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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】高速投入装置及び電力制御回路
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/00 20060101AFI20250107BHJP
   H01T 2/00 20060101ALI20250107BHJP
   H01H 79/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01H33/00 B
H01T2/00 A
H01H79/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024519601
(86)(22)【出願日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2023022415
【審査請求日】2024-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹松 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西尾 悠
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-42808(JP,B1)
【文献】特表2010-521794(JP,A)
【文献】特開昭56-145689(JP,A)
【文献】特開平7-302674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/00
H01H 33/66
H01H 79/00
H01T 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極から離間されている第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に放電を誘起する放電誘起機構とを備え、
前記放電誘起機構は、電圧発生素子と、前記電圧発生素子に非電気的エネルギーを印加し得る非電気的エネルギー印加部とを含む、高速投入装置。
【請求項2】
前記放電誘起機構は、前記電圧発生素子に接続されているトリガ電極を含み、
前記第2電極と前記トリガ電極とは、前記電圧発生素子に電気的に接続されており、
前記トリガ電極は、前記第1電極と前記第2電極との間の空間に面する端部を含み、
前記トリガ電極の前記端部と前記第2電極との間の間隔は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔よりも小さい、請求項1に記載の高速投入装置。
【請求項3】
前記電圧発生素子は、前記第2電極の孔内に配置されている、請求項2に記載の高速投入装置。
【請求項4】
絶縁部材をさらに備え、
前記絶縁部材は、前記トリガ電極と前記第2電極との間に配置されている、請求項2に記載の高速投入装置。
【請求項5】
前記電圧発生素子は、第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを含み、
前記放電誘起機構は、導電板を含み、
前記トリガ電極は、前記第1端部に接触しており、
前記導電板は、前記第2端部と前記第2電極とに接触している、請求項2に記載の高速投入装置。
【請求項6】
前記トリガ電極の前記端部は、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されている、請求項2に記載の高速投入装置。
【請求項7】
前記第1電極と前記第2電極とは、前記電圧発生素子に電気的に接続されている、請求項1に記載の高速投入装置。
【請求項8】
前記放電誘起機構は、第1トリガ電極と第2トリガ電極とを含み、
前記第1トリガ電極と前記第2トリガ電極とは、前記電圧発生素子に電気的に接続されており、
前記第1トリガ電極の端部と前記第2トリガ電極の端部とは、前記第1電極と前記第2電極との間の空間に面している、請求項1に記載の高速投入装置。
【請求項9】
前記電圧発生素子は、圧電素子であり、
前記非電気的エネルギー印加部は、前記圧電素子に機械的エネルギーを印加し得る可動部材を含む駆動部である、請求項1に記載の高速投入装置。
【請求項10】
前記第2電極は可動電極であり、
前記可動部材は、前記可動電極を前記第1電極に向けて移動させ得る、請求項9に記載の高速投入装置。
【請求項11】
前記可動部材は、可動ロッドと、前記可動電極を押圧し得る押圧部材と、前記可動ロッドと前記押圧部材とに接続されている弾性部材とを含む、請求項10に記載の高速投入装置。
【請求項12】
前記可動部材は、可動ロッドと、前記可動電極を押圧し得る押圧部材と、蓄勢されたばねとを含み、
前記押圧部材は、前記可動ロッドに押圧され得るとともに、前記蓄勢されたばねに接続されている、請求項10に記載の高速投入装置。
【請求項13】
前記第2電極は可動電極であり、
前記電圧発生素子は、圧電素子であり、かつ、第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを含み、
前記非電気的エネルギー印加部は、駆動部であり、
前記駆動部は、ハウジングと、前記ハウジングに対して移動し得るとともに前記可動電極を前記第1電極に向けて移動させ得る可動部材とを含み、
前記ハウジングと前記可動部材とは、導電性を有し、かつ、互いに導通しており、
前記第1端部は、前記ハウジングに接触しており、
前記第2端部は、前記第1電極に導通している、請求項1に記載の高速投入装置。
【請求項14】
前記第2電極は可動電極であり、
前記放電誘起機構は、トリガ電極を含み、
前記トリガ電極は、前記第1電極と前記第2電極との間の空間に面する端部を含み、
前記トリガ電極の前記端部と前記第2電極との間の間隔は、前記第1電極と前記第2電極との間の間隔よりも小さく、
前記電圧発生素子は、圧電素子であり、かつ、第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを含み、
前記非電気的エネルギー印加部は、駆動部であり、
前記駆動部は、ハウジングと、前記ハウジングに対して移動し得るとともに前記可動電極を前記第1電極に向けて移動させ得る可動部材とを含み、
前記ハウジングと前記可動部材とは、導電性を有し、かつ、互いに導通しており、
前記第1端部は、前記ハウジングに接触しており、
前記第2端部は、前記トリガ電極に導通している、請求項1に記載の高速投入装置。
【請求項15】
前記第2電極は可動電極であり、
前記放電誘起機構は、第1トリガ電極と、第2トリガ電極とを含み、
前記第1トリガ電極の端部と前記第2トリガ電極の端部とは、前記第1電極と前記第2電極との間の空間に面しており、
前記電圧発生素子は、圧電素子であり、かつ、第1端部と、前記第1端部とは反対側の第2端部とを含み、
前記非電気的エネルギー印加部は、駆動部であり、
前記駆動部は、ハウジングと、前記ハウジングに対して移動し得るとともに前記可動電極を前記第1電極に向けて移動させ得る可動部材とを含み、
前記ハウジングと前記可動部材とは、導電性を有し、かつ、互いに導通しており、
前記第1端部は、前記第1トリガ電極に導通しており、
前記第2端部は、前記第2トリガ電極に導通している、請求項1に記載の高速投入装置。
【請求項16】
モジュール回路と、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の前記高速投入装置とを備え、
前記高速投入装置は前記モジュール回路に電気的に並列接続されている、電力制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高速投入装置及び電力制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
実願昭62-13775号(実開昭63-123026号)のマイクロフィルム(特許文献1)は、固定電極と、可動電極と、トリガ電極と、トリガ電圧発生部と、制御部とを備える高速投入装置を開示している。制御部に投入指令信号が与えられると、制御部はトリガ電圧発生部に始動信号を与える。トリガ電圧発生部は、始動信号を受信して、固定電極とトリガ電極の間にトリガ電圧を印加する。固定電極とトリガ電極との間に第1放電が生じ、それから、第1放電の影響により、可動電極と固定電極との間に第2放電が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実願昭62-13775号(実開昭63-123026号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、固定電極とトリガ電極との間に第1放電を生じさせるために、トリガ電圧発生部を高電圧回路で構成する必要がある。また、制御部は、高電圧回路を制御する制御回路で構成する必要がある。しかし、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路は、コストが高く、長期信頼性が低い。本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、より低コストでありかつより高い長期信頼性を有する高速投入装置及び電力制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の高速投入装置は、第1電極と、第2電極と、放電誘起機構とを備える。第2電極は、第1電極から離間されている。放電誘起機構は、第1電極と第2電極との間に放電を誘起する。放電誘起機構は、電圧発生素子と、電圧発生素子に非電気的エネルギーを印加し得る非電気的エネルギー印加部とを含む。
