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特許7614464プラスチックの熱分解方法および熱分解装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】プラスチックの熱分解方法および熱分解装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20250107BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C08J11/10
B29B17/04 ZAB
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024550271
(86)(22)【出願日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2024008860
【審査請求日】2024-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北畑 繁
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-263980(JP,A)
【文献】特開2008-194545(JP,A)
【文献】特開2007-154201(JP,A)
【文献】特開平07-117050(JP,A)
【文献】特開平08-253601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/10
B29B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを含む第一プラスチック群を破砕して破砕物を得る工程と、
前記破砕物に液状物質を付着させる工程と、
前記液状物質が付着した前記破砕物と、前記プラスチックの熱分解を促進する固体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を熱分解容器に投入して、前記混合物を加熱することにより、前記プラスチックを熱分解する工程と、を備え
前記液状物質は、前記プラスチックの熱分解生成物の少なくとも一部と同一である、プラスチックの熱分解方法。
【請求項2】
プラスチックを含む第一プラスチック群を破砕して破砕物を得る工程と、
前記破砕物に液状物質を付着させる工程と、
前記液状物質が付着した前記破砕物と、前記プラスチックの熱分解を促進する固体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を熱分解容器に投入して、前記混合物を加熱することにより、前記プラスチックを熱分解する工程と、を備え、
前記液状物質は、前記プラスチックと同種のプラスチックを含む第二プラスチック群を、前記熱分解容器内で熱分解することにより得られた熱分解生成物の少なくとも一部を還流させたものである、プラスチックの熱分解方法。
【請求項3】
前記混合物を得る工程は、前記液状物質の揮発温度以下の温度条件で行われる、請求項1または請求項2に記載のプラスチックの熱分解方法。
【請求項4】
前記固体粒子は、マイクロ波発熱媒体および前記プラスチックの分解反応を化学的に促進する触媒の一方または両方を含む、請求項1または請求項2に記載のプラスチックの熱分解方法。
【請求項5】
前記プラスチックを熱分解する工程は、前記混合物に対してマイクロ波照射を行うことにより、前記混合物を加熱する工程を含む、請求項1または請求項2に記載のプラスチックの熱分解方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のプラスチックの熱分解方法に用いられる熱分解装置であって、
前記混合物を得る工程が実施される混合容器と、
前記プラスチックを熱分解する工程が実施される熱分解容器と、
前記熱分解容器内の前記熱分解生成物のスラリー成分から液体成分と熱分解残渣を分離する固液分離装置と、を備え、
前記液体成分の一部は、前記液状物質として用いられる、熱分解装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のプラスチックの熱分解方法に用いられる熱分解装置であって、
前記混合物を得る工程が実施される混合容器と、
前記プラスチックを熱分解する工程が実施される熱分解容器と、
前記熱分解容器内の前記熱分解生成物のガス成分を冷却して液化させて液体成分を回収する冷却器と、を備え、
前記液体成分の一部は、前記液状物質として用いられる、熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチックの熱分解方法および熱分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは工業生産が開始されてから現在に至るまで、製品使用時に要求される諸特性を満足するための様々な化学構造が提案され、上市されてきた。近年では使用時の耐久性をさらに向上させるため、高強度の繊維およびフィラー、酸化防止剤等の各種添加剤が配合されており、プラスチックの多様化トレンドは拡大の一途をたどっている。
