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特許7614474紡糸原液、耐熱耐クリープ繊維及びその製造方法
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  • 特許-紡糸原液、耐熱耐クリープ繊維及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】紡糸原液、耐熱耐クリープ繊維及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/04 20060101AFI20250108BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20250108BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20250108BHJP
   C08G 63/193 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
D01F6/04 A
C08F20/30
C08G65/40
C08G63/193
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023528629
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2021114899
(87)【国際公開番号】W WO2022156215
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】202110074594.0
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524433586
【氏名又は名称】江蘇神鶴科技発展有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】523176004
【氏名又は名称】江蘇六甲科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【弁理士】
【氏名又は名称】譚 粟元
(72)【発明者】
【氏名】何 勇
(72)【発明者】
【氏名】郭 子賢
(72)【発明者】
【氏名】郭 俊谷
(72)【発明者】
【氏名】郭 亜東
(72)【発明者】
【氏名】王 新鵬
(72)【発明者】
【氏名】項 朝陽
(72)【発明者】
【氏名】王 依民
(72)【発明者】
【氏名】倪 建華
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104695038(CN,A)
【文献】特開2020-086119(JP,A)
【文献】特公昭49-012420(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00- 6/96
9/00- 9/04
C08F 2/00- 2/60
6/00-246/00
301/00
C08G 63/00- 64/42
65/00- 67/04
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱耐クリープポリエチレン繊維を製造する方法であって、
ゲル紡糸及び多段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得る工程(1)と、
架橋剤を添加せずに、空気雰囲気において、紫外光源により、工程(1)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得る工程(2)と、を含み、
前記ポリエチレン紡糸原液は、架橋剤を含まず、ポリエチレン、溶媒及び含有量が前記ポリエチレンの質量の0.2~10wt%である光開始剤を含み、
ポリエチレンの分子量が30万~1000万であり、
前記光開始剤は、光開始剤I及び光開始剤IIのうちの1種以上であり、
前記光開始剤Iは、
【化1】
という構造式を持ち、式中、R は、水素原子、C1~C10の炭化水素基、又はハロゲンであり、Mは、スチレン単位、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、スチレン誘導体単位、アクリル酸誘導体単位、又はメタクリル酸誘導体単位であり、xは、2~1000の整数であり、yは、0~2000の整数であり、
前記光開始剤IIは、
【化2】
という構造式を持ち、式中、nは、2以上の整数であり、R は、C1~C20のヒドロカルビレン基又は
【化3】
であり(式中、R は、C1~C18のヒドロカルビレン基であり)、
紫外光源の光強度が100~5000mW/cmであり、紫外線の照射時間が10~600sであ
得られた耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が20~100wt%であり、結晶度が50~90wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が10 -8 ~10 -7 -1 であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が155~245℃である、
ことを特徴とする耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法。
【請求項2】
前記光開始剤Iの数平均分子量は、1.05~100kであり、R0は、水素原子又はメチル基であり、x/(x+y)は、0.05~1であり、
前記光開始剤IIの構造式において、ヒドロカルビレン基は、アルキレン基又はアリーレン基であり、前記光開始剤IIの数平均分子量は、1.2~100kであり、分子量分布は、1.3~1.8であ
ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法
【請求項3】
ポリエチレンと溶媒との質量比は、5:95~30:70であり、前記溶媒は、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、パラフィン油、ホワイトオイル、鉱物油、植物油、動物油、灯油、炭化水素系溶媒及びキシレン溶媒のうちの1種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法
【請求項4】
アルキニル化合物をさらに含み、アルキニル化合物の含有量は、ポリエチレンの質量の0.1~5.0wt%であり、前記アルキニル化合物は、1,4-ジフェニルブタジエン、4-フェニルエチニルフタル酸無水物、4,4’-ジエチニルビフェニル、1,3,5-トリエチニルベンゼン、1,3-ジエチニルベンゼン及び1,4-ジエチニルベンゼンのうちの1種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法
【請求項5】
酸化防止剤、顔料及び/又は染料をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法
【請求項6】
工程(1)における多段延伸を、第1段延伸倍率が2~8倍であり、第2段延伸倍率が1~2倍であり、第3段延伸倍率が1~2倍である3段延伸とし、延伸温度を90~150℃とする、
ことを特徴とする請求項に記載の耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法。
【請求項7】
工程(2)において、紫外線の波長は、270~400nmである、
ことを特徴とする請求項に記載の耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学繊維の技術分野に属し、紡糸原液、耐熱耐クリープ繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維は、現在、世界中に比強度及び比弾性率が最も高い繊維であり、分子量が100万以上のポリエチレンから紡出された繊維であり、その製造は、主に2種類の異なる生産プロセス技術経路を有し、1つは高揮発性溶媒(デカヒドロナフタレン、トルエンなど)を用いる乾式ゲル紡糸プロセス経路であり、乾式経路と略称し、もう1つは低揮発性溶媒(鉱物油、ホワイトオイルなど)を用いる湿式ゲル紡糸プロセス経路であり、湿式経路と略称する。UHMWPE繊維は、耐衝撃性が高く、比エネルギー吸収量が大きく、軍事の面で防弾服、防弾ヘルメット、防弾板(例えば、ヘリコプター、タンク及び船舶の装甲防護板)、防刃着、レーダの防護ケースカバー、導弾カバーなどを製造することができる。
【0003】
しかし、UHMWPE繊維は、高分子鎖が簡単で平面の鋸歯構造であり、分子間に水素結合作用がなく、かつ分子間のファンデルワールス力が分散力のみであり、分子間作用力が小さいため、UHMWPE繊維の耐熱性が低く、クリープしやすく、それにより従来のUHMWPE繊維の関連製品(防弾ヘルメット、防弾服、ロープなど)の耐用年数が短く(3~5年)、使用コストが高く、その応用の拡張が深刻に制限される。したがって、UHMWPE繊維の耐熱性及び耐クリープ性に対する研究は、本分野の難点及び研究のホットスポットになる。
【0004】
WO2009043598では、UHMWPE高分子鎖に微量の分岐鎖を正確に導入することにより、耐クリープ性を2桁向上させ、永久的に固定されたアンカーロープに用いられる耐クリープ繊維を開発したが、その耐熱性が本質的に向上しない。中国特許出願CN200910097866では、UHMWPE繊維に対して、光増感剤が溶解した超臨界二酸化炭素により浸透補助前処理を行った後、紫外線を照射して、UHMWPE繊維の内部分子鎖間に架橋が発生することにより、その耐クリープ性を向上させる。CN201510096055及びCN201510096511では、溶媒により超高分子量ポリエチレン粉末を膨潤させ、孔隙を形成し、次に架橋剤、硬化剤、開始剤などを添加し、ゲル紡糸及び照射架橋を経て耐熱帯電防止UHMWPE繊維を得る。従来技術において、UHMWPE繊維を光増感剤及び架橋剤で構成された有機溶液に浸漬し、次に繊維に紫外線を照射して架橋を行う。CN201510267463では、アリル架橋剤、ラジカル捕捉剤、開始剤などを超高分子量ポリエチレンゲルに添加し、紡糸及び照射により、架橋されたUHMWPE繊維を製造する。CN201810883121では、VPOSSを含むUHMWPE繊維原糸を最終段階の熱延伸処理時に架橋させて架橋改質UHMWPE繊維を製造する。CN201110434278では、UHMWPE繊維を架橋液に浸漬し、さらに紫外線を照射することにより、架橋改質UHMWPE繊維を製造する。CN201611262380では、表面に放射線増感剤を被覆して照射することにより、表面が架橋されたUHMWPE繊維を製造する。文献(放射研究及び放射プロセス学報、1998(03):7~12)では、高エネルギー放射により架橋UHMWPE繊維を製造する方法が報告されている。これらの方法は、主に工程が複雑であり、効率が低く、架橋が不均一であり、品質が安定せず、製造コストが高すぎる。或いは、架橋程度が不十分であり、性能の向上が限られ、或いは、架橋剤を添加する必要があり、これらの架橋剤を用いて繊維の加工時に架橋すると、紡糸が安定せず、大規模で生産しにくい。例えば、光開始剤、架橋剤浸漬法は、浸漬時間が長く、温度による影響が大きく、光開始剤及び架橋剤の分布が不均一であり、最終的に製品の品質が安定せず、製造効率が低下するため、大規模な製造に適しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2009043598
