(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20250108BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20250108BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20250108BHJP
B60N 2/838 20180101ALI20250108BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/64
A47C7/46
B60N2/838
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2021058095
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-02-02
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】田代 正人
(72)【発明者】
【氏名】河田 和也
(72)【発明者】
【氏名】朴 喜赫
(72)【発明者】
【氏名】山口 貢載
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023322(JP,A)
【文献】特開2015-083454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0066136(US,A1)
【文献】特開2012-224296(JP,A)
【文献】特開2008-254645(JP,A)
【文献】特開2017-206211(JP,A)
【文献】特開2013-189149(JP,A)
【文献】国際公開第2005/006921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、
前記
シートバックの骨格となるバックフレームに対して取り付けられ、前記
シートバックの一部を
着座者側へ突出させるために可動する可動体と、を備え、
前記可動体は、
前記可動体のシート幅方向の中央部に配置される中央可動部と、
前記中央可動部のシート幅方向の左右両端部にそれぞれ取り付けられるサイド可動部と、を有し、
前記中央可動部及び前記サイド可動部の少なくとも一方には、前記着座者が
シート本体に着座したときに前記可動体を撓み易くするための撓み促進部が形成され
、
前記可動体は、前記中央可動部と前記バックフレームを接続し、前記バックフレームに対して前記中央可動部とともに回動可能となるように取り付けられる回動軸を備え、
前記回動軸は、前記中央可動部と前記バックフレームを接続するために上下方向に延びており、
前記撓み促進部は、前記サイド可動部の下端から上方へ向かって延びるように形成されたスリットを有し、
前記スリットは、前記回動軸の延出方向に沿って延びていることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項2】
シートバックと、
前記
シートバックの骨格となるバックフレームに対して取り付けられ、前記
シートバックの一部を
着座者側へ突出させるために可動する可動体と、を備え、
前記可動体は、
前記可動体のシート幅方向の中央部に配置される中央可動部と、
前記中央可動部のシート幅方向の左右両端部にそれぞれ取り付けられるサイド可動部と、を有し、
前記中央可動部及び前記サイド可動部の少なくとも一方には、前記着座者が
シート本体に着座したときに前記可動体を撓み易くするための撓み促進部が形成され
、
前記可動体は、前記中央可動部と前記バックフレームを接続し、前記バックフレームに対して前記中央可動部とともに回動可能となるように取り付けられる回動軸を備え、
前記可動体には、ヘッドレストの本体を支持するピラーを取り付けるためのピラー取り付け部材が取り付けられ、
前記可動体は、前記ヘッドレストとともに、前記バックフレームに対して前記回動軸を中心としてシート前後方向に回動可能となるように構成されていることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項3】
前記可動体は、シートバックの内部において前記シートバックの上方部分に取り付けられ、前記着座者を後方から支持するためのサポート部材であって、
前記着座者が前記シート本体に着座したときに、前記中央可動部と、左右の前記サイド可動部とが、それぞれ前記シート本体に加わる着座荷重に応じて移動することを特徴とする請求項
1又は2に記載の乗り物用シート。
【請求項4】
前記サイド可動部は、前記中央可動部に対して取り付け軸を介して回動可能となるように取り付けられていることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【請求項5】
