(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】殺虫及び殺菌装置並びに方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
A61L2/07
(21)【出願番号】P 2020194939
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】梶原 一信
(72)【発明者】
【氏名】波光 勉
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083196(JP,A)
【文献】特開2008-000122(JP,A)
【文献】特開2004-081016(JP,A)
【文献】特開2019-097456(JP,A)
【文献】特開2018-183090(JP,A)
【文献】特開2009-034038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/07
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物と水とを収容可能な加水部と、
前記加水部の内部に前記水を噴射可能な噴射部材を備え、
前記加水部は、上面を形成する天板部と、側面を形成する側面部と、下部を形成する漏斗部と、により形成され、
前記噴射部材が前記側面部に接続される場合には、前記加水部の内部に前記穀物を積層させたときの、前記穀物の積層した上面と、前記側面部の内壁と、の接触箇所までの前記側面部の範囲に、前記噴射部材が接続され、
前記加水部に接続され、前記穀物に付与された前記水の少なくとも一部に蒸気を噴射する加熱部と、
前記加熱部から搬送される前記穀物、前記水及び前記蒸気の少なくとも1つに向けて送風する乾燥部と、を備える、
殺虫及び殺菌装置。
【請求項2】
複数の前記噴射部材が前記側面部に接続される場合には、複数の前記噴射部材が、上面視又は底面視で回転対称に接続されている、
請求項
1に記載の殺虫及び殺菌装置。
【請求項3】
前記噴射部材が、前記天板部及び前記漏斗部の少なくとも1つにさらに接続している、
請求項
1又は
2に記載の殺虫及び殺菌装置。
【請求項4】
前記穀物に噴射される前記水の温度は、10℃以上80℃以下である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の殺虫及び殺菌装置。
【請求項5】
前記穀物の質量に対する前記水の質量が、5質量%以上10質量%以下である、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の殺虫及び殺菌装置。
【請求項6】
前記水及び前記蒸気の少なくとも1つを前記穀物から分離させる脱水部をさらに備える、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の殺虫及び殺菌装置。
【請求項7】
前記脱水部が、前記加熱部と、前記乾燥部と、に接続している、
請求項
6に記載の殺虫及び殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、殺虫及び殺菌装置並びに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物の殺菌処理を行うため、蒸気を用いた殺菌装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、横型筒状部内の回転軸部の周囲に形成された複数の撹拌羽根を有する過熱蒸気殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の過熱蒸気殺菌装置では、複数の撹拌羽根の配置角度を3つ以上にすることにより、過熱蒸気と穀物との接触ムラの発生を防止する。このため、過熱蒸気と穀物との物理的な接触回数を増やすことを必要とするため、横型筒状部が大型化し、穀物全体の殺菌のために比較的長時間を要する。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、効率よく穀物の殺虫及び殺菌処理をすることができる殺虫及び殺菌装置並びに方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置は、穀物と水とを収容可能な加水部を備える。また、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置は、加水部の内部に水を噴射可能な噴射部材を備え、加水部は、上面を形成する天板部と、側面を形成する側面部と、下部を形成する漏斗部と、により形成され、噴射部材が側面部に接続される場合には、加水部の内部に穀物を積層させたときの、穀物の積層した上面と、側面部の内壁と、の接触箇所までの側面部の範囲に、噴射部材が接続される。また、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置は、加水部に接続され、穀物に付与された水の少なくとも一部に蒸気を噴射する加熱部を備え、加熱部から搬送される穀物、水及び蒸気の少なくとも1つに向けて送風する乾燥部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る殺虫及び殺菌装置並びに方法によれば、効率よく穀物の殺虫及び殺菌処理をすることができる殺虫及び殺菌装置並びに方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置の概略斜視図