【文献】中国特許出願CN200910097866
【文献】中国特許出願CN201510096055
【文献】中国特許出願CN201510096511
【文献】中国特許出願CN201510267463
【文献】中国特許出願CN201810883121
【文献】中国特許出願CN201110434278
【文献】中国特許出願CN201611262380
【非特許文献】
【0006】
【文献】放射研究及び放射プロセス学報、1998(03):7~12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に存在する、ポリエチレン繊維がクリープしやすく、寸法安定性が低く、耐熱性が低いという問題を解決するために、本発明は、紡糸原液、耐熱耐クリープ繊維及びその製造方法を提供する。本発明の第1の目的は、ポリエチレン紡糸原液を提供することであり、本発明の第2の目的は、高ゲル含有量及び高結晶度の両方を有することにより、耐クリープ性及び耐熱性に優れた高性能ポリエチレン繊維を提供することであり、本発明の第3の目的は、当該繊維を大規模で、連続的に製造することに適する低コストで効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリエチレン紡糸原液は、溶媒及びポリエチレンを含む以外、光開始剤をさらに含み、前記光開始剤の含有量は、ポリエチレンの質量の0.2~10wt%であり、より好ましくは、0.5~8wt%であり、最も好ましくは、1~5wt%であり、低すぎると、高架橋度を提供することができず、高すぎると、着色しやすく、繊維の力学的性質に影響を与える。
【0009】
前記光開始剤は、光開始剤I、光開始剤II及び光開始剤IIIのうちの1種以上である。
【0010】
前記光開始剤Iは、
【化1】
という構造式を持ち、式中、Rは、水素原子、C1~C10の炭化水素基、又はハロゲンであり、原料の入手性を考慮すると、好ましくは、水素原子又はメチル基であり、Mは、スチレン単位、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、スチレン誘導体単位、アクリル酸誘導体単位、又はメタクリル酸誘導体単位であり、xは、2~1000の整数であり、yは、0~2000の整数である。
【0011】
前記光開始剤IIは、
【化2】
という構造式を持ち、式中、nは、2以上の整数であり、Rは、C1~C20のヒドロカルビレン基又は
【化3】
である(式中、Rは、C1~C18のヒドロカルビレン基である)。
【0012】
前記光開始剤IIIは、
【化4】
という構造式を持ち、式中、Rは、ハロゲン、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又はヒドキシル基であり、Rは、ハロゲン、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又はヒドキシル基である。
【0013】
前記のような光開始剤IIの製造方法は、以下のとおりである。
【0014】
がC1~C20のヒドロカルビレン基である場合、方法は、以下のとおりである。4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジハロアルカン及び無機塩基を溶媒に添加し、かつ不活性雰囲気で、溶媒を還流させて常圧で重縮合反応を行い、重縮合反応の温度が溶媒還流温度であり、時間が4~24hであり、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンとジハロアルカンとのモル比が0.95~1.05:1であり、無機塩基とジハロアルカンとのモル比が2~4:1であり、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンのモル数と溶媒の体積との比が1~5mol:1Lであり、ジハロアルカンがC1~C20のヒドロカルビレンジブロミドであり、無機塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであり、溶媒がアセトン、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、トルエン又はキシレンである。
【0015】

【化5】
である場合、方法は、以下のとおりである。
【0016】
(1)アセチル化:4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンに触媒I及び過剰の無水酢酸を添加し、140~160℃に加熱して2~5h反応させた後、濾過し、洗浄し、乾燥させて、4,4’-アセトキシベンゾフェノンを得る。
【0017】
アセチル化過程において、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、触媒I及び無水酢酸のモル比が1:0.01~0.10:2~4であり、触媒Iが濃硫酸、p-トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸である。
【0018】
(2)溶融重縮合反応:4,4’-アセトキシベンゾフェノンに二酸及び触媒IIを添加し、不活性雰囲気で2~3回置換し、かつ不活性雰囲気で1~2h内に210~250℃まで徐々に昇温し、次に真空条件下で1~8h重合する。
【0019】
溶融重縮合反応における4,4’-アセトキシベンゾフェノンと二酸とのモル比が0.95~1.05:1であり、触媒IIの添加量が4,4’-アセトキシベンゾフェノンと二酸の総質量の0.1~2.0wt%であり、触媒IIが酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、酢酸第一スズ、酸化アンチモン又はチタン酸テトラブチルであり、二酸がテレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸又はC1~C20のアルキル二酸である。
【0020】
好ましい技術手段は、以下のとおりである。
【0021】
前記のようなポリエチレン紡糸原液において、前記光開始剤Iの数平均分子量は、1.05~100kであり、Rは、水素原子又はメチル基であり、x/(x+y)は、0.05~1である。
【0022】
前記光開始剤IIの構造式において、ヒドロカルビレン基は、アルキレン基又はアリーレン基であり、その熱分解温度≧250℃である。従来技術における光開始剤の熱分解温度は、基本的に250℃よりも低く、即ち、一般的なポリエチレンのゲル紡糸温度(~290℃)よりも低いため、一般的な光開始剤は、紡糸時に揮発し、熱分解されて無効になり、紡糸原液に添加されることに適しない。
【0023】
前記光開始剤IIの構造式において、ヒドロカルビレン基は、アルキレン基又はアリーレン基であり、光開始剤IIの数平均分子量は、1.2~100kであり、分子量分布は、1.3~1.8である。
【0024】
前記光開始剤IIIの構造式において、RとRは、同時にハロゲン、アルコキシ基、アルキル基、アリール基又はヒドキシル基である。
【0025】
前記のようなポリエチレン紡糸原液において、ポリエチレンと溶媒との質量比は、5:95~30:70であり、ポリエチレンの分子量は、30万~1000万(好ましくは、100万~1000万)であり、前記溶媒は、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、パラフィン油、ホワイトオイル、鉱物油、植物油、動物油、灯油、炭化水素系溶媒及びキシレン溶媒のうちの1種以上である。入手性及び操作性を考慮すると、前記溶媒は、好ましくは、ホワイトオイル、キシレン又はデカヒドロナフタレンのうちの1種以上である。
【0026】
前記のようなポリエチレン紡糸原液において、アルキニル化合物をさらに含み、本発明におけるアルキニル化合物は、光開始剤と共に乗算効果を発揮することができ、アルキニル化合物を添加すると、ポリエチレンの架橋速度を著しく加速し、ポリエチレンの架橋度を向上させることができる。前記紡糸原液において、アルキニル化合物の含有量は、ポリエチレンの質量の0.1~5.0wt%である。アルキニル化合物は、1,4-ジフェニルブタジエン、4-フェニルエチニルフタル酸無水物、4,4’-ジエチニルビフェニル、1,3,5-トリエチニルベンゼン、1,3-ジエチニルベンゼン及び1,4-ジエチニルベンゼンのうちの1種以上である。
【0027】
前記のようなポリエチレン紡糸原液において、発明の効果に影響を与えない前提で、紡糸原液に様々な助剤、例えば、酸化防止剤、顔料又は/及び染料などをさらに含んでもよい。酸化防止剤は、トコフェロール、ビタミンE、ブチル化ヒドロキシトルエン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイト及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトなどから選択される。本発明は、染料及び顔料を特に限定しない。染料は、ディスパースレッドFB、ディスパースオレンジS-4RL、ディスパースバイオレットHFRL、ディスパースブルーCR-E、ディスパースイエローA-G、ディスパースグリーンC-6Bなどに分けられる。顔料は、無機顔料であってもよく、例えば、酸化物、クロム酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、リン酸塩、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン、インジゴイド、キナクリドンなどである。
【0028】
本発明は、ポリエチレン紡糸原液の製造方法を限定しない。一般的に、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、パラフィン油、ホワイトオイル、鉱物油、植物油、動物油、灯油、炭化水素溶媒及びキシレンのうちの1種以上を溶媒として用い、光開始剤を添加し、様々な助剤(例えば、架橋剤、酸化防止剤、顔料又は/及び染料など)を添加するか又は添加せず、ポリエチレン粉末を添加し、加熱又は加熱しない場合に撹拌して膨潤させて、紡糸原液を得る。
【0029】
前記のようなポリエチレン紡糸原液を用いて耐熱耐クリープポリエチレン繊維を製造する方法は、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0030】
工程(1)において、ゲル紡糸及び多段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、本発明は、具体的なゲル紡糸プロセスを特に限定せず、乾式ゲル紡糸プロセスを用いてもよく、湿式ゲル紡糸プロセスを用いてもよい。
【0031】
