(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】観測システム
(51)【国際特許分類】
B64G 1/10 20060101AFI20250107BHJP
B64G 3/00 20060101ALI20250107BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B64G1/10 328
B64G3/00
B64G1/66 A
(21)【出願番号】P 2024066565
(22)【出願日】2024-04-17
(62)【分割の表示】P 2021084643の分割
【原出願日】2021-05-19
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-107941(JP,A)
【文献】特開平3-179978(JP,A)
【文献】特開2012-253748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/10
B64G 3/00
B64G 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止軌道上空から地球を観測する際に、開口径と焦点距離とがロケットのフェアリングの寸法の制約を受けない光学観測装置であって高解像度化される画像を撮影する光学観測装置と、通信装置とを具備した観測衛星と、
前記光学観測装置の撮像した撮像データを受信して画像化する地上設備と
を備え、地球または宇宙の地物を撮像する観測システムにおいて、
前記観測衛星は、
前記光学観測装置の視線ベクトルを移動させて前記光学観測装置で同一撮像対象を複数回撮像して前記同一撮像対象の複数回の各回の撮像データを生成し、前記通信装置で各回の撮像データを地上に伝送し、
前記地上設備は、
前記同一撮像対象の各回の撮像データを受信する通信制御部と、
各回の撮像データを画像処理対象として、ベイズ推定を用いて画像処理する超解像処理を実施する画像制御部と、
を備え、
前記光学観測装置が2次元検出器を具備し、
前記2次元検出器は、
視線ベクトル移動方向の画素数mに相当する前記光学観測装置の視野角ηにおいて撮像をしてから視線ベクトルの移動により隣接する次の視野角ηの撮像をするまでに要する時間tの間に、画素数mの約数以外の2以上の素数であり、かつ、2と3と5以外の素数である素数kに対して(k―1)回の撮像をt/kの時間インターバルで撮像した各撮像データを取得し、
前記通信装置は、
前記2次元検出器で取得された各撮像データを、地上に伝送する観測システム。
【請求項2】
前記光学観測装置が、
視線ベクトルを一定の角速度で回転し、かつ、視線ベクトルを移動しながら撮像して前記撮像データを生成する2次元検出器を具備する請求項1に記載の観測システム。
【請求項3】
前記地上設備は、前記撮像データとして、
前記光学観測装置が具備する検出器の持つ検出素子の瞬時視野角θdegに対して、前記検出素子の視線ベクトルの移動角度φが瞬時視野角θdegよりも小さいθ/N deg(Nは2以上の自然数)の状態で撮像された撮像データを受信する、
請求項2に記載の観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、観測システム、観測衛星、地上設備およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、観測衛星に搭載される光学観測装置の検出器の画素ピッチに依存して画像の分解能が制約される。このため、赤道上空約36000kmの静止軌道上空から地球を観測する分解能を向上する際に、開口径と焦点距離とがロケットのフェアリングの寸法の制約を受ける。このため、従来技術では、高分解能化が難しいという課題があった(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、検出器の画素ピッチに依存せずに画像を高解像度化する観測システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る観測システムは、
静止軌道上空から地球を観測する際に、開口径と焦点距離とがロケットのフェアリングの寸法の制約を受けない光学観測装置であって高解像度化される画像を撮影する光学観測装置と、通信装置とを具備した観測衛星と、
前記光学観測装置の撮像した撮像データを受信して画像化する地上設備と
を備え、地球または宇宙の地物を撮像する観測システムにおいて、
前記観測衛星は、
前記光学観測装置の視線ベクトルを移動させて前記光学観測装置で同一撮像対象を複数回撮像して前記同一撮像対象の複数回の各回の撮像データを生成し、前記通信装置で各回の撮像データを地上に伝送し、
前記地上設備は、
前記同一撮像対象の各回の撮像データを受信する通信制御部と、
各回の撮像データを画像処理対象として、ベイズ推定を用いて画像処理する超解像処理を実施する画像制御部と、
を備え、
前記光学観測装置が2次元検出器を具備し、
前記2次元検出器は、
視線ベクトル移動方向の画素数mに相当する前記光学観測装置の視野角ηにおいて撮像をしてから視線ベクトルの移動により隣接する次の視野角ηの撮像をするまでに要する時間tの間に、画素数mの約数以外の2以上の素数であり、かつ、2と3と5以外の素数である素数kに対して(k―1)回の撮像をt/kの時間インターバルで撮像した各撮像データを取得し、
前記通信装置は、
前記2次元検出器で取得された各撮像データを、地上に伝送する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、検出器の画素ピッチに依存せずに画像を高解像度化する観測システム提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1の図で、観測システム1000の構成を示す図。
【
図2】実施の形態1の図で、プッシュブルーム撮像の場合のオーバーサンプリング処理を説明する図。
【
図3】実施の形態1の図で、プッシュブルーム撮像の場合のオーバーサンプリング処理を説明する図。
【
図4】実施の形態1の図で、ベイズ推定を説明する図。
【
図5】実施の形態1の図で、ベイズ推定を説明する図。
【
図6】実施の形態1の図で、視線ベクトル移動距離xとGSDとの関係を示す図。
【
図7】実施の形態1の図で、視線ベクトル移動距離xとGSDとの関係を示す別の図。
【
図8】実施の形態1の図で、静止軌道を飛翔する観測衛星100が、地表501の撮像対象400を観測する状況を示す図。
【
図9】実施の形態1の図で、静止軌道からの地表501の撮像対象400の観測において、φ<θ/N degの状態での観測を示す図。
【
図11】実施の形態1の図で、比較例を示す別の図。
【
図12】実施の形態1の図で、
図10の観測領域を想定する際の観測方式を示す図。
【
図13】実施の形態1の図で、観測衛星100のハードウェア構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態の説明および図面において、同じ要素および対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略又は簡略化する。以下の実施の形態では、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。
【0009】
実施の形態1.
