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特許7614452アクチュエータ無しの可動座席アームレスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】アクチュエータ無しの可動座席アームレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20250107BHJP
   B64D 11/06 20060101ALI20250107BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20250107BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60N2/75
B64D11/06
B60N2/68
B60N2/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024517036
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022075816
(87)【国際公開番号】W WO2023041729
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】2109843
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513096624
【氏名又は名称】サフラン シーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(72)【発明者】
【氏名】ロペ, ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】スッシ ズアウイ, ムウナ
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-520638(JP,A)
【文献】特表2010-520117(JP,A)
【文献】特表2013-538735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/75
B64D 11/06
B60N 2/68
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起上り位置とベッド位置との間で変換可能な座席であって、
面及び背もたれと
前記座席の起上り位置からベッド位置への移動及びベッド位置から起上り位置への移動を行うために前記座席を動かす運動部であって、前記座面に機械的に連結された少なくとも1つの移動部を有する運動部と、
高位置と低位置との間で移動可能なアームレストと
前記座席が起上り位置からベッド位置に移動する時の前記アームレストの前記高位置から前記低位置への自動的な移動及び前記座席がベッド位置から起上り位置に移動する時の前記アームレストの前記低位置から前記高位置への自動的な移動を可能とする、前記アームレストのための展開機構とを備え、
前記アームレストのための展開機構が
前記座面に関連付けられた前記移動部に機械的に連結された第1ローラを有する第1ガイド連結部であって、前記第1ローラが前記アームレストの第1溝と協働する第1ガイド連結部と
固定部に機械的に連結された第2ローラを有する第2ガイド連結部であって、前記第2ローラが、前記座席が前記起上り位置から前記ベッド位置へと移動する時の前記座席の前記座面の移動が前記アームレストの前記高位置から前記低位置への移動を制御するように前記アームレストの第2溝と協働する第2ガイド連結部と、
前記固定部に相対して並進移動可能に取り付けられたキャリッジと、
前記キャリッジに回転連結された第1端部と前記アームレストの上部に回転連結された第2端部とを各々が有する少なくとも1つの傾斜リンクとを有することを特徴とする座席。
【請求項2】
前記少なくとも1つの傾斜リンクは2つの傾斜リンクであることを特徴とする請求項1に記載の座席。
【請求項3】
前記少なくとも1つの傾斜リンクが前記アームレストの内側に少なくとも部分的に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の座席。
【請求項4】
前記第2溝が直線部及び曲線部を有し、前記直線部は前記アームレストが、高さ変更の前に所定距離にわたって水平並進移動のみを行うことを可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の座席。
【請求項5】
