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特許7614530電源回路の設計支援装置、電源回路の設計支援方法及び電源回路の設計支援用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電源回路の設計支援装置、電源回路の設計支援方法及び電源回路の設計支援用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/367 20200101AFI20250108BHJP
【FI】
G06F30/367
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023191842
(22)【出願日】2023-11-09
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】山田 将也
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-157289(JP,A)
【文献】特開2007-102638(JP,A)
【文献】特開2016-070835(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170394(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102855344(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ICと、この電源ICに外部接続されるフィードバック抵抗とを含む電源回路における立ち上がりから時系列に出力される出力電圧を、前記電源回路のフィードバック電圧の値と前記フィードバック抵抗の値とによって作成されている数式を用いて算出する出力電圧算出手段と、
この出力電圧算出手段により算出された時系列の出力電圧に基づき、出力電圧の経時変化曲線を得る曲線生成手段と、
画像を表示する表示手段と、
前記曲線生成手段により得られた経時変化曲線に基づくグラフを前記表示手段に表示する表示制御手段と、
を具備することを特徴とする電源回路の設計支援装置。
【請求項2】
前記出力電圧算出手段は、前記出力電圧をVoutとし、前記フィードバック電圧をVfbとし、電源側フィードバック抵抗をR1とし、グランド側フィードバック抵抗をR2とした場合、次の(式1)により
out=Vfb×{(R1/R2)+1}・・・・(式1)
出力電圧を求めることを特徴とする請求項1に記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項3】
フィードバック抵抗の値が与えられ、この値に基づき複数のフィードバック抵抗の値を求め、この複数のフィードバック抵抗の値を基として対応する複数の出力電圧候補の算出、この複数の出力電圧候補に基づく複数の出力電圧の経時変化曲線の生成、生成された複数の出力電圧の経時変化曲線に基づくグラフの表示を制御する複数候補処理制御手段、
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項4】
前記複数候補処理制御手段は、フィードバック抵抗の上限値と下限値が与えられ、この上限値と下限値の間に少なくとも1の値を求めて、少なくとも3つのフィードバック抵抗の値を得ることを特徴とする請求項3に記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項5】
フィードバック抵抗の精度が与えられ、この精度に基づき複数の出力電圧候補の算出の基となるフィードバック抵抗の値の個数を増加させて前記複数候補処理制御手段へ供給する個数増加手段、
を具備することを特徴とする請求項3に記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項6】
抵抗値の温度変化に関する温度変化データのデータベースを備え、前記電源回路が使用される環境の温度が与えられると、与えられた温度に基づき前記データベースを参照して前記複数候補処理制御手段に与えられたフィードバック抵抗の値を変更し、この変更した値を前記複数候補処理制御手段に通知して、この値に基づく処理を行わせる温度変化対応手段、
を具備することを特徴とする請求項3に記載の電源回路の設計支援装置。
【請求項7】
電源ICと、この電源ICに外部接続されるフィードバック抵抗とを含む電源回路における立ち上がりから時系列に出力される出力電圧を、前記電源回路のフィードバック電圧の値と前記フィードバック抵抗の値とによって作成されている数式を用いて算出する出力電圧算出ステップと、
この出力電圧算出ステップにより算出された時系列の出力電圧に基づき、出力電圧の経時変化曲線を得る曲線生成ステップと、
