(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20250108BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20250108BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B29C49/64
B65D1/02 111
B29C49/22
(21)【出願番号】P 2020189809
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 雄飛
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119476(JP,A)
【文献】特開2019-005982(JP,A)
【文献】特開2018-083646(JP,A)
【文献】特開2017-094677(JP,A)
【文献】特開2014-046966(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/64
B65D 1/02
B29C 49/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重容器の製造方法であって、
前記二重容器は、外殻と内袋とを有し且つ
内容物の減少に伴って前記内袋が収縮
するように構成される容器本体を備え、
前記外殻は、前記外殻と前記内袋の間に外気を導入するための外気導入孔を備え、
前記方法は、加熱工程と、成形工程を備え、
前記加熱工程では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるアセンブリを加熱して軟化させて軟化状態とし、
前記成形工程は、前記軟化状態で前記内プリフォーム内にエアーを吹き込むブロー成形工程を備え、
前記加熱工程では、前記アセンブリを回転させながら、前記アセンブリを複数のヒーターで加熱し、
前記複数のヒーターは、前記アセンブリの側面に隣接した位置において、前記アセンブリの長手方向に沿って並ぶように配置され、
前記アセンブリのうち前記外気導入孔が形成される部位を外気導入孔形成部位とし、前記複数のヒーターのうち、前記外気導入孔形成部位に最近接のものを最近接ヒーターとし、前記複数のヒーターのうち、前記最近接ヒーター以外のものをその他ヒーターとし、
前記最近接ヒーターの出力を、前記最近接ヒーターから前記外気導入孔形成部位までの距離の二乗で割った値をVとし、
前記その他ヒーターのそれぞれについて出力を前記アセンブリまでの距離の二乗で割って得られた値のうち最大のものをWaとすると、
V/Waが
0.48以上、かつ、0.53以下である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記その他ヒーターのそれぞれについて出力を前記アセンブリまでの距離の二乗で割って得られた値を平均したものをWbとすると、
V/Wbが0.70以下である、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記その他ヒーターのそれぞれについて出力を前記アセンブリまでの距離の二乗で割って得られた値のうち最小のものをWcとすると、
V/Wcが0.95以下である、方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の方法であって、
前記内プリフォームは、前記外プリフォームよりも成形収縮率が大きい材料で構成される、方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の方法であって、
前記外プリフォーム
のうち、貫通孔が
設けられている部位が、前記外気導入孔形成部位である、方法。
【請求項6】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の方法であって、
前記外プリフォームには、前記外気導入孔となる貫通孔が設けられておらず、前記成形工程によって得られた容器本体の外殻の被穿孔部位を穿孔することによって外気導入孔を形成する工程を備え、
前記外気導入孔形成部位は、前記被穿孔部位となる部位である、方法。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の方法であって、
前記アセンブリは、前記成形工程で延伸される被延伸部を備え、
