS9)と、を備える。この処理は、加工プログラムのそれぞれの命令文に対して行われる。
【0040】
ステップS1の対象命令文確認工程では、制御の対象となる命令文がテーブル回転命令文であるか否かを確認する。対象となる命令文がテーブル回転命令文である場合には次のステップS2に進む。対象となる命令文がテーブル回転命令文でない場合には当該命令文に対する処理を終了し、加工プログラムが続いている場合には次の命令文について同じ処理を開始する。
【0041】
ステップS2のクランプ状態確認工程では、対象となる命令文の実行直前の状態がクランプ状態であるか否かを確認する。直前の状態がクランプ状態である場合には処理は次のステップS3に進み、直前の状態がクランプ状態でない場合には処理はステップS4に進む。
【0042】
ステップS3のアンクランプ動作追加工程では、アンクランプ動作を指定する命令を対象となる命令文の直前に追加する。
【0043】
ステップS4の切削動作確認工程では、対象となる命令文の実行時に切削動作が行われているか否かを確認する。対象となる命令文がテーブル切削送り命令文である場合に切削動作が行われていると判断できる。また、対象となる命令文より前に、切削動作の開始を指定する命令文が存在し、且つ切削動作の開始を指定する命令文と対象となる命令文との間に切削動作の終了を指定する命令文が存在しない場合、対象となる命令文の実行時に切削動作が行われていると判断してもよい。対象となる命令文の実行時に切削動作が行われている場合には当該命令に対する処理を終了し、切削動作が行われていない場合には処理はステップS5に進む。
【0044】
ステップS5の直後命令文確認工程では、対象となる命令文の直後の命令文がテーブル回転命令文であるか否かを確認する。直後の命令文がテーブル回転命令文である場合には当該命令に対する処理を終了し、直後の命令文がテーブル回転命令文でない場合には処理はステップS6に進む。
【0045】
ステップS6のクランプ動作追加工程では、対象となる命令文の直後にクランプ動作を指定する命令を追加する。
【0046】
ステップS7の指定動作禁止フラグ付加工程では、予め設定される種類の動作を禁止すべきことを示す指定動作禁止フラグを付加する。
【0047】
ステップS8のクランプ完了確認工程では、ステップS6で追加したクランプ動作命令が完了しているか否かを確認する。クランプ動作が完了してしない場合には再度確認を行い、クランプ動作が完了している場合には処理はステップS9に進む。
【0048】
ステップS9の指定動作禁止フラグ削除工程では、ステップS7で付加した指定動作禁止フラグを削除する。
【0049】
以上のように、数値制御装置30は、アンクランプ追加部35及びクランプ追加部36を有し、加工プログラムにクランプ機構14,15の動作を指定する命令を記述しなくても、適切なタイミングでクランプ機構14,15のクランプ動作及びアンクランプ動作を自動的に実行することができる。これにより、加工プログラムが簡略化でき、加工プログラムに作成における人為ミスを抑制できるとともに、加工のサイクルタイムが不必要に長くなることを防止できる。
【0050】
対象となるテーブル回転命令文の実行直前の状態がアンクランプ状態である場合にはアンクランプ追加部35がアンクランプ動作を追加しないよう構成し、対象となるテーブル回転命令文の直後の命令文がテーブル回転命令文である場合にはクランプ追加部がクランプ動作を追加しないよう構成することによって、不必要なアンクランプ動作及びクランプ動作を行わないようにして、サイクルタイムを短くできる。特に、テーブル回転命令文が複数連続する場合に、連続する複数のテーブル回転命令文において回転を指定される軸について、アンクランプ追加部35が最初のテーブル回転命令文の実行直前に一括してアンクランプ動作を追加し、クランプ追加部が最後のテーブル回転命令文の実行直後に一括してクランプ動作を追加することによって、サイクルタイムをより短くできる。
【0051】