前記撓み促進部は、前記中央可動部と前記サイド可動部の連結部分に形成され、
前記サイド可動部が、前記中央可動部に対してシート前方側に撓むように可動可能となっていることを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【請求項6】
前記撓み促進部は、前記中央可動
部の外縁部に形成されたスリットを
さらに有していることを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【請求項7】
前記中央可動部に形成された前記スリットは、前記中央可動部の下端から上方へ向かって延びるように切り欠き形成されていることを特徴とする請求項
6に記載の乗り物用シート。
【請求項8】
前記撓み促進部は、矩形枠状の前記バックフレームによって囲まれた領域に位置していることを特徴とする請求項
6又は7に記載の乗り物用シート。
【請求項9】
前記乗り物用シートは、前記バックフレームに固定され、前記回動軸を回動させるために駆動する駆動装置を備えていることを特徴とする請求項
1乃至8のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【請求項10】
前記サイド可動部の外縁部において前記スリットが形成された部分には、前記サイド可動部が前記スリットを境目として部分的に撓んだときに干渉を抑制するための切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の乗り物用シート。
【請求項11】
前記乗り物用シートは、前記バックフレームのシート幅方向の外側面に取り付けられ、乗り物の側方から加えられる衝撃を緩和するためのサイドエアバッグ装置を備え、
前記中央可動部及び前記サイド可動部は、前記サイドエアバッグ装置よりも上方位置に配置されていることを特徴とする請求項
1乃至10のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【請求項12】
前記シートバックは、前記バックフレームにクッション材を載置して表皮材で被覆されて構成され、
前記クッション材の表面には、前記表皮材の端末を吊りこむための表皮吊り込み溝が形成され、
前記表皮吊り込み溝は、
シート幅方向の左右側方に配置され、上下方向に延びている吊り溝サイド部と、
左右の前記吊り溝サイド部の上部を連結するようにシート幅方向に延びている吊り溝上方部と、を有し、
前記中央可動部及び前記サイド可動部は、前記吊り溝上方部よりも上方位置に配置されていることを特徴とする請求項
1乃至11のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートに係り、シート本体の一部を着座者側へ突出させるために可動する可動体を備えた乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座者が着座するシート本体の内部に取り付けられ、シート本体の一部(例えば、シートバックの上方部分)を通常位置よりも着座者側へ突出させるために可動する可動体(例えば、ショルダサポート部材)を備えた車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
当該可動体を備えていることで、着座者の体格や嗜好に応じて車両用シートのホールド性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような車両用シートでは、着座者に対して上記可動体(ショルダサポート部材)を好適に作用させることで、車両用シートのホールド性をより高めることが求められていた。
例えば、着座者の体格に合わせてショルダサポート部材を好適に撓ませることで、着座者の体格に追従させることが求められていた。
【0005】
また、車両用シートにおいて可動体を含む構成部品を極力コンパクトに配置することが求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シート本体に取り付けられた可動体を作用させたときに着座者のホールド性を高めることが可能な乗り物用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、乗り物用シートの構成部品をコンパクトに配置することが可能な乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗り物用シートによれば、シートバックと、前記シートバックの骨格となるバックフレームに対して取り付けられ、前記シートバックの一部を着座者側へ突出させるために可動する可動体と、を備え、前記可動体は、前記可動体のシート幅方向の中央部に配置される中央可動部と、前記中央可動部のシート幅方向の左右両端部にそれぞれ取り付けられるサイド可動部と、を有し、前記中央可動部及び前記サイド可動部の少なくとも一方には、前記着座者がシート本体に着座したときに前記可動体を撓み易くするための撓み促進部が形成され、前記可動体は、前記中央可動部と前記バックフレームを接続し、前記バックフレームに対して前記中央可動部とともに回動可能となるように取り付けられる回動軸を備え、前記回動軸は、前記中央可動部と前記バックフレームを接続するために上下方向に延びており、前記撓み促進部は、前記サイド可動部の下端から上方へ向かって延びるように形成されたスリットを有し、前記スリットは、前記回動軸の延出方向に沿って延びていること、により解決される。