【0006】
本開示の電力制御回路は、モジュール回路と、本開示の高速投入装置とを備える。高速投入装置は、モジュール回路に電気的に並列接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の高速投入装置及び電力制御回路では、トリガ電圧は、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路から生成されるのではなく、電圧発生素子によって生成される。そのため、高速投入装置及び電力制御回路は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の高速投入装置の概略断面図である。
図2】実施の形態1の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図3】実施の形態1の高速投入装置の、図2に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図4】実施の形態1の高速投入装置の、図3に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図5】実施の形態1の第1変形例の高速投入装置の概略部分拡大断面図である。
図6】実施の形態1の第2変形例の高速投入装置の概略部分拡大断面図である。
図7】実施の形態1の第2変形例の高速投入装置の概略部分拡大断面図である。
図8】実施の形態2の高速投入装置の概略断面図である。
図9】実施の形態2の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図10】実施の形態2の高速投入装置の、図9に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図11】実施の形態3の高速投入装置の概略部分拡大断面図である。
図12】実施の形態3の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図13】実施の形態4の高速投入装置の概略部分拡大断面図である。
図14】実施の形態4の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図15】実施の形態4の高速投入装置の、図14に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図16】実施の形態5の高速投入装置の概略部分拡大断面図である。
図17】実施の形態5の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図18】実施の形態5の高速投入装置の、図17に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図19】実施の形態6の高速投入装置の概略断面図である。
図20】実施の形態6の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図21】実施の形態6の高速投入装置の、図20に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図22】実施の形態7の高速投入装置の概略断面図である。
図23】実施の形態7の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図24】実施の形態7の高速投入装置の、図23に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図25】実施の形態7の高速投入装置の、図24に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図26】実施の形態8の高速投入装置の概略断面図である。
図27】実施の形態8の高速投入装置のある動作状態を示す概略断面図である。
図28】実施の形態8の高速投入装置の、図27に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図29】実施の形態8の高速投入装置の、図28に示される動作状態の次の動作状態を示す概略断面図である。
図30】実施の形態9の電力変換装置の概略図である。
図31】実施の形態9の電力制御回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
実施の形態1.
図1を参照して、実施の形態1の高速投入装置1を説明する。高速投入装置1は、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に、電気的に並列接続される。高速投入装置1は、事故電流を短時間で電気装置から迂回させて、電気装置が事故電流によって損傷することを防止する。高速投入装置1は、第1電極2と、第2電極3と、放電誘起機構5とを備える。高速投入装置1は、容器10と、摺動部材28と、絶縁部材33とをさらに備えてもよい。
【0011】
容器10は、第1主電極11と、第2主電極12と、絶縁中空体13とを含む。
第1主電極11と第2主電極12とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に電気的に接続される。
【0012】
第1主電極11は、絶縁中空体13の一方の開口端を閉塞している。第1主電極11は、例えば、銅(Cu)のような金属材料で形成されている。
【0013】
第2主電極12は、第1主電極11から離間されている。具体的には、第2主電極12は、絶縁中空体13によって、第1主電極11から離間されている。第2主電極12は、絶縁中空体13の他方の開口端をカバーしている。第2主電極12は、例えば、銅(Cu)のような金属材料で形成されている。第2主電極12は、第1主電極11と同じ材料で形成されてもよい。
【0014】
第2主電極12は、フランジ部12aと、筒部12bとを含む。フランジ部12aは、絶縁中空体13の他方の開口端をカバーしている。筒部12bは、フランジ部12aに接続されている。筒部12bは、フランジ部12aから、フランジ部12aに対して絶縁中空体13の側とは反対側に突出している。第2主電極12に、貫通孔12cが設けられている。具体的には、貫通孔12cは、フランジ部12a及び筒部12bに設けられている。第2電極3の一部は貫通孔12c内に配置されている。貫通孔12cは、可動電極21に対するガイド孔として機能してもよい。
【0015】
絶縁中空体13は、第2主電極12を第1主電極11から電気的に絶縁している。絶縁中空体13は、セラミック、バルクモールディングコンパウンド(BMC)またはガラスエポキシのような絶縁材料で形成されている。
【0016】
第1主電極11と第2主電極12と絶縁中空体13とによって、容器10内に絶縁空間14が形成されている。絶縁空間14の媒質は、空気または六フッ化硫黄などのような絶縁性ガスであってもよいし、真空であってもよい。
【0017】
第1電極2は、第1主電極11を介して、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に電気的に接続される。第1電極2は、固定電極16であってもよい。第1電極2は、例えば、第1主電極11と一体に形成されてもよい。第1電極2は、容器10の絶縁空間14内に配置されてもよい。第1電極2は、導電材料で形成されている。第1電極2は、例えば、銅(Cu)のような金属材料で形成されている。第1電極2は、第1主電極11と同じ材料で形成されてもよい。
【0018】
第2電極3は、第2主電極12及び摺動部材28を介して、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に電気的に接続される。第2電極3は、固定電極16及び第2主電極12に対して移動可能な可動電極21であってもよい。第2電極3は、容器10の貫通孔12cに挿入されてもよい。第2電極3は、導電材料で形成されている。第2電極3は、例えば、銅(Cu)のような金属材料で形成されている。第2電極3は、第2主電極12と同じ材料で形成されてもよい。第2電極3は、第1電極2と同じ材料で形成されてもよい。
【0019】
第2電極3は、端部22と、端部22とは反対側の端部23とを含む。端部22,23は、例えば、第2電極3の長手方向の両端である。第2電極3の端部22は、第1電極2に対向している。第2電極3の端部22は、容器10の絶縁空間14内に配置されてもよい。第2電極3の端部23は、可動部材41に対向している。第2電極3に、端部22から端部23まで延在する孔24が設けられている。第2電極3は、中空導電体である。
【0020】
少なくとも一つの摺動部材28が、容器10の貫通孔12c内において、可動電極21と容器10との間に配置されている。より具体的には、摺動部材28は、可動電極21と第2主電極12との間に配置されており、可動電極21と第2主電極12とに接触している。摺動部材28は、金属のような導電材料で形成されており、可動電極21と第2主電極12とを電気的に接続している。摺動部材28は、例えば、リング形状を有するスプリングである。摺動部材28は、可動電極21または第2主電極12に固定されている。