図1から
図12を参照して、実施の形態1の観測システム1000を説明する。
図1は、観測システム1000の構成を示す。観測システム1000は、観測衛星100と地上設備200とを備えている。観測システム1000は、地球500または宇宙の地物を撮像するシステムである。観測衛星100は、光学観測装置110、視野変更装置120および通信装置130を備えている。光学観測装置110は、光学系111および検出器112を備えている。
【0010】
<観測システム1000>
地上設備200は、光学観測装置110の撮像した撮像データを受信して画像化する。観測衛星100は、光学観測装置110の視線ベクトルを移動させて、光学観測装置110で同一撮像対象を複数回撮像して、同一撮像対象の複数回の各回の撮像データを生成し、生成した各回の撮像データを、通信装置130で地上に伝送する。地上設備200は、同一撮像対象の各回の撮像データを受信する通信制御部211と、各回の撮像データを画像処理対象として、ベイズ推定を用いて画像処理する超解像処理を実施する画像制御部212とを備えている。
【0011】
***構成の説明***
図1を参照して、地上設備200のハードウェア構成を説明する。地上設備200は、コンピュータである。地上設備200は、プロセッサ210を備えるとともに、主記憶装置220、補助記憶装置230、入力IF240、出力IF250、および通信IF260といった他のハードウェアを備える。IFはインタフェースを示す。プロセッサ210は、信号線270を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。地上設備200は、機能要素として、通信制御部211および画像制御部212を備える。通信制御部211は、観測衛星100から送信される撮像データの受信処理を実行する。画像制御部212は、撮像データを用いた画像処理を実行する。通信制御部211および画像制御部212の機能は、プロセッサ210とプログラム201との協働により実現される。ソフトウェアは補助記憶装置230に格納されている。通信IF260には、地上側通信装置310が接続されている。通信制御部211は、地上側通信装置310および地上側アンテナ320を介して観測衛星100の通信装置130と通信する。
【0012】
プログラム201は、通信制御部211および画像制御部212の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。また、観測方法は、コンピュータであ地上設備200がプログラム201を実行することにより行われる方法である。プログラム201は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよいし、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0013】
次に、観測衛星100による観測について説明する。観測衛星100に搭載した光学観測装置110の分解能の指標として、Ground Sampling Distance(以下、GSDと表記)が一般に知られている。地球観測の例では、光学系111を介して検出器112に投影される地表画像において検出器112の画素ピッチに相当する地表距離が、GSDに相当する。検出器112の画素ピッチに相当する視野角は、瞬時視野角θと呼ばれる。このため、2次元に配置された後述の2次元検出素子114Eを具備した光学観測装置110の場合、1回の撮像で得られる画像のGSDは、2次元検出素子114Eの画素ピッチに依存する。
【0014】
<オーバーサンプリング処理>
これに対して、オーバーサンプリング処理と呼ばれる処理が知られている。オーバーサンプリング処理によれば、例えば画素ピッチの1/2ずつ、縦にも横にもずらして撮像した2枚の画像を合成することにより、検出器112の画素ピッチに依存するGSDよりも空間分解能の高い画像が得られることが知られている。
【0015】
<プッシュブルーム撮像>
図2および
図3は、プッシュブルーム撮像の場合のオーバーサンプリング処理を説明する図である。以下に1次元検出器113による、プッシュブルーム撮像におけるオーバーサンプリング処理の実施例を説明する。
図2には1次元検出器113として、1次元検出器113A,113Bを示している。1次元検出器113の例はCCD検出器である。1次元検出器113は、列状に配置された複数の1次元検出素子113Eを有する。プッシュブルーム撮像とは、1次元検出素子113Eを具備する光学観測装置110が、1次元検出素子113Eの検出素子列と直交する方向115に視線ベクトルを移動しながら、所望の視線ベクトルの移動量に応じて1次元検出素子113Eを動作させることにより、2次元画像を生成する撮像方法である。
図2のように、1次元検出器113Aを基準として、1次元検出器113Bを、検出素子列方向(CT方向)に0.5画素、画素配列と直交方向(AT方向)にn+0.5画素(nは整数)に配置する。
