(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】酸化抑制処理装置、加熱装置、酸化抑制処理方法、及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21D 9/50 20060101AFI20250108BHJP
B05B 7/00 20060101ALI20250108BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20250108BHJP
C21D 1/70 20060101ALI20250108BHJP
F27B 9/38 20060101ALI20250108BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20250108BHJP
B05C 9/14 20060101ALN20250108BHJP
B05C 11/10 20060101ALN20250108BHJP
【FI】
C21D9/50 102Z
B05B7/00
B21D22/20 H
C21D1/70 P
C21D9/50 101Z
F27B9/38
F27D3/12 Z
B05C9/14
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2021042738
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 成彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利哉
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】巽 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】泰山 正則
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0002214(KR,A)
【文献】国際公開第2020/152887(WO,A1)
【文献】特開2007-245222(JP,A)
【文献】特開2012-005949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/50
C21D 1/70
B05B 7/00
F27B 9/00 - 9/40
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいずれか一方がめっき被膜を有する板材から成る一の部材及び他の部材の間に線状に形成された溶接部を有するワークの前記溶接部に、酸化防止剤を前記溶接部に沿って噴霧塗布する酸化抑制処理装置であって、
霧状化された酸化防止剤を含む混合気体を前記溶接部へ供給する供給部と、
前記溶接部へ供給された前記混合気体の一部を回収する回収部と、
前記供給部と前記回収部が配置された、前記溶接部に沿った形状のヘッダ部を備える、
酸化抑制処理装置。
【請求項2】
前記ヘッダ部は、前記供給部及び前記回収部の少なくともいずれかが複数配置された、請求項1に記載の酸化抑制処理装置。
【請求項3】
前記ヘッダ部は、前記供給部及び前記回収部が交互に並んで配置されている、請求項2に記載の酸化抑制処理装置。
【請求項4】
前記溶接部を挟んだ位置で対向する一対の前記ヘッダ部を備え、
前記一対のヘッダ部のうち、一方の前記ヘッダ部の前記供給部及び前記回収部は、それぞれ、他方の前記ヘッダ部の前記回収部及び前記供給部と、前記溶接部を挟んだ位置で対向する、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化抑制処理装置。
【請求項5】
前記酸化抑制処理装置は、前記溶接部に沿って移動可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化抑制処理装置。
【請求項6】
前記ワークの加熱装置であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の酸化抑制処理装置と、
前記酸化防止剤が噴霧塗布された前記ワークを加熱する加熱炉と、
前記ワークを、前記酸化抑制処理装置から前記加熱炉内に搬送する搬送機構を備える、
加熱装置。
【請求項7】
前記搬送機構は、
前記加熱炉の外に配置されて、複数のテーブルローラを備えるテーブルローラ部を備え、
前記テーブルローラは、前記テーブルローラの長手方向に離間した第1テーブルローラ部と第2テーブルローラ部を有し、
前記テーブルローラ部は、複数の前記テーブルローラのそれぞれに前記第1テーブルローラ部と前記第2テーブルローラ部の間の離間部で形成される離間部列を備え、
前記離間部列は、前記ヘッダ部に倣った形状である、
請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記加熱装置は、前記ワークが載置されて、前記搬送機構により搬送されるトレーを備え、
前記ヘッダ部は、前記トレーに設けられる、請求項6に記載の加熱装置。
【請求項9】
少なくともいずれか一方がめっき被膜を有する板材から成る一の部材及び他の部材の間に線状に形成された溶接部を有するワークの前記溶接部に、酸化防止剤を前記溶接部に沿って噴霧塗布する酸化抑制処理方法であって、
霧状化された酸化防止剤を含む混合気体を前記溶接部へ供給する供給部と、
前記溶接部へ供給された前記混合気体の一部を回収する回収部によって、
前記混合気体を前記溶接部に供給しながら、前記混合気体を回収するものであり、
前記供給部と前記回収部は、前記溶接部に沿って交互に並び、
前記回収部で、前記混合気体を回収するために気体を吸入する吸入流量が前記回収部の両側に隣接する前記供給部による前記混合気体の供給流量の合計の1/2以上とする、
酸化抑制処理方法。
【請求項10】
前記ワークの両面から前記溶接部に前記酸化防止剤を噴霧塗布するものであり、
一方の面側の前記供給部及び前記回収部は、他方の面側の前記回収部と前記供給部と、前記ワークの前記溶接部を挟んで対向し、
前記一方の面側のそれぞれの前記供給部の前記供給流量は、前記一方の面側の前記供給部と対向する前記他方の面側の前記回収部の両側に隣接する前記供給部による前記供給流量の合計の1/2以下とする、
請求項9に記載の酸化抑制処理方法。
【請求項11】
前記めっき被膜は、Al基合金被膜である、請求項9~10のいずれか1項に記載の酸化抑制処理方法。
【請求項12】
前記一の部材と前記他の部材とは、異なる引張強度を有する材料から成る、請求項9~11のいずれか1項に記載の酸化抑制処理方法。
【請求項13】
前記一の部材と前記他の部材とは、異なる板厚とされている、請求項9~12のいずれか1項に記載の酸化抑制処理方法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1項に記載の酸化抑制処理方法によって、前記ワークの前記溶接部に前記酸化防止剤を噴霧塗布する工程と、
前記酸化防止剤が塗布された前記ワークを加熱する工程と、
加熱された前記ワークを熱間成形する工程と、
を含む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化抑制処理装置、加熱装置、酸化抑制処理方法、及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品に要求される寸法精度又は強度を最適化するために、複数の部材を溶接等により接合して形成されたワークに対して、加熱及び加工を施して成形品を製造することがある。また、成形品の耐食性を向上させるため、ワークを形成する複数の部材は、めっき被膜を有する場合がある。
【0003】
めっき被膜には、溶接の際、めっき被膜から溶接部へ溶け込み、この結果、溶接部の強度に影響を及ぼす成分が含まれることがある。この場合、溶接部及びその付近では、めっき被膜は除去される。しかし、これにより、めっき被膜が除去された部分では、加熱炉内の雰囲気によってはスケール(酸化被膜)が発生することがある。かかるスケールは、塗膜の密着性を低下させる場合があり、後工程において除去することが必要となる。
【0004】
そこで、溶接部におけるスケール発生を抑制することが求められる。例えば、下記特許文献1では、溶接あるいはろう付けによって酸化される部位に密閉された置換ガス保持部を形成し、かかる置換ガス保持部に不活性ガス等の置換ガスを供給する技術が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2及び3では、溶接の際に、溶接部に供給されるシールドガスの露点温度、成分などを制御して溶接部周辺の酸化を抑制する技術が記載されている。
【0006】
さらに、下記特許文献4では、加熱炉で加熱する前のスラブ側面に対して、脱炭防止剤液のスプレー塗布量を変化させて、スラブ側面に脱炭防止剤を塗布する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-177388号公報
【文献】特開2008-183565号公報
【文献】特開平6-155029号公報
【文献】特開2001-79604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1~3に記載の技術は、溶接中の雰囲気制御を行って溶接部でのスケール発生を抑制しようとするものである。また、上記特許文献4に記載の技術は、加熱炉内に投入する前の搬送時の開放面であるスラブ側面の全面に脱炭防止剤を塗布し、その後の加熱による脱炭を抑制するものである。ここで、溶接部を有するワークの加熱において、溶接部におけるスケール発生を抑制するには、ワークを加熱炉に投入する前に溶接部に酸化防止剤を塗布することが考えられる。一方で、酸化防止剤を溶接部のスケール抑制ができる程度に塗布できればよい場合、できるだけ溶接部の近傍にのみ酸化防止剤を塗布し、それ以外の部位には広がらないようにするのが好ましい。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ワークを加熱炉内に投入する前に溶接部近傍の酸化防止剤を塗布することができ、その際、溶接部以外への酸化防止剤飛散を抑制できる、酸化抑制処理装置、加熱装置、酸化抑制処理方法、及び成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、少なくともいずれか一方がめっき被膜を有する板材から成る一の部材及び他の部材の間に線状に形成された溶接部を有するワークの上記溶接部に、酸化防止剤を上記溶接部に沿って噴霧塗布する酸化抑制処理装置であって、霧状化された酸化防止剤を含む混合気体を上記溶接部へ供給する供給部と、上記溶接部へ供給された上記混合気体の一部を回収する回収部と、上記供給部と上記回収部が配置された、上記溶接部に沿った形状のヘッダ部を備える、酸化抑制処理装置が提供される。