【0021】
複数の摺動部材28が、容器10の貫通孔12c内において、可動電極21と第2主電極12との間に配置されてもよい。摺動部材28と可動電極21との間の接触面積及び摺動部材28と第2主電極12との間の接触面積が増加するため、可動電極21に大電流が流れても、摺動部材28と可動電極21との間の接触抵抗及び摺動部材28と第2主電極12との間の接触抵抗に起因する発熱が、減少し得る。
【0022】
放電誘起機構5は、第1電極2と第2電極3との間に放電を誘起する。放電誘起機構5は、電圧発生素子35と、非電気的エネルギー印加部7を含む。放電誘起機構5は、導電板26と、トリガ電極30とをさらに含んでもよい。
【0023】
電圧発生素子35は、端部36と、端部36と反対側の端部37とを含む。電圧発生素子35に機械的エネルギー、熱エネルギーまたは磁気エネルギーのような非電気的エネルギーが印加されると、端部36と端部37との間に電位差が発生して、電圧発生素子35は、トリガ電圧を出力する。電圧発生素子35は、例えば、機械的エネルギー(例えば、圧力)が印加されることによって電圧が発生する圧電素子である。圧電素子は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電効果を有する誘電体材料で形成されている。
【0024】
電圧発生素子35は、第2電極3の孔24内に配置されている。電圧発生素子35は、第2電極3とトリガ電極30とに電気的に接続されている。例えば、電圧発生素子35は、導電板26を介して、第2電極3に電気的に接続されてもよい。電圧発生素子35は、トリガ電極30に接触してもよい。
【0025】
トリガ電極30は、第1電極2から離間されており、第1電極2から電気的に絶縁されている。トリガ電極30は、第2電極3の孔24内に配置されてもよい。トリガ電極30は、絶縁部材33及び電圧発生素子35によって、第2電極3から電気的に絶縁されている。トリガ電極30と第2電極3との間の間隔は、第1電極2と第2電極3との間の間隔よりも狭い。
【0026】
トリガ電極30は、端部31,32を含む。端部31,32は、例えば、トリガ電極30の長手方向の両端である。トリガ電極30の端部31は、第2電極3の端部22に近位しており、第1電極2と第2電極3との間の空間に面している。トリガ電極30の端部31は、絶縁部材33によって、第2電極3の端部22から離れている。トリガ電極30の端部31は、第1電極2に対向しており、容器10内に配置されている。トリガ電極30の端部31と第2電極3の端部22との間の間隔は、第1電極2と第2電極3の端部22との間の間隔よりも小さい。トリガ電極30の端部31は、第1電極2よりも、第2電極3の端部22の近くに配置されてもよい。トリガ電極30の端部32は、第2電極3の端部23に近位している。トリガ電極30の端部32は、電圧発生素子35の端部36に接触している。
【0027】
導電板26は、第2電極3と電圧発生素子35とを電気的に接続している。具体的には、導電板26は、第2電極3の端部23上に配置されており、第2電極3に接触している。導電板26は、電圧発生素子35の端部37上に配置されており、電圧発生素子35に接触している。
【0028】
非電気的エネルギー印加部7は、電圧発生素子35に、機械的エネルギー、熱エネルギーまたは磁気エネルギーのような非電気的エネルギーを印加する。本実施の形態では、非電気的エネルギー印加部7は、電圧発生素子35に機械的エネルギー(例えば、圧力)を印加する駆動部40である。
【0029】
駆動部40は、可動部材41と、ハウジング43と、移動機構44とを含む。可動部材41は、ハウジング43に対して移動し得る。可動部材41は、例えば、可動ロッド42である。可動部材41は、電圧発生素子35を押圧して、電圧発生素子35に圧力のような機械的エネルギーを印加し得る。具体的には、図2に示されるように、可動部材41は、導電板26を押圧して、導電板26に接触する電圧発生素子35を押圧する。ハウジング43は、可動部材41を収容している。移動機構44は、可動部材41を移動させ得る。移動機構44は、例えば、ボールねじとモータとを含む直動機構であってもよいし、可動レバーであってもよい。第2電極3が可動電極21であるとき、可動部材41は可動電極21を移動させ得る。
【0030】
絶縁部材33は、例えば、筒形状を有しており、第2電極3の孔24内に配置されている。トリガ電極30及び電圧発生素子35は、絶縁部材33の孔内に配置されている。絶縁部材33は、第2電極3とトリガ電極30との間に配置されており、トリガ電極30を第2電極3から電気的に絶縁している。絶縁部材33は、第2電極3と電圧発生素子35との間に配置されている。絶縁部材33は、セラミック、バルクモールディングコンパウンド(BMC)またはガラスエポキシのような絶縁材料で形成されている。
【0031】
図1から図4を参照して、第1電極2が固定電極16であり、かつ、第2電極3が可動電極21であるときの、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
【0032】
事故電流が検出されていないとき、図1に示されるように、可動電極21は固定電極16から距離dだけ離れている。距離dは、固定電極16と可動電極21との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、固定電極16と可動電極21との間に印加されても、固定電極16と可動電極21とは互いに導通しない。電気装置に、通常の電流が流れる。
【0033】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を可動電極21に向けて移動させる。図2に示されるように、可動部材41及び電圧発生素子35は、導電板26を介して、可動部材41によって押圧される。電圧発生素子35は圧電素子であるため、電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0034】
電圧発生素子35の端部36は、トリガ電極30の端部32に接触している。電圧発生素子35の端部37は導電板26に接触しており、導電板26は可動電極21に接触している。そのため、電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、トリガ電極30と可動電極21との間に印加される。トリガ電極30と可動電極21との間にある媒質の絶縁破壊電圧より大きな電圧が、トリガ電極30の端部31と可動電極21の端部22との間に印加される。こうして、トリガ電極30の端部31と可動電極21の端部22との間に第1放電50が発生する。
【0035】
第1放電50に起因して、固定電極16と可動電極21との間に荷電粒子が発生する。荷電粒子は、固定電極16と可動電極21との間にある媒質の絶縁破壊電圧を減少させる。第1主電極11と第2主電極12とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、固定電極16と可動電極21との間に印加されている。固定電極16と可動電極21との間に印加されている電圧が、固定電極16と可動電極21との間にある媒質の減少した絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図3に示されるように、固定電極16と可動電極21との間に第2放電52が発生する。可動電極21が固定電極16に接触する前に、第2放電52によって固定電極16と可動電極21との間に導電路が形成されて、可動電極21は固定電極16に導通する。そのため、可動電極21が固定電極16に接触する前に、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。
【0036】
可動部材41は、可動電極21をさらに押圧して、可動電極21を固定電極16に向けて移動させる。図4に示されるように、可動電極21は固定電極16に接触する。固定電極16と可動電極21との間の導通は、第2放電52を介した導通から、固定電極16と可動電極21との間の接触による導通に切り替わる。事故電流は、引き続き、高速投入装置1を流れる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0037】
(変形例)
図5を参照して、本実施の形態の第1変形例では、可動部材41は、可動ロッド42と、押圧部材45と、ばね46のような弾性部材とを含む。押圧部材45は、導電板26を介して電圧発生素子35及び可動電極21を押圧し得る。弾性部材は、可動ロッド42と押圧部材45とに接続されている。
【0038】
図6を参照して、本実施の形態の第2変形例では、可動部材41は、可動ロッド42と、押圧部材45と、蓄勢されたばね46とを含む。押圧部材45は、導電板26を介して電圧発生素子35及び可動電極21を押圧し得る。蓄勢されたばね46は、ハウジング43と押圧部材45とに接続されている。押圧部材45は、可動ロッド42によって押圧され得るとともに、蓄勢されたばね46によって付勢され得る。蓄勢されたばね46の長さは、ばね46の自然長より短い。具体的には、駆動部40は、ストッパ47を含む。ストッパ47は、例えば、プランジャである。事故電流が検出されていないとき、押圧部材45は、ストッパ47に接触している。そのため、ばね46の長さはばね46の自然長より短くなり、ばね46は蓄勢される。ストッパ47は、蓄勢されたばね46の付勢力に抗して、押圧部材45が電圧発生素子35及び可動電極21に向けて移動することを阻止する。
