(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御プログラム及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20250107BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 A
(21)【出願番号】P 2024568978
(86)(22)【出願日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2023020008
【審査請求日】2024-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】龍 進吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 達也
(72)【発明者】
【氏名】淺原 隆
(72)【発明者】
【氏名】梅田 周作
(72)【発明者】
【氏名】落合 麻里
(72)【発明者】
【氏名】末廣 雄
(72)【発明者】
【氏名】武安 政明
(72)【発明者】
【氏名】山内 尚久
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-109495(JP,A)
【文献】特開2021-176100(JP,A)
【文献】国際公開第2006/093046(WO,A1)
【文献】特開2014-29655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される通信制御装置において、
前記車両の位置を取得する位置取得部と、
前記車両の後方を走行する複数の後方車両のそれぞれから、前記後方車両の位置と、前記車両と前記後方車両との共存範囲を示す指標であり、前記車両と前記後方車両とが前記共存範囲に存在する状態で前記車両が事象を観測したならば、観測された前記事象を示す事象情報を送信するべきことを前記車両へ要求する指標である共存範囲指標と、を受信する受信部と、
前記事象情報を送信するべき前記後方車両の存在範囲を示す通信範囲の決定に使用する後方車両を、前記車両の位置と、前記後方車両の位置と、前記共存範囲指標とに基づいて、前記複数の後方車両から抽出する車両抽出部と、
抽出された前記後方車両の位置に基づいて、前記通信範囲を決定する範囲決定部と、
を備える通信制御装置。
【請求項2】
前記車両抽出部は、
それぞれの前記後方車両について前記共存範囲指標の示す前記共存範囲に前記車両と前記後方車両とが共存するかを判定し、共存すると判定した前記後方車両を、前記通信範囲の決定に使用する前記後方車両として抽出する請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記通信制御装置を搭載する前記車両は、さらに、
前記車両の前方で生じる前記事象を検知する検知範囲を持つセンサ群を搭載しており、
前記車両抽出部は、
それぞれの前記後方車両について前記後方車両に固定された前記共存範囲と前記車両の前記検知範囲とに重複範囲があるかを判定し、前記重複範囲があると判定した前記後方車両を、前記通信範囲の決定に使用する前記後方車両として抽出する請求項1または請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記範囲決定部は、
抽出された前記後方車両のうち前記位置が前記車両の前記位置に最も遠い前記後方車両の前記位置に基づいて、前記通信範囲を決定する請求項1
または請求項
2に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記通信制御装置は、さらに、
前記車両の前方を走行する前方車両が前記事象を観測したと仮定した場合に、
前記前方車両の前記後方車両に該当する前記車両が、前記事象を回避するための回避時間に基づいて、前記共存範囲指標を計算し、前記共存範囲指標を送信する指標計算部を、
備える請求項1
または請求項
2に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記指標計算部は、
一定速さと前記回避時間とから計算される前記車両の走行距離を、前記共存範囲指標として計算する請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記一定速さは、
走行している前記車両の速さと、前記車両の周辺を走行している複数の周辺車両の平均速さと、走行している前記車両と走行している前記複数の周辺車両との全体の平均速さと、固定値として規定されている速さとの、いずれかである請求項6に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記指標計算部は、
定期的または不定期的に、前記共存範囲指標を再計算し、再計算された前記共存範囲指標を送信する請求項
5に記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記通信制御装置は、さらに、
前記受信部が前記車両と異なる車両を送信先として送信された前記共存範囲指標を受信したときに、受信された前記共存範囲指標を前記送信先に中継する中継決定部を備えた請求項1
または請求項
2に記載の通信制御装置。
【請求項10】
前記中継決定部は、
前記受信部が前記車両と異なる車両を送信先として送信された前記事象情報を受信したときに、受信された前記事象情報を前記事象情報の前記送信先に中継する請求項9に記載の通信制御装置。
【請求項11】
車両に搭載されるコンピュータである通信制御装置に、
前記車両の位置を取得する位置取得処理と、
前記車両の後方を走行する複数の後方車両のそれぞれから、前記後方車両の位置と、前記車両と前記後方車両との共存範囲を示す指標であり、前記車両と前記後方車両とが前記共存範囲に存在する状態で前記車両が事象を観測したならば、観測された前記事象を示す事象情報を送信するべきことを前記車両へ要求する指標である共存範囲指標と、を受信する受信処理と、
前記事象情報を送信するべき前記後方車両の存在範囲を示す通信範囲の決定に使用する後方車両を、前記車両の位置と、前記後方車両の位置と、前記共存範囲指標とに基づいて、前記複数の後方車両から抽出する車両抽出処理と、
抽出された前記後方車両の位置に基づいて、前記通信範囲を決定する範囲決定処理と、
を実行させる備える通信制御プログラム。
【請求項12】
車両に搭載されるコンピュータである通信制御装置が、
前記車両の位置を取得し、
前記車両の後方を走行する複数の後方車両のそれぞれから、前記後方車両の位置と、前記車両と前記後方車両との共存範囲を示す指標であり、前記車両と前記後方車両とが前記共存範囲に存在する状態で前記車両が事象を観測したならば、観測された前記事象を示す事象情報を送信するべきことを前記車両へ要求する指標である共存範囲指標と、を受信し、
前記事象情報を送信するべき前記後方車両の存在範囲を示す通信範囲の決定に使用する後方車両を、前記車両の位置と、前記後方車両の位置と、前記共存範囲指標とに基づいて、前記複数の後方車両から抽出し、
抽出された前記後方車両の位置に基づいて、前記通信範囲を決定する、
通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車車間通信システムにおいて、通信対象車両のグループを決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車両は、事故または障害物のような車両運転制御に必要な情報を観測した場合、V2V通信によって、走行車両の周辺車両へ観測情報を通知する。観測情報を通知された各車両は、観測情報を他の車両へ中継する。この中継により、観測情報を必要とする車両へ、速やかに観測情報が通知される。
ここで、走行中の複数の車両の位置関係は、頻繁に変化する。このため、複数の車両で車車間通信を行う場合、車両間で通信途絶となるおそれがあるという課題がある。
【0003】
この課題を車両に搭載される通信端末のみで解決するには、通信端末どうしが短周期で情報交換を行い、各通信端末は、複数車両の位置関係を更新し続ける必要がある。しかし、短周期による車両間の情報交換は、短い周期で車車間通信を繰り返す必要がある。このためトラフィック量が増加するおそれがある。トラフィック量が増加という課題に対して、従来では、一方の車両の車速と位置情報とに応じて、一方の車両が、他方の車両と情報をやり取りする通信範囲を調整するという技術が存在する。この従来技術は、通信情報量の過多に起因する不具合を防止する(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献では、一方の車両の走行状況のみを基準として、一方の車両のみで、他方の車両と情報をやり取りする通信範囲を決定する。そのため、特許文献1の技術を適用して車車間通信を行った場合に、一方の車両のみで通信範囲を決定しているため、一方の車両の情報を真に必要とする他方の車両が、一方の車両の通信対象として選択されない恐れがある。また、一方の車両の走行状況のみを基準として通信範囲を決める場合、複数車両の位置関係の変化を原因として通信途絶が生じ、情報を必要とする通信対象車両に一方の車両の情報を通知できない恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、前方車両の情報を必要とする後方車両に、確実に前方車両の情報が送信される車車間通信の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の通信制御装置は、車両に搭載される。