工程(2)において、紫外光源により、工程(1)で得られたポリエチレン繊維の表面に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が100~5000mW/cm(繊維の紫外線で照射される箇所の紫外線の光強度)であり、紫外線の照射時間が10~600sである。
【0032】
本発明は、ゲル紡糸プロセスを限定せず、従来のプロセスを用いればよい。紡糸原液を二軸スクリュー押出機により混合しながら押出し、計量ポンプ及び紡糸口金により定量的に噴糸し、さらに乾式法又は湿式法により成形し、多段延伸して、ポリエチレン繊維を得る。二軸スクリュー押出機の温度は、溶媒に応じて設定される必要があり、例えば、デカヒドロナフタレンを溶媒として用いる場合、約180℃に設定することができ、ホワイトオイルを用いる場合、290℃に達することができる。
【0033】
従来技術において、紫外線硬化過程において酸素による重合阻害が存在し、繊維の比表面積が塗料、インクなどよりはるかに大きいことに鑑み、一般的に、空気雰囲気で光硬化のみによりゲル含有量の高いポリエチレン繊維を製造しにくいと考えられる。予想外のことに、本発明において、適切な紫外光源、適切な光開始剤及び最適化された光架橋プロセスを用い、架橋剤を添加しない条件で、空気雰囲気で、紫外線の照射によりゲル含有量の高い架橋ポリエチレン繊維を連続的に製造することができる。光強度が低すぎると、必要な照射時間が長く、生産効率に影響を与え、光強度が強すぎると、ポリエチレン高分子の主鎖が破断するなどの副反応を引き起こしやすいことを考慮すると、繊維での紫外線の強度は、好ましくは、100~5000mW/cmであり、さらに好ましくは、200~3000mW/cmであり、最も好ましくは、500~2000mW/cmである。
【0034】
前記のような耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法において、前記多段延伸を、第1段延伸倍率が2~8倍であり、第2段延伸倍率が1~2倍であり、第3段延伸倍率が1~2倍である3段延伸とし、延伸温度を90~150℃とすることを特徴とする。
【0035】
前記のような耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法において、紫外線の波長は、270~400nmであることを特徴とする。本発明は、紫外光源を特に限定せず、省エネルギー、高光強度及び耐用年数を考慮すると、紫外LED面光源が好ましい。紫外線の波長は、特に限定されず、光源コスト、安全性及び入手性を考慮すると、一般的に、270~400nmの間にあることが好ましい。
【0036】
前記のような耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法で製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が20~100wt%であり、結晶度が50~90wt%である。繊維中のゲル含有量が20wt%よりも大きい場合、その耐クリープ性、寸法安定性及び耐熱性を顕著に改善することができる。高いゲル含有量は、耐熱性、寸法安定性及び強度保持率のさらなる向上に役立つ。高いゲル含有量及び高い結晶度を兼ね備えるため、ポリエチレン繊維は、優れた耐クリープ性、耐熱性及び寸法安定性を有する。
【0037】
前記のような耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が10-8~10-7-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が155~245℃であり、好ましくは、190~245℃であり、最も好ましくは、206~245℃である。
【0038】
本発明の原理は、以下のとおりである。
【0039】
本発明で設計され開発された光開始剤は、高分子構造を有する光開始剤I及び光開始剤IIであってもよく、二置換性ベンゾフェノン構造の光開始剤IIIであってもよく、それらは、特定の構造により、従来の小分子光開始剤が持つことができない高い熱安定性及び特定の溶解性能(高温で紡糸溶媒に溶解し、低温で析出して繊維に保持され、溶媒と共に流失せず、抽出剤に溶解せず、抽出過程において溶出して流失しない)を有する。したがって、それらを紡糸原液に添加することができ、ゲル紡糸、延伸及び抽出過程において揮発せず、熱分解が発生せず、抽出過程において溶出せず、流失せず、それらの性質及び数量の安定を保持することができ、繊維紡糸成形後に、これらの光開始剤は、ポリエチレンの非晶質相に存在し、最後に、紫外線で照射されると、ポリエチレン繊維の非晶質部分の架橋を効率的に開始し、高架橋度(高ゲル含有量)及び高結晶度のポリエチレン繊維を製造するという目的を達成する。
【0040】
本発明のポリエチレン繊維は、双高構造(高ゲル含有量及び高結晶度)を有し、分子及び凝集状態構造の面でポリエチレン高分子鎖間の滑りを根本的に限定するため、繊維の耐クリープ性、寸法安定性、耐熱性などの面での質的な改善を実現することができる。
【0041】
本発明は、光開始剤を紡糸原液に直接添加し、高温で二軸スクリュー押出機により強化混合することにより、光開始剤がポリエチレン溶液、ゲル繊維及び延伸繊維において均一に分散することを実現することができ、成形繊維を浸漬し光開始剤を導入する方法において不均一であり、時間が長すぎるという問題を回避することができ、ポリエチレン耐クリープ繊維の連続的な製造に可能性を提供する。また、本発明は、最近開発された高光強度紫外線LED光源を用い、その高光強度のため、紫外線の照射によるポリエチレンの架橋が数十秒以内に完了することができ、さらに、LED光源の制御可能性が高く、安定性が高く、耐用年数が長く、消費電力が低いなどの特性を結合し、最終的に、ポリエチレン耐クリープ繊維を低コストで安定して連続的に製造することができる。
【発明の効果】
【0042】
(1)本発明に係る耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、広く応用され、クレーンロープ、係留ロープ又は索具に適用され、防弾用の多層複合製品、例えば、防弾服、ヘルメット、硬質及び軟質防護板、車両装甲板、釣り糸及び漁網、地網、貨物網及びカーテン、凧糸、デンタルフロス、テニスラケット糸、帆布、編布及び不織布、織物テープ、電池隔離物、コンデンサ、圧力容器、ホース、臍帯ケーブル、自動車装置、電力伝送ベルト、ケーブル、光ケーブル、建築材料、耐切離及び耐切断製品、防護手袋、複合運動装置、スキーストック、ヘルメット、ボート、丸太舟、自転車及び船体並びに翼梁、スピーカーコーン、高性能電子絶縁材料、アンテナカバー、帆、及びジオテキスタイルに用いられ、耐摩耗、耐熱、耐クリープ、耐衝撃、自己潤滑、耐腐食、耐低温、衛生無毒、接着しにくく、吸水しにくく、密度が小さいなどの総合性能を有し、適用性が広く、耐用年数が長い。
【0043】
(2)本発明の耐熱耐クリープ繊維の製造方法は、高い熱安定性及び特定の溶解性能を有する光開始剤を紡糸原液に直接添加する方式を用いて、従来の方法(成形繊維を浸漬し光開始剤を導入する方法)における、開始剤の分布が不均一で時間が長すぎるという問題を解決する。最近開発された高光強度紫外線LED光源を用い、従来の紫外光源に比べて、光強度が高く、制御可能性が高く、安定性が高く、耐用年数が長く、消費電力が低く、紫外線の照射によるポリエチレンの架橋が数十秒以内に安定して連続的に完了することができる。したがって、本発明のポリエチレン耐クリープ繊維の製造方法は、連続化、低コスト化及び安定化を実現しやすく、広い普及応用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】連続的な紫外線の照射による本発明のポリエチレン繊維の架橋の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、具体的な実施形態を参照しながら、本発明をさらに説明する。これらの製造例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。また、本発明の教示内容を読んだ後、当業者が本発明に対して様々な変更又は修正を行うことができ、これらの等価形態は、同様に、本願の特許請求の範囲によって限定される範囲に含まれることを理解されたい。
【0046】
実施例に係るモノマー、熱開始剤、光開始剤、アルキニル化合物、溶媒などは、畢得医薬、国薬集団又は天津久日新材料株式会社から購入され、酸化防止剤、顔料、染料などの助剤は、いずれも市販品である。
【0047】
ゲル含有量のテストについて、約0.2gの架橋繊維を秤量してきれいなステンレス鋼網に入れて小さなサンプルバッグに包み、ソックスレー抽出器に入れ、キシレンを用いて6h還流抽出する。サンプルバッグを取り出して、真空オーブンで80℃で12h乾燥させて秤量し、ゲル含有量を計算する。
【0048】
結晶度の測定について、Perkin Elmer会社のDSC8000型式の示差走査熱量計を用いて架橋ポリエチレン繊維の熱性能をテストする。5~8mgの繊維サンプルを秤量してアルミニウム製ディスクに入れ、窒素ガス雰囲気で10℃/minで20℃から180℃まで昇温する。当該昇温曲線によりポリエチレン繊維の溶融エンタルピーを決定し、100%結晶したポリエチレンの溶融エンタルピーで割ってポリエチレン繊維の結晶度を計算する。
【0049】
クリープ伸び率の測定について、GBT19975-2005高強度化学繊維フィラメント糸の引張性能試験方法に規定された引張クリープ試験方法に基づいて行い、負荷は、繊維破断負荷の50%であり、試験温度は、70℃である。
【0050】
(製造例1)
光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0051】
工程(1)において、アゾビスイソブチロニトリル、キシレン及び4-アクリロキシベンゾフェノンを三口フラスコに入れ、アルゴンガスで重合反応させ、反応温度が60℃であり、反応時間が2時間であり、アゾビスイソブチロニトリルの含有量が4-アクリロキシベンゾフェノンの総質量の10wt%であり、4-アクリロキシベンゾフェノンのモル数とキシレンの体積との比が1mol:1Lである。
【0052】
工程(2)において、減圧蒸留の方式を用い、反応していないモノマー及び溶媒を除去し、真空乾燥させ、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が12hであり、光開始剤Iを得て、減圧蒸留のプロセス条件は、80℃の条件下で、溶媒が完全に揮発するまで沸騰するまで徐々に減圧することである。製造された光開始剤Iは、
【化6】
という構造式を持ち、
式中、xは、整数であり、Rは、水素原子であり、その数平均分子量は、1.05kである。
【0053】
(製造例2)
光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0054】
工程(1)において、アゾビスイソブチロニトリル、キシレン、4-アクリロキシベンゾフェノン及びアクリル酸をアルゴンガスで共重合反応させ、反応温度が65℃であり、反応時間が3時間であり、アゾビスイソブチロニトリルの含有量が4-アクリロキシベンゾフェノンの総質量の2wt%であり、4-アクリロキシベンゾフェノンのモル数がXであり、アクリル酸のモル数がYであり、XとYの関係がX:(X+Y)=0.05であり、4-アクリロキシベンゾフェノン及びアクリル酸の総モル数とキシレンの体積との比が2mol:1Lである。
