(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】エレベーターのガイドレール装置及びその据付方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
B66B7/02 E
B66B7/02 G
(21)【出願番号】P 2023550925
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036187
(87)【国際公開番号】W WO2023053361
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】河野 公彬
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-201695(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203699(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/170964(WO,A1)
【文献】特開平10-310341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レール部材と、前記第1レール部材に継ぎ合わせられる第2レール部材とを有しており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、
前記第1レール部材と前記第2レール部材との継ぎ目を跨いで前記第1レール部材及び前記第2レール部材に固定される目板、及び
前記目板を前記ガイドレール本体に固定する複数の固定具
を備え、
前記第1レール部材は、前記昇降体に対向する第1刃面と、前記第1刃面とは反対側の面である第1背面とを有しており、
前記第2レール部材は、前記昇降体に対向する第2刃面と、前記第2刃面とは反対側の面である第2背面とを有しており、
前記第1背面には、前記第1刃面に対して上下方向において傾斜している第1傾斜面が形成されており、
前記目板は、前記第1傾斜面に重ね合わせられる第1重ね合わせ面と、前記第2背面に重ね合わせられる第2重ね合わせ面とを有しており、
前記第1重ね合わせ面は、前記第2重ね合わせ面に対して傾斜しており、
前記第2重ね合わせ面を前記第2背面に重ね合わせたとき、前記第1重ね合わせ面は、前記第1傾斜面に対して平行であり、
前記複数の固定具を緩めた状態では、前記ガイドレール本体に対する前記目板の位置が上下方向へ調整可能であるエレベーターのガイドレール装置。
【請求項2】
前記第2背面には、前記第2刃面に対して上下方向において傾斜している第2傾斜面が形成されており、
前記第2重ね合わせ面は、前記第2傾斜面に重ね合わせられる請求項1記載のエレベーターのガイドレール装置。
【請求項3】
第1レール部材と、前記第1レール部材に継ぎ合わせられる第2レール部材とを有しており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、
前記第1レール部材と前記第2レール部材との継ぎ目を跨いで前記第1レール部材及び前記第2レール部材に固定される目板、
前記目板を前記ガイドレール本体に固定する複数の固定具、及び
前記第1レール部材と前記目板との間に介在するシム
を備え、
前記第1レール部材は、前記昇降体に対向する第1刃面と、前記第1刃面とは反対側の面である第1背面とを有しており、
前記第2レール部材は、前記昇降体に対向する第2刃面と、前記第2刃面とは反対側の面である第2背面とを有しており、
前記目板は、前記シムに重ね合わせられる第1重ね合わせ面と、前記第2背面に重ね合わせられる第2重ね合わせ面とを有しており、
前記シムは、前記第1背面に重ね合わせられるシム前面と、前記第1重ね合わせ面が重ね合わせられるシム背面とを有しており、
前記シム背面は、前記シム前面に対して、上下方向において傾斜しており、
前記第1重ね合わせ面は、前記第2重ね合わせ面に対して傾斜しており、
前記第2重ね合わせ面を前記第2背面に重ね合わせたとき、前記第1重ね合わせ面は、前記シム背面に対して平行であり、
前記固定具を緩めた状態では、前記ガイドレール本体に対する前記目板の位置が上下方向へ調整可能であるエレベーターのガイドレール装置。
【請求項4】
前記目板には、複数の長孔が設けられており、
各前記長孔には、前記複数の固定具のうち、対応する固定具が通され、
