IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-選別処理システム 図1
  • 特許-選別処理システム 図2
  • 特許-選別処理システム 図3
  • 特許-選別処理システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】選別処理システム
(51)【国際特許分類】
   B03C 7/12 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
B03C7/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024546161
(86)(22)【出願日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2024013652
【審査請求日】2024-08-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2023年度、独立行政法人環境再生保全機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真司
(72)【発明者】
【氏名】中村 保博
(72)【発明者】
【氏名】木本 勲
(72)【発明者】
【氏名】小池 徹弥
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特許第7351043(JP,B1)
【文献】特開2021-173714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 7/00-7/12
B29B 17/00-17/04
B07C 5/00-5/38
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の物体を含む混合物を選別装置を用いて選別する選別処理システムであって、
前記選別装置に投入される前記混合物に関する第1原料情報を取得する第1検出部と、
前記選別装置に投入される前記混合物に関する、前記第1原料情報とは異なる種類の第2原料情報を取得する第2検出部と、
第1処理周期ごとに前記第1検出部から前記第1原料情報を取得し、前記第1処理周期よりも長い第2処理周期ごとに前記第2検出部から前記第2原料情報を取得して演算し、前記第1原料情報に基づき前記選別装置に投入される前記混合物に変動点が有ったか否かを判定する演算部と、
前記演算部が、前記第2検出部から前記第2原料情報を取得してから前記変動点が有ると判定するまでは前記第2原料情報に基づく設定値を用いて前記選別装置の選別条件を制御し、前記演算部が、前記変動点が有ると判定してから前記第2検出部から前記第2原料情報を取得するまでは、前記第2原料情報を用いずに、前記第1原料情報に基づく設定値を用いて前記選別条件を制御する制御部と、を備える、
選別処理システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備えるとともに、前記第1原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第1の解析法と、少なくとも前記第2原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第2の解析法と、を切り替え、
前記演算部は、前記第1処理周期ごとに処理された前記第1原料情報に基づき、前記選別装置に投入される前記混合物の状態の前記変動点を検出し、前記変動点の後、少なくとも前記第2処理周期が経過するまで、前記第1の解析法を用いて前記設定値を出力する、
請求項1に記載の選別処理システム。
【請求項3】
前記選別装置は、静電選別によって前記混合物を選別する、
請求項1または2に記載の選別処理システム。
【請求項4】
前記混合物はプラスチック片群であり、前記物体の種類はプラスチックの材質である、
請求項1または2に記載の選別処理システム。
【請求項5】
前記第1原料情報は、前記プラスチック片群における材質ごとの原料組成比であり、
前記第1検出部は、前記プラスチック片群を撮像するハイパースペクトルカメラを有している、請求項4に記載の選別処理システム。
【請求項6】
複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する選別装置と、
前記選別装置に投入される前記混合物に関する第1原料情報を取得する第1検出部と、
前記選別装置に投入される前記混合物に関する、前記第1原料情報とは異なる種類の第2原料情報を取得する第2検出部と、
前記選別装置の選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える演算部と、