図3は、1次元検出器113Aと1次元検出器113Bとからの画像化を示す。検出素子列と直交する方向115に1画素分移動するごとに撮像を繰返すと、1次元検出器113Aによる2次元画像(黒丸141A)と、1次元検出器113Bによる2次元画像(二重丸141B)とが画像化される。白丸141Cは撮像されない点を示している。1次元検出器113Aと1次元検出器113Bとの画素中心間距離は、それぞれの画素ピッチの1/√2倍(1/2
1/2)となっている。
【0016】
オーバーサンプリング処理では、撮像されない白丸141Cで示した格子の情報を、地上において周辺のデータから内挿処理によって導出する。例えば、隣接する黒丸141Aによって構成される格子と、二重丸141Bによって構成される格子との合計4格子の情報を加算して4で割ることにより、白丸141Cの情報を生成して、あたかも画素ピッチが0.5となる画像を生成する。
【0017】
図3では黒丸141Aで構成される画像と、二重丸141Bで構成される画像との2枚の画像の画素中心同士が、縦と横に画素ピッチの1/2ずつずれた結果として、斜め45度に画素中心間距離が1/(√2)に配列され、GSDが1/(√2)倍相当に高解像度化された効果であると理解される。但し、瞬時視野角θが1/(√2)倍されるわけではない。隣接画素の情報が混入するため、画素ピッチが1/(√2)の光学観測装置の取得画像には及ばない。
【0018】
以下に説明する実施の形態1の高解像度化の原理は、画素ピッチのずれ量が1/2に限定されず、また画像が2枚との限定もない。また実施の形態1の高解像度化の原理は、縦と横が異なる条件である必要もない。
【0019】
<ベイズ推定>
同一撮像対象を撮像した複数画像をベイズ推定することにより、高解像度化の効果があることが知られており、これを「超解像処理」と呼ぶ。この超解像処理により、観測衛星100において、視線ベクトルが瞬時視野角θdegよりも小さいθ/N deg(Nは2以上100以下の自然数)移動した状態の画像を複数枚利用する高解像度化が可能となる。
【0020】
<ベイズ推定の手順>
以下にベイズ推定の手順を示す。以下に説明するベイズ推定の一連の手順は、画像制御部212が行う。
図4、
図5は、ベイズ推定を説明する図である。
図4には、実線で示す画像1と、一点鎖線で示す画像2との、2枚の画像を示している。画像制御部212は1枚の画像を選択し、各ピクセル(観測画像の画素をピクセルと呼ぶ)の値を基にして、所望の表面モデルの格子点(以降、ミクセルと呼ぶ)の値を内挿する。
図4の破線が、表面モデルを示し、白丸がミクセルを示している。画像制御部212は、最初の画像と他の画像とのレジストレーションをサブピクセルの精度でとり、各ミクセルと各ピクセルの距離が求められるようにする。画像制御部212は、次式によりミクセルiの画素値miを求め、初期合成画像とする。
【数1】
【0021】
(a)尤度
画像制御部212は、各ミクセルの画素値と、観測条件(PSF、レジストレーション情報)とが与えられたときの、各ピクセルの画素値の確率を与える尤度関数を求める。次に、各画素の観測誤差が隣接値と独立であると見なし、画像全体の尤度として次式が得られる。
【数2】
【0022】
(b)先見確率
各ミクセルの値がいかに関連するかを先見確率とする。ミクセル値の連続性を考慮し、次式を得る。
図5では次式によるミクセル値生成を概念的に示している。
【数3】
【数4】
尤度と先見確率との積が最大となる条件は次式で与えられる。
【数5】
【0023】
ミクセル間隔が大きい場合は、上記の△miの右辺にける、分子の第1項が支配的になり最尤法の解と同様になる。分子の第2、3項は連続性に関わる項であり、雑音抑制として働く。
【0024】
以上がベイズ推定の手順である。
【0025】
<超解像処理>
以上のように、光学観測装置110で取得した、同一撮像対象物の複数回の撮像結果の複数画像を、ベイズ推定処理により高解像度処理して高分解能化を実現する手順を、超解像処理と呼ぶ。超解像処理を実施することにより、光学観測装置110の1回の撮像で得られる画像のGSDよりも空間周波数の高い情報を抽出できるという効果がある。但し、光学観測装置110では光学系111の回折限界による高解像度化の限界があることは言うまでもない。
【0026】
<低軌道の周回>
上記で述べた、観測衛星100が実行するオーバーサンプリング処理と、地上設備200が実行する超解像処理との説明では、簡単化のために、後述する
図6のように、視線ベクトルが「平面と見做した地表面501」の法線ベクトルと平行になる状態のGSDを使った。低軌道を周回する観測衛星100は対地速度が大きいため、衛星の進行方向にプッシュブルーム撮像をすれば、視線ベクトルの角度が一定であっても、地表面に対して視線ベクトルが衛星の進行方向に移動する。よって、オーバーサンプリング処理および超解像処理が可能となる。
