(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】エンパグリフロジン共結晶を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/351 20060101AFI20250107BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250107BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20250107BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250107BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250107BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61K31/351
A61K47/32
A61P9/04
A61P3/10
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/26
A61K9/20
(21)【出願番号】P 2023534902
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2021018414
(87)【国際公開番号】W WO2022124749
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0170136
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,キヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミンクワン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンス
(72)【発明者】
【氏名】パク,シンジョン
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/131431(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2111248(KR,B1)
【文献】特表2013-508335(JP,A)
【文献】国際公開第2020/058095(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105456211(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104623684(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104473916(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110721170(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンパグリフロジン共結晶を含有し、組成物内の水分含有量が3%以下である、医薬組成物
を含有する医薬製剤であって、
前記エンパグリフロジン共結晶は、エンパグリフロジンL-プロリンであり、
前記製剤は、錠剤であり、
前記錠剤は、フィルムコーティング錠であり、
コーティング基剤にヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まないものであり、
コーティング基剤にポリビニルアルコールを含む、医薬製剤。
【請求項2】
組成物内の水分含有量が0.1~3%である、請求項1に記載の
医薬製剤。
【請求項3】
エンパグリフロジン共結晶との練合工程において、結合溶媒として水分5%未満の有機溶媒を用いるものである、請求項1に記載の
医薬製剤。
【請求項4】
希釈剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤からなる群から選ばれた1以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の
医薬製剤。
【請求項5】
希釈剤としてラクトースを含まないものである、請求項
4に記載の
医薬製剤。
【請求項6】
前記希釈剤として糖アルコールを含む、請求項
5に記載の
医薬製剤。
【請求項7】
前記糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトールおよびマルチトールからなる群から選ばれた1以上である、請求項
6に記載の
医薬製剤。
【請求項8】
糖尿病、糖尿病合併症または慢性心不全治療に用いられる、請求項
1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
糖尿病、糖尿病合併症または慢性心不全治療に用いられる1以上の薬物をさらに含む、請求項
8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記薬物は、ビグアニド系薬、チアゾリジンジオン(TZD)系薬、DPP-IV阻害薬、SGLT2阻害薬、SGLT1/SGLT2二重阻害薬、GLP-1受容体アゴニスト、スルフォニルウレア(SU)系薬、メグリチニド類似体薬物およびアルファーグルコシダーゼ阻害薬(AGI)からなる群から選ばれた1以上の薬物である、請求項