【0055】
工程(2)において、減圧蒸留の方式を用い、反応していないモノマー及び溶媒を除去し、真空乾燥させ、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が12hであり、光開始剤Iを得て、減圧蒸留のプロセス条件は、40℃の条件下で、溶媒が完全に揮発するまで沸騰するまで徐々に減圧することである。
【0056】
製造された光開始剤Iは、
【化7】
という構造式を持ち、
式中、xとyは、いずれも整数であり、Rは、水素原子であり、Mは、アクリル酸単位であり、x/(x+y)は、0.05であり、その数平均分子量は、15kである。
【0057】
(製造例3)
光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0058】
工程(1)において、アゾビスイソブチロニトリル、キシレン、4-アクリロキシベンゾフェノン及びスチレンをアルゴンガスで共重合反応させ、反応温度が70℃であり、反応時間が4時間であり、アゾビスイソブチロニトリルの含有量が4-アクリロキシベンゾフェノンの総質量の0.05wt%であり、4-アクリロキシベンゾフェノンのモル数がXであり、スチレンのモル数がYであり、XとYの関係がX:(X+Y)=0.3であり、4-アクリロキシベンゾフェノン及びスチレンの総モル数とキシレンの体積との比が2mol:1Lである。
【0059】
工程(2)において、減圧蒸留の方式を用い、反応していないモノマー及び溶媒を除去し、真空乾燥させ、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が12hであり、光開始剤Iを得て、減圧蒸留のプロセス条件は、40℃の条件下で、溶媒が完全に揮発するまで沸騰するまで徐々に減圧することである。
【0060】
製造された光開始剤Iは、
【化8】
という構造式を持ち、
式中、xとyは、いずれも整数であり、Rは、水素原子であり、Mは、スチレン単位であり、x/(x+y)は、0.3であり、その数平均分子量は、100kである。
【0061】
(製造例4)
光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0062】
工程(1)において、ジベンゾイルペルオキシド、キシレン、4-メタクリロキシベンゾフェノン及びp-クロロスチレンをアルゴンガスで共重合反応させ、反応温度が75℃であり、反応時間が5時間であり、ジベンゾイルペルオキシドの含有量が4-メタクリロキシベンゾフェノンの総質量の1wt%であり、4-メタクリロキシベンゾフェノンのモル数がXであり、p-クロロスチレンのモル数がYであり、XとYの関係がX:(X+Y)=0.5であり、4-メタクリロキシベンゾフェノン及びp-クロロスチレンの総モル数とキシレンの体積との比が2mol:1Lである。
【0063】
工程(2)において、沈殿の方式を用い、反応していないモノマー及び溶媒を除去し、真空乾燥させ、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が12hであり、光開始剤Iを得て、沈殿のプロセス条件は、高分子光開始剤が完全に溶解するまでクロロホルム溶媒を添加し、次に、沈殿が増加しなくなるまで、エタノールを沈殿剤として添加して高分子光開始剤を沈殿させ、そして、濾過して、反応していないモノマーを除去することである。
【0064】
製造された光開始剤Iは、
【化9】
という構造式を持ち、
式中、xとyは、いずれも整数であり、Rは、メチル基であり、Mは、p-クロロスチレン単位であり、x/(x+y)は、0.5であり、その数平均分子量は、30kである。
【0065】
(製造例5)
光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0066】
工程(1)において、ジベンゾイルペルオキシド、キシレン、4-アクリロキシベンゾフェノン及びメタクリル酸ブチルをアルゴンガスで共重合反応させ、反応温度が78℃であり、反応時間が6時間であり、ジベンゾイルペルオキシドの含有量が4-アクリロキシベンゾフェノンの総質量の3wt%であり、4-アクリロキシベンゾフェノンのモル数がXであり、メタクリル酸ブチルのモル数がYであり、XとYの関係がX:(X+Y)=0.5であり、4-アクリロキシベンゾフェノン及びメタクリル酸ブチルの総モル数とキシレンの体積との比が3mol:1Lである。
【0067】
工程(2)において、沈殿の方式を用い、反応していないモノマー及び溶媒を除去し、真空乾燥させ、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が12hであり、光開始剤Iを得て、沈殿のプロセス条件は、高分子光開始剤が完全に溶解するまでクロロホルム溶媒を添加し、次に、沈殿が増加しなくなるまで、エタノール、メタノール又はエーテルを沈殿剤として添加して高分子光開始剤を沈殿させ、そして、濾過して、反応していないモノマーを除去することである。
【0068】
製造された光開始剤Iは、
【化10】
という構造式を持ち、
式中、xとyは、いずれも整数であり、Rは、水素原子であり、Mは、メタクリル酸ブチルであり、x/(x+y)は、0.5であり、その数平均分子量は、15kである。
【0069】
(製造例6)
光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0070】
工程(1)において、ジベンゾイルペルオキシド、キシレン、4-アクリロキシベンゾフェノン及びアクリル酸ベヘニルをアルゴンガスで共重合反応させ、反応温度が80℃であり、反応時間が8時間であり、ジベンゾイルペルオキシドの含有量が4-アクリロキシベンゾフェノンの総質量の1wt%であり、4-アクリロキシベンゾフェノンのモル数がXであり、アクリル酸ベヘニルのモル数がYであり、XとYの関係がX:(X+Y)=0.7であり、4-アクリロキシベンゾフェノン及びアクリル酸ベヘニルの総モル数とキシレンの体積との比が3mol:1Lである。
【0071】
工程(2)において、沈殿の方式を用い、反応していないモノマー及び溶媒を除去し、真空乾燥させ、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が12hであり、光開始剤Iを得て、沈殿のプロセス条件は、高分子光開始剤が完全に溶解するまでクロロホルム溶媒を添加し、次に、沈殿が増加しなくなるまで、エーテルを沈殿剤として添加して高分子光開始剤を沈殿させ、そして、濾過して、反応していないモノマーを除去することである。
【0072】
製造された光開始剤Iは、
【化11】
という構造式を持ち、
式中、xとyは、いずれも整数であり、Rは、水素原子であり、Mは、アクリル酸ベヘニルであり、x/(x+y)は、0.7であり、その数平均分子量は、28kである。
【0073】
(製造例7)
高分子光開始剤の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
【0074】
4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジハロアルカン(1,4-ジブロモベンゼン)及び無機塩基(炭酸ナトリウム)を溶媒(プロパノール)に添加し、かつアルゴンガスで溶媒を還流させて重縮合反応させ、反応温度が87℃であり、反応時間が16hであり、撹拌速度が300rpmであり、反応終了後、吸引濾過し、水及びメタノールを用いて4回交互に十分に洗浄し、80℃で6h真空乾燥させて、高分子光開始剤を得て、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンとジジハロアルカンとのモル比が0.95:1であり、無機塩基とジジハロアルカンとのモル比が2:1であり、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンのモル数と溶媒の体積との比が3mol:1Lである。
【0075】
製造された高分子光開始剤は、
【化12】
という構造式を持ち、
nは、整数であり、Rは、1,4-フェニレンであり、高分子光開始剤は、数平均分子量が1.2kであり、分子量分布が1.3であり、熱分解温度が250℃である。
【0076】
(製造例8)
高分子光開始剤の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
【0077】
4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジハロアルカン(1,20-ジブロモイコサン)及び無機塩基(炭酸水素ナトリウム)を溶媒(キシレン)に添加し、かつ窒素ガスで溶媒を還流させて重縮合反応させ、反応温度が140℃であり、反応時間が22hであり、撹拌速度が300rpmであり、反応終了後、吸引濾過し、水及びメタノールを用いて4回交互に十分に洗浄し、80℃で6h真空乾燥させて、高分子光開始剤を得て、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンとジジハロアルカンとのモル比が1:1であり、無機塩基とジジハロアルカンとのモル比が4:1であり、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンのモル数と溶媒の体積との比が1mol:1Lである。
【0078】
製造された高分子光開始剤は、
【化13】
という構造式を持ち、
nは、整数であり、Rは、エイコサメチレン基であり、高分子光開始剤は、数平均分子量が100kであり、分子量分布が1.54であり、熱分解温度が310℃である。
【0079】
(製造例9)
高分子光開始剤の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
【0080】
4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジハロアルカン(ジクロロメタン)及び無機塩基(水酸化カリウム)を溶媒(酢酸エチル)に添加し、かつ窒素ガスで溶媒を還流させて重縮合反応させ、反応温度が50℃であり、反応時間が24hであり、撹拌速度が300rpmであり、反応終了後、吸引濾過し、水及びメタノールを用いて4回交互に十分に洗浄し、80℃で6h真空乾燥させて、高分子光開始剤を得て、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンとジジハロアルカンとのモル比が1:1であり、無機塩基とジジハロアルカンとのモル比が2:1であり、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンのモル数と溶媒の体積との比が5mol:1Lである。
【0081】
製造された高分子光開始剤は、
【化14】
という構造式を持ち、
nは、整数であり、Rは、メチレン基であり、高分子光開始剤は、数平均分子量が12kであり、分子量分布が1.8であり、熱分解温度が295℃である。