前記加熱は、前記外気導入孔形成部位の温度が、前記被延伸部のうち温度が最高である部位の温度よりも低くなるように行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内プリフォームと外プリフォームを重ねた状態でブロー成形することによって二重容器を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内プリフォームによって内袋が構成され、外プリフォームによって外殻が構成される。内袋内の内容物の減少に伴って内袋は収縮するが、外殻に設けた外気導入孔から、内袋と外殻の間の中間空間に外気が導入されることによって、外殻は、元の状態が維持される。
【0005】
このような二重容器において、内袋と外殻の間の中間空間に外気が導入されにくい場合があることが分かった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内袋と外殻の間の中間空間に外気がスムーズに導入可能である、二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、二重容器の製造方法であって、前記二重容器は、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成される容器本体を備え、前記外殻は、前記外殻と前記内袋の間に外気を導入するための外気導入孔を備え、前記方法は、加熱工程と、成形工程を備え、前記加熱工程では、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるアセンブリを加熱して軟化させて軟化状態とし、前記成形工程は、前記軟化状態で前記内プリフォーム内にエアーを吹き込むブロー成形工程を備え、前記加熱工程では、前記アセンブリを回転させながら、前記アセンブリを複数のヒーターで加熱し、前記複数のヒーターは、前記アセンブリの側面に隣接した位置において、前記アセンブリの長手方向に沿って並ぶように配置され、前記アセンブリのうち前記外気導入孔が形成される部位を外気導入孔形成部位とし、前記複数のヒーターのうち、前記外気導入孔形成部位に最近接のものを最近接ヒーターとし、前記複数のヒーターのうち、前記最近接ヒーター以外のものをその他ヒーターとし、前記最近接ヒーターの出力を、前記最近接ヒーターから前記外気導入孔形成部位までの距離の二乗で割った値をVとし、前記その他ヒーターのそれぞれについて出力を前記アセンブリまでの距離の二乗で割って得られた値のうち最大のものをWaとすると、V/Waが0.60以下である、方法が提供される。
【0008】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、外気導入孔の周囲の領域において、外プリフォームによって構成される外殻と、内プリフォームによって構成される内袋が強く密着しているために、内袋と外殻の間の中間空間に外気がスムーズに導入されないことが分かった。そして、この知見に基づき、外気導入孔が形成される部位の加熱が弱まるようにVの値を低下させたところ、外殻と内袋の密着度が低下して外気が導入されやすくなることを見出し、本発明の完成に到った。なお、アセンブリの全体の加熱を弱めることによっても、外殻と内袋の密着度を低下させることができるが、その場合は、成形後に内袋の全体が収縮して内容量が減少しやすくなるという問題がある。本発明によれば、内袋の収縮を抑制しつつ、中間空間に外気をスムーズに導入可能になる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記その他ヒーターのそれぞれについて出力を前記アセンブリまでの距離の二乗で割って得られた値を平均したものをWbとすると、V/Wbが0.70以下である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記その他ヒーターのそれぞれについて出力を前記アセンブリまでの距離の二乗で割って得られた値のうち最小のものをWcとすると、V/Wcが0.95以下である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記内プリフォームは、前記外プリフォームよりも成形収縮率が大きい材料で構成される、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記外プリフォームに設けられた貫通孔が、前記外気導入孔形成部位である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記外プリフォームには、前記外気導入孔となる貫通孔が設けられておらず、前記成形工程によって得られた容器本体の外殻の被穿孔部位を穿孔することによって外気導入孔を形成する工程を備え、前記外気導入孔形成部位は、前記被穿孔部位となる部位である、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記アセンブリは、前記成形工程で延伸される被延伸部を備え、前記加熱は、前記外気導入孔形成部位の温度が、前記被延伸部のうち温度が最高である部位の温度よりも低くなるように行われる、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の二重容器の製造方法によって製造可能なの二重容器1の容器本体2を示し、