9に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンパグリフロジン共結晶を含有する医薬組成物およびこれを含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エンパグリフロジン(empagliflozin)は、次の式Iで表されるSGLT2(Sodium Glucose Co-Transporter 2)阻害剤系薬物であって、2型糖尿病治療薬(Type 2 diabetes)として市販中であり、慢性心不全(Heart failure)治療薬としても開発中である。
【0003】
【0004】
エンパグリフロジンは、遊離塩基の結晶形または無定形などを主成分として用いられることができ、さらに共結晶としても用いられることができる。
【0005】
エンパグリフロジン共結晶は、共結晶の構造的特性や外的要因(水分、温度など)によって構造の維持が難しく、特に水分によって構造の維持が難しいことが発見された。エンパグリフロジン共結晶が維持されなかった場合、物理化学的性質が変化してしまい、体内吸収に影響を与えうるため、共結晶を維持できる製剤技術の開発が必要である。
【0006】
また、エンパグリフロジン共結晶は、製剤化する過程で、対照薬として用いられた希釈剤であって、製剤化で最も一般的に使用される希釈剤の一つであるラクトースを用いた場合、褐変現象が観察された。そこで、このような問題点も改善することができる製剤技術が必要な状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エンパグリフロジン共結晶形を維持できる医薬組成物を提供するものである。
【0008】
本発明の別の目的は、エンパグリフロジン共結晶を製剤化する際、対照薬として用いられた希釈剤であって、製剤化で最も一般的に使用される希釈剤の一つであるラクトースを用いた場合に発生する褐変現象を防止する医薬組成物を提供するものである。
【0009】
本発明の別の目的は、エンパグリフロジン共結晶の吸湿性を遮断することができるコーティング基剤を含む医薬製剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これを具体的に説明すると次の通りである。なお、本発明に開示された各々の説明および実施形態は、それぞれ他の説明および実施形態にも適用することができる。すなわち、本発明に開示された多様な要素のあらゆる組み合わせが本発明の範疇に属する。また、以下に述べる具体的な叙述により本発明の範疇が制限されると解釈してはならない。
【0011】
本発明の一具体例によると、本発明は、エンパグリフロジン共結晶を含有し、組成物内の水分含有量が3%以下である医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明の医薬組成物において、エンパグリフロジン共結晶は、組成物全体に対して0.1~30重量%、好ましくは0.3~20重量%含まれてもよい。また、エンパグリフロジン共結晶は、エンパグリフロジンL-プロリンであってもよい。
【0013】
本発明の医薬組成物において、組成物内の水分含有量を3%以下に最小化し、エンパグリフロジン共結晶形の構造を維持することができる。すなわち、前記水分含有量は、最小化にするほどより好ましく、これ故に数値範囲の上限に技術的特徴がある。ただし、前記水分含有量は、0.1~3%であってもよい。
【0014】
本発明の医薬組成物において、前記医薬組成物を製造するためのエンパグリフロジン共結晶との練合工程において、結合溶媒として水分5%未満の有機溶媒を使用することができる。具体的には、前記有機溶媒は、無水エタノール(例えば、USP99.5%以上)またはイソプロピルアルコールであってもよいが、水分5%未満の有機溶媒であれば、制限なく使用することができる。
【0015】
本発明の医薬組成物において、前記医薬組成物は、希釈剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤からなる群から選ばれた1以上の添加剤をさらに含まれてもよい。
【0016】
本発明の医薬組成物において、前記希釈剤としてラクトースを含まないものであってもよい。また、前記希釈剤として糖アルコールを含まれてもよい。例えば、前記糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトールおよびマルチトールからなる群から選ばれた1以上であってもよく、好ましくはマンニトールを使用することができる。希釈剤としてラクトースの代わりに前記糖アルコールを使用すると、ラクトースを含めて製剤化した場合に観察される褐変現象を防止することができる。一方、前記糖アルコールは、組成物全体に対して30~70重量%含まれてもよく、具体的には、40~60重量%含まれてもよい。
【0017】
また、前記希釈剤として微結晶性セルロース、粉末セルロース、デンプン、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ化微結晶セルロース、デキストレート、デキストロース、フルクトースおよびスクロースからなる群から選ばれた1以上をさらに含むことができるが、これらに限定されない。一方、糖アルコール以外に追加される他の希釈剤は、組成物全体に対して10~40重量%含まれてもよく、具体的には、15~30重量%含まれてもよい。
【0018】
