(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】確率的代理モデルを用いた蒸気圧縮システムの制御
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
F25B49/02 Z
(21)【出願番号】P 2023574889
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2021049040
(87)【国際公開番号】W WO2022190595
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-22
(32)【優先日】2021-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャクラバルティ,アンクシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラフマン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ボルトフ,スコット
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506734(JP,A)
【文献】特開2019-152986(JP,A)
【文献】特開2013-148336(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0018531(US,A1)
【文献】特開2017-146969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0267515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
F24F 11/46
G05B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気圧縮システム(VCS)の運転を制御するための制御装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記制御装置に、以下の動作を実行させる命令を格納するメモリとを備え、
前記動作は、
前記蒸気圧縮システムの異なるアクチュエータの設定値の異なる組み合わせを用いて前記蒸気圧縮システムの前記運転を制御することによって、前記設定値の異なる組み合わせの各々に対する前記蒸気圧縮システムの運転コストを推定することと、
前記設定値の組み合わせとそれらに対応する推定運転コストとのベイズ最適化を用いて、前記蒸気圧縮システムの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する確率的代理モデルを計算することとを含み、前記確率的代理モデルは、前記確率的マッピング中の前記運転コストの少なくとも最初の2つのモーメントを定義し、
前記動作は、
前記運転コストの前記最初の2つのモーメントの獲得関数に従って、前記確率的代理モデルにおいてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択することと、
前記選択された設定値の最適な組み合わせをフィードバックコントローラに送信することによって、前記選択された最適な組み合わせ中の対応する設定値に従って前記蒸気圧縮システムの前記アクチュエータの状態を変更することと、
前記選択された設定値の最適な組み合わせから開始する前記フィードバックコントローラへの入力を摂動する極値探索コントローラを実行し、前記摂動によって引き起こされた前記運転コストの勾配に基づいて、前記選択された設定値の最適な組み合わせを調整することと、
前記プロセッサは、前記獲得関数に従って、前記選択された設定値の最適な組み合わせの摂動値を前記確率的代理モデル上の前記運転コストの値にマッピングすることによって、前記摂動によって引き起こされた前記運転コストの前記勾配を推定することとを含む、制御装置。
【請求項2】
設定値の組み合わせに対する前記運転コストは、前記設定値の組み合わせに従って、前記蒸気圧縮システムが定常状態に到達するのに不十分な所定時間で前記蒸気圧縮システムを運転した後に推定される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
少なくとも一部の運転コストは、前記対応する設定値の組み合わせに従って運転する前記蒸気圧縮システムの過渡状態の間に推定される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記選択された設定値の最適な組み合わせに対する前記運転コストを推定し、前記選択された設定値の最適な組み合わせおよび前記対応する推定運転コストを用いて、前記ベイズ最適化を使用する前記確率的代理モデルを更新するようにさらに構成されている、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、終了条件が満たされるまで、前記更新された確率的代理モデルに適用された前記獲得関数に従って、新たに選択された設定値の最適な組み合わせを用いて前記確率的代理モデルを再帰的に更新するようにさらに構成されている、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ベイズ最適化は、ガウス過程回帰、ニューラル過程回帰、および機械学習のいずれかまたは組み合わせを用いて、前記確率的代理モデルを決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記ベイズ最適化は、前記確率的代理モデルによって提供された前記確率的マッピングを利用して、結果として生じる設定値の照会を指示する獲得関数を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記蒸気圧縮システムは、1つ以上の室内ゾーンに配置された複数の熱交換器に接続された少なくとも1つの圧縮機を含むマルチゾーン蒸気圧縮システム(MZ-VCS)である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記設定値の組み合わせに対応する前記運転コストは、前記設定値の組み合わせに従って運転する前記蒸気圧縮システムの電力消費量である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記フィードバックコントローラは、PIコントローラ、PIDコントローラ、MPCコントローラ、またはロバストコントローラのいずれかまたは組み合わせである、請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
蒸気圧縮システム(VCS)の運転を制御するための方法であって、
前記蒸気圧縮システムの異なるアクチュエータの設定値の異なる組み合わせを用いて前記蒸気圧縮システムの前記運転を制御することによって、前記設定値の異なる組み合わせの各々に対する前記蒸気圧縮システムの運転コストを推定することと、
前記設定値の組み合わせとそれらに対応する推定運転コストとのベイズ最適化を用いて、前記蒸気圧縮システムの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する確率的代理モデルを計算することとを含み、前記確率的代理モデルは、前記確率的マッピング中の前記運転コストの少なくとも最初の2つのモーメントを定義し、
前記方法は、
前記運転コストの前記最初の2つのモーメントの獲得関数に従って、前記確率的代理モデルにおいてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択することと、
前記選択された設定値の最適な組み合わせをフィードバックコントローラに送信することによって、前記選択された最適な組み合わせ中の対応する設定値に従って前記蒸気圧縮システムの前記アクチュエータの状態を変更することと、
前記選択された設定値の最適な組み合わせから開始する前記フィードバックコントローラへの入力を摂動する極値探索コントローラを実行し、前記摂動によって引き起こされた前記運転コストの勾配に基づいて、前記選択された設定値の最適な組み合わせを調整することと、
前記獲得関数に従って、前記選択された設定値の最適な組み合わせの摂動値を前記確率的代理モデル上の前記運転コストの値にマッピングすることによって、前記摂動によって引き起こされた前記運転コストの前記勾配を推定することとを含む、方法。
【請求項12】
蒸気圧縮システム(VCS)の運転を制御するための方法を実行するためにプロセッサによって実行可能なプログラムを具現化した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記方法は、
前記蒸気圧縮システムの異なるアクチュエータの設定値の異なる組み合わせを用いて前記蒸気圧縮システムの前記運転を制御することによって、前記設定値の異なる組み合わせの各々に対する前記蒸気圧縮システムの運転コストを推定することと、
前記設定値の組み合わせとそれらに対応する推定運転コストとのベイズ最適化を用いて、前記蒸気圧縮システムの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する確率的代理モデルを計算することとを含み、前記確率的代理モデルは、前記確率的マッピング中の前記運転コストの少なくとも最初の2つのモーメントを定義し、
前記方法は、
前記運転コストの前記最初の2つのモーメントの獲得関数に従って、前記確率的代理モデルにおいてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択することと、
前記選択された設定値の最適な組み合わせをフィードバックコントローラに送信することによって、前記選択された最適な組み合わせ中の対応する設定値に従って前記蒸気圧縮システムの前記アクチュエータの状態を変更することと、
前記選択された設定値の最適な組み合わせから開始する前記フィードバックコントローラへの入力を摂動する極値探索コントローラを実行し、前記摂動によって引き起こされた前記運転コストの勾配に基づいて、前記選択された設定値の最適な組み合わせを調整することと、