【0011】
上記供給部及び上記回収部は、少なくともいずれかが複数設けられてもよい。
【0012】
上記供給部及び上記回収部は、交互に並んで配置されてもよい。
【0013】
上記供給部と上記回収部は、挟んだ位置で対向する一対の上記ヘッダ部を備え、上記一対のヘッダ部のうち、一方の上記ヘッダ部の上記供給部及び上記回収部は、それぞれ、他方の上記ヘッダ部の上記回収部及び上記供給部と、上記溶接部を挟んだ位置で対向されてもよい。
【0014】
上記酸化抑制処理装置は、上記溶接部に沿って相対的に移動してもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、上記酸化抑制処理装置と、上記酸化防止剤が噴霧塗布された上記ワークを加熱する加熱炉と、上記ワークを、上記酸化抑制処理装置から上記加熱炉内に搬送する搬送機構を備える、加熱装置が提供される。
【0016】
上記搬送機構は、上記加熱炉の外に配置されて、複数のテーブルローラを備えるテーブルローラ部を備え、上記テーブルローラは、上記テーブルローラの長手方向に離間した第1テーブルローラ部と第2テーブルローラ部を有し、上記テーブルローラ部は、複数の上記テーブルローラのそれぞれに上記第1テーブルローラ部と上記第2テーブルローラ部の間の離間部で形成される離間部列を備え、上記離間部列は、上記ヘッダ部に倣った形状でもよい。
【0017】
上記加熱装置は、上記ワークが載置されて、上記搬送機構により搬送されるトレーを備え、上記ヘッダ部は、上記トレーに設けられていてもよい。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のその他の観点によれば、
少なくともいずれか一方がめっき被膜を有する板材から成る一の部材及び他の部材の間に線状に形成された溶接部を有するワークの上記溶接部に、酸化防止剤を上記溶接部に沿って噴霧塗布する酸化抑制処理方法であって、霧状化された酸化防止剤を含む混合気体を上記溶接部へ供給する供給部と、上記溶接部へ供給された上記混合気体の一部を回収する回収部によって、上記混合気体を上記溶接部に供給しながら、上記混合気体を回収するものであり、上記供給部と上記回収部は、少なくともいずれかが複数設けられ、上記溶接部に沿って交互に並び、それぞれの上記回収部で、上記混合気体を回収するために気体を吸入する吸入流量が上記回収部の両側に隣接する上記供給部による上記混合気体の供給流量の合計の1/2以上とする、酸化抑制処理方法が提供される。
【0019】
上記ワークの両面から上記溶接部に上記酸化防止剤を噴霧塗布するものであり、一方の面側の上記供給部及び上記回収部は、他方の面側の上記回収部と上記供給部と、上記ワークの上記溶接部を挟んで対向し、上記一方の面側のそれぞれの上記供給部の上記供給流量は、上記一方の面側の上記供給部と対向する上記他方の面側の上記回収部の両側に隣接する上記供給部による上記供給流量の合計の1/2以下(>0)としてもよい。
【0020】
上記めっき被膜は、Al基合金被膜であってもよい。
【0021】
上記一の部材と上記他の部材とは、異なる引張強度を有する材料から成ってもよい。
【0022】
上記一の部材と上記他の部材とは、異なる板厚とされてもよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明のその他の観点によれば、少なくともいずれか一方がめっき被膜を有する板材から成る一の部材及び他の部材の間に溶接部を有するワークを所定形状の成形品に成形する成形品の製造方法であって、上記酸化抑制処理方法によって、上記ワークの上記溶接部に上記酸化防止剤を噴霧塗布する工程と、上記酸化防止剤が塗布された上記ワークを加熱する工程と、加熱された上記ワークを熱間成形する工程と、を含む、成形品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したように本発明によれば、ワークを加熱炉内に投入する前に溶接部近傍の酸化防止剤を塗布することができ、その際、溶接部以外への酸化防止剤飛散による後工程への影響を抑制できる、酸化抑制処理装置、加熱装置、酸化処理抑制方法、及び成形品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る加熱装置の概略構成を示す側面図である。
【
図2】同実施形態に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図3】同実施形態に係るワークの溶接工程の説明の用に供される模式図である。
【
図4】同実施形態に係る酸化抑制処理装置の概略構成を示す模式図である。
【
図5】同実施形態に係る酸化抑制処理装置の概略構成を示す模式図である。
【
図6】同実施形態に係る下側ヘッダ部の配置を説明するための部分拡大図である。
【
図7】同実施形態に係る下側ヘッダ部の配置を説明するための部分拡大図である。
【
図8】同実施形態に係る下側ヘッダ部の配置を説明するための部分拡大図である。
【
図9】同実施形態における酸化抑制処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】同実施形態に係る成形品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】同実施形態に係るハースローラ部の配置を説明するための部分拡大図である。
【
図12】同実施形態に係る変形例に係るヘッダ部の概略構成を示す平面図である。
【
図13】同実施形態の一の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す側面図である。
【
図14】同実施形態の一の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る加熱装置の概略構成を示す側面図である。
【
図16】同実施形態に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図17】同実施形態に係るトレーの外観斜視図である。
【
図18】同実施形態の一の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す側面図である。
【
図19】同実施形態の一の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図20】同実施形態の他の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図21】本発明の第3の実施形態に係る加熱装置の概略構成を示す側面図である。
【
図22】同実施形態に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図23】同実施形態に係るトレーの外観斜視図である。
【
図24】同実施形態の一の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す側面図である。
【
図25】同実施形態の一の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図26】同実施形態の他の変形例に係る加熱装置の概略構成を示す平面図である。
【
図27】本発明の第4の実施形態に係る加熱装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【
図28】同実施形態に係る加熱装置の概略構成を模式的に示す平面図である。
【
図29】本発明の第5の実施形態に係る加熱装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【
図30】同実施形態に係る加熱装置の概略構成を模式的に示す平面図である。
【
図31】本発明の第6の実施形態に係る溶接ヘッド及び酸化抑制処理装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図32】同実施形態の一の変形例に係る酸化抑制処理装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図33】ハット形状のワークを加熱する場合の変形例を示す側面図である。
【
図34】溶接部に倣うヘッダ部の変形例に係る下側ヘッダ部の配置を説明するための部分拡大図である。
【
図35】溶接部に倣うヘッダ部の変形例に係る下側ヘッダ部の配置を説明するための部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
<<第1の実施形態>>
<1.加熱装置の構成>
まず、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る加熱装置100の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る加熱装置100の概略構成を示す側面図である。
図2は、本実施形態に係る加熱装置100の概略構成を示す平面図である。
【0028】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る加熱装置100は、加熱炉101を備える。加熱炉101は、内部においてワークWを加熱する。本実施形態において、加熱炉101は、
図1におけるY方向に沿って連通されたトンネル構造を有し、かかるトンネル構造内をワークWが連続的に通過しながら加熱される。
【0029】
加熱装置100は、複数の加熱部110と、搬送機構120と、酸化抑制処理装置130とを備えている。複数の加熱部110は、加熱炉101の内部に設けられ、ワークWを所定の加熱条件で加熱する。加熱部110は、一例として、パネル状の電気ヒータである。