また、前記結合剤は、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、カルボマー、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドンおよびポビドンからなる群から選ばれた1以上であってもよいが、これらに限定されない。一方、前記結合剤は、組成物全体に対して0.5~10重量%含まれてもよく、具体的には、1~4重量%含まれてもよい。
【0019】
また、前記崩壊剤は、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸グリシンナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれた1以上であってもよいが、これらに限定されない。一方、前記崩壊剤は、組成物全体に対して2~20
重量%含まれてもよく、具体的には、4~12重量%含まれてもよい。
【0020】
また、前記滑沢剤は、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびベヘン酸グリセリルからなる群から選ばれた1以上であってもよいが、これらに限定されない。一方、前記滑沢剤は、組成物全体に対して0.1~10重量%含まれてもよく、具体的には、0.5~4重量%含まれてもよい。
【0021】
本発明のもう一つの具体例によれば、本発明は、本発明の医薬組成物を含む医薬製剤を提供する。
【0022】
本発明の医薬製剤において、前記製剤は、錠剤、カプセル、ペレット、顆粒剤または散剤であってもよく、好ましくは錠剤であってもよい。また、前記錠剤は、フィルムコーティング錠であってもよい。
【0023】
本発明の医薬製剤、特に前記フィルムコーティング錠において、コーティング基剤にヒプロメロースを含まないものであってもよい。代わりに、コーティング基剤にポリビニルアルコール(PVA)を含むものであってもよい。エンパグリフロジンL-プロリンは、吸湿性が強いという問題があるが、水分による吸湿を最大限に遮断するために、ポリビニルアルコールコーティング基剤を使用することができる。
【0024】
一方、本発明の医薬製剤は、糖尿病、糖尿病合併症または慢性心不全治療に用いられることができる。前記糖尿病は、1型糖尿病または2型糖尿病であってもよく、好ましくは2型糖尿病であってもよい。また、前記糖尿病合併症は、網膜症、腎症または神経障害、糖尿病性足潰瘍、腫瘍または大血管症であってもよい。併せて、前記慢性心不全は、駆出率が低下した心不全(HFrEF;Heart Failure with reduced Ejection Fraction)または駆出率が保たれた心不全(HFpEF; Heart Failure with preserved Ejection
Fraction)であってもよい。
【0025】
また、本発明の一具体例によれば、本発明の医薬製剤は、糖尿病、糖尿病合併症または慢性心不全治療に用いられる1以上の薬物をさらに含むことができる。具体的には、前記薬物は、ビグアニド系薬、チアゾリジンジオン(TZD)系薬、DPP-IV阻害薬、SGLT2阻害薬、SGLT1/SGLT2 二重阻害薬、GLP-1受容体アゴニスト、スルフォニルウレア(SU)系薬、メグリチニド類似体薬物およびアルファーグルコシダーゼ阻害薬(AGI)からなる群から選ばれた1以上の薬物であってもよい。
【0026】
前記ビグアニド系薬、チアゾリジンジオン(TZD)系薬、DPP-IV阻害薬、SGLT2阻害薬、SGLT1/SGLT2二重阻害薬、GLP-1受容体アゴニスト、スルフォニルウレア(SU)系薬、メグリチニド類似体薬物およびアルファーグルコシダーゼ阻害薬(AGI)に属する薬物の例は、次の通りである:
ビグアニド系薬:メトホルミン(metformin)など;
チアゾリジンジオン(TZD)系薬:ロベグリタゾン(lobeglitazone)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)またはピオグリタゾン(pioglitazone)など;
DPP-IV阻害薬:シタグリプチン(sitagliptin)、ビルダグリプチン(vildagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)、リナグリプチン(linagliptin)、アログリプチン(alogliptin)、ゲミグリプチン(gemigliptin)、テネリグリプチン(teneligliptin)、アナグリプチン(anagliptin)またはエボグリプチン(evoglip
tin)など;
SGLT-2阻害薬:ダパグリフロジン(dapagliflozin)、カナグリフロジン(canagliflozin)またはイプラグリフロジン(ipragliflozin)など;
SGLT1/SGLT2二重阻害薬:ソタグリフロジン(sotagliflozin)など;
GLP-1受容体アゴニスト:セマグルチド(semaglutide)など;
スルフォニルウレア(SU)系薬:グリメピリド(glimepiride)、グリベンクラミド(glibenclamide)、グリクラジド(gliclazide)またはグリピジド(glipizide)など
メグリチニド類似体薬物:ナテグリニド(nateglinide)、レパグリニド(repaglinide)など
アルファーグルコシダーゼ阻害薬(AGI):アカルボース(acarbose)、ボグリボース(voglibose)またはミグリトール(miglitol)など。
【発明の効果】
【0027】
本発明の医薬組成物は、エンパグリフロジン共結晶形を維持することができる作用効果を示す。
【0028】