図1Aは正面図であり、
図1Bは底面図である。
【
図2】
図2Aは、
図1の容器本体2を底部7側から見た斜視図であり、
図2Bは、外殻3の底部7近傍を、容器の内側から見た断面斜視図である。
【
図4】内プリフォーム14及び外プリフォーム13が分離されている状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4の外プリフォーム13の底部13c近傍を、外プリフォーム13の内側から見た断面斜視図である。
【
図6】
図6Aは、内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって構成されたアセンブリ15の斜視図であり、
図6Bは、
図6Aを別の角度から見た斜視図である。
【
図7】口部支持型21にアセンブリ15を装着してヒーター31に近接させた状態を示す断面図である。
【
図8】
図7の状態から、アセンブリ15を装着した口部支持型21を成形型23,24の間の位置に移動させた後の状態を示す断面図である。
【
図9】
図8の状態から、成形型23,24を閉じ、底部支持型22が外プリフォーム13の底部13cを支持した後の状態を示す断面図である。
【
図10】
図9の状態から、支持棒25を伸長させると共に底部支持型22を後退させてアセンブリ15を縦延伸させた後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0012】
1.二重容器1
最初に、本発明の一実施形態の二重容器の製造方法によって製造可能な二重容器1について説明する。
図1に示すように、本発明の方法によって製造可能な二重容器1は、容器本体2を備える。
図3Aに示すように、容器本体2は、外殻3と内袋4とを有し且つ内容物の減少に伴って内袋4が収縮するように構成される。
【0013】
図1に示すように、容器本体2は、口部5と、胴部6と、底部7を備える。口部5は、キャップやポンプなどの口部装着部材を装着可能な係合部5aを備える。係合部5aは、口部装着部材がネジ式の場合は雄ねじ部であり、口部装着部材が打栓式の場合は周方向に突出する環状突起である。口部装着部材は、好ましくは、逆止弁を有しており、内容物の吐出は可能であるが、外気が容器本体2内に流入しないようになっている。口部5は、胴部6の上端6aから延びるように設けられている。口部5は、円筒形である。胴部6は、口部5よりも外径(本明細書において、「外径」は、断面が円形でない場合は、外接円径を意味する。)が大きい。
【0014】
胴部6は筒状であり、底部7は、胴部6の下端に設けられ、胴部6の下端を閉塞する。底部7は、底部7の中央に設けられた中央凹部7aと、中央凹部7aを取り囲む周縁部7bを備える。
【0015】
図2Aに示すように、中央凹部7aには、係止部7a1と、外気導入孔16と、環状凸部7a3と、位置決め凹部7a4が設けられている。
図3Aに示すように、係止部7a1は、外殻3に設けられた挿通孔3a内に、内袋4に設けられた係止突起4aが挿入されて構成される。係止部7a1によって内袋4が外殻3から外れることが阻止される。外気導入孔16は、外殻3を貫通する貫通孔であり、内袋4の収縮に伴って、外気導入孔16を通じて外殻3と内袋4の間の中間空間に外気が導入される。係止部7a1と外気導入孔16は、環状凸部7a3内に配置される。位置決め凹部7a4は、容器本体2に印刷等を行う際に、容器本体2を周方向に位置決めするために用いられる。
【0016】
周縁部7bには、接地部7b1と、周縁凹部7b2が設けられている。接地部7b1は、容器本体2を立設させたときに、容器本体2を載置する載置面に接触する部位である。周縁部7bの全体を接地部7b1とすると、容器本体2を立設させたときに中央凹部7aが容器本体2と載置面との間で密閉空間となり、外気導入孔16を通じた外気の導入が阻害される虞がある。そこで、中央凹部7a内が密閉空間とならないように通気路として周縁凹部7b2を設けている。
【0017】