前記所定距離は、前記アームレストの前記高位置と前記低位置との間の全行程の40%から60%の間であることを特徴とする請求項4に記載の座席。
【請求項6】
前記固定部は前記座席に関連付けられたプライバシーシェル又はコンソールにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の座席。
【請求項7】
前記アームレストが前記低位置にある時に前記アームレストと前記背もたれとの間の空間を埋めるアーム支持パッドを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の座席。
【請求項8】
前記座面に連結された部分は、前記座席が前記起上り位置から前記ベッド位置に移動する時に前記アーム支持パッドを上方に上昇させることが可能であることを特徴とする請求項7に記載の座席。
【請求項9】
前記アームレストが前記低位置である時に、前記アームレストの上面が水平面に対して約数度の角度を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の座席。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の座席を備える輸送機器キャビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ無しの可動座席アームレストに関する。本発明は、航空機の座席、特にビジネスクラスタイプの航空機の座席への適用において特に有利であるが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
それ自体公知の態様で、ビジネスクラスタイプの座席は、座席と、枢動連結部を介して座席に対して関節式に連結された背もたれとを有する。必要であれば、座席は、枢動連結部を介して座席に対して関節式に連結されたレッグレストを有し得る。座席と背もたれは、固定レール(複数の固定レール)を介して航空機の床に固定される座席支持体に取り付けられている。
【0003】
座席は、有利には、座席を起上り位置とベッド位置との間で移動可能とする運動部を備えている。起上り位置では、背もたれ及びレッグレストの各々は、座席に対してゼロでない角度を形成する。起上り位置は、航空機の離陸、着陸、又は駐機段階に適応した位置である。ベッド位置では、背もたれとレッグレストは、乗客のための略水平な寝床面を形成するように座席の延長上に位置する。
【0004】
文献EP2619092は、アームレストの高位置から低位置への移動を可能にする展開機構を介して座席に機械的に連結されたアームレストの製造を教示する。高位置では、座席が起上り位置にある時、アームレストの上面が座席に対してより高い高さ(レベル)に位置する。低位置では、座席がベッド位置にある時、アームレストの上面が座席と略同じ高さ(レベル)に位置する。
【0005】
このような構成の問題点は、アームレストの移動が背もたれの移動によって制御される点である。しかしながら、もし背もたれの運動部を座席モデルごとに変更すると、座席の位置に応じたアームレストの適切な動きを保証することができない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、以下の座席を提案することによって、特にこの前述の欠点を効果的に改善することである。即ち、起上り位置とベッド位置との間で変換可能な座席であって、
座面及び背もたれと、
前記座席を起上り位置からベッド位置へと移動し且つベッド位置から起上り位置へと移動するための運動部であって、前記座面に機械的に連結された少なくとも1つの移動部を有する運動部と、
高位置と低位置との間で移動可能なアームレストと、
前記座席が起上り位置からベッド位置に移動する時の前記アームレストの前記高位置から前記低位置への自動的な移動及び前記座席がベッド位置から起上り位置に移動する時の前記アームレストの前記低位置から前記高位置への自動的な移動を可能とする、アームレスト展開機構とを備え、
前記アームレスト展開機構が、
前記座面に関連付けられた前記移動部に機械的に連結された第1ローラを有する第1ガイド連結部であって、前記第1ローラが前記アームレストの第1溝と協働する第1ガイド連結部と、
固定部に機械的に連結された第2ローラを有する第2ガイド連結部であって、前記第2ローラが、前記座席が前記起上り位置から前記ベッド位置へと移動する間の前記座席の前記座面の移動が前記アームレストの前記高位置から前記低位置への移動を制御するように前記アームレストの第2溝と協働する第2ガイド連結部とを有する座席である。
【0007】