【0027】
<静止軌道から観測>
一方、後述する
図8に示すように、静止軌道(高度概略36000km)近傍を飛翔する観測衛星100から地球500を観測する場合は、静止軌道衛星が地球500の自転と同期して飛翔する。このため、静止軌道を飛翔する衛星は対地速度がほぼゼロなので、観測衛星100本体の姿勢角または光学観測装置110の具備する視野変更装置120により、視線ベクトルを移動することになる。この場合はGSDではなく瞬時視野角θを基準にするのが合理的である。例えば、静止軌道から日本を観測する場合には、地球の球状効果と、赤道上空から中緯度帯を観測する際の視線ベクトルの斜視効果と、光学装置から観測対象となる地表面までの距離が一律でないこと、により、1画素当たりのGSDは直下視のGSDとは異なる。
そこで、後述する
図9に示すように、光学観測装置110の具備する検出素子の瞬時視野角θdegを基準として、観測衛星100は、視線ベクトルの移動角度φが瞬時視野角θdegよりも小さい、
θ/N deg(Nは2以上100以下の自然数)
の状態で撮像した複数の撮像データを取得して地上に伝送する。そして、地上設備200が、撮像データを受信して、画像制御部212が複数の撮像データを画像化した後に、ベイズ推定により超解像処理を実施する。
【0028】
上記のθ/Nの式においてNが2であり、緯度方向にも経度方向にもそれぞれθ/N deg移動して撮像する場合が、上記オーバーサンプリング撮像の原理を説明した
図3の例に相当する。緯度方向のみθ/N deg移動して撮像する場合は、緯度方向のみの高解像度化が期待できる。なお視線ベクトルの移動方向は任意である。また光学系111の解析限界まで余裕のある状態であれば、Nが大きいほど効果が期待できる。
【0029】
(視線ベクトルの移動距離<GSD/N)
地上設備200は、撮像データとして、光学観測装置110が具備する検出器112の1つの検出素子112Eあたりの対地距離を示すGround Sampling Distanceの値GSDに対して、視線ベクトルの移動距離xがGSDよりも小さいGSD/N deg(Nは2以上の自然数)の状態で撮像された撮像データを受信する。
つまり、Nを2以上の整数として、
x<GSD/N
である。
図6および
図7を参照して視線ベクトル移動距離xとGSDとの関係を具体的に説明する。
図6は、GSDを示す。
図6、
図7では、観測衛星100が右方向へ時刻t1からtnにかけて飛翔する。
図7は、視線ベクトルの移動距離xとGSDとの関係を示す。
図7に示すように、GSDの範囲に、複数個の「視線ベクトル移動距離x」が含まれる。これにより、同一撮像対象の複数の撮像データが取得できるので、同一撮像対象の複数の画像を用いる地上設備200による超解像処理が可能になる。
【0030】
(φ<θ/N)
地上設備200は、撮像データとして、光学観測装置110が具備する検出器112の持つ検出素子112Eの瞬時視野角θdegに対して、検出素子112Eの視線ベクトルの移動角度φが、瞬時視野角θdegよりも小さいθ/N deg(Nは2以上の自然数)の状態で撮像された撮像データを、観測衛星100から受信する。
以下具体的に説明する。
図8は、静止軌道を飛翔する観測衛星100が、地表501の撮像対象400を観測する状況を示している。
図9は、静止軌道からの地表501の撮像対象400の観測において、
φ<θ/N deg(Nは2以上の自然数)
の状態での観測を示す図である。
図8、
図9は上記の<静止軌道から観測>で述べた内容である。
図9に示す2本の点線の作る角度がφである。よって、観測衛星100が静止軌道を飛翔する場合であっても、瞬時視野角θの範囲内において同一の撮像対象400の複数の撮像データを得ることができる。これにより、同一撮像対象の複数の撮像データが取得できるので、同一撮像対象の複数の画像を用いる地上設備200による超解像処理が可能になる。
【0031】
(1次元プッシュブルーム)
光学観測装置110が、プッシュブルーム撮像で撮像データを生成する1次元検出器113を具備してもよい。この場合は、
図2および
図3で述べたように、プッシュブルーム撮像でオーバーサンプリング処理を用いることで、同一撮像対象の複数の撮像データが取得できるので、同一撮像対象の複数の画像を用いる地上設備200による超解像処理が可能になる。
【0032】
(視線ベクトルを一定の角速度で回転)
光学観測装置110が、視線ベクトルを一定の角速度で回転し、かつ、視線ベクトルを移動しながら撮像して撮像データを生成する方式を採用してもよい。
以下に具体的に説明する。
図10および
図11は、実施の形態1の観測システム1000の比較例である。以下では、観測システム1000が
図10および
図11の比較例の有する課題を解決できることを説明する。
図10および