各前記長孔の上下方向寸法は、各前記長孔の左右方向寸法よりも大きい請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエレベーターのガイドレール装置。
【請求項5】
第1レール部材と、前記第1レール部材に継ぎ合わせられる第2レール部材とを有しており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、
前記第1レール部材と前記第2レール部材との継ぎ目を跨いで前記第1レール部材及び前記第2レール部材に固定される目板、及び
前記目板を前記ガイドレール本体に固定する複数の固定具
を備え、
前記第1レール部材は、前記昇降体に対向する第1刃面と、前記第1刃面とは反対側の面である第1背面とを有しており、
前記第2レール部材は、前記昇降体に対向する第2刃面と、前記第2刃面とは反対側の面である第2背面とを有しており、
前記第1背面における前記第2背面に隣り合う部分には、前記第2レール部材に近い側から遠い側へ向けて前記第1刃面との間隔が段階的に大きくなる複数の取付面が形成されており、
前記目板は、前記複数の取付面のうちのいずれか1つと、前記第2背面とに重ね合わせられているエレベーターのガイドレール装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のエレベーターのガイドレール装置の据付方法であって、
前記第1刃面と前記第2刃面とを治具の位置決め平面に当て、前記第1刃面と前記第2刃面とを面一にするとともに、上下方向への前記目板の位置を調整する工程、及び
前記複数の固定具により前記目板を前記ガイドレール本体に固定する工程
を含むエレベーターのガイドレール装置の据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのガイドレール装置及びその据付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーターのガイドレール固定装置では、上部レールと下部レールとの継ぎ目に、平板状の目板が当てられている。目板は、複数のボルトと複数のナットとによって、上部レール及び下部レールに固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のガイドレール固定装置では、据付時に、下部レールの刃面に対して上部レールの刃面が面一になるように、下部レールに対する上部レールの位置が調整される。各刃面は、かごに対向する面である。
【0005】
このとき、下部レールにおける目板が当てられる面と、上部レールにおける目板が当てられる面との間に段差が生じる場合がある。この場合、下部レール又は上部レールと、目板との間にシムを挟み込む必要が生じ、シムの厚さ又は枚数を段差に応じて調整する必要があるため、ガイドレールの芯出し作業に手間がかかる。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ガイドレール本体の芯出し作業を容易にすることができるエレベーターのガイドレール装置及びその据付方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベーターのガイドレール装置は、第1レール部材と、第1レール部材に継ぎ合わせられる第2レール部材とを有しており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、 第1レール部材と第2レール部材との継ぎ目を跨いで第1レール部材及び第2レール部材に固定される目板、及び目板をガイドレール本体に固定する複数の固定具を備え、第1レール部材は、昇降体に対向する第1刃面と、第1刃面とは反対側の面である第1背面とを有しており、第2レール部材は、昇降体に対向する第2刃面と、第2刃面とは反対側の面である第2背面とを有しており、第1背面には、第1刃面に対して上下方向において傾斜している第1傾斜面が形成されており、目板は、第1傾斜面に重ね合わせられる第1重ね合わせ面と、第2背面に重ね合わせられる第2重ね合わせ面とを有しており、第1重ね合わせ面は、第2重ね合わせ面に対して傾斜しており、第2重ね合わせ面を第2背面に重ね合わせたとき、第1重ね合わせ面は、第1傾斜面に対して平行であり、複数の固定具を緩めた状態では、ガイドレール本体に対する目板の位置が上下方向へ調整可能である。
