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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】自律走行型ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/693 20240101AFI20250107BHJP
   G05D 1/617 20240101ALI20250107BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20250107BHJP
   G05D 1/633 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
G05D1/693
G05D1/617
G05D1/43
G05D1/633
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024500749
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006053
(87)【国際公開番号】W WO2023157103
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩村 光貴
【審査官】渡邊 捷太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219733(JP,A)
【文献】特開2005-084877(JP,A)
【文献】特開2004-198237(JP,A)
【文献】特開平10-266575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/693
G05D 1/617
G05D 1/43
G05D 1/633
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間内で所定の作業を行う自律走行型ロボットにおいて、
近距離無線通信手段と、
前記近距離無線通信手段が検出した通信相手を、前記空間内を移動する他の自律走行型ロボットとして検知する検知手段と、
前記検知手段が前記他の自律走行型ロボットを検知した場合、前記他の自律走行型ロボットとの位置関係に応じて衝突を回避するよう走行を制御する走行制御手段と、
前記検知手段により検知された前記他の自律走行型ロボットとの距離を測定する測距手段と、
を有し、
前記走行制御手段は、前記他の自律走行型ロボットが第1距離まで近づいた場合、走行を停止するよう制御し、
走行を停止してもなお、前記他の自律走行型ロボットとの距離が前記第1距離より近い第2距離まで近づいた場合、前記他の自律走行型ロボットが近づいてくる方向以外の方向として前記自律走行型ロボットの作業のために計画された走行経路に一致する方向を優先し、その方向に走行できない場合は前記走行経路から外れる方向に走行させるよう制御
前記走行経路から外れる方向に走行させた場合には、前記他の自律走行型ロボットとの距離が第1距離以上となった時点で、前記走行経路に戻るように制御する、
ことを特徴とする自律走行型ロボット。
【請求項2】
前記検知手段は、前記近距離無線通信手段からの接続要求に応じた通信相手を、前記他の自律走行型ロボットとして検知することを特徴とする請求項1に記載の自律走行型ロボット。
【請求項3】
前記検知手段は、前記近距離無線通信手段がBluetoothにより無線通信を実現する場合、前記近距離無線通信手段により検索されたBluetoothデバイスを前記他の自律走行型ロボットとして検知することを特徴とする請求項2に記載の自律走行型ロボット。
【請求項4】
移動体を検出する検出手段を有し、
前記検知手段は、前記近距離無線通信手段が通信相手を発見しない場合でも、前記検出手段が前記移動体を検出した場合、当該移動体を前記他の自律走行型ロボットとして検知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自律走行型ロボット。
【請求項5】
温度測定手段と、
前記温度測定手段が測定した前記移動体の表面温度によって前記移動体がロボットかどうかを判別する判別手段と、
を有し、
前記検知手段は、前記近距離無線通信手段が通信相手を発見しない場合でも、前記判別手段が前記移動体をロボットと判別した場合、当該ロボットを前記他の自律走行型ロボットとして検知することを特徴とする請求項4に記載の自律走行型ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行型ロボット、特に所定の空間内において所定の作業を行うロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人が行う作業を自動化するためにロボットが導入される場合が少なくない。例えば、ロボットに、荷物搬送、清掃、警備、点検業務などの作業を人に代わって実施させる場合がある。
【0003】
ロボットは、基本的に単一作業を行う。従って、例えばショッピングモールやビルなど比較的広大な床面積を持つ施設においては、複数のロボットが同時並行して作業する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-081758号公報
【文献】国際公開第2019/058694号