前記演算部が出力した前記設定値に基づき、前記選別装置の前記選別条件を変更する制御部と、を備え、
前記演算部は、第1処理周期ごとに前記第1原料情報を処理するとともに、前記第1処理周期よりも長い第2処理周期ごとに前記第2原料情報を処理し、
前記演算部は、前記第2原料情報を用いずに、前記第1原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第1の解析法と、少なくとも前記第2原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第2の解析法と、を切り替え、
前記演算部は、前記第1処理周期ごとに処理された前記第1原料情報に基づき、前記選別装置に投入される前記混合物の状態の変動点を検出し、前記変動点の後、少なくとも前記第2処理周期が経過するまで、前記第1の解析法を用いて前記設定値を出力する、
選別処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、選別処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラスチック片などの混合物を選別する技術が開示されている。このような選別においては、原料組成比あるいは比電荷などの原料状態を検出し、その結果に基づいて、選別条件を決めることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/101874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原料状態は、経時的に変動する場合がある。このような変動に対応するため、原料状態は一定の時間間隔を空けて取得される。ここで、複数種類の原料状態を検出する構成において、選別条件を決めるために必要なデータを取得する周期は、原料状態ごとに異なる場合がある。この場合、異なる周期で取得される複数種類の原料状態を、どのように用いて選別条件を決めるかが、選別の精度に影響する。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて、異なる周期で複数種類の原料状態を取得する構成において、選別の精度を確保することが可能な選別処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る選別処理システムの一つの態様は、複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する選別装置と、前記選別装置に投入される前記混合物に関する第1原料情報を取得する第1検出部と、前記選別装置に投入される前記混合物に関する、前記第1原料情報とは異なる種類の第2原料情報を取得する第2検出部と、前記選別装置の選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える演算部と、前記演算部が出力した前記設定値に基づき、前記選別装置の前記選別条件を変更する制御部と、を備え、前記演算部は、第1処理周期ごとに前記第1原料情報を処理するとともに、前記第1処理周期よりも長い第2処理周期ごとに前記第2原料情報を処理し、前記演算部は、前記第1原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第1の解析法と、少なくとも前記第2原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第2の解析法と、を切り替える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の選別処理システムによれば、異なる周期で複数種類の原料状態を取得する構成において、選別の精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における選別処理システムの構成例を示す図である。
図2図1の第1検出部および第2検出部の構成例を示す図である。
図3】ハイパースペクトルカメラのHSIデータを用いて、原料組成比を取得する方法を説明する図である。
図4】第1の解析法および第2の解析法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。図1は、実施の形態1における選別処理システム1を説明する構成図である。選別処理システム1は、第1検出部11と、選別装置12と、演算部13と、制御部14と、第2検出部21と、を有する。
【0010】
選別処理システム1は、複数種類の物体を含む混合物を、物体の種類ごとに選別するように構成されている。本実施の形態では、「複数種類の物体を含む混合物」として、プラスチック片群Pを例に説明する。図1の例では、プラスチック片群Pに、材質が異なる2種類のプラスチック片p1、p2が含まれている。本明細書では、プラスチック片p1、p2の材質を区別せずに「フレーク」と称する場合がある。3種類以上のプラスチック片が、プラスチック片群Pに含まれていてもよい。