したがって、本発明は、座面の移動によるアームレストの制御によって、座席が起上り位置からベッド位置に移動する時に、座面に対するアームレストの同期した動きを保証することを可能にする。したがって、本発明は、座席の種類によって異なり得る座席の背もたれの構成とは独立して(無関係に)座席に組み込むことができる。さらに、アームレストの移動は座面の移動によって制御されるため、本発明は、アームレストのある位置(姿勢)から他の位置(姿勢)への移動をアクチュエータなしで行うことを可能とする。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記座席は前記固定部に相対して並進移動可能に取り付けられたキャリッジと、前記キャリッジに回転連結された第1端部と前記アームレストの上部に回転連結された第2端部とを各々が有する少なくとも1つの傾斜リンク、特に2つの傾斜リンクとを更に備える。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記傾斜リンク(前記複数の傾斜リンク)が前記アームレストの内側に少なくとも部分的に位置する。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記第2ガイド溝が直線部及び曲線部を有し、前記直線部は前記アームレストが、高さ変更の前に所定距離にわたって水平並進移動のみを行うことを可能とする。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記所定距離は、前記アームレストの前記高位置と前記低位置との間の全行程の40%から60%の間である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記固定部は前記座席に関連付けられたプライバシーシェル又はコンソールにより形成されている。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記座席は、前記アームレストが前記低位置にある時に前記アームレストと前記背もたれとの間の空間を埋める(塞ぐ、占める)アーム支持パッドを備える。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記座面に連結された部分は、前記座席が前記起上り位置から前記ベッド位置に移動される時に前記アーム支持パッドを上方に移動させることが可能である。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記アームレストが前記低位置である時に、前記アームレストの上面が水平面に対して約数度の角度を形成する。この傾斜角度は、航空機が水平に対して約3度の角度だけ傾斜している飛行条件によるものである。
【0016】
本発明はまた、上記に規定した座席を備える輸送機器キャビンに関する。
【0017】
以下の詳細な説明を読むことにより、本発明はより良好に理解され、他の特徴及び利点は明らかになるであろう。以下の詳細な説明は、添付の図面を参照して実例として与えられる実施形態を含み、非限定的な例示として提示され、本発明及びその実現化の提示の理解を完全なものとするために使用され得て、必要であれば本発明の定義に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、高位置と低位置とのそれぞれにあり、透明で示された、本発明に係るアームレストを備えた航空機(飛行機)の座席の側面図である。
【0019】
図2a-2c】図2a、図2b、及び図2cは、本発明に係るアームレストを有する航空機(飛行機)の座席の、座席が起上り位置にある時、リラックス位置にある時、及びベッド位置にある時のそれぞれの側面図である。
【0020】
図3図3は、本発明に係る座席アームレストの詳細側面図である。
【0021】
図4図4は、本発明に係るアームレストと座席との間の様々な機械的連結の概略図である。
【0022】
図5図5は、本発明に係るアームレストの中空体の内部の傾斜リンクの位置決めを示す斜視図である。
【0023】
図6図6は、アームレストが低位置にある時に、アームレストと座席背もたれの一部との間の空間を埋めることを可能にするアーム支持パッドの存在を示すベッド位置にある本発明に係る座席の側面図である。
【0024】
図7図7は、アームレストが低位置にある時に、アームレストと座席背もたれの一部との間の空間を埋めることを可能にするアーム支持パッドの詳細側面図である。
【0025】
図8a-8c】図8a、図8b、及び図8cは、本発明に係るアームレストの高位置と低位置との間の移動を示す。
【0026】
図9図9は、座席支持体によって形成された固定部に固定された本発明に係るアームレストの変形態様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
