(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】自動走行装置および自動走行装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 60/00 20200101AFI20250107BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20250107BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250107BHJP
G05D 1/617 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
B60W60/00
B60W40/02
G08G1/09 V
G05D1/617
(21)【出願番号】P 2024502335
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007616
(87)【国際公開番号】W WO2023162091
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-516812(JP,A)
【文献】国際公開第2021/241041(WO,A1)
【文献】特開2019-154089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 60/00
B60W 40/02
G08G 1/09
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行装置であって、
プログラムを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された前記プログラムを実行するプロセッサと、
前記自動走行装置の車両本体に取り付けられた1個以上の第2の温度計とを備え、
前記プロセッサは、前記第2の温度計によって検出された温度が第2の温度に達したときに、前記自動走行装置を、前記自動走行装置が進行してきた経路を逆に辿って移動させ、
前記自動走行装置の車両本体に取り付けられ、前記自動走行装置の本体の温度を検出するための1個以上の熱電対温度計をさらに備え、
前記プロセッサは、前記熱電対温度計によって検出された温度が前記第2の温度よりも高い第1の温度に達したときに、前記自動走行装置の移動を停止させ、
前記プロセッサは、前記第2の温度計によって検出された温度が前記第2の温度に達したときに、前記熱電対温度計の測定を開始させる
、自動走行装置。
【請求項2】
自動走行装置の制御方法であって、
前記自動走行装置の車両本体に取り付けられた1個以上の1個以上の第2の温度計が、温度を検出するステップと、
プロセッサが、前記第2の温度計によって検出された温度が第2の温度に達したときに、前記自動走行装置を、前記自動走行装置が進行してきた経路を逆に辿って移動させるステップと、
前記プロセッサ
が、前記自動走行装置の車両本体に取り付けられ、前記自動走行装置の本体の温度を検出するための1個以上の熱電対温度計によって検出された温度が前記第2の温度よりも高い第1の温度に達したときに、前記自動走行装置の移動を停止させるステップと、
前記プロセッサが、前記第2の温度計によって検出された温度が前記第2の温度に達したときに、前記熱電対温度計の測定を開始させるステップ
と、を備える
、自動走行装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動走行装置および自動走行装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅またはビル内での火災時における、監視ロボットまたは清掃ロボットなどの自動走行装置の制御が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の自動走行装置は、火災が発生したと判断した場合に、少しでも長い時間、情報を外部に送信できるように退避行動を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動走行装置が火事エリアに進入して類焼した後、自動走行装置が移動すると、自動走行装置によって火事エリアが広がってしまうおそれがある。
【0006】
それゆえに、本開示の目的は、自動走行装置が火事エリアに進入して類焼した場合に、火事エリアが広がるのを回避することができる自動走行装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の自動走行装置は、自動走行装置の車両本体に取り付けられた1個以上の第1の温度計と、プログラムを記憶するメモリと、プログラムを実行するプロセッサとを備える。プロセッサは、プログラムに従って、第1の温度計によって検出された温度が第1の温度に達したときに、自動走行装置の移動を停止させる。
【0008】
本開示の自動走行装置の制御方法は、自動走行装置の車両本体に取り付けられた1個以上の第1の温度計が温度を検出するステップと、プロセッサが、第1の温度計によって検出された温度が第1の温度に達したときに、自動走行装置の移動を停止させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、プロセッサは、プログラムに従って、第1の温度計によって検出された温度が第1の温度に達したときに、自動走行装置の移動を停止させる。これによって、自動走行装置が火事エリアに進入して類焼した場合に、火事エリアが広がるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態のシステムの構成を表わす図である。
【
図2】実施の形態1の自動走行装置20の構成例を表わす図である。
【