本開示の通信制御装置は、
前記車両の位置を取得する位置取得部と、
前記車両の後方を走行する複数の後方車両のそれぞれから、前記後方車両の位置と、前記車両と前記後方車両との共存範囲を示す指標であり、前記車両と前記後方車両とが前記共存範囲に存在する状態で前記車両が事象を観測したならば、観測された前記事象を示す事象情報を送信するべきことを前記車両へ要求する指標である共存範囲指標と、を受信する受信部と、
前記事象情報を送信するべき前記後方車両の存在範囲を示す通信範囲の決定に使用する後方車両を、前記車両の位置と、前記後方車両の位置と、前記共存範囲指標とに基づいて、前記複数の後方車両から抽出する車両抽出部と、
抽出された前記後方車両の位置に基づいて、前記通信範囲を決定する範囲決定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の通信制御装置によれば、前方車両の情報を必要とする後方車両に、確実に前方車両の情報が送信される車車間通信を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の図で、車車間通信システム1の概要を示す図。
【
図2】実施の形態1の図で、通信制御装置100同士の通信関係を示す図。
【
図3】実施の形態1の図で、通信制御装置100の機能ブロック図。
【
図4】実施の形態1の図で、車車間通信システム1の概要を示すもう一つの図。
【
図5】実施の形態1の図で、通信制御装置100のハードウェア構成図。
【
図6】実施の形態1の図で、車車間通信システム1の動作を示すシーケンス図。
【
図7】実施の形態1の図で、通信制御装置100の動作を示すフローチャート。
【
図8】実施の形態1の図で、
図1と異なる車両抽出を示す図。
【
図9】実施の形態1の図で、
図1と異なる車両抽出を示す別の図。
【
図10】実施の形態1の図で、
図1と異なる車両抽出を示すさらに別の図。
【
図11】実施の形態1の図で、範囲決定部60Aによる通信対象車両の見え方を示す図。
【
図12】実施の形態2の図で、発信車両300F、受信車両300A、受信車両300Rを示す図。
【
図13】実施の形態2の図で、通信制御装置100同士の通信関係を示す図。
【
図14】実施の形態2の図で、通信制御装置100の機能ブロック図。
【
図15】実施の形態2の図で、通信制御装置100のハードウェア構成図。
【
図16】実施の形態2の図で、通信制御装置100のハードウェア構成を補足する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略または簡略化する。以下の実施の形態では、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」または「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。
【0011】
(1)以下の実施の形態には複数の車両300が登場する。複数の車両300は、通信制御装置100を搭載している。説明の点から、複数の車両300は車両300A、車両300B、・・・のように区別するが、複数の車両300は対等である。車両の区別の不要な場合は、車両300と表記する。実施の形態では車両300Aを基準に説明する。
(2)通信制御装置100も車両300のようにA,B、・・・を付して区別するが、複数の通信制御装置100は対等である。通信制御装置100iは車両300i(i=A、B、・・・)に搭載される。区別の不要な場合は、通信制御装置を通信制御装置100と表記する。車両識別子を車両IDあるいはIDと表記する。通信制御装置100iの送信する情報には車両300iの車両ID(i)が含まれる。車両ID(i)は送信元アドレスに相当する。送信元アドレスにより、通信制御装置100iから情報を受信した他の通信制御装置100は、受信した情報の送信元を認識できる。また車両300iが特定の他の車両300k(k≠i)に情報を送信する場合、ID(i)の他に車両ID(k)を含める。車両ID(k)は宛先アドレスに相当する。
(3)以下の実施の形態では車両300同士が情報をやり取りする記載がある。これは、通信制御装置100どうしが情報をやり取りすることを意味する。
(4)以下の実施の形態では、車両300i(i=A、B、・・・)について、車両300i(i=A、B、・・・)に関する情報を、車両ID(i)、位置X(F)、速さV(i)、共存範囲指標Ri(i)、通信範囲CA(i)、情報共有グループG(i)のように表記する。あるいは、ID(i)、X(F)、V(i)、Ri(i)、CA(i)、G(i)のように表記する場合もある。
【0012】
実施の形態1.
図1から
図11を参照して実施の形態1の車車間通信システム1及び通信制御装置100を説明する。
図1は、車車間通信システム1の概要を示す。
図2は、通信制御装置100同士の通信関係を示す。
図2に示すように、通信制御装置100同士は互いに対等に通信する。
図3は、通信制御装置100の機能ブロック図を示す。通信制御装置100の構成は後述する。車車間通信システム1は、複数の車両から構成される。説明の簡素化のため、
図1では、車車間通信システム1は、車両300A、300B、300C、300Dの4台を備えるとする。通信制御装置100は車両300に搭載される。各車両は通信制御装置100を搭載している。
【0013】
車両300A、300B、300C、300Dの各車両は発信車両であり、かつ、受信車両である。発信車両とは、その車両(発信車両)の運転制御に関わる事象を、その車両に搭載されている各種のセンサが観測した場合に、その観測した事象に関する情報を、その情報を必要とする後方車両に送信する車両をいう。発信車両が観測した事象に関する事象情報を、センシング情報と表記する。センシング情報は事象情報である。センシング情報は限定されないが、例えば、事故、渋滞、交差点への進入、歩行者の検知、合流地点への進入等がある。受信車両とは、発信車両からセンシング情報を受信する候補車両である。発信車両からセンシング情報を受信することが確定した車両は、後述の通信対象車両である。
図1で説明すれば、通信対象車両とは、車両300Aが車両300Aの車両走行制御に必要なセンシング情報をセンサ群で検知した合に、センシング情報を送信するべき車両300である。センシング情報は範囲決定部60Aが送信する。
【0014】
図1を参照して説明する。
図1では車両300Aを発信車両と想定して説明する。車両300Aは、センシング情報305Aを観測した場合に、センシング情報305Aを必要とする後方車両300に、センシング情報305Aを範囲決定部60Aによって送信する。
図1では、車両300Aの各種のセンサが、事象5をセンシング情報305Aとして観測する。
図1の事象5は、車両300Xと車両300Yとの衝突事故である。通信制御装置100Aは、パケット送信部70A及びパケット受信部80Aにより、車両300k(k=B、C、D)に搭載された通信制御装置100kと車両情報をやり取りする。車両情報は、その車両300について車両ID、位置X、速さV、車格等を含む。これにより、通信制御装置100k(k=B、C、D)は、センシング情報305Aの通知を要求する共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)を計算する。共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)は、車両300k(k=B、C、D)をセンシング情報305Aの送信対象である通信対象車両とするかどうかの決定に、通信制御装置100Aによって使用される情報である。共存範囲指標Riの詳細は後述する。
【0015】
通信制御装置100k(k=B、C、D)は、共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)を、同一進行方向の車両300Aへ送信する。共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)は、通信制御装置100k(k=B、C、D)から車両300Aへの、情報送信要求である。
【0016】