図1に示すように、複数の加熱部110は、ワークWの上側と下側とに分かれて配置されている。上側と下側の複数の加熱部110は、ワークWの搬送方向に並んで配置されている。炉内雰囲気の一例としては、大気が挙げられる。また、炉内温度の一例としては、700~900℃程度が挙げられる。
【0030】
搬送機構120は、加熱炉101の内部及び外部においてワークWを搬送する。搬送機構120は、
図1に示すようにローラ式の搬送機構である。具体的には、搬送機構120は、加熱炉101内に設けられたハースローラ部121と、ハースローラ部121にワークWを搬送する加熱炉101前のテーブルローラ部122とを備える。ハースローラ部121は、複数のハースローラ121Aを有している。テーブルローラ部122はテーブルローラ122Aを有している。ワークWが、複数のテーブルローラ122Aまたは複数のハースローラ121Aに載置された状態で、図示しない駆動源から供給された動力によってテーブルローラ122Aまたはハースローラ121Aが回転することでワークWが搬送される。
【0031】
ここで、本実施形態に係る加熱装置100において、主として加熱対象となるワークWについて、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係るワークWの溶接工程の説明の用に供される模式図である。
【0032】
なお、以下説明の便宜上ワークWが板状である例を挙げて説明するが、ワークWは、平坦な部材である場合に限定されず、加工によって立体的な形状を有する部材であってもよい。ワークWとしては、例えば、ハット形状などの所定断面形状に成形された構造部材があげられる。具体的には、ワークWとしては、自動車骨格部品のBピラー、又はその中間成形品があげられる。ワークWが立体的な形状を有する場合については、後述する。
【0033】
ワークWは、一例として複数の金属製の板状部材を接合して形成される、いわゆるテーラードブランク材(TWB;Tailored-Weld Blank)である。すなわち、ワークWは、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とを溶接することで形成される。具体的には、
図3の最上部に示すように、第1の板状部材T1の端面と第2の板状部材T2の端面とを突き合せた状態で溶接する。この結果、母材金属同士が互いに溶け合うことで、ワークWに溶接部W1が形成される(
図3の上から2番目)。なお、溶接方法は、特に限定されないが、一例としては、レーザ溶接が挙げられる。
【0034】
ワークWを形成する第1の板状部材T1及び第2の板状部材T2は、一例として鋼板である。特に、第1の板状部材T1及び第2の板状部材T2は、熱間成形用鋼板であってもよい。また、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とは、互いに異なる金属であってもよい。例えば、第1の板状部材T1が鋼板であり、第2の板状部材T2が鋼材以外の金属から成る板材であってもよい。
【0035】
上述したようにワークWは、テーラードブランク材であるので、ワークWに要求される強度等に応じて、複数の部材を適宜組み合わせて形成される。例えば、第1の板状部材T1及び第2の板状部材T2は、互いに異なる引張強度を有してもよい。また、
図3に示すように、第1の板状部材T1及び第2の板状部材T2は、異なる板厚であってもよい。
【0036】
ここで、ワークWには、さらに耐食性の向上が要求される場合がある。このとき、耐食性を向上させる手法として、
図3に示すようにワークWの表面にめっき被膜Lを設けて耐食性を向上させる方法がある。めっき被膜Lの一例としては、Al基合金被膜、又はZn基合金被膜が挙げられる。しかしながら、上述のようにワークWがテーラードブランク材であるので、めっき被膜Lを有する板状部材同士を溶接することとなる。板状部材の溶接される部位にめっき被膜Lが残存したままであると、めっき被膜L中の合金成分が、溶接部W1内に溶け込むことがある。具体的には、めっき被膜L中のAl成分が溶接部W1に溶け込むことがある。この場合、溶接部W1と熱影響部の境界に硬質で脆いめっき金属間化合物相が残存するため、繰り返し荷重を受けると溶接部W1の疲労強度が低下し、溶接部W1での破断が生じ易くなる。すなわち、ワークW及びワークWから形成される成形品の耐久性が低下する可能性がある。さらに、めっき被膜L中のAl成分が溶接部W1に溶け込むことがある。この結果、耐食性の低下を引き起こす可能性がある。すなわち、ワークW及びワークWから形成される成形品の耐久性が低下する可能性がある。
【0037】
上記現象を抑制するために、溶接する前にめっき被膜Lを予め部分的に低減又は除去しておく場合がある。しかしながら、この場合、溶接後にワークWを加熱炉101へ投入すると、めっき被膜Lを除去した部位(すなわち、溶接部W1とその周囲)において、加熱炉101内の雰囲気によってはワークWの表面に酸化被膜(スケールS)が発生する(
図3の上から3番目)可能性がある。かかるスケールSは、塗膜の密着性を低下させることがあり、後工程において除去することが必要となる場合がある。さらに、スケールSは、加熱によって板材の厚み方向に成長するので、スケールSが生じると板材の板厚が薄くなってしまう(
図3の最下部)。この場合、板材において板厚の薄くなった部位が応力集中部SCとなり、溶接部W1の近傍に応力が集中し、溶接部W1における、プレス成形時の破断荷重と、成形された部材の破断荷重が低下する可能性がある。なお、スケールSを除去する物理的方法としては、ショットブラスト、切削及び研削等があげられる。スケールSを除去する方法は、物理的方法以外に、化学的方法でもよい。スケールSを除去する化学的方法としては、例えば、酸洗及びエッチング等があげられる。
【0038】
一方で、スケールSの発生を抑制するため、酸化防止剤によって被覆することも考えられる。しかし、液状化させた酸化防止剤をワークWに噴霧する場合には、その飛散によって炉内外の周辺環境へ影響を及ぼすことが想定される。例えば、炉内に酸化防止剤が過剰に飛散し、残存する場合、調整された炉内雰囲気が変化することや、炉内機構品の動作不良等の影響が考えられる。
【0039】
そこで、本発明者らが鋭意検討し、本発明にかかる酸化抑制処理装置を想到した。以下に、本発明の実施形態に係る酸化抑制処理装置130について説明する。
【0040】
<2.酸化抑制処理装置の構成>
図4及び
図5は、本実施形態に係る酸化抑制処理装置130の概略構成を示す模式図である。
図4及び
図5に示すように、酸化抑制処理装置130は、供給部131と、回収部132とヘッダ部133を備えている。ヘッダ部133には、供給部131及び回収部132が溶接部W1の長手方向に沿って設けられている。すなわち、ヘッダ部133によって、複数の供給部131及び回収部132は一体とされている。
図4及び
図5に示す例では、酸化抑制処理装置130は、ワークを挟んで、上下にそれぞれ上側ヘッダ部133A、下側ヘッダ部133Bの一対のヘッダ部133を備える。
供給部131は、酸化防止剤供給装置141により供給され霧状化された酸化防止剤を含む混合気体を溶接部W1に供給する。酸化防止剤は、溶接部W1におけるスケールSの発生を抑制できれば特に限定されず、例えば、粒子状の金属酸化物が挙げられる。かかる金属酸化物粒子が溶媒中に懸濁していることで、酸化防止剤を含む液体を霧状化することが可能となる。
【0041】
回収部132は、供給部131によって溶接部W1へ供給された混合気体の一部を回収する。ここで、回収部132は、溶接部W1へ供給された混合気体をすべて回収するものではなく、酸化被膜の形成の抑制が実現され、かつ周辺への酸化防止剤の飛散による影響が出ない程度に回収する趣旨である。供給部131から供給された混合気体の流れ(噴流)の拡大による噴霧範囲の広がりを抑制するため、及び、ワークWに付着せずに拡散した酸化防止剤を含む混合気体の回収を促進するため、回収部132の開口面積を供給部131の開口面積より大きくすることが望ましい。
【0042】
供給部131から供給された混合気体の気流は、ワークWの溶接部W1及びその周辺部位と衝突し、その後に回収部132によって回収されることで、気流の向きが変化する。具体的には、
図4及び
図5に示すように、供給部131から供給された混合気体の気流が、ワークWと衝突した後に回収部132に向かって折り返すような流れとなる。このように、混合気体の気流が制御されることで酸化防止剤が周辺に拡散することが抑制される。この結果、酸化防止剤を含む混合気体が局在化し、溶接部W1に対して供給及び回収される混合気体の流れる領域が定在するため、溶接部W1に塗布される酸化防止剤の塗布範囲が制限され、酸化防止剤が周辺へ過度に飛散することが抑制される。
【0043】
供給部131から供給された酸化防止剤を含む混合気体が、ワークWと衝突しない領域(例えば、ワークWの側部外方の領域)において、供給部131から供給された混合気体が対向する回収部132によって回収されるので、ワークWの側方において、直線的な混合気体の気流が形成される。これにより、酸化防止剤の溶接部W1の周辺への飛散がより抑制される。
【0044】
(ヘッダ部)
図4に示すように、ヘッダ部133は、略直方体の筐体形状を有していてもよい。かかる筐体の長手方向に沿って、供給部131及び回収部132が、それぞれ複数設けられる。ここで、ヘッダ部133の長手方向は、溶接部W1の延在方向に沿っている。例えば、溶接部W1が線状に形成された場合に、ヘッダ部133の長手方向は、溶接部W1の長手方向に沿っている。供給部131及び回収部132は、ヘッダ部133の長手方向において、交互に配置されている。換言すれば、溶接部W1が線状である場合に、供給部131及び回収部132は、線状に形成された溶接部W1の長手方向に沿って交互に配置されている。具体的には、
図4に示すように、ヘッダ部133の内部に複数の開口が設けられ、これらの開口が供給部131または回収部132として機能する。かかる開口は、
図4に示すように、それぞれ供給用ダクト135A及び回収用ダクト135Bと連結されており(
図4中の吹き出し部分(断面図)参照)、酸化防止剤を含む混合気体の供給及び回収が実現される。
【0045】
また、ヘッダ部133は、その長手方向が、(
図2に示すように、)ワークWの搬送方向に沿うように配置されていてもよい。すなわち、ヘッダ部133内の供給部131及び回収部132は、ワークWの搬送方向に沿って配設されていてもよい。