また、本開示に係るエレベーターのガイドレール装置は、第1レール部材と、第1レール部材に継ぎ合わせられる第2レール部材とを有しており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、第1レール部材と第2レール部材との継ぎ目を跨いで第1レール部材及び第2レール部材に固定される目板、目板をガイドレール本体に固定する複数の固定具、及び第1レール部材と目板との間に介在するシムを備え、第1レール部材は、昇降体に対向する第1刃面と、第1刃面とは反対側の面である第1背面とを有しており、第2レール部材は、昇降体に対向する第2刃面と、第2刃面とは反対側の面である第2背面とを有しており、目板は、シムに重ね合わせられる第1重ね合わせ面と、第2背面に重ね合わせられる第2重ね合わせ面とを有しており、シムは、第1背面に重ね合わせられるシム前面と、第1重ね合わせ面が重ね合わせられるシム背面とを有しており、シム背面は、シム前面に対して、上下方向において傾斜しており、第1重ね合わせ面は、第2重ね合わせ面に対して傾斜しており、第2重ね合わせ面を第2背面に重ね合わせたとき、第1重ね合わせ面は、シム背面に対して平行であり、固定具を緩めた状態では、ガイドレール本体に対する目板の位置が上下方向へ調整可能である。
また、本開示に係るエレベーターのガイドレール装置は、第1レール部材と、第1レール部材に継ぎ合わせられる第2レール部材とを有しており、昇降体の昇降を案内するガイドレール本体、第1レール部材と第2レール部材との継ぎ目を跨いで第1レール部材及び第2レール部材に固定される目板、及び目板をガイドレール本体に固定する複数の固定具を備え、第1レール部材は、昇降体に対向する第1刃面と、第1刃面とは反対側の面である第1背面とを有しており、第2レール部材は、昇降体に対向する第2刃面と、第2刃面とは反対側の面である第2背面とを有しており、第1背面における第2背面に隣り合う部分には、第2レール部材に近い側から遠い側へ向けて第1刃面との間隔が段階的に大きくなる複数の取付面が形成されており、目板は、複数の取付面のうちのいずれか1つと、第2背面とに重ね合わせられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のエレベーターのガイドレール装置及びその据付方法によれば、ガイドレール本体の芯出し作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1によるエレベーターを示す側面図である。
【
図2】
図1のかごガイドレール装置の一部を拡大して示す正面図である。
【
図3】
図2のかごガイドレール装置を示す側面図である。
【
図4】
図3のガイドレール本体のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図6】
図3のガイドレール装置の据付途中の状態を示す側面図である。
【
図7】
図6の第1レールの位置を調整している状態を示す側面図である。
【
図8】
図3の目板の位置調整方法を説明する側面図である。
【
図9】実施の形態2によるかごガイドレール装置の要部を示す側面図である。
【
図10】実施の形態3によるかごガイドレール装置の要部を示す側面図である。
【
図11】
図10の目板の位置調整方法を説明する側面図である。
【
図12】実施の形態4によるかごガイドレール装置の要部を示す側面図である。
【
図13】実施の形態5によるかごガイドレール装置の要部を示す側面図である。
【
図15】実施の形態6によるかごガイドレール装置の要部を示す側面図である。
【
図16】実施の形態7によるかごガイドレール装置の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベーターを示す側面図である。
図1において、昇降路1の上には、機械室2が設けられている。機械室2には、巻上機3及びそらせ車6が設置されている。
【0011】
巻上機3は、巻上機本体4と、駆動シーブ5とを有している。巻上機本体4は、図示しない巻上機モータと、図示しない巻上機ブレーキとを有している。巻上機モータは、駆動シーブ5を回転させる。巻上機ブレーキは、駆動シーブ5の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキは、駆動シーブ5の回転を制動する。
【0012】
駆動シーブ5及びそらせ車6には、懸架体7が巻き掛けられている。懸架体7としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体7における長手方向の第1端部には、かご8が接続されている。懸架体7における長手方向の第2端部には、釣合おもり9が接続されている。