車両300Aは、車両300k(k=B、C、D)の位置X(k)(k=B、C、D)を、車両情報の車車間通信によって認識している。車両300Aも車両情報302Aをブロードキャストしている。車両300Aは共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)を受信すると、位置X(A)と、位置X(k)(k=B、C、D)と、共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)とから、車両300k(k=B、C、D)に固定されるとみなした、共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)に対応する対応範囲R(k)(k=B、C、D)が、車両300Aの前方センシング範囲301Aに含まれているか判定する。
対応範囲R(k)は後に登場する<共存範囲指標Riの計算方法>で後述する。この判定によって、車両抽出部50Aは、通信範囲CA(A)の決定に使用する後方車両を、車両300k(k=B、C、D)から抽出する。
図1では、車両300B、車両300Cが抽出される。なお、この対応範囲R(k)を用いる判定方法は例である。車両抽出部50Aによって抽出された車両を抽出車両と表記する。
【0017】
範囲決定部60Aは、車両300Aと最も相対距離が遠い抽出車両までを、通信の必要な通信範囲CA(A)として決定する。
図1では、範囲決定部60Aは、車両300Aと最も相対距離が遠い抽出車両300Cまでを、通信の必要な通信範囲CA(A)として決定する。範囲決定部60Aは、通信範囲CA(A)から、センシング情報305Aを通知する車両グループである情報共有グループG(A)を設定する。
図1では、情報共有グループG(A)に、車両300B、車両300C及び車両300Dが設定される。なお、車両300Dは抽出車両ではないが通信範囲CA(A)に位置する。よって、範囲決定部60Aは、車両300Dを情報共有グループG(A)に設定する。
情報共有グループG(A)に設定される車両は、車両300Aの通信対象車両である。車両300Aの通信対象車両とは、車両300Aからセンシング情報305Aが送信される車両である。
範囲決定部60Aは、通信範囲CA(A)に位置する車両300B、車両300C及び車両300Dに、情報共有グループG(A)及び通信範囲CA(A)を通知する。情報共有グループG(A)は、情報共有グループG(A)に設定された通信対象車両の車両IDのグループである。通知される通信範囲CA(A)は、後述する。
【0018】
以上の結果、車両300Aがセンシング情報305Aを観測した場合に、センシング情報305Aを送信するべき通信対象車両が決定される。
【0019】
***構成の説明***
図3を参照して、通信制御装置100Aの各機能部を説明する。通信制御装置100Aは、信号処理部10A、位置取得部20A、速さ取得部30A、指標計算部40A、車両抽出部50A、範囲決定部60A、パケット送信部70A及びパケット受信部80Aを備える。
【0020】
通信制御装置100Aは、車車間通信により、他の通信制御装置100へ、以下の(1)から(6)の情報を送信する。
(1)車両300Aの車両ID(A)、
(2)車両300Aの位置X(A)、
(3)車両300Aの速さV(A)、
(4)車両300Aについての共存範囲指標Ri(A)、
(5)通信範囲CA(A),
(6)情報共有グループG(A)。
なお、車両ID(A)、位置X(A)及び速さV(A)は、車両300Aの車両情報302Aとして送信される。車両情報302Aは、共存範囲指標Ri(A)、通信範囲CA(A)、情報共有グループG(A)とは別に、定期的または不定期的に送信される。
【0021】
<信号処理部10A>
信号処理部10Aは、位置取得部20Aの出力する位置X(A)、速さ取得部30Aの出力する速さV(A)、指標計算部40Aの出力する共存範囲指標Ri(A)、範囲決定部60Aの出力する通信範囲CA(A)及び情報共有グループG(A)を、パケット送信部70Aが送信可能な信号へ変換する。信号処理部10Aは、変換した各情報を、パケット送信部70Aへ出力する。信号処理部10Aは、パケット受信部80Aが受信した情報を、指標計算部40A、車両抽出部50A及び範囲決定部60Aが処理可能な信号に変換する。
パケット受信部80Aは、車両300Aの後方を走行する複数の後方車両300(k)(k=B、C、D)のそれぞれの後方車両から、後方車両300(k)のID(k)と、位置X(k)と、共存範囲指標Ri(k)とを受信する。
また、車両300Aが通信対象車両の場合、車両300Aの前方車両から、車両ID、位置X,速さV、通信範囲CA、情報共有グループG等を受信する。パケット受信部80Aは、受信した情報を、信号処理部10Aへ入力する。信号処理部10Aは、入力された車両ID、位置X、速さV、共存範囲指標Ri、通信範囲CA、情報共有グループGを、指標計算部40A及び車両抽出部50Aの処理可能な形式へ変換する。
【0022】
<位置取得部20A>
位置取得部20Aは、車両300Aの位置X(A)を取得する)。位置取得部20Aは、アンテナ29Aによって、測位衛星の送信する測位信号を受信する。位置取得部20Aは、受信した測位信号を用いて車両300Aの位置X(A)を計算する。位置取得部20Aは、測位結果である位置X(A)を、信号処理部10A、指標計算部40A、車両抽出部50Aへ出力する。
【0023】
<速さ取得部30A>
速さ取得部30Aは、車速センサ39Aから出力された信号に基づき計算された、車両300Aの速さV(A)を取得する。速さ取得部30Aは、速さV(A)を、信号処理部10A及び指標計算部40Aに出力する。
【0024】
<指標計算部40A>
指標計算部40Aは、車両300Aの前方を走行する前方車両が事象を観測したと仮定した場合に、前方車両の後方車両に該当する車両300Aが、事象を回避するための回避時間に基づいて、共存範囲指標Ri(A)を計算する。そして、指標計算部40Aは、パケット送信部70Aを用いて、共存範囲指標Ri(A)を前方車両に送信する。後述する(式2)の走行時間T(A)は、回避時間である。
指標計算部40Aは、共存範囲指標Ri(A)を計算する。
図4は、
図1において車両300Aの位置と、車両300Bの位置とを交換した図である。
図4では、車両300Bが発信車両であり、車両300Aは受信車両である。車両300Aが受信車両である場合を想定する。
図4を参照して、指標計算部40Aによる、共存範囲指標Ri(A)の計算を説明する。指標計算部40Aは、速さ取得部30Aから入力された車両300Aの速さV(A)と、信号処理部10Aから入力された周辺車両300C、300Dの速さV(k)(k=C、D)と、車両300Aについての走行時間T(A)と、を用いて、車両300Aに関する共存範囲指標Ri(A)を計算する。共存範囲指標Ri(A)は、車両300Aが前方車両に、前方車両の検知したセンシング情報の送信を要求する情報でもある。
図4では車両300Bがセンシング情報の要求対象の車両である。指標計算部40Aは、共存範囲指標Ri(A)を、信号処理部10Aへ出力する。共存範囲指標Ri(A)は、信号処理部10A及びパケット送信部70Aを介して、車両300B宛てに送信される。共存範囲指標Ri(A)の詳細は
図7のステップS14で詳しく説明する。
【0025】
<車両抽出部50A>
図1を想定する。車両300Aは発信車両である。車両抽出部50Aは、事象情報を送信するべき後方車両の存在範囲を示す通信範囲CA(A)の決定に使用する後方車両を、複数の後方車両から抽出する。車両抽出部50Aは、車両300Aの位置と、それぞれの後方車両の位置と、それぞれの後方車両の共存範囲指標Riとに基づいて、通信範囲CA(A)の決定に使用する後方車両を、複数の後方車両から抽出する。ここで事象情報は、センシング情報である。
車両の抽出では、車両抽出部50Aは、それぞれの後方車両について共存範囲指標Riの示す共存範囲に車両300Aと後方車両300(k)とが共存するかを判定する。車両抽出部50Aは、共存すると判定した後方車両を、通信範囲CA(A)の決定に使用する後方車両として抽出する。
車両300Aは、さらに、車両300Aの前方で生じる事象を検知する検知範囲を持つセンサ群を搭載している。車両抽出部50Aは、それぞれの後方車両について、後方車両に固定された共存範囲と車両300Aの検知範囲(前方センシング範囲301A)とに重複範囲があるかを判定する。車両抽出部50Aは、重複範囲があると判定した後方車両を、信範囲CA(A)の決定に使用する後方車両として抽出する。
以下に具体的に説明する。
図1の場合を想定する。車両抽出部50Aは、位置X(A)、位置X(k)(k=B、C、D)、Ri(k)(k=B、C、D)を用いて、通信範囲CA(A)の決定に使用する車両を抽出する。車両抽出部50Aは、位置X(A)、信号処理部10Aから入力された位置X(k)及び共存範囲指標Ri(k)を用いて、周辺車両である車両300k(k=B、C、D)から、通信範囲CA(A)の決定に使用する車両を抽出する。車両抽出部50Aは、抽出された車両のIDと位置との組からなるグループEV(A)を、範囲決定部60Aに入力する。