【0011】
以下では、プラスチック片p1がABSであり、プラスチック片p2がPSである場合を例に説明する。プラスチック片p1、p2は、例えば家電製品の筐体を粉砕機によって粉砕して乾燥することで得られる。プラスチック片p1、p2は、例えば10mm角程度の大きさに形成されている。
【0012】
選別装置12は、静電選別によって、プラスチック片p1、p2を種類ごとに選別する。図1の例で、選別装置12は、投入部121、帯電筒122、振動フィーダ123、第1電極124、第2電極125、直流電源126、回収箱127、および仕切り板128、129を備える。ただし、図1の選別装置12の構成は一例に過ぎず、変更可能である。
【0013】
選別装置12は、互いに帯電特性が異なる複数種類のプラスチック片p1、p2が混在したプラスチック片群Pを、プラスチック片p1とプラスチック片p2とに静電選別することができる。
【0014】
投入部121は、ホッパー121aと、投入フィーダ121bとを含む。ホッパー121aには、乾燥されたプラスチック片群Pが供給される。ホッパー121aは、単位時間当たり予め定められた量のプラスチック片群Pを投入フィーダ121bに供給する。投入フィーダ121bは、ホッパー121aから投入されたプラスチック片群Pを、帯電筒122内に供給する。
【0015】
帯電筒122および振動フィーダ123は、帯電部を構成する。帯電部は、プラスチック片p1、p2の各々を帯電させて落下させる。具体的に、帯電筒122は、回転することによりプラスチック片群Pを攪拌する。帯電筒122内では、プラスチック片群Pに混在する複数種類のプラスチック片p1、p2が互いに摩擦して帯電する。帯電したプラスチック片p1、p2の各々は、摩擦帯電系列に応じた極性(プラスまたはマイナス)の電荷量を有する。この例では、ABSであるプラスチック片p1はプラスに帯電し、PSであるプラスチック片p2はマイナスに帯電する。
【0016】
帯電したプラスチック片p1、p2は、振動フィーダ123の上面の後端部に供給される。プラスに帯電したプラスチック片p1とマイナスに帯電したプラスチック片p2とは、静電気力によって吸引し合い、ペアリングする。振動フィーダ123は、プラスチック片p1、p2を上下振動させながら前方に押し出す。これにより、プラスチック片p1、p2のペアリングが解消され、プラスチック片p1、p2が図中のX方向に進行する。また、プラスチック片p1、p2は振動フィーダ123から落下する。
【0017】
電極124、125および直流電源126は、電界発生部を構成する。電界発生部は、帯電した各プラスチック片に静電界を印加し、各プラスチック片の帯電状態に応じた位置に各プラスチック片を落下させる。具体的に、電極124、125は、平板状に形成されている。電極124、125は、図中のX方向に配列され、プラスチック片p1、p2の落下する経路を挟むようにして、互いに対向して配置される。第1電極124には接地電圧GNDが印加される。直流電源126は、第1電極124と第2電極125との間に所定の直流電圧を印加し、第1電極124と第2電極125との間に静電界を発生させる。
【0018】
振動フィーダ123によってペアリングが解消されたプラスチック片p1、p2が電極124、125間に落とされると、各プラスチック片は、帯電状態(極性、電荷量)に応じた静電気力により、電極124側または電極125側に引き寄せられながら落下する。つまり、各プラスチック片p1、p2は、帯電状態に応じた放物線の軌道を描き、異なる位置に落下する。この例では、プラスチック片p1は、プラスに帯電しているので、第1電極124側に落下する。一方、プラスチック片p2は、マイナスに帯電しているので、第2電極125側に落下する。
【0019】
回収箱127は、電極124、125の下方に設けられ、振動フィーダ123から電極124、125間を通過して落下したプラスチック片p1、p2を回収する。回収箱127は、直方体状に形成され、その上部は開口されている。回収箱127の開口部は、長方形状に形成されており、その長辺は図中のX方向に向けられている。
【0020】
仕切り板128、129の各々は、仕切り部材とも称される。仕切り板128、129は、回収箱127内において、図中のYZ平面と平行に配置され、図中のX方向に移動可能に設けられている。仕切り板128、129の各々のX方向の位置は、制御部14によって制御される。仕切り板128は第1電極124側に位置し、仕切り板129は第2電極125側に位置する。回収箱127は、仕切り板128、129によって、第1電極124側の回収室127aと、第2電極125側の回収室127bと、中間の回収室127cとに分割される。