【0082】
(製造例10)
高分子光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0083】
工程(1)のアセチル化において、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンに触媒I(濃硫酸)及び過剰の無水酢酸を添加し、無水酢酸が還流(140℃)するまで加熱し、4h反応させた後に25℃まで冷却し、次に反応生成物を大量の脱イオン水を収容した容器に注ぎ、濾過し、洗浄し、真空乾燥させて、4,4’-アセトキシベンゾフェノンを得て、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、触媒I及び無水酢酸のモル比が1:0.01:2であり、反応物のモル数と脱イオン水の体積との比が1mol:1Lである。
【0084】
工程(2)の溶融重縮合反応において、4,4’-アセトキシベンゾフェノンに二酸(マロン酸)及び触媒II(酢酸亜鉛)を添加し、窒素ガスで2回置換し、かつ窒素ガス雰囲気で2h内に220℃まで徐々に昇温し、次に圧力290Paの条件下で1h重合し、4,4’-アセトキシベンゾフェノンと二酸とのモル比が1:1であり、触媒IIの添加量が4,4’-アセトキシベンゾフェノンと二酸の総質量の0.2wt%である。
【0085】
製造された高分子光開始剤は、
【化15】
という構造式を持ち、
nは、整数であり、Rは、
【化16】
であり(式中、Rは、メチレン基である)、高分子光開始剤は、数平均分子量が1.2kであり、分子量分布が1.3であり、熱分解温度が255℃である。
【0086】
(製造例11)
高分子光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0087】
工程(1)のアセチル化において、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンに触媒I(p-トルエンスルホン酸)及び過剰の無水酢酸を添加し、無水酢酸が還流(140℃)するまで加熱し、3h反応させた後に26℃まで冷却し、次に反応生成物を大量の脱イオン水を収容した容器に注ぎ、濾過し、洗浄し、真空乾燥させて、4,4’-アセトキシベンゾフェノンを得て、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、触媒I及び無水酢酸のモル比が1:0.05:4であり、反応物のモル数と脱イオン水の体積との比が1mol:1Lである。
【0088】
工程(2)の溶融重縮合反応において、4,4’-アセトキシベンゾフェノンに二酸(テレフタル酸)及び触媒II(チタン酸テトラブチル)を添加し、アルゴンガスで3回置換し、かつアルゴンガス雰囲気で1h内に230℃まで徐々に昇温し、次に圧力200Paの条件下で5h重合し、4,4’-アセトキシベンゾフェノンと二酸とのモル比が1.05:1であり、触媒IIの添加量が4,4’-アセトキシベンゾフェノンと二酸の総質量の0.1wt%である。
【0089】
製造された高分子光開始剤は、
【化17】
という構造式を持ち、
nは、整数であり、Rは、
【化18】
であり(式中、Rは、p-フェニレン基である)、高分子光開始剤は、数平均分子量が5.9kであり、分子量分布が1.3であり、熱分解温度が285℃である。
【0090】
(製造例12)
高分子光開始剤の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
【0091】
4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート)を溶媒(ベンゼン)に添加し、かつ窒素ガスで溶媒を還流させて反応させ、反応温度が80℃であり、反応時間が1hであり、反応終了後、吸引濾過し、メタノールを用いて洗浄し、次に80℃で6h真空乾燥させて、高分子光開始剤を得て、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンとジイソシアネートとのモル比が1.05:1であり、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンのモル数と溶媒の体積との比が1mol:1Lである。
【0092】
製造された高分子光開始剤は、
【化19】
という構造式を持ち、
nは、整数であり、Rは、
【化20】
であり(式中、Rは、ジフェニルメタンである)、高分子光開始剤は、数平均分子量が3.7kであり、分子量分布が1.8であり、熱分解温度が262℃である。
【0093】
(製造例13)
高分子光開始剤の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
【0094】
4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート)を溶媒(トルエン)に添加し、かつアルゴンガスで溶媒を還流させて反応させ、反応温度が110℃であり、反応時間が1hであり、反応終了後、吸引濾過し、メタノールを用いて洗浄し、次に80℃で6h真空乾燥させて、高分子光開始剤を得て、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンとジイソシアネートとのモル比が0.95:1であり、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンのモル数と溶媒の体積との比が5mol:1Lである。
【0095】
製造された高分子光開始剤は、
【化21】
という構造式を持ち、
nは、整数であり、Rは、
【化22】
であり(式中、Rは、テトラメチレンである)、高分子光開始剤は、数平均分子量が1.2kであり、分子量分布が1.3であり、熱分解温度が250℃である。
【0096】
(製造例14)
光開始剤の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(2)を含む。
【0097】
工程(1)において、ジベンゾイルペルオキシド、キシレン、4-アクリロキシベンゾフェノン及びメタクリル酸をアルゴンガスで共重合反応させ、反応温度が78℃であり、反応時間が6時間であり、ジベンゾイルペルオキシドの含有量が4-アクリロキシベンゾフェノンの総質量の3wt%であり、4-アクリロキシベンゾフェノンのモル数がXであり、メタクリル酸のモル数がYであり、XとYの関係がX:(X+Y)=0.5であり、4-アクリロキシベンゾフェノン及びメタクリル酸の総モル数とキシレンの体積との比が3mol:1Lである。
【0098】
工程(2)において、沈殿の方式を用い、反応していないモノマー及び溶媒を除去し、真空乾燥させ、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が12hであり、光開始剤Iを得て、沈殿のプロセス条件は、高分子光開始剤が完全に溶解するまでクロロホルム溶媒を添加し、次に、沈殿が増加しなくなるまで、エタノール、メタノール又はエーテルを沈殿剤として添加して高分子光開始剤を沈殿させ、そして、濾過して、反応していないモノマーを除去することである。
【0099】
製造された光開始剤Iは、
【化23】
という構造式を持ち、
式中、xとyは、いずれも整数であり、Rは、水素原子であり、Mは、メタクリル酸であり、x/(x+y)は、0.48であり、その数平均分子量は、12kである。
【0100】
(製造例15)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、図1に示すように、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0101】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、アルキニル化合物、酸化防止剤、顔料及び染料を溶媒に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0102】
ポリエチレンと溶媒との質量比が30:70であり、ポリエチレンの分子量が30万である。
【0103】
溶媒がn-ヘプタン、n-ヘキサン及びシクロヘキサンの混合溶媒であり、かつ質量比が1:1:1である。
【0104】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の0.2wt%であり、光開始剤が製造例1で製造された光開始剤である。
【0105】
アルキニル化合物が1,4-ジフェニルブタジエンであり、アルキニル化合物の含有量がポリエチレンの質量の5wt%である。
【0106】
酸化防止剤がビタミンEであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.1wt%である。
【0107】
顔料がアゾ顔料であり、その含有量がポリエチレンの質量の0.1wt%である。
【0108】
染料がディスパースレッドFBであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.1wt%である。
【0109】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が2倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が90℃である。
【0110】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が100mW/cmであり、紫外線の波長が270nmであり、紫外線の照射時間が600sである。
【0111】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が20wt%であり、結晶度が80wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が10.0×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が155℃である。
【0112】
(製造例16)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0113】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、アルキニル化合物、酸化防止剤、顔料及び染料を溶媒(炭化水素溶媒)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0114】
ポリエチレンと溶媒との質量比が20:80であり、ポリエチレンの分子量が100万である。
【0115】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の10wt%であり、光開始剤が製造例2で製造された光開始剤である。
【0116】
アルキニル化合物が4-フェニルエチニルフタル酸無水物であり、アルキニル化合物の含有量がポリエチレンの質量の4wt%である。
【0117】
酸化防止剤がブチル化ヒドロキシトルエンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.25wt%である。