【0039】
図7を参照して、事故電流が検出されると、投入指令信号が駆動部40に入力される。移動機構44は、可動ロッド42を可動電極21に向けて移動させる。可動ロッド42は、押圧部材45に接触する。蓄勢されたばね46の付勢力に加えて可動ロッド42の押圧力とが、押圧部材45に作用する。ストッパ47は、蓄勢されたばね46の付勢力と可動ロッド42の押圧力とに抗しきれずに、押圧部材45が電圧発生素子35及び可動電極21に向けて移動することを許容する。押圧部材45は、電圧発生素子35及び可動電極21に向けて移動して、導電板26を介して電圧発生素子35及び可動電極21を押圧する。
【0040】
本実施の形態の第3変形例では、電圧発生素子35は、磁気エネルギーを出力する誘導コイルであってもよい。
【0041】
本実施の形態の高速投入装置1の効果を説明する。
本実施の形態の高速投入装置1は、第1電極2と、第2電極3と、放電誘起機構5とを備える。第2電極3は、第1電極2から離間されている。放電誘起機構5は、第1電極2と第2電極3との間に放電を誘起する。放電誘起機構5は、電圧発生素子35と、電圧発生素子35に非電気的エネルギーを印加し得る非電気的エネルギー印加部7とを含む。
【0042】
トリガ電圧は電圧発生素子35によって生成されるため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。そのため、高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0043】
本実施の形態の高速投入装置1では、放電誘起機構5は、電圧発生素子35に接続されているトリガ電極30を含む。第2電極3とトリガ電極30とは、電圧発生素子35に電気的に接続されている。トリガ電極30は、第1電極2と第2電極3との間の空間に面する端部31を含む。トリガ電極30の端部31と第2電極3との間の間隔は、第1電極2と第2電極3との間の間隔よりも小さい。
【0044】
そのため、電圧発生素子35から発生するトリガ電圧がより小さくても、第1電極2と第2電極3との間に放電を誘起することができる。高速投入装置1を小型化することができる。
【0045】
本実施の形態の高速投入装置1では、電圧発生素子35は、第2電極3の孔24内に配置されている。
【0046】
そのため、高速投入装置1を小型化することができる。
本実施の形態の高速投入装置1は、絶縁部材33をさらに備える。絶縁部材33は、トリガ電極30と第2電極3との間に配置されている。
【0047】
そのため、トリガ電極30を第2電極3の近くに配置することができる。高速投入装置1を小型化することができる。
【0048】
本実施の形態の高速投入装置1では、電圧発生素子35は、第1端部(端部36)と、第1端部とは反対側の第2端部(端部37)とを含む。放電誘起機構5は、導電板26を含む。トリガ電極30は、第1端部に接触している。導電板26は、第2端部と第2電極3とに接触している。
【0049】
トリガ電圧は電圧発生素子35によって生成されるため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。そのため、高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0050】
本実施の形態の高速投入装置1では、電圧発生素子35は、圧電素子である。非電気的エネルギー印加部7は、圧電素子に機械的エネルギーを印加し得る可動部材41を含む駆動部40である。
【0051】
トリガ電圧は圧電素子によって生成されるため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。そのため、高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0052】
本実施の形態の高速投入装置1では、第2電極3は可動電極21である。可動部材41は、可動電極21を第1電極2に向けて移動させ得る。
【0053】
そのため、可動電極21が第1電極2に接触する前に、可動電極21は第1電極2に導通する。事故電流の経路は、より短い時間で、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。また、トリガ電圧は電圧発生素子35によって生成されるため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。そのため、高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0054】
本実施の形態の高速投入装置1では、可動部材41は、可動ロッド42と、可動電極21を押圧し得る押圧部材45と、可動ロッド42と押圧部材45とに接続されている弾性部材(ばね46)とを含む。
【0055】
弾性部材(例えば、ばね46)によって、可動ロッド42が可動電極21に衝突する際の衝撃力が緩和され得る。電圧発生素子35の破損が防止され得る。
【0056】
本実施の形態の高速投入装置1では、可動部材41は、可動ロッド42と、可動電極21を押圧し得る押圧部材45と、蓄勢されたばね(ばね46)とを含む。押圧部材45は、可動ロッド42に押圧され得るとともに、蓄勢されたばねに接続されている。
【0057】
ばね46によって、可動ロッド42が可動電極21を押圧する際の衝撃力が緩和され得る。電圧発生素子35の破損が防止され得る。
【0058】
実施の形態2.
図8を参照して、実施の形態2の高速投入装置1を説明する。本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0059】
本実施の形態の高速投入装置1は、容器10と摺動部材28とを備えていない。第2電極3は、固定電極20である。高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)は、第1電極2及び第2電極3に電気的に接続される。
【0060】
図8から図10を参照して、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
事故電流が検出されていないとき、図8に示されるように、第2電極3(固定電極20)は第1電極2(固定電極16)から距離dだけ離れている。距離dは、第1電極2と第2電極3との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、第1電極2と第2電極3との間に電圧が印加されても、第1電極2と第2電極3とは互いに導通しない。電気装置に、通常の電流が流れる。
【0061】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を第2電極3に向けて移動させる。図9に示されるように、電圧発生素子35は、導電板26を介して、可動部材41によって押圧される。電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0062】
電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、トリガ電極30と第2電極3との間に印加される。トリガ電極30と第2電極3との間にある媒質(例えば、空気)の絶縁破壊電圧より大きな電圧が、トリガ電極30の端部31と第2電極3の端部22との間に印加される。こうして、図9に示されるように、トリガ電極30の端部31と第2電極3の端部22との間に第1放電50が発生する。
【0063】
第1放電50に起因して、第1電極2と第2電極3との間に荷電粒子が発生する。荷電粒子は、第1電極2と第2電極3との間にある媒質の絶縁破壊電圧を減少させる。第1電極2と第2電極3とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されている。第1電極2と第2電極3との間に印加されている電圧が、第1電極2と第2電極3との間にある媒質の減少した絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図10に示されるように、第1電極2と第2電極3との間に第2放電52が発生する。第2放電52によって第1電極2と第2電極3との間に導電路が形成されて、第2電極3は第1電極2に導通する。そのため、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0064】
本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0065】
本実施の形態の高速投入装置1では、第1電極2は固定電極16である。第2電極3は固定電極20である。
【0066】
トリガ電圧は電圧発生素子35によって生成されるため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。そのため、高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0067】
実施の形態3.