上記構成により、シート本体に取り付けられた可動体を作用させたときに着座者のホールド性を高めることが可能な乗り物用シートを実現することができる。
具体的には、可動体(中央可動部及びサイド可動部)には、着座者がシート本体に着座したときに可動体を撓み易くするための撓み促進部が形成されている。そのため、着座者に対して可動体を作用させたときに、着座者の体格に応じた着座荷重が可動体に加わって、可動体を好適に撓ませることができる。その結果、着座者のホールド性を高めることができる。
また、可動体が撓み易くなることで、着座者に対し過大荷重が外部から加わったときに着座者の体をシート本体に沈み込ませることもできる。
また上記のように、撓み促進部(スリット)が、比較的剛性が高い回動軸の延出方向に沿って形成されているため、当該撓み促進部によって可動体の撓み方向を安定させることができる。
【0008】
また前記課題は、本発明の乗り物用シートによれば、シートバックと、前記シートバックの骨格となるバックフレームに対して取り付けられ、前記シートバックの一部を着座者側へ突出させるために可動する可動体と、を備え、前記可動体は、前記可動体のシート幅方向の中央部に配置される中央可動部と、前記中央可動部のシート幅方向の左右両端部にそれぞれ取り付けられるサイド可動部と、を有し、前記中央可動部及び前記サイド可動部の少なくとも一方には、前記着座者がシート本体に着座したときに前記可動体を撓み易くするための撓み促進部が形成され、前記可動体は、前記中央可動部と前記バックフレームを接続し、前記バックフレームに対して前記中央可動部とともに回動可能となるように取り付けられる回動軸を備え、前記可動体には、ヘッドレストの本体を支持するピラーを取り付けるためのピラー取り付け部材が取り付けられ、前記可動体は、前記ヘッドレストとともに、前記バックフレームに対して前記回動軸を中心としてシート前後方向に回動可能となるように構成されていること、により解決される。
上記構成により、バックフレームに対してヘッドレストを好適に回動させることができる。
【0009】
このとき、前記可動体は、シートバックの内部において前記シートバックの上方部分に取り付けられ、前記着座者を後方から支持するためのサポート部材であって、前記着座者が前記シート本体に着座したときに、前記中央可動部と、左右の前記サイド可動部とが、それぞれ前記シート本体に加わる着座荷重に応じて移動すると良い。
また、前記サイド可動部は、前記中央可動部に対して取り付け軸を介して回動可能となるように取り付けられていると良い。
また、前記撓み促進部は、前記中央可動部と前記サイド可動部の連結部分に形成され、前記サイド可動部が、前記中央可動部に対してシート前方側に撓むように可動可能となっていると良い。
上記構成により、着座者に対して可動体を作用させたときに、着座者の体格に合わせて可動体を好適に撓ませることができ、着座者の体格に追従させることができる。また上記構成により、シンプルな構成で可動体を好適に撓ませることができる。
このとき、前記撓み促進部は、前記中央可動部の外縁部に形成されたスリットをさらに有していると良い。
また、前記中央可動部に形成された前記スリットは、前記中央可動部の下端から上方へ向かって延びるように切り欠き形成されていると良い。
また、前記撓み促進部は、矩形枠状の前記バックフレームによって囲まれた領域に位置していると良い。
上記構成により、シンプルな構成で可動体を一層好適に撓ませることができる。その結果、着座者のホールド性を高めることができる。
【0010】
このとき、前記乗り物用シートは、前記バックフレームに固定され、前記回動軸を回動させるために駆動する駆動装置を備えていると良い。
上記構成により、構成部品(可動体、回動軸、駆動装置)をコンパクトに配置することができる。
また上記構成により、駆動装置を駆動することで可動体全体を回動させることができる。その結果、着座者の体に可動体を追従させ易くなる。
【0012】
このとき、前記サイド可動部の外縁部において前記スリットが形成された部分には、前記サイド可動部が前記スリットを境目として部分的に撓んだときに干渉を抑制するための切り欠き部が形成されていると良い。