【0118】
顔料がフタロシアニン顔料であり、その含有量がポリエチレンの質量の0.2wt%である。
【0119】
染料がディスパースオレンジS-4RLであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.25wt%である。
【0120】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が3倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が95℃である。
【0121】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が1000mW/cmであり、紫外線の波長が365nmであり、紫外線の照射時間が60sである。
【0122】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が100wt%であり、結晶度が50wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が1.4×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が241℃である。
【0123】
(製造例17)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0124】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、アルキニル化合物、酸化防止剤、顔料及び染料を溶媒(テトラヒドロナフタレン)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0125】
ポリエチレンと溶媒との質量比が15:85であり、ポリエチレンの分子量が280万である。
【0126】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の0.8wt%であり、光開始剤が製造例3で製造された光開始剤である。
【0127】
アルキニル化合物が4,4’-ジエチニルビフェニルであり、アルキニル化合物の含有量がポリエチレンの質量の2wt%である。
【0128】
酸化防止剤がビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0129】
顔料がアントラキノンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.2wt%である。
【0130】
染料がディスパースバイオレットHFRLであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0131】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が4倍であり、第2段延伸倍数が2倍であり、第3段延伸倍数が2倍であり、延伸温度が100℃である。
【0132】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が800mW/cmであり、紫外線の波長が365nmであり、紫外線の照射時間が90sである。
【0133】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が95wt%であり、結晶度が85wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が1.5×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が240℃である。
【0134】
(製造例18)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0135】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、アルキニル化合物、酸化防止剤、顔料及び染料を溶媒(デカヒドロナフタレン)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0136】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が400万である。
【0137】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の4wt%であり、光開始剤が製造例4で製造された光開始剤である。
【0138】
アルキニル化合物が1,3,5-トリエチニルベンゼンであり、アルキニル化合物の含有量がポリエチレンの質量の2wt%である。
【0139】
酸化防止剤がトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0140】
顔料がアントラキノンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.2wt%である。
【0141】
染料がディスパースブルーCR-Eであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.1wt%である。
【0142】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が5倍であり、第2段延伸倍数が2倍であり、第3段延伸倍数が2倍であり、延伸温度が105℃である。
【0143】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が500mW/cmであり、紫外線の波長が360nmであり、紫外線の照射時間が120sである。
【0144】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が93wt%であり、結晶度が70wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が1.9×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が236℃である。
【0145】
(製造例19)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0146】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、アルキニル化合物及び酸化防止剤を溶媒(デカヒドロナフタレン)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0147】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が400万である。
【0148】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例5で製造された光開始剤である。
【0149】
アルキニル化合物が1,3-ジエチニルベンゼンであり、アルキニル化合物の含有量がポリエチレンの質量の2wt%である。
【0150】
酸化防止剤がビタミンEであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0151】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が6倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が130℃である。
【0152】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が1500mW/cmであり、紫外線の波長が365nmであり、紫外線の照射時間が60sである。
【0153】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が100wt%であり、結晶度が80wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が1.0×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が245℃である。
【0154】
(製造例20)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0155】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、アルキニル化合物及び酸化防止剤を溶媒(デカヒドロナフタレン)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0156】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が500万である。
【0157】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の5wt%であり、光開始剤が製造例6で製造された光開始剤である。
【0158】
アルキニル化合物が1,4-ジエチニルベンゼンであり、アルキニル化合物の含有量がポリエチレンの質量の0.1wt%である。
【0159】
酸化防止剤がビタミンEであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0160】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が7倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が125℃である。
【0161】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が1800mW/cmであり、紫外線の波長が290nmであり、紫外線の照射時間が40sである。
【0162】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が63wt%であり、結晶度が65wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が5.4×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が202℃である。
【0163】
(製造例21)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0164】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤及び酸化防止剤を溶媒(ホワイトオイル)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0165】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が500万である。
【0166】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の1wt%であり、光開始剤が製造例7で製造された光開始剤である。