EV(A)={[ID(B)、X(B)]、[ID(C)、X(C)]}である。
詳細は
図7のステップS16で説明する。
【0026】
<範囲決定部60A>
範囲決定部60Aは、車両抽出部50Aによって抽出された後方車両の位置に基づいて、通信範囲CA(A)を決定する。ここで範囲決定部60Aは、抽出された後方車両のうち、車両300Aの位置X(A)に最も遠い位置を持つ後方車両の位置に基づいて、通信範囲CA(A)を決定する。
以下に具体的に説明する。
図1を想定する。範囲決定部60Aは、車両抽出部50Aから入力されたEV(A)の示す位置Xに基づき、車両300Aについての通信範囲CA(A)を計算する。範囲決定部60Aは、車両抽出部50Aから入力された位置X(B)、位置X(C)を用いて、車両300Aについての通信範囲CA(A)を決定する。通信範囲CA(A)の決定方法の詳細は後述する。範囲決定部60Aは、通信範囲CA(A)を、信号処理部10Aへ入力する。信号処理部10Aは、パケット送信部70の処理可能は形式に通信範囲CA(A)を変換し、変換した通信範囲CA(A)をパケット送信部70に入力する。
【0027】
<パケット送信部70A>
パケット送信部70Aは送信部である。パケット送信部70Aは、通信対象車両に、センシング情報を送信する。パケット送信部70Aは、信号処理部10Aから入力された情報を、他の車両300に搭載された通信制御装置100に向けて送信する。パケット送信部70Aは、少なくとも以下の(1)から(6)の情報を送信する。
(1)車両300AのID(A)、
(2)車両300Aの位置X(A)、
(3)車両300Aの速さV(A)、
(4)前方車両に向けて送信される共存範囲指標Ri(A)、
(5)後方車両に向けて送信される通信範囲CA(A)、
(6)情報共有グループG(A)。
(1)から(3)の情報は、車両情報302Aとして送信される。(4)の共存範囲指標Ri(A)は
図4において、車両300Aから前方車両である車両300Bに向けて送信される。(5)(6)の通信範囲CA(A)及び情報共有グループG(A)は、
図1において、車両300Aから後方車両である車両300B、車両300C及び車両300Dに向けて送信される。
【0028】
<パケット受信部80A>
パケット受信部80Aは受信部である。パケット受信部80Aは、車両300Aの後方を走行する複数の後方車両のそれぞれの後方車両から、後方車両の識別子と、後方車両の位置と、車両300Aの後方車両の送信した共存範囲指標と、を受信する。具体的には以下のようである。パケット受信部80Aは、他の車両300kに搭載された通信制御装置100kから、以下の(1)から(6)の情報を受信する。パケット受信部80は、これらの情報を、信号処理部10Aへ出力する。
(1)ID(k)、
(2)位置X(k)、
(3)速さV(k)、
(4)共存範囲指標Ri(k)、
(5)通信範囲CA、
(6)情報共有グループG。
(1)から(3)の情報は、車両情報302k(k=B、C、D)として受信される。(4)の共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)は
図1において、後方車両である車両300B、300C、300Dから受信する。(5))(6)の通信範囲CA及び情報共有グループGは
図4において、前方車両である車両300Bから受信する。
【0029】
***ハードウェア構成の説明***
図5は、通信制御装置100のハードウェア構成を示す。
図5を参照して通信制御装置100のハードウェア構成を説明する。
【0030】
通信制御装置100は、コンピュータである。通信制御装置100は、プロセッサ110を備える。通信制御装置100は、プロセッサ110の他に複数のハードウェアを備える。複数のハードウェアは、主記憶装置120、補助記憶装置130、入力IF140、出力IF150及び通信IF160である。IFはインタフェースを示す。プロセッサ110は、信号線170を介して、他のハードウェアと接続され、他のハードウェアを制御する。
【0031】
通信制御装置100は、機能要素として、信号処理部10、位置取得部20、速さ取得部30、指標計算部40、車両抽出部50、範囲決定部60、パケット送信部70及びパケット受信部80を備える。信号処理部10、位置取得部20、速さ取得部30、指標計算部40、車両抽出部50、範囲決定部60、パケット送信部70及びパケット受信部80の機能は、通信制御プログラム131により実現される。
【0032】
プロセッサ110は、通信制御プログラム131を実行する装置である。プロセッサ110が通信制御プログラム131を実行することで、信号処理部10、位置取得部20、速さ取得部30、指標計算部40、車両抽出部50、範囲決定部60、パケット送信部70及びパケット受信部80の機能が実現される。プロセッサ110は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ110の具体例は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0033】
主記憶装置120は記憶装置である。主記憶装置120の具体例は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。主記憶装置120は、プロセッサ110の計算結果を保持する。
【0034】
補助記憶装置130は、データを不揮発的に保管する記憶装置である。補助記憶装置130の具体例は、HDD(Hard Disk Drive)である。また、補助記憶装置130は、可搬記録媒体であってもよい。可搬記録媒体として、SD(登録商標)(Secure Digital)メモリカード、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD(Digital Versatile Disk)がある。補助記憶装置130は、通信制御プログラム131を記憶している。
【0035】
入力IF140は、各装置からデータが入力されるポートである。出力IF150は、各種機器が接続される。出力IF150は、各種機器にプロセッサ110によってデータが出力されるポートである。通信IF160は、プロセッサが他の通信制御装置100と通信するための通信ポートである。また、通信IF160は、プロセッサが各種のセンサと通信するための通信ポートである。
【0036】
プロセッサ110は補助記憶装置130から通信制御プログラム131を主記憶装置120にロードする。プロセッサ110は、ロードされた通信制御プログラム131を主記憶装置120から読み込んで実行する。主記憶装置120には、通信制御プログラム131の他に、OS(Operating System)も記憶されている。プロセッサ110は、OSを実行しながら、通信制御プログラム131を実行する。通信制御装置100は、プロセッサ110を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。これら複数のプロセッサは、通信制御プログラム131の実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ110と同じように、通信制御プログラム131を実行する装置である。通信制御プログラム131によって利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値及び変数値は、主記憶装置120、補助記憶装置130、または、プロセッサ110内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0037】
通信制御プログラム131は、信号処理部10、位置取得部20、速さ取得部30、指標計算部40、車両抽出部50、範囲決定部60、パケット送信部70及びパケット受信部80の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程を、コンピュータに実行させるプログラムである。
【0038】
また、方法は、コンピュータである通信制御装置100が通信制御プログラム131を実行することにより行われる方法である。通信制御プログラム131は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよいし、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0039】
***動作の説明***
図6は、車車間通信システム1の動作を示すシーケンスを示す。
図7は、通信制御装置100のフローチャートを示す。
図6及び