【0046】
図4及び
図5に示す例では、上述したように、酸化抑制処理装置130は、上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bを有している。上側ヘッダ部133Aと下側ヘッダ部133Bとは、加熱炉101内に搬送される前のワークWを挟んで互いに対向する。さらに、上側ヘッダ部133Aは、ワークWの溶接部W1の表側の面と対向する位置に設けられ、下側ヘッダ部133Bは、ワークWの溶接部W1の裏側の面と対向する位置に設けられる。これにより、溶接部W1の表側の面及び裏側の面と対向する位置に設けられた上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bの各々の供給部131及び回収部132によって酸化防止剤を含む混合気体が溶接部W1の表側及び裏側においてそれぞれ供給及び回収される。
【0047】
具体的には、
図1に示すように、上側ヘッダ部133Aは、加熱炉101の挿入口よりも搬送方向上流側に取り付けられている。一方、下側ヘッダ部133Bは、加熱炉101の挿入口よりも搬送方向上流側のテーブルローラ部122に設けられる。
【0048】
以下に
図6~
図8を参照しながら、テーブルローラ部122および下側ヘッダ部133Bの配置について説明する。
図6は、下側ヘッダ部133Bの配置を説明するための部分拡大図(Y方向視)である。また、
図7は、下側ヘッダ部133Bの配置を説明するための部分拡大図(Z方向視)である。また、
図8は、下側ヘッダ部133Bの配置を説明するための部分拡大図(X方向視)である。
【0049】
テーブルローラ部122において、複数のテーブルローラ122Aは
図6および
図7に示されるように、テーブルローラ122AのワークWの搬送方向と直交する方向(
図6におけるX方向、すなわち、テーブルローラ122Aの回転軸に沿った長手方向)に互いに離間した第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cを有する。すなわち、テーブルローラ122Aは、第1テーブルローラ部122Bと第2テーブルローラ部122Cとの間に離間部122Eを備える。第1テーブルローラ部122Bと、第2テーブルローラ部122Cとは、回転力を伝達するための芯棒部材122Dによって連結されている。テーブルローラ部122は、複数のテーブルローラ122Aの離間部122Eで構成される離間部列122Fを備える。下側ヘッダ部133Bは、テーブルローラ部122の離間部列122Fに配置される。
【0050】
芯棒部材122Dの外径は、第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cの外径よりも小さくされている。この結果、ワークW、芯棒部材122D、第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cによって囲繞される空間が形成される。テーブルローラ部122ではこのような空間がワークWの搬送方向に列状に形成され、かかる空間内に、下側ヘッダ部133Bの一部が設けられている。上述した空間内に配置される下側ヘッダ部133Bの部位は、
図6及び
図8に示すように、下側ヘッダ部133Bの他の部位と比べて小さくされている。
なお、
図11に示すように、
図1に示される加熱炉101内のハースローラ121Aも、加熱炉101前のテーブルローラ部122のテーブルローラ122Aと同様に、テーブルローラ122Aの長手方向(言い換えるとワークWの搬送方向と直交する方向に)おいて、互いに離間した第1ハースローラ部121Bと第2ハースローラ部121Cを有する構成であってもよい。
すなわち、ハースローラ部121において、複数のハースローラ121Aは、
図11に示すように、ハースローラ121Aの第1ハースローラ部121Bと第2ハースローラ部121Cとは、ワークWの搬送方向と直交する方向(すなわち、ハースローラ121Aの回転軸に沿った長手方向)に互いに離間した第1ハースローラ部121B及び第2ハースローラ部121Cを有していてもよい。つまり、ハースローラ121Aは、第1ハースローラ部121Bと第2ハースローラ部121Cとの間に離間部121Eを備えていてもよい。第1ハースローラ部121Bと、第2ハースローラ部121Cとは、回転力を伝達するための芯棒部材121Dによって連結されていてもよい。
【0051】
(供給回収系)
図5に示すように、酸化抑制処理装置130は、酸化防止剤を含む混合気体をヘッダ部133へ供給し、回収するための供給回収系140を備えている。すなわち、酸化抑制処理装置130は、酸化防止剤供給装置141、送気ブロア142、排気ブロア143、及びフィルター144を備える。酸化防止剤供給装置141は、例えば、液状の酸化防止剤を霧状化し送気ブロア142から送られた搬送気体と混合する弁141Aを備える。弁141Aで混合された混合気体はヘッダ部133に供給される。フィルター144は、粉塵回収装置であり、回収された混合気体から余剰の酸化防止剤を除去する。排気ブロア143は、設けられても設けられなくてもどちらでもよい。排気ブロア143が省かれた場合、フィルター144と送気ブロア142とを循環経路145で接続し、フィルター144でフィルタリングしたガスを送気ブロア142で循環させても良い。以上の構成により、酸化防止剤供給装置141から供給された酸化防止剤と送気ブロア142から送られた搬送気体とが混合された混合気体が、供給部131からワークWの溶接部W1へ向かって供給される。また、回収部132を介して、供給された酸化防止剤を含む混合気体が回収される。
【0052】
(制御部)
図1に示すように、加熱装置100は、加熱炉制御部170を有している。加熱炉制御部170は、複数の加熱部110及び搬送機構120等の動作を制御することで、加熱炉101における加熱条件を制御する。さらに、加熱装置100は、制御部160(酸化抑制制御部)を有する。制御部160は、加熱炉制御部170と一体でも別体でもどちらでもよい。制御部160は、酸化抑制処理装置130の動作(酸化防止剤供給装置141の弁141Aの開度、送気ブロア142及び排気ブロア143の回転数等)を制御する。酸化防止剤供給装置141の弁141Aの開度が制御されることにより、酸化防止剤の供給量、ひいては、酸化防止剤の濃度が調整され、送気ブロア142及び排気ブロア143の回転数が制御されることにより、混合気体の供給流量及び回収流量が調整される。
【0053】
加熱炉制御部170としての機能は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及びストレージ等の協働によって実現される。すなわち、CPUは、ストレージに記憶された加熱装置100のワーク種別毎に設定された加熱制御プログラムをメモリ上で実行することで、加熱炉制御部170として機能する。同様に、制御部160としての機能は、一例として、CPU、メモリ、及びストレージ等の協働によって実現される。すなわち、CPUは、ストレージに記憶された加熱装置100のワーク種別毎に設定された混合気体の供給及び回収、酸化防止剤の供給量、及び動作時間の制御プログラムをメモリ上で実行することで、制御部160として機能する。
【0054】
続いて、本実施形態に係る加熱装置100及び酸化抑制処理装置130の機能について説明する。ワークWは、搬送機構120によって加熱炉101に搬送される。ワークWが加熱炉101に挿入される前の所定の位置に配置された状態で、ワークWの溶接部W1に対向する位置には、酸化抑制処理装置130が設けられている。ワークWの溶接部W1に向かって、酸化抑制処理装置130から酸化防止剤を含む混合気体が供給される。この結果、混合気体に含まれる酸化防止剤が溶接部W1に付着して塗布された状態になり、この酸化防止剤によって溶接部W1及びその周辺の部位が被覆される。その後、ワークWは、炉内に搬送され、所定の加熱条件で加熱される。ワークWの加熱中及び加熱後において、溶接部W1及びその周辺の部位は、酸化防止剤によって被覆されているので、溶接部W1及びその周辺の部位にスケールSが発生することが抑制される。所定の条件の加熱が完了した後、ワークWは、搬送機構120によって加熱炉101から取り出され、後工程へ搬送される。
【0055】
(酸化抑制処理方法)
次に、
図9を参照しながら、本実施形態に係る酸化抑制処理方法について説明する。
図9は、本実施形態における加熱方法のフローチャートである。
図9に示すように、先ず、ワークWが、所定の位置に配置される(S101)。続いて、ワークWの溶接部W1に酸化防止剤を含む混合気体が供給される(S103)。ステップS103において、溶接部W1及びその周辺が酸化防止剤によって被覆される。さらに、ステップS103と並行して、供給された混合気体の一部が回収される(S105)。
これらのステップS103及びステップS105では、線状に形成された溶接部W1の長手方向に沿って交互に配置された供給部131及び回収部132によって、各回収部132による気体の回収流量が該回収部132の両側に隣接する供給部131による混合気体の供給流量の合計の1/2以上とする。各回収部132から吸入される気体は、供給部から供給された混合気体以外に周辺の雰囲気(例えば大気)を含んでもよい。各回収部132の気体の吸入流量は、このような雰囲気を含んだ流量である。なお、回収部132の両側の隣接する供給部131は、回収部132の片側のみに供給部131がある場合を含む。この場合、この片側の供給部131の混合気体の供給流量を、回収部132の両側の隣接する供給部131による混合気体の供給流量の合計とする。
このような制御方法は、例えば、
図5の供給部131の各系統に定流量制御弁が設けられ、回収部132の各系統に流量調整弁が設けられ、各定流量制御弁の設定流量に基づき回収部132の流量調整弁の設定がなされることにより実現される。このとき、回収部132の流量調整は、該回収部132に隣接する供給部131による混合気体の供給流量の合計の1/2以上、例えば合計の1/2の10%以内(すなわち、合計の50~55%の範囲)に設定される。
図4の供給用ダクト135A内の圧力を均一に維持でき、各供給部131の流量配分が均等化できる場合は、ヘッダ部133の長手方向の端部に位置する回収部132と、それ以外の回収部132の2系統で流量調整を行ってもよい。