【0167】
酸化防止剤がビタミンEであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0168】
工程(2)において、湿式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が8倍であり、第2段延伸倍数が2倍であり、第3段延伸倍数が2倍であり、延伸温度が120℃である。
【0169】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が1600mW/cmであり、紫外線の波長が330nmであり、紫外線の照射時間が120sである。
【0170】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が91wt%であり、結晶度が75wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が2.1×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が234℃である。
【0171】
(製造例22)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0172】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン及び光開始剤を溶媒(鉱物油)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0173】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が500万である。
【0174】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の5wt%であり、光開始剤が製造例8で製造された光開始剤である。
【0175】
工程(2)において、湿式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が2倍であり、第2段延伸倍数が2倍であり、第3段延伸倍数が2倍であり、延伸温度が110℃である。
【0176】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が2300mW/cmであり、紫外線の波長が340nmであり、紫外線の照射時間が180sである。
【0177】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が95wt%であり、結晶度が85wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が1.5×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が240℃である。
【0178】
(製造例23)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0179】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤及び酸化防止剤を溶媒(植物油)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0180】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が500万である。
【0181】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例9で製造された光開始剤である。
【0182】
酸化防止剤がブチル化ヒドロキシトルエンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0183】
工程(2)において、湿式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が3倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が130℃である。
【0184】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が2900mW/cmであり、紫外線の波長が350nmであり、紫外線の照射時間が30sである。
【0185】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が89wt%であり、結晶度が87wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が2.2×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が234℃である。
【0186】
(製造例24)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0187】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、酸化防止剤及び顔料を溶媒(動物油)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0188】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が500万である。
【0189】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例10で製造された光開始剤である。
【0190】
酸化防止剤がブチル化ヒドロキシトルエンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0191】
顔料がアントラキノンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.1wt%である。
【0192】
工程(2)において、湿式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が4倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が135℃である。
【0193】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が3400mW/cmであり、紫外線の波長が370nmであり、紫外線の照射時間が40sである。
【0194】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が91wt%であり、結晶度が83wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が2.0×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が235℃である。
【0195】
(製造例25)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0196】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤及び酸化防止剤を溶媒(灯油)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0197】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が200万である。
【0198】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例11で製造された光開始剤である。
【0199】
酸化防止剤がブチル化ヒドロキシトルエンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0200】
工程(2)において、湿式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が5倍であり、第2段延伸倍数が2倍であり、第3段延伸倍数が2倍であり、延伸温度が140℃である。
【0201】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が3700mW/cmであり、紫外線の波長が365nmであり、紫外線の照射時間が20sである。
【0202】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が68wt%であり、結晶度が81wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が4.6×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が209℃である。
【0203】
(製造例26)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0204】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤及び顔料を溶媒(ホワイトオイル)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0205】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が400万である。
【0206】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例12で製造された光開始剤である。
【0207】
顔料がアントラキノンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.1wt%である。
【0208】
工程(2)において、湿式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が6倍であり、第2段延伸倍数が2倍であり、第3段延伸倍数が2倍であり、延伸温度が127℃である。
【0209】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が4500mW/cmであり、紫外線の波長が365nmであり、紫外線の照射時間が10sである。
【0210】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が78wt%であり、結晶度が82wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が3.5×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が221℃である。
【0211】
(製造例27)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0212】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン及び光開始剤を溶媒(キシレン)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0213】