【文献】国際公開第2021/106122号
【文献】特開2002-351540号公報
【文献】特開2018-005470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のロボットに同じ空間を同時並行して作業させる場合、例えば、ロボット制御システムなどによって全てのロボットの走行を制御させれば、ロボット同士の衝突などを未然に回避することは可能かもしれない。
【0006】
しかしながら、複数のロボットが、他のロボットの走行経路を考慮せずに作業計画が作成され、その作業計画に従って自律走行しながら作業を実施する場合、ロボット同士の衝突が発生してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、所定の空間内を複数のロボットが同時並行して作業を行う場合において、他のロボットとの衝突を回避可能な自律走行制御を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自律走行型ロボットは、所定の空間内で所定の作業を行う自律走行型ロボットにおいて、近距離無線通信手段と、前記近距離無線通信手段が検出した通信相手を、前記空間内を移動する他の自律走行型ロボットとして検知する検知手段と、前記検知手段が前記他の自律走行型ロボットを検知した場合、前記他の自律走行型ロボットとの位置関係に応じて衝突を回避するよう走行を制御する走行制御手段と、前記検知手段により検知された前記他の自律走行型ロボットとの距離を測定する測距手段と、を有し、前記走行制御手段は、前記他の自律走行型ロボットが第1距離まで近づいた場合、走行を停止するよう制御し、走行を停止してもなお、前記他の自律走行型ロボットとの距離が前記第1距離より近い第2距離まで近づいた場合、前記他の自律走行型ロボットが近づいてくる方向以外の方向として前記自律走行型ロボットの作業のために計画された走行経路に一致する方向を優先し、その方向に走行できない場合は前記走行経路から外れる方向に走行させるよう制御前記走行経路から外れる方向に走行させた場合には、前記他の自律走行型ロボットとの距離が第1距離以上となった時点で、前記走行経路に戻るように制御する、ことを特徴とする。
【0009】
また、前記検知手段は、前記近距離無線通信手段からの接続要求に応じた通信相手を、前記他の自律走行型ロボットとして検知することを特徴とする。
【0010】
また、前記検知手段は、前記近距離無線通信手段がBluetoothにより無線通信を実現する場合、前記近距離無線通信手段により検索されたBluetoothデバイスを前記他の自律走行型ロボットとして検知することを特徴とする。
【0013】
また、移動体を検出する検出手段を有し、前記検知手段は、前記近距離無線通信手段が通信相手を発見しない場合でも、前記検出手段が前記移動体を検出した場合、当該移動体を前記他の自律走行型ロボットとして検知する、ことを特徴とする。
【0014】
また、温度測定手段と、前記温度測定手段が測定した前記移動体の表面温度によって前記移動体がロボットかどうかを判別する判別手段と、を有し、前記検知手段は、前記近距離無線通信手段が通信相手を発見しない場合でも、前記判別手段が前記移動体をロボットと判別した場合、当該ロボットを前記他の自律走行型ロボットとして検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の空間内を複数のロボットが同時並行して作業を行う場合において、他のロボットとの衝突を回避可能な自律走行制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態における自律走行型の作業ロボットが作業を行う作業エリアを示す概略的な平面図である。
図2】本実施の形態における作業ロボットの装置構成の一例を示す図である。
図3】本実施の形態における作業ロボットのブロック構成図である。
図4】本実施の形態における作業ロボットの走行制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態における自律走行型ロボットが作業を行う所定の空間の一例を示す平面図である。所定の空間は、例えば、ショッピングモールやビルなど比較的広大な床面積を持つ施設又はその一部である。本実施の形態では、ショッピングモールの一フロアを、ロボットが作業を行う空間(以下、「作業エリア」という)1の例にして説明する。図1に示す作業エリア1の広さやレイアウトは、特に限定する必要はない。
【0019】
本実施の形態における自律走行型ロボット(以下、「作業ロボット」という)2は、作業エリア1にて、例えば清掃や警備等の作業を行う。行う作業は、これに限るものではないが、本実施の形態における作業ロボット2は、作業エリア1内を移動しながら作業を行う。本実施の形態では、同じ作業エリア1内を、本実施の形態における作業ロボット2を少なくとも1台含め、複数のロボットが同時並行して作業を行うことを想定している。図1に示す作業ロボット2の形状は、単なる一例に過ぎず、実施する作業に適合した形状や機能を有している。
【0020】
なお、同時並行して作業を行う自律走行型ロボットは、同じ作業をしても異なる作業をしてもよい。ただ、本実施の形態における作業ロボット2は、作業中、ロボット管理システムなどにより監視されておらず、例えば予めインストールされたプログラムに従って自律走行しながら作業を行う。つまり、本実施の形態における作業ロボット2は、遠隔操作されることなく作業を実施するものとする。