口部5に装着したポンプによって内袋4内の内容物を排出すると、内袋4が収縮して外殻3から離れようとする。この際に、外気導入孔16を通じて内袋4と外殻3間の空間に外気が導入される。外気導入孔16の近傍において外殻3と内袋4が密着していると、外殻3と内袋4の間の中間空間に外気が導入されにくい。このため、本実施形態では、外殻3と内袋4の間にスペーサー9を配置している。本実施形態では、スペーサー9として、外殻3から内袋4に向けて突出する突起3bを設けている。スペーサー9を設けるとスペーサー9に隣接した位置において外殻3と内袋4の間に隙間8が形成され、隙間8によって、外気が導入されやすくなっている。
【0018】
ところで、スペーサー9を設けた場合でも、外気導入孔16の近傍において外殻3と内袋4が密着して中間空間に外気が導入されにくい場合がある。そこで、後述する製造方法では、製造条件を工夫することによって、外気導入孔16の近傍での外殻3と内袋4の密着を抑制している。
【0019】
図4~
図6に示すように、容器本体2は、内袋4となる内プリフォーム14に、外殻3となる外プリフォーム13を被せてアセンブリ15とした状態で、内プリフォーム14と外プリフォーム13を加熱して二軸延伸ブロー成形することによって形成することができる。
【0020】
図4に示すように、内プリフォーム14は、有底筒状であり、口部14aと、胴部14bと、底部14cを備える。口部14aの開口端には、フランジ14a1が設けられている。底部14cには、位置決めピン14c1が設けられている。
【0021】
図4に示すように、外プリフォーム13は、有底筒状であり、口部13aと、胴部13bと、底部13cを備える。
図5に示すように、外プリフォーム13の底部13cの内面には、放射状に配置された突起13c1が設けられている。底部13cには、位置決め孔13c2及び貫通孔17が設けられている。
図6Bに示すように、底部13cの外面には環状凸部13c4が設けられている。位置決め孔13c2及び貫通孔17は、環状凸部13c4の内側の領域に配置されている。外プリフォーム13は、内プリフォーム14が挿入可能なサイズになっている。貫通孔17が容器本体2の外気導入孔16となるので、貫通孔17が設けられている部位が外気導入孔形成部位41となる。
【0022】
アセンブリ15を形成する際に、フランジ14a1を口部13aの開口端に当接させると共に、位置決めピン14c1を位置決め孔13c2に挿入する。これによって、内プリフォーム14と外プリフォーム13が互いに位置決めされる。この状態では、口部14aと口部13aが対向し、胴部14bと胴部13bが対向する。
【0023】
口部13a,14aがアセンブリ15の口部15aとなり、胴部13b,14bがアセンブリ15の胴部15bとなり、底部13c,14cがアセンブリ15の底部15cとなる。また、
図7に図示するように、胴部15b及び底部15cが後述する成形工程で延伸される被延伸部15dとなる。
【0024】
内プリフォーム14及び外プリフォーム13は、ポリエステル(例:PET)やポリオレフィン(例:ポリプロピレン、ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂のダイレクトブロー成形や射出成形等によって形成可能である。内プリフォームは、外プリフォームよりも成形収縮率が大きい材料で構成することが好ましい。この場合、成形収縮によって外殻3と内袋4の間に隙間が形成されて外殻3と内袋4の間の中間空間への外気導入が容易になる。
【0025】
内プリフォーム14を構成する材料の成形収縮率は、例えば0.5~6%であり、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。外プリフォーム13を構成する材料の成形収縮率は、例えば0.1~3%であり、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。成形収縮率の差は、例えば0.1~5.5%であり、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。成形収縮率は、JIS K7152-4に準拠して測定することができる。
【0026】
一例では、内プリフォーム14がポリオレフィン(例:ポリプロピレン)で構成され、外プリフォーム13はPETで構成される。ポリオレフィンは、PETよりも成形収縮率が大きいので、このような樹脂構成にすることで、外殻3と内袋4の間に隙間が形成されやすくなる。また、内プリフォーム14と外プリフォーム13の材料を異ならせることによってブロー成形の際に互いに溶着することが抑制される。
【0027】