【0013】
かご8及び釣合おもり9は、懸架体7によって昇降路1内に吊り下げられている。また、かご8及び釣合おもり9は、駆動シーブ5を回転させることによって、昇降路1内を昇降する。
【0014】
昇降路1内には、一対のかごガイドレール装置10と、一対の釣合おもりガイドレール装置11とが設置されている。
図1では、片側のかごガイドレール装置10、及び片側の釣合おもりガイドレール装置11のみが示されている。
【0015】
一対のかごガイドレール装置10は、かご8の昇降を案内する。一対の釣合おもりガイドレール装置11は、釣合おもり9の昇降を案内する。
【0016】
かご8は、かご枠12及びかご室13を有している。かご枠12には、懸架体7が接続されている。かご室13は、かご枠12に支持されている。
【0017】
図2は、
図1のかごガイドレール装置10の一部を拡大して示す正面図である。
図3は、
図2のかごガイドレール装置10を示す側面図である。
【0018】
かごガイドレール装置10は、ガイドレール本体21、目板22、及び複数の固定具23を有している。
【0019】
ガイドレール本体21は、昇降体としてのかご8の昇降を案内する。また、ガイドレール本体21は、図示しない複数のレールブラケットを介して、昇降路壁に対して固定されている。
【0020】
また、ガイドレール本体21は、第1レール部材31と、第2レール部材32とを有している。第1レール部材31は、第2レール部材32の上端に継ぎ合わされている。
【0021】
目板22は、第1レール部材31と第2レール部材32との継ぎ目を跨いで、第1レール部材31及び第2レール部材32に固定されている。また、目板22は、複数の固定具23によって、ガイドレール本体21に固定されている。
図3では、複数の固定具23は、省略されている。
【0022】
各固定具23としては、ボルト及びナットの組み合わせが用いられている。第1レール部材31及び第2レール部材32には、図示しない複数の取付孔がそれぞれ設けられている。各固定具23は、対応する取付孔に通されている。
【0023】
第1レール部材31は、第1刃面31aと、第1背面31bとを有している。第1刃面31aは、かご8に対向する面である。第1背面31bは、第1刃面31aとは反対側の面であり、昇降路壁に対向する面である。
【0024】
第2レール部材32は、第2刃面32aと、第2背面32bとを有している。第2刃面32aは、かご8に対向する面である。第2背面32bは、第2刃面32aとは反対側の面であり、昇降路壁に対向する面である。
【0025】
第1背面31bには、第1傾斜面31cが形成されている。第1傾斜面31cは、第1刃面31aに対して上下方向において傾斜している。また、第1傾斜面31cは、第1レール部材31と第2レール部材32との継ぎ目から上方へ向けて、第1刃面31aとの間隔が連続して大きくなるように形成されている。
【0026】
第1傾斜面31cが形成されていない位置における第1背面31bと第1刃面31aとの間隔は、第2刃面32aと第2背面32bとの間隔よりも大きい。
【0027】
目板22は、第1重ね合わせ面22aと、第2重ね合わせ面22bと、目板背面22cとを有している。第1重ね合わせ面22aは、第1傾斜面31cに重ね合わせられている。第2重ね合わせ面22bは、第2背面32bに重ね合わせられている。目板背面22cは、第1重ね合わせ面22a及び第2重ね合わせ面22bとは反対側の面である。
【0028】
第1重ね合わせ面22aは、第2重ね合わせ面22bに対して傾斜している。第2重ね合わせ面22bを第2背面32bに重ね合わせたとき、第1重ね合わせ面22aは、第1傾斜面31cに対して平行である。
【0029】
第2重ね合わせ面22bは、目板背面22cに対して平行である。また、目板22がガイドレール本体21に固定されたとき、目板背面22cは、第1刃面31a及び第2刃面32aに対して平行である。第1重ね合わせ面22aは、目板背面22cに対して傾斜している。即ち、実施の形態1の第1重ね合わせ面22aは、上方へ向けて目板背面22cとの間隔が連続して小さくなるように形成されている。
【0030】
図4は、
図3のガイドレール本体21のIV-IV線に沿う断面図である。ガイドレール本体21は、ブラケット固定部21aと、案内部21bとを有している。ブラケット固定部21aは、レールブラケットに固定される部分である。
【0031】