【0003】
こうした背景により、製品としての役割を終えて回収されたプラスチックは単一種のプラスチックではなく、多種多様なプラスチックが混在していることが多い。多種多様なプラスチックが混在した状態では、元来プラスチックが有する諸特性を発現できないため、使用済みプラスチックを熱分解して、有用な資源としてリサイクルする技術が重要となっている。
【0004】
特許文献1には、マイクロ波を吸収して発熱する発熱媒体(以下「マイクロ波発熱媒体」とも記す。)およびプラスチックの熱分解を促進する触媒化合物を混合したプラスチックに、マイクロ波を照射することで、プラスチックを熱分解させる方法が開示されている。
【0005】
特許文献2、特許文献3および特許文献4には、プラスチックの熱分解方法が開示されており、プラスチックの熱分解生成物の一部を熱分解容器に還流することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-220179号公報
【文献】特開平10-204443号公報
【文献】特表2012-530810号公報
【文献】国際公開第2021/230312号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、プラスチックを破砕することで、プラスチックと、マイクロ波発熱媒体および触媒化合物との接触面積を増大させ、マイクロ波照射による熱分解速度の向上および加熱効率の向上を図っている。
【0008】
しかし、様々な使用済みプラスチックを、マイクロ波発熱媒体および触媒化合物と同等の粒径にまで小粒径化することは難しい。このため、これらを混合する際には分級が生じ、マイクロ波発熱媒体および触媒化合物が混合物下部に局在化し、混合物の均一性が損なわれる。混合物の均一性が損なわれると、マイクロ波が照射された際に、混合物中の温度が不均一となり、プラスチックの熱分解効率が低下するという課題がある。
【0009】
特許文献2、3および4では、プラスチックの熱分解生成物の一部を熱分解容器に還流する。この際、熱分解容器内の温度と、還流される熱分解生成物の温度とが異なるため、熱分解容器内の温度が変動し、使用済みプラスチックを一定温度で熱分解させることが困難になり、プラスチックの熱分解効率が低下するという課題がある。
【0010】
本開示の目的は、熱分解効率が良好なプラスチックの熱分解方法および熱分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のプラスチックの熱分解方法は、
プラスチックを含む第一プラスチック群を破砕して破砕物を得る工程と、
前記破砕物に液状物質を付着させる工程と、
前記液状物質が付着した前記破砕物と、前記プラスチックの熱分解を促進する固体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を熱分解容器に投入して、前記混合物を加熱することにより、前記プラスチックを熱分解する工程と、を備える、プラスチックの熱分解方法である。
【0012】
本開示の熱分解装置は、上記のプラスチックの熱分解方法に用いられる熱分解装置であって、
前記混合物を得る工程が実施される混合容器と、
前記プラスチックを熱分解する工程が実施される熱分解容器と、を備える、熱分解装置である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、熱分解効率が良好なプラスチックの熱分解方法および熱分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係るプラスチックの熱分解方法を示すフローチャートである。
図2】実施形態1の破砕物に液状物質を付着させる工程を説明するための図である。
図3】実施形態1の混合物を得る工程を説明するための図である。
図4】実施形態1のプラスチックを熱分解する工程を説明するための図である。
図5】従来の混合物を得る工程を説明するための図である。
図6】従来のプラスチックを熱分解する工程を説明するための図である。
図7】実施の形態2に係るプラスチックの熱分解装置を用いた熱分解システムの一例を示す図である。
図8】実施の形態2に係るプラスチックの熱分解装置を用いた熱分解システムの一例を示す図である。
図9】実施の形態2に係るプラスチックの熱分解装置を用いた熱分解システムの一例を示す図である。
図10】実施の形態2に係るプラスチックの熱分解装置を用いた熱分解システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について説明する。なお、図面において、長さ、幅、厚さ、深さ等の寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0016】