図7を参照して通信制御装置100の動作を説明する。通信制御装置100の動作は、通信制御方法に相当する。また通信制御装置100の動作は、通信制御プログラム131により実行される。
【0040】
車両300Aは、車両ID(A)、位置X(A)及び速さV(A)を含む車両情報302Aを、周辺を走行する車両300k(k=B、C、D)に送信する。同様に、車両300Aは、車両300k(k=B、C、D)から車両情報302k(k=B、C、D)を受信する。これにより各車両300は、通信可能な範囲に位置する他車両の位置X及び速さVを収集する
【0041】
<ステップS11、S12>
車両300Aに着目して説明する。
図1の状態を想定する。通信制御装置100Aでは、パケット送信部70Aがブロードキャストで車両ID(A)を送信する(ステップS11)。パケット受信部80Aは、ブロードキャストしたID(A)への応答があるか判定する(ステップS12)。応答がない場合、処理はステップS11へ戻る(ステップS12でNO)。応答がある場合、パケット受信部80は、応答車両を通信可能な範囲に位置すると認識する。
図1の場合において、車両300k(k=B、C、D)から応答があったとする。
【0042】
<ステップS13>
図1の状態を想定する。ステップS13において、パケット送信部70Aは、応答のあった車両300k(k=B、C、D)と、車両情報をやりとりする。車両300Aは、車両300k(k=B、C、D)に車両情報302Aを送信する。また、車両300Aは、車両300k(k=B、C、D)のそれぞれから、車両情報302B、車両情報302C、車両情報302Dを受信する。
【0043】
<ステップS14>
図4の位置の車両300Aを想定する。
【0044】
<走行時間T(A)>
指標計算部40Aには、ユーザーによって入力部49Aから「走行時間T(A)」が入力される。走行時間T(A)は、車両300Aがある速さV*を維持している場合に、速さV*で継続走行するべき時間を示す。速さV*を一定速さと表記する場合がある。走行時間T(A)は入力部49Aから入力されるが、車両300ごとに、固定的に設定されても良い。指標計算部40Aでは、パケット受信部80Aから速さV(k)(k=B、C、D)、速さ取得部30Aから速さV(A)が入力される。指標計算部40Aは、走行時間T(A)と、速さV(k)(k=B、C、D)と、速さV(A)とから、共存範囲指標Ri(A)を計算する。
共存範囲指標Ri(A)は以下の式1で計算される。
Ri(A)=F1(V(A),V(B),V(C),V(D),T(A)) (式1)
F1はRi(A)を求める処理を示す。
なお、走行時間は、「速さV*で走行している車両300Aの前方で発生した障害事象を余裕をもって回避するために、何秒先までの前方地点の情報を必要とするかを表す時間(秒)」を示す。
【0045】
<共存範囲指標Riの計算方法>
指標計算部40Aによる、共存範囲指標Ri(A)の具体的な計算方法を説明する。共存範囲指標Riとは、前方車両と後方車両との共存範囲を示す指標である。同時に、共存範囲指標Riは、前方車両と後方車両とが共存範囲に存在する状態で前方車両が事象を観測したならば、観測された事象を示す事象情報を送信するべきことを前方車両へ要求する指標である。
さらに具体的に述べれば、共存範囲指標Ri(A)とは、前方車両と後方車両300Aとの共存範囲を表す指標であり、前方車両と後方車両300Aとがその共存範囲に存在する状態で前方車両に搭載されている各種センサが前方車両の運転制御に関わる事象を観測したならば、観測した事象に関する事象情報を後方車両300Aへ送信するべきことを車両300Aが要求する送信要求を伴う指標である。すなわち、共存範囲指標Ri(A)は前方車両と後方車両300Aとの共存範囲を示す指標であると共に、後方車両300Aによる前方車両へのセンシング情報の送信要求である。共存範囲指標Ri(A)の具体的な計算方法の例は、次の式2である。
式2のように、指標計算部40Aは、一定速さV
*と走行時間T(A)とから計算される車両300Aの走行距離を、共存範囲指標Ri(A)として計算する。
共存範囲指標Ri(A)=一定速さV
*(m/秒)×走行時間T(A)(秒) (式2)
一定速さV
*は、
(1)車両300Aの走行中の速さV(A)、
(2)車両300Aを含めず、複数の周辺車両の走行中の速さから得た平均速さ、
(3)走行中の車両300Aを含めた走行中の周辺車両との全体の平均走行速さ、
(4)あらかじめ指定された固定的な速さ、
のような速さを用いてもよい。ここで周辺車両は車両300k(K=C、D)である。周辺車両に前方車両300Bを含めてもよい。上記のように、一定速さは、走行している車両300Aの速さと、車両300Aの周辺を走行している複数の周辺車両の平均速さと、走行している車両300Aと走行している複数の周辺車両との全体の平均速さと、固定値として規定されている速さとの、いずれかである。
なお、共存範囲指標Ri(A)は長さであるが、
図4において、車両300Aから共存範囲指標Ri(A)を受信した車両300Bの車両抽出部50Bは、以下の方法で、共存範囲指標Ri(A)から、共存範囲指標Ri(A)に対応する範囲R(A)を認識する。以下、範囲R(A)を対応範囲と表記する。すなわち、車両抽出部50Bは、式2で得られた共存範囲指標Ri(A)を長辺とする長方形を、対応範囲R(A)と認識する。車両抽出部50Bは、長方形の短辺として、車両300Bの走行している車線の車線幅を使用する。
図4に車両抽出部50Bの使用する車線幅306Bを示している。車線幅306Bは、ユーザーが予め車両抽出部50Bに設定しても良いし、車両300Bのセンサ群のうちカメラのような撮像装置が検出してもよい。この共存範囲指標Ri(A)の対応範囲R(A)への変換は、ステップS16で、車両抽出部50Aが共存範囲指標Ri(B)の対応範囲R(B)への変換に使用する。
【0046】
<ステップS15>
信号処理部10Aは、指標計算部40Aによって計算された共存範囲指標Ri(A)を、パケット送信部70Aの処理可能な形式に変換し、パケット送信部70Aへ入力する。パケット送信部70Aは、車両300Aと同一進行方向の前方車両へ、ID(A)と共に共存範囲指標Ri(A)を送信する。このように、指標計算部40Aは、パケット送信部70Aを介して、車両300Aと同一進行方向の前方車両へ、ID(A)とともに共存範囲指標Ri(A)を送信する。
例えば
図4の状態において、パケット送信部70Aは、ID(A)と共存範囲指標Ri(A)との組を、前方車両である前方車両300Bに送信する。パケット送信部70Aは、周辺車両から定期的あるいは不定期に受信する車両情報によって、車両300Aと同一進行方向の前方車両である車両300Bを特定できる。以上が車両300Aによる共存範囲指標Ri(A)の生成及び送信である。
【0047】
<ステップS16>
ステップS16は通信範囲CA(A)の決定に使用する車両の抽出処理である。ステップS16からステップS19は、車両300Aが周辺車両300k(k=B、C、D)から要求範囲Ri(k)(k=B、C、D)を受信したときの処理である。ステップS16からステップS19では、
図1の状態を想定する。すなわち車両300Aは発信車両である。ステップS16では、車両抽出部50Aが、通信範囲CA(A)の決定に使用する車両を抽出する。
図3に示すように、パケット受信部80Aは、車両300k(k=B、C、D)から、共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)と位置X(k)(k=B、C、D)を受信する。パケット受信部80Aは、これらを信号処理部10Aへ入力する。信号処理部10Aは、車両抽出部50Aへ、共存範囲指標Ri(k)、位置X(k)を入力する。ここでk=B、C、Dである。位置取得部20Aは、車両抽出部50Aに、は位置X(A)を入力する。
【0048】
車両抽出部50Aは、共存範囲指標Ri(k)(k=B、C、D)、位置X(k)(k=B、C、D)、位置X(A)を用いて、通信範囲CA(A)の決定に使用する車両を、式3から抽出する。
EV(A)=F
3(X(k),Ri(k)、X(A)) (式3)
F
3はEV(A)を求める処理を示す。
図1では、EV(A)は、車両300B及び車両300Cである。つまり、(式3)の結果として、
EV(A)={[ID(B)、X(B)]、[ID(C)、X(C)]}
が得られる。車両抽出部50Aは、EV(A)を範囲決定部60Aへ入力する。
【0049】
<車両の抽出方法>
車両抽出部50Aの行う車両抽出は、以下のようである。車両抽出部50Aは、車両300Aに搭載される各種のセンサでセンシング可能な車両300Aの前方センシング範囲301Aに、共存範囲指標Ri(k)の対応範囲R(k)(k=B,C,D)が重なっている後方車両300kを抽出する。