同一の要素、類似した要素、又は相似した要素は、ある図面と他の図面とにわたって同一の参照符号を有する。
【0028】
本明細書の残りの部分において、「水平」、「垂直」、「高い」、「低い」といったタイプの相対的な用語は、本発明に係る座席に座った人が航空機キャビンにおいて彼ら/彼女らに与えるであろう常識(共通感覚)を参照して理解される。
【0029】
図1は、座面11と、水平軸を有する枢動連結部13を介して座面11に対して関節式に連結された背もたれ12とを備える座席(シート)10、特に航空機キャビン用の座席10を示している。必要であれば、座席10は、水平軸を有する枢動接続部16を介して座面11に対して関節式に連結されたレッグレスト15を有しても良い。座席10はまた、乗客が自身の身体の一部、特に自身の腕を載せることができる上壁18を有する少なくとも1つのアームレスト17も有する。
【0030】
座席10はまた、航空機キャビンのレール(複数のレール)に固定される座席支持体(シートサポート)20も含む。この目的のために、座席支持体20は、座席支持体20を航空機キャビンのレール(複数のレール)に固定することができるロック(複数のロック)22を備える脚部(複数の脚部)を備える。
【0031】
座席10は、有利には、座席10を起上り位置(起上り姿勢)とベッド位置(ベッド姿勢)との間で移動可能とする運動部(運動装置、運動機構)を備える。運動部は、アクチュエータ(複数のアクチュエータ)、連結部(複数の連結部)、及びジョイント(複数のジョイント)のセットを備え、ある位置から別の位置へ移動する際に、座席10の様々な構成部品の相対的な移動を確実とすることができる。
【0032】
図2aに見られる起上り位置では、背もたれ12は座面11に対してゼロではない角度を形成している。起上り位置は、「航空機(飛行機)」の離陸、着陸または駐機段階に適合した位置である。図2cに見られるベッド位置では、背もたれ12とレッグレスト15は、実質的に水平である乗客のための睡眠面(寝床面)を形成するように、座面11の延長上に位置している。起上り位置からベッド位置に移動する時、座面11は座席10の前方に向かって並進移動し、背もたれ12は座席10の後方に向かって座面11に対して回転移動する。座席10はまた、図2bに示す位置のように、背もたれ12が後方に向かって強く傾斜した中間の快適位置(複数の快適位置(姿勢))を取ることもできる。
【0033】
さらに、図1及び図3に見られるように、アームレスト17の展開機構23は、座席10が起上り位置からベッド位置に移動する時のアームレスト17の高位置から低位置への自動的な移動、及びその反対の移動を可能とする。「自動的に」という文言は、座席10がある位置(姿勢)から別の位置(姿勢)に移動する時に、アームレスト17が、乗客からのアクション(作用、行為)なしにある位置(姿勢)から別の位置(姿勢)に移動できることを意味する。
【0034】
図2aに見られる高位置では、座席10が起上り位置にある時に、アームレスト17の上壁18は座面11の上方に位置する。図2cおよび図6に見られる低位置では、座席10がベッド位置にある時に、アームレスト17の上壁18は、座面11の上面と略同一高さ(略同一レベル)に位置している。アームレスト17の上壁18の高さ(レベル)は、航空機キャビンの床に対して垂直に測定される。「略同一高さ」という文言は、アームレスト17の上壁18と座面11の上面との間に、最大でもわずかな高さの差、特に5cm未満の高さの差が存在し得ることを意味する。
【0035】
より正確には、図3図4、及び図5に見られるように、アームレスト17の展開機構23は、アームレスト17を備えたキャリッジ24を備える。このキャリッジ24は、固定部26に対して並進移動可能である。この目的のために、キャリッジ24は、固定部26に取り付けられたスライド27に沿ってスライド可能である。
【0036】
固定部26は、前記座席10に関連付けられたプライバシーシェル又はコンソールによって形成され得る。プライバシーシェルは、乗客にある程度のプライバシーを提供するために、座席10を少なくとも部分的に取り囲み座席10の周囲に半閉鎖空間を形成する。コンソールは、従来、テーブルを形成する上面と、印刷物ポケット、ボトルホルダー、及びミニバーのうちの1つまたは複数の要素を備えた乗客用の収納スペースとを備える1つの付属品(備品、家具)によって形成され得る。収納スペースの選択は、航空会社の希望に応じて設定可能である。
【0037】