前記獲得関数に従って、前記選択された設定値の最適な組み合わせの摂動値を前記確率的代理モデル上の前記運転コストの値にマッピングすることによって、前記摂動によって引き起こされた前記運転コストの前記勾配を推定することとを含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に蒸気圧縮システムに関し、より詳しくは、蒸気圧縮システムの運転を制御するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ、冷凍システム、および空調システムなどの蒸気圧縮システムは、産業用途および家庭用途において広く使用されている。可変速度圧縮機、可変位置弁、および可変速ファンを蒸気圧縮サイクルに導入することは、蒸気圧縮システムの運転適応性を大幅に改善した。蒸気圧縮システムの効率は、蒸気圧縮システムの可変構成要素を制御することによって改善することができる。言い換えれば、制御入力を蒸気圧縮システムに提供することによって、効率を改善することができる。例えば、圧縮機の速度を調整することによって、冷媒の流量を調整することができる。蒸発器ファンおよび凝縮器ファンの速度を変更することによって、空気と熱交換器との間の熱伝達を改変することができる。膨張弁の開度を変更することによって、蒸気圧縮システムの高圧と低圧との間の圧力損失に影響を与え、冷媒の流量および対応する蒸発器出口の過熱温度に影響を与えることができる。
【0003】
特定量の熱を供給する蒸気圧縮システムへの制御入力の組み合わせは、多くの場合、独特ではなく、制御入力の様々な組み合わせは、異なる量のエネルギーを消費する。したがって、蒸気圧縮システムのエネルギーを最小化し、そのエネルギー効率を最大化する制御入力の組み合わせを用いて、蒸気圧縮システムを運転させることが望ましい。
【0004】
エネルギー効率を最大化するいくつかの手法は、蒸気圧縮システムの物理学を表すために使用された数学モデルに依存している。このようなモデルベース手法は、蒸気圧縮システムの熱力学的挙動およびエネルギー消費に対する蒸気圧縮システムの制御入力の影響を記述しようとするものである。このようなモデルベース手法において、従来の解析モデルを用いて、熱負荷要件を満たし且つエネルギーを最小化する制御入力の組み合わせを予測する。
【0005】
しかしながら、このように数学モデルを用いて制御入力の組み合わせを予測することは、欠点を有する。例えば、数学モデルは、数学的に扱いやすい表現を生成するために、単純化した仮定に依存する。このような仮定は、重要な影響を無視するか、または部屋のサイズなどの設備固有の特性を考慮しないため、数学モデルが蒸気圧縮システムの実際の挙動から乖離する原因となる。また、数学モデルの導出および較正が困難である。例えば、蒸気圧縮システムの構成要素、例えば、圧縮機の運転を記述するパラメータは、使用される圧縮機の種類毎に実験的に決定され、蒸気圧縮システムの数学モデルは、このようなパラメータを多く含むことがある。したがって、各数学モデルのパラメータの値を決定することは、面倒な過程である。また、蒸気圧縮システムは、経時的に変化する場合がある。ある時点で蒸気圧縮システムの運転を正確に記述する数学モデルは、例えば、徐々に漏れる冷媒または熱交換器の腐食の蓄積に起因して蒸気圧縮システムが変化することによって、後の時点で正確ではなくなる可能性がある。
【0006】
いくつかの手法は、数学モデルを使用することなく、制御入力を最適化することを目的とする。例えば、極値探索コントローラ(ESC)を用いて、モデルなしで制御入力を最適化する。しかしながら、ESCは、最適な設定値に収束するまでに数時間かかることがある。また、蒸気圧縮システムに作用する外乱がより速い動力学を有するため、最適な設定値は、ESCが収束する前に変化してしまうことがある。ESCのこのような遅い収束特性は、リアルタイムで蒸気圧縮システムの性能を最適化することを妨げる。
【0007】
さらに、ESCは、局所勾配を数値的に構築し、局所最適値になるまで局所勾配を捜し求める。このような処理は遅くなることがある。例えば、ESCの制御ゲインが小さすぎ、最適化される基礎関数が小さな勾配を含む場合、収束は遅くなる。逆に、ESC制御ゲインが大きすぎ、基礎関数が非線形である場合、ESCの反復解は、大きな勾配に起因して最適な設定値をオーバーシュートすることがある。したがって、ESCは、高度に非線形動力学を持つ非凸問題には対応できない。
【0008】
ESCの遅い収束特性を克服するために、フィルタが使用される。フィルタは、摂動に対する応答の過渡部分の位相の影響を分離する。しかしながら、フィルタの設計は複雑であり、蒸気圧縮システムに関する広範な情報を必要とする。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの実施形態の目的は、基礎的なシステム動力学の解析モデルを使用することなく、蒸気圧縮システムの電力消費量を最小化する設定値の最適な組み合わせを決定するためのデータ駆動型手法を提供することである。このような目的は、代理モデルを定式化することによって実現することができる。また、いくつかの実施形態の目的は、極値探索コントローラ(ESC)の収束を加速するための代理モデルを必要とするベイズ最適化ウォームスタート方法を提供することである。
【0010】
ヒートポンプ、冷凍システム、および空調システムなどの蒸気圧縮システム(VCS)は、産業用途および家庭用途において広く使用されている。可変速度圧縮機、可変位置弁、および可変速ファンを蒸気圧縮サイクルに導入することは、蒸気圧縮システムの運転適応性を大幅に改善した。具体的には、特定量の熱を供給するVCSへの制御入力の組み合わせは、多くの場合、独特ではなく、制御入力の異なる組み合わせは、異なる運転コストを有する可能性がある。例えば、VCSのアクチュエータの状態を制御する制御入力の2つの異なる組み合わせに従って運転するVCSは、同じ熱容量を供給することができるが、異なる量のエネルギーを消費する場合がある。したがって、運転コストを最適化する制御入力の組み合わせ、例えば、VCSのエネルギー消費を最小化するおよび/またはエネルギー効率を最大化する制御入力の組み合わせを用いてVCSを運転させることが望ましい。
【0011】
VCSのエネルギー効率に対処する制御方法は、2つのカテゴリ、すなわち、モデルベース制御方法およびデータ駆動制御方法に分けることができる。モデルベース方法は、VCSの制御入力がVCSの熱力学的挙動およびエネルギー消費に与える影響を記述しようとするものである。このようなモデルベース方法において、従来の解析モデルを用いて、熱負荷要件を満たし且つエネルギー消費を最小化する制御入力の組み合わせを予測する。しかしながら、異なる構成のVCSのための解析モデルを導出、較正、および経時的に更新することが困難である。例えば、1つ以上の室内ゾーンに配置された複数の熱交換器に接続された少なくとも1つの圧縮機を含むマルチゾーン蒸気圧縮システム(MZ-VCS)のための解析モデルを定式化することが困難である。言い換えれば、MZ-VCSの複雑性は、対応する解析モデルの使用を妨げる可能性がある。
【0012】
動的システムの正確なモデル(例えば、VCS)がない場合、いくつかの制御方法は、動的システムによってリアルタイムで生成された運転データを用いて、動的システムの動力学を安定させる制御ポリシーを構築する。このように運転データを用いて制御ポリシーを設計することは、データ駆動制御と呼ばれる。データ駆動制御方法には、間接的な方法と直接的な方法との2種類がある。間接的な方法は、動的システムの代理モデルを構築することと、代理モデルを活用してコントローラを設計することとを含む。直接的な方法は、中間モデルを構築することなく、運転データに基づいて制御ポリシーを直接に構築することを含む。間接的な方法の欠点は、モデル構築の段階で大量のデータを必要とする可能性があることである。逆に、直接的な方法は、より少ないデータを必要とするが、最先端の直接的な制御方法でさえも、VCSのような閉ループ制御システムの安全な動作を維持するために必要な状態および入力の制約を取り扱うことが困難である。
【0013】
そのために、いくつかの実施形態の目的は、VCSの閉ループ制御を行うための間接的なデータ駆動制御方法を提供することである。このような閉ループ制御方法は、モデルベース制御方法の複雑性および直接的なデータ駆動制御方法のから悪い影響を受けない可能性がある。しかしながら、このような間接的なデータ駆動制御を提供するためには、VCSの運転を効率的に管理することができる代理モデルを生成する必要がある。
【0014】
いくつかの実施形態は、VCSを制御するための代理モデルを構築する際にいくつかの障害があるという認識に基づいている。例えば、代理モデルを構築するためには、VCSのアクチュエータへの制御入力の値の大規模且つ実質的に無限の連続空間を調査する必要がある。この課題に対処するために、いくつかの実施形態は、VCSのアクチュエータへの制御入力の代理モデルを、VCS制御が達成および/または追跡する必要がある異なるアクチュエータの設定値の代理モデルに置換する。このようにして、VCS制御の最適化は、実際の制御から分離され、VCSの異なるアクチュエータの連続制御を危険にさらすことなく、設定値の空間をサンプリングすることができる。
【0015】
代理モデルは、VCSの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせと対応するVCSの運転コストとの間のマッピングを提供する。本明細書に使用される場合、「設定値」は、VCSの変量の所望の値を指す。設定値という用語は、制御信号、熱力学的パラメータおよび環境パラメータからなる特定のセットの任意の特定の値に適用される。例えば、「設定値」という用語は、VCSの構成要素の特定の状態を示すことができる。VCSの異なるアクチュエータは、VCSの膨張弁の位置を制御するアクチュエータ、VCSの室内ファン、VCSの室外ファン、およびダンパアクチュエータなどのうちの1つ以上を含んでもよい。一実施形態によれば、設定値の組み合わせに対応する運転コストは、設定値の組み合わせに従って運転するVCSの電力消費量である。さらに、代理モデル102を用いて、VCSの運転を制御することができる。