上記構成により、サイド可動部がスリットを境目として部分的に撓んだときにサイド可動部が部分的に干渉してしまうことを抑制できる。
【0014】
このとき、前記乗り物用シートは、前記バックフレームのシート幅方向の外側面に取り付けられ、乗り物の側方から加えられる衝撃を緩和するためのサイドエアバッグ装置を備え、前記中央可動部及び前記サイド可動部は、前記サイドエアバッグ装置よりも上方位置に配置されていると良い。
上記構成により、可動体とサイドエアバッグ装置の干渉を抑制し、可動体を好適に動作させることが可能となる。
【0015】
このとき、前記シートバックは、前記バックフレームにクッション材を載置して表皮材で被覆されて構成され、前記クッション材の表面には、前記表皮材の端末を吊りこむための表皮吊り込み溝が形成され、前記表皮吊り込み溝は、シート幅方向の左右側方に配置され、上下方向に延びている吊り溝サイド部と、左右の前記吊り溝サイド部の上部を連結するようにシート幅方向に延びている吊り溝上方部と、を有し、前記中央可動部及び前記サイド可動部は、前記吊り溝上方部よりも上方位置に配置されていると良い。
上記構成により、上下方向において可動体と表皮吊り込み溝が離れた位置に配置されることになる。そのため、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制することができる。
詳しく説明すると、可動体がシートバックを着座者側へ突出させるとき、一般に表皮吊り込み溝の周辺において表皮材にシワやダブつきが顕著に生じることが分かっている。そのため、当該周辺において表皮材にシワやダブつきが生じないように配慮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シート本体に取り付けられた可動体を作用させたときに着座者のホールド性を高めることが可能な乗り物用シートを実現することができる。
具体的には、着座者に対して可動体を作用させたときに、着座者の体格に応じて可動体を好適に撓ませることができる。その結果、着座者のホールド性を高めることができる。
また本発明によれば、可動体が撓み易くなることで、着座者に対し過大荷重が外部から加わったときに着座者の体をシート本体に沈み込ませることもできる。
また本発明によれば、着座者に対して可動体を作用させたときに、着座者の体格に合わせて可動体を好適に撓ませることができ、着座者の体格に追従させることができる。
また本発明によれば、シンプルな構成で可動体を一層好適に撓ませることができる。その結果、着座者のホールド性を高めることができる。
また本発明によれば、構成部品(可動体、回動軸、駆動装置)をコンパクトに配置することができる。また、駆動装置を駆動することで可動体全体を回動させることができる。その結果、着座者の体に可動体を追従させ易くなる。
また本発明によれば、撓み促進部によって可動体の撓み方向を安定させることができる。
また本発明によれば、サイド可動部がスリットを境目として部分的に撓んだときにサイド可動部が部分的に干渉してしまうことを抑制できる。
また本発明によれば、バックフレームに対してヘッドレストを好適に回動させることができる。
また本発明によれば、可動体とサイドエアバッグ装置の干渉を抑制し、可動体を好適に動作させることが可能となる。
また本発明によれば、上下方向において可動体と表皮吊り込み溝が離れた位置に配置されることになる。そのため、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制することができる。特に、シートバックの中央部とサイド部の境界部分(表皮吊り込み溝に相当する部分)において表皮材のシワやダブつきが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の乗り物用シートの外観斜視図である。
【
図2】骨格となるシートフレームを示す斜視図である。
【
図3】ランバサポート、空気制御ユニット及び空気ポンプを示す概略図である。
【
図6】第2実施形態の乗り物用シートのシートフレームを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について
図1-
図6を参照して説明する。
本実施形態は、シート本体と、シート本体の内部に取り付けられ、シート本体の上方部を着座者側(シート前方側)へ突出させるために可動する可動体とを備えており、可動体は、シート幅方向の中央部に配置される中央可動部と、中央可動部のシート幅方向の左右両端部にそれぞれ取り付けられるサイド可動部とを有しており、中央可動部及びサイド可動部には、着座者がシート本体に着座したときに可動体を撓み易くするための撓み促進部が形成されていることを主な特徴とする乗り物用シートの発明に関するものである。
なお、乗り物用シートのシートバックに対して着座者が着座する側がシート前方側となる。