【
図2】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置の部分I-I’断面図
【
図3】(A)本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置が備える加水部を示す図であって、複数の第1ノズルを備える加水部の概略上面図、(B)本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置が備える、穀物が収容されている加水部を示す図であって、複数の第1ノズルを備える加水部の概略斜視図
【
図5】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置が備える加水部を示す図であって、複数の第1ノズルを筐体の側面部に備える形態を例示する、加水部の概略部分II-II’断面図
【
図6】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置が備える加水部を示す図であって、複数の第1ノズルを筐体の天板部に備える形態を例示する、加水部の概略部分II-II’断面図
【
図7】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置が備える乾燥部の第2筒状部を示す概略斜視図
【
図8】脱水部を備える形態を例示する、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置のI-I’断面図
【
図9】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置を示す図であって、螺旋状部の代りに羽根部を備える形態を例示する、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置のI-I’断面図
【
図10】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置を示す図であって、異物受容部の内部に仕切板を備える形態を例示する、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置のI-I’断面図
【
図11】本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置が備える加水部を示す図であって、複数の第1ノズルを筐体の天板部及び側面部にそれぞれ備える形態を例示する、加水部の概略部分II-II’断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置1の一例について、図面を例示して説明する。なお、
図1に示すように、殺虫及び殺菌装置1の高さ方向をY軸方向、殺虫及び殺菌装置1の延在方向をX軸方向、XY軸に垂直な方向をZ軸方向とするXYZ座標系を設定し、適宜用いて説明する。また、各部材の厚さ、寸法は、説明のために適宜省略する。
【0011】
(実施の形態1)
図1及び2に示すように、殺虫及び殺菌装置1は、穀物と水とを収容可能な加水部10と、加水部10に接続され、穀物に付与された水の少なくとも一部に蒸気を噴射する加熱部19と、加熱部19から搬送される穀物、水及び蒸気の少なくとも1つに向けて送風する乾燥部30と、を備える。なお、本明細書において、「蒸気」とは水蒸気をいう。また、「噴射」には噴霧が含まれる。また、「穀物」とは、例えば、米、小麦などの粒状物をいう。
【0012】
図1に示すように、加水部10は、筐体11と、水が貯留されているタンク部17と、タンク部17の水を筐体11の内部に噴射するための第1ノズル18と、を備える。
【0013】
筐体11は、加水部10の外郭を形成する部材である。筐体11は、天板部12と、側面を形成する側面部13と、下部を形成する漏斗部14と、を組み合わせて形成される箱体である。
【0014】
天板部12は、穀物の投入口としての開口が形成された板状の部材であり、筐体11の上面を形成する。天板部12には開口が形成されており、この開口に、穀物の搬入経路としての管状部材が接続する。
【0015】
側面部13は、1又は複数の板状部材を立設した部材である。立設した側面部13の上端部は、天板部12と接続する。
【0016】