【0016】
いくつかの実施形態は、勾配降下などの様々な検索技術を代理モデルに使用することによって、VCSの運転コストを低減する設定値の最適な組み合わせを選択することができるという認識に基づいている。しかしながら、実際のVCS制御から制御を分離すると、VCSの動的応答が遅くなり、別の課題を引き起こす。例えば、代理モデルは、設定値と定常状態におけるVCSの運転コストとをマッピングする必要がある。しかしながら、VCSが設定値に対応する定常状態に到達するのに時間(例えば、15分)を必要とする。また、設定値の最適化と制御を分離した場合、アクチュエータの状態を設定値に反復的に変更するために追加のフィードバックコントローラを使用する必要があり、その後、VCSの出力を安定化するために追加の時間を必要とする。
【0017】
したがって、実際のVCS制御から設定値の最適化を分離することは、(1)VCS運転の定常状態を待たずに過渡時間においてVCSの運転コストをどのように推定するか、および(2)代理モデルを構築するために必要な設定値の組み合わせと対応する運転コストとの対のサンプル数をどのように減らすかという内在課題を引き起こす。
【0018】
いくつかの実施形態は、設定値およびそれらに対応する推定運転コストの組み合わせのベイズ最適化を用いて確率的代理モデルを構築することによって、これらの内在課題を解決する。確率的代理モデルは、VCSの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせと、対応する運転コストの確率分布との間のマッピングを提供する。代理モデルは、確率的代理モデルに対応する。代理モデルの確率的性質は、(1)過渡測定が確率的代理モデルに組み込まれ得る不確実性を含むため、VCS運転の定常状態を待たずにVCSの運転コストを推定することに使用できる不確実性、および(2)代理モデルを構築するために必要なサンプル数を減らすために、このような不確実性を考慮して代理モデル構築プロセスを誘導するために使用できる不確実性を含む。
【0019】
一実施形態によれば、確率的代理モデルは、確率的マッピングにおいて運転コストの少なくとも最初の2次モーメントを定義するように、設定値の組み合わせと対応する推定運転コストの確率分布とをマッピングする確率的機械学習アルゴリズム(例えば、ガウス過程回帰)を用いて構築することができる。一実施形態において、少なくとも最初の2次モーメントは、運転コストの平均値および運転コストの平方偏差(信頼範囲とも呼ばれる)を含むことができる。例えば、設定値の特定の組み合わせについて、代理モデルは、電力消費量の予測値だけではなく、予測された電力消費量の信頼範囲(例えば、電力消費量の予測値が1000Wであり、予測された電力消費量が960Wと1040Wとの間にある信頼範囲が95%である)も提供する。
【0020】
さらに、いくつかの実施形態は、次に照会されなければならない設定値(「データポイント」とも呼ばれる)の組み合わせを選択することを目的とする。本明細書に使用される場合、設定値(またはデータポイント)の組み合わせを照会することは、設定値の組み合わせを用いた目的の評価(例えば、設定値の組み合わせに従って蒸気圧縮システムを運転させること)を指す。いくつかの実施形態は、運転コストの最初の2次モーメントの獲得関数を用いて、次に照会する設定値の組み合わせを選択する。
【0021】
獲得関数は、代理モデルによって提供された確率的マッピングを用いて、次に照会する設定値の組み合わせを選択する。したがって、獲得関数は、次にサンプリングする/照会するデータポイントを決定するためのガイドとして使用される。一実施形態において、獲得関数は、VCSの運転を照会および最適化するために、代理モデルのグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択するように最大化される。このような代理モデルの構築および代理モデルの利用は、ベイズ最適化の一部である。言い換えれば、ベイズ最適化は、ガウス過程回帰を用いて確率的マッピングを提供する代理モデルと、代理モデルによって提供された確率的マッピングを利用して、結果として生じる設定値の照会を指示する獲得関数とを含む。
【0022】
選択された設定値の最適な組み合わせは、VCSに関連するフィードバックコントローラに適用される。フィードバックコントローラは、選択された設定値の最適な組み合わせに対応する制御コマンドを決定するように構成されている。さらに、フィードバックコントローラは、制御コマンドに基づいてVCSの運転を制御することによって、選択された設定値の最適な組み合わせに従ってVCSのアクチュエータの状態を変更する。フィードバックコントローラは、PIコントローラ、PIDコントローラ、MPCコントローラ、またはロバストコントローラのいずれかまたは組み合わせである。
【0023】
さらに、蒸気圧縮システムは、選択された設定値の最適な組み合わせの性能出力(例えば、電力消費量)をもたらす。さらに、選択された設定値の最適な組み合わせおよび対応する性能出力を用いて、ベイズ最適化を使用する代理モデルを更新する。その結果、更新された代理モデルが得られる。さらに、同じ獲得関数を更新された代理モデルに適用することによって、VCSを制御するための設定値の新しい最適な組み合わせを選択し、代理モデルを更新する。同様の方法で、代理モデルは、各反復において更新される。このような反復プロセスは、オンラインで、すなわち、蒸気圧縮システムのリアルタイム運転中に、終了条件が満たされるまで実行される。終了条件は、反復の回数であってもよい。反復の回数は、任意であってもよく、またはユーザによって定義されてもよい。代理モデルの反復的更新は、正確な代理モデルをもたらす。各反復において、代理モデルが更新され、獲得関数と組み合わせて使用され、最適な設定値を決定するため、獲得関数と組み合わせた代理モデルは、設定値オプティマイザとして機能する。
【0024】
いくつかの実施形態は、複数の極小値を含む非凸関数について、ESCが極小値を含む領域で開始される場合、ESCは、ローカル極小値のみを決定し、グローバル極小値を決定しないという認識に基づいている。
【0025】
いくつかの実施形態は、非凸関数について、グローバル極小値を決定することは、良好な初期推測値を特定すること、すなわち、関数が局所的に凸であり、グローバル極小値を含む領域でESCを開始することを含むという認識に基づいている。さらに、勾配推定値は、領域内で使用され、グローバル極小値を特定する。良好な初期推測値がない場合、勾配ベースアルゴリズムの収束が遅くなり、ローカル極小値で立ち往生する可能性がある。
【0026】
いくつかの実施形態は、代理モデルを用いて、グローバル極小値を含む可能性が最も高い領域においてESCを開始することができるという認識に基づいている。特に、代理モデルを使用するベイズ最適化(BO)フレームワークを定式化して、グローバル極小値を含む可能性が最も高い領域においてESCを開始することができる。その後、BOフレームワークによって得られた解は、グローバル極小値を得るために使用できるアダム加速型極値探索制御の初期推測値として使用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態は、解析形式の運転コストの関数が利用可能である場合に、選択された設定値の最適な組み合わせを調整するために極値探索コントローラによって使用された運転コストの勾配を容易に計算することができるという認識に基づいている。しかしながら、VCSを制御するために、そのような解析関数は、通常、利用不可能である。しかしながら、いくつかの実施形態は、そのような解析関数の代わりに確率的代理モデルを用いて、調整された設定値の組み合わせに対して運転コストの連続推定に基づいて、運転コストの勾配を計算することができるという認識に基づいている。具体的には、一実施形態は、各設定値に対してガウス過程のカーネル行列の勾配を直接に取得することを含む。このように、確率的代理モデルは、ESCのウォームスタートおよびESCの制御の両方に使用される。
【0028】
代理モデリングに基づく最適化(例えば、ベイズ最適化ウォームスタートESC)は、決定的な利点をもたらす。例えば、機械学習方法は、測定値のノイズにもかかわらず、例えばガウス過程回帰を介して、性能出力に対する蒸気圧縮システムの入力の代理モデルを構築することを可能にする。しかしながら、モデルを使用しない手法(例えば、ESC)は、ノイズのあるデータから勾配を直接に推定するため、最適な入力の近傍に振動が発生したり、発散したりするなどの望ましくない影響が生じる可能性がある。また、代理モデリングは、終了基準を達成した時点で入出力モデルを学習し、それを例えばクラウド上に保存しておくことで、その後の操作で入力の初期推測値(ウォームスタート)を適切に行うことができる。さらに、代理モデル上で1次および2次方法などの平滑最適化方法を直接に使用できるため、収束率が平滑リグレッサを介した代理モデリングと共に改善する。
【0029】
したがって、一実施形態は、蒸気圧縮システム(VCS)の運転を制御するための制御装置を開示する。この制御装置は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、制御装置に、以下の動作を実行させる命令を格納するメモリとを備える。動作は、VCSの異なるアクチュエータの設定値の異なる組み合わせを用いてVCSの運転を制御することによって、設定値の異なる組み合わせの各々に対するVCSの運転コストを推定することと、設定値の組み合わせとそれらに対応する推定運転コストとのベイズ最適化を用いて、VCSの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する確率的代理モデルを計算することとを含み、確率的代理モデルは、確率的マッピング中の運転コストの少なくとも最初の2次モーメントを定義する。動作は、運転コストの最初の2次モーメントの獲得関数に従って、代理モデルにおいてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択することと、選択された設定値の最適な組み合わせをフィードバックコントローラに送信することによって、選択された最適な組み合わせ中の対応する設定値に従ってVCSのアクチュエータの状態を変更することとを含む。