前記曲線生成ステップにおいて得られた経時変化曲線に基づくグラフを、画像を表示する表示手段に表示する表示制御ステップと、
を具備することを特徴とする電源回路の設計支援方法。
【請求項8】
前記出力電圧算出ステップは、前記出力電圧をVoutとし、前記フィードバック電圧をVfbとし、電源側フィードバック抵抗をR1とし、グランド側フィードバック抵抗をR2とした場合、次の(式1)により
out=Vfb×{(R1/R2)+1}・・・・(式1)
出力電圧を求めることを特徴とする請求項7に記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項9】
フィードバック抵抗の値が与えられ、この値に基づき複数のフィードバック抵抗の値を求め、この複数のフィードバック抵抗の値を基として対応する複数の出力電圧候補の算出、この複数の出力電圧候補に基づく複数の出力電圧の経時変化曲線の生成、生成された複数の出力電圧の経時変化曲線に基づくグラフの表示を制御する複数候補処理制御ステップ、
を具備することを特徴とする請求項7または8に記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項10】
前記複数候補処理制御ステップは、フィードバック抵抗の上限値と下限値が与えられ、この上限値と下限値の間に少なくとも1の値を求めて、少なくとも3つのフィードバック抵抗の値を得ることを特徴とする請求項9に記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項11】
フィードバック抵抗の精度が与えられ、この精度に基づき複数の出力電圧候補の算出の基となるフィードバック抵抗の値の個数を増加させて前記複数候補処理制御ステップへ供給する個数増加ステップ、
を具備することを特徴とする請求項9に記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項12】
抵抗値の温度変化に関する温度変化データのデータベースを備え、前記電源回路が使用される環境の温度が与えられると、与えられた温度に基づき前記データベースを参照して前記複数候補処理制御ステップに与えられたフィードバック抵抗の値を変更し、この変更した値を前記複数候補処理制御ステップに通知して、この値に基づく処理を行わせる温度変化対応ステップ、
を具備することを特徴とする請求項9に記載の電源回路の設計支援方法。
【請求項13】
コンピュータを、
電源ICと、この電源ICに外部接続されるフィードバック抵抗とを含む電源回路における立ち上がりから時系列に出力される出力電圧を、前記電源回路のフィードバック電圧の値と前記フィードバック抵抗の値とによって作成されている数式を用いて算出する出力電圧算出手段、
この出力電圧算出手段により算出された時系列の出力電圧に基づき、出力電圧の経時変化曲線を得る曲線生成手段、
前記曲線生成手段により得られた経時変化曲線に基づくグラフを、画像を表示する表示器に表示する表示制御手段、
として機能させることを特徴とする電源回路の設計支援用プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータを前記出力電圧算出手段として、前記出力電圧をVoutとし、前記フィードバック電圧をVfbとし、電源側フィードバック抵抗をR1とし、グランド側フィードバック抵抗をR2とした場合、次の(式1)により
out=Vfb×{(R1/R2)+1}・・・・(式1)
出力電圧を求めるように機能させることを特徴とする請求項13に記載の電源回路の設計支援用プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータを、
フィードバック抵抗の値が与えられ、この値に基づき複数のフィードバック抵抗の値を求め、この複数のフィードバック抵抗の値を基として対応する複数の出力電圧候補の算出、この複数の出力電圧候補に基づく複数の出力電圧の経時変化曲線の生成、生成された複数の出力電圧の経時変化曲線に基づくグラフの表示を制御する複数候補処理制御手段、
として機能させることを特徴とする請求項13または14に記載の電源回路の設計支援用プログラム。
【請求項16】
前記コンピュータを前記複数候補処理制御手段として、フィードバック抵抗の上限値と下限値が与えられ、この上限値と下限値の間に少なくとも1の値を求めて、少なくとも3つのフィードバック抵抗の値を得るように機能させることを特徴とする請求項15に記載の電源回路の設計支援用プログラム。
【請求項17】
前記コンピュータを、
フィードバック抵抗の精度が与えられ、この精度に基づき複数の出力電圧候補の算出の基となるフィードバック抵抗の値の個数を増加させて前記複数候補処理制御手段として機能する前記コンピュータへ供給する個数増加手段、