【0021】
図2は、本実施の形態における作業ロボット2の装置構成の一例を示す図である。作業ロボット2は、CPU21、ROM22、RAM23、ストレージ24、作業用装置25、近距離無線通信インタフェース(IF)26、カメラ27及びサーモグラフィー28を内部バス29に接続して構成される。プログラムは、ROM22やストレージ24等の記憶手段に保存されており、CPU21は、RAM23にロードされたプログラムを実行することで、作業ロボット2の動作を制御する。図2では明示していないが、作業ロボット2には、CPU21、ROM22、RAM23等を少なくとも含むコンピュータが搭載されている。
【0022】
作業用装置25は、作業ロボット2を移動可能にする走行装置や作業に必要なツール等である。例えば、作業ロボット2が清掃作業を行う場合、清掃に必要な機器が作業ロボット2に搭載される。なお、図2に示す構成以外に、例えばバッテリー等必須と考えられる構成もあるが、これらの構成は、作業用装置25に含まれる。
【0023】
近距離無線通信インタフェース26は、主として作業エリア1内に所在する他の自律走行型ロボットとの間で無線通信を行うための近距離無線通信手段である。本実施の形態では、無線通信技術として、約10m程度の通信距離の規格に相当するBluetooth(登録商標)を用いる場合を例にして説明する。カメラ27は、周囲の状況、少なくとも作業ロボット2の進行方向を撮影する。サーモグラフィー28は、物体の熱分布を図として表し分析する装置であるが、本実施の形態においては、近くに存在する物体、特に移動体の表面温度を測定可能な温度測定手段として設けられている。
【0024】
ところで、Bluetoothを用いることで、受信電波の強さから機器が遠くにあるのか近くにあるのかだけは、以前からメートル単位で知ることはできている。近年のBluetooth 5.1以降のバージョンでは、機器がどの方向にいるのかまでセンチメートル単位で割り出せるようになっている。本実施の形態では、他のロボットとの距離を測定する必要があるが、測距手段を別途を設けずに、近距離無線通信インタフェース26に近年のバージョンのBluetoothを用いることで、近距離無線通信インタフェース26を測距手段として利用する。近距離無線通信インタフェース26が測距機能を有しない場合には、測距センサ等の測距手段を別途設ける。
【0025】
なお、Bluetooth 5.1以降の近年のバージョンでは、ペアリングされているBluetooth機器との送信角度や受信角度を特定できる方向探知機能を有しているので、後述する処理において、方向探知機能を有効利用してもよい。
【0026】
図3は、本実施の形態における作業ロボット2のブロック構成図である。本実施の形態における作業ロボット2は、無線通信処理部31、ロボット検知部32、走行制御部33、移動体検出部34、温度検出部35及び制御部36を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素については、図から省略している。
【0027】
無線通信処理部31は、近距離無線通信インタフェース26により実現され、作業エリア1内に存在する他の自律走行型ロボット(以下、「他のロボット」と称する)との間で無線通信を行う。無線通信処理部31は、発信部311及び測距部312を含む。発信部311は、作業中に他のロボットとの接続要求を発信する。測距部312は、検知されている他のロボットまでの距離を測定する測距手段である。
【0028】
ロボット検知部32は、作業エリア1内を移動する他の自律走行型ロボットを検知する。ロボット検知部32は、基本的には、無線通信処理部31が発見した通信相手を、作業エリア1内を移動する他のロボットとして検知するが、無線通信処理部31が通信相手を発見しない場合でも、移動体検出部34や温度検出部35の検出結果に応じて、作業エリア1内を移動する移動体を他の自律走行型ロボットと検知する場合もある。
【0029】
走行制御部33は、作業ロボット2の自律走行を制御する。本実施の形態における走行制御部33は、ロボット検知部32が他のロボットを検知した場合、他のロボットとの位置関係に応じて、他のロボットとの衝突を回避するよう走行を制御する。
【0030】
移動体検出部34は、カメラ27による撮影画像を画像解析することで、移動体を検出する。本実施の形態では、画像処理を利用して移動体を検出するようにするが、レーザ等他の手段を用いてもよい。また、作業エリア1に設置されている監視カメラの撮影画像を画像解析することで、施設に設置の監視システム等(図示せず)が検出した移動体の位置等の検出情報を無線通信により取得するようにしてもよい。
【0031】
温度検出部35は、サーモグラフィー28により実現され、検出された移動体の表面温度を検出する。
【0032】
制御部36は、他の構成要素31~35と連携動作しながら、作業計画に従って作業ロボット2に作業を実施させる。
【0033】
作業ロボット2における各構成要素31~36は、作業ロボット2に搭載されるコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0034】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPU21がプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0035】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