図11を参照して、実施の形態3の高速投入装置1を説明する。本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態2の高速投入装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0068】
本実施の形態では、放電誘起機構5は、電圧発生素子35と、非電気的エネルギー印加部7と、配線56,57とを含む。放電誘起機構5は、導電板26と、トリガ電極30とを備えていない。配線56は、第1電極2と電圧発生素子35の端部36とに接続されている。配線57は、第2電極3と電圧発生素子35の端部37とに接続されている。
【0069】
電圧発生素子35は、第2電極3の外側に配置されている。本実施の形態の高速投入装置1は、絶縁部材33を備えていない。可動部材41は、電圧発生素子35に接触して、電圧発生素子35を押圧し得る。
【0070】
図11及び図12を参照して、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
事故電流が検出されていないとき、図11に示されるように、第2電極3(固定電極20)は第1電極2(固定電極16)から距離dだけ離れている。距離dは、第1電極2と第2電極3との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されても、第1電極2と第2電極3とは互いに導通しない。第1電極2及び第2電極3に接続されている、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に、通常の電流が流れる。
【0071】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を第2電極3に向けて移動させる。図11に示されるように、電圧発生素子35は、可動部材41によって押圧される。電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0072】
第1電極2と第2電極3とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されている。加えて、電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、第1電極2と第2電極3との間に印加される。そのため、第1電極2と第2電極3との間に印加されている電圧が、第1電極2と第2電極3との間にある媒質の絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図12に示されるように、第1電極2と第2電極3との間に放電53が発生する。放電53によって第1電極2と第2電極3との間に導電路が形成されて、第2電極3は第1電極2に導通する。そのため、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0073】
本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0074】
本実施の形態の高速投入装置1では、第1電極2と第2電極3とは、電圧発生素子35に電気的に接続されている。
【0075】
トリガ電圧は電圧発生素子35によって生成されるため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。そのため、高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0076】
実施の形態4.
図13を参照して、実施の形態4の高速投入装置1を説明する。本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態3の高速投入装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0077】
本実施の形態の高速投入装置1は、トリガ電極30をさらに備える。トリガ電極30は、第1電極2と第2電極3との間に配置されている。具体的には、トリガ電極30の端部31は、第1電極2と第2電極3との間に配置されている。トリガ電極30の端部31と第2電極3の端部22との間の間隔は、第1電極2と第2電極3との間の間隔よりも小さい。電圧発生素子35は、配線56を通して、トリガ電極30に電気的に接続されている。電圧発生素子35は、配線57を通して、第2電極3に電気的に接続されている。
【0078】
図13から図15を参照して、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
事故電流が検出されていないとき、図13に示されるように、第2電極3は第1電極2から距離dだけ離れている。距離dは、第1電極2と第2電極3との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されても、第1電極2と第2電極3とは互いに導通しない。電気装置に、通常の電流が流れる。
【0079】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を第2電極3に向けて移動させる。図14に示されるように、電圧発生素子35は、可動部材41によって押圧される。電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0080】
電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、トリガ電極30と第2電極3との間に印加される。トリガ電極30の端部31と第2電極3との間にある媒質(例えば、空気)の絶縁破壊電圧より大きな電圧が、トリガ電極30と第2電極3との間に印加される。こうして、図14に示されるように、トリガ電極30と第2電極3との間に第1放電50が発生する。
【0081】
第1放電50に起因して、第1電極2と第2電極3との間に荷電粒子が発生する。荷電粒子は、第1電極2と第2電極3との間にある媒質の絶縁破壊電圧を減少させる。第1電極2と第2電極3とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されている。第1電極2と第2電極3との間に印加されている電圧が第1電極2と第2電極3との間にある媒質の減少した絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図15に示されるように、第1電極2と第2電極3との間に第2放電52が発生する。第2放電52によって第1電極2と第2電極3との間に導電路が形成されて、第2電極3は第1電極2に導通する。そのため、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0082】
本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0083】
本実施の形態の高速投入装置1では、トリガ電極30の端部31は、第1電極2と第2電極3との間に配置されている。
【0084】
そのため、電圧発生素子35から発生するトリガ電圧がより小さくても、第1電極2と第2電極3との間に放電を誘起することができる。高速投入装置1を小型化することができる。
【0085】
実施の形態5.
図16を参照して、実施の形態5の高速投入装置1を説明する。本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態3の高速投入装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0086】
本実施の形態の高速投入装置1は、トリガ電極30,30bをさらに備える。トリガ電極30,30bは、第1電極2と第2電極3との間に配置されている。具体的には、トリガ電極30は、端部31を含む。トリガ電極30bは、端部31bを含む。トリガ電極30の端部31とトリガ電極30bの端部31bとは、第1電極2と第2電極3との間の空間に面している。トリガ電極30の端部31とトリガ電極30bの端部31bとの間の間隔は、トリガ電極30の端部31と第1電極2との間の間隔よりも小さく、トリガ電極30の端部31と第2電極3との間の間隔よりも小さく、トリガ電極30bの端部31bと第1電極2との間の間隔よりも小さく、トリガ電極30bの端部31bと第2電極3との間の間隔よりも小さい。
【0087】
トリガ電極30,30bは、電圧発生素子35に電気的に接続されている。具体的には、トリガ電極30は、配線56を通して、電圧発生素子35の端部36に電気的に接続されている。トリガ電極30bは、配線57を通して、電圧発生素子35の端部37に電気的に接続されている。
【0088】
図16から図18を参照して、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
事故電流が検出されていないとき、図16に示されるように、第2電極3は第1電極2から距離dだけ離れている。距離dは、第1電極2と第2電極3との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されても、第1電極2と第2電極3とは互いに導通しない。電気装置に、通常の電流が流れる。
【0089】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を第2電極3に向けて移動させる。図17に示されるように、電圧発生素子35は、可動部材41によって押圧される。電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0090】
電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、トリガ電極30とトリガ電極30bとの間に印加される。トリガ電極30の端部31とトリガ電極30bの端部31bとの間にある媒質(例えば、空気)の絶縁破壊電圧より大きな電圧が、トリガ電極30とトリガ電極30bとの間に印加される。こうして、図17に示されるように、トリガ電極30とトリガ電極30bとの間に第1放電50が発生する。
【0091】
第1放電50に起因して、第1電極2と第2電極3との間に荷電粒子が発生する。荷電粒子は、第1電極2と第2電極3との間にある媒質の絶縁破壊電圧を減少させる。第1電極2と第2電極3とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されている。第1電極2と第2電極3との間に印加されている電圧が第1電極2と第2電極3との間にある媒質の減少した絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図18に示されるように、第1電極2と第2電極3との間に第2放電52が発生する。第2放電52によって第1電極2と第2電極3との間に導電路が形成されて、第2電極3は第1電極2に導通する。そのため、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0092】
本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0093】
本実施の形態の高速投入装置1では、放電誘起機構5は、第1トリガ電極(トリガ電極30)と第2トリガ電極(トリガ電極30b)とを含む。第1トリガ電極と第2トリガ電極とは、電圧発生素子35に電気的に接続されている。第1トリガ電極の端部31と第2トリガ電極の端部31bとは、第1電極2と第2電極3との間の空間に面している。
【0094】
そのため、電圧発生素子35から発生するトリガ電圧がより小さくても、第1電極2と第2電極3との間に放電を誘起することができる。高速投入装置1を小型化することができる。
【0095】
実施の形態6.