として機能させることを特徴とする請求項15に記載の電源回路の設計支援用プログラム。
【請求項18】
前記コンピュータを、
抵抗値の温度変化に関する温度変化データのデータベースを備え、前記電源回路が使用される環境の温度が与えられると、与えられた温度に基づき前記データベースを参照して前記複数候補処理制御手段として機能する前記コンピュータに与えられたフィードバック抵抗の値を変更し、この変更した値を前記複数候補処理制御手段として機能する前記コンピュータに通知して、この値に基づく処理を行わせる温度変化対応手段、
として機能させることを特徴とする請求項15に記載の電源回路の設計支援用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源回路の設計支援装置、電源回路の設計支援方法及び電源回路の設計支援用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源回路設計の際には、設計者が考慮する重要な要素としてフィードバック抵抗の決定が挙げられる。基本的に、電源回路ではフィードバック抵抗を2つ用いる。しかしながら、市中には各メーカから膨大な種類の抵抗が提供されているため、2つの抵抗の組み合わせも膨大な数となる。そして、所望の電圧を出力する電源回路を設計するための最適な抵抗の組み合わせを決定する作業は、特に経験の浅い若手技術者には多大な時間を要するものである。更にこの作業は、最適な組み合わせを見落とすといった間違いの発生し得るものでもある。
【0003】
特許文献1には、半導体デバイスの製造方法が開示されている。この製造方法では、別個の回路ブロックの表示と、回路ブロックの性能パラメータを、回路ブロックのコンポーネントの電気パラメータと関連付ける式とを有するテンプレートを、ライブラリから選択する。また、回路ブロックの性能パラメータの所望の値を選択し、半導体デバイスの設計を構成すべく、性能パラメータの所望の値を上記式に代入し、電気パラメータについて上記式を解く。これにより、上記性能パラメータの所望の値を実現するための、電気パラメータの値を算出し、半導体デバイスの設計に基づき作動する、というものである。
【0004】
また、特許文献2には、回路方式の選定基準の変化に対して柔軟に対処して電源回路設計の支援を行う方法が開示されている。この方法では、スイッチング電源の回路方式を入力するステップと、判断要素を入力するステップと、要素範囲を入力するステップと、要素範囲に対する重み付け値を入力するステップにて入力した回路方式、判断要素、要素範囲、重み付け値を階層構造にしてデータベースに格納する。更に、この方法では、その後、電気的仕様を入力することにより、仕様の中から、複数の判断要素とその値を抽出し、この抽出した判断要素と値の組からデータベースの情報を参照して判断要素に対する範囲を指定し、その判断要素と範囲に合致する回路選定の重み付け値をデータベースから取り出す。そして、取り出した各判断要素に対する重み付け値に基づいて仕様に最も適するスイッチング電源の回路方式を選択し、表示出力するというものである。
【0005】
特許文献3には、電源電圧調整回路が開示されている。、外部電源電圧Vextの供給を受けて出力電圧Voutを出力するフィードバック機能を備える外部電源回路側の機構を構成する抵抗R1と接地側抵抗R2との間に配設されるフィードバック抵抗Rfb1と、出力電圧Voutに基づく内部電源電圧VDDの供給を受けるSoC3内に配設される可変抵抗を有するD/A変換回路と、を有する。
【0006】
そして、可変抵抗の抵抗値RDAC,IDACを変化させて出力電圧Voutを変化させることによって所定のターゲット電圧になるように内部電源電圧VDDを調整し、特に、BGR電圧VBGRを生成するバンドギャップリファレンス回路と、を有し、SoC3がアイドル状態である時のBGR電圧VBGRとアクティブ状態である時のBGR電圧VBGRとを用いて可変抵抗の抵抗値RDAC、IDACを変化させる制御データを計算する、というものである。
【0007】
その他に電源回路の設計に関するものとしては、特許文献4、特許文献5、特許文献6特許文献7に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-157289号公報
【文献】特開2007-102638号公報
【文献】特開2023-113320号公報
【文献】特開2009-199338号公報
【文献】特開2005-189930号公報
【文献】特開平11-39373号公報