漏斗部14は、テーパ状の中空の部材であり、漏斗部14の上端部は、立設した側面部13の下端部と接続する。また、穀物及び水の少なくとも1つの搬出側の先端部(漏斗部14の下端部)に向かって、漏斗部14が縮小している。縮小した漏斗部14の下端部からは、加熱部19にかけて、管状部15が延在している。漏斗部14の縮小が始まる箇所には、排出弁が適宜設けられてよい。
【0017】
管状部15は、主に、定量の穀物及び水の少なくとも1つを後述する加熱部19に搬送するために用いられる。管状部15の上端部及び下端部の間には、例えば、ロータリーバルブなどの、搬送される穀物及び水の少なくとも1つの量を調整可能なバルブ16が設けられており、穀物及び水の少なくとも1つが管状部15及びバルブ16を通過することにより、定量の穀物及び水の少なくとも1つを、延在する先端部から加熱部19に搬送する。なお、バルブ16は、管状部15に接続させるのではなく、筐体11の上部に接続させてもよい。
【0018】
天板部12、側面部13及び漏斗部14の少なくとも1つには、第1ノズル18が接続している。
【0019】
タンク部17は、筐体11の内部に噴射される水が貯留されている部材である。タンク部17には管状部材が接続しており、管状部材を介してタンク部17の内部の水を図示しないポンプ機構によって第1ノズル18まで搬送させ、第1ノズル18の噴射口から筐体11の内部に水を噴射する。
【0020】
第1ノズル18は、1又は複数接続される部材であり、加水部10の筐体11の内部に水を噴射可能な噴射部材である。第1ノズル18は、第1ノズル18の一端部(噴射口側)を筐体11の内部に突出して接続されている。第1ノズル18の他端部は、水が貯留されているタンク部17と、タンク部17からの、水の流路となる管状部材を介して接続している。
【0021】
穀物の表面全体を水で充分に被覆し、効率よく穀物の殺虫及び殺菌を行うという観点から、穀物の質量に対する水の質量は、5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0022】
効率よく穀物の殺虫及び殺菌を行うという観点から、穀物に噴射する水の温度は、10℃以上80℃以下であることが好ましく、20℃以上80℃以下であることがより好ましく、30℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。なお、水の加温は、図示しない加温器によりなされる。
【0023】
図3(A)及び(B)に示すように、側面部13に第1ノズル18が接続される場合には、4つの第1ノズル18を用いる場合を例にすると、それぞれの第1ノズル18の噴射口が、穀物の落下搬送により形成される層状の軌跡の面に、それぞれ対向して設けられることが好ましい。
【0024】
また、
図4に示すように、側面部13に第1ノズル18が接続される場合には、加水部10の内部に穀物を積層させたときの、穀物の積層した上面と、側面部13の内壁と、の接触箇所までの側面部13の範囲(L)に、第1ノズル18が接続されていることが望ましい。例えば、正面視で側面部13の上端~筐体11内部に所定の量の穀物が収納されたときの、穀物の積層した上面と、側面部13の内壁と、の接触箇所までの範囲(L)に、第1ノズル18が接続されていることが好ましい。
【0025】
また、穀物の積層した頂点(A)、側面部13の内壁と穀物との接触箇所(B)、斜辺ABを形成する隣辺AC及びBCの、∠ABCのなす角度(θ1)と、第1ノズル18からの水の噴射角度の1/2の角度(例えば、∠DEFのなす角度:θ2)と、は、θ1≦θ2≦90°となるよう、第1ノズル18からの水の噴射角度を調節する。
【0026】
また、筐体11の内部で、複数の穀物は筐体11の上部から下部に向かって落下搬送されるが、複数の穀物は層状(柱状)の軌跡を形成しつつ落下搬送される。そのため、側面部13に第1ノズル18が接続される場合には、複数の第1ノズル18が上面視又は底面視で回転対称に接続されることが好ましい。例えば、2つの第1ノズル18が上面視又は底面視で180°の回転対称に接続されることが好ましく、3つの第1ノズル18が120°の回転対称に接続されることがより好ましく、4つの第1ノズル18が90°の回転対称に接続されることがさらに好ましい。
【0027】
また、
図5に示すように、穀物の落下搬送される方向の軸に対して第1ノズル18の取り得る角度範囲は、穀物の積層した上面が水平である場合には0°≦θ3<180°、また、穀物の積層により錐体が形成される場合には、0°≦θ3≦(90°+θ1)の範囲を取り得る。
【0028】
また、穀物の積層した上面が水平である場合には、穀物の落下搬送される方向の軸に対して第1ノズル18の取り得る角度は、例えば、0°を基準にした場合には、180°に近づくにつれて、好ましくなる。
【0029】
また、穀物の積層により錐体が形成される場合には、穀物の落下搬送される方向の軸に対して第1ノズル18の取り得る角度は、例えば、0°を基準にした場合には、(90°+θ1)に近づくにつれて、好ましくなる。