図19を参照して、実施の形態6の高速投入装置1を説明する。本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態3の高速投入装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0096】
本実施の形態では、第2電極3は可動電極21である。可動部材41とハウジング43とは、導電性を有しており、かつ、互いに電気的に導通している。駆動部40(可動部材41)は、可動電極21を押圧して、可動電極21を固定電極16に向けて移動させ得る。電圧発生素子35の端部36はハウジング43に接触している。電圧発生素子35の端部37は、第1電極2(固定電極16)に導通している。具体的には、配線56は、第1電極2(固定電極16)と電圧発生素子35の端部37とに接続されている。可動部材41がハウジング43に対して移動している間、ハウジング43は反作用を受けて、電圧発生素子35を押圧する。こうして、非電気的エネルギー印加部7は、電圧発生素子35に機械的エネルギーのような非電気的エネルギーを印加する。電圧発生素子35は押圧されて、トリガ電圧を出力する。
【0097】
図19から図21を参照して、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
事故電流が検出されていないとき、図19に示されるように、第2電極3(可動電極21)は第1電極2(固定電極16)から距離dだけ離れている。距離dは、第1電極2と第2電極3との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されても、第1電極2と第2電極3とは互いに導通しない。第1電極2及び第2電極3に接続されている、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に、通常の電流が流れる。
【0098】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を第2電極3に向けて移動させる。可動部材41がハウジング43に対して移動している間、ハウジング43は反作用を受けて、電圧発生素子35を押圧する。電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0099】
図20に示されるように、可動部材41は、可動電極21に接触して、可動電極21を固定電極16に向けて押圧する。可動電極21は、可動部材41及びハウジング43を通して、電圧発生素子35の端部36に電気的に接続されている。固定電極16は、配線56を通して電圧発生素子35の端部37に電気的に接続されている。そのため、固定電極16と可動電極21との間に、トリガ電圧が印加される。
【0100】
固定電極16と可動電極21とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、固定電極16と可動電極21との間に印加されている。加えて、電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、固定電極16と可動電極21との間に印加される。そのため、固定電極16と可動電極21との間に印加されている電圧が、固定電極16と可動電極21との間にある媒質の絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図20に示されるように、固定電極16と可動電極21との間に放電53が発生する。放電53によって固定電極16と可動電極21との間に導電路が形成されて、可動電極21は固定電極16に導通する。そのため、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。
【0101】
可動部材41は、可動電極21をさらに押圧して、可動電極21を固定電極16に向けて移動させる。図21に示されるように、可動電極21は固定電極16に接触する。固定電極16と可動電極21との間の導通は、放電53を介した導通から、固定電極16と可動電極21との間の接触による導通に切り替わる。事故電流は、引き続き、高速投入装置1を流れる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0102】
本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0103】
本実施の形態の高速投入装置1では、第2電極3は可動電極21である。電圧発生素子35は、圧電素子であり、かつ、第1端部(端部36)と、第1端部とは反対側の第2端部(端部37)とを含む。非電気的エネルギー印加部7は、駆動部40である。駆動部40は、ハウジング43と、ハウジング43に対して移動し得るとともに可動電極21を第1電極2に向けて移動させ得る可動部材41とを含む。ハウジング43と可動部材41とは、導電性を有し、かつ、互いに導通している。電圧発生素子35の第1端部は、ハウジング43に接触している。電圧発生素子35の第2端部は、第1電極2に導通している。
【0104】
可動部材41がハウジング43に対して移動している間、ハウジング43は反作用を受けて、電圧発生素子35を押圧する。電圧発生素子35は、トリガ電圧を生成する。そのため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0105】
実施の形態7.
図22を参照して、実施の形態7の高速投入装置1を説明する。本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態6の高速投入装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0106】
本実施の形態では、放電誘起機構5は、トリガ電極30を含む。トリガ電極30は、端部31を含む。トリガ電極30の端部31は、第1電極2と第2電極3との間の空間に面している。トリガ電極30の端部31と第2電極3の端部22との間の間隔は、第1電極2と第2電極3との間の間隔よりも小さい。電圧発生素子35の端部37は、トリガ電極30に導通している。具体的には、電圧発生素子35の端部37は、配線56を通して、トリガ電極30に電気的に接続されている。
【0107】
図22から図25を参照して、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
事故電流が検出されていないとき、図22に示されるように、第2電極3は第1電極2から距離dだけ離れている。距離dは、第1電極2と第2電極3との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されても、第1電極2と第2電極3とは互いに導通しない。電気装置に、通常の電流が流れる。
【0108】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を第2電極3に向けて移動させる。可動部材41がハウジング43に対して移動している間、ハウジング43は反作用を受けて、電圧発生素子35を押圧する。電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0109】
図23に示されるように、可動部材41は、可動電極21に接触して、可動電極21を固定電極16に向けて押圧する。可動電極21は、可動部材41及びハウジング43を通して、電圧発生素子35の端部36に電気的に接続されている。トリガ電極30は、配線56を通して電圧発生素子35の端部37に電気的に接続されている。そのため、可動電極21とトリガ電極30の間に、トリガ電圧が印加される。
【0110】
電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、トリガ電極30と第2電極3との間に印加される。トリガ電極30の端部31と第2電極3との間にある媒質(例えば、空気)の絶縁破壊電圧より大きな電圧が、トリガ電極30と第2電極3との間に印加される。こうして、図23に示されるように、トリガ電極30と第2電極3との間に第1放電50が発生する。
【0111】
第1放電50に起因して、第1電極2と第2電極3との間に荷電粒子が発生する。荷電粒子は、第1電極2と第2電極3との間にある媒質の絶縁破壊電圧を減少させる。第1電極2と第2電極3とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されている。第1電極2と第2電極3との間に印加されている電圧が第1電極2と第2電極3との間にある媒質の減少した絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図24に示されるように、第1電極2と第2電極3との間に第2放電52が発生する。第2放電52によって第1電極2と第2電極3との間に導電路が形成されて、第2電極3は第1電極2に導通する。そのため、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。
【0112】
可動部材41は、可動電極21をさらに押圧して、可動電極21を固定電極16に向けて移動させる。図25に示されるように、可動電極21は固定電極16に接触する。固定電極16と可動電極21との間の導通は、第2放電52を介した導通から、固定電極16と可動電極21との間の接触による導通に切り替わる。事故電流は、引き続き、高速投入装置1を流れる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0113】
本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0114】
本実施の形態の高速投入装置1では、第2電極3は可動電極21である。放電誘起機構5は、トリガ電極30を含む。トリガ電極30は、第1電極2と第2電極3との間の空間に面する端部31を含む。トリガ電極30の端部31と第2電極3との間の間隔は、第1電極2と第2電極3との間の間隔よりも小さい。電圧発生素子35は、圧電素子であり、かつ、第1端部(端部36)と、第1端部とは反対側の第2端部(端部37)とを含む。非電気的エネルギー印加部7は、駆動部40である。駆動部40は、ハウジング43と、ハウジング43に対して移動し得るとともに可動電極21を第1電極2に向けて移動させ得る可動部材41とを含む。ハウジング43と可動部材41とは、導電性を有し、かつ、互いに導通している。電圧発生素子35の第1端部は、ハウジング43に接触している。電圧発生素子35の第2端部は、トリガ電極30に導通している。
【0115】
可動部材41がハウジング43に対して移動している間、ハウジング43は反作用を受けて、電圧発生素子35を押圧する。電圧発生素子35は、トリガ電圧を生成する。そのため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0116】
実施の形態8.