【0036】
まず、作業ロボット2が作業エリア1で所定の作業を開始する前に、作業エリア1のレイアウト情報及び作業を行う際の走行経路を含む作業計画情報等、作業の実施に必要な情報やプログラムが作業ロボット2に記憶されている必要がある。ここでは、作業の実施に必要な準備は完了しているものとする。そして、作業ロボット2は、作業中に他のロボットと遭遇しない限り、作業計画に従うことで所定の作業を問題なく実施できるものとする。所定の作業は、例えばショッピングモールの閉館後に実施されるものとする。すなわち、来客は、作業エリア1内に所在しない。
【0037】
また、本実施の形態では、他のロボットと遭遇した場合の走行制御に特徴を有する。他のロボットは、作業ロボット2のように、図3に示す機能構成や図4に示す走行制御により走行するものとは限らない。つまり、他のロボットは、作業ロボット2と異なるメーカーのロボットである場合もあるし、同じメーカーのロボットであっても異なる機種のロボットであるかもしれない。
【0038】
以下、本実施の形態において、作業ロボット2が作業を実施している際に行われる走行制御について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。但し、説明の便宜上、特に断らない限り、他のロボットは、作業ロボット2と同様にBluetooth機能を搭載しており、作業ロボット2とBluetoothにより無線通信が可能であることを前提に説明する。そして、作業ロボット2が他のロボットを検知するということは、作業エリア1内に他のロボットが所在するということであり、他のロボットは、作業ロボット2と同様に、作業エリア1内で何らかの作業を行っているものとする。
【0039】
図4に示す走行制御処理は、作業が終了するまで繰り返し実施される(ステップ100)。
【0040】
作業ロボット2が作業を実施している間、無線通信処理部31における発信部311は、Bluetoothによる接続要求を送信することで、他のロボットを検索する(ステップ110)。これは、いわゆるペアリングモードを開始させる際の処理でもよい。発信した接続要求に応じた通信相手を検出すると、ロボット検知部32は、その通信相手を他のロボットとして検知する。このようにして、他のロボットが検知された場合(ステップ120でY)、測距部312は、他のロボットとの距離を測定する(ステップ130)。
【0041】
ところで、本実施の形態では、上記他のロボットを探索して存在を検知できればよい。従って、ペアリングを完了させ、無線通信回線の接続を必ずしも確立させる必要はない。本実施の形態においては、作業ロボット2がBluetoothを利用してBluetoothデバイス、すなわちBluetooth機能搭載の他のロボットを検知できればよい。
【0042】
なお、他のロボットが検知されない場合(ステップ120でN)、図4では、他の方法にて他のロボットを検知するようにした。ただ、前述したように、ここでは、説明の便宜上、作業エリア1にBluetooth機能搭載の他のロボットのみが所在することを前提としている。従って、Bluetooth機能搭載の他のロボットのみが所在することが明らかな場合、継続して他のロボットを検索するようにステップ100に戻るよう処理してもよい。
【0043】
ところで、本実施の形態では、同じ作業エリア1で作業している他のロボットと衝突しないように作業ロボット2を走行制御させる。そのために、作業ロボット2と他のロボットとの距離に関し、第1距離と第2位距離という2種類の閾値を設定している。作業ロボット2と他のロボットは、作業中、共に移動するため、お互いの距離は刻々と変化し、時には接近する場合がある。第1距離は、他のロボットが作業ロボット2に近づき、作業ロボット2がこのまま継続して走行すると他のロボットに衝突する可能性が生じる距離のことをいう。第2距離は、作業ロボット2が衝突を回避するために停止していたところ、他のロボットが第1距離より更に近づいてきたことにより、現在の位置にこのまま停止していたら他のロボットと衝突する可能性が生じる距離のことをいう。
【0044】
従って、測定した他のロボットとの距離が第1距離まで近づいていない場合は(ステップ140でN)、衝突する可能性がないと判断して、作業ロボット2は、そのまま走行を継続し、ステップ100に戻る。
【0045】
一方、測定した他のロボットとの距離が第1距離以内まで近づいた場合(ステップ140でY)、制御部36は、衝突する可能性が生じたと判断する。これにより、走行制御部33は、制御部36からの指示に従い作業ロボット2の走行を停止させる(ステップ150)。これは、作業ロボット2がこのまま継続して走行すると、他のロボットといずれ衝突する可能性があるため、制御部36は、走行している他のロボットをやり過ごそうと作業ロボット2を一旦停止させる。また、停止させることで、予め設定されている作業のための走行経路から外れずに済む。
【0046】
そして、測距部312は、作業ロボット2が停止している状態で他のロボットとの距離を測定する(ステップ160)。測定した他のロボットとの距離が第2距離まで近づいていない場合(ステップ170でN)、他のロボットと衝突する可能性が低いと判断して、ステップ130に戻る。
【0047】