【0030】
また、
図6に示すように、天板部12に第1ノズル18が1又は複数接続される場合には、穀物の落下搬送される方向の軸に対して第1ノズル18の取り得る角度範囲は、穀物の積層した上面が水平である場合には0°≦θ3<180°の範囲を取り得る。ここで、0°≦θ3<90°の角度範囲を取る場合には、第1ノズル18を筐体11に接続させ((A)及び(B))、90°≦θ3になる場合には、第1ノズル18に接続する管状部材を介して、第1ノズル18を筐体11に接続させる((C)及び(D))。
【0031】
殺虫及び殺菌装置1が、上述したような加水部10を備えることにより、殺虫及び殺菌装置1のサイズの変更がされる場合であっても、後述する加熱部19などで過剰に穀物を加熱することなく、効率よく穀物の殺虫及び殺菌処理をすることができる。また、穀物の表面全体にわたり水の層を形成させることができ、過度な水の層厚を形成することも防止することができるので、後述する加熱部19などで殺虫及び殺菌処理の効果を高めることができ、効率よく穀物の殺虫及び殺菌処理をすることができる。
【0032】
図1及び2に示すように、加熱部19は、加水部10に接続された部材であり、穀物に付与された水の少なくとも一部に蒸気を噴射する部材である。加熱部19は、水平方向に延在する第1筒状部20と、第1筒状部20に収容される第1回転部材21と、加熱された蒸気を第1筒状部20の内部空間に噴射する噴射部22と、を備える。
【0033】
第1筒状部20は中空の胴部20aと、胴部20aの両端の開口を塞ぐカバー部20bを備えた部材である。第1筒状部20の一端部側の上部近傍には、加水部10の管状部15の下端部が接続する。第1筒状部20の他端部側の下部近傍は、後述する乾燥部30に接続している。
【0034】
第1回転部材21は、第1筒状部20に収容可能な部材であり、回転軸(長手軸)を有する第1棒状部材23と、第1棒状部材23の周囲に設けられた第1螺旋状部24と、を備える部材である。第1棒状部材23及び第1螺旋状部24により形成されるスクリューは、例えば、アルキメディアン・スクリューと同様の機能を発揮する。
【0035】
第1棒状部材23は、回転軸を有する部材である。第1棒状部材23が第1筒状部20に収容された場合に、第1棒状部材23の回転軸と、第1筒状部20の長手軸とは、一致又は略一致する。第1棒状部材23は、図示しない駆動機構によって、回動が制御される。なお、本明細書において「回動」は、回転を含む。
【0036】
第1螺旋状部24は、第1棒状部材23の長手軸に沿って、第1棒状部材23の周面に設けられた螺旋状の突起状部である。第1螺旋状部24は、加水部10から搬送される、穀物に付与された水の少なくとも一部に対して、充分量の加熱された蒸気を噴射することができる間隔で、等間隔に設けられたピッチを有する。
【0037】
第1棒状部材23及び第1螺旋状部24の一部は管状部15の下部に配置されている。これにより、水を噴射された穀物を、加水部10から加熱部19に効率的に搬送することができる。
【0038】
噴射部22は、加熱された蒸気を第1筒状部20の内部空間に噴射するための部材であり、1又は複数の第2ノズル25により形成される部材である。噴射部22の第2ノズル25から噴射される水は、図示しない加熱タンクで加熱され、水の流路となる管状部材を介して第2ノズル25に接続している。なお、本実施の形態では、2つの噴射部22を備える殺虫及び殺菌装置1を例示して説明する。
【0039】
効率よく穀物の殺虫及び殺菌を行うという観点から、噴射部22から穀物に噴射される水の温度は、200℃以上400℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以上300℃以下であり、さらに好ましくは200℃以上250℃以下である。
【0040】
また、効率よく穀物の殺虫及び殺菌を行うという観点から、噴射部22から穀物に噴射される水の一噴射当たりの噴射の継続時間は、3秒以上7秒以下であることが好ましく、より好ましくは3秒以上5秒以下である。
【0041】
乾燥部30は、第1筒状部20の他端部側の下部近傍に接続された部材であり、加熱部19から搬送される穀物、水及び蒸気の少なくとも1つに向けて送風し、穀物に乾燥処理を施す部材である。乾燥部30は、第1筒状部20の下部に配置される第2筒状部26と、第2筒状部26に収容される第2回転部材27と、加熱された風を第2筒状部26の内部空間に送風する送風部28と、を備える。
【0042】
第2筒状部26は、中空の胴部26aと、胴部26aの筒の両端の開口を塞ぐカバー部26bを備えた部材である。第2筒状部26の長軸方向と第1筒状部20の軸方向とは同一又は略同一の方向であり、第2筒状部26の一端部側の上部近傍は、第1筒状部20の他端部側の下部近傍と、接続部材を介して接続する。第2筒状部26の他端部側の下部近傍には、乾燥処理を施された穀物の搬出部40が設けられている。また、第2筒状部26の内径は、第1筒状部20の内径よりも大径に設定されている。