図11は、静止軌道近傍を飛翔する観測衛星の搭載する光学観測装置によって、ステップアンドステアと呼ばれる動作を繰り返して広域撮像をする方式を示している。
図10の観測領域全体411は、太枠のマスの集合である。観測領域全体411のうち、東端の一列を最東端観測領域412と称する。観測領域全体411のうち、最東端観測領域412の西側に隣接する一列を西側隣接領域413と称する。観測領域全体411のうち、西端の一列を最西端観測領域414と称する。
【0033】
図11では、最東端観測領域412と西側隣接領域413を示す。ステップアンドステアでは観測衛星は、光学観測装置の視野範囲が最東端観測領域412の最北端から最南端に移動するまで、光学観測装置の視線ベクトルの変更を繰り返す。つまり、静止軌道近傍を飛翔する観測衛星は、光学観測装置の視線ベクトルを緯度方向(南方向)に移動する。その後、観測衛星は、光学観測装置の視野範囲を最東端観測領域412の最南端から西側に隣接する西側隣接領域413の最南端に移動する。その後、観測衛星は、光学観測装置の視野範囲が西側隣接領域413の最南端から最北端に移動するまで、光学観測装置の視線ベクトルの変更を繰り返す。以上がステップアンドステアである。
【0034】
ステップアンドステアの繰り返しによる広域撮像では、例えば静止軌道から36000km以上遠方の観測対象に対して、視線ベクトルの移動と静定とを繰返す動作は煩雑なうえに、指向精度と指向安定度との達成が難しいという課題があった。また、視線ベクトルを移動しながら撮像をした場合には、1回撮像した画像データでは、露光時間中に移動した隣接画素の情報が混入するために画像がぼけるという課題があった。
これに対して、光学観測装置110が、視線ベクトルを一定の角速度で回転し、かつ、視線ベクトルを移動しながら撮像して撮像データを生成する方式によれば、煩雑なステップアンドステア運用をせずに解像度の優れた画像を取得できるという効果がある。
【0035】
((k―1)回の撮像をt/kの時間インターバルで実施)
観測システム1000は以下の方式を採用することもできる。
光学観測装置110が2次元検出器114を具備する。2次元検出器114は、視線ベクトル移動方向の画素数mに相当する光学観測装置110の視野角ηにおいて撮像をしてから視線ベクトルの移動により隣接する次の視野角ηの撮像をするまでに要する時間tの間に、画素数mの約数以外の2以上の整数kに対して(k―1)回の撮像をt/kの時間インターバルで撮像した各撮像データを取得する。通信装置130は、2次元検出器114で取得された各撮像データを、地上に伝送する。
オーバーサンプリング処理および超解像処理は、同一画素に限定して実施する必要はなく、同一監視対象を瞬時視野範囲に含む画素同士であれば地上設備200の画像制御部212で、対応する画素を抽出して超解像処理ができる。このため、2次元検出器114では視野範囲の中で同一観測対象含む画素を選んで処理をすれば、特定画素の瞬時視野範囲内に限定せず、視野範囲の中で適度に分散した複数画像を取得すれば、オーバーサンプリ
ング処理ないし超解像処理が可能である。
一定速度の視線ベクトルの移動速度を保ちながら、隣接する視野角ηと次の視野角ηの間に複数回の撮像をする動作を連続的に繰り返すことにより、広域におよびオーバーサンプリング処理ないし超解像処理を実施可能な複数画像を得ることが可能となる。この際、整数kについて、2回や3回など、2次元検出器114の画素数の約数を設定すると、たまたま画素中心位置が一致してしまう可能性があるため、画像制御部212は、あえて画素数mの約数以外の整数kを選ぶ。
画素数mの約数以外のkに対して(k―1)回の撮像をt/kの時間インターバルで実施すれば、観測対象の特定地点を撮像した画素がk画素取得でき、しかも上記k画素の中心位置は一致せず、適度に分散されるので、ベイズ推定による超解像処理に適した画像データセットを取得できるという効果がある。kとしては2と3と5以外の素数として7、11、13、17などを選ぶことが望ましい。
従来、観測衛星では視野角ηにおいて一度視線ベクトルを静定して撮像した後に視線ベクトルを移動して隣接する視野角ηで再び視線ベクトルを静定して撮像するというステップアンドステア運用が必要であったが、本方式によれば、視線ベクトルの移動を一定速度で行いながら、しかも時間的に余裕のある撮像インターバルを確保して超解像処理に適した画像セットを取得できるという効果がある。
【0036】
(視線ベクトル移動方向がarctan(1/m)rad以上離角)
また、観測システム1000は以下の方式を採用することもできる。2次元検出素子114Eの視線ベクトル移動方向の画素数mに対して厳密な視線ベクトル移動方向が、視線移動方向に近い方の検出素子列方向に対してarctan(1/m)rad以上離角する。
この離隔について説明する。