内プリフォーム14は、ダイレクトブロー成形で形成することが好ましい。ダイレクトブロー成形(溶融状態の筒状パリソンを用いたブロー成形)によれば、積層構造の内プリフォーム14を容易に形成することができる。外プリフォーム13は、射出成形で形成することが好ましい。この場合、射出成形時に貫通孔17を形成可能であるので、後加工の手間を省くことができる。
【0028】
2.製造装置40
次に、本発明の一実施形態の二重容器1の製造方法に利用可能な製造装置40について説明する。
【0029】
図7~
図10に示すように、製造装置40は、金型ユニット20と、複数のヒーター31を備える。
【0030】
複数のヒーター31は、アセンブリ15がヒーター31に近接したときに、アセンブリ15の側面に隣接した位置において、アセンブリ15の長手方向に沿って並ぶように配置されている。複数のヒーター31は、互いに独立して出力が制御可能になっている。各ヒーター31は、好ましくは、
図7の紙面垂直方向に延びる棒状である。複数のヒーター31のうち、外気導入孔形成部位41に最近接のものを最近接ヒーター31aと称し、残りをその他ヒーター31b(31b1,31b2,31b3)と称する。
【0031】
金型ユニット20は、口部支持型21と、底部支持型22と、成形型23,24を備える。
【0032】
口部支持型21は、外プリフォーム13の口部13aを支持可能に構成されている。口部支持型21内には、挿通孔21aが設けられており、挿通孔21aに支持棒25が挿通されている。支持棒25は、不図示の駆動機構によって伸縮が可能になっている。
【0033】
口部支持型21は、
図7に示すようにヒーター31に近接した位置Aと、
図8に示すように成形型23,24の間の位置Bの間を移動可能に構成されている。このため、位置Aにおいてアセンブリ15を加熱する加熱工程を実施した後に、位置Bにおいてアセンブリ15を成形する成形工程を実施することが可能になっている。口部支持型21は、口部13aの中心軸を中心にアセンブリ15を回転させることができるようになっている。アセンブリ15を回転させながらアセンブリ15をヒーター31に近接させることによって、アセンブリ15の全周を均一に加熱することが可能になっている。なお、口部支持型21を移動させる代わりに、ヒーター31を移動させるようにしてもよい。
【0034】
底部支持型22は、駆動機構22cで駆動されて、縦延伸方向(
図7の上下方向)に移動可能に構成されている。成形型23,24は、開閉可能であり、それぞれ、キャビティ面23a,24aを備える。キャビティ面23a,24aが合わさって、容器本体2の外形に対応した形状のキャビティが形成される。
【0035】
3.二重容器1の製造方法
本発明の一実施形態の二重容器1の製造方法は、加熱工程と、成形工程を備える。成形工程は、底部支持工程と、延伸工程と、ブロー成形工程を備える。
【0036】
<加熱工程>
加熱工程では、アセンブリ15を加熱して軟化させて軟化状態とする。加熱工程は、アセンブリ15を回転させながら、アセンブリ15を複数のヒーター31で加熱することによって行うことができる。
【0037】
一例では、
図7に示すようにアセンブリ15を口部支持型21に装着した状態で、アセンブリ15をヒーター31に近接させることによって、アセンブリ15の加熱を行うことができる。アセンブリ15の口部15aは口部支持型21で覆われているので、胴部15b及び底部15c(つまり、被延伸部15d)が加熱される。
【0038】
ここで、最近接ヒーター31aの出力Paを、最近接ヒーター31aから外気導入孔形成部位41までの距離Daの二乗で割った値(=Pa/(Da)2)をVとし、その他ヒーター31bのそれぞれ31b1~31b3について出力Pb(Pb1~Pb3)をアセンブリ15までの距離Db(Db1~Db3)の二乗で割って得られた値をW1~W3(=Pb/(Db)2)とし、W1~W3のうち最大のものをWaとし、W1~W3の平均値をWbとし、W1~W3のうち最小のものをWcとする。ヒーターからの放射エネルギーの密度は距離の二乗に反比例するので、ヒーターの出力を距離の二乗で割ることによって、アセンブリ15が加熱される度合いを示す指数V及びW1~W3を算出している。
【0039】
本実施形態では、外気導入孔形成部位41でのアセンブリ15の加熱が弱められるように、Vの値を小さくして、V/Waを0.60以下としている。Vを小さくする方法としては、出力Paを下げたり、距離Daを大きくしたりする方法が挙げられる。V/Waが0.60以下の場合、外気導入孔形成部位41及びその近傍でのアセンブリの加熱が弱められるので、外気導入孔16近傍での外殻3と内袋4の密着度が低下して、外気導入孔16を通じて中間空間に外気がスムーズに導入される。また、外気導入孔16近傍以外では、外殻3と内袋4の密着度が低下していないので、内袋4の収縮による内容量の低減は抑制される。V/Waは、例えば、0.10~0.60であり、例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