【0019】
本実施形態の乗り物用シートSは、
図1に示すように、車両用シートであって、シートクッション1と、シートバック2と、ヘッドレスト3とを備えるシート本体と、シートバック2の内部に取り付けられ、シートバック2の下方部分を通常位置よりも着座者側へ突出させるために可動するランバサポート30と、ランバサポート30を可動させるために作動する作動装置40(流体供給装置)と、シートバック2の内部に取り付けられ、シートバック2の上方部分を通常位置よりも着座者側へ突出させるために可動する可動体50(ショルダサポート)と、可動体50を駆動する駆動装置60(アクチュエータ)と、を備えている。
【0020】
シートクッション1は、
図1に示すように、着座者を下方から支持する着座部であって、骨格となる
図2に示すクッションフレーム10上にクッション材1aを載置して表皮材1bで被覆されて構成されている。
シートクッション1は、シート幅方向の中央部分にある中央部1Aと、中央部1Aのシート幅方向の外側にある左右のサイド部1B(サイドボルスター部)と、から構成されている。
クッション材1aは、発泡ウレタン等からなるパッド部材である。
クッション材1aの表面上には、中央部1Aと左右のサイド部1Bを区分けするようにシート前後方向に延びている左右の表皮吊り込み溝1aaが形成されている。
【0021】
シートバック2は、
図1に示すように、着座者の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となる
図2に示すバックフレーム20にクッション材2aを載置して表皮材2bで被覆されて構成されている。
シートバック2は、シート幅方向の中央部分にある中央部2Aと、中央部2Aのシート幅方向の外側にある左右のサイド部2B(サイドボルスター部)と、から構成されている。
クッション材2aの表面上には、中央部2Aと左右のサイド部2Bを区分けするように上下方向に延びている左右の吊り溝サイド部2aa(表皮吊り込み溝)と、左右の吊り溝サイド部2aaの上部を連結するようにシート幅方向に延びている吊り溝上方部2ab(表皮吊り込み溝)とが形成されている。
なお、吊り溝上方部2abは、シートバック2の上下方向の中央部又は中央部よりもやや上方位置に形成されている。
【0022】
ヘッドレスト3は、
図1に示すように、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となるピラー3cにクッション材3aを載置して表皮材3bで被覆されて構成されている。
なお、バックフレーム20の上部には、ヘッドレスト3の本体を支持するピラー3cを取り付けるためのピラー取り付け部材26が組み付けられている。
【0023】
クッションフレーム10は、
図2に示すように、略矩形状の枠状体からなり、左右側方に配置されるクッションサイドフレーム11と、各クッションサイドフレーム11の前端部分に架設される板状のパンフレーム12(架設フレーム)と、各クッションサイドフレーム11の後方部分を連結する後方連結フレーム13と、パンフレーム12及び後方連結フレーム13に掛け止めされ、シート前後方向に蛇状に延びている複数の弾性バネ14(弾性支持部材)と、から主に構成されている。
【0024】
クッションサイドフレーム11は、シート前後方向に長尺な板状フレームである。
なお、クッションサイドフレーム11の後方部分にはリクライニング装置4が取り付けられており、その下方部分にはハイトリンク装置5を介してレール装置6が取り付けられている。
【0025】
バックフレーム20は、
図2に示すように、略矩形状の枠状体からなり、左右側方に配置されるバックサイドフレーム21と、各バックサイドフレーム21の上端部分を連結する逆U字形状の上部フレーム22と、各バックサイドフレーム21の下端部分を連結するプレート形状の下部フレーム23と、各バックサイドフレーム21にそれぞれ掛け止めされ、シート幅方向に蛇状に延びている複数のワイヤ部材24(弾性ワイヤ)と、複数のワイヤ部材24によって保持され、着座者を支持する支持プレート25と、から主に構成されている。
なお、バックフレーム20は、上部フレーム22のシート幅方向の中央部分に取り付けられ、ヘッドレスト3のピラー3cを取り付けるためのピラー取り付け部材26をさらに備えている。
【0026】
バックサイドフレーム21は、上下方向に延出し、横断面略C字形状からなる板金部材であって、その下端部分がリクライニング装置4を介してクッションサイドフレーム11の後端部分に連結されている。
上記構成においてバックフレーム20は、クッションフレーム10に対して相対回動することが可能となっている。
【0027】
上記構成において、
図2に示すように、支持プレート25の前面には、ランバサポート30が取り付けられており、バックサイドフレーム21の外側面には、作動装置40が取り付けられている。