【0043】
胴部26aは、第2筒状部26の外郭を規定する部材であり、胴部26aの内面から外面を貫通する複数のスリットが設けられている。また、胴部26aは、2つの部材が合わせ面に対して面対称に形成されており、互いに組み合わされて、
図7に示すように、第2回転部材27が収容される断面円形の孔を形成する。
【0044】
図2に示すように、第2筒状部26の下部には異物受容部29が設けられており、第2筒状部26のスリットを通過した異物を受容し、殺虫及び殺菌装置1の外部に適宜搬出する。なお、本明細書において「異物」とは、主に砕屑物をいう。
【0045】
第2回転部材27は、第2筒状部26に収容可能な部材であり、回転軸(長手軸)を有する第2棒状部材31と、第2棒状部材31の周囲に設けられた第2螺旋状部32と、を備える部材である。なお、第2棒状部材31及び第2螺旋状部32により形成されるスクリューも、例えば、アルキメディアン・スクリューと同様の機能を発揮する。
【0046】
第2棒状部材31は、回転軸を有する部材である。第2棒状部材31が第2筒状部26に収容された場合に、第2棒状部材31の回転軸と、第2筒状部26の長手軸とは、一致又は略一致する。第2棒状部材31は、図示しない駆動機構によって、回動が制御される。また、第2棒状部材31の外径は、第1棒状部材23の外径と同一又は第1棒状部材23の外径よりも小径に設計される。なお、駆動機構は、第1棒状部材23及び第2棒状部材31の両部材を制御してもよい。
【0047】
第2螺旋状部32は、第2棒状部材31の長手軸に沿って、第2棒状部材31の周面に設けられた螺旋状の突起状部である。第2螺旋状部32は、加熱部19から搬送される、穀物に付与された水の少なくとも一部に対して、後述する送風部28から送風される加熱された充分量の風を当てることができるピッチを有する。
【0048】
なお、第2棒状部材31及び第2螺旋状部32により形成される回転体の外径は、第1棒状部材23及び第1螺旋状部24により形成される回転体の外径と同一又は第1棒状部材23及び第1螺旋状部24により形成される回転体の外径よりも大径である。
【0049】
送風部28は、加熱された風を第2筒状部26の内部空間に送風するための部材である。例えば、送風部28としてブロワを用いることができる。また、送風部28は図示しない空気加熱部に接続されており、効率よく穀物乾燥させるという観点から、送風部28は、30℃以上80℃以下の風の温度、かつ、50m3/min以上90m3/min以下の風量で送風することが好ましい。
【0050】
(実施の形態2)
実施の形態1では、加熱部19と乾燥部30とが接続する殺虫及び殺菌装置1について説明した。ここでは、さらに脱水部33を備える殺虫及び殺菌装置1について、図面を例示して説明する。なお、実施の形態1の説明と同様の箇所については、適宜、説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、殺虫及び殺菌装置1は、加熱部19と乾燥部30との間に脱水部33を備える。
【0052】
脱水部33は、加熱部19から搬送される穀物の表面から、水及び蒸気の少なくとも1つを、遠心分離により分離させるための部材である。
【0053】
脱水部33は、加熱部19に接続する小筐体34と、小筐体34の一端に接続して小筐体34に連通し、乾燥部30に接続する大筐体35と、小筐体34及び大筐体35の内部に収容される第3回転部材36と、を備える。ここで、小筐体34の内径は大筐体35の内径よりも小径である。また、小筐体34及び大筐体35により形成される筐体のユニットは、小筐体34を大筐体35の上部に接続する形態として、殺虫及び殺菌装置1の高さ方向と同軸方向に配置される。
【0054】
小筐体34は、加熱部19から搬送される穀物を投入される開口を有する部材である。そのため、第1回転部材21により搬送される穀物が、第1筒状部20の他端部側にある、実施の形態1における乾燥部30との接続箇所を介して、小筐体34の内部に搬送可能となる。
【0055】
大筐体35は、脱水処理を施された穀物を乾燥部30に搬出する開口及び脱水した水を殺虫及び殺菌装置1の外部に排出するための排出部を有する部材である。そのため、第2筒状部26の一端部側にある、実施の形態1における第1筒状部20との接続箇所を介して、乾燥部30の内部に穀物を搬送可能となる。
【0056】
第3回転部材36は、小筐体34及び大筐体35に収容可能な部材であり、回転軸(長手軸)を有する第3棒状部材37と、第3棒状部材37の周囲に設けられた第3螺旋状部38と、を備える部材である。また、第3棒状部材37は、図示しない駆動機構によって、回動が制御される。なお、第3棒状部材37及び第3螺旋状部38により形成されるスクリューも、例えば、アルキメディアン・スクリューと同様の機能を発揮する。また、第3回転部材36は、多数のスリットが形成された筒状部材39によって囲まれていてもよい。