少なくとも1つの傾斜リンク29.1、29.2がキャリッジ24とアームレスト17との間に取り付けられている。図示の例では、2つの傾斜リンク29.1、29.2が設けられており、各リンクは、図3及び図4に示すように、キャリッジ24と回転連結(回転可能に連結)された第1端部と、アームレスト17の上部と回転連結された第2端部とを有している。
【0038】
したがって、傾斜リンク29.1は、枢動連結部30.1を介してキャリッジ24と、枢動連結部30.2を介してアームレスト17の上部と、それぞれ連結されている。傾斜リンク29.2は、枢動連結部30.3を介してキャリッジ24と、枢動連結部30.4を介してアームレスト17の上部と、それぞれ連結されている。
【0039】
傾斜リンク29.1、29.2は、過負荷、特に約1000Nから1500Nの過負荷がアームレスト17に垂直方向及び水平方向に加えられる認証試験によって課される制約を満たすように、アームレスト17を機械的に補強することを可能とする。傾斜リンク29.1、29.2の組み込みにより、アームレスト17の位置がどのようなものであっても、認証試験に合格することが可能となる。
【0040】
図5に見られるように、傾斜リンク29.1、29.2は、アームレスト17の中空本体の内側に少なくとも部分的に収容されている。より詳細には、アームレスト17の本体は、上壁18、2つの側壁31、32、及び少なくとも1つの端壁33を備える。したがって、アームレスト17は、傾斜リンク29.1、29.2が配置される中空空間を画定する(中空空間の範囲を定める)U字形断面を有する。アームレスト17の壁、特に側壁31、32は、アームレスト17の重量を軽減するために穴が開けられていてもよい。アームレストは、スチール、アルミニウム、マグネシウムなどの金属材料、硬質プラスチック材料、繊維入り複合材料、または用途に適した任意の他の材料で作られていてもよい。
【0041】
さらに、第1ガイド連結部35は、移動部(可動部)37に固定された第1ローラ36を備える。第1ローラ36は、アームレスト17の第1ガイド溝38と協働する。移動部37は、座席10の位置(姿勢)が変化する時に並進移動する座面11に機械的に(力学的に)連結されている。
【0042】
第1ガイド溝38は、図5に示すように、アームレスト17の側壁31に形成されている。第1ガイド溝38は、直線形状を有する。第1ガイド溝38は、鉛直方向に対して傾斜している。したがって、第1ガイド溝38は、図3に示すように、鉛直方向に対して10°から45°の間の角度Aを形成することができる。
【0043】
第2ガイド連結部40は、固定部26に機械的に連結された第2ローラ41を備える。第2ローラ41は、アームレスト17の第2ガイド溝42と協働する。この場合、第2ローラ41は、固定部26(プライバシーシェル又はコンソール)上に固定された支持部34によって支えられる。支持部34は一般にL字形状を有し得る。
【0044】
第2ガイド溝42は、側壁31に対向する側壁32に形成されている。第2ガイド溝42は、直線部分42.1と曲線部分(湾曲部分)42.2とを有する。直線部分42.1により、アームレスト17は、高さ変化の前に所定の距離にわたって水平方向の並進移動のみを行うことができる。「高さ変化」という文言は、垂直軸に沿ったアームレスト17の位置の変化を意味する。所定の距離は、好ましくは、高位置と低位置との間のアームレスト17の全行程の40%から60%の間である。これにより、座席10が起上り位置とベッド位置との間の中間位置(中間姿勢)をとる時に、アームレスト17が座面11と共に並進移動のみを行うことが保証される。
【0045】
曲線部42.2は、座席10がベッド位置に向かって移動する時、アームレスト17に、アームレスト17の並進移動の終わりに高さを変えて低位置に移動することを許容する。第2ガイド溝42の形状は、アームレスト17の高位置から低位置への移動、またはその反対の移動の間のアームレスト17の軌道に対応する。
【0046】
座席10は、座席10が起上り位置からベッド位置に移動する時の座面11の移動が、アームレスト17の高位置から低位置への移動を制御するように構成されている。反対に、座席10の座面11のベッド位置から起上り位置への移動が、アームレスト17の低位置から高位置への移動を制御する。アームレスト17の移動は座面11の移動によって制御されるので、本発明により、アームレスト17のある位置から別の位置へ移動をアクチュエータなしで行うことが可能となる。
【0047】