案内部21bは、ブラケット固定部21aの幅方向中央からかご8側へ直角に突出している。かご8の昇降は、案内部21bによって案内される。
【0032】
第1刃面31a及び第2刃面32aは、案内部21bの端面であって、ブラケット固定部21aとは反対側の端面に相当する。第1背面31b及び第2背面32bは、ブラケット固定部21aの端面であって、案内部21bとは反対側の端面に相当する。
【0033】
図5は、
図3の目板22を示す正面図である。目板22には、複数の長孔22dが設けられている。各長孔22dには、対応する固定具23が通される。
【0034】
各長孔22dの上下方向寸法は、各長孔22dの左右方向寸法よりも大きい。これにより、全ての固定具23を緩めた状態では、ガイドレール本体21に対する目板22の位置が上下方向へ調整可能である。
【0035】
次に、かごガイドレール装置10の据付方法について説明する。昇降路1内に第2レール部材32が設置された後、第2レール部材32の上に第1レール部材31が仮設置される。このとき、
図6に示すように、第1刃面31aと第2刃面32aとの間には、段差が生じ易い。
【0036】
この状態から、
図7に示す治具24が用いられ、第1刃面31aと第2刃面32aとが面一に整列される。治具24は、位置決め平面24aを有している。
【0037】
このとき、治具24と目板22との間に、第1レール部材31及び第2レール部材32が挟み込まれ、治具24に近付く方向への力が目板22に加えられ、位置決め平面24aに第1刃面31aと第2刃面32aとが当てられる。
【0038】
このとき、第1傾斜面31cに第1重ね合わせ面22aが密着するように、上下方向への目板22の位置が調整される。
【0039】
この後、複数の固定具23により目板22がガイドレール本体21に固定される。
【0040】
このように、実施の形態1のかごガイドレール装置10の据付方法は、第1工程と、第2工程とを有している。第1工程は、第1刃面31aと第2刃面32aとを位置決め平面24aに当て、第1刃面31aと第2刃面32aとを面一にするとともに、上下方向への目板22の位置を調整する工程である。第2工程は、複数の固定具23により目板22をガイドレール本体21に固定する工程である。
【0041】
図8は、
図3の目板22の位置調整方法を説明する側面図である。第1刃面31aに直角な方向における第1レール部材31の下端面の寸法を、第1寸法とする。第2刃面32aに直角な方向における第2レール部材32の上端面の寸法を、第2寸法とする。
【0042】
図8に実線で示すように、第1寸法と第2寸法とが等しい場合、第1重ね合わせ面22aと第2重ね合わせ面22bとの境界は、第1レール部材31と第2レール部材32との継目に位置する。
【0043】
これに対して、
図8に点線で示すように、第1寸法が第2寸法よりも小さい場合、目板22は、実線の位置よりも上方へずらされる。これにより、第2重ね合わせ面22bを第2背面32bに密着させたまま、第1重ね合わせ面22aを第1傾斜面31cに密着させることができる。このとき、第1重ね合わせ面22aと第2重ね合わせ面22bとの境界は、点線で示す第1傾斜面31c上に位置する。
【0044】
複数の固定具23を緩めた状態では、目板22は、各固定具23と、その固定具23が通されている長孔22dとの間の隙間寸法の範囲内で、上下方向へ移動可能である。
【0045】
このようなかごガイドレール装置10では、第1背面31bに第1傾斜面31cが形成されている。また、目板22は、第1重ね合わせ面22aと、第2重ね合わせ面22bとを有している。また、第1重ね合わせ面22aは、第2重ね合わせ面22bに対して傾斜している。また、第2重ね合わせ面22bを第2背面32bに重ね合わせたとき、第1重ね合わせ面22aは、第1傾斜面31cに対して平行である。そして、複数の固定具23を緩めた状態では、ガイドレール本体21に対する目板22の位置が上下方向へ調整可能である。
【0046】
このため、第1刃面31aと第2刃面32aとを面一に整列させたときに、第1傾斜面31cと第2背面32bとの間に段差が生じても、目板22の上下方向への位置を調整するだけで、目板22を第1傾斜面31cと第2背面32bとに密着させることができる。
【0047】
従って、実施の形態1のかごガイドレール装置10及びその据付方法によれば、ガイドレールの芯出し作業を容易にすることができる。また、シムを用いる必要がないため、部品点数を削減することができる。
【0048】
実施の形態2.