また、このステップS103およびS105では、溶接部W1と対向する供給部131及び回収部132によって、溶接部W1の長手方向端の供給部131から溶接部W1の長手方向中央部に向かう気流が発生する供給流量及び回収流量で、混合気体を供給及び回収する。このような制御方法は、例えば、溶接部W1の長手方向両端(前後端)に位置する供給部131の外縁に酸化防止剤の濃度を計測するためのガス吸引管が設けられ、酸化防止剤が所定の濃度以下になるよう、長手方向両端の供給部131の内側に位置する回収部132の流量が調整されることにより実現される。酸化防止剤の濃度調整は、例えば、混合気体の流量と、噴射され霧状化される酸化防止剤の散布量(スプレーの霧状化部分のノズル径、液圧)で調整してもよい。また、酸化防止剤の濃度は、混合気体中の酸化防止剤の割合であり、単位流量中の質量でも、粒子数でもよい。
このような酸化防止剤の濃度調整は、酸化防止剤の濃度、流量、塗布量の関係(予め把握)に基づいて行われる。また、酸化防止剤の濃度調整は、酸素濃度でなく、酸化防止剤の濃度(粒度計等)による流量調整により行われる。
さらに、このステップS103およびS105では、溶接部W1の表側の面及び裏側の面と対向する位置に設けられた上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bのうち、一方のヘッダ部の供給部131による混合気体の供給流量が、該供給部131と対向する、他方のヘッダ部の回収部132の両側に隣接する供給部131による混合気体の供給流量の合計の1/2以下(>0)とする。このような制御方法は、例えば、上の供給部131の流量が所定の値に設定された後、該供給部131と対向する下の供給部131の流量が、下の供給部131に対向する上の回収部132の両側に隣接する上の供給部131の定流量弁の設定流量に応じ、下の供給部131の流量調整弁で調整されることにより実現される。同様に、このような制御方法は、例えば、下の供給部131の流量が所定の値に設定された後、該供給部131と対向する上の供給部131の流量が、上の供給部131に対向する下の回収部132の両側に隣接する下の供給部131の定流量弁の設定流量に応じ、下の供給部131の流量調整弁で調整されることにより実現される。なお、この場合の一方のヘッダ部の供給部131に対向する他方のヘッダ部の回収部132の両側に隣接する供給部131は、回収部132の片側のみに供給部131がある場合を含む。この場合、この片側の供給部131の混合気体の供給流量を、回収部132の両側の隣接する供給部131による混合気体の供給流量の合計とする。このように一方のヘッダ部の供給部131に対向する他方のヘッダ部の回収部132の片側のみに供給部131がある場合には、回収部132の片側に隣接する供給部131の定流量弁の設定流量に応じて、一方のヘッダ部の供給部131の流量が決定される。
【0056】
続いて、ステップS107において、酸化抑制処理が、終了条件を満たすか否かが判定される。終了条件としては、例えば、所定の時間、混合気体の供給及び回収が行われたかが挙げられる。判定が肯定された場合、酸化抑制処理は終了する。この終了処理としては、混合気体の供給を停止し、供給及び回収を継続する。そして、タイマーで一定時間が経過したか、又は酸化防止剤の濃度判定を行い、酸化剤の濃度が基準未満になった時点で供給及び回収を停止する。このような終了処理をするのは、酸化防止剤の不要な周辺拡散を防止するためである。一方、判定が否定された場合、酸化抑制処理は、ステップS103に戻る。以上、本実施形態に係る酸化抑制処理方法について説明した。
【0057】
(製造方法)
次に、
図10を参照しながら、本実施形態に係る成形品の製造方法について説明する。
図10は、本実施形態における成形品の製造方法のフローチャートである。
図10に示すように、先ず、
図9に示した酸化抑制処理方法を用いてワークWの溶接部W1に対して酸化抑制処理が行われる(S110)。次いで、ワークWは加熱炉に搬送される。続いて、ワークWが加熱される(S120)。そして、ワークWがプレス機に搬送される(S130)。搬送時間は例えば数秒~20秒程度である。その後、加熱後のワークWが所定の形状に熱間成形される(S140)。以上、本実施形態に係る成形品の製造方法について説明した。
【0058】
(作用効果)
本実施形態によれば、ワークWの加熱において、酸化抑制処理装置130によって酸化防止剤を含む混合気体をワークWの溶接部W1に供給して溶接部W1に酸化防止剤を塗布すると共に、この混合気体を回収することで、ワークWの溶接部W1及びその周辺のスケールSの発生が抑制されるとともに、酸化防止剤の飛散による影響を及ぼすことが抑制される。すなわち、めっき被膜Lを有する部材を溶接してワークWを形成する際に、溶接部W1の周辺のめっき被膜Lを除去した場合、めっき被膜が除去された部分では、その後の加熱工程において加熱炉内の雰囲気によってはワークWの溶接部W1及びその周辺の部位でスケールSが生じることがある。このとき、スケールSは板材の厚み方向に進行しているので、かかるスケールSを除去した場合にも、溶接部W1の周辺に局所的に薄肉化された部位が生じ応力集中部SCが生じる可能性がある。また、逆にスケールSが残存した場合は後工程の塗装などに影響を及ぼす場合がある。そのため、酸化防止剤を含む混合気体を溶接部W1に供給し、該混合気体を排気することで、スケールSの発生を抑制しつつ、酸化防止剤を含む混合気体の流れる領域を局所化して酸化防止剤の飛散を抑制する。
【0059】
したがって、本実施形態によれば、加熱炉101内への酸化防止剤飛沫(粉塵)混入による炉内汚損を抑制できると共に、溶接部W1以外への酸化防止剤飛散による後工程への影響(具体的には、プレス成形時の摺動特性変動による成形不安定、成形品の表面汚れの発生等)を抑制できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、混合気体を複数個所から供給し、さらに該混合気体を複数個所から回収することで、スケールSの発生をより効率的に抑制しつつ、酸化防止剤の塗布範囲を溶接部近傍に、より局所化できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、供給部131及び回収部132を交互に配置することで、混合気体の流れを形成し易くし、スケールSの発生をより効率的に抑制しつつ、酸化防止剤の塗布範囲を溶接部近傍に、より局所化できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、供給部131及び回収部132を、ワークWを挟んで対向して配置させることで、混合気体の流れを形成し易くし、スケールSの発生をより抑制しつつ、酸化防止剤をより局所化できる。さらに、供給部131と回収部132の間にワークWが存在しない場合及び部位では、ワークWの側方を覆う気流を実現することで、酸化防止剤の飛散を抑制できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、供給部131と回収部132が搬送方向に沿っていることで、ワークWの搬送中も酸化防止剤の制御を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、ハースローラ部121にワークWを搬送する加熱炉前のテーブルローラ部122は、ワークWの搬送方向と直交する方向において、互いに離間した第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cを有し、第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cの間にヘッダ部133が設けられている。これにより、搬送機構120としてテーブルローラ部122が設けられている場合であっても、酸化抑制処理装置130による酸化防止剤を含む混合気体の供給及び回収が実現できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、めっき被膜Lは、Al基合金被膜である。このため、めっき被膜LがAl基合金である場合、Al成分の溶接部W1への溶け込みによる強度低下を避けるため、溶接部W1の周辺のAl基被膜をより多く除去することが必要となる場合があり、このとき、その後の加熱工程においてワークWの溶接部W1の周辺でスケールSがより多く生じることがある。そこで、酸化防止剤を含む混合気体を溶接部W1に供給し、該混合気体を回収することで、スケールSの発生を抑制しつつ、酸化防止剤を含む混合気体の流れる領域を局所化して酸化防止剤の飛散を抑制できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とは、異なる引張強度を有する材料から成る。このため、異なる強度の部材を溶接してワークWを形成することで、応力の最適化が実現されワークWの軽量化が実現される。一方、かかるワークWに対する加熱工程において、溶接部W1でスケールSが生じることがある。かかるスケールSは板材の厚み方向に進行するので、スケールSを除去しても、板材の板厚を薄くしていることになり、溶接部W1の周辺に応力集中部が発生する可能性がある。そのため、混合気体を溶接部W1に供給し、該混合気体を回収することで、スケールSの発生を抑制しつつ、酸化防止剤を含む混合気体の流れる領域を局所化して酸化防止剤の飛散を抑制する。
【0067】
また、本実施形態によれば、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とは、異なる板厚とされている。このため、異なる板厚の部材を溶接してワークWを形成することで、応力の最適化が実現されワークWの軽量化が実現される。一方、かかるワークWに対する加熱工程において、溶接部W1でスケールSが生じることがある。スケールSは板材の厚み方向に進行しているので、かかるスケールSを除去しても、板厚の減少を伴うため、溶接部W1周辺(特に薄板側)に応力集中部が発生する可能性がある。そのため、混合気体を溶接部W1に供給し、該混合気体を回収することで、スケールSの発生を抑制しつつ、酸化防止剤を含む混合気体の流れる領域を局所化して酸化防止剤の飛散を抑制できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、加熱炉101内への酸化防止剤飛沫混入による炉内汚染を抑制できる。