「(k―1)回の撮像をt/kの時間インターバル」の方式の観測システムにより、視線ベクトルの移動方向には同一撮像対象の複数画像を用いた超解像処理が可能となる。しかし、視線ベクトルの移動方向と検出素子列方向が厳密に一致している場合には、視線ベクトル移動方向の直交方向には超解像処理ができないという課題がある。そこで、厳密な視線ベクトル移動方向が検出素子列方向に対してarctan(1/m)rad以上離角することにより、視線ベクトル移動方向の直交方向に対しても超解像処理が可能となる。
【0037】
(1次元検出器113と2次元検出器114との混在)
また、観測システム1000は以下の方式を採用することもできる。具体的には以下のようである。光学観測装置110が、1次元に配置された複数の1次元検出素子113Eを有する1次元検出器113と、2次元に配置された複数の2次元検出素子114Eを有する2次元検出器114とを具備する。1次元検出素子113Eの素子列の略直交方向に各1次元検出素子113Eによってプッシュブルーム撮像された各撮像データである複数の一次元撮像データと、2次元検出素子114Eの撮像データである2次元撮像データとを、通信装置130が地上に伝送する。地上設備200は、通信制御部211によって複数の1次元撮像データと、2次元撮像データとを受信する。画像制御部212は、複数の1次元撮像データの各1次元撮像データを画像化した後に、2次元撮像データを用いてプッシュブルーム撮像による視線ベクトル移動速度の誤差を推定する。そして、画像制御部212は、各1次元撮像データから画像化された各画像を幾何補正し、幾何補正された各画像を用いて超解像処理を実行する。
【0038】
1次元検出器113のプッシュブルーム撮像では、視線ベクトルの移動方向に対する取得画像の位置精度が視線ベクトル移動速度の精度に依存する。このため、プッシュブルーム撮像データを画像制御部212が画像化する際に、視線ベクトル移動速度の誤差ないし検出誤差が含まれると画像の歪みが発生するという課題がある。
一方、2次元検出素子114Eによる撮像データは特定の瞬間における視線ベクトル移動方向およびその直交方向の相対位置関係が正確に画像化できる。そこで、
画像制御部212は、プッシュブルーム撮像により生成された画像と、2次元検出素子の撮像データから生成した画像を比較する。比較の結果、相違があれば、1次元検出素子113Eの視線ベクトル移動速度の誤差が存在することが顕在化するので、画像制御部212は、2次元検出素子114Eによる正しい位置情報により速度誤差を補償することができる。
また、1次元検出器113の視線ベクトル移動方向に角度誤差がある場合も、画像の差異により誤差を推定できる。よってプッシュブルーム撮像した画像に含まれる幾何誤差を補正できるという効果がある。幾何誤差は位置誤差と呼んでもよい。一般的に1次元検出素子113Eの方が観測幅方向に広域観測ができるので、2次元検出素子114Eによる狭域観測画像を使って、広域の正確な高解像度画像が取得できるという効果がある。
【0039】
(2次元検出器114を搭載し静止軌道を飛翔)
観測システム1000は、以下の方式を採用することもできる。観測衛星100は、静止軌道に沿って飛翔する。光学観測装置110は、2次元検出器114を具備して、2次元検出器114で赤道上空から中緯度帯を観測する。
【0040】
仮に縦横の画素ピッチが等しい2次元検出器114を具備する光学観測装置110で赤道上空から中緯度帯に位置する日本を撮像した場合、1画素当たりの地表換算距離は経度方向よりも緯度方向の方が斜視効果により長くなるという課題がある。そこで、緯度方向に超解像度処理すれば、経度方向と緯度方向で同等の解像度の画像が取得できるという効果がある。
【0041】
(静止軌道飛翔、プッシュブルーム)
観測システム1000は、以下の方式を採用することもできる。観測衛星100は、静止軌道近傍を飛翔してもよい。
図12に基づいて、静止軌道近傍を飛翔する際の広域撮像方法を説明する。
図12は、
図10の観測領域を想定する。光学観測装置110の1次元検出器113は、横一列に並んだ16個の可視検出素子を備える。観測衛星100は、光学観測装置110の視野範囲が最東端観測領域412の最北端から最南端に移動するまで、光学観測装置110の視線ベクトルの変更を続ける。つまり、観測衛星100は光学観測装置110の視線ベクトルを緯度方向(南方向)に移動する。この間、光学観測装置110は撮像を続ける。その後、観測衛星100は、光学観測装置110の視野範囲を最東端観測領域412の最南端から西側に隣接する観測領域(西側隣接領域413)の最南端に移動する。その後、観測衛星100は、光学観測装置110の視野範囲が西側に隣接する観測領域の最南端から最北端に移動するまで、光学観測装置110の視線ベクトルの変更を続ける。移行、この動作が繰り返され、1次元検出器113の視野範囲が観測領域全体411の最西端に移動する。
【0042】