次に、
図9は、実施の形態2によるかごガイドレール装置10の要部を示す側面図である。実施の形態2において、第1傾斜面31cは、第1刃面31aに対して、実施の形態1とは反対側へ傾斜している。即ち、実施の形態2の第1傾斜面31cは、第1レール部材31と第2レール部材32との継ぎ目から上方へ向けて、第1刃面31aとの間隔が連続して小さくなるように形成されている。
【0049】
これに伴って、第1重ね合わせ面22aは、目板背面22cに対して、実施の形態1とは反対側へ傾斜している。即ち、実施の形態2の第1重ね合わせ面22aは、上方へ向けて目板背面22cとの間隔が連続して大きくなるように形成されている。
【0050】
実施の形態2における他の構成は、実施の形態1と同様である。また、かごガイドレール装置10の据付方法も、実施の形態1と同様である。
【0051】
このような構成によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、実施の形態1、2において、第1レール部材31、第2レール部材32、及び目板22は、
図3及び
図9とは上下反対向きに配置されてもよい。
【0053】
また、実施の形態1、2において、第1傾斜面31cが形成されていない位置における第1背面31bと第1刃面31aとの間隔は、第2刃面32aと第2背面32bとの間隔と同じであってもよい。
【0054】
実施の形態3.
次に、
図10は、実施の形態3によるかごガイドレール装置10の要部を示す側面図である。第2背面32bには、第2傾斜面32cが形成されている。第2傾斜面32cは、第2刃面32aに対して上下方向において傾斜している。また、第2傾斜面32cは、第1レール部材31と第2レール部材32との継ぎ目から下方へ向けて、第2刃面32aとの間隔が連続して大きくなるように形成されている。
【0055】
第1傾斜面31cが形成されていない位置における第1背面31bと第1刃面31aとの間隔は、第2傾斜面32cが形成されていない位置における第2背面32bと第2刃面32aとの間隔と等しい。
【0056】
第2重ね合わせ面22bは、目板背面22cに対して傾斜している。即ち、実施の形態3の第2重ね合わせ面22bは、下方へ向けて目板背面22cとの間隔が連続して小さくなるように形成されている。
【0057】
第1重ね合わせ面22aを第1傾斜面31cに重ね合わせたとき、第2重ね合わせ面22bは、第2傾斜面32cに対して平行である。
【0058】
第2重ね合わせ面22bは、第1重ね合わせ面22aと第2重ね合わせ面22bとの境界を中心として、第1重ね合わせ面22aに対して上下方向に対称である。
【0059】
実施の形態3における他の構成は、実施の形態1と同様である。また、かごガイドレール装置10の据付方法も、実施の形態1と同様である。
【0060】
図11は、
図10の目板22の位置調整方法を説明する側面図である。
図11に実線で示すように、第1寸法と第2寸法とが等しい場合、第1重ね合わせ面22aと第2重ね合わせ面22bとの境界は、第1レール部材31と第2レール部材32との継目に位置する。
【0061】
これに対して、
図11に点線で示すように、第1寸法が第2寸法よりも小さい場合、目板22は、実線の位置よりも斜め上方へずらされる。これにより、第2重ね合わせ面22bを第2傾斜面32cに密着させたまま、第1重ね合わせ面22aを第1傾斜面31cに密着させることができる。このとき、第1重ね合わせ面22aと第2重ね合わせ面22bとの境界は、点線で示す第1傾斜面31c上に位置する。
【0062】
また、図示しないが、第2寸法が第1寸法よりも小さい場合、目板22は、実線の位置よりも斜め下方へずらされる。これにより、第1重ね合わせ面22aを第1傾斜面31cに密着させたまま、第2重ね合わせ面22bを第2傾斜面32cに密着させることができる。このとき、第1重ね合わせ面22aと第2重ね合わせ面22bとの境界は、第2傾斜面32c上に位置する。
【0063】
このような構成によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、第1寸法と第2寸法とのどちらが小さい場合にも、目板22を第1レール部材31及び第2レール部材32に容易に密着させることができる。
【0064】
実施の形態4.