実施の形態1.
図1に示されるように、本開示の一実施形態(以下「実施形態1」とも記す。)に係るプラスチックの熱分解方法は、プラスチックを含む第一プラスチック群を破砕して破砕物を得る工程(S1)と、破砕物に液状物質を付着させる工程(S2)と、液状物質が付着した破砕物と、プラスチックの熱分解を促進する固体粒子と、を混合して混合物を得る工程(S3)と、混合物を熱分解容器に投入して、混合物を加熱することにより、プラスチックを熱分解する工程(S4)と、を備える、プラスチックの熱分解方法である。
【0017】
実施形態1のプラスチックの分解方法は、熱分解効率が良好である。この理由は、以下の通りと推察される。
【0018】
実施形態1のプラスチックの分解方法では、プラスチックの破砕物に液状物質を付着させて破砕物の表面を濡れた状態としたのちに、液状物質が付着した破砕物と、プラスチックの熱分解を促進する固体粒子と、を混合して混合物を得る。プラスチックの破砕物の表面が濡れた状態であると、破砕物表面に固体粒子を担持できるようになり、プラスチックの破砕物と、固体粒子との粒径が同等でなくとも、破砕物と固体粒子の分級を抑制できる。また、混合物を熱分解容器に投入した後にも、破砕物と固体粒子の分級を抑制できる。これにより、熱分解容器内で混合物の均一性を保持でき、プラスチックの破砕物と固体粒子とを十分接触させた状態で、プラスチックを所望の温度で安定して熱分解させることができる。
【0019】
なお、従来、プラスチックを熱分解する際に、プラスチックを10mm程度にまで破砕することは行われていた。しかし、プラスチックの熱分解反応を促進する固体粒子は通常1mm以下の細粒であるため、プラスチックの破砕物と固体粒子とを単純に混合するだけでは、混合物中で分級が起こり、固体粒子が混合物の下部に局在化し、混合物の均一性が損なわれていた。この状態では、プラスチックの破砕物と固体粒子とを十分接触させた状態で熱分解反応させることができない。また、熱分解反応中に、混合物中で温度のばらつきが生じる。よって、プラスチックを安定して熱分解させることができなかった。
【0020】
<破砕物を得る工程>
破砕物を得る工程では、プラスチックを含む第一プラスチック群を破砕して破砕物を得る。
【0021】
実施形態1において熱分解の処理対象となる第一プラスチック群に含まれるプラスチックは特に制限されない。例えば、手解体や工場内分別といった方法で回収される単一プラスチック、および、特段の高純度化処理がなされずに回収されたままの混合プラスチック等の使用済みプラスチックでもよい。
【0022】
単一プラスチックおよび混合プラスチックに含まれる物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリアミド等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタンおよびメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴムおよびフッ素ゴム等の架橋型ゴムが挙げられる。これらの物質は繊維やタルク等のフィラー、カーボンブラックや二酸化チタン等のフィラー、酸化防止剤や紫外線吸収剤、可塑剤やパラフィンワックスといった添加物を含有していてもよい。これらの処理対象となるプラスチックは、2種以上が混ざり合っていてもよく、その混合比率に特段の制約はない。
【0023】
処理対象となるプラスチックが使用済みプラスチックの場合、廃棄された製品形状のままではプラスチックの熱分解反応を促進する固体粒子と均一に混合することが困難である。このため、プラスチックは、破砕機等の機械で破砕して、破砕物の状態にする。テレビの筐体やバスタブのような厚肉成形品はそのまま破砕処理を行うことができる。一方、発泡スチロールや農業用フィルムのような軟質系廃プラスチックはそのままでは細かく破砕することができない。このため、軟質系廃プラスチックは、破砕処理の前にインゴットやブロック状に圧縮し、その後破砕機で細かく破砕することが好ましい。
【0024】
第一プラスチック群の破砕物の最大差し渡し径は、固体粒子との混合時に、固体粒子をプラスチックの破砕物表面に分散して付着しやすくするため、1mm以上20mm以下が好ましく、5mm以上10mm以下がより好ましい。
【0025】
第一プラスチック群の破砕方法は、特に制限されない。例えば、圧縮、衝撃、せん断、摩擦等の方法を利用した破砕機を用いることができる。具体的には、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、インパクトクラッシャー、スクリュークラッシャー、凍結破砕機等の装置が使用される。
【0026】
<破砕物に液状物質を付着させる工程>