ポリエチレンと溶媒との質量比が5:95であり、ポリエチレンの分子量が600万である。
【0214】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例13で製造された光開始剤である。
【0215】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が7倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が134℃である。
【0216】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が3000mW/cmであり、紫外線の波長が395nmであり、紫外線の照射時間が120sである。
【0217】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が26wt%であり、結晶度が86wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が9.3×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が163℃である。
【0218】
(製造例28)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0219】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤、アルキニル化合物及び酸化防止剤を溶媒に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0220】
ポリエチレンと溶媒との質量比が5:95であり、ポリエチレンの分子量が1000万である。
【0221】
溶媒がテトラヒドロナフタレンとデカヒドロナフタレンの混合溶媒であり、かつ質量比が1:1である。
【0222】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例6及び11で製造された光開始剤であり、かつ質量比が1:1である。
【0223】
アルキニル化合物が1,4-ジフェニルブタジエンと4-フェニルエチニルフタル酸無水物の混合物であり、かつ質量比が1:1であり、アルキニル化合物の含有量がポリエチレンの質量の2wt%である。
【0224】
酸化防止剤がブチル化ヒドロキシトルエンであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0225】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が8倍であり、第2段延伸倍数が1倍であり、第3段延伸倍数が1倍であり、延伸温度が145℃である。
【0226】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が5000mW/cmであり、紫外線の波長が400nmであり、紫外線の照射時間が120sである。
【0227】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が31wt%であり、結晶度が90wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が8.6×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が169℃である。
【0228】
(製造例29)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、具体的には、以下の工程(1)~(3)を含む。
【0229】
工程(1)のポリエチレン紡糸原液の製造において、ポリエチレン、光開始剤及び酸化防止剤を溶媒(デカヒドロナフタレン)に添加してポリエチレン紡糸原液を得る。
【0230】
ポリエチレンと溶媒との質量比が10:90であり、ポリエチレンの分子量が400万である。
【0231】
光開始剤の含有量がポリエチレンの質量の3wt%であり、光開始剤が製造例5で製造された光開始剤である。
【0232】
酸化防止剤がビタミンEであり、その含有量がポリエチレンの質量の0.5wt%である。
【0233】
工程(2)において、乾式ゲル紡糸及び3段延伸により、ポリエチレン紡糸原液からポリエチレン繊維を得て、第1段延伸倍数が2倍であり、第2段延伸倍数が2倍であり、第3段延伸倍数が2倍であり、延伸温度が150℃である。
【0234】
工程(3)において、紫外光源により、工程(2)で得られたポリエチレン繊維に紫外線を照射して、耐熱耐クリープポリエチレン繊維を得て、紫外光源の光強度が1500mW/cmであり、紫外線の波長が365nmであり、紫外線の照射時間が60sである。
【0235】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が70wt%であり、結晶度が80wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が4.4×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が211℃である。
【0236】
(比較例1)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、工程(1)において光開始剤を添加しないという点だけで相違する。
【0237】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が0wt%であり、結晶度が80wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が3×10-6-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が145℃である。
【0238】
比較例1と製造例29を比較すると、比較例1では、ゲル含有量が製造例29よりはるかに低く、結晶度が製造例28に相当し、クリープ率が製造例29よりはるかに高く、繊維の破断温度が製造例29よりはるかに低く、これは、製造例29で紫外線の照射により光開始剤がポリエチレンの架橋を開始し、3次元ネットワーク構造を形成し、構造的に高分子鎖間の相互滑りを抑制することにより、ポリエチレン繊維の耐熱性及び耐クリープ性を根本的に改善するからである。
【0239】
(製造例30)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、光開始剤が4,4’-ジクロロベンゾフェノンであるという点だけで相違する。
【0240】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が72wt%であり、結晶度が80wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が4.4×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が188℃である。
【0241】
(製造例31)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、光開始剤が2,4’-ジメトキシベンゾフェノンであるという点だけで相違する。
【0242】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が75wt%であり、結晶度が75wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が3.9×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が193℃である。
【0243】
(製造例32)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、光開始剤が4,4’-ジメチルベンゾフェノンであるという点だけで相違する。
【0244】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が65wt%であり、結晶度が83wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が6×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が172℃である。
【0245】
(製造例33)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、光開始剤が4,4’-ジフェノキシベンゾフェノンであるという点だけで相違する。
【0246】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が80wt%であり、結晶度が70wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が3.4×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が197℃である。
【0247】
(製造例34)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、光開始剤が4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンであるという点だけで相違する。
【0248】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が78wt%であり、結晶度が72wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が3.6×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が195℃である。
【0249】
(製造例35)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、光開始剤が4-クロロ-4’-ヒドロキシベンゾフェノンであるという点だけで相違する。
【0250】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が77wt%であり、結晶度が78wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が3.6×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が195℃である。
【0251】
(製造例36)
耐熱耐クリープポリエチレン繊維の製造方法は、基本的に製造例29と同じであり、光開始剤が製造例14で製造された光開始剤であるという点だけで相違する。
【0252】
製造された耐熱耐クリープポリエチレン繊維は、ゲル含有量が72wt%であり、結晶度が81wt%であり、温度70℃、かつ荷重300MPaの条件下でクリープ率が6.3×10-8-1であり、荷重15MPa、かつ昇温速度2℃/minの条件下で破断温度が207℃である。
図1