図1を参照して説明する。車両300Bに注目する。車両抽出部50Aは、車両情報302A、車両情報302Bのやりとりにより、車両300Bについて、位置X(B)、速さV(B)及び進行方向を認識している。また、車両抽出部50Aは、共存範囲指標Ri(B)、位置X(A)及び前方センシング範囲301Aを認識している。前方センシング範囲301Aは車両300Aの車体に対する相対的な範囲である。車両抽出部50Aは、位置X(B)を始点として車両300Bの進行方向に共存範囲指標Ri(B)が向かうように、共存範囲指標Ri(B)の一方の端部を位置X(B)へ配置する。車両抽出部50Aは、共存範囲指標Ri(B)の一方の端部が長方形の短辺の中点となるように長方形を配置する。この長方形が対応範囲R(B)である。車両抽出部50Aは、対応範囲R(B)が前方センシング範囲301Aと重複範囲を有するか判定する。
図1では対応範囲R(B)は、前方センシング範囲301Aと重複範囲を持つ。この場合、車両抽出部50Aは、車両300Bを抽出する。
図1では、車両300Cも車両抽出部50Aによって抽出される。一方、車両300Dでは、対応範囲R(D)が前方センシング範囲301Aと重複範囲を持たない。この場合、車両抽出部50Aは、車両300Dを抽出しない。
【0050】
なお、上記の方式は共存範囲指標Riに対応する対応範囲R(B)が前方センシング範囲301Aとの重複範囲を持つかどうかで車両を抽出する。これは例であり、この方法に限定されない。
図8は、車両抽出の別の例を示す。発信車両300Aは、位置X(A)、位置X(B)及び共存範囲指標Ri(B)を認識している。よって、
図8に示すように、車両抽出部50Aは、位置X(B)を中心、半径を共存範囲指標Ri(B)とする円303Bの内部に位置X(A)が存在するかどうかで車両を抽出してもよい。円303Bの内部に位置X(A)が存在する場合、車両300Bは抽出される。
図9は、車両抽出のさらに別の例を示す。
図9に示すように、車両抽出部50Aは、位置X(A)を中心、半径を共存範囲指標Ri(B)とする円303Aの内部に位置X(B)が存在するかどうかで車両を抽出してもよい。円303Aの内部に位置X(B)が存在する場合、車両300Bは抽出される。なお、
図8、
図9の場合は前方センシング範囲301Aを使用しないため、前方センシング範囲301Aを使用しないぶんだけ、半径として使用する共存範囲指標Ri(B)を短くする補正をしてもよい。
【0051】
図10は、対応範囲Rを使用する方式に類似する方式である。
図10では、車両抽出のさらに別の例を示す。
図10では発信車両300Aと受信車両300Bを示している。車両抽出部50Aは、共存範囲指標Ri(B)から、車両300Bに関する具体的な範囲Ri-Bを決定する。例えば、車両抽出部50Aは、共存範囲指標Riを指標として範囲Riが決まる対応情報を有しており、共存範囲指標Ri(B)から具体的に範囲Ri-Bを決定する。そして、車両抽出部50Aは、範囲Ri-Bが前方センシング範囲301Aと重複範囲を持つか判定する。重複範囲を持てば、車両抽出部50Aは、車両300Bを抽出する。
【0052】
車両抽出部50Aは、
図1に示すように車両300Bから車両300Dのうち、車両300B、車両300Cを、通信範囲CA(A)の決定に使用する車両として抽出する。車両抽出部50Aは、抽出した車両300B及び車両300Cの、ID(B)、ID(C)及び位置X(B)、位置X(C)を、範囲決定部60Aへ出力する。
【0053】
<ステップS17>
ステップS17では、範囲決定部60Aは以下の式4で通信範囲CA(A)を決定する。
CA(A)=F
4(X(k),X(A)) (式4)
F
4はCA(A)を求める処理を示す。ここでX(k)は位置X(B)と位置X(C)である。範囲決定部60Aは、車両抽出部50Aに抽出された抽出車両300B、抽出車両300Cの位置X(B)、位置X(C)及び車両300Aの位置X(A)から、位置X(A)と相対距離が最も遠い抽出車両を決定する。
図1において、範囲決定部60Aは、車両300Cを、相対距離の最も遠い抽出車両と判定する。範囲決定部60Aは、位置X(A)と相対距離が最も遠い抽出車両300Cまでの距離を基に、通信の必要な通信範囲CA(A)を決定する。
図1では、位置X(A)を中心とし、半径が位置X(A)と位置X(C)との長さの円304Cにおいて、車両300Aを含む円304Cの内部が車両300Aの通信範囲CA(A)である。
【0054】
<ステップS18>
ステップS18では、範囲決定部60Aは、情報共有グループG(A)を設定する。範囲決定部60Aは、通信範囲CA(A)の内部に存在する車両300を情報共有グループG(A)として設定する。
図1では、範囲決定部60Aは、車両300B、車両300C及び車両300Dを情報共有グループG(A)として設定する。車両300Dは抽出車両ではないが、通信範囲CA(A)に位置するので、情報共有グループG(A)に設定される。
【0055】
<ステップS19>
図1を参照する。ステップS19では、範囲決定部60Aは、ID(A)、通信範囲CA(A)、情報共有グループG(A)を、通信対象車両300B、300C、300Dのそれぞれを宛先として送信する。つまり、範囲決定部60Aは、信号処理部10A及びパケット送信部70Aを介して、車両300B、車両300C及び車両300Dへ、車両ID(A)、情報共有グループG(A)、通信範囲CA(A)の値、を送信する。情報共有グループG(A)とは、情報共有グループG(A)に設定された車両ID群である。通信範囲CA(A)の値とは、例えば、中心を位置X(A)、半径を位置X(A)と位置X(C)との長さとする円304Cの情報である。
【0056】
<ステップS20>
まず車両300Aが受信車両の場合を説明する。
図4を参照する。ステップS20では、指標計算部40Aは、車両300Aと周辺車両300B、C、Dとの位置関係に変化があるか判定する。発信車両300Bも周辺車両300である。指標計算部40Aには、位置X(k)(k=B、C、D)及び位置X(A)が、定期的あるいは不定期的に入力される。よって位置関係の変化を検知できる。具体的には指標計算部40Aには、ID(k)、X(k)、V(k)、X(A)、V(A)が入力される。位置関係の変化が検知されると(ステップS20でYES)、処理はステップS11に戻る。位置関係の変化が検知されないと(ステップS20でNO)、処理はステップS21に進む。
次に車両300Aが発信車両の場合のステップS20を説明する。
図1を参照する。車両300Aが発信車両の場合、周辺車両との位置関係の変化により、発信車両300は受信車両となる可能性がある。指標計算部40Aは、車両300Aと周辺車両300B、C、Dとの位置関係に変化があるか判定する。指標計算部40Aには、位置X(k)(k=B、C、D)及び位置X(A)が、定期的あるいは不定期的に入力される。位置関係の変化が検知されると(ステップS20でYES)、処理はステップS11に戻る。位置関係の変化が検知されないと(ステップS20でNO)、処理はステップS21に進む。
なお、他の車両300からステップS22の通知を受けた場合もステップS20の「変化検知」に該当する。このため、他の車両300からステップS22の通知を受けた場合、指標計算部40Aは処理をステップS11に戻す。
【0057】
<ステップS21>
まず、車両300Aが受信車両の場合を説明する。
図4を参照する。ステップS21では、指標計算部40Aは、車両300Aに、周辺車両300k(k=B、C、D)との位置関係が変化するトリガ発生の有無を判定する。トリガ発生があれば(ステップS21でYES)、処理はステップS22に進む。ステップS22では、指標計算部40Aは、パケット送信部70Aを介して、周辺車両300k(k=B、C、D)へ、車両300Aの位置関係の変化事実及び車両情報302Aを送信する。トリガ発生がなければ(ステップS21でNO)、処理はステップS20に進む。
次に、ステップS21において、車両300Aが発信車両の場合を説明する。
図1を参照する。ステップS21では、受信車両の場合と同様に、指標計算部40Aは、車両300Aに、周辺車両300k(k=B、C、D)との位置関係が変化するトリガ発生の有無を判定する。トリガ発生があれば(ステップS21でYES)、処理はステップS22に進む。ステップS22において、受信車両の場合と同様に、周辺車両300k(k=B、C、D)に、車両300Aの位置関係の変化事実及び車両情報302Aが送信される。トリガ発生がなければ処理はステップS20に進む。
なお発信車両は最も前方を走行しているので、発信車両は、トリガ発生の検知及びステップS22の送信を、いち早く行える。
【0058】
ステップS20及びステップS21に示すように、受信車両300Aに、周辺車両300k(k=B、C、D)との位置関係の変化の事象が検知された場合、処理はステップS11に戻る。そして、指標計算部40Aは、ステップS14で共存範囲指標Ri(A)を再計算する。
【0059】
<共存範囲指標Ri(A)の再計算>