破砕物に液状物質を付着させる工程では、破砕物に液状物質を付着させる。破砕物に液状物質を付着させる工程では、図2に示されるように、混合容器11に破砕物2を投入し、混合容器11内の破砕物2に液状物質(図示せず)を散布して、破砕物2に液状物質を塗布することができる。また、混合容器へ投入する前に、破砕物に液状物質を塗布してもよい。破砕物に液状物質を塗布すると、粉砕物の表面が濡れた状態となり、後述の混合工程において、粉砕物の表面に固体粒子を担持させやすくなる。
【0027】
破砕物に液状物質を散布する方法は特に制限されない。例えば、スプレー、動力噴霧器、滴下装置等を用いることができる。破砕物に液状物質を散布する際は、破砕物を攪拌棒等でかき混ぜながら行ってもよい。
【0028】
破砕物に散布する液状物質の量は、破砕物の表面を濡れた状態にすることができる限り、特に制限されない。例えば、破砕物と液状物質との質量比は、破砕物:液状物質=99:1~75:25とすることができる。
【0029】
破砕物に液状物質を付着させる工程は、液状物質の揮発温度以下の温度条件で行われることが好ましい。これによると、液状物質の揮発が抑制されるため、破砕物の表面を濡れた状態に保つことができる。
【0030】
≪液状物質≫
液状物質は、第一プラスチック群に含まれるプラスチックの熱分解生成物の少なくとも一部と同一であることが好ましい。これによると、処理対象のプラスチックの熱分解生成物から、液状物質を分離する工程が不要になり、装置構成の簡略化、および、プラスチックの熱分解のランニングコスト抑制を実現できる。
【0031】
液状物質は、第一プラスチック群に含まれるプラスチックと同種のプラスチックを含む第二プラスチック群を、熱分解容器内で熱分解することにより得られた熱分解生成物の少なくとも一部を還流させたものであることが好ましい。プラスチックの熱分解生成物には熱分解が不十分な重質成分が含まれる。第二プラスチック群の熱分解生成物の一部を還流して、第一プラスチック群の破砕物に散布する液状物質として使用することで、重質成分を再度熱分解して軽質化できるため、熱分解生成物の価値を高めることが可能となる。
【0032】
<混合物を得る工程>
混合物を得る工程では、液状物質が付着した破砕物と、プラスチックの熱分解を促進する固体粒子と、を混合して混合物を得る。混合物を得る工程では、図3に示されるように、液状物質が付着した破砕物2が収容された混合容器11に、固体粒子3を投入して混合して、混合物4を得ることができる。実施形態1では、破砕物の表面に液状物質が付着しており、破砕物の表面が濡れた状態となっているため、破砕物の表面に固体粒子が担持されやすく、破砕物と固体粒子との分級が抑制される。
【0033】
従来技術では、破砕物の表面に液状物質が付着しておらず、破砕物の表面が濡れていない。このため、図5に示されるように、破砕物2と固体粒子3との分級が生じ、混合後に固体粒子3が混合容器11の下部に局在化する。
【0034】
混合方法は、投入した材料を混合できれば、人力による混合または動力による混合のいずれを用いてもよい。
【0035】
混合物を得る工程は、液状物質の揮発温度以下の温度条件で行われることが好ましい。これによると、液状物質の揮発が抑制されるため、破砕物の表面を濡れた状態に保つことができる。
【0036】
≪固体粒子≫
固体粒子は、プラスチックの熱分解を促進する。固体粒子は、マイクロ波照射時に急速に昇温して接触するプラスチックを迅速に熱分解温度以上に昇温させる効果、または、プラスチックの分解反応を化学的に促進する効果、あるいは、これらの両方の効果を有する。以下、これらの効果を固体粒子の触媒効果とも記す。
【0037】
≪マイクロ波発熱媒体≫
固体粒子の触媒効果のうち、マイクロ波照射時に急速に昇温して接触するプラスチックを迅速に熱分解温度以上に昇温させる効果について説明する。
【0038】
物体を加熱する一手段として、マイクロ波照射による加熱が知られている。マイクロ波照射による被照射物質の加熱度合は、被照射物質固有の比誘電率(εr)と誘電損失角(tanδ)の積である誘電損失係数(εr×tanδ)に比例して決まる。マイクロ波加熱は被加熱物質を選択的に直接加熱できるため、伝熱加熱方式に比べると、被照射物質を均一かつ迅速に加熱できるという利点がある。固体粒子として、マイクロ波照射時に急速に昇温するマイクロ波発熱媒体を用いることにより、プラスチックを均一かつ迅速に加熱できる。
【0039】
マイクロ波発熱媒体としては、誘電損失係数の高い物質を用いることがマイクロ波照射時の加熱効率向上に効果的である。マイクロ波発熱媒体としては、グラファイト、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、炭化硼素といった炭素材料、シリコン、シリコンカーバイド、酸化鉄、鉄、アルミニウム、酸化銅、硫化銀、臭化銅、塩化銅、コバルト、四酸化三コバルト、酸化ニッケル、二酸化マンガン、モリブデン、硫化モリブデン、硫化鉛、硼化チタン、バナジウム、タングステン、三酸化タングステン、亜鉛、塩化亜鉛等を使用することができる。