【0069】
なお、上記実施形態において、ヘッダ部133は、交換可能とされてもよい。すなわち、ヘッダ部133は、取り外し可能に取り付けられている。例えば、ヘッダ部133は、ワークWの種類、又はワークWにおける溶接部W1の位置、大きさ、若しくは形状に応じて、複数種類のヘッダ部133が用意され、適宜ヘッダ部133が交換されてもよい。例えば、
図12に示すように、ワークWの形状、数、及び溶接部W1に応じて、ヘッダ部133の配置及び供給部131並びに回収部132の配置が適宜設定され、それぞれのヘッダ部133は、連結部134によって連結されることで、酸化抑制処理装置130を構成してもよい。また、ワークWが複数の溶接部W1を有する場合、
図1の上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bが複数列配置されてもよい。テーブルローラ部122の離間部列122Fは、複数列の下側ヘッダ部133Bに倣った形状に、複数列配置されてもよい。
【0070】
さらに、上記実施形態において、テーブルローラ122Aが、別体の第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cから成る例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cは、一体のテーブルローラ122Aの拡径部であってもよい。この場合、下側ヘッダ部133Bは、第1テーブルローラ部122B及び第2テーブルローラ部122Cの間の縮径部とワークWの溶接部W1との間に形成される空間に配置される。
【0071】
(変形例1)
続いて、本発明の第1の実施形態のいくつかの変形例について
図13~
図14を参照しながら説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記実施形態の構成と共通する構成について説明を省略する場合がある。
【0072】
本実施形態に係る一の変形例では、上記実施形態と比較して、加熱炉101の構成が、相違する。
図13に示すように、本変形例では、加熱炉101は、
図13におけるY方向に沿って一方向のみが開口された加熱炉である。かかる開口には、開閉可能な炉蓋101Aが取り付けられている。ワークWは、加熱炉101内に収容されて、所定の条件で加熱される。
【0073】
図14に示すように、酸化抑制処理装置130は、加熱炉101の挿入口に対して搬送方向の上流側において、ワークWに対向する位置に取り付けられる。酸化抑制処理装置130から供給される混合気体によってワークWの溶接部W1が被覆される。これにより、ワークWの溶接部W1におけるスケールSの発生が抑制される。さらに、酸化抑制処理装置130によって混合気体を回収することで、酸化防止剤が周囲に飛散し、周辺環境に影響を及ぼすことが抑制される。なお、
図14に示される加熱炉101内のハースローラ121Aも、加熱炉101前のテーブルローラ部122のテーブルローラ122Aと同様に、第1ハースローラ部121B及び第2ハースローラ部121Cを有する構成とされることが好ましい。また、酸化抑制処理装置130がヘッダ部133を備える場合、
図14では、ヘッダ部133は、その長手方向がワークWの搬送方向に沿って配置されている。ヘッダ部133は、その長手方向がワークWの搬送方向と直交するように配置されていてもよい。
【0074】
<<第2の実施形態>>
本発明の第2の実施形態に係る加熱装置200について、
図15~
図17を参照しながら説明する。
図15は、本実施形態に係る加熱装置200の概略構成を示す側面図である。
図16は、本実施形態に係る加熱装置200の概略構成を示す平面図である。
図17は、本実施形態に係るトレー250の外観斜視図である。トレー250は、一例として、外枠の内側に複数の桟が設けられた構造であり、複数の開口(スリット)を有する。この複数の開口は、加熱炉101におけるワークWの加熱効率の維持(下側の加熱部110からの輻射入熱の促進や、ガス循環炉で全体雰囲気の安定化)のために設けられたものである。トレー250は、その他に、網状や格子状でもよく、また、パンチングメタル等でもよい。
【0075】
本実施形態では、上記第1の実施形態と比較して、ワークWがトレー250に載置された状態で、搬送機構120によって搬送される点で相違する。なお、本実施形態の説明において、上記第1の実施形態の構成と共通する構成についての説明は省略する場合がある。
トレー250を搬送する本実施形態の搬送機構120において、テーブルローラ部122の離間部列122F及びハースローラ部121の離間部列121Fは無くともよく、テーブルローラ122A及びハースローラ121Aは、テーブルローラ122Aの離間部122E及びハースローラ121Aの離間部121Eの無い、通常のローラでもよい。
【0076】
図15及び
図16に示すように、本実施形態に係る酸化抑制処理装置130は、上下一対のヘッダ部133(上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133B)を備えている。上側ヘッダ部133Aは、加熱炉101の挿入口に対して搬送方向の上流側に取り付けられている。一方、下側ヘッダ部133Bは、後述するトレー250に設けられている。
【0077】
トレー250は、ワークWを支持しながら、搬送機構120によって搬送される。搬送機構120は、第1の実施形態と同様に、加熱炉内のハースローラ部121と加熱炉前のテーブルローラ部122を備える。本実施形態における搬送は、後述するようにトレー250が、搬送過程において所定位置で一旦停止する、いわゆるピッチ送りによって行われる。トレー250は、
図17に示すように、複数の開口を有する板状の本体部251と、本体部251から突出したピン形状の支持部253とを備えている。支持部253は、その先端がワークWに当接することで、ワークWを支持している。本体部251には、下側ヘッダ部133Bが取り付けられている。下側ヘッダ部133Bは、ワークWが支持部253に支持された状態において、ワークWの溶接部W1と対向する位置に取り付けられている。
【0078】
図17に示すように、下側ヘッダ部133Bは、供給部131と回収部132と有している。さらに、下側ヘッダ部133Bは、接続管235を有している。接続管235は、トレー250が所定位置とされた状態で、供給回収ダクト237と連結可能とされている。具体的には、
図16に示すように、下側ヘッダ部133Bが、上側ヘッダ部133Aに対向する位置において、接続管235と供給回収ダクト237とが連結される。図中には明示しないが、接続管235及び供給回収ダクト237は、混合気体の供給用と回収用の2系統を有する。これにより、供給回収ダクト237から酸化防止剤を含む混合気体の供給及び回収が行われ、下側ヘッダ部133Bの供給部131及び回収部132によって溶接部W1に対して混合気体の供給回収が行われる。
【0079】
(作用効果)
本実施形態によれば、ワークWが載置されるトレー250がある場合であっても、酸化抑制処理装置130による溶接部W1の酸化抑制処理が実現できる。特に、トレー250と酸化抑制処理装置130の下側ヘッダ部133Bとが一体となっているので、ワークWと下側ヘッダ部133Bとの位置関係が変化せず、酸化抑制処理が実現できる。
【0080】
(変形例2)
続いて、本発明の第2の実施形態のいくつかの変形例について
図18~
図20を参照しながら説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記実施形態の構成と共通する構成について説明を省略する場合がある。
【0081】
本実施形態に係る一の変形例では、上記実施形態と比較して、加熱炉101の構成が、が相違する。
図18及び
図19に示すように、本変形例では、加熱炉101は、
図18におけるY方向に沿って一方向のみが開口された加熱炉である。酸化抑制処理装置130の上側ヘッダ部133Aは、加熱炉101の挿入口の搬送方向の上流側において、ワークWの溶接部W1に対向する位置に取り付けられる。
【0082】
また、下側ヘッダ部133Bは、トレー250に設けられる。トレー250が炉内に挿入される前に位置する状態で、下側ヘッダ部133Bの有する接続管235が、供給回収ダクト237と連結する。これにより、下側ヘッダ部133Bの供給部131及び回収部132から混合気体が供給及び回収される。このように本変形例によれば、加熱炉101が一方向のみが開口された加熱炉である場合にも上記実施形態と同様な効果を奏する。
【0083】
(変形例3)
また、本実施形態に係る他の変形例では、上記実施形態と比較して、酸化抑制処理装置130の加熱装置200における配置が相違する。
図20に示すように、酸化抑制処理装置130がヘッダ部133を備える場合、ヘッダ部133の長手方向がワークWの搬送方向と直交するように、酸化抑制処理装置130が配置されている。すなわち、供給部131と回収部132とが、ワークWの搬送方向と直交する方向(
図20におけるX方向)に沿うように配設される。また、酸化抑制処理装置130の下側ヘッダ部133Bもトレー250において、ワークWの搬送方向と直交する方向(
図20におけるX方向)に沿うように配設される。このように本変形例によれば、加熱装置200において、ヘッダ部133の長手方向が搬送方向と直交するように配置される場合にも上記実施形態と同様な効果を奏する。
【0084】
<<第3の実施形態>>
本発明の第3の実施形態に係る加熱装置300について、
図21~
図23を参照しながら説明する。
図21は、本実施形態に係る加熱装置300の概略構成を示す側面図である。
図22は、本実施形態に係る加熱装置300の概略構成を示す平面図である。
図23は、本実施形態に係るトレー350の外観斜視図である。トレー350は、一例として、外枠の内側に複数の桟が設けられた構造であり、複数の開口(スリット)を有する。トレー350は、その他に、網状や格子状でもよく、また、パンチングメタル等でもよい。
【0085】
本実施形態では、上記第1及び第2の実施形態と比較して、ワークWがトレー350に載置され、かかるトレー350に酸化抑制処理装置130の構造体333が取り付けられている点で相違する。なお、本実施形態の説明において、上記第1及び第2の実施形態の構成と共通する構成についての説明は省略する場合がある。