静止軌道近傍から地球500を常時観測する高分解能の光学観測装置110を具備した観測システム1000では、日本近傍を網羅的に観測するために1日がかりとなる可能性がある。「太陽は東から登り西に沈む」と言われるように、日照条件は時間経過に伴い東から西に良好な太陽光入射位置が移動する。
このため、
図12に示すように、東から西に順番に撮像するのが合理的である。また、プッシュブルーム撮像により緯度方向に撮像してから観測幅として隣接する、西側の観測幅の領域へ視線ベクトルを移動して、再び緯度方向にプッシュブルーム撮像していくのが合理的である。緯度方向にプッシュブルーム撮像する際に、瞬時視野角θよりも視線ベクトル移動角度が小さい条件で撮像を繰返すことにより、緯度方向の対地距離を経度方向と同等にすることも可能であり、また超解像処理により高解像度化する効果も得られる。
【0043】
(楕円軌道、プッシュブルーム)
観測システム1000は、以下の方式を採用することもできる。観測衛星100が、楕円軌道を飛翔して衛星進行方向にプッシュブルーム撮像を実施する。観測衛星100は、近地点近傍における撮像周期を維持して遠地点近傍においても撮像する。
観測衛星が低軌道楕円軌道を飛翔して地球を観測する場合に、瞬時視野角θが一定であれば、近地点ではGSDが小さい高分解能画像となり、遠地点ではGSDが大きい低分解能画像となる。よって、プッシュブルーム撮像をする場合には、近地点近傍における撮像周期に比較して遠地点近傍では撮像周期が長くするのがオーソドックスな方法である。
これに対して近地点と同等の撮像周期でプッシュブルーム撮像を実施すると、衛星進行方向の瞬時視野角θに対してオーバーラップして撮像する複数の画像が生成可能となり、オーバーサンプリング処理や超解像処理が可能となる。超解像処理することにより、遠地点近傍の対地距離に比して解像度の高い画像が取得できるという効果がある。また遠地点近傍では対地速度が近地点近傍よりも遅いため、長時間に渡り特定観測対象を観測できるという効果がある。
【0044】
(WGS84)
観測システム1000は、以下の方式を採用することもできる。地上設備200が、撮像対象である撮像目標の地球固定座標系における位置座標を含む撮像指令を、観測衛星に送信する。具体的には、通信制御部211が、この位置座標を含む撮像指令を生成し、地上側通信装置310を介して観測衛星100に送信する。
地球固定座標系としてWGS84が知られており、航法測位衛星システムGPSなどで採用されている。
地球を観測する観測衛星において、撮像対象の位置座標を指定すれば、地球固定座標系に対する観測衛星の飛翔位置と速度ベクトルが既知である。よって、光学撮像装置の視線ベクトルを撮像目標の手前に設定し、適切な視線ベクトル移動を付与して的確に超解像処理が可能となる。低高度を飛翔する周回衛星では衛星の対地速度を利用して視線ベクトル移動を付与することが合理的であり、静止衛星では衛星姿勢角を変更して視線ベクトル移動を付与することが合理的である。更に衛星の対地速度と姿勢角変動を適切に組み合わせることにより、撮像対象に対して所望の視線ベクトル移動速度を実現できるので、超解像処理に適した任意の回数の撮像データを取得することができる。
【0045】
(宇宙物体)
観測システム1000は、以下の方式を採用することもできる。同一撮像対象は宇宙物体である。近年、宇宙物体数の増加に伴い社会インフラとして活躍する人工衛星に対するデブリ衝突の危険を回避する目的などで、宇宙物体の監視活動が強化されている。そして、監視活動の手段として観測衛星によりデブリ等の宇宙物体を高解像度で監視するニーズが増加している。
【0046】
宇宙物体の軌道情報は予めSSA(Space Situation Awareness)と呼ばれる宇宙状況監視システムにより把握され、将来の特定時刻における宇宙物体の飛翔位置は地球固定座標系の位置座標として把握することが可能であり、速度ベクトルも既知である。
【0047】
観測衛星の特定時刻における飛翔位置と速度ベクトルも既知である。よって撮像対象となる特定の宇宙物体の地球固定座標系における位置座標を含む撮像指令を、通信制御部211は観測衛星100に送信することができる。これにより、観測衛星100の具備する光学観測装置110が宇宙物体を捉える視線ベクトルの指向方向が決定し、相対移動方向と相対速度も計算できる。よって、相対速度と観測衛星の姿勢角変動を適切に組み合わせることにより、撮像対象に対して所望の視線ベクトル移動速度を実現でき、超解像処理に適した任意の回数の撮像データを取得することができる。
【0048】
静止軌道近傍を飛翔する観測衛星から、同様に静止軌道近傍を飛翔する宇宙物体を監視するニーズが増加している他、低高度の周回衛星から宇宙物体を監視するニーズも増加している。観測衛星からデブリ等の宇宙物体を撮像する場合に、同一対象を複数回撮像して超解像処理をすることで、精細な画像が取得できるという効果がある。宇宙物体が人工物体である場合には、対象が人工衛星かロケットの残骸かの識別ができる他、形状を高解像度で画像化することにより人工衛星の種類、例えば通信衛星や観測衛星などの識別も可能となる。またプッシュブルーム撮像によれば、広域連続撮像ができるため、広い宇宙空間において特性の撮像対象を確実に撮像できるという効果がある。