受信車両300Aについて、共存範囲指標Ri(A)の再計算を、さらに詳しく説明する。
図4を参照する。通信制御装置100Aは、車両300Aと周辺車両300k(k=B、C、D)とうちのいずれかの車両の速さが変化した場合、あるいは、車両300Aと周辺車両300k(k=B、C、D)との位置関係が変化した場合に、共存範囲指標Ri(A)を再計算する。通信制御装置100Aは、速さ変化及び位置関係の変化を、定期的または不定期的に送受信する車両情報302A、302k(k=B、C、D)及び位置取得部20A、速さ取得部30Aによって検知できる。共存範囲指標Ri(A)の再計算は、車両300Aの加減速、車両300Aの走行路の変更、車両300Aの交差点への進入のような他車との位置関係が変化しやすい地点への進入、または車両300Aの走行状態変化をトリガとすることができる。あるいは、通信制御装置100Aは、パケット送信部70A及びパケット受信部80Aによる車両IDの周辺車両との送受信及び車両情報の送受信から始まる共存範囲指標Riの計算動作を、定期的または不定期的に実施することで共存範囲指標Ri(A)を再計算してもよい。
【0060】
このように、指標計算部は、定期的または不定期的に、共存範囲指標を再計算し、再計算された共存範囲指標を、パケット送信部70Aを介して送信する。
【0061】
図4を参照する。受信車両300Aの通信制御装置100Aは、車両情報として周辺車両300k(k=B、C、D)から取得する速さV(k)(k=B、C、D)のいずれかと、車両300Aの速さV(A)との相対速度ΔVが、事前に設定している閾値THよりも大きい場合、共存範囲指標Ri(A)を定期的あるいは不定期的に再計算して、車両300Aの前方へ通知する。これにより、発信車両300Bは、通信範囲CA及び情報共有グループGを更新する。これは、発信車両300Bの通信範囲CA(B)に位置する受信車両300Aが、加減速や走行車線の変更によって、通信範囲CA(B)の外へ移動すると、車両300Bと車両300Aとの間でやり取りするセンシング情報の通信途絶の恐れがある。通信途絶に関して
図11で補足しておく。
図11は、範囲決定部60Aによる通信対象車両の見え方を示す。
図11は
図1に対応する。通信対象車両は車両300B,300C及び300Dである。車両300Dは車両抽出部50Aによって抽出されないが、通信範囲CA(A)に位置する。このため、車両300Dも通信対象車両として、範囲決定部60Aは認識している。
範囲決定部60Aは、車両情報302B,302C、302Dに含まれる位置X(B)、X(C)、X(D)によって、車両300B、300C、300Dの位置を監視している。例えば受信車両300Bが、加減速や走行車線の変更によって、通信範囲CA(A)の外へ移動すると、受信車両300Bにはセンシング情報305Aが送信されなくなる。このように通信範囲CA(A)の外への移動は、車両300Bにとっての通信途絶のおそれを生じる。
【0062】
***実施の形態1の効果***
実施の形態1の車車間通信システム1では、受信車両は共存範囲指標Ri(A)を発信車両に送信し、発信車両は受信車両を通信対象車両に決定した場合、通信対象車両にセンシング情報を送信する。よって、真に前方車両のセンシング情報を必要とする後方車両に、前方車両のセンシング情報を確実に送信できる。
また、センシング情報を送信する車両を限定できるので、車車間通信システム1に属する車両の通信機器資源を効率的に活用できる。
また、受信車両は共存範囲指標Ri(A)を再計算して発信車両へ送信するので(ステップS20でYES、S21でYES、S11、S12でYES、S14,S15)、発信車両と通信対象車両との間で授受されるセンシング情報の通信途絶が防止できる。
【0063】
<変形例1>
以下に通信制御装置100Aの変形例1を説明する。範囲決定部60Aは、周辺車両300kから共存範囲指標Ri(k)を収集せずに、車両300Aの速さV(A)、または走行している道路の最高速度などから、通信範囲CA(A)を決定し、情報共有グループG(A)を設定しても良い。
【0064】
<変形例2>
以下に通信制御装置100Aの変形例2を説明する。範囲決定部60Aは、走行している道路の最高速度、走行している道路の勾配、通知する情報の重要度、などを参照して、通信範囲CA(A)を拡張、あるいは縮小しても良い。
【0065】
実施の形態2.
図12から
図15を参照して、実施の形態2を説明する。
図12は、発信車両300F、受信車両300A、受信車両300Rを示す図である。実施の形態2では、発信車両300F、受信車両300A、受信車両300Rが、この順で走行している場合、発信車両300Fと受信車両300Rとが通信不可能であり、それ以外の車両同士は通信可能である。受信車両300Aは、発信車両300Fと第2受信車両300Rとの通信情報を中継する。車両300Aは中継車両である。以下では中継車両300Aと記載する場合がある。なお、車両300は、発信車両、受信車両及び中継車両のいずれにもなる。
【0066】
実態の形態1では、
図1のように、発信車両300Aの範囲決定部60Aは、センシング情報305Aを送信するべき通信範囲CA(A)を決定する。範囲決定部60Aは、通信範囲CA(A)を走行している車両300を情報共有グループG(A)に設定する。情報共有グループG(A)はセンシング情報305Aが送信される車両300からなるグループである。
【0067】
実施の形態2では、発信車両300Fと直接通信できない受信車両300Rが、発信車両300Fの通信対象車両に含まれる。
図13は、実態の形態2の通信関係を示す。実施の形態2では、発信車両300Fと直接通信可能な受信車両300Aが、発信車両300Fと受信車両300Rとの通信を中継する。これにより、発信車両300Fは、発信車両300Fと直接通信できない受信車両300Rと、情報をやり取りする。
図14は、実施の形態2の通信制御装置100Aの機能ブロック図を示す。実施の形態2の通信制御装置100Aは、実施の形態1の通信制御装置100Aに対して、さらに、中継決定部90Aを備えている。中継決定部90Aの機能は後述する。
図15は、実施の形態2の通信制御装置100Aのハードウェア構成を示す。実施の形態2の通信制御装置100Aは、実施の形態1の通信制御装置100Aに対して、さらに、中継決定部90Aを備えている。
【0068】
<車両300Rから発信車両300Fに向かう中継>
図12を参照する。中継決定部90Aは、共存範囲指標Ri(R)のような受信車両300Rの送信情報を受信車両300Rから受信した場合、受信車両300Rの送信情報を発信車両300Fへ中継する。
【0069】
<発信車両300Fから受信車両300Rへ向かう中継>
図12を参照する。中継決定部90Aは、通信範囲CA(F)のような発信車両300Fの送信情報を発信車両300Fから受信した場合、次の処理を行う。中継決定部90Aは、速さV(A)、位置X(A)、速度V(F)、位置X(F)、通信範囲CA(F)から、車両300Aが、発信車両300Fの送信情報を、後方かつ発信車両300Fと同一進行方向の受信車両へ送信する中継車両となるか判定する。
【0070】
***動作の説明***
図12を参照して中継動作を説明する。以下に動作を説明する。
【0071】
<共存範囲指標Ri(A)の中継>
図12において、車両300Aに注目する。車両300Aは中継車両である。
【0072】
実施の形態1の
図7における、共存範囲指標Riの周辺車両への送信(ステップS15)と、情報共有グループG(A)の設定(ステップS18)との間に、以下の処理を追加する。
中継決定部90Aは、車両300Rの共存範囲指標Ri(R)を受信した場合、前方車両300Fへ共存範囲指標Ri(R)を中継する。共存範囲指標Riの周辺車両への送信(ステップS15)と、情報共有グループG(A)の設定(ステップS18)との間に、この中継ステップを追加する。
図12には図示していなが、中継決定部90Aは、中継先の車両として、発信車両300Fとは異なる周辺車両に共存範囲指標Ri(R)を送信してもよい。共存範囲指標Ri(R)を受信した車両が、共存範囲指標Ri(R)を発信車両300Fに中継する。あるいは、車両300Aから共存範囲指標Ri(R)を受信した車両300B、車両300Bから共存範囲指標Ri(R)を受信した車両300C、というように、中継の連鎖で共存範囲指標Ri(R)が車両300Fに中継されてもよい。
なお、車両300Rの共存範囲指標を受信可能な車両300が車両300A~Dのように複数台存在する場合、すべての車両300A~Dが中継を行うと、不必要な中継が生じるおそれがある。このようなケースを防ぐために、車両300Rは、中継車両候補の車両との相対距離等を参照してもよい。例えば、車両300Rは、中継車両候補と車両300Rとが十分に近いならば中継車両候補を中継車両に選択しないなど、共存範囲指標Ri(R)の中継を行うかどうか決定してもよい。