次に、
図12は、実施の形態4によるかごガイドレール装置10の要部を示す側面図である。実施の形態4において、第1傾斜面31cは、第1刃面31aに対して、実施の形態3とは反対側へ傾斜している。即ち、実施の形態4の第1傾斜面31cは、第1レール部材31と第2レール部材32との継ぎ目から上方へ向けて、第1刃面31aとの間隔が連続して小さくなるように形成されている。
【0065】
これに伴って、第1重ね合わせ面22aは、目板背面22cに対して、実施の形態3とは反対側へ傾斜している。即ち、実施の形態4の第1重ね合わせ面22aは、上方へ向けて目板背面22cとの間隔が連続して大きくなるように形成されている。
【0066】
第2傾斜面32cは、第2刃面32aに対して、実施の形態3とは反対側へ傾斜している。即ち、実施の形態4の第2傾斜面32cは、第1レール部材31と第2レール部材32との継ぎ目から下方へ向けて、第2刃面32aとの間隔が連続して小さくなるように形成されている。
【0067】
これに伴って、第2重ね合わせ面22bは、目板背面22cに対して、実施の形態3とは反対側へ傾斜している。即ち、実施の形態4の第2重ね合わせ面22bは、下方へ向けて目板背面22cとの間隔が連続して大きくなるように形成されている。
【0068】
実施の形態4における他の構成は、実施の形態3と同様である。また、かごガイドレール装置10の据付方法も、実施の形態3と同様である。
【0069】
このような構成によっても、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0070】
実施の形態5.
次に、
図13は、実施の形態5によるかごガイドレール装置10の要部を示す側面図である。第1背面31bは、第1レール部材31の全長に渡って、第1刃面31aに平行である。第2背面32bは、第2レール部材32の全長に渡って、第2刃面32aに平行である。第1刃面31aと第1背面31bとの間隔は、第2刃面32aと第2背面32bとの間隔よりも小さい。
【0071】
目板22の形状は、実施の形態1における目板22の形状と同様である。第1レール部材31と目板22との間には、シム25が介在している。シム25は、シム前面25aと、シム背面25bとを有している。シム前面25aは、第1背面31bに重ね合わせられている。シム背面25bには、第1重ね合わせ面22aが重ね合わせられている。
【0072】
シム背面25bは、シム前面25aに対して、上下方向において傾斜している。即ち、シム背面25bは、下方へ向けてシム前面25aとの間隔が連続して小さくなるように形成されている。
【0073】
第2重ね合わせ面22bを第2背面32bに重ね合わせたとき、第1重ね合わせ面22aは、シム背面25bに対して平行である。
【0074】
実施の形態1と同様に、全ての固定具23を緩めた状態では、ガイドレール本体21に対する目板22の位置が上下方向へ調整可能である。
【0075】
図14は、
図13のシム25を示す正面図である。シム25には、複数の丸孔25cが設けられている。各丸孔25cには、対応する固定具23が通される。
【0076】
実施の形態5における他の構成は、実施の形態1と同様である。また、第1レール部材31と目板22との間にシム25が挟み込まれることを除いて、かごガイドレール装置10の据付方法も、実施の形態1と同様である。
【0077】
このようなかごガイドレール装置10では、第1刃面31aと第2刃面32aとを面一に整列させたときに、シム背面25bと第2背面32bとの間に段差が生じても、目板22の上下方向への位置を調整するだけで、目板22をシム背面25bと第2背面32bとに密着させることができる。
【0078】
従って、実施の形態1のかごガイドレール装置10及びその据付方法によれば、ガイドレールの芯出し作業を容易にすることができる。また、第1レール部材31に第1傾斜面31cを加工する必要がない。
【0079】
実施の形態6.