【0040】
固体粒子として誘電損失係数の大きいマイクロ波発熱媒体を選定することが好ましい。固体粒子と破砕物とを均一に混合し、固体粒子をマイクロ波照射加熱させた場合、熱分解容器内の温度むらが解消され、プラスチックを一定温度で熱分解させやすい。
【0041】
一方、熱分解容器中で破砕物と固体粒子とが分級している場合、固体粒子をマイクロ波照射加熱させると、固体粒子が集中する熱分解容器の下部が選択的に加熱されるため、熱分解容器内で温度むらが発生し、プラスチックを一定温度で熱分解させることができない。
【0042】
≪分解反応促進触媒≫
固体粒子として、プラスチックの分解反応を化学的に促進する触媒(「分解反応促進触媒」とも記す。)を用いることにより、プラスチックの分解反応を促進することができる。分解反応促進触媒としては、石油の接触分解時に使用されるゼオライト、カーボン系をはじめとする固体酸触媒、塩基性金属酸化物系固体触媒を使用することができる。
【0043】
分解反応促進触媒として、具体的には、固体酸触媒の結晶性シリカ・アルミナ化合物、無定形シリカ・アルミナ化合物、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、シリカ・マグネシア化合物、酸化亜鉛、ボーキサイト、天然土(活性白土、酸性白土等)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化モリブデン、硫酸化ジルコニア、硫酸化ナノグラフェン、活性炭等が挙げられる。塩基性金属酸化物系固体触媒としては、酸化バリウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化ルビジウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化銅、酸化コバルト、酸化亜鉛等を使用することができる。
【0044】
固体粒子は、マイクロ波発熱媒体および前記プラスチックの分解反応を化学的に促進する触媒の一方または両方を含むことが好ましい。固体粒子は、マイクロ波発熱媒体からなってもよいし、分解反応促進触媒からなってもよいし、また、マイクロ波発熱媒体および分解反応促進触媒の両方からなってもよい。
【0045】
固体粒子の大きさは、プラスチックの破砕物表面に分散して付着しやすくするため、0.01μm以上500μm以下が好ましく、0.1μm以上250μm以下が好ましい。
【0046】
破砕物と固体粒子との混合比は、破砕物の熱分解を促進できる限り、特に制限されない。例えば、破砕物と固体粒子との混合比(質量比)は、破砕物:固体粒子=99:1~50:50とすることができる。
【0047】
<プラスチックを熱分解する工程>
プラスチックを熱分解する工程では、混合物を熱分解容器に投入して、混合物を加熱することにより、プラスチックを熱分解する。プラスチックを熱分解する工程では、図4に示されるように、破砕物2と固体粒子3との混合物4を、熱分解容器12に投入して、混合物4を加熱する。実施形態1では、破砕物の表面に固体粒子が担持されやすいため、熱分解容器に投入後の混合物においても、破砕物と固体粒子との分級が抑制されている。これにより、プラスチックの破砕物と固体粒子とを十分接触させた状態で、熱分解容器内の温度を一定に保ちつつ、プラスチックの破砕物を所望の温度で安定して熱分解させることができ熱分解効率の良い使用済みプラスチックの熱分解が可能となる。
【0048】
従来技術では、破砕物の表面に液状物質が付着しておらず、破砕物の表面が濡れていないため、図6に示されるように、熱分解容器12中で破砕物2と固体粒子3とが分級する。この状態で熱分解を実施しても、破砕物と固体粒子とが十分に接触していないため、固体粒子の触媒効果が得られず、熱分解効率が低下する。
【0049】
加熱方法は、特に制限されない。例えば、マイクロ波照射による加熱、ヒーターやボイラーを用いた加熱、加熱水蒸気の吹込みによる加熱を用いることができる。マイクロ波加熱は被加熱物質を選択的に直接加熱できるため、被照射物質を均一かつ迅速に加熱できる。このため、プラスチックを熱分解する工程は、混合物に対してマイクロ波照射を行うことにより、混合物を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0050】
マイクロ波を発生させる方式は、特に制限されない。例えば、安価で大量に生産されているマグネトロンや、発振周波数の制御や位相の制御がマグネトロンよりも容易な半導体発振器を用いることができる。
【0051】
マイクロ波照射により加熱を行う場合、試料形状によっては局所加熱が起こる場合がある。この局所加熱の軽減策として、複数口からマイクロ波を照射する方法、スターラーファンを用いたマイクロ波を乱反射させる方法等が挙げられる。
【0052】
実施の形態2.