また、バックフレーム20の上方部分には、可動体50が取り付けられており、バックサイドフレーム21の後面には、駆動装置60が取り付けられている。
【0028】
ランバサポート30は、
図2、
図3に示すように、流体が封入されることで膨出する袋体(エアセル)を有し、流体としての圧縮空気が封入されることで着座者側へ膨出し(通常位置から突出位置へ突出し)、封入された圧縮空気が排出されることで収縮する(通常位置へ戻る)ものである。
具体的には、ランバサポート30は、着座者の腰部を支持する部材であって、シートバック2の下方部分の中央部2Aにおいてクッション材2aと支持プレート25の間に配置されている。そして、中央部2A(クッション材2a)を着座者側へ突出させるために可動する部材である。
ランバサポート30は、折り畳まれた状態で支持プレート25の前面に取り付けられている。
【0029】
ランバサポート30は、シート幅方向に長尺な略矩形状を有しており、支持プレート25に支持されるベース部材31(ベースプレート)と、ベース部材31の前面に支持される袋体32と、から主に構成されている。
袋体32は、折り畳まれた状態から圧縮空気が封入されることでシート前方側に膨出することができる。
【0030】
作動装置40は、
図2、
図3に示すように、シート本体の内部に取り付けられ、ランバサポート30(袋体32)に対し圧縮空気を供給するための流体供給装置である。
作動装置40は、バックサイドフレーム21の外側面に取り付けられた空気制御ユニット41と、クッションフレーム10(パンフレーム12)の裏面に取り付けられ、圧縮空気を供給(給気)及び排出(排気)するための空気ポンプ42と、空気ポンプ42及びランバサポート30を接続する空気配管43と、から主に構成されている。
【0031】
空気制御ユニット41は、例えば、着座者による所定のユーザ操作の選択を受け付けて所定の制御信号を受信し、袋体32に圧縮空気を供給することや、袋体32から圧縮空気を排出するように空気ポンプ42を制御する。
そうすることで、着座者の体格に応じてランバサポート30の可動範囲を調整することができる。
【0032】
可動体50は、
図2、
図4に示すように、シートバック2の内部においてシートバック2の上方部分に配置され、着座者の肩部を支持するショルダサポート部材である。
具体的には、可動体50は、バックフレーム20の上方部分に取り付けられる可動本体部51と、可動本体部51及びバックフレーム20を接続し、バックフレーム20に対して可動本体部51とともに回動可能に取り付けられる回動軸52と、を備えている。
【0033】
可動本体部51は、湾曲した樹脂プレートからなり、可動本体部51のシート幅方向の中央部に配置される中央可動部51aと、中央可動部51aのシート幅方向の左右両端部にそれぞれ取り付けられるサイド可動部51b、51cと、を有している。
中央可動部51aは、シート幅方向に長尺なプレート体であって、その上端部から下端部に向かうに従ってシート幅方向の全長が短くなるように形成されている。
サイド可動部51b、51cは、中央可動部51aに対して取り付け軸51dを介して回動可能となるように取り付けられている。
サイド可動部51b、51cは、中央可動部51aからシート幅方向の外側かつ下方に向かって突出するように延びている。
なお、取り付け軸51dは、シート正面視において上方から下方に向かうに従ってシート幅方向の内側に傾斜するように延びている。
【0034】
回動軸52は、略逆U字形状を有し、シート幅方向に長尺となるように延びている。
具体的には、回動軸52は、可動本体部51(中央可動部51a)の下端部に接続され、シート幅方向に延びている軸本体部52aと、軸本体部52aの左右両端部からそれぞれ屈曲して下方に延びている左右の第1軸延出部52bと、左右の第1軸延出部52bからそれぞれ屈曲してシート幅方向の外側に延びている左右の第2軸延出部52cと、を有している。そして、第2軸延出部52cの延出端部が駆動装置60に接続されている。
【0035】
駆動装置60は、バックサイドフレーム21の後面に固定され、回動軸52を回動させるために駆動動作するアクチュエータである。
駆動装置60が順方向に駆動することで、回動軸52がシート前方側に倒れるように回動し、可動本体部51が回動軸52とともにシート前方側に向かって回動する。
また、駆動装置60が逆方向に駆動することで、回動軸52がシート後方側に復帰するように回動し、可動本体部51が回動軸52とともにシート後方側に向かって回動する。
【0036】
<可動体の撓み促進部>
中央可動部51a、サイド可動部51b、51cには、
図4、
図5に示すように、着座者がシート本体に着座したときに可動体50を撓み易くするための撓み促進部53、54が形成されている。