また、本発明の医薬組成物は、エンパグリフロジン共結晶を製剤化する際、 対照薬と
して用いられた希釈剤であって、製剤化で最も一般的に使用される希釈剤の一つであるラクトースを用いた場合に発生する褐変現象を防止する作用効果を示す。
【0029】
また、本発明の医薬製剤は、エンパグリフロジン共結晶の吸湿性を遮断することができるコーティング基剤を含み、吸湿遮断効果を極大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実験例1において、共結晶が維持するまたは変化するか否かを観察したXRD結果である。
【
図2】実験例2において、共結晶が維持するまたは変化するか否かを観察したXRD結果である(
図2:エタノール、
図3:イソプロピルアルコール)。
【
図3】実験例2において、共結晶が維持するまたは変化するか否かを観察したXRD結果である(
図2:エタノール、
図3:イソプロピルアルコール)。
【
図4】実験例3において、希釈剤の種類によって褐変現象が発生するか否かを観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施例および実験例を通じてより詳しく説明する。しかし、これらの実施例および実験例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例および実験例に局限されるものではない。
【0032】
実験例1.水分含有量による共結晶維持確認の試験
以下の表1に記載された組成により実施例1のコーティング錠を製造した。実施例1の水分含有量は1.6%である
【0033】
【0034】
また、水分含有量を2.6%および2.9%に調節したこと以外は、実施例1と同様の組成により実施例2および3のコーティング錠を製造した。また、水分含有量を3.2%、3.6%および4.0%に調節したこと以外は、実施例1と同様の組成により比較例1~3のコーティング錠を製造した。
【0035】
実施例1~3、比較例1~3の水分含有量による共結晶の維持または変化の結果を次の表2にまとめた。
【0036】
【0037】
上記の表2および
図1において確認されるように、実施例1~3のコーティング錠は、エンパグリフロジン共結晶(L-プロリン)が維持されるのに対し、比較例1~3のコーティング錠は、エンパグリフロジン共結晶(L-プロリン)の変化が観察された。
【0038】
実験例2.有機溶媒の水分による共結晶の維持確認試験
次の表3に記載された組成により実施例4の組成物を製造した。実施例4の組成物を製造する時、練合工程において無水エタノールを用いた。
【0039】
【0040】
また、結合液の水分含有量が5%および10%に調節したこと以外は、実施例4と同様の組成により比較例4および5の組成物を製造した。また、エタノールの代わりにイソプロピルアルコールを用い、結合液の水分含有量を0%、5%および10%に調節したこと以外は、実施例4と同様の組成により実施例5、比較例6および7の組成物を製造した。
【0041】
実施例4および5、比較例4~7の共結晶の維持または変化の結果を次の表4にまとめた。
【0042】
【0043】
上記の表4、
図2および
図3において確認されるように、実施例4および5の組成物は、エンパグリフロジン共結晶(L-プロリン)が維持されるのに対し、比較例4~7の組成物は、エンパグリフロジン共結晶(L-プロリン)の変化が観察された。
【0044】
実験例3.希釈剤の種類による褐変現象確認試験
次の表5に記載された組成により実施例6および比較例8の組成物を製造した。
【0045】
【0046】
図4において確認されるように、希釈剤としてラクトースを用いた比較例8は、変色発生が観察された。これは、L-プロリンのアミン基とラクトースの還元糖が反応し、褐変現象が発生(マイヤール反応)したものと推定される。
【0047】
反面、ラクトースの代わりにマンニトールを用いた実施例6は、褐変現象が観察されなかった。
【0048】
実験例4.コーティング基剤の種類による吸湿性確認試験
実施例1と同様の組成により水分含有量が2.3%である実施例7のコーティング錠を製造した。また、次の表6に記載された組成により水分含有量が2.3%である比較例9のコーティング錠を製造した。
【0049】
【0050】
加速条件(40±2℃/RH 75±5%、close 6M)において、実施例7および比較例9の吸湿性を比較し、その結果を次の表7に示す
【0051】
【0052】
上記の表7において確認されるように、コーティング基剤としてHPMCを用いた比較例9は、水分変化が2.3%から4.5%と約2.2%の水分が増加したのに対し、コーティング基剤としてPVAを用いた実施例7は、水分変化が2.3%から2.6%と約0.3%の水分が増加したことに止まっていることが観察された。したがって、エンパグリフロジンL-プロリンの吸湿性を遮断するためには、コーティング基剤としてHPMCを用いるよりもPVAを用いた方が好ましい。
【0053】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることが理解されるであろう。これに関連し、上述の実施形態はあらゆる面で例示的なものであって、限定的なものではないことを理解すべきである。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味および範囲、およびその等価概念から導かれるすべての変更または変形形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。