【文献】特開平10-187786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように回路設計、電源回路の設計に関する発明は様々あるものの、熟練度の低い者が比較的容易に使用できるものはほぼ皆無に等しい。また、各ICメーカから自社製品用の最適化ツールが提供されている場合もあるが、使用できるのはメーカが提供しているICを使用した回路に制限されてしまう。実際の回路設計では複数のメーカの電源ICを使用することも多いため、そのような場合は複数のツールの使用方法を習得する必要もあり、かなり大変な労力を有する。このような状況のため、ICメーカに縛られることのない汎用性の高い電源回路の設計最適化ツールにより、電源回路の設計効率の効率向上が求められている。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、その目的は、所望の電圧を出力する電源回路を設計するための最適な抵抗を決定する作業に役立つ電源回路の設計支援装置、電源回路の設計支援方法及び電源回路の設計支援用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電源回路の設計支援装置は、電源ICと、この電源ICに外部接続されるフィードバック抵抗とを含む電源回路における立ち上がりから時系列に出力される出力電圧を、前記電源回路のフィードバック電圧の値と前記フィードバック抵抗の値とによって作成されている数式を用いて算出する出力電圧算出手段と、この出力電圧算出手段により算出された時系列の出力電圧に基づき、出力電圧の経時変化曲線を得る曲線生成手段と、画像を表示する表示手段と、前記曲線生成手段により得られた経時変化曲線に基づくグラフを前記表示手段に表示する表示制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電源回路の設計支援装置では、前記出力電圧算出手段は、前記出力電圧をVoutとし、前記フィードバック電圧をVfbとし、電源側フィードバック抵抗をR1とし、グランド側フィードバック抵抗をR2とした場合、次の(式1)により
out=Vfb×{(R1/R2)+1}・・・・(式1)
出力電圧を求めることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る電源回路の設計支援装置では、フィードバック抵抗の値が与えられ、この値に基づき複数のフィードバック抵抗の値を求め、この複数のフィードバック抵抗の値を基として対応する複数の出力電圧候補の算出、この複数の出力電圧候補に基づく複数の出力電圧の経時変化曲線の生成、生成された複数の出力電圧の経時変化曲線に基づくグラフの表示を制御する複数候補処理制御手段、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電源回路の設計支援装置では、前記複数候補処理制御手段は、フィードバック抵抗の上限値と下限値が与えられ、この上限値と下限値の間に少なくとも1の値を求めて、少なくとも3つのフィードバック抵抗の値を得ることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電源回路の設計支援装置では、フィードバック抵抗の精度が与えられ、この精度に基づき複数の出力電圧候補の算出の基となるフィードバック抵抗の値の個数を増加させて前記複数候補処理制御手段へ供給する個数増加手段、を具備することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る電源回路の設計支援装置では、抵抗値の温度変化に関する温度変化データのデータベースを備え、前記電源回路が使用される環境の温度が与えられると、与えられた温度に基づき前記データベースを参照して前記複数候補処理制御手段に与えられたフィードバック抵抗の値を変更し、この変更した値を前記複数候補処理制御手段に通知して、この値に基づく処理を行わせる温度変化対応手段、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】コンピュータを用いて構成した本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置の構成図。
図2】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置の外部記憶装置に記憶された各手段を示す図。
図3】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置の部品名入力時の表示例を示す図。
図4】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置の動作を示すフローチャート。
図5】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置の動作を示すフローチャート。
図6】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置によるグラフ作成過程の説明図。