次に、
図15は、実施の形態6によるかごガイドレール装置10の要部を示す側面図である。目板22の形状は、実施の形態2における目板22の形状と同様である。シム背面25bは、下方へ向けてシム前面25aとの間隔が連続して大きくなるように形成されている。
【0080】
実施の形態6における他の構成は、実施の形態5と同様である。また、かごガイドレール装置10の据付方法も、実施の形態5と同様である。
【0081】
このような構成によっても、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0082】
なお、実施の形態5、6において、第1刃面31aと第1背面31bとの間隔は、第2刃面32aと第2背面32bとの間隔と同じであってもよい。
【0083】
実施の形態7.
次に、
図16は、実施の形態7によるかごガイドレール装置10の要部を示す側面図である。
図17は、
図16の要部を拡大して示す側面図である。
【0084】
第1背面31bにおける第2背面32bに隣り合う部分には、複数の取付面が形成されている。実施の形態7では、第1背面31bに、第1取付面31d、第2取付面31e、及び第3取付面31fが形成されている。第1取付面31d、第2取付面31e、及び第3取付面31fは、第2レール部材32に近い側から遠い側へ向けて、第1刃面31aとの間隔が段階的に大きくなっている。
【0085】
実施の形態7の目板22は、平板である。即ち、第2重ね合わせ面22bは、第1重ね合わせ面22aに対して面一である。また、第1重ね合わせ面22a及び第2重ね合わせ面22bと、目板背面22cとの間隔は、目板22の全体で均等である。
【0086】
目板22は、複数の取付面のうちのいずれか1つと、第2背面32bとに重ね合わせられている。
図16及び
図17では、複数の取付面のうち、第3取付面31fに、第1重ね合わせ面22aが重ね合わせられている。
【0087】
図16及び
図17では、省略されているが、目板22は、複数の固定具23によって、ガイドレール本体21に固定されている。図示しないが、第1取付面31d、第2取付面31e、及び第3取付面31fには、それぞれ複数の取付孔が開口している。
【0088】
実施の形態7における他の構成は、実施の形態5と同様である。また、かごガイドレール装置10の据付方法も、実施の形態5と同様である。
【0089】
このようなかごガイドレール装置10では、第1刃面31aと第2刃面32aとを面一に整列させたときに、目板22の上下方向への位置を調整するだけで、第1取付面31d、第2取付面31e、及び第3取付面31fのうちのいずれかと、第2背面32bとに、目板22密着させることができる。
【0090】
従って、実施の形態1のかごガイドレール装置10及びその据付方法によれば、ガイドレールの芯出し作業を容易にすることができる。また、シムを用いる必要がないため、部品点数を削減することができる。
【0091】
なお、実施の形態7において、第1レール部材31、第2レール部材32、及び目板22は、
図16とは上下反対向きに配置されてもよい。
【0092】
また、実施の形態7において、複数の取付面は、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0093】
また、実施の形態1~7において、ガイドレール本体21は、3本以上のレール部材が上下に継ぎ合わされて構成されてもよい。
【0094】
また、昇降体は、釣合おもり9であってもよい。即ち、ガイドレール装置は、釣合おもりガイドレール装置11であってもよい。
【0095】
また、実施の形態1~7において、エレベーター全体のレイアウトは、
図1のレイアウトに限定されるものではない。例えば、ローピング方式は、2:1ローピング方式であってもよい。
【0096】
また、エレベーターは、機械室レスエレベーター、ダブルデッキエレベーター、ワンシャフトマルチカー方式のエレベーター装置等であってもよい。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
【符号の説明】
【0097】
8 かご(昇降体)、9 釣合おもり(昇降体)、10 かごガイドレール装置、11 釣合おもりガイドレール装置、21 ガイドレール本体、22 目板、22a 第1重ね合わせ面、22b 第2重ね合わせ面、22d 長孔、23 固定具、24 治具、24a 位置決め平面、25 シム、25a シム前面、25b シム背面、31 第1レール部材、31a 第1刃面、31b 第1背面、31c 第1傾斜面、31d 第1取付面、31e 第2取付面、31f 第3取付面、32 第2レール部材、32a 第2刃面、32b 第2背面、32c 第2傾斜面。