【0030】
別の実施形態は、蒸気圧縮システム(VCS)の運転を制御するための方法を開示する。方法は、VCSの異なるアクチュエータの設定値の異なる組み合わせを用いてVCSの運転を制御することによって、設定値の異なる組み合わせの各々に対するVCSの運転コストを推定することと、設定値の組み合わせとそれらに対応する推定運転コストとのベイズ最適化を用いて、VCSの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する確率的代理モデルを計算することとを含み、確率的代理モデルは、確率的マッピング中の運転コストの少なくとも最初の2次モーメントを定義する。方法は、運転コストの最初の2次モーメントの獲得関数に従って、代理モデルにおいてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択することと、選択された設定値の最適な組み合わせをフィードバックコントローラに送信することによって、選択された最適な組み合わせ中の対応する設定値に従ってVCSのアクチュエータの状態を変更することとを含む。
【0031】
さらに別の実施形態は、蒸気圧縮システム(VCS)の運転を制御するための方法を実行するためにプロセッサによって実行可能なプログラムを具現化した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を開示する。方法は、VCSの異なるアクチュエータの設定値の異なる組み合わせを用いてVCSの運転を制御することによって、設定値の異なる組み合わせの各々に対するVCSの運転コストを推定することと、設定値の組み合わせとそれらに対応する推定運転コストとのベイズ最適化を用いて、VCSの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する確率的代理モデルを計算することとを含み、確率的代理モデルは、確率的マッピング中の運転コストの少なくとも最初の2次モーメントを定義する。方法は、運転コストの最初の2次モーメントの獲得関数に従って、代理モデルにおいてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択することと、選択された設定値の最適な組み合わせをフィードバックコントローラに送信することによって、選択された最適な組み合わせ中の対応する設定値に従ってVCSのアクチュエータの状態を変更することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】蒸気圧縮システムの制御を分離するために、いくつかの実施形態によって使用される原理を示す概略図である。
【
図1B】蒸気圧縮システムの運転を制御するために、いくつかの実施形態によって使用される原理を示す概略図である。
【
図1C】いくつかの実施形態に従って、代理モデルによって提供された平均予測値および信頼範囲を示す図である。
【
図1D】いくつかの実施形態に従って、獲得関数の曲線を示す図である。
【
図2】いくつかの実施形態に従って、蒸気圧縮システムの運転を制御するための制御装置を示すブロック図である。
【
図3】いくつかの実施形態に従って、代理モデルを決定するためのガウス過程を示すブロック図である。
【
図4】いくつかの実施形態に従って、次に照会するデータポイントを選択するためのブロック図である。
【
図5】いくつかの実施形態に従って、アダムアルゴリズムの原理を使用する時変極値探索コントローラ(TV-ESC)を示す概略図である。
【
図6】いくつかの実施形態に従って、勾配データの平均値および標準偏差に基づく歩幅の適応を示す図である。
【
図7A】いくつかの実施形態に従って、例示的な凸関数を示す図である。
【
図7B】いくつかの実施形態に従って、例示的な非凸関数を示す図である。
【
図8】いくつかの実施形態に従って、ベイズ最適化ウォームスタートESCのフローチャートを示す図である。
【
図9A】いくつかの実施形態に従って、マルチゾーン蒸気圧縮システム(MZ-VCS)を示すブロック図である。
【
図9B】いくつかの実施形態に従って、マルチゾーン蒸気圧縮システム(MZ-VCS)を示すブロック図である。
【
図10】いくつかの実施形態に従って、標準時変ESC、アダム加速時変ESC、およびベイズ最適化ウォームスタートESCの性能結果を示す図である。
【
図11】いくつかの実施形態に従って、複合システムの標準時変ESCおよびベイズ最適化ウォームスタートESCの性能結果を示す図である。
【
図12】いくつかの実施形態に従って、制御装置を使用した加熱、換気、および空調(HVACシステム)の制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の記載において、説明の目的のために、本開示に対する完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載される。これらの具体的な詳細なくても、1つ以上の実施形態を実施することができることは、当業者にとって明白である。また、本開示を不明瞭にしないように、装置および方法をブロック図として示す。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、用語「例えば」、「例示として」、「・・・のような」ならびに動詞「備える」、「有する」、「含む」およびそれらの他の動詞形は、1つ以上の構成要素または他の項目のリストと共に使用される場合、このリストから他の追加の構成要素または項目を排除しないことを意味するオープンエンドとして解釈すべきである。用語「・・・に基づく」は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。さらに、理解すべきことは、本明細書に使用された表現および用語は、説明の目的のためのものであり、限定として具体的に定義されない限り、限定的なものとして見なすべきではないことである。本明細書に使用されたいずれかの見出しは、便宜のためのものであり、法的または限定的な効果を有しない。
【0035】
図1Aは、蒸気圧縮システムの制御を分離するために、いくつかの実施形態によって使用される原理を示す概略図である。ヒートポンプ、冷凍システム、および空調システムなどの蒸気圧縮システム(VCS)は、産業用途および家庭用途において広く使用されている。可変速度圧縮機、可変位置弁、および可変速ファンを蒸気圧縮サイクルに導入することは、蒸気圧縮システムの運転適応性を大幅に改善した。具体的には、特定量の熱を供給するVCSへの制御入力の組み合わせは、多くの場合、独特ではなく、制御入力の異なる組み合わせは、異なる運転コストを有する可能性がある。例えば、VCSのアクチュエータの状態を制御する制御入力の2つの異なる組み合わせに従って運転するVCSは、同じ熱容量を供給することができるが、異なる量のエネルギーを消費する場合がある。したがって、運転コストを最適化する制御入力の組み合わせ、例えば、VCSのエネルギー消費を最小化するおよび/またはエネルギー効率を最大化する制御入力の組み合わせを用いてVCSを運転させることが望ましい。
【0036】
VCSのエネルギー効率に対処する制御方法は、2つのカテゴリ、すなわち、モデルベース制御方法およびデータ駆動制御方法に分けることができる。モデルベース方法は、VCSの制御入力がVCSの熱力学的挙動およびエネルギー消費に与える影響を記述しようとするものである。このようなモデルベース方法において、従来の解析モデルを用いて、熱負荷要件を満たし且つエネルギー消費を最小化する制御入力の組み合わせを予測する。しかしながら、異なる構成のVCSのための解析モデルを導出、較正、および経時的に更新することが困難である。例えば、1つ以上の室内ゾーンに配置された複数の熱交換器に接続された少なくとも1つの圧縮機を含むマルチゾーン蒸気圧縮システム(MZ-VCS)のための解析モデルを定式化することが困難である。言い換えれば、MZ-VCSの複雑性は、対応する解析モデルの使用を妨げる可能性がある。
【0037】
動的システムの正確なモデル(例えば、VCS)がない場合、いくつかの制御方法は、動的システムによってリアルタイムで生成された運転データを用いて、動的システムの動力学を安定させる制御ポリシーを構築する。このように運転データを用いて制御ポリシーを設計することは、データ駆動制御と呼ばれる。データ駆動制御方法には、間接的な方法と直接的な方法との2種類がある。間接的な方法は、動的システムの代理モデルを構築することと、代理モデルを活用してコントローラを設計することとを含む。直接的な方法は、中間モデルを構築することなく、運転データに基づいて制御ポリシーを直接に構築することを含む。間接的な方法の欠点は、モデル構築の段階で大量のデータを必要とする可能性があることである。逆に、直接的な方法は、より少ないデータを必要とするが、最先端の直接的な制御方法でさえも、VCSのような閉ループ制御システムの安全な運転を維持するために必要な状態および入力の制約を取り扱うことが困難である。
【0038】
そのために、いくつかの実施形態の目的は、VCSの閉ループ制御を行うための間接的なデータ駆動制御方法を提供することである。このような閉ループ制御方法は、モデルベース制御方法の複雑性および直接的なデータ駆動制御方法のから悪い影響を受けない可能性がある。しかしながら、このような間接的なデータ駆動制御を提供するためには、VCSの運転を効率的に管理することができる代理モデルを生成する必要がある。
【0039】
いくつかの実施形態は、VCSを制御するための代理モデルを構築する際にいくつかの障害があるという認識に基づいている。例えば、代理モデルを構築するためには、VCSのアクチュエータへの制御入力の値の大規模且つ実質的に無限の連続空間を調査する必要がある。この課題に対処するために、いくつかの実施形態は、VCSのアクチュエータへの制御入力の代理モデル110を、VCS制御が達成および/または追跡する必要がある異なるアクチュエータの設定値の代理モデル120に置換する。このようにして、VCS制御の最適化は、実際の制御から分離され、VCSの異なるアクチュエータの連続制御を危険にさらすことなく、設定値の空間をサンプリングすることができる。