【0021】
振動フィーダ123から電極124、125間を通過して落下した各プラスチック片p1、p2は、その帯電状態に応じて3つの回収室127a~127cのうちのいずれかに回収される。この例では、プラスチック片p1は、プラスに帯電するので、回収室127aに回収される。一方、プラスチック片p2は、マイナスに帯電するので、回収室127bに回収される。十分に帯電しなかったプラスチック片p1、p2は、回収室127cに回収される。
【0022】
回収室127aに回収されたプラスチック片p1と、回収室127bに回収されたプラスチック片p2と、回収室127cに回収されたプラスチック片p1、p2とは、搬送機(図示せず)によって運ばれ、別々の容器に収容される。
【0023】
第1検出部11は、第1原料情報を取得する。第1原料情報は、例えば原料組成比である。原料組成比を取得する場合、第1検出部11は、例えば図2に示すようなハイパースペクトルカメラ11aおよび処理部11bを備える。ハイパースペクトルカメラ11aは、振動フィーダ123上を流れるプラスチック片群Pを、ラインスキャン方式で撮像する。ハイパースペクトルカメラ11aは、振動フィーダ123が一定速度で搬送したプラスチック片群Pに対して、例えば500fps程度でラインスキャンする。
【0024】
ハイパースペクトルカメラ11aは、被写体であるプラスチック片群Pの各点から出た光を分光し、センサ面で捉える。センサ面には複数のピクセルが配列されており、ピクセルごとに、異なる波長の光を捉える。ハイパースペクトルカメラ11aは、各波長の光の強度に基づく、HSIデータを出力する。HSIとは、ハイパースペクトルイメージングの略である。HSIデータには、ピクセルごとの近赤外域のスペクトル情報が含まれている。
【0025】
図3は、ハイパースペクトルカメラ11aのHSIデータを用いて、原料組成比を取得する例を示している。図3(A)に示すように、HSIデータには、振動フィーダ123上のフレークの形状に関連付けられた、ピクセルごとのスペクトル情報が含まれる。点(i)、(ii)はフレークの一部であり、点(iii)は振動フィーダ123の一部である。図3(A1)は、点(i)~(iii)のピクセルごとのスペクトルを示す。図3(A1)の各グラフにおいて、例えば、横軸は波長であり、縦軸は波長ごとの強度である。
【0026】
第1検出部11の処理部11bは、ハイパースペクトルカメラ11aが生成したHSIデータを処理する。処理部11bは、HSIデータを解析し、プラスチック片群Pに含まれるフレークをプラスチックの材質ごとに色分けした画像を生成する。図3(B)は、図3(A)のHSIデータを解析して生成された画像の例である。図3(B)の画像では、点(i)を含むフレークは赤色、点(ii)を含むフレークは青色に表示される。図3(B)の画像において、例えば、赤色のフレークはプラスチック片p1であり、青色のフレークはプラスチック片p2である。さらに処理部11bは、画像解析を行い、色ごとの面積比率を求め、原料組成比に換算する。図3(B)の例では、赤色の領域の面積と青色の領域の面積の比が、60:40である。したがって、プラスチック片p1の原料組成比が60%であり、プラスチック片p2の原料組成比が40%であると判断できる。このように第1検出部11は、振動フィーダ123によって搬送されるプラスチック片群Pに対し、ラインスキャン方式で原料組成比を逐次測定する。
【0027】
第2検出部21は、第1原料情報とは異なる種類の、第2原料情報を取得する。第2原料情報は、例えば比電荷である。比電荷を取得する場合、第2検出部21は、例えば図2に示すような帯電量センサ21aおよび重量センサ21bを備える。具体的には、振動フィーダ123上を搬送されるフレークを1つずつピッキングし、帯電量センサ21aおよび重量センサ21bで、帯電量および重量を測定する。帯電量を重量で除算することで、そのフレークの比電荷を測定できる。
【0028】
第1検出部11は、取得した第1原料情報を演算部13に入力する。第2検出部21は、取得した第2原料情報を演算部13に入力する。演算部13は、選別装置12の選別条件に関する設定値を出力する、解析モデルを備えている。この解析モデルは、第1原料情報および第2原料情報の少なくとも一方に基づき、最適な選別精度が得られるように選別条件の設定値を解析する。演算部13の解析モデルは、例えば、重回帰分析を用いてもよい。また、演算部13の解析モデルは、機械学習を用いてもよい。これらの解析モデルは、過去の原料情報、選別条件の設定値、および選別精度の組み合わせに基づいて解析を行うことで、現在の原料情報に適した選別条件の設定値を出力する。
【0029】