また、別の観点では、V/Wbが0.70以下であることが好ましい。この場合も、内袋4の収縮を抑制しつつ、中間空間に外気がスムーズに導入されるという効果が奏される。V/Wbは、例えば、0.10~0.70であり、例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0041】
また、別の観点では、V/Wcが0.95以下であることが好ましい。この場合も、内袋4の収縮を抑制しつつ、中間空間に外気がスムーズに導入されるという効果が奏される。V/Wcは、例えば、0.10~0.95であり、例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
上記のようにVの値を小さくすると、外気導入孔形成部位41の温度が低くなる。外気導入孔形成部位41の温度は、被延伸部15dのうち温度が最高である部位の温度よりも低くなることが好ましく、被延伸部15d全体の平均温度よりも低くなることがさらに好ましい。
【0043】
なお、加熱工程の前に、支持棒25の先端を内プリフォーム14の内底面に当接させてもよい。これによって、軟化されたアセンブリ15が揺れることが抑制される。
【0044】
<底部支持工程>
底部支持工程では、
図8に示すように、底部支持型22が外プリフォーム13の底部13cに向かって移動し、底部支持型22で外プリフォーム13の底部13cを支持する。底部支持型22には、環状凸部13c4を収容可能な凹部22aが設けられており、底部支持型22は、環状凸部13c4が凹部22a内に収容されるように底部13cを支持することが好ましい。これによって、環状凸部13c4及びその内側の領域がブロー成形工程の際に延伸されることが抑制される。凹部22aは、環状であることが好ましい。また、底部支持型22は、位置決めピン14c1を収容可能な凹部22bを備え、凹部22b内に位置決めピン14c1を収容するように底部13cを支持することが好ましい。これによって、位置決めピン14c1が底部支持型22に干渉することが抑制される。
図8は、成形型23,24が閉じられた状態を示しているが、成形型23,24は、ブロー成形工程の前の任意の時点で閉じればよいので、縦延伸工程の後に閉じるようにしてもよい。
【0045】
<縦延伸工程>
縦延伸工程では、
図8~
図9に示すように、支持棒25を内プリフォーム14の内底面に押し当てて伸長させることによって、アセンブリ15を縦方向(
図9の上下方向)に延伸させる。この際、支持棒25の伸長と同期させて底部支持型22を後退させることが好ましい。これによって、アセンブリ15を安定して延伸させることができる。なお、縦延伸工程は、底部支持型22で底部13cを支持していない状態で行うことも可能であるので、縦延伸工程の後に底部支持工程を行ってもよい。また、内プリフォーム14の内底面には、支持棒が嵌る凹部を設けて、支持棒を内プリフォーム14に固定しやすいようにしてもよい。
【0046】
<ブロー成形工程>
ブロー成形工程では、
図9の状態から内プリフォーム14内にエアーを吹き込むことによってアセンブリ15を横方向に延伸させて(つまり膨張させて)キャビティ面23a,24aの形状に賦形する。エアーの吹き込みは、口部支持型21と支持棒25の間の通気路26を通じて行うことができるが、例えば、支持棒25内に通気路を設けて、支持棒25の側面からエアーを吹き出すようにしてもよい。
【0047】
本実施形態では、外プリフォーム13の底部13cが底部支持型22で支持された状態でエアーの吹き込みを行うので、外プリフォーム13の底部13cの延伸が抑制される。
【0048】
なお、ブロー成形工程は、縦延伸工程と同時に行うこともできる。つまり、アセンブリ15を縦方向に延伸させながら、内プリフォーム14内にエアーを吹き込んでもよい。また、縦延伸工程を省略して、底部支持工程の後に、アセンブリ15を縦方向に延伸させずに、エアーの吹き込みを行ってもよい。
【0049】
ブロー成形によって、アセンブリ15が膨張して
図1~
図3に示す容器本体2が得られる。口部13a,14aが口部5となり、胴部13b,14bが胴部6となり、底部13c,14cが底部7となる。突起13c1,環状凸部13c4及び貫通孔17は、それぞれ、突起3b,環状凸部7a3及び外気導入孔16となる。ブロー成形の際に、口部13a,14aと、環状凸部13c4とその内側の領域は、ほとんど変形せず、その他の部位が主に変形する。貫通孔17は、環状凸部13c4の内側の領域に配置されているので、ブロー成形の際に変形して閉塞されることが抑制される。フランジ14a1は、