【0040】
代理モデル102は、VCSの異なるアクチュエータの設定値102aの様々な組み合わせと対応するVCSの運転コスト102bとの間のマッピングを提供する。本明細書に使用される場合、「設定値」は、VCSの変量の所望の値を指す。設定値という用語は、制御信号、熱力学的パラメータおよび環境パラメータからなる特定のセットの任意の特定の値に適用される。例えば、「設定値」という用語は、VCSの構成要素の特定の状態を示すことができる。VCSの異なるアクチュエータは、VCSの膨張弁の位置を制御するアクチュエータ、VCSの室内ファン、VCSの室外ファン、およびダンパアクチュエータなどのうちの1つ以上を含んでもよい。一実施形態によれば、設定値の組み合わせに対応する運転コストは、設定値の組み合わせに従って運転するVCSの電力消費量である。さらに、代理モデル102を用いて、VCSの運転を制御することができる。
【0041】
図1Bは、代理モデル102を用いて蒸気圧縮システム(VCS)110の運転を制御するために、いくつかの実施形態によって使用される原理を示す概略図である。いくつかの実施形態は、勾配降下などの様々な検索技術を代理モデル102に使用して、VCS110の運転コストを低減する設定値の最適な組み合わせを選択することができるという認識に基づいている。しかしながら、実際のVCS制御から制御を分離すると、VCS110の動的応答が遅くなり、別の課題を引き起こす。例えば、代理モデル102は、設定値と定常状態におけるVCSの運転コストとをマッピングする必要がある。しかしながら、VCS110が設定値に対応する定常状態に到達するのに時間(例えば、15分)を必要とする。また、設定値の最適化と制御を分離した場合、アクチュエータの状態を設定値に反復的に変更するために追加のフィードバックコントローラを使用する必要があり、その後、VCSの出力を安定化するために追加の時間を必要とする。
【0042】
したがって、実際のVCS制御から設定値の最適化を分離することは、内在課題を引き起こす。すなわち、VCS運転の定常状態を待つために多くの時間が消費され、代理モデル102を構築するために、設定値の組み合わせと対応する運転コストとのペアのサンプル数が多く必要とされる。そのために、いくつかの実施形態の目的は、VCS運転の定常状態を待たずに過渡時間においてVCSの運転コストを推定し、代理モデル102を構築するために必要なサンプル数を減らすことである。
【0043】
一実施形態によれば、この目的は、設定値およびそれらに対応する推定運転コストの組み合わせのベイズ最適化を用いて確率的代理モデルを構築することによって達成することができる。確率的代理モデルは、VCS110の異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせと、対応する運転コストの確率分布との間のマッピングを提供する。代理モデル102は、確率的代理モデルに対応する。代理モデル102の確率的性質は、(1)過渡測定が確率的代理モデルに組み込まれ得る不確実性を含むため、VCS運転の定常状態を待たずにVCSの運転コストを推定することに使用できる不確実性、および(2)代理モデル102を構築するために必要なサンプル数を減らすために、このような不確実性を考慮して代理モデル構築プロセスを誘導するために使用できる不確実性を含む。
【0044】
一実施形態において、設定値の組み合わせに従って、VCS110が定常状態に到達するのに不十分な所定時間(例えば、5分)でVCS110を運転した後に、設定値の組み合わせに対応する運転コストを推定する。いくつかの実施形態において、対応する設定値の組み合わせに従って運転するVCS110の過渡状態の間に、少なくとも一部の運転コストを推定する。
【0045】
一実施形態によれば、確率的代理モデルは、確率的マッピングにおいて運転コストの少なくとも最初の2次モーメントを定義するように、設定値の組み合わせと対応する推定運転コストの確率分布とをマッピングする確率的機械学習アルゴリズム(例えば、ガウス過程回帰)を用いて構築することができる。一実施形態において、少なくとも最初の2次モーメントは、運転コストの平均値および運転コストの平方偏差(信頼範囲とも呼ばれる)を含むことができる。例えば、設定値の特定の組み合わせについて、代理モデル102は、電力消費量の予測値だけではなく、予測された電力消費量の信頼範囲(例えば、電力消費量の予測値が1000Wであり、予測された電力消費量が960Wと1040Wとの間にある信頼範囲が95%である)も提供する。
【0046】
図1Cは、いくつかの実施形態に従って、代理モデル102によって提供される平均予測値および信頼範囲を示す図である。点120は、サンプル/観測結果を表す。曲線116は、平均予測値を表し、陰影領域118は、信頼範囲を表す。
【0047】
さらに、いくつかの実施形態は、次に照会されなければならない設定値(「データポイント」とも呼ばれる)の組み合わせを選択することを目的とする。本明細書に使用される場合、設定値(またはデータポイント)の組み合わせを照会することは、設定値の組み合わせを用いた目的の評価(例えば、設定値の組み合わせに従って蒸気圧縮システム110を運転させること)を指す。いくつかの実施形態は、運転コストの最初の2次モーメントの獲得関数104を用いて、次に照会する設定値の組み合わせを選択する。
【0048】
図1Dは、いくつかの実施形態に従って、獲得関数104の曲線124を示す。獲得関数104は、代理モデル102によって提供された確率的マッピングを用いて、次に照会する設定値(すなわち、データポイント)の組み合わせを選択する。例えば、代理モデル102が、(以前に照会されていない)第1のデータポイントにおいて、電力消費量が85%の信頼範囲で少なくとも900Wであり得ることをもたらし、(同じく以前に照会されていない)第2のデータポイントにおいて、電力消費量が95%の信頼範囲で少なくとも990Wであり得ることをもたらす場合、900Wが蒸気圧縮システム110の最適な電力消費量である可能性が高いため、第1のデータポイントが低い信頼範囲にあっても、第2のデータポイントを照会する前に第1のデータポイントを照会する必要がある。したがって、獲得関数104は、次にサンプリングする/照会するデータポイントを決定するためのガイドとして使用される。
【0049】
一実施形態において、獲得関数104は、VCS110の運転を照会および最適化するために、代理モデル102のグローバル極小値122である可能性が最も高い設定値106の最適な組み合わせを選択するために最大化される。このような代理モデルの構築および代理モデルの利用は、ベイズ最適化114の一部である。言い換えれば、ベイズ最適化114は、ガウス過程回帰を用いて確率的マッピングを提供する代理モデル102と、代理モデル102によって提供された確率的マッピングを利用して、結果として生じる設定値の照会を指示する獲得関数104とを含む。
【0050】
選択された設定値106の最適な組み合わせは、VCS110に関連するフィードバックコントローラ108に適用される。フィードバックコントローラ108は、選択された設定値106の最適な組み合わせに対応する制御コマンドを決定するように構成されている。さらに、フィードバックコントローラ108は、制御コマンドに基づいてVCS110の運転を制御することによって、選択された設定値106の最適な組み合わせに従ってVCS110のアクチュエータの状態を変更する。具体的には、一実施形態において、フィードバックコントローラ108は、VCS110の出力(またはプロセス変量)を測定する。測定値は、フィードバック信号130としてフィードバックコントローラ108に適用される。フィードバックコントローラ108は、選択された設定値106の最適な組み合わせとフィードバック信号130との間の差を、誤差信号として計算する。フィードバックコントローラ108は、比例ゲイン、積分項、および/または微分項などの制御パラメータを使用する。制御パラメータを誤差信号に適用することによって、VCS110が選択された設定値106の最適な組み合わせに従ってプロセス変量またはVCS出力を駆動するための入力を決定することができる。フィードバックコントローラ108は、PIコントローラ、PIDコントローラ、MPCコントローラ、またはロバストコントローラのいずれかまたは組み合わせである。
【0051】
さらに、蒸気圧縮システム110は、選択された設定値106の最適な組み合わせの性能出力112(例えば、電力消費量)をもたらす。さらに、選択された設定値106の最適な組み合わせおよび対応する性能出力112を用いて、ベイズ最適化を使用する代理モデル102を更新する。その結果、更新された代理モデルが得られる。さらに、同じ獲得関数104を更新された代理モデルに適用することによって、VCS110を制御するための設定値の新しい最適な組み合わせを選択し、代理モデル120を更新する。同様の方法で、代理モデル102は、各反復において更新される。このような反復プロセスは、オンラインで、すなわち、蒸気圧縮システム110のリアルタイム運転中に、終了条件が満たされるまで実行される。終了条件は、反復の回数であってもよい。反復の回数は、任意であってもよく、またはユーザによって定義されてもよい。
【0052】
代理モデル102の反復更新は、正確な代理モデルをもたらす。各反復において、代理モデル102が更新され、獲得関数104と組み合わせて使用され、最適な設定値を決定するため、獲得関数104と組み合わせた代理モデル102は、設定値オプティマイザとして機能する。
【0053】
図2は、いくつかの実施形態に従って、蒸気圧縮システム110の運転を制御するための制御装置200を示すブロック図である。制御装置200は、多数のインターフェイスを含み、これらのインターフェイスは、制御装置200を他のシステムおよび装置に接続することができる。例えば、ネットワークインターフェイスコントローラ(NIC)214は、バス212を介して制御装置200をネットワーク216に接続するように構成されている。制御装置200は、無線または有線ネットワーク216を介して、室内ファンの速度、室外ファンの速度、膨張弁の位置、圧縮機の速度、および蒸気圧縮システム110の性能出力112などのうちの1つ以上を示すセンサ測定値218を受信することができる。追加的にまたは代替的に、センサ測定値218は、入力インターフェイス202を介して受信されてもよい。制御装置200は、センサ測定値に基づいて、蒸気圧縮システム110の構成要素の動作を監視することができる。