図26を参照して、実施の形態8の高速投入装置1を説明する。本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態6の高速投入装置1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0117】
本実施の形態では、放電誘起機構5は、トリガ電極30と、トリガ電極30bとを含む。トリガ電極30は、端部31を含む。トリガ電極30bは、端部31bを含む。トリガ電極30の端部31とトリガ電極30bの端部31bとは、第1電極2と第2電極3との間の空間に面している。トリガ電極30の端部31とトリガ電極30bの端部31bとの間の間隔は、トリガ電極30の端部31と第1電極2との間の間隔よりも小さく、トリガ電極30の端部31と第2電極3との間の間隔よりも小さく、トリガ電極30bの端部31bと第1電極2との間の間隔よりも小さく、トリガ電極30bの端部31bと第2電極3との間の間隔よりも小さい。
【0118】
電圧発生素子35の端部36は、トリガ電極30に導通している。電圧発生素子35の端部37は、トリガ電極30bに導通している。具体的には、トリガ電極30は、配線56を通して、電圧発生素子35の端部36に電気的に接続されている。トリガ電極30bは、配線57を通して、電圧発生素子35の端部37に電気的に接続されている。
【0119】
図26から図29を参照して、本実施の形態の高速投入装置1の動作を説明する。
事故電流が検出されていないとき、図26に示されるように、第2電極3は第1電極2から距離dだけ離れている。距離dは、第1電極2と第2電極3との間の絶縁距離以上である。そのため、高速投入装置1に並列接続されている電気装置(図示せず)に印加される電圧にほぼ等しい電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されても、第1電極2と第2電極3とは互いに導通しない。電気装置に、通常の電流が流れる。
【0120】
事故電流が検出されると、投入指令信号が非電気的エネルギー印加部7(例えば、駆動部40)に入力される。移動機構44は、可動部材41(可動ロッド42)を第2電極3に向けて移動させる。可動部材41がハウジング43に対して移動している間、ハウジング43は反作用を受けて、電圧発生素子35を押圧する。電圧発生素子35の端部36と端部37との間にトリガ電圧が発生する。
【0121】
図27に示されるように、可動部材41は、可動電極21に接触して、可動電極21を固定電極16に向けて押圧する。可動電極21は、可動部材41及びハウジング43を通して、電圧発生素子35の端部36に電気的に接続されている。トリガ電極30は、配線56を通して電圧発生素子35の端部37に電気的に接続されている。そのため、可動電極21とトリガ電極30の間に、トリガ電圧が印加される。
【0122】
電圧発生素子35に発生したトリガ電圧は、トリガ電極30とトリガ電極30bとの間に印加される。トリガ電極30の端部31とトリガ電極30bの端部31bとの間にある媒質(例えば、空気)の絶縁破壊電圧より大きな電圧が、トリガ電極30とトリガ電極30bとの間に印加される。こうして、図27に示されるように、トリガ電極30とトリガ電極30bとの間に第1放電50が発生する。
【0123】
第1放電50に起因して、第1電極2と第2電極3との間に荷電粒子が発生する。荷電粒子は、第1電極2と第2電極3との間にある媒質の絶縁破壊電圧を減少させる。第1電極2と第2電極3とは、高速投入装置1によって保護されるべき電気装置(図示せず)に並列接続されているため、電気装置に印加される電圧とほぼ同じ電圧が、第1電極2と第2電極3との間に印加されている。第1電極2と第2電極3との間に印加されている電圧が第1電極2と第2電極3との間にある媒質の減少した絶縁破壊電圧よりも大きくなる。こうして、図28に示されるように、第1電極2と第2電極3との間に第2放電52が発生する。第2放電52によって第1電極2と第2電極3との間に導電路が形成されて、第2電極3は第1電極2に導通する。そのため、事故電流の経路は、電気装置から、高速投入装置1に切り替わる。
【0124】
可動部材41は、可動電極21をさらに押圧して、可動電極21を固定電極16に向けて移動させる。図29に示されるように、可動電極21は固定電極16に接触する。固定電極16と可動電極21との間の導通は、第2放電52を介した導通から、固定電極16と可動電極21との間の接触による導通に切り替わる。事故電流は、引き続き、高速投入装置1を流れる。こうして、電気装置は、事故電流から保護され得る。
【0125】
本実施の形態の高速投入装置1は、実施の形態1の高速投入装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0126】
本実施の形態の高速投入装置1では、第2電極3は可動電極21である。放電誘起機構5は、第1トリガ電極(トリガ電極30)と、第2トリガ電極(トリガ電極30b)とを含む。第1トリガ電極の端部31と第2トリガ電極の端部31bとは、第1電極2と第2電極3との間の空間に面している。電圧発生素子35は、圧電素子であり、かつ、第1端部(端部36)と、第1端部とは反対側の第2端部(端部37)とを含む。非電気的エネルギー印加部7は、駆動部40である。駆動部40は、ハウジング43と、ハウジング43に対して移動し得るとともに可動電極21を第1電極2に向けて移動させ得る可動部材41とを含む。ハウジング43と可動部材41とは、導電性を有し、かつ、互いに導通している。電圧発生素子35の第1端部は、第1トリガ電極に導通している。電圧発生素子35の第2端部は、第2トリガ電極に導通している。
【0127】
可動部材41がハウジング43に対して移動している間、ハウジング43は反作用を受けて、電圧発生素子35を押圧する。電圧発生素子35は、トリガ電圧を生成する。そのため、高電圧回路及び高電圧回路を制御する制御回路が不要になる。高速投入装置1は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0128】
実施の形態9.