図7】電源ICが立ち上がった付近の領域における出力電圧の変化を示す図。
図8】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置による5通りのフィードバック抵抗の組み合わせによる出力電圧のグラフを示す図。
図9図8の表示画面の要部拡大図。
図10】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置による5通りのフィードバック抵抗中の上限値の組み合わせによる出力電圧のグラフを示す図。
図11】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置による5通りのフィードバック抵抗中の上限側中間値の組み合わせによる出力電圧のグラフを示す図。
図12】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置による5通りのフィードバック抵抗中の中央中間値の組み合わせによる出力電圧のグラフを示す図。
図13】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置による5通りのフィードバック抵抗中の下限側中間値の組み合わせによる出力電圧のグラフを示す図。
図14】本発明の実施形態に係る電源回路の設計支援装置による5通りのフィードバック抵抗中の下限値の組み合わせによる出力電圧のグラフを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照して、本発明に係る電源回路の設計支援装置、電源回路の設計支援方法及び電源回路の設計支援用プログラムの実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。本発明に係る電源回路の設計支援装置は、図1に示されるように、コンピュータを用いて構成することができる。
【0019】
即ち、CPU10が主メモリ11内のプログラムやデータを用いて電源回路の設計支援装置を構成するものである。CPU10には、バス12を介して外部記憶インタフェース13、入力インタフェース14、表示インタフェース15、通信インタフェース16が接続されている。
【0020】
外部記憶インタフェース13には、外部記憶装置23が接続されている。外部記憶装置23には、この電源回路の設計支援装置が動作を行うためのプログラムやデータが記憶されており、これらはCPU10が主メモリ11に適宜読み出して使用することができる。このため、外部記憶装置23には、図2に示される出力電圧算出手段3、曲線生成手段4、表示制御手段5、複数候補処理制御手段6、個数増加手段7及び温度変化対応手段8を実現するプログラムが記憶されているものである。
【0021】
出力電圧算出手段3は、電源ICと、この電源ICに外部接続されるフィードバック抵抗とを含む電源回路における立ち上がりから時系列に出力される出力電圧を、上記電源回路のフィードバック電圧の値と前記フィードバック抵抗の値とによって作成されている数式を用いて算出するものである。
【0022】
曲線生成手段4は、上記の出力電圧算出手段3により算出された時系列の出力電圧に基づき、出力電圧の経時変化曲線を得るものである。表示制御手段5は、上記曲線生成手段4により得られた経時変化曲線に基づくグラフを表示手段である図1の表示装置25に表示するものである。
【0023】
上記出力電圧算出手段3は、出力電圧をVoutとし、フィードバック電圧をVfbとし、電源側フィードバック抵抗をR1とし、グランド側フィードバック抵抗をR2とした場合、次の(式1)により
out=Vfb×{(R1/R2)+1}・・・・(式1)
出力電圧を求める。
【0024】
複数候補処理制御手段6は、フィードバック抵抗の値が与えられ、この値に基づき複数のフィードバック抵抗の値を求め、この複数のフィードバック抵抗の値を基として対応する複数の出力電圧候補の算出、この複数の出力電圧候補に基づく複数の出力電圧の経時変化曲線の生成、生成された複数の出力電圧の経時変化曲線に基づくグラフの表示を制御するものである。
【0025】
上記複数候補処理制御手段6は、フィードバック抵抗の上限値と下限値が与えられ、この上限値と下限値の間に少なくとも1の値を求めて、少なくとも3つのフィードバック抵抗の値を得る。ここでは、上限値と下限値との中間値(中央中間値)、更に上限値と上記中央中間値との中間値(上限側中間値)、更に下限値と中央中間値との中間値(下限側中間値)を求め、上記上限値と下限値を含め、5つのフィードバック抵抗の値を得る。
【0026】
個数増加手段7は、フィードバック抵抗の精度が与えられ、この精度に基づき複数の出力電圧候補の算出の基となるフィードバック抵抗の値の個数を増加させて上記複数候補処理制御手段6へ供給するものである。
【0027】