【0054】
制御装置200は、記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサ204と、プロセッサ204によって実行可能な命令を記憶するメモリ206とを含む。プロセッサ204は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、コンピューティングクラスタ、または任意の数の他の構成であってもよい。メモリ206は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、または任意の他の適切なメモリシステムを含んでもよい。プロセッサ204は、バス212を介して1つ以上の入力および出力装置に接続される。さらに、制御装置200は、プロセッサ204によって実行可能な命令を記憶する異なるモジュールを記憶するように構成された記憶装置208を含む。記憶装置208は、ハードドライブ、光学ドライブ、サムドライブ、ドライブアレイ、またはそれらの任意の組み合わせを用いて実装することができる。
【0055】
記憶装置208は、VCSの異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する代理モデル102を記憶するように構成されている。記憶装置208は、獲得関数104を記憶するように構成されている。獲得関数104は、次に照会/サンプリングする蒸気圧縮システム110の異なる運転パラメータの組み合わせを選択するために使用される。いくつかの実施形態において、獲得関数104は、代理モデル102においてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択するために使用される。
【0056】
いくつかの実施形態において、プロセッサ204は、VCS110の異なるアクチュエータの設定値の異なる組み合わせを用いてVCS110の運転を制御することによって、設定値の異なる組み合わせの各々に対するVCS110の運転コストを推定し、設定値の組み合わせとそれらに対応する推定運転コストとのベイズ最適化を用いて、VCS110の異なるアクチュエータの設定値の様々な組み合わせとそれらに対応する運転コストとの間の確率的マッピングを提供する確率的代理モデルを計算するように構成されている。確率的代理モデルは、確率的マッピング中の運転コストの少なくとも最初の2次モーメントを定義する。プロセッサ204は、運転コストの第1の2次モーメントの獲得関数104に従って、代理モデルにおいてグローバル極小値である可能性が最も高い設定値の最適な組み合わせを選択するようにさらに構成されている。プロセッサ204はさらに、出力インターフェイス220を介して、選択された設定値の最適な組み合わせをフィードバックコントローラ108に送信することによって、選択された最適な組み合わせ中の対応する設定値に従ってVCS110のアクチュエータの状態を変更するように構成されている。フィードバックコントローラ108は、PIコントローラ、PIDコントローラ、MPCコントローラ、またはロバストコントローラのいずれかまたは組み合わせである。
【0057】
一実施形態において、プロセッサ204は、選択された設定値106の最適な組み合わせに対する運転コストを推定するようにさらに構成され、選択された設定値の最適な組み合わせおよび対応する推定運転コストを用いて、ベイズ最適化を使用する代理モデル102を更新する。いくつかの実施形態において、プロセッサ204は、終了条件が満たされるまで、更新された代理モデルに適用された獲得関数に従って、新たに選択された設定値の最適な組み合わせを用いて代理モデル102を再帰的に更新するようにさらに構成されている。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
代替的には、いくつかの実施形態において、代理モデル102は、ニューラルプロセス回帰またはベイズニューラルネットワークおよび/または機械学習の他の変形によって決定することができる。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
ブロック404において、各ランダムサンプルのEI獲得関数を最大化する。ブロック406において、サンプル極大値を照会すべきデータポイントとして選択する。
【0070】
そのために、獲得関数(例えば、式(5))は、照会すべきデータポイントを提供する。選択されたデータポイントで照会することによって、対応する定常電力が得られる。いくつかの実施形態は、獲得関数から決定されたデータポイントを用いて代理モデル102を更新/再訓練することによって、代理モデル102の精度を高めることができるという認識に基づいている。特に、獲得関数を用いて選択されたデータサンプルおよびデータポイントを用いて、ハイパーパラメータセットが再計算される。
【0071】
同様に、次の反復において、更新/再訓練された代理モデル102と共に、獲得関数(例えば、式(5))を用いて、照会すべき別のデータポイントを選択することができる。さらに、選択された他のデータポイントを用いて、更新/再訓練された代理モデル102を再び更新/再訓練することができる。このような代理モデル102の更新の反復は、終了条件が満たされるまで実行される。適切な回数の反復の後、代理モデル102は、基礎的な関数Jを学習する。
【0072】
代替的には、いくつかの実装において、改善確率獲得関数または上限信頼境界獲得関数を用いて、次に照会するデータポイントを選択することができる。
勾配推定に基づく歩幅の調整
【0073】
【0074】
いくつかの実施形態は、アダム(Adam)、確率的勾配降下、適応勾配(Adagrad)、およびRMSpropなどの適応勾配アルゴリズムが、勾配だけではなく、対応する統計も活用して、勾配のロバストな推定を行うという認識に基づいている。また、適応勾配アルゴリズムは、収束速度を改善するように、歩幅を迅速に特定する運動量ベースのメカニズムを含む。適応勾配アルゴリズムは、典型的には、ニューラルネットワークを訓練するために使用される。しかしながら、いくつかの実施形態は、適応勾配アルゴリズムを極値探索制御(ESC)に使用して、局所近傍の関数Jの平滑度に基づいて歩幅を自動的に調整することができるという認識に基づいている。そのために、一実施形態は、アダムアルゴリズムを極値探索制御に取り入れることによって、アダム加速型極値探索制御を定式化することを目的とする。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
図7Aは、いくつかの実施形態に従って、例示的な凸関数700を示す。凸関数700において、ドメイン702の任意の場所でESCを開始することにより、極小値を達成することができる。
図7Bは、いくつかの実施形態に従って、例示的な非凸関数704を示す。複数の極小値710aおよび710bを含む非凸関数704において、グローバル極小値の決定は、ESCが開始されるドメインに依存する。例えば、ESCがドメイン706で開始される場合、ESCは、グローバル極小値、すなわち極小値710aを決定する。しかしながら、ESCがドメイン708で開始される場合、ESCは、極小値710b(すなわち、ローカル極小値)のみを決定し、グローバル極小値を決定しないことがある。
【0086】
いくつかの実施形態は、関数Jが非凸関数である場合、グローバル極小値を決定することは、良好な初期推測値を識別すること、すなわち、関数Jが局所的に凸であり、グローバル極小値を含む領域でESCを開始することを含むという認識に基づいている。さらに、勾配推定値は、領域内で使用され、グローバル極小値を特定する。良好な初期推測値がない場合、勾配ベースアルゴリズムの収束が遅くなり、ローカル極小値で立ち往生する可能性がある。
【0087】
いくつかの実施形態は、代理モデル102を用いて、グローバル極小値を含む可能性が最も高い領域(例えば、領域706)においてESCを開始することができるという認識に基づいている。特に、いくつかの実施形態は、代理モデル102の確率的性質および制御されているVCSの過渡状態の運転コストを推定する能力が、設定値の最適な組み合わせを選択する際にVCSの動力学を適切に捕捉できない場合があるという認識に基づいている。そのために、いくつかの実施形態は、確率モデルに従って選択された設定値の最適な組み合わせを用いて、データ駆動方式でVCS動力学を探索するESCをウォームスタートさせる。有利なことに、ESCは、モデルなしで制御入力を最適化することができる。しかしながら、ESCは、最適な設定値に収束するまでに数時間かかることがある。ESCのこのような遅い収束特性は、様々な実施形態による暖機運転で克服することができる蒸気圧縮システムの性能のリアルタイム最適化の解決策に対する障壁を示す。
【0088】
図8は、いくつかの実施形態に従って、ベイズ最適化ウォームスタートESCのフローチャートを示す。ベイズ最適化ウォームスタートESCは、ESCの初期推測値を提供するためのベイズ最適化ウォームスタート機構を含む。
【0089】
ステップ800において、設定値の許容可能な空間において設定値の初期セットをサンプリングする(800)。設定値の初期セットは、後続の設定値および対応する定常電力出力と共に、データセットを形成する。ステップ802において、データセットに基づいて代理モデルを決定する。ステップ804において、獲得関数を用いて次の最良の設定値を選択する。いくつかの実装形態において、取得された次の最良の設定値は、代理モデルのグローバル極小値である可能性が最も高いパラメータの組み合わせに対応し得る。ステップ802および804は、
図3および4で詳細に説明される。
【0090】
ステップ806において、取得された次の最良の設定値を初期推測値としてESCに適用する。
マルチゾーン蒸気圧縮システム
【0091】