演算部13の解析結果である、選別条件の設定値は、制御部14に入力される。制御部14は、演算部13から入力された設定値に基づき、選別装置12の選別条件を制御する。例えば、制御部14は、X方向における仕切り板128、129の位置を制御してもよい。あるいは、制御部14は、帯電筒122の回転速度または傾き、直流電源126が第2電極125に印可する電圧などを制御してもよい。つまり「設定値」とは、仕切り板128、129のX方向における位置、帯電筒122の回転速度または傾き、直流電源126の電圧、等である。「設定値」に、これら複数のパラメータが含まれてもよい。
【0030】
ここで、演算部13は、第1検出部11によって取得された第1原料情報を、「第1処理周期」に基づいて処理する。また、演算部13は、第2検出部21によって取得された第2原料情報を、「第2処理周期」に基づいて処理する。第1処理周期および第2処理周期は、第1原料情報および第2原料情報についての要求データ量に基づいて定められる。「要求データ量」とは、演算部13が選別条件の設定値を解析するために要する、第1原料情報および第2原料情報のデータ量である。要求データ量は、第1原料情報および第2原料情報の測定データのばらつきによって定まる。測定データのばらつきが大きいほど、選別精度を確保するために、より多くの要求データ量が必要となる。
【0031】
一例として、原料組成比に基づいて選別条件の設定値を演算する場合、選別精度を確保するために、500フレーク分のデータ量が要求される。ラインスキャン方式では、例えば1分間に1000フレーク分の原料組成比を取得できる。この例では、要求データ量、すなわち「500フレーク分の原料組成比」が得られる周期は30秒となる。したがって、この例における「第1処理周期」は30秒である。
【0032】
一例として、比電荷に基づいて選別条件の設定値を演算する場合、選別精度を確保するために、200フレーク分のデータ量が要求される。ピッキング方式では、例えば1分間に10フレーク分の比電荷を取得できる。この例では、要求データ量、すなわち「200フレーク分の比電荷」が得られる周期は20分となる。したがって、この例における「第2処理周期」は20分である。
【0033】
上記の通り、第1原料情報および第2原料情報には、複数のフレークに対する測定データが含まれている。演算部13は、これらの測定データを統計的に処理し、平均値または中央値等の統計値を取得する。演算部13は、このような統計値を解析モデルに入力することで、選別条件の設定値を出力する。なお、上記した第1処理周期、第2処理周期、要求データ量、等の具体的数値は一例に過ぎず、変更可能である。ただし、本開示において、第1処理周期は、第2処理周期よりも短い。
【0034】
ここで、第1原料情報は、第1処理周期が短いため、投入される混合物に変動点があった場合に検出しやすいという利点がある。「変動点」とは、例えば、選別装置12に投入される混合物の元となった、家電製品の種類の変動等である。変動点の前後では、第1原料情報および第2原料情報が大きく変動することが想定される。第2処理周期が長いことに起因して、第2原料情報には変動点の前後のデータが含まれやすい。このように変動点の前後のデータが含まれた第2原料情報に基づいて選別条件の設定値を決めると、選別精度が低下すると考えられる。
【0035】
一方、第1原料情報の例示としての原料組成比は、回収率や純度などの選別精度との相関が小さい。第2原料情報の例示としての比電荷は、原料組成比と比較して、選別精度との相関が大きい。したがって、可能な限り第2原料情報を使用して選別条件の設定値を決めることで、選別精度をより高められる。
【0036】
上記事情を鑑みて、本実施の形態における演算部13は、図4に示すように、選別条件の設定値を出力する際の解析法を切り替える。図4(b)に示す「第1の解析法」において、演算部13は、第2原料情報を用いずに第1原料情報を解析モデルに入力し、選別条件の設定値を出力する。図4(c)に示す「第2の解析法」において、演算部13は、第1原料情報および第2原料情報の両方を解析モデルに入力し、選別条件の設定値を出力する。
【0037】
図4(a)は、第1原料情報および第2原料情報の変動を、時系列で並べたグラフの例示である。図4(a)において、第1原料情報および第2原料情報のプロットは、それぞれの処理周期ごとに算出した、要求データ量分の統計値を示している。本例における「統計値」は平均値であるが、平均値に代えて、中央値等を用いてもよい。図4(a)では、第1原料情報として原料組成比を例示し、第2原料情報として比電荷を例示している。時刻t1では、要求データ量分の第1原料情報の統計値が取得されているが、要求データ量分の第2原料情報の統計値が取得されていない。このため演算部13は、時刻t1~t2の間は、「第1の解析法」によって選別条件の設定値を出力する。
【0038】