有利には、図6及び図7に見られるように、座席10は、アームレスト17が低位置にある時にアームレスト17と背もたれ12の一部との間の空間43を埋める(塞ぐ、占める)ためのアーム支持パッド44を含む。アーム支持パッド44は、枢動接続部45を介してアームレスト17の後部に機械的に接続されている。座面11に連結された部分46は、座席10が起上り位置からベッド位置に移動する時にアーム支持パッド44を上昇させることができる。アーム支持パッド44の動きは、アームレスト17が低位置にある時、アームレスト17と背もたれ12の一部との間の空間43を埋めるように、アーム支持パッド44が水平に延びるようになっている。アームレスト17が低位置から高位置に移動する時、アーム支持パッド44は自重で落下する。
【0048】
以下、図8a~図8cを参照して、座席10が起上り位置からベッド位置に移動する時のアームレスト17の動作について説明する。
【0049】
乗客が座席10の位置を起上り位置からベッド位置へ変更することを指示すると、座面11に連結された移動部37が前方へ並進移動する。
【0050】
次に、移動部37は、第1ローラ36を介してキャリッジ24及びアームレスト17を前方に並進駆動する。アームレスト17は、第2ガイド溝42の直線部分42.1にしたがって第2ローラ41を介して移動する。アームレスト17を直線部分42.1に沿って移動させる時、座席10は様々な複数の中間位置を取ることができる。アームレスト17の並進移動中、アームレスト17は、座席10が起上り位置にある時と同じ高さに維持される。
【0051】
アームレスト17が直線部分42.1を移動すると、アームレスト17は第2ガイド溝42の曲線部分42.2に沿ってスライドする。アームレスト17は、座席10がベッド位置にある時に上壁18が座面11と略同じ高さに位置するように、床まで下降して低位置に移動する。アームレスト17を下方に移動させるために、第1ローラ36は第1ガイド溝38に沿って上昇する。その時、リンク29.1、29.2は、アームレスト17の低位置への下降に伴うように、それぞれの枢動接続部30.1~30.4を中心に枢動する。
【0052】
アームレスト17が低位置にある時、アームレスト17の上面は、有利には、航空機キャビンの床に平行な水平面に対して数度程度の角度を形成する。この角度は、飛行中の航空機の傾斜角度を補償するように、座席10のベッド面が形成する角度に対応する。この角度は例えば2°から5°の間であり、好ましくは約3°である。
【0053】
アームレスト17の低位置への移動に付随して(移動と同時に)、アームレスト17の壁に最初は押し付けられたアーム支持パッド44は、水平面内に延びてアームレスト17と背もたれ12の一部との間の空間43を埋めるために真っ直ぐになるように、部品46によって駆動される。
【0054】
座席10がベッド位置から起上り位置に移動する時、アームレスト17は高位置に戻るように反対の動きをする。
【0055】
上述したアームレスト17の構成は、認証試験に合格することを容易とする。実際、アームレスト17を座席10の構造に直接組み込むと、座席10への衝撃を代表する力が加わっている間に、座席10に追加的な機械的応力が発生するであろう。反対に、アームレスト17を座席10に付属する固定部26(プライバシーシェル又はコンソール)によって支持することで、認証試験中に座席10が受ける機械的応力を低減することが可能となる。
【0056】
しかしながら、図9に示すように、アームレスト17を固定部26を形成する座席支持体20に取り付けることも可能である。
【0057】
アームレスト17に加えられる過負荷に対する耐性が低い低グレードの構成によれば、傾斜リンク29.1、29.2及びキャリッジ24の存在をなくすことも可能である。この時、アームレスト17の展開機構23は、図9に示すように、アームレスト17が高位置と低位置との間で案内されることを可能にする第1ガイド接続部35と第2ガイド接続部40のみを備える。
【0058】
もちろん、本発明の様々な特徴、変形例及び/又は実施形態は、互いに矛盾しない範囲又は互いに排他的ではない範囲で、様々な組合せで互いに関連付けることができる。
【0059】
さらに、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例示としてのみ提供される。本発明は、当業者が本発明の文脈において考慮し得る様々な変形態様、代替形態、及び他の変形を包含し、特に、上述した動作の様々な態様の全ての組合せを包含し、これらは別個にまたは組み合わせて採用することができる。
【0060】
本発明を航空機キャビンに設置される座席のために説明したが、本発明は、列車、バス、ボート、又はヘリコプターのような他の航空機等の他の輸送機器においても実施することができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9