いくつかの実施形態は、住宅および商業施設を制御するマルチゾーン蒸気圧縮システム(MZ-VCS)の利点の認識に基づいている。一実施形態において、VCS110は、MZ-VCSに対応し得る。MZ-VCSは、1つ以上の室内ゾーンに配置された複数の熱交換器に接続された少なくとも1つの圧縮機を含む。以下、
図9Aおよび
図9Bを参照して、MZ-VCSを詳細に説明する。
【0092】
図9Aおよび
図9Bは、いくつかの実施形態に従って、マルチゾーン蒸気圧縮システム(MZ-VCS)を示すブロック図である。MZ-VCSは、圧縮機と、一組のゾーンの環境を制御するように構成された一組の熱交換器とを含む。各ゾーンには少なくとも1つの熱交換器が配置されている。例えば、
図9Aの一実施形態において、各ゾーン925または935は、MZ-VCSが複数のゾーンに冷却または加熱を同時に提供することを可能にする建物内の部屋に対応する。
図9Bに示される代替的な実施形態において、複数の熱交換器が建物内の1つの部屋またはゾーン937に配置され、MZ-VCSが部屋の異なる部分に冷却または加熱を提供することを可能にする。
【0093】
本開示において、明確にするために、2つのゾーンのMZ-VCSを説明したが、理解すべきことは、冷媒ラインの長さ、容量、圧縮機のポンプ動力、および建築基準の物理的な制限を条件として、任意の数のゾーンを使用することができることである。ゾーンが室内ゾーン、例えば部屋または部屋の一部である場合、熱交換器は、室内熱交換器である。
【0094】
圧縮機910は、蒸気状態の低圧冷媒を受け取り、機械的な仕事を行い、冷媒の圧力および温度を上昇させる。四方弁909の構成に応じて、高温冷媒を室外熱交換器(この場合、システムは、熱を外部環境に伝達し、有用な冷却を提供するため、冷却モードで動作している)、または室内熱交換器(この場合、システムは、熱を1つ以上の屋内ゾーンに伝達し、有用な暖房を提供するため、暖房モードで動作している)のいずれかにルーティングすることができる。
【0095】
後続の説明を明確にするためおよび単純化するために、一般的に冷却モードを検討する。すなわち、四方弁909の実線で示すように、圧縮機は、蒸気圧縮システムの残りに接続されている。理解すべきことは、凝縮器を蒸発器に適切に置換し、凝縮温度を蒸発温度に適切に置換することによって、類似の記載は、加熱モードで動作するシステムに適用することができることである。
【0096】
冷房モードにおいて、高温高圧の冷媒は、室外熱交換器915に流れ、関連する任意選択のファン916は、室外熱交換器915に送風する。熱は、冷媒から空気に伝達され、冷媒を蒸気から液体に凝縮させる。
【0097】
蒸気冷媒が飽和蒸気から液体と蒸気との両方の二相混合物および飽和液体に凝縮する相変化プロセスは、蒸気圧縮サイクルの理想的な説明では等温であり、すなわち、相変化プロセスは、一定の温度で発生し、したがって、温度の顕在的な変化がない。しかしながら、飽和液体からさらなる熱を除去すると、飽和液体の温度は、適切な量で低下する。この場合、冷媒は、「過冷却」冷媒と呼ばれる。過冷却温度は、過冷却冷媒の温度と同じ圧力で算出された飽和液体冷媒の温度との差である。
【0098】
高温の液体冷媒は、室外熱交換器915から流出し、マニホルド917によって分岐され、次に接続されている室内ゾーン925、935または937に分配される。別個の膨張弁926、936は、入口マニホルドに接続されている。これらの膨張弁は、制限素子であり、冷媒の圧力を大幅に低下させる。膨張弁において実質的な熱交換を行うことなく、圧力が急速に低下するため、冷媒の温度は、大幅に低下され、蒸気圧縮サイクルの理想的な説明では「断熱」と呼ばれる。膨張弁から流出した冷媒は、液体と蒸気の低圧低温の二相混合物である。
【0099】
二相冷媒は、室内熱交換器920、930に流入し、関連するファン921、931は、熱交換器920、930にそれぞれ送風する。室内空間からの熱負荷を表す熱922、932は、ゾーンから冷媒に伝達され、冷媒を液体と蒸気の二相混合物から飽和蒸気状態に蒸発させる。
【0100】
冷媒が飽和蒸気から液体と蒸気の両方の二相混合物に蒸発して飽和蒸気になる相変化プロセスは、蒸気圧縮サイクルの理想的な記述において等温であり、すなわち、一定の温度で発生し、したがって、温度の顕在的な変化なしで発生するプロセスである。しかしながら、さらなる熱を飽和蒸気に加えると、飽和蒸気の温度は、適切な量で上昇する。この場合、冷媒は、「過熱」冷媒と呼ばれる。過熱温度は、過熱冷媒蒸気の温度と同じ圧力で算出された飽和蒸気温度との差である。
【0101】
室内熱交換器から流出した低圧冷媒蒸気は、出口マニホルド918で共通の流路に合流する。最後に、低圧の冷媒蒸気が圧縮機910に戻り、サイクルが繰り返される。
【0102】
MZ-VCS内の主要なアクチュエータは、圧縮機910と、室外熱交換器ファン916と、室内熱交換器ファン921、931と、膨張弁926、936とを含む。いくつかのシステムにおいて、圧縮機の速度は、1つ以上の所定の速度に固定されてもよく、または連続的に変動されてもよい。同様に、室外熱交換器ファン916は、一定の速度で固定されてもよく、連続的に変動されてもよい。いくつかの構成において、室内熱交換器ファン921、931は、MZ-VCS制御装置によって決定されてもよく、またはその速度は、居住者が室内の空気流れを直接に制御したいときに当該居住者によって決定されてもよい。膨張弁は、全ての可能な中間位置を含む全閉位置から全開位置に連続的に変化するように、制御装置200によって制御され、例えば電子的に制御される。いくつかのMZ-VCS実装形態は、電子制御式膨張弁を、オン/オフ制御のソレノイド弁と流量を精密に制御する別個の可変開放弁との直列組み合わせに置換する。
【0103】
冷媒の高圧および冷媒の低圧は、室外空気温度、室内空気温度、圧縮機速度、およびに弁開度の組み合わせなどの熱力学条件によって決定される。膨張弁926および936の各々を異なる開度に設定することができるが、全体的な高圧および低圧は、冷媒回路内に並列に配置される膨張弁の合計圧力降下によって決定される。また、室内熱交換器920、930と出口マニホルド918との間に減圧素子を設けていないため、全ての熱交換器は、実質的に同じ圧力で作動する。さらに、前述した相変化の等温特性により、全ての室内熱交換器は、同じ温度で蒸発するように制限されている。
【0104】
一実施形態によれば、室内熱交換器920および930の加熱能力または冷却能力は、運転モードの「オン」と「オフ」との間で各熱交換器をデューティサイクリングすることによって調節することができる。冷媒の流れを制御する入口弁が閉められたときに、または代替的にシステムを介して冷媒を圧送する圧縮機910が停止されているときに、熱交換器920および930がオフであり、熱交換器920および930は、冷却または加熱を行わない。入口弁が開かれ、圧縮機910が動作しているときに、熱交換器920および930がオンであり、室内ゾーン925および935内の熱交換器920および930は、全熱容量で動作する。制御装置は、屋内ゾーン温度と所望の屋内ゾーン温度との間の差に基づいて、モードの切換えを決定する。
【0105】
しかしながら、熱交換器をオンおよびオフに切換えることは、特にゾーン熱交換器を互いに独立してオンおよびオフに切換えることができるMZ-VCSにおいて、システムの出力、例えばゾーンの温度および熱交換器の温度に持続的な変動をもたらし、エネルギー的に非効率的であり、居住者の快適性を低減することが分かっている。したがって、MZ-VCSの熱交換器などの熱交換器の熱容量を円滑に制御するための制御システムおよび方法が必要である。
【0106】
いくつかの実施形態は、確率的代理モデル102が、MZ-VCSを制御する複雑性を低減するために有利に使用され得るという認識に基づいている。具体的には、多数の設定値を有するMZ-VCSにおいて、設定値のブルートフォースサンプリング(brute-force sampling)は、余計な計算消費および長い調整時間をもたらすことができる。サンプリング効率は、確率的代理モデル102を介して探索と利用のバランスをとることができるベイズ最適化アルゴリズムを使用することによって、大幅に削減される。いくつかの実施形態によれば、多数の設定値を有するMZ-VCSは、拡張可能な確率的機械学習アルゴリズムを必要とする。いくつかの実施形態において、拡張可能な確率的機械学習アルゴリズムは、ベイズ深層ニューラルネットワークまたは変分オートエンコーダに基づくことができる。
結果
【0107】
図10は、いくつかの実施形態に従って、標準時変ESC、アダム加速時変ESC、およびベイズ最適化ウォームスタートESCの性能結果を示す。性能を評価するために、フィードバックコントローラを備えた蒸気圧縮サイクルを含むシステムを検討する。フィードバックコントローラは、圧縮機速度を制御することによって、冷却能力を設定値に調整するように構成されている。このようなシステムは、居住空間のより遅く且つ低域の熱動力学を必要とすることなく、蒸気圧縮サイクルに関する最適化方法の研究を容易にする。さらに、最適化方法(例えば、標準時変ESC、アダム加速時間変動ESC、およびベイズ最適化ウォームスタートESC)を適用することによって、システムの入力(例えば、膨張弁位置、室内ファン速度(IFS)、室外ファン速度(OFS))を調整して電力消費量を最適化する。
【0108】
事例研究として、PIループを選択して蒸気圧縮サイクルの冷却能力を2kWに調整し、最適化方法を適用して膨張弁位置およびファン速度の最適値を決定する。PIゲインは、オフラインで(すなわち、事前に)調整される。PIゲインは、設定値調整機構には知られていない。
【0109】
電力プロット1000において、1002は、標準時変ESCを表し、1004は、アダム加速時変ESCを表し、906は、ベイズ最適化ウォームスタートESC(ハイブリッド)を表す。電力プロット1000から、標準時変ESC1002およびアダム加速時変ESC1004は、ベイズ最適化ウォームスタートESC906と比較して、より遅い収束を示すことが分かる。ベイズ最適化ウォームスタートESC906は、3時間以内に定常サイクル電力0.335kWに収束するが、他のアルゴリズムは、最小サイクル電力に近づくまでに10時間超を必要とする。
【0110】