数値制御装置30において、クランプ追加部36を、テーブル回転命令文が切削動作中に行われるものである場合に、その実行直後にクランプ動作を追加しない構成とすることによって、加工精度の低下を抑制することができる。なお、「テーブル回転命令文が切削動作中に行われる」とは、テーブルに搭載したワークを回転させながら切削していることを意味する。回転させながら切削する場合にクランプは不要であるため、不要なクランプを追加しないことで、クランプ動作に伴うサイクルタイムの増大を抑制できる。
【0052】
数値制御装置30において、クランプ追加部36を、テーブル回転命令文の次以降の命令文が予め設定される種類の命令文である場合に、テーブル回転命令文の直後のクランプ動作が完了するまでの間、予め設定される種類の動作を禁止するフラグを追加する構成とすることによって、例えば、切削動作に関わる動作をクランプ動作が完了するまで禁止することによって、加工不良を防止することができる。なお、「指定される動作を禁止する」とは、指定されない動作はクランプ動作と並行して行うことができることを意味する。これにより加工精度に影響しない動作をクランプ動作と並行して行うことができるので、クランプ動作に伴うサイクルタイムの増大を抑制できる。
【0053】
数値制御装置30は、アンクランプ追加部35及びクランプ追加部36の有効化及び無効化を行う自動クランプ有効化部37を備えるので、自動的なアンクランプ動作及びクランプ動作の追加を停止して、従来と同様に加工プログラムに記述された命令に従ってアンクランプ動作及びクランプ動作を行うことができる。例えば、加工負荷が比較的小さい割出し加工では、クランプを行わずに加工できることがある。このような場合にクランプを無効化することで、サイクルタイムの増大を抑制できる。なお、加工プログラム中に有効化及び無効化を実行する指令を記載することなどにより、加工プログラム実行中に有効化及び無効化を行うこともできる。
【0054】
数値制御装置30は、クランプ命令削除部33と指定クランプ有効化部34とを備えるので、工プログラムに記述されたアンクランプ動作及びクランプ動作を無視してアンクランプ追加部35及びクランプ追加部36のみに従ってアンクランプ動作及びクランプ動作を行うことも、従来と同様に加工プログラムに従ってアンクランプ動作及びクランプ動作を行うこともできる。
【0055】
指定クランプ有効化部34によりプログラムに従ったクランプが有効な場合かつ、自動クランプ有効化部37によりアンクランプ追加とクランプ追加が有効である場合、プログラムに従ったクランプと自動クランプの両方が有効である。一般的に、プログラム構成上指令可能、かつ加工精度に影響が無い場合、回転動作よりも前の他の動作と同時にアンクランプ動作を行った方がサイクルタイムは短縮される。このように、プログラムに従ったクランプと自動クランプを併用可能にすることで、サイクルタイムをより短くできる。
【0056】
図3及び
図4に、プログラマブルロジックコントローラにおいて、アンクランプ動作及びクランプ動作を追加する場合を例にとり、テーブル早送り命令文の実行時及びテーブル切削送り命令文の実行時の信号変化を示すタイムチャートを示す。タイムチャートの破線矢印は、トリガとなる信号とそれにより状態が定められる信号との関係を表している。このように、適切な信号をトリガとして選択することで、適切なタイミングでアンクランプ動作及びクランプ動作を追加することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0058】
本開示に係る回転テーブル装置は、例えば測定器、工具等、ワークとは異なる対象物を回転位置決めしてもよい。また、本開示に係る回転テーブル装置は、加工システム以外のシステムにおいて使用されてもよい。
【0059】
上述の実施形態における各構成要素は、技術常識に照らして、最小限度の機能を維持できる範囲内で省略できる。
【符号の説明】
【0060】
1 加工システム
10 回転テーブル装置
11 テーブル
12 A軸駆動機構
13 B軸駆動機構
14 A軸クランプ機構
15 B軸クランプ機構
20 加工装置
30 数値制御装置
31 プログラム読込部
32 命令文判別具
33 クランプ命令削除部
34 指定クランプ有効化部
35 アンクランプ追加部
36 クランプ追加部
37 自動クランプ有効化部
38 指令値算出部
39 運転制御部
Xa A軸
Xb B軸
W ワーク