トレー350を搬送する本実施形態の搬送機構120において、テーブルローラ部122の離間部列122F及びハースローラ部121の離間部列121Fは無くともよく、テーブルローラ122A及びハースローラ121Aは、テーブルローラ122Aの離間部122E及びハースローラ121Aの離間部121Eの無い、通常のローラでもよい。
【0086】
図21及び
図22に示すように、本実施形態に係る酸化抑制処理装置130の上側ヘッダ部333A、下側ヘッダ部333Bは、トレー350に取り付けられている。具体的には、
図23に示すように、上側ヘッダ部333Aおよび下側ヘッダ部333Bは、連結部333Cで連結されて構造体333を構成し、構造体333はトレー350に取り付けられている。上側ヘッダ部333A及び下側ヘッダ部333Bは互いに対向しており、ワークWがトレー350に載置された状態で、溶接部W1に対向する位置に設けられている。連結部333Cは、上側ヘッダ部333A及び下側ヘッダ部333Bの長手方向の一端部を連結している。また、連結部333Cの内部には、混合気体を供給し、かつ回収するためのダクトが収容されている。
【0087】
また、構造体333は、接続管235を有している。
図22に示すように、トレー350が加熱炉101に挿入される前の所定の位置にある状態で、構造体333の有する接続管235が、供給回収ダクト237と連結する。これにより、下側ヘッダ部333Bの供給部131及び回収部132から混合気体が供給及び回収される。さらに、連結部333Cを介して、上側ヘッダ部333Aにも混合気体が供給及び回収される。
【0088】
本実施形態によれば、トレー350に上側ヘッダ部333A及び下側ヘッダ部333Bが設けられていることにより、ワークWと上側ヘッダ部333A及び下側ヘッダ部333Bとの位置関係の変化が抑制され、効果的な酸化抑制処理が実現できる。
【0089】
(変形例4)
続いて、本発明の第3の実施形態のいくつかの変形例について
図24~
図26を参照しながら説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記実施形態の構成と共通する構成について説明を省略する場合がある。
【0090】
本実施形態に係る一の変形例では、上記実施形態と比較して、加熱炉101の構成が相違する。
図24及び
図25に示すように、本変形例では、加熱炉101は、
図24におけるY方向に沿って一方向のみが開口された加熱炉である。
【0091】
また、酸化抑制処理装置130の上側ヘッダ部333A及び下側ヘッダ部333Bは、トレー350に設けられる。トレー350が炉内に挿入され前に位置する状態で接続管235が、供給回収ダクト237と連結する。これにより、下側ヘッダ部333Bの供給部131及び回収部132から混合気体が供給及び回収される。このように本変形例によれば、加熱炉101が一方向のみが開口された加熱炉である場合にも上記実施形態と同様な効果を奏する。
【0092】
(変形例5)
また、本実施形態に係る他の変形例では、上記実施形態と比較して、酸化抑制処理装置130の加熱装置300における配置が相違する。
図26に示すように、酸化抑制処理装置130が上側ヘッダ部333A及び下側ヘッダ部333Bを備える場合、両ヘッダ部が333A、333Bの長手方向がワークWの搬送方向と直交するように、酸化抑制処理装置130が配置されている。すなわち、供給部131と回収部132とが、ワークWの搬送方向と直交する方向(
図26におけるX方向)に沿うように配設される。このように本変形例によれば、加熱装置300において、上側ヘッダ部333A及び下側ヘッダ部333Bの長手方向が搬送方向と直交するように配置される場合にも上記実施形態と同様な効果を奏する。
【0093】
<<第4の実施形態>>
本発明の第4の実施形態に係る加熱装置400について、
図27及び
図28を参照しながら説明する。
図27及び
図28は、本実施形態に係る加熱装置400の構成例を模式的に示す側断面図である。本実施形態では、上記第1~第3の実施形態と比較して、ワークWがトレー450に載置され、酸化抑制処理装置130の上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bが挿入口の搬送方向の上流側に設けられている点で相違する。なお、本実施形態の説明において、上記第1~第3の実施形態の構成と共通する構成についての説明は省略する場合がある。
トレー450を搬送する本実施形態の搬送機構120において、テーブルローラ部122の離間部列122F及びハースローラ部121の離間部列121Fは無くともよく、テーブルローラ122A及びハースローラ121Aは、テーブルローラ122Aの離間部122E及びハースローラ121Aの離間部121Eの無い、通常のローラでもよい。
【0094】
図27に示すように、上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bは、加熱炉101の挿入口に対して搬送方向の上流側に設けられている。トレー450に設けられる支持部253は、下側ヘッダ部133Bとの干渉を避けるため、部分的に設けられていない。特に、ワークWの溶接部W1の周辺には、支持部253は設けられていない。上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bは互いに対向しており、トレー450が炉内に挿入される前に位置された状態で、溶接部W1に対向する位置に設けられている。このように本実施形態によれば、トレー450にヘッダ部133が設けられていない場合であっても、酸化抑制処理が実現される。
【0095】
<<第5の実施形態>>
本発明の第5の実施形態に係る加熱装置500について、
図29及び
図30を参照しながら説明する。
図29及び
図30は、本実施形態に係る加熱装置500の構成例を模式的に示す側断面図である。本実施形態では、上記第1~第4の実施形態と比較して、加熱装置500が、搬送機構520としてマニピュレータ521を備える加熱装置である点で相違する。なお、本実施形態の説明において、上記第1~第4の実施形態の構成と共通する構成についての説明は省略する場合がある。
【0096】
図29及び
図30に示すように、本実施形態に係る搬送機構520としてのマニピュレータ521によって、ワークWが炉内外の間を搬送される。具体的には、加熱炉101の挿入口の搬送方向の上流側に設けられた一対のヘッダ部133によって、ワークWの溶接部W1に対する酸化抑制処理の後、マニピュレータ521の把持部521AによってワークWが把持されることにより、ワークWが炉内に挿入される。最終的に、ワークWは、炉内に設けられた複数の支持部554に載置される。
【0097】
上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bは、加熱炉101の挿入口の搬送方向の上流側に設けられている。ワークWは、マニピュレータ521の把持部521Aによって把持されて、複数の支持部553に載置される。上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bは互いに対向しており、複数の支持部553にワークWが載置された状態で、溶接部W1に対向する位置に設けられている。このように本実施形態によれば、ワークWの搬送がマニピュレータ521によって実現される場合であっても、ワークWの溶接部W1に対する酸化抑制処理が実現される。
【0098】
<<第6の実施形態>>
本発明の第6の実施形態に係る酸化抑制処理方法について、
図31を参照しながら説明する。
図31は、本実施形態に係る酸化抑制処理方法を模式的に示す図である。本実施形態では、酸化抑制処理装置630による溶接部W1の酸化抑制処理が、ワークWを加熱炉に搬送する前に行われる。なお、本実施形態の説明において、上記第1~第5の実施形態の構成と共通する構成についての説明は省略する場合がある。
【0099】
図31に示す酸化抑制処理方法は、溶接ヘッド603により、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2(
図3参照)とが溶接されて形成される溶接部W1の酸化を抑制する。溶接部W1は、具体的には、溶接ヘッド603から、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とが突き合わされた部位に対して、レーザ光Hを照射し、母材金属を溶け合わせることで形成される。この結果、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とが一体化され、テーラードブランク材であるワークWとして形成される。
【0100】
また、溶接ヘッド603は、図示しない駆動機構によって移動されながら、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とが突き合わされた部位に沿って溶接を行う。この結果、線状の溶接部W1が形成される。ワークWのレーザ溶接時は、入熱による溶接ギャップ変化等を抑制するため板のエッジから数mm程度の位置でワークWがクランプされており、このワークWの裏側にはクランプ固定部に囲まれたトンネル状の空間が形成されている
【0101】
図31に示すように、酸化抑制処理装置630は、上記第一実施形態に対して上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bは、表側ヘッダ部633A及び裏側ヘッダ部633Bに変更されている。表側ヘッダ部633Aは、ワークWに対して溶接ヘッド603とワークの同じ面側に設けられたヘッダであり、裏側ヘッダ部633Bは、ワークWに対して表側ヘッダ部633Aが設けられる側とは反対の面側(すなわち、裏側)に設けられたヘッダである。表側ヘッダ部633A及び裏側ヘッダ部633Bは、供給回収ホース637A及び供給回収ホース637Bによってそれぞれ供給回収系140と接続される。これにより、供給部631から溶接部W1に向かって酸化防止剤を含む混合気体を噴射する。この結果、溶接部W1の表面が酸化防止剤SBによって被覆される。また、回収部632から酸化防止剤を含む混合気体の一部を回収する。さらに、詳細は後述するが、表側ヘッダ部633Aは、溶接ヘッド603と連結されて一体的に移動する。