一方、測定した他のロボットとの距離が更に縮まり、第2距離以内となるまで他のロボットが近づいたとする。他のロボットが更に近づいてきたと言うことは、制御部36は、このまま停止していたらいずれ衝突されてしまう可能性があると判断する。この場合(ステップ170でY)、走行制御部33は、制御部36からの指示に従い作業ロボット2を他のロボットの検知方向以外の方向、換言すると他のロボットが近づいてくる方向以外の方向に走行させる(ステップ180)。つまり、近づいてくる他のロボットから逃げることで衝突を回避する。走行を開始する方向は、作業のための走行経路に一致させるのが好ましい。ただ、その方向に走行できない場合には、作業のための走行経路から外れることになるが、衝突を確実に回避することができる。この場合、制御部36は、他のロボットとの距離が第1距離以上となった時点で(ステップ140でN)、計画された元の走行経路に戻るように制御してもよい。その後、ステップ130に移行する。
【0048】
続いて、測距部312は、他のロボットとの距離を測定する(ステップ130)。ここで、測定した他のロボットとの距離が第1距離以上になると(ステップ140でN)、衝突する可能性がなくなったと判断して、走行制御部33は、作業ロボット2の走行を停止させていた場合には、走行を開始させ(ステップ190)、ステップ100に戻る。
【0049】
本実施の形態によれば、Bluetoothを利用して他のロボットを検知できるようにすると共に、他のロボットとの衝突を回避するよう走行制御することができる。
【0050】
なお、作業エリア1には、他のロボットが複数存在する場合もあり得る。この場合、各他のロボットに対して、前述した衝突回避をするための走行制御を行えばよい。
【0051】
ところで、上記説明では、説明の便宜上、作業エリア1には、Bluetooth機能を搭載した自立走行型ロボットのみが存在することを前提にして説明した。ただ、実際には、他のロボットが、Bluetooth機能を搭載した自立走行型ロボットであるとは限らない。そこで、本実施の形態においては、無線通信処理部31が通信相手を発見しない場合にも適用できるようにした。
【0052】
すなわち、無線通信処理部31における発信部311は、Bluetoothによる接続要求を送信することで、他のロボットを検索するが(ステップ110)、無線通信処理部31が他のロボットを検知しない場合(ステップ120でN)、移動体検出部34は、カメラ27による撮影画像を解析して移動他の検出を行う。移動体検出部34が移動体を検出しない場合(ステップ200でN)、移動体に含まれる他のロボットは、作業エリア1内に存在しないと判断できるので、ステップ100に戻る。
【0053】
一方、移動体検出部34が移動体を検出した場合(ステップ200でN)、ロボット検知部32は、検出された移動体を他のロボットとして検知してもよい。ただ、ここでは、移動体として人間等の生物がいる場合を想定する。このため、制御部36は、温度検出部35に、検出された移動体の表面温度を測定させる(ステップ210)。そして、ロボット検知部32は、温度検出部35が測定した移動体の表面温度によって移動体がロボットかどうかを判別する。ここで、移動体から所定の温度以上の温度が検出された場合、ロボット検知部32は、移動体は人間等の生物と判別し(ステップ220でY)、ステップ100に戻る。所定の温度というのは、人間等の生物の標準的な体温に基づき設定すればよい。人間等の生物は、作業ロボット2が近付いてきたら避ける能力が備わっているため、作業ロボット2に衝突回避のための走行制御(ステップ130~180)をさせる必要はないと考えるからである。もちろん、作業ロボット2に衝突回避のための走行制御を適用してもよい。
【0054】
一方、移動体から所定の温度以上の温度が検出されない場合、ロボット検知部32は、移動体は他のロボットと判別する。この場合(ステップ220でN)、ロボット検知部32は、移動体を他のロボットとして検知することになるので、ステップ130に移行する。その後の処理は、既に説明しているので説明を省略する。
【0055】
本実施の形態によれば、無線通信処理部31によって他のロボットが検出されなくても、移動体検出部34及び温度検出部35を別途設けることで、他のロボットがBluetooth機能を搭載していなくても、作業エリア1内にいる他のロボットを探し出すことが可能となる。
【0056】
なお、他のロボットがBluetooth機能を搭載しているか否かの他に、作業ロボット2の作業中に作業エリア1に入ってきた作業員がBluetoothデバイスを持っている場合も想定しうる。この場合、作業ロボット2がステップ120において作業員が携行するBluetoothデバイスを検知してしまう可能性がある。この場合は、例えばステップ120の直後にステップ210~230を含めるなどして、作業員と作業ロボット2を判別できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 作業エリア、2 作業ロボット、21 CPU、22 ROM、23 RAM、24 ストレージ、25 作業用装置、26 近距離無線通信インタフェース(IF)、27 カメラ、28 サーモグラフィー、29 内部バス、31 無線通信処理部、32 ロボット検知部、33 走行制御部、34 移動体検出部、35 温度検出部、36 制御部、311 発信部、312 測距部。
図1
図2
図3
図4