一実施形態によれば、定常サイクル電力の差は、標準時変ESC1002、アダム加速時変ESC1004、およびベイズ最適化ウォームスタートESC906によって決定される最適なLEV(線形膨張弁)位置の差によって引き起こされる。標準時変ESC1002およびアダム加速時変ESC1004は、初期LEV位置に依存するため、約300カウントの定常LEV位置に収束する。一方、ベイズ最適化ウォームスタートESC906は、260カウントの定常値が著しく良好なエネルギー効率をもたらすと判断する。ベイズ最適化ウォームスタートESC906は、探索段階を含み、探索段階の終了時に、BOウォームスタートは、有効な調整パラメータの局所セットをもたらす。しかしながら、依然として、オンラインで局所勾配情報を利用することができるため、ベイズ最適化ウォームスタート後の電力消費量をさらに低減することができる。さらに、プロット1008および1010から、設定値調整手順を通して容量設定値を達成したが、LEV位置に関連する圧縮機周波数は、意図した40Hzに維持されず、約17Hzまで徐々に減少することが分かる。
【0111】
図11は、いくつかの実施形態に従って、複合システムの標準時変ESCおよびベイズ最適化ウォームスタートESCの性能結果を示す。複合システムは、
図10の説明で説明したものと同じサイクルを含むが、2つのフィードバックループ、すなわち、圧縮機速度の制御を介して室温を設定値に調整するフィードバックループと、膨張弁位置の制御を介して蒸発器過熱温度(CITE)を設定値5℃に調整するフィードバックループとを包含する。複合システムは、27m
3の体積および木材の熱特性を有する20cm厚の外壁を有する立方体の部屋モデルに接続され、外部および内部熱伝達係数は、それぞれ1.5Wm
-2および3.5Wm
-2である。この複合システムは、日中に稼働し、夜間に無人になる商業オフィスビルを想定して運用されている。その結果、空間の顕熱負荷および潜熱負荷は、午前8時から午後6時までの間に3200Wおよび800Wに設定され、それ以外の時間に2000Wおよび100Wに設定される。環境温度は、24時間にわたって24℃~40℃の間で正弦波状に変動し、午後2時にピークを迎えると仮定されている。
【0112】
さらに、2つの調整可能な入力:室内ファン速度(IFS)および室外ファン速度(OFS)を検討する。両方の調整可能な入力は、有界であると仮定され、例えば、IFSの境界は、[200,500]rpmであり、OFSの境界は、[500,900]rpmであると知られている。標準時変ESCおよびベイズ最適化ウォームスタートESCは、温度または熱プロファイルに関する情報が先験的に与えられないが、現在の時点で熱負荷を測定することができると仮定する。
【0113】
ベイズ最適化ウォームスタートESCは、最初の18時間を用いて、各負荷モード、すなわち、熱負荷が高いときおよび熱負荷が低いときのデータを収集する。各負荷モードについて、エネルギー効率の代理モデル(例えば、代理モデル102)および対応する最適なIFS-OFS対が学習される。18時間後、アダム加速時間変動ESCが引き継がれ、勾配に基づいた更新がIFSとOFSの両方に使用される。性能結果から、標準時変ESCは、限られた適応性を示すことが分かる。例えば、IFSは、290~310rpmの狭い範囲で変動し、OFSは、停滞している。逆に、ベイズ最適化ウォームスタートESCにおいて、代理モデルは、ESC位置素早くリセットすることができ、エネルギー効率を改善する。また、ベイズ最適化ウォームスタートESCは、数日にわたる改善をもたらし、例えば、48時間(約60~70時間)後の出力の低下は、24~48時間よりも顕著である。
【0114】
図12は、いくつかの実施形態に従って、制御装置200を使用する加熱、換気、および空調(HVACシステム)1210の制御を示す。「HVAC」システムは、蒸気圧縮サイクルを実施する任意の加熱、換気、および空調(HVAC)システムを指す。HVACシステム1210は、屋外の空気のみを建物の居住者に供給するシステムから、建物の温度のみを制御するシステムまたは温度および湿度を制御するシステムに及ぶ非常に広範囲のシステムを含む。
【0115】
HVACシステム1210は、部屋1200を調節するように構成されている。部屋1200は、居住者1202、1204、1206、および1208によって占有されている。矢印1214は、室1200を調節するために、HVACシステム1210によって供給された空気を表す。制御装置(例えば、制御装置200)は、代理モデル(例えば、代理モデル102)に基づいて、HVACシステム1210の電力消費量を最小限に抑える設定値の最適な組み合わせを決定する。
【0116】
その後、設定値の最適な組み合わせは、HVACシステム1210に関連するフィードバックコントローラ1212に入力される。フィードバックコントローラ1212は、設定値の最適な組み合わせに基づいて制御コマンドを生成する。フィードバックコントローラ1212は、制御コマンドに従ってHVACシステム1210を制御することによって、HVACシステム1210の電力消費量を最小限に抑える。
【0117】
代理モデリングに基づく最適化(例えば、代理モデル102を使用するベイズ最適化ウォームスタートESC)は、決定的な利点をもたらす。例えば、機械学習方法は、測定値のノイズにもかかわらず、例えばガウス過程回帰を介して、性能出力に対する蒸気圧縮システムの入力の代理モデルを構築することを可能にする。しかしながら、モデルを使用しない手法(例えば、ESC)は、ノイズのあるデータから勾配を直接に推定するため、最適な入力の近傍に振動が発生したり、発散したりするなどの望ましくない影響が生じる可能性がある。また、代理モデリングは、終了基準を達成した時点で入出力モデルを学習し、それを例えばクラウド上に保存しておくことで、その後の操作で入力の初期推測値(ウォームスタート)を適切に行うことができる。さらに、代理モデル上で1次および2次方法などの平滑最適化方法を直接に使用できるため、収束率が平滑リグレッサを介した代理モデリングと共に改善する。
【0118】
上記の説明は、例示的な実施形態のみを提供するものであり、本開示の範囲、適用または構成を制限することを意図していない。むしろ、以下の例示的な実施形態の説明は、1つ以上の例示的な実施形態の実施を可能にするための説明を当業者に与える。添付の特許請求の範囲に記載された主題の精神および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置に対する様々な変更が考えられる。
【0119】
上記の説明において、実施形態に対する完全な理解を提供するために、具体的な詳細が記載される。しかしながら、当業者は、これらの具体的な詳細がなくても、実施形態を実施できることを理解することができる。例えば、不必要な詳細で実施形態を不明瞭にしないように、開示された主題におけるシステム、プロセス、および他の要素は、ブロック図の構成要素として示されてもよい。また、実施形態を不明瞭にしないように、周知のプロセス、構造、および技術は、不必要な詳細なしで示されてもよい。さらに、様々な図面において、同様の参照番号および名称は、同様の要素を示す。
【0120】
また、各々の実施形態は、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、またはブロック図として示されるプロセスとして説明されることがある。フローチャートが動作を順次のプロセスとして説明しても、多くの動作は、並列にまたは同時に実行されてもよい。また、動作の順序は、変更されてもよい。プロセスの動作が完了したときに、プロセスを終了することができるが、このプロセスは、討論されていないまたは図示されていない追加のステップを含むことができる。さらに、具体的に記載されたプロセス内の全ての動作は、全ての実施形態に含まれる必要がない。プロセスは、方法、関数、プロシージャ、サブルーチン、サブプログラムなどであってもよい。プロセスが関数である場合、関数の終了は、当該関数を呼び出し関数または主関数に復帰させることに対応する。
【0121】
さらに、開示された主題の実施形態は、手動でまたは自動で、少なくとも部分的に実装されてもよい。手動または自動の実装は、マシン、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、またはそれらの任意の組み合わせで実装されてもよく、または少なくとも支援されてもよい。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、またはマイクロコードで実装される場合、必要なタスクを実行するためのプログラムコードまたはコードセグメントは、機械可読媒体に記憶されてもよい。プロセッサは、必要なタスクを実行することができる。
【0122】
本明細書において概説した様々な方法または工程は、様々なオペレーティングシステムまたはプラットフォームのいずれか1つを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコーディングされてもよい。さらに、このようなソフトウェアは、いくつかの適切なプログラミング言語および/またはプログラミングツールもしくはスクリプトツールのいずれかを用いて書かれてもよく、フレームワークまたは仮想マシン上で実行される実行可能な機械言語コードもしくは中間コードとしてコンパイルされてもよい。通常、プログラムモジュールの機能は、所望に応じて様々な実施形態に組み合わせられてもよく、分散させられてもよい。
【0123】
本開示の実施形態は、一例として提供された方法として具現化されてもよい。本方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けられてもよい。したがって、例示的な実施形態において順次に実行される動作とは異なる順序で動作を実行すること、いくつかの動作を同時に実行することを含み得る実施形態を構築することができる。いくつかの好ましい実施形態を参照して本開示を説明したが、理解すべきことは、本開示の精神および範囲内で、様々な他の改造および修正を行うことができることである。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の精神および範囲内にある全ての変形および修正を網羅する。