【0049】
(観測衛星100のハードウェア構成の補足)
図13は、観測衛星100のハードウェア構成を示す。
図13を参照して、観測衛星100のハードウェア構成を説明する。
【0050】
図13に基づいて、観測衛星100の構成を説明する。
観測衛星100は、光学観測装置110、視野変更装置120、通信装置130、姿勢制御装置140、推進装置150、衛星制御装置160および電源装置170を備える。
【0051】
光学観測装置110は、上記で説明した通りである。
【0052】
視野変更装置120は、光学観測装置110の観測視野を変更する。
【0053】
通信装置130は、地上設備200と通信するための通信装置である。例えば、通信装置130は、地上設備200から各種コマンドを受信する。また、通信装置130は、光学観測装置101によって得られる観測データを地上設備200に送信する。
【0054】
姿勢制御装置140は、観測衛星100の姿勢と観測衛星100の角速度といった姿勢要素を制御するための装置である。姿勢制御装置140は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置140は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置140は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサなどである。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロ等である。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上設備200からの各種コマンドにしたがって、アクチュエータを制御する。姿勢制御装置140は、光学観測装置101の視線ベクトルの方位角を変更するために使用することができる。
【0055】
推進装置150は、観測衛星100に推進力を与える装置であり、観測衛星100の速度を変化させる。具体的には、推進装置150は電気推進機である。例えば、推進装置150は、イオンエンジンまたはホールスラスタである。
【0056】
衛星制御装置160は、観測衛星100の各装置を制御するコンピュータであり、処理回路を備える。例えば、衛星制御装置160は、地上設備200から送信される各種コマンドにしたがって、各装置を制御する。
【0057】
電源装置170は、太陽電池、バッテリおよび電力制御装置などを備え、観測衛星100の各装置に電力を供給する。
【0058】
衛星制御装置160に備わる処理回路について説明する。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであっても
よい。処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせで実現することができる。専用のハードウェアは、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。ASICは、Application Specific Integrated
Circuitの略称である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0059】
以上、実施の形態1について説明した。実施の形態1の複数の技術事項のうち、1つを部分的に実施しても構わないし、実施の形態1の複数の技術事項のうち、2以上の技術事項を組み合わせて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0060】
100 観測衛星、110 光学観測装置、111 光学系、112 検出器、112E 検出素子、113,113A,113B 1次元検出器、113E 1次元検出素子、114 2次元検出器、114E 2次元検出素子、115 方向、120 視野変更装置、130 通信装置、140 姿勢制御装置、150 推進装置、160 衛星制御装置、170 電源装置、141A 黒丸、141B 二重丸、141C 白丸、200 地上設備、210 プロセッサ、211 通信制御部、212 画像制御部、220 主記憶装置、230 補助記憶装置、240 入力IF、250 入力IF、260 入力IF、270 信号線、310 地上側通信装置、320 地上側アンテナ、400 撮像対象、410 観測地域、411 観測領域全体、412 最東端観測領域、413 西側隣接領域、414 最西端観測領域、500 地球、501 地表面、1000 観測システム。