図4(a)の時刻t2において、要求データ量分の第2原料情報の統計値が取得されている。このため時刻t2以降は、第1原料情報および第2原料情報の両方を用いて選別条件の設定値を出力したほうが、より好ましい選別精度が得られる可能性が高い。そこで演算部13は、時刻t2~t3の間は、「第2の解析法」によって選別条件の設定値を出力する。
【0039】
図4(a)の時刻t3において、第1原料情報の値が大きく変動している。このため、演算部13は、時刻t3が「変動点」であることを判定できる。例えば演算部13は、第1原料情報についての今回の統計値と前回の統計値とを比較し、その差分が閾値を超えたときに、「変動点」であると判定してもよい。変動点である時刻t3の前後では、第1原料情報だけではなく、第2原料情報も大きく変動していることが想定される。このため、時刻t3以降において、時刻t3よりも前に取得された第2原料情報を含む統計値を用いた場合、好ましい選別精度が得られない可能性が高い。そこで演算部13は、時刻t3~t4の間は、「第1の解析法」によって選別条件の設定値を出力する。
【0040】
図4(a)の時刻t4において、要求データ量分の第2原料情報の統計値が取得されている。しかしながら、時刻t4で取得される第2原料情報の統計値には、変動点よりも前の混合物の状態が含まれている。このため、時刻t4における第2原料情報の統計値は、現在の原料の状態が正確に反映されていない可能性がある。そこで演算部13は、時刻t4~t5の間は、「第1の解析法」の使用を継続する。
【0041】
図4(a)の時刻t5において、第2原料情報の統計値が取得されている。時刻t5は、変動点である時刻t3から、少なくとも第2処理周期が1回経過している。このため、時刻t5において得られる第2原料情報の統計値には、変動点よりも前の混合物の状態が含まれていない。言い換えると、時刻t4における第2原料情報の統計値はデータの信頼性が低く、時刻t5における第2原料情報の統計値はデータの信頼性が高い。そこで演算部13は、時刻t5以降は、「第2の解析法」によって選別条件の設定値を出力する。
【0042】
その後も、演算部13は、第1原料情報に基づいて変動点の有無を検出する。変動点が検出された場合、少なくとも第2処理周期が1回経過するまでは、第1の解析法を使用する。変動点の後、第2処理周期が1回経過した後は、第2の解析法を使用する。これにより、演算部13は、変動点前後のデータが混在した第2原料情報の使用を排除しながら、第1原料情報および第2原料情報の両方を用いて、高精度に選別条件の設定値を出力することができる。
【0043】
なお、第2の解析法において、第2原料情報のみで良好な適切な選別条件の設定値が出力できる場合は、第1原料情報を用いなくてもよい。つまり、第2の解析法において、少なくとも第2原料情報を用いればよい。
【0044】
以上説明したように、本開示に係る選別処理システム1は、複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する選別装置12と、選別装置12に投入される混合物に関する第1原料情報を取得する第1検出部11と、選別装置12に投入される混合物に関する、第1原料情報とは異なる種類の第2原料情報を取得する第2検出部21と、選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える演算部13と、演算部13が出力した設定値に基づき、選別装置12の選別条件を変更する制御部14と、を備える。演算部13は、第1処理周期ごとに第1原料情報を処理するとともに、第1処理周期よりも長い第2処理周期ごとに第2原料情報を処理する。演算部13は、第1原料情報を解析モデルに入力して設定値を出力する第1の解析法と、少なくとも第2原料情報を解析モデルに入力して設定値を出力する第2の解析法と、を切り替える。この選別処理システム1によれば、互いに異なる第1処理周期および第2処理周期で、第1原料情報および第2原料情報の統計値を取得する構成において、選別の精度を確保することが可能となる。
【0045】
また、演算部13は、第1処理周期ごとに処理された第1原料情報に基づき、選別装置12に投入される混合物の状態の変動点を検出し、変動点の後、少なくとも第2処理周期が経過するまで、第1の解析法を用いて設定値を出力してもよい。この構成によれば、変動点より前のデータが含まれる第2原料情報を用いて、選別条件の設定値が決められてしまうことを抑制できる。したがって、変動点を境に選別精度が低下してしまうことを抑制できる。
【0046】
また、第1原料情報は、プラスチック片群Pにおける材質ごとの原料組成比であってもよく、第1検出部11は、プラスチック片群Pを撮像するハイパースペクトルカメラ11aを有してもよい。ハイパースペクトルカメラ11aを用いて原料組成比を検出する構成では、例えば1分間に1000フレーク分の原料組成比を取得できる。したがって、変動点を検出するための第1原料情報として、原料組成比を好適に用いることができる。