撓み促進部53、54は、中央可動部51a、サイド可動部51bそれぞれの外縁部に形成されたスリット溝である。
【0037】
撓み促進部53は、シート幅方向に所定の間隔を空けて左右に形成され、中央可動部51aの下端から上方へ向かって延びるように切り欠き形成されている。具体的には、撓み促進部53は、中央可動部51aの下端から上下方向の中間部を越えて上方へ延びている。
撓み促進部54は、サイド可動部51b、51cの下端から上方へ向かって延びるように切り欠き形成されている。具体的には、撓み促進部54は、サイド可動部51b、51cの下端から、中央可動部51aの下端部に達する位置まで延びている。あるいは、中央可動部51aの下端部を越えて上方へ延びている。
そのため、着座者に対して可動体50を作用させたときに、着座者の体格に応じた着座荷重が可動体50に加わって、可動体50を好適に撓ませる(移動させる)ことができる。その結果、着座者のホールド性を高めることができる。
【0038】
上記構成において、
図5に示すように、撓み促進部54は、回動軸52(第1軸延出部52b)の延出方向に沿って延びている。
そのため、撓み促進部54(スリット溝)が、比較的剛性が高い回動軸52の延出方向に沿って形成されることとなり、撓み促進部54によって可動体50の撓み方向を安定させることができる。
【0039】
また上記構成において、
図5に示すように、中央可動部51a、サイド可動部51b、51cの外縁部において撓み促進部53、54(スリット溝)が形成された部分には、スリット溝を境目として部分的に撓んだときに干渉を抑制する切り欠き部55(えぐり部)が形成されている。
切り欠き部55は、撓み促進部53、54の基端部に形成され、基端部から延出端部に向かうに従って幅狭となるように形成されている。具体的には、切り欠き部55は、略三角形状の切り欠き部となっている。
そのため、中央可動部51a、サイド可動部51b、51cがスリットを境目として部分的に撓んだときに部分的に干渉してしまうことを抑制できる。
【0040】
また上記構成において、
図2に示すように、撓み促進部53、54は、矩形枠状のバックフレーム20によって囲まれた領域に位置している。
そのため、シンプルな構成で可動体50を一層好適に撓ませることができる。その結果、着座者のホールド性を高めることができる。
【0041】
また上記構成において、
図1に示すように、可動本体部51は、吊り溝上方部2ab(表皮吊り込み溝)よりも上方位置に配置されている。
そのため、シートバック2の表皮材2bにシワやダブつきが生じることを抑制することができる。
詳しく説明すると、可動体50がシートバック2を着座者側へ突出させるとき、一般に表皮吊り込み溝の周辺において表皮材2bにシワやダブつきが顕著に生じることが分かっている。そのため、当該周辺において表皮材2bにシワやダブつきが生じないように配慮することができる。
【0042】
また上記構成において、サイド可動部51b、51cに形成された撓み促進部54は、シート幅方向において左右の表皮吊り込み溝(吊り溝サイド部)よりも外側位置に配置されている。
そのため、着座者の体に可動体50を追従させ易くなる。
【0043】
<乗り物用シートの第2実施形態>
次に、第2実施形態の乗り物用シートS2について、
図6に基づいて説明する。
なお、上述の乗り物用シートSと重複する内容については説明を省略する。
乗り物用シートS2は、シート本体と、シートバック102の上方部分を着座者側へ突出させるために可動する可動体150(ショルダサポート)と、可動体150を駆動する駆動装置160(アクチュエータ)と、シートバック102のシート幅方向の外側面に取り付けられ、乗り物の側方から加えられる衝撃を緩和するためのサイドエアバッグ装置170と、を備えている。
【0044】
サイドエアバッグ装置170は、バックサイドフレーム121の外側面に取り付けられており、バックサイドフレーム121に沿って上下方向に延びている。
このとき、可動本体部151は、サイドエアバッグ装置170よりも上方位置に配置されており、かつ、シート幅方向においてサイドエアバッグ装置170よりも内側に配置されている。
そのため、可動体150とサイドエアバッグ装置170の干渉を抑制し、可動体150を好適に動作させることが可能となる。
【0045】
なお、サイドエアバッグ装置170は、エアバッグモジュールの膨出方向をガイドする力布を有している。そして、バックサイドフレーム121の所定位置には、力布を取り付けるための不図示の力布取り付け部が固定されることになる。
このとき、可動本体部151が、力布取り付け部よりも上方位置に配置されている。
そうすることで、可動体150を好適に撓ませることができる。
【0046】
上記構成において、
図6に示すように、可動体150の前面には、ヘッドレストのピラーを取り付けるためのピラー取り付け部材126が取り付けられている。