温度変化対応手段8は、抵抗値の温度変化に関する温度変化データのデータベースを備えており、上記電源回路が使用される環境の温度が与えられると、与えられた温度に基づき上記データベースを参照して上記複数候補処理制御手段6に与えられたフィードバック抵抗の値を変更し、この変更した値を上記複数候補処理制御手段6に通知して、この値に基づく処理を行わせるものである。
【0028】
再び、図1に戻って説明を続ける。入力インタフェース14には、キーボードやタッチパネル等の入力装置24とマウス等のポインティングデバイス22が接続されている。表示インタフェース15には、LCD等の画面を有する表示装置25が接続され、表示装置25は、表示手段を実現している。通信インタフェース16には、ネットワークを介して各メーカの電源ICの性能・特性データの供給サイトに接続可能に構成されており、これら各メーカの電源ICの性能・特性データは、図2のように外部記憶装置23に記憶され、時系列曲線の生成等に用いられる。
【0029】
外部記憶装置23には、設計する電源回路の回路図データのデータベースが記憶され、それぞれの識別情報である「部品名」を入力して回路図を呼び出し、表示装置25に表示することができる。入力装置24から「部品名」として「DCDC汎用」を入力した場合に電源回路の設計装置における表示例を図3に示す。
【0030】
本実施形態では、図4図5に示すフローチャートに示される、上記の各手段により実行される処理のプログラムが外部記憶装置23に記憶されており、このプログラムに基づき動作が行われる。即ち、出力電圧Voutの値の入力が行われ(S11)、フィードバック電圧Vfbの値の入力が行われる(S12)。
【0031】
更に、フィードバック抵抗(R1又はR2)の値(範囲)の入力がなされる(S13)。ここで、CPU10は、複数候補処理制御手段6としてフィードバック抵抗R1の抵抗値が入力されているかを検出する(S14)。フィードバック抵抗R1の抵抗値が入力されておりステップS14においてYESへ分岐すると、フィードバック抵抗R1の上限値、下限値、中央中間値、上限側中間値、下限側中間値を算出する(S15)。一方、フィードバック抵抗R2の抵抗値が入力されておりステップS14においてNOへ分岐すると、フィードバック抵抗R2の上限値、下限値、中央中間値、上限側中間値、下限側中間値を算出する(S16)。
【0032】
次に、抵抗値の精度を考慮しなければならないかを検出する(S17)。即ち、図3の表示例に示すように、「抵抗の精度」のボックスに精度の値が入力されるなどチェックボックスがONとされる処理がなされているときには、このステップS17においてYESへ分岐し、抵抗の精度による抵抗値変化を考慮し、出力電圧Voutの計算式を変更する(S18)。
【0033】
ここでは、前述の通り、出力電圧Voutは(式1)により計算するのであるが、「抵抗の精度」を0.1%とすると、最大出力電圧VoutMAXは
outMAX=Vfb×{(R1・1.001/R2・0.999)+1}・・・・(式2)
であり、最小出力電圧VoutMINは
outMIN=Vfb×{(R1・0.999/R2・1.001)+1}・・・・(式3)
となる。
【0034】
以上を図にすると、図6に示すように、(式1)により得られていたVoutに対し、精度1%により上側のVoutMAXから下側のVoutMINまでの値が採られるようになる。このように、ステップS18が終了するか、または、ステップS17においてNOへ分岐した場合には、ステップS19へ進み、温度変化考慮しなければならないかを検出する(S19)。即ち、図3の表示例に示すように、「使用温度」のボックスに使用状態の温度値が入力されるなどチェックボックスがONとされる処理がなされているときには、このステップS19においてYESへ分岐し、温度変化を考慮し、出力電圧Voutの計算式を変更する(S20)。
【0035】
一般的に、抵抗温度計数は温度によってプラスになったり、マイナスになったりする。本実施形態では、各メーカの抵抗温度計数のデータベースを有しており、これを用いて計算式の変更を行う。本実施形態では、使用温度が25度であり、抵抗温度計数によって最大1.01倍の抵抗値になり、最低で0.99倍になるとする。
【0036】
すると、温度込み最大出力電圧VoutMAX_SMは
outMAX_SM=Vfb×{(R1・1.001・1.01/R2・0.999・0.99)+1}・・・・(式4)
であり、温度込み最小出力電圧VoutMIN_SMは
outMIN=Vfb×{(R1・0.999・0.99/R2・1.001・1.01)+1}・・・・(式5)
となる。
【0037】