本開示の一実施形態(以下「実施形態2」とも記す。)に係るプラスチックの熱分解装置は、実施の形態1の熱分解方法に用いられる熱分解装置であって、混合物を得る工程が実施される混合容器と、プラスチックを熱分解する工程が実施される熱分解容器と、を備える、熱分解装置である。
【0053】
図7図10は、実施の形態2に係るプラスチックの熱分解装置を用いた熱分解システムの一例を示す図である。図7図10において、四角の枠内に記載されている構成が、実施の形態2に係るプラスチックの熱分解装置の構成である。実施形態2に係るプラスチックの熱分解装置は、液状物質が付着したプラスチックの破砕物と固体粒子とを混合して混合物を作製する混合容器、破砕物と固体粒子との混合物を加熱して熱分解させる熱分解容器とを備える。
【0054】
混合容器において、液状物質が付着した破砕物と、プラスチックの熱分解を促進する固体粒子とが混合されて、混合物が作製される。混合容器は、異なる種類や形状のプラスチックと、固体粒子とを効果的に混合し、均一な混合物を作製するための役割を果たす。投入した材料を混合できる限り、人力または動力による混合を行う混合容器のどちらでも構わない。動力を付帯した混合容器の場合、混合容器内部に設置した回転羽が回転する形態、混合容器本体が上下回転する形態、傾斜した混合容器が傾斜軸を中心に回転する形態等を用いることができる。混合容器は、プラスチックの熱分解生成物の一部を還流するための投入口を有していてもよい。
【0055】
加熱容器において、混合物が加熱され、プラスチックが熱分解される。投入した混合物を加熱できる限り、加熱容器に備えられる加熱手段は特に制限されない。加熱手段は、例えば、マイクロ波照射器、ヒーター、ボイラー、加熱水蒸気発生器等を用いることができる。
【0056】
熱分解装置は、更に、破砕物に液状物質に散布して、破砕物に液状物質を付着させるスプレーを備えることができる。スプレーの配置は、破砕物が混合容器内で固体粒子と混合される前に、破砕物に液状物質を散布できる限り、特に制限されない。例えば、スプレーは、混合容器に収容された破砕物に液状物質を散布するように、混合容器に取り付けられていてもよく、貯蔵容器に収容された破砕物に液状物質を散布するように、貯蔵容器に取り付けられていてもよく、また、貯蔵容器と混合容器との間の搬送経路で破砕物に液状物質を散布するように、搬送経路に取り付けられていてもよい。
【0057】
熱分解装置は、プラスチックの破砕物を内部に貯め置く貯留容器、熱分解容器から発生するガス成分を冷却して液化させる冷却器、熱分解容器から発生するスラリー成分から液体成分と熱分解残渣を分離する固液分離装置を含むことができる。熱分解装置は、更に、塩素固定化槽、凝縮器、バーナ等、プラスチックの熱分解装置として一般的に組み合わされる装置を備えることもできる。
【0058】
図7に示される熱分解システムでは、貯蔵容器に貯蔵されている第一プラスチック群の破砕物に、液状物質が付着される。液状物質は、第一プラスチック群の熱分解の前に、第二プラスチック群を熱分解容器内で熱分解して得られた熱分解物のスラリー成分から回収される液体成分Bの一部を、貯蔵容器に還流したものが用いられる。具体的には、スラリー成分が固液分離装置で液体成分Bと熱分解残渣とに分別され、液体成分Bが貯蔵容器内の破砕物に散布される。次に、液状物質が付着した破砕物と固体粒子とが混合容器に投入され、混合されて混合物が作製される。混合物は熱分解容器に投入され、加熱されることにより、プラスチックが熱分解して熱分解物が得られる。
【0059】
次に、熱分解容器内の熱分解物のスラリー成分は、固液分離装置で液体成分Bと熱分解残渣とに分別される。新たな液体成分Bの一部は、熱分解システムの次サイクルにおいて、液状物質として用いられ、他の一部は、回収液として回収される。熱分解物のガス成分は、冷却機で冷却されて液体成分Aとなり、回収液として回収される。回収液は、精製による高純度化を経て化学原料として、あるいは燃料として使用可能であり、これらの用途に限らず幅広く適用できる。
【0060】
図8に示される熱分解システムは、液体成分Bが貯蔵容器ではなく、混合容器に還流され、第一プラスチック群の破砕物への液状物質の付着が、貯蔵容器内ではなく、混合容器内で行われる点以外は、図7に示される熱分解システムと同一の構成を有する。