【0102】
図31に示すように、表側ヘッダ部633Aは、溶接部W1に沿って移動する。具体的には、表側ヘッダ部633Aは、溶接ヘッド603の移動方向において、溶接ヘッド603よりも後方に設けられ、かつ、溶接ヘッド603と共に移動する。具体的には、表側ヘッダ部633Aは、溶接ヘッド603の移動方向における後方において、連結部材605によって溶接ヘッド603に対して連結されている。これにより、表側ヘッダ部633Aが、溶接ヘッド603と共に移動する。
【0103】
連結部材605は、棒状部材であり、その両端が、それぞれ溶接ヘッド603及び表側ヘッダ部633Aに対して所定の角度で固定されている。連結部材605の長さ、又は取付角度を調整することにより、表側ヘッダ部633Aと溶接ヘッド603との間の距離、又は表側ヘッダ部633Aと溶接部W1との間の距離が調整可能とされている。
【0104】
溶接ヘッド制御部607は、溶接ヘッド603の動作を制御する。具体的には、溶接ヘッド603の移動速度、ワークWに対する距離、又はレーザ光Hの出力等を制御する。また、溶接ヘッド制御部607は、シールドガスの圧力、又は流量を制御する。さらに、溶接ヘッド制御部607は、供給回収系140の動作を制御する。
また、
図31に示すように、裏側ヘッダ部633Bは、供給部631から溶接部W1に向かって酸化防止剤を含む混合気体を噴霧する。この結果、溶接部W1の裏面が酸化防止剤SBによって被覆される。また、回収部632から酸化防止剤を含む混合気体の一部を回収する。さらに、裏側ヘッダ部633Bが溶接ヘッド603の移動に合わせて移動可能とされている。具体的には、裏側ヘッダ部633Bは、駆動輪639を備えている。かかる駆動輪639に図示しない駆動源から駆動力が供給されることによって、裏側ヘッダ部633Bは、溶接ヘッド603の移動に合わせて移動する。
【0105】
本実施形態に係る酸化抑制処理方法は、溶接ヘッド603による溶接及び酸化抑制処理装置630による酸化抑制処理が行われた後、ワークWは、加熱工程へ搬送され、ワークWに加熱処理が行われる。例えば、ワークWは、加熱炉へ投入され、所定の加熱条件で加熱される。
【0106】
本実施形態によれば、溶接ヘッド603と共に表側ヘッダ部633A及び裏側ヘッダ部633Bが移動することで、酸化防止剤をワークWの表側の溶接部W1に供給することができ、加熱工程に供する前に、加熱工程でのスケールSの発生抑制処理を完了でき、結果として、加熱工程でのスケールSをより抑制できる。
【0107】
(変形例6)
続いて、本発明の第6の実施形態の一の変形例について
図32を参照しながら説明する。本変形例は、上記実施形態に対して、表側ヘッダ部633Aのみが溶接ヘッド603に合わせて移動する点で相違する。なお、以下の変形例の説明において、上記実施形態の構成と共通する構成について説明を省略する場合がある。
【0108】
本変形例では、
図32に示すように、裏側ヘッダ部633Bは、ワークWに対して表側ヘッダ部633Aが設けられる側とは反対の面側(すなわち、裏側)に設けられる。裏側ヘッダ部633Bは、供給回収ホース637Bによって供給回収系140と接続される。裏側ヘッダ部633Bは、前述のようにレーザ溶接時にワークWの裏側に形成される、ワークWと所定の距離だけ離間した遮蔽体との間の空間に向かって酸化防止剤を含む混合気体を噴射する。具体的には、
図32に示すように、裏側ヘッダ部633Bは、溶接ヘッド603の移動方向に沿う方向が酸化防止剤を含む混合気体の噴射方向となるように、配置される。裏側ヘッダ部633Bの供給部631は、かかる空間に向かって酸化防止剤を含む混合気体を噴霧する。噴射された混合気体は、空間内に滞留し、混合気体の一部に含まれる酸化防止剤SBが溶接部W1の表面に付着する。また、余剰な酸化防止剤を含む混合気体は、回収部632によって回収される。なお、ここで説明した裏面側の酸化防止剤の供給回収の形態は、本発明の参考例である。
【0109】
なお、上記実施形態の説明において、表側ヘッダ部633Aが、溶接ヘッド603と連結されて移動する例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、表側ヘッダ部633Aを移動させる図示しない駆動機構は、溶接ヘッド603とは独立して、表側ヘッダ部633Aと溶接位置との位置関係を設定及び維持可能に表側ヘッダ部633Aを走行制御するように構成されてもよい。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適ないくつかの実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0111】
例えば、上記実施形態において、加熱炉における熱源として電気ヒータを用いる例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、加熱炉の種類は、ガス炉、又は温風加熱炉であってもよい。また、加熱方式は、輻射熱による加熱に限定されず、誘導加熱、又は抵抗加熱等の方法によりワークWを直接加熱してもよい。
【0112】
また、上記実施形態において、溶接部W1が搬送方向に沿う方向、又は搬送方向と直交する方向に延在する線状である場合を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、溶接部W1は、搬送方向に対して所定の角度を成す方向に延在される直線状であってもよい。また、溶接部W1は、曲線状であってもよい。さらに、溶接部W1は、不連続な線状であってもよいし、点状であってもよい。
【0113】
さらに、上記実施形態において、ワークWは、第1の板状部材T1と第2の板状部材T2とが突き合わされて溶接される例を挙げて説明したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、第1の板状部材T1の上に第2の板状部材T2が重ね合わされた状態で、溶接されてもよい。
【0114】
また、上記実施形態において、複数の加熱部110は、加熱炉の上下の炉壁、すなわちワークWの上下に分かれて配置されている例を挙げて説明したが、複数の加熱部110は、上下だけでなく、加熱炉の左右の炉壁、すなわち左右に分かれて配置されてもよく、また、加熱炉の幅方向にワークWの幅方向に分割されて並んで配置されてもよい。
【0115】
また、上記実施形態において、ワークWが平坦な部材である場合の例を挙げて説明したが、ワークWが加工によって立体的な形状を有する部材であってもよい。例えば、
図33には、ハット形状のワークWを加熱する例が示されている。
図33に示される加熱装置700の酸化抑制処理装置130では、上記第一実施形態に対して上側ヘッダ部133A及び下側ヘッダ部133Bは、上側ヘッダ部733A及び下側ヘッダ部733BがワークWのハット形状に沿った形状に変更されている。また、下側ヘッダ部733Bは、固定式の下側ヘッダ部733B1と昇降式の下側ヘッダ部733B2を有する。固定式の下側ヘッダ部733B1は、下側ヘッダ部733B1の上方にワークWが搬送された際にワークWのフランジ部と対向して配置される。上側ヘッダ部733A及び下側ヘッダ部733B2は、昇降式であり、上側ヘッダ部733A及び下側ヘッダ部733B2の間にワークWが搬送される際には、二点鎖線で示されるように上下に退避した位置に移動され、上側ヘッダ部733A及び下側ヘッダ部733B2の間にワークWが搬送されたときには、実線で示されるようにワークWに近づいた位置に移動する。
【0116】
また、例えば、ハット形状のワークWを加熱する例として、酸化抑制処理装置130が、上側ヘッダ部733A及び下側ヘッダ部733BがワークWのハット形状に沿った形状を有し、下側ヘッダ部733Bは、トレーに設けられ、上側ヘッダ部733Aは、昇降式で、トレーに載置されたワークWが上側ヘッダ733A部の下方に搬送される際に、上側に退避した位置に移動され、上側ヘッダ部733Aの下方にワークWが搬送されたときには、ワークWに近づくように降下するようにしてもよい。
【0117】
また、上記実施形態において、ヘッダ部133が直線状に延びる場合の例を挙げて説明をしたが、ワークWおよび溶接部W1の形状によって、ヘッダ部133は、曲線的に溶接部W1に倣う形状とした部材であってもよい。例えば、
図34及び
図35に示される例では、上記第一実施形態に対して、ヘッダ部833は、湾曲する溶接部W1の形状に倣って形成されている。
図34では、テーブルローラ部122に形成される離間部列122Fは、下側ヘッダ部833Bの形状に倣って形成されている。
【0118】
さらに、離間部列122Fは、ワークWの搬送に支障が生じない程度にその間隙を拡げてもよい。
図35に示されるように、テーブルローラ部122に形成される離間部列122Fは、下側ヘッダ部833Bの延びる方向に倣って形成されてもよい。
また、ハースローラ部121に離間部列121Fが形成される場合にも、
図35に示されるテーブルローラ部122に形成される離間部列122Fのように、ハースローラ部121に形成される離間部列121Fが形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0119】
100,200,300,400,500,600,700 加熱装置
101 加熱炉
110 加熱部
120,520 搬送機構
121 ハースローラ部
121A ハースローラ
121B 第1ハースローラ部
121C 第2ハースローラ部
122 テーブルローラ部
122A テーブルローラ
122B 第1テーブルローラ部
122C 第2テーブルローラ部
122D 芯棒部材
122E 離間部
122F 離間部列
130,630 酸化抑制処理装置
131 供給部
132 回収部
133,633,733,833 ヘッダ部
333 構造体
133A,333A,733A 上側ヘッダ部
133B,333B,733B,833B 下側ヘッダ部
140 供給回収系
160 制御部
250,350,450,550 トレー
521 マニピュレータ
603 溶接ヘッド
633A 表側ヘッダ部
633B 裏側ヘッダ部
L めっき被膜
T1 第1の板状部材
T2 第2の板状部材
W ワーク
W1 溶接部
S スケール