図1Aに示すように、容器本体2の口部5の開口端を覆うフランジ4bとなる。
【0050】
ブロー成形後に、位置決め孔13c2が
図3Aに図示する挿通孔3aとなり、挿通孔3aに位置決めピン14c1が挿通された状態になる。その後、位置決めピン14c1を変形させて(つまり、潰したり、折り曲げたりして)
図3Aに図示する係止突起4aとする。これによって、容器本体2の係止部7a1が構成される。
【0051】
4.その他の実施形態
・上記実施形態では、外プリフォーム13に設けた貫通孔17がブロー成形後に外気導入孔16となるように構成しているが、外プリフォーム13には、外気導入孔16となる部位に貫通孔を設けずに、ブロー成形後に外殻3の被穿孔部位を穿孔することによって外気導入孔16を形成してもよい。この場合、外気導入孔形成部位41とは、外殻3の被穿孔部位となる部位である。
・上記実施形態では、容器本体2の底部7に外気導入孔16を形成しているが、外気導入孔16は胴部6に形成してもよい。この場合、外気導入孔形成部位41は、外プリフォーム13の胴部13bに位置する。また、ヒーター31b1~31b3のように、外プリフォーム13の胴部13bに隣接して配置されたヒーターの何れかが最近接ヒーターとなり、残りがその他ヒーターとなる。この場合、胴部13bには外気導入孔16となる貫通孔17が形成されていてもいなくてもよい。また、外気導入孔形成部位41に隣接した位置にスペーサー9が設けられることが好ましい。
・上記実施形態では、スペーサー9は放射状に設けているが、スペーサー9は、別の形状であってもよい。スペーサー9は、内袋4から突出する突起によって構成したり、別部材によって構成したりしてもよい。スペーサー9は、なくてもよい。
【実施例】
【0052】
上述した方法に従って、
図4~
図6に示す外プリフォーム13及び内プリフォーム14を、
図7~
図10に示す製造装置40を用いて二軸延伸ブロー成形することによって、
図1~
図3に示す容器本体2(内容量300mL)を製造した。加熱工程でのヒーターの出力Pa,Pb及び距離Da,Dbを表1に示すように設定して、実施例・比較例の容器本体2を製造した。加熱工程でのアセンブリ15の回転速度は70rpmとした。また、各ヒーターの断面直径は15mmであり、隣接するヒーターの上下方向のピッチは、17.5mmとし、アセンブリ15の胴部15bの直径は30mmとした。
【0053】
次に、容器本体2内に内容物(水)を満充填した後、口部5に逆止弁を有するポンプを装着し、ポンプを作動させることによって内容物を吐出した。内容物を30mL吐出した時点で、外殻3の状態を目視し、外気導入性を以下の基準で評価した。
○:外殻3が収縮していない
×:外殻3が収縮している
【0054】
表1に示すように、V/Waが0.60以下である実施例の二重容器では、外殻3と内袋4の間の中間空間に外気がスムーズに導入された。一方、V/Waが0.60を超えている比較例の二重容器では、外殻3と内袋4の間の中間空間に外気がスムーズに導入されなかった。
【表1】
【符号の説明】
【0055】
1 :二重容器
2 :容器本体
3 :外殻
3a :挿通孔
3b :突起
4 :内袋
4a :係止突起
4b :フランジ
5 :口部
5a :係合部
6 :胴部
6a :上端
7 :底部
7a :中央凹部
7a1 :係止部
7a3 :環状凸部
7a4 :位置決め凹部
7b :周縁部
7b1 :接地部
7b2 :周縁凹部
8 :隙間
9 :スペーサー
13 :外プリフォーム
13a :口部
13b :胴部
13c :底部
13c1 :突起
13c2 :位置決め孔
13c4 :環状凸部
14 :内プリフォーム
14a :口部
14a1 :フランジ
14b :胴部
14c :底部
14c1 :位置決めピン
15 :アセンブリ
15a :口部
15b :胴部
15c :底部
15d :被延伸部
16 :外気導入孔
17 :貫通孔
20 :金型ユニット
21 :口部支持型
21a :挿通孔
22 :底部支持型
22a :凹部
22b :凹部
22c :駆動機構
23 :成形型
23a :キャビティ面
24 :成形型
24a :キャビティ面
25 :支持棒
26 :通気路
31 :ヒーター
31a :最近接ヒーター
31b :その他ヒーター
31b1 :その他ヒーター
31b2 :その他ヒーター
31b3 :その他ヒーター
40 :製造装置
41 :外気導入孔形成部位