【0061】
図7および図8に示される熱分解システムにおいて、熱分解生成物のスラリー成分から回収される液体成分Bは、熱分解生成物のガス成分を冷却して回収される液体成分Aよりも重質成分を多く含んでいる。このため、プラスチックの破砕物に散布する液状物質として液体成分Bを用いることで、液体成分Bに含まれる重質成分を再度熱分解して軽質化できるため、熱分解生成物の価値を高めることが可能となる。
【0062】
プラスチックの破砕物に液状物質として液体成分Bを還流して散布する箇所については、貯留容器または混合容器に限られず、貯留容器から混合容器間の搬送時でもよい。
【0063】
図9に示される熱分解システムは、液状物質が熱分解生成物のスラリー成分から回収される液体成分Bおよびガス成分を冷却して回収される液体成分Aを足し合わせた回収液の一部である点以外は、図7に示される熱分解システムと同一の構成を有する。
【0064】
図9に示される熱分解システムでは、還流される液状物質として液体成分Bの一部が使用されるため、液体成分B中の重質成分を再度熱分解して軽質化できる。さらに、還流される液状物質として軽質成分が多く含まれる液体成分Aの一部が使用されるため、還流される液状物質の粘度を下げることができ、還流配管の閉塞抑制、移送圧力の低下といった利点を享受できる。
【0065】
図10に示される熱分解システムは、液状物質が熱分解生成物のガス成分を冷却して回収される液体成分Aの一部である点以外は、図7に示される熱分解システムと同一の構成を有する。
【0066】
図10に示される熱分解システムでは、還流される液状物質として軽質成分を多く含む液体成分Aが使用されるため、還流される液状物質の粘度をさらに低減させることができ、還流配管の閉塞抑制、移送圧力の低下といった利点を享受できる。
【0067】
図9および図10に示される熱分解システムにおいて、プラスチックの破砕物に液状物質として回収液を還流して散布する箇所については、貯留容器に限られず、混合容器でもよく、貯留容器から混合容器間の搬送時でもよい。
【実施例
【0068】
[実施例1]
実施例1では、図8に示される熱分解システムを用いて、プラスチックの熱分解を行った。熱分解対象のプラスチックとして、使用済み家電製品由来の混合プラスチックから回収したポリスチレン破砕物を使用した。ポリスチレン破砕物は95重量%以上がポリスチレン樹脂であり、その他の構成要素としてポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、PS/PPE樹脂等を含む。
【0069】
ポリスチレン破砕物は、最大差し渡し径が5mm~10mm、肉厚が1~2mmのフレーク状破砕物である。ポリスチレン破砕物20.0gを混合容器に入れ、別途調整したポリスチレン破砕物の熱分解生成物から回収した液状物質4.0mlを散布して、ポリスチレン破砕物に液状物質を付着させた。液状物質が付着したポリスチレン破砕物に、マイクロ波発熱媒体として酸化鉄(II,III;マグネタイト、高純度化学研究所)粒子(粒子径180μm以下)4.0gを攪拌混合して混合物を得た。混合物を、熱分解容器である石英ガラスのバイアルに移し、マイクロ波加熱装置に設置した。この時点で、バイアル内で混合物の分級は観察されなかった。
【0070】
加熱源として、2.45GHzのマグネトロン発振器を使用し、マイクロ波加熱に供されなかった反射電力を計測し、反射電力を最小化するようにE/Hチューナを逐次調整することで、投入したマイクロ波の大部分を熱分解反応に供するようにし、マイクロ波加熱を制御した。
【0071】
マイクロ波加熱装置は、導波管タイプのシングルモード照射方式とした。導波管の側面に温度測定用の貫通穴を設け、貫通穴を通して放射温度計で試料(混合物)温度を測定した。放射温度計は最低測定可能温度が280℃のものを使用した。放射温度計による温度測定部位は、試料(混合物)を充填したバイアルの中央部分とした。
【0072】
導波管の一部に熱分解で生成した液体およびガスを排出するための排出口を設け、排出口と還流設備を接続した。還流設備は、ガス流路を5℃の循環水で常時冷却する構造とし、ポリスチレン破砕物の熱分解反応で生成した液体成分および還流設備において液化されたガス成分が還流設備下部に滞留するようにした。
【0073】