【0047】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0048】
例えば、前記実施の形態では、選別処理システム1が選別する「複数種類の物体を含む混合物」として、プラスチック片群Pを例に説明した。しかしながら、選別処理システム1は、プラスチック片以外の物体の混合物を選別してもよい。この場合も、本開示は、互いに異なる第1処理周期および第2処理周期で、第1原料情報および第2原料情報を取得する構成において、選別の精度を確保するという課題の解決に寄与する。
【0049】
また、前記実施の形態では、第1原料情報等の統計値(平均値等)を解析モデルに入力すると説明した。しかしながら、統計値を算出することは必須ではない。例えば第1検出部11または第2検出部21による検出データをそのまま解析モデルに入力し、選別条件の設定値を出力してもよい。つまり、「第1処理周期ごとに第1原料情報を処理する」とは、統計値を算出することだけでなく、要求データ量分の第1原料情報を解析モデルに入力することが含まれる。
【0050】
また、前記実施の形態では、第1原料情報として原料組成比を例示し、第2原料情報として比電荷を例示した。その他の例示として、第1原料情報はプラスチック片群Pの投入量であってもよいし、選別装置12の環境中の温湿度であってもよい。第2原料情報は、フレーク中の水分量であってもよい。その他の種類の第1原料情報または第2原料情報を用いてもよい。演算部13は、3つ以上の原料情報に基づき、選別条件の設定値を出力してもよい。
【0051】
つまり、第1原料情報および第2原料情報とは異なる種類の第3原料情報として、プラスチック片群Pの投入量、選別装置12の環境中の温湿度、フレーク中の水分量、等が用いられてもよい。この場合、図4(b)における第1の解析法において、第1原料情報および第3原料情報が解析モデルに入力されてもよい。図4(c)における第2の解析法において、第1~第3原料情報、あるいは、第2原料情報および第3原料情報のみが解析モデルに入力されてもよい。
【0052】
また、演算部13、制御部14等の各機能は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、プログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。これらの機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。演算部13および制御部14の機能は、同一のハードウェアによって実現されてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、静電選別によってプラスチック片を選別する場合を説明した。しかしながら、選別の方式は限定されず、例えば比重選別であってもよいし、光学選別であってもよい。比重選別とは、プラスチック片の種類ごとに比重が異なることを利用した選別方式である。例えば、プラスチック片群を振動させたり媒体に浮かべたりすると、比重が重いプラスチック片が下降し、比重が軽いプラスチック片が上昇する。
【0054】
光学選別とは、プラスチック片の種類ごとに光の反射性が異なることを利用した選別方式である。光学選別では、検出光をプラスチック片群に照射し、その反射光を検出する。検出光としては、赤外線あるいはX線等、様々な波長帯の光を用いることができる。反射光あるいはラマン散乱光のスペクトル等を検出することで、プラスチック片を種類ごとに区別することができる。このように区別した後で、エアブロー等によってプラスチック片を選別してもよい。
【0055】
その他、上記した実施の形態あるいは変形例を、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…選別処理システム 11…第1検出部 11a…ハイパースペクトルカメラ 12…選別装置 13…演算部 14…制御部 21…第2検出部 P…プラスチック片群
【要約】
本開示に係る選別処理システムは、第1原料情報を取得する第1検出部と、第2原料情報を取得する第2検出部と、選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える演算部と、選別装置の選別条件を変更する制御部と、を備え、前記演算部は、第1処理周期ごとに前記第1原料情報を処理するとともに、前記第1処理周期よりも長い第2処理周期ごとに前記第2原料情報を処理し、前記第1原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第1の解析法と、少なくとも前記第2原料情報を前記解析モデルに入力して前記設定値を出力する第2の解析法と、を切り替える。
図1
図2
図3
図4