このように、ステップS20が終了するか、または、ステップS19においてNOへ分岐した場合には、ステップS21へ進み、先にR1の抵抗値に対応の処理済かを検出する。このステップS21において、YESとなると、5通りのR2の抵抗値を算出し、R1と同様に計算式を得て計算し、結果を表示する(S22)。一方、上記のステップS21において、NOとなると、5通りのR1の抵抗値を算出し、R2と同様に計算式を得て計算し、結果を表示する(S23)。先に述べたように、ステップS11において希望する出力電圧Voutの値の入力が行われ、ステップS12においてフィードバック電圧Vfbの値の入力が行われ、更に、ステップS13においてフィードバック抵抗R1(又はR2)の値(範囲)の入力がなされているので、5通りのフィードバック抵抗R1(又はR2)が求まっている。このステップS22、S23では、求まっている5通りのフィードバック抵抗R1(又はR2)から(式1)を用いてもう一方のフィードバック抵抗R2(又はR3)が算出される。
【0038】
上記において、最終的には、フィードバック抵抗R1の上限値、下限値、中央中間値、上限側中間値、下限側中間値と、フィードバック抵抗R2の上限値、下限値、中央中間値、上限側中間値、下限側中間値とが得られ、(式4)と(式5)によりVoutを得て図8に示されるように表示される。ここで、(式4)と(式5)により得られるVoutは、或る時点の値である。通常、電源ICは立ち上がりから徐々に(式1)により計算できるものへと変遷してゆく。例えば、図7に示すような特性曲線を示す。各メーカは、このような特性曲線に対応する時系列のデータを電源ICの性能・特性データとして供給サイトから提供しているので、既述の通り通信インタフェース16を介して、ネットワークから入手し、図2のように外部記憶装置23に記憶している。そして、図7の特性曲線に対応する時系列のデータに基づき、各時刻tの出力電圧が、(式1)をX(t)倍すれば求まるように、X(t)を求めて記憶しておく。(式4)と(式5)が求まったときに、{(式4)・X(t)}により時系列データを算出して、グラフの上側を得て、また、{(式5)・X(t)}により時系列データを算出して、グラフの下側を得て各時刻で電圧値幅を有する図7の如きフィードバック抵抗R1との抵抗R2との上限値、下限値、中央中間値、上限側中間値、下限側中間値による5通りのグラフを重ねた画像を得て表示する。なお、図7の特性曲線は、(R1/R2)をいくつか揃えて、この(R1/R2)毎にフィードバック電圧Vfbをいくつかの刻みで変化させた数だけ用意される。
【0039】
本実施形態では、図8の丸Bにより示す領域をポインティングデバイス22などにより選択して、この部分を拡大して図9に示す如く表示することができる。更に、入力装置24から指示を与えて、フィードバック抵抗R1との抵抗R2との上限値、下限値、中央中間値、上限側中間値、下限側中間値をそれぞれ独立させたグラフの画像を得て、図10図14までの5つの図に示す如く、それぞれ表示することができる。
【0040】
本実施例形態に記載した通り、実施形態の装置、方法又はプログラムを使用することで所望の出力電圧を出力するための5通りのフィードバック抵抗の組み合わせを、手計算することなく瞬時に求めることができる。また、5通りのフィードバック抵抗の組み合わせ毎の出力電圧をグラフ表示することが可能であり、目視にて直観的に最適な出力結果を選択することができる。また、必要に応じて抵抗の精度による出力電圧のばらつきや環境温度による出力電圧の変動も計算結果に反映することも可能であり、電源回路の設計に有用となる。なお、この5通りは例示に過ぎないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
3 出力電圧算出手段
4 曲線生成手段
5 表示制御手段
6 複数候補処理制御手段
7 個数増加手段
8 温度変化対応手段
10 CPU
11 主メモリ
12 バス
13 外部記憶インタフェース
14 入力インタフェース
15 表示インタフェース
16 通信インタフェース
22 ポインティングデバイス
23 外部記憶装置
24 入力装置
25 表示装置
【要約】
【課題】所望の電圧を出力する電源回路を設計するための最適な抵抗を決定する。
【解決手段】本発明に係る電源回路の設計支援装置は、電源ICと、この電源ICに外部接続されるフィードバック抵抗とを含む電源回路における立ち上がりから時系列に出力される出力電圧を、前記電源回路のフィードバック電圧の値と前記フィードバック抵抗の値とによって作成されている数式を用いて算出する出力電圧算出手段3と、この出力電圧算出手段3により算出された時系列の出力電圧に基づき、出力電圧の経時変化曲線を得る曲線生成手段4と、画像を表示する表示手段と、前記曲線生成手段4により得られた経時変化曲線に基づくグラフを前記表示手段に表示する表示制御手段5と、を具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14