図3】複数の熱電対温度計3の配置例を表わす図である。
【
図4】実施の形態1の自動走行装置20の動作手順を表わすフローチャートである。
【
図5】自動走行装置20の走行停止の例を表わす図である。
【
図6】実施の形態2の自動走行装置20の構成例を表わす図である。
【
図7】発火温度データベース13に記憶されているデータの例を表わす図である。
【
図8】実施の形態2の自動走行装置20の動作手順を表わすフローチャートである。
【
図9】実施の形態3の自動走行装置20の構成例を表わす図である。
【
図10】実施の形態3の自動走行装置20の構成例を表わす図である。
【
図11】実施の形態3の自動走行装置20の動作手順を表わすフローチャートである。
【
図12】自動走行装置20が進行経路を逆行する例を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態のシステムの構成を表わす図である。
【0012】
このシステムは、自動走行装置20と、複数の自動走行装置20を管理する管理サーバ30とを備える。
【0013】
ビル内のフロアを走行する自動走行装置20と管理サーバ30との間において、イントラネット40によって、通信が可能である。イントラネット40において、例えばBLE(Bluetooth Low Energy、「Bluetooth」は登録商標)通信規格に従う通信方式、UWB(Ultra Wide Band)通信規格に従う通信方式、またはWiFi通信規格に従う通信方式が用いられてもよい。自動走行装置20と管理サーバ30との間において、LTE(Long Term Evolution)通信規格に従う通信方式を用いてインターネット経由で通信が行われてもよい。
【0014】
自動走行装置20は、たとえば、自立走行型の清掃自動走行装置などである。
図2は、実施の形態1の自動走行装置20の構成例を表わす図である。
【0015】
自動走行装置20は、複数の熱電対温度計3-1~3-Nと、無線通信機5と、カメラ6と、駆動部8と、バッテリ7と、制御装置9とを備える。制御装置9は、プログラムを記憶するメモリ12、およびメモリ12に記憶されたプログラムを実行するプロセッサ11を備える。
【0016】
無線通信機5は、イントラネット40を通じて、管理サーバ30との間で通信を行なう。
【0017】
カメラ6は、自動走行装置20の周囲を撮像し、撮像画像を制御装置9へ出力する。
駆動部8は、自動走行装置20が走行するための駆動力を発生する。駆動部8は、例えば、自動走行装置20が移動するための車輪と、車輪を駆動するモータとを含む。モータは、バッテリ7から電力の供給を受けて作動することができる。
【0018】
バッテリ7は、自動走行装置20を構成する各機器が作動するための電力を供給する。
制御装置9は、カメラ6からの撮像画像に基づいて、フロアマップを参照して、自動走行装置20の走行経路を決定し、決定した走行経路を自動走行装置20が進行するように駆動部8を制御する。
【0019】
制御装置9は、カメラ6の代わりに距離センサ(ライダー)のデータに基づいてフロアマップを参照して走行経路を決定しても良い。また、制御装置9は、ビーコン信号などを用いた屋内位置測位システムからの位置情報を元に、フロアマップを参照し、走行経路を決定しても良い。
【0020】
制御装置9は、第1の温度計である熱電対温度計3によって検出された温度が第1の温度に達したときに、自動走行装置20の移動を停止させる。第1の温度は、プロセッサが動作可能な温度の上限値UT、または上限値UTよりも定められた幅ΔTだけ低い温度である。
【0021】
図3は、複数の熱電対温度計3の配置例を表わす図である。
熱電対温度計3は、自動走行装置20の外側に配置される。熱電対温度計3は、0℃~1000℃超の温度を測定することができる。熱電対温度計3は、K熱電対などによって構成される。
【0022】
図4は、実施の形態1の自動走行装置20の動作手順を表わすフローチャートである。
ステップS101において、熱電対温度計3-i(i=1~N)によって検出された温度Tiの最大値TMAXが予め定められた温度TH1に達したときに、処理がステップS102に進む。予め定められた温度TH1は、プロセッサ11の動作可能な温度の上限値UTとすることできる。あるいは、プロセッサ11が確実に動作することができるように、予め定められた温度TH1は、プロセッサ11の動作可能な温度の上限値UTよりも定められた幅ΔTだけ低い温度とすることができる。温度TH1は、たとえば85℃に設定することができる。
【0023】
ステップS102において、制御装置9は、自動走行装置20の走行が停止するように駆動部8を制御する。
図5は、自動走行装置20の走行停止の例を表わす図である。自動走行装置20の走行停止によって、自動走行装置20が火の中に留まるので、発火している自動走行装置20がビル内のフロアを走行することによって、延焼が拡大するのを回避することができる。
【0024】
ステップS103において、制御装置9は、自動走行装置20が発火する可能性があることを無線通信機5を通じて、管理サーバ30へ通知する。これによって、管理サーバ30を操作するオペレータは、火事の状況を遠隔で知ることができる。
【0025】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2の自動走行装置20の構成例を表わす図である。
【0026】
自動走行装置20は、さらに、発火温度データベース13を備える。
図7は、発火温度データベース13に記憶されているデータの例を表わす図である。発火温度データベース13は、自動走行装置20を構成する部品ごとの発火温度を記憶する。
【0027】
制御装置9は、第1の温度計である熱電対温度計3によって検出された温度が第1の温度に達したときに、自動走行装置20の移動を停止させる。第1の温度は、自動走行装置を構成するいずれかの部品の発火温度である。