図30及び図31を参照して、実施の形態9の電力変換装置60を説明する。電力変換装置60は、例えば、直流電力を三相交流電力に変換するAC/DC電力変換装置である。図30を参照して、電力変換装置60は、正電圧端子63aと、負電圧端子63bと、交流端子63c,63d,63eと、アームA1,A2,A3,A4,A5,A6と、リアクトルL1,L2,L3,L4,L5,L6とを含む。アームA1,A2,A3,A4,A5,A6の各々は、直列接続された複数の電力制御回路65を含む。電力制御回路65は、実施の形態1及びその変形例のいずれかの高速投入装置1の適用例である。
【0129】
正電圧端子63a及び負電圧端子63bは、負荷(図示せず)に接続される。負荷は、例えば、直流電源またはモータトライブインバータである。交流端子63c,63d,63eは、それぞれ、三相変圧器62の3つの二次側端子に接続される。三相変圧器62の一次側端子は、交流電力系統61の三相送電線に接続される。
【0130】
交流電力系統61の三相交流電力が三相変圧器62を介して電力変換装置60に供給される。電力変換装置60は三相交流電力を直流電力に変換する。変換された直流電力は、正電圧端子63a及び負電圧端子63bに接続されている負荷に供給される。こうして、交流電力系統61から負荷に直流電力が供給される。
【0131】
アームA1の一方の端子は正電圧端子63aに接続され、アームA1の他方の端子はリアクトルL1の一方の端子に接続される。アームA2の一方の端子は正電圧端子63aに接続され、アームA2の他方の端子はリアクトルL2の一方の端子に接続される。アームA3の一方の端子は正電圧端子63aに接続され、アームA3の他方の端子はリアクトルL3の一方の端子に接続される。リアクトルL1の他方の端子は、交流端子63cに接続される。リアクトルL2の他方の端子は、交流端子63dに接続される。リアクトルL3の他方の端子は、交流端子63eに接続される。
【0132】
アームA4の一方の端子は負電圧端子63bに接続され、アームA4の他方の端子はリアクトルL4の一方の端子に接続される。アームA5の一方の端子は負電圧端子63bに接続され、アームA5の他方の端子はリアクトルL5の一方の端子に接続される。アームA6の一方の端子は負電圧端子63bに接続され、アームA6の他方の端子はリアクトルL6の一方の端子に接続される。リアクトルL4の他方の端子は、交流端子63cに接続される。リアクトルL5の他方の端子は、交流端子63dに接続される。リアクトルL6の他方の端子は、交流端子63eに接続される。
【0133】
正電圧端子63aに正の直流電圧VPが供給される。負電圧端子63bに負の直流電圧VNが供給される。交流端子63cにU相交流電圧VUが供給される。交流端子63dにV相交流電圧VVが供給される。交流端子63eにW相交流電圧VWが供給される。三相交流電圧VU,VV,VWの位相は120度ずつずれている。
【0134】
アームA1,A4は、U相交流電圧VUと直流電圧VP,VNとの間で電力変換を行なうU相モジュールを構成する。アームA2,A5は、V相交流電圧VVと直流電圧VP,VNとの間で電力変換を行なうV相モジュールを構成する。アームA3,A6は、W相交流電圧VWと直流電圧VP,VNとの間で電力変換を行なうW相モジュールを構成する。
【0135】
リアクトルL1は、アームA1に流れる電流を制御する。リアクトルL2は、アームA2に流れる電流を制御する。リアクトルL3は、アームA3に流れる電流を制御する。リアクトルL4は、アームA4に流れる電流を制御する。リアクトルL5は、アームA5に流れる電流を制御する。リアクトルL6は、アームA6に流れる電流を制御する。リアクトルL1,L2,L3,L4,L5,L6は、U相交流電圧VUの振幅とV相交流電圧VVの振幅とW相交流電圧VWの振幅とが異なる場合に、U相モジュール、V相モジュール及びW相モジュール間に流れる循環電流を抑制する。
【0136】
図31を参照して、電力制御回路65は、モジュール回路66と、実施の形態1及びその変形例のいずれかの高速投入装置1と、周辺部品(図示せず)とを含む。高速投入装置1は、モジュール回路66に電気的に並列接続されている。
【0137】
モジュール回路66は、主回路67と、制御回路68とを含む。主回路67は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のようなスイッチング素子(図示せず)と、ダイオード(図示せず)と、コンデンサ(図示せず)とを含む。スイッチング素子をオン状態とオフ状態との間で切り替えることによって、交流電力が直流電力に変換される。制御回路68は、主回路67を制御する。
【0138】
周辺部品は、モジュール回路66の周辺に配置されている。周辺部品は、例えば、治具(図示せず)と、ブスバー(図示せず)と、筐体(図示せず)とを含む。治具は、主回路67を構成する電子部品(例えば、スイッチング素子、ダイオード及びコンデンサ)を固定する。ブスバーは、主回路67の端子に接続されている。筐体は、制御回路68を収容して、制御回路68を保護する。
【0139】
モジュール回路66が正常に動作しているとき、電流はモジュール回路66を流れる。モジュール回路66が故障したとき、高速投入装置1が動作する。電流は、故障したモジュール回路66を迂回して、高速投入装置1を流れる。電流の経路から故障したモジュール回路66を除外することができる。そのため、故障したモジュール回路66の影響を受けることなく、電力制御回路65の上位系統(例えば、交流電力系統61)の運転を継続することができる。
【0140】
また、モジュール回路66が故障したとき、モジュール回路66にアークが発生することがある。アークの発生時間が長くなると、主回路67、制御回路68または周辺部品の少なくとも一つが破損する可能性が高くなる。本実施の形態では、モジュール回路66が故障したときに高速投入装置1が迅速に動作するため、アークの発生時間が短くなる。主回路67、制御回路68及び周辺部品が破損することが防止され得る。電力制御回路65の防爆性能を高めることができる。
【0141】
本実施の形態の電力制御回路65の効果を説明する。
本実施の形態の電力制御回路65は、モジュール回路66と、実施の形態1から実施の形態5のいずれかの高速投入装置1とを備える。高速投入装置1は、モジュール回路66に電気的に並列接続されている。
【0142】
電力制御回路65は、高速投入装置1を含む。そのため、電力制御回路65は、より低コストであり、かつ、より高い長期信頼性を有する。
【0143】
今回開示された実施の形態1から実施の形態9はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0144】
1 高速投入装置、2 第1電極、3 第2電極、5 放電誘起機構、7 非電気的エネルギー印加部、10 容器、11 第1主電極、12 第2主電極、12a フランジ部、12b 筒部、12c 貫通孔、13 絶縁中空体、14 絶縁空間、16,20 固定電極、21 可動電極、22,23 端部、24 孔、26 導電板、28 摺動部材、30,30b トリガ電極、31,31b,32 端部、33 絶縁部材、35 電圧発生素子、36,37 端部、40 駆動部、41 可動部材、42 可動ロッド、43 ハウジング、44 移動機構、45 押圧部材、46 ばね、47 ストッパ、50 第1放電、52 第2放電、53 放電、56,57 配線、60 電力変換装置、61 交流電力系統、62 三相変圧器、63a 正電圧端子、63b 負電圧端子、63c,63d,63e 交流端子、65 電力制御回路、66 モジュール回路、67 主回路、68 制御回路、A1,A2,A3,A4,A5,A6 アーム、L1,L2,L3,L4,L5,L6 リアクトル。
【要約】
高速投入装置(1)は、第1電極(2)と、第2電極(3)と、放電誘起機構(5)とを備える。第2電極(3)は、第1電極(2)から離間されている。放電誘起機構(5)は、第1電極(2)と第2電極(3)との間に放電を誘起する。放電誘起機構(5)は、電圧発生素子(35)と、電圧発生素子(35)に非電気的エネルギーを印加し得る非電気的エネルギー印加部(7)とを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31