熱分解時の雰囲気空気は窒素とし、マイクロ波照射装置の導波管内に常時0.4L/minの窒素が流入するようにした。マイクロ波の照射電力は1分間に10Wずつ投入電力を増大させるプロファイルとした。この結果、試料温度が400℃に到達するまで、マイクロ波照射開始から10分を要した。試料温度が400℃に到達した時点で投入電力を調整し、400℃で10分間保持して熱分解反応を進行させた。
【0074】
400℃で10分間の熱分解を行い、マイクロ波照射を停止後、バイアルが常温まで低下した時点でマイクロ波加熱装置内からバイアルを取り出し、ポリスチレン破砕物の残渣量を計測した。残渣は4.1gであった。残渣は、酸化鉄4.0gを含むため、残渣中のポリスチレン粉砕物は0.1gであった。投入したポリスチレン破砕物20.0gの0.5重量%が残渣として残存した。よって、反応容器に投入したポリスチレン破砕物のほぼ全量が熱分解されたことがわかった。還流設備の下部には茶褐色の液化生成物が滞留していた。
【0075】
[比較例1]
比較例1の熱分解システムの構成、熱分解対象のプラスチック(ポリスチレン破砕物20.0g)、混合容器、マイクロ波加熱装置、マイクロ波発熱媒体、熱分解容器(石英ガラスのバイアル)、および、マイクロ波照射装置は、実施例1と同一とした。ポリスチレン破砕物と酸化鉄(II,III)粒子を混合の際には、実施例1で用いた液状物質を散布せず、ポリスチレン破砕物20.0gと酸化鉄(II,III)粒子4.0gとを攪拌混合後、石英ガラスのバイアルに移し、マイクロ波加熱装置に設置した。この時点で、バイアル下部に酸化鉄(II,III)粒子が分級している状態が確認された。
【0076】
マイクロ波加熱時の操作は実施例1と同様にし、熱分解を行ったところ、試料温度が400℃に到達するまで、マイクロ波照射開始から15分要した。よって、比較例1は実施例1よりも所望温度に到達するまでに長時間を要することがわかった。
【0077】
400℃で10分間の熱分解を行い、マイクロ波照射を停止後、バイアルが常温まで低下した時点で、マイクロ波加熱装置内からバイアルを取り出し、ポリスチレン破砕物の残渣量を計測した。残渣は10.5gであった。残渣は、酸化鉄4.0gを含むため、残渣中のポリスチレン粉砕物は6.5gであった。投入したポリスチレン破砕物20.0gの32.5重量%が残渣として残存した。よって、比較例1は実施例1よりも熱分解効率が劣ることがわかった。
【0078】
表1にマイクロ波照射時の加熱時間および試料温度を記載した。実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の試料の昇温が速いことがわかる。実施例1ではバイアル内のポリスチレン破砕物表面にマイクロ波発熱媒体が担持され、マイクロ波発熱媒体がバイアル内に均一に分散しているため、試料がムラなく一様に加熱され、試料の熱分解が促進され、優れた熱分解効率を示した。
【0079】
一方、比較例1は、バイアル下部にマイクロ波発熱媒体の酸化鉄(II,III)粒子が分級し、バイアル下部が局所加熱されたと推定できる。よって、バイアル下部は所望の400℃付近まで昇温されたが、バイアル上部のポリスチレン破砕物は熱分解温度まで昇温されず、バイアル内で温度ムラが発生した状態で熱分解が行われた結果、残渣として多量のポリスチレン破砕物が残留した。
【0080】
【表1】
【0081】
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形したりすることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
2 破砕物、3 固体粒子、4 混合物、11 混合容器、12 熱分解容器。
【要約】
プラスチックを含む第一プラスチック群を破砕して破砕物を得る工程と、前記破砕物に液状物質を付着させる工程と、前記液状物質が付着した前記破砕物と、前記プラスチックの熱分解を促進する固体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、前記混合物を熱分解容器に投入して、前記混合物を加熱することにより、前記プラスチックを熱分解する工程と、を備える、プラスチックの熱分解方法である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10