【0028】
図8は、実施の形態2の自動走行装置20の動作手順を表わすフローチャートである。
ステップS201において、いずれかの熱電対温度計3-iによって検出された温度Tiが、発火温度データベース13に記憶されているいずれかの部品の発火温度に達したときに、処理がステップS202に進む。このいずれかの部品の発火温度は、制御装置9が以下の動作を実行できるように、プロセッサ11が動作可能な上限値よりも低い温度である。
【0029】
ステップS202において、制御装置9は、自動走行装置20の走行が停止するように駆動部8を制御する。
【0030】
ステップS203において、制御装置9は、自動走行装置20が発火する可能性があることを無線通信機5を通じて、管理サーバ30へ通知する。
【0031】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3の自動走行装置20の構成例を表わす図である。
【0032】
自動走行装置20は、さらに、複数のサーモスタットスイッチ4-1~4-Mを備える。
【0033】
図10は、複数のサーモスタットスイッチ4の配置例を表わす図である。
サーモスタットスイッチ4は、自動走行装置20の外側に配置される。サーモスタットスイッチ4の作動温度は72℃に設定されている。作動温度72℃は、防火ダンパーの温度フューズおよびスプリンクラーヘッドの融解温度でも使用させている温度でもある。サーモスタットスイッチ4の作動温度は、自動走行装置20の用途に応じて変更可能である。真夏の路面温度が約60℃であるので、作動温度72℃は、一般的な建物において適切な設定温度である。
【0034】
制御装置9は、サーモスタットスイッチ4である第2の温度計によって検出された温度が第1の温度(プロセッサが動作可能な温度の上限値UT、または上限値UTよりも定められた幅ΔTだけ低い温度)よりも低い第2の温度に達したときに、自動走行装置20を、自動走行装置20が進行してきた経路を逆に辿って移動させる。
【0035】
図11は、実施の形態3の自動走行装置20の動作手順を表わすフローチャートである。
【0036】
ステップS301において、72℃に設定されたいずれかのサーモスタットスイッチ4-i(i=1~M)が作動したときには、処理がステップS302に進む。
【0037】
ステップS302において、制御装置9は、自動走行装置20が進行してきた経路を逆に辿るように、駆動部8を制御する。
図12は、自動走行装置20が進行経路を逆行する例を表わす図である。これによって、自動走行装置20は、火事エリアから脱出することができる。
【0038】
ステップS303において、制御装置9は、熱電対温度計3-1~3-Nに温度測定を開始させる。
【0039】
ステップS304において、制御装置9は、自動走行装置20が高温エリアを検出したことを表わす信号を無線通信機5を通じて、管理サーバ30へ送信する。たとえば、管理サーバ30は、火災制御システムに火災の発生を知らせて、火災制御システムが、火災報知器から警報を出力することができる。
【0040】
ステップS305において、熱電対温度計3-i(i=1~N)によって検出された温度Tiの最大値TMAXが予め定められた温度TH1に達したときに、処理がステップS305に進む。予め定められた温度TH1は、プロセッサ11の動作可能な温度の上限値UTとすることできる。あるいは、プロセッサ11が確実に動作することができるように、予め定められた温度TH1は、プロセッサ11の動作可能な温度の上限値UTよりも定められた幅ΔTだけ低い温度とすることができる。
【0041】
ステップS306において、制御装置9は、自動走行装置20の走行が停止するように駆動部8を制御する。
【0042】
ステップS307において、制御装置9は、自動走行装置20が発火する可能性があることを表わす信号を無線通信機5を通じて、管理サーバ30へ送信する。
【0043】
変形例.
(1)実施の形態1において、制御装置9は、熱電対温度計3-i(i=1~N)によって検出された温度Tiの最大値TMAXが予め定められた温度TH1に達したときに、自動走行装置20の走行を停止させたが、これに限定されるものではない。
【0044】
制御装置9は、熱電対温度計3-1~3-Nのうち、プロセッサ11に最も近い位置に配置される熱電対温度計3-kによって検出された温度Tkが予め定められた温度TH1に達したときに、自動走行装置20の走行を停止させるものとしてもよい。
【0045】
(2)実施の形態2において、制御装置9は、いずれかの熱電対温度計3-iによって検出された温度Tiが、発火温度データベース13に記憶されているいずれかの部品の発火温度に達したときに、自動走行装置20の走行が停止させたが、これに限定されるものではない。
【0046】
熱電対温度計3-iによって検出された温度Tiは、自動走行装置20の複数の部品のうちの熱電対温度計3-iが配置されている箇所の近辺に配置されている定められた1個以上の部品の温度とみなすこととしてもよい。制御装置9は、いずれかの熱電対温度計3-iによって検出された温度Tiが、発火温度データベース13に記憶されている熱電対温度計3-iが配置されている箇所の近辺に配置されている定められたいずれかの部品の発火温度に達したときに、自動走行装置20の走行を停止させるものとしてもよい。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
3 熱電対温度計、4 サーモスタットスイッチ、5 無線通信機、6 カメラ、7 バッテリ、8 駆動部、9 制御装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 発火温度データベース、20 自動走行装置、30 管理サーバ、40 イントラネット。