【0073】
あるいは中継決定部90Aは、受信した共存範囲指標Ri(R)の示す範囲の内部に位置する車両、車両300Aの前方に位置する車両、相対距離が中継決定部90Aの予め有する閾値よりも大きい車両、を送信対象と決定できる。なお、中継決定部90Aは、距離として提供される共存範囲指標Ri(R)を、範囲Ri-Bに変換可能な情報を持つ。
【0074】
<車両抽出部50F及び範囲決定部60Fの動作>
実施の形態2では、実施の形態1における、車両抽出(ステップS16)、範囲決定部60による通信範囲CAの決定及び情報共有グループG(A)の設定(ステップS17、ステップS18)が、以下の処理である。
図12を参照する。ステップS16では、車両抽出部50Fは、通信範囲CA(F)の決定に使用する車両を抽出する。具体的には、以下のように車両抽出部50Fは、
図1で説明した方法で、中継車両300A及び受信車両300Rを抽出する。
図12では、共存範囲指標Ri(A)の対応範囲R(A)と、共存範囲指標Ri(R)の対応範囲R(R)とは、車両300Fの前方センシング範囲301Fと重複範囲を持つ。よって車両抽出部50Fは、中継車両300A及び受信車両300Rを抽出する。車両抽出部50Fは、範囲決定部60Fに、
EV(F)={[ID(A)、X(A)]、[ID(R)、X(R)]}
を出力する。
【0075】
範囲決定部60Fは、中継車両300Aから取得した位置X(k)(k=A、R)に基づいて、抽出された車両300k(k=A、R)までの距離L(k)(k=A、R)を計算する。そして計算結果から、範囲決定部60Fは、発信車両300Fのセンシング情報305Fの送信範囲である通信範囲CA(F)を決定する。範囲決定部60Fは、通信範囲CA(F)に位置する中継車両300A、受信300Rを、発信車両300Fの情報共有グループG(F)に設定する。 以上の車両抽出部50F及び範囲決定部60Fの動作は、実施の形態1の車両抽出部50A及び範囲決定部60Aの動作に類似である。
【0076】
<センシング情報の中継>
図12を参照する。実施の形態1の
図7における、情報共有グループG(A)への通信範囲CA(A)の送信(ステップS19)の後に、以下の処理を追加する。以下の処理は、
図12の中継車両300Aの処理である。
【0077】
中継決定部90Aは、発信車両300Fから情報共有グループG(F)及び通信範囲CA(F)を通知された場合、発信車両300Fと車両300Aとの相対速度ΔV(F,A)及び相対距離ΔX(F,A)を計算する。情報共有グループG(F)に設定されている車両は、中継車両300Aと受信車両300Rである。
中継決定部90Aは、
(1)事前に設定されている相対速度の閾値よりも相対速度ΔV(F,A)が小さく、
かつ、
(2)事前に設定されている距離判定の閾値よりも、相対距離ΔX(F,A)と通信範囲RA(F)との差が小さい、
という中継条件が成立するかを判定する。
(1)かつ(2)の中継条件が成立している場合、中継決定部90Aは、発信車両300Fのセンシング情報305Fを中継するセンシング情報中継器として、通信制御装置100Aを設定する。
なお、中継車両300Aの近傍に複数の車両、例えば車両300B,車両300Cが位置する場合、車両300A、300B,300Cが中継車両となり得る。
このようなケースを防ぐために、各車両300では、中継条件が成立した場合は、その車両300の中継決定部90が、周辺車両へ中継条件が成立していること、及び、判定内容を通知する。判定内容とは、具体的には(1)の相対速度ΔVと、(2)の相対距離ΔXである。各車両300は、他の車両300から受信した判定内容を参照する。そして、各車両の中継決定部90は、自身の車両300の(1)の相対速度ΔVと(2)の相対距離ΔXとが共に最小さい場合に、発信車両300Fのセンシング情報305Fを中継するセンシング情報中継器として、自身の車両300に搭載されている通信制御装置100を設定する。
【0078】
中継車両300Aの通信制御装置100Aについては以下のようである。通信制御装置100Aは、中継決定部90Aを備えている。中継決定部90Aは、パケット受信部80Aが車両300Aと異なる車両を送信先として送信された共存範囲指標Riを受信したときに、共存範囲指標Riを送信先に中継する。また中継決定部90Aは、パケット受信部80Aが車両300Aと異なる車両を送信先として送信されたセンシング情報を受信したときに、センシング情報をセンシング情報の送信先に中継する。
【0079】
***実施の形態2の効果***
実施の形態2の車車間通信システム1によれば、発信車両の通信範囲CAに発信車両と通信できない受信車両が存在する場合でも、発信車両は発信車両のセンシング情報を受信車両に送ることができる。
【0080】
<変形例1>
以下に実施の形態2で説明した通信制御装置100の変形例1を説明する。中継車両は、発信車両が設定してもよい。中継車両の設定は、情報共有グループGに設定した各車両における車両速さV、並走距離、通信可能車両数などを比較して、発信車両と並走する可能性が最も高い車両、通信可能な車両数が最も多い車両、相対距離が最も遠い車両などの基準で、実施してもよい。
【0081】
<変形例2>
以下に通信制御装置100Aの変形例2を説明する。車両の車格が一般車両よりも高い場合は、以上の判断に関わらず、中継決定部90は、通信制御装置100が搭載される車両の車格が一般車両よりも高い場合、その車両を中継車両として設定してもよい。これは、車格が高い車両では、その車両による通信遮蔽が考えられるためである。
【0082】
実施の形態3.
実施の形態3として、実施の形態1及び実施の形態2で説明した通信制御装置100のハードウェア構成を補足する。
【0083】
<ハードウェア構成の補足>
図5及び
図15では通信制御装置100の機能がソフトウェアで実現される。しかし、通信制御装置100の機能がハードウェアで実現されてもよい。
図16は、通信制御装置100の機能がハードウェアで実現される構成を示す。
図16の電子回路400は、通信制御装置100の、信号処理部10、位置取得部20、速さ取得部30、指標計算部40、車両抽出部50、範囲決定部60、パケット送信部70及びパケット受信部80の機能を実現する専用の電子回路である。電子回路400は、信号線401に接続している。電子回路400、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略語である。通信制御装置100の構成要素の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。また、通信制御装置100の構成要素の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0084】
プロセッサ110と電子回路400の各々は、プロセッシングサーキットリーあるいはサーキットリーとも呼ばれる。通信制御装置100において、信号処理部10、位置取得部20、速さ取得部30、指標計算部40、車両抽出部50、範囲決定部60、パケット送信部70及びパケット受信部80の機能がサーキットリーにより実現されてもよい。
【0085】
以上、実施の形態1及び実施の形態2については各実施の形態に含まれる複数の技術事項のうち、1つの技術事項を部分的に実施しても構わない。あるいは、各実施の形態に含まれる技術事項どうしを、部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0086】
5 事象、10,10A 信号処理部、20,20A 位置取得部、30,30A 速さ取得部、40,40A 指標計算部、50,50A,50F 車両抽出部、60,60A,60F 範囲決定部、70,70A パケット送信部、80,80A パケット受信部、90,90A 中継決定部、100,100A 通信制御装置、110 プロセッサ、120 主記憶装置、130 補助記憶装置、140 入力IF、150 出力IF、160 通信IF、170 信号線、300,300A,300B,300C,300D,300F 車両、301,301A 前方センシング範囲、302,302A 車両情報、305,305A センシング情報、306B 車線幅。
【要約】
車両(300A)に搭載される通信制御装置(100A)は、車両(300A)の位置を取得し、複数の後方車両(300B,300C,300D)のそれぞれの後方車両から、車両ID、位置及び共存範囲指標(Ri)を受信する。通信制御装置(100A)は、車両(300A)の位置と、後方車両(300B,300C,300D)のそれぞれの位置と、それぞれの共存範囲指標(Ri)とに基づいて、複数の後方車両(300B,300C,300D)のなかから、後方車両を抽出する。通信制御装置(100A)は、抽出された後方車両の位置に基づいて、センシング情報(305A)を送信するべき後方車両の存在範囲を示す通信範囲を決定する。