そして、可動体150は、ヘッドレストとともに、バックフレーム120に対して回動軸152を中心としてシート前後方向に回動可能となるように構成されている。
そのため、バックフレームに対してヘッドレストを好適に回動させることができる。
【0047】
<その他の別実施形態>
上記実施形態では、
図1に示すように、可動体50が、シートバック2に取り付けられているが、特に限定されることなく、シートクッション1に取り付けられていても良い。
【0048】
上記実施形態では、
図2、
図3に示すように、ランバサポート30が袋体(エアセル)、作動装置40が流体供給装置として構成されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、「ランバサポート」及び「作動装置」が、機械的機構によって構成されていても良い。具体的には、「ランバサポート」がリンク機構やヒンジ機構等によって可動するように構成され、「作動装置」がモータ式や油圧式の駆動装置等によって構成されていても良い。
【0049】
上記実施形態では、
図1、
図2に示すように、ランバサポート30、可動体50がクッション材2aの裏面側に配置されているが、特に限定されることなく、クッション材2aの表面側に配置されていても良い。
【0050】
上記実施形態では、
図4に示すように、中央可動部51a、サイド可動部51b、51cそれぞれに撓み促進部53、54が形成されているが、特に限定されることなく、どちらか一方に形成されていても良い。
【0051】
上記実施形態では、
図4に示すように、撓み促進部53、54がスリット溝として形成されているが、特に限定されることなく、スリット溝以外であっても良い。
例えば、撓み促進部53、54が、単純な切れ目からなるスリットであっても良いし、肉厚が部分的に薄い肉薄部であっても良い。あるいは、部分的に硬度を低くした低硬度部や部分的に軟らかくした(柔軟部)であっても良い。
【0052】
上記実施形態では、
図4に示すように、サイド可動部51b、51cは、中央可動部51aに対して取り付け軸51dを介して回動可能に取り付けられているが、特に限定されることなく、取り付け軸51dを有していなくても良い。
その場合、中央可動部51aとサイド可動部51b、51cの連結部分に撓み促進部(例えば、スリット溝)が形成されていると好ましい。
そうすることで、シンプルな構成で、サイド可動部51b、51cが中央可動部51aに対して好適に撓むように構成することができる。
【0053】
上記実施形態のほか、クッション材2aのうち、可動体50に対向する部分には、シート前後方向に貫通した複数の貫通穴が形成されていても良い。
このとき、複数の貫通穴と、可動体50の撓み促進部53、54とが、上下方向において重なる高さ位置に配置されていると好ましい。
そうすることで、着座者の体に可動体50を追従させ易くなる。
【0054】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、特に限定されることなく、二輪車用の二輪シート、電車やバス等の車両用シート、飛行機や船等の乗り物用シートのほか、作業用の事務イス、車イス、ショッピングカートの子供用イス等の種々のシートに対して利用することができる。
【0055】
本実施形態では、主として本発明に係る乗り物用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
S 乗り物用シート
Sa シートフレーム
1 シートクッション
1A、2A 中央部
1B、2B サイド部
1a、2a、3a クッション材
1aa 表皮吊り込み溝
1b、2b、3b 表皮材
2、102 シートバック
2aa 吊り溝サイド部(表皮吊り込み溝)
2ab 吊り溝サイド部(表皮吊り込み溝)
3 ヘッドレスト
3c ピラー
4 リクライニング装置
5 ハイトリンク装置
6 レール装置
10 クッションフレーム
11 クッションサイドフレーム
12 パンフレーム
13 後方連結フレーム
14 弾性バネ(弾性支持部材)
20、120 バックフレーム
21、121 バックサイドフレーム
22 上部フレーム(連結フレーム)
23 下部フレーム
24 ワイヤ部材
25 支持プレート
26、126 ピラー取り付け部材
30 ランバサポート
31 ベース部材
32 袋体
40 作動装置(流体供給装置)
41 空気制御ユニット
42 空気ポンプ
43 空気配管
50、150 可動体(ショルダサポート)
51、151 可動本体部
51a 中央可動部
51b、51c サイド可動部
51d 取り付け軸
52、152 回動軸
52a 軸本体部
52b 第1軸延出部
52c 第2軸延出部
53、54 撓み促進部
55 切り欠き部
60、160 駆動装置(アクチュエータ)
170 サイドエアバッグ装置