【0057】
次に、殺虫及び殺菌装置1を用いて、穀物を殺虫及び殺菌する方法について説明する。
【0058】
まず、加水部10の筐体11に穀物を投入し、筐体11の内部に突出する第1ノズル18の一端部から、タンク部17に貯留されている水を穀物に向けて噴射する。このとき穀物に噴射される、穀物の質量に対する水の質量は、5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0059】
また、このとき、穀物に効率的に水を噴射するために、加水部10の内部を落下移動している穀物に対して、予め規定した所定の量の水を噴射する。このような穀物に水を噴射する噴射工程により、穀物の表面全体に、加熱部19で効率的に殺虫及び殺菌するための水の層が形成される。
【0060】
加水部10で水を噴射された穀物は、管状部15を介して加熱部19に移動する。加熱部19に移動した穀物は第1回転部材21の回転に伴い、第1筒状部20の一端部側から他端部側に向かって移動する。加熱部19を穀物が移動する際、噴射部22は、所定の温度に加熱された蒸気を第1筒状部20の内部空間に噴射する。このような加熱工程により、加水部10において穀物に付与された水の少なくとも一部に対して、加熱部19で蒸気を付与させることができ、穀物に付与された水の少なくとも一部を加熱し、効率よく穀物の殺虫及び殺菌を行うことができる。また、第1回転部材21が第1螺旋状部24を有することにより、穀物の加熱と、穀物の乾燥部30までの搬送と、を効率的に行わせることができる。
【0061】
加熱部19で蒸気を噴射された穀物は、加熱部19に接続する乾燥部30に搬送される。乾燥部30に移動した穀物は第2回転部材27の回転に伴い、第2筒状部26の一端部側から他端部側に向かって移動する。乾燥部30を穀物が移動する際、送風部28は、所定の温度に加熱された風を加熱部19から搬送される穀物、水及び蒸気の少なくとも1つに送風する。このような送風工程により、水及び蒸気の少なくとも1つを穀物から分離させることができ、穀物に乾燥処理を施すことができる。また、第2回転部材27が第2螺旋状部32を有することにより、穀物の乾燥と、搬出部40までの搬送と、を効率的に行わせることができる。
【0062】
また、第2筒状部26の下部に設けられた異物受容部29には、穀物の乾燥と、搬出部40までの搬送と、がされることに伴って生じる異物が第2筒状部26のスリットを通過して落下し、異物は殺虫及び殺菌装置1の外部に適宜搬出される。
【0063】
乾燥処理を施された穀物は、第2筒状部26の搬出部40から搬出され、殺虫及び殺菌処理が終了する。
【0064】
殺虫及び殺菌装置1が、実施の形態2で説明した脱水部33を有する場合には、
加熱部19で蒸気を噴射された穀物は、加熱部19に接続する脱水部33に搬送される。脱水部33に移動した穀物は第3回転部材36の回転に伴い、小筐体34及び大筐体35の内部を、上部から下部に向かって移動する。脱水部33を穀物が移動する際、第3回転部材36の回動により、水及び蒸気の少なくとも1つが穀物から分離する。穀物から分離した水及び蒸気の少なくとも1つは、排出部から殺虫及び殺菌装置1の外部に排出される。また、水及び蒸気の少なくとも1つを分離された穀物は、第3回転部材36により、乾燥部30に搬送される。
【0065】
そして、乾燥処理を施された穀物は、第2筒状部26の搬出部40から搬出され、殺虫及び殺菌処理が終了する。
【0066】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0067】
例えば、本実施の形態では、筐体11が天板部12を備える形態を例示して説明したが、穀物を投入できるのであれば、天板部12を備えなくともよい。
【0068】
また、天板部12が側面部13に接続する形態を例示したが、蓋体として、側面部13から取外し可能に設けられてもよい。
【0069】
また、複数の第1ノズル18が側面部13に接続される場合には、穀物表面に必要十分な量の水を付与できるのであれば、第1ノズル18は、底面視又は平面視で回転対称に、筐体11の内部に突出して配置されていなくてもよい。
【0070】
また、穀物及び水の少なくとも1つを定量搬送するために、加水部10と加熱部19との間にバルブ16が設けられた形態を例示して説明したが、穀物及び水の少なくとも1つを定量搬送できるのならば、これに限定されない。
【0071】
また、本実施の形態に係る殺虫及び殺菌装置1で用いられる第1ノズル18のスプレーパターンは、所定の量の水を穀物に噴射して穀物をコーティングできるのであれば、特に限定されない。
【0072】
また、第1ノズル18は、所望のコーティング機能を発揮できるのであれば、それぞれ対向して設けられていなくてもよい。
【0073】
また、第1ノズル18は、穀物の表面全体を水で充分に被覆できるのであれば、天板部12及び側面部13のいずれか一方にのみ接続することに限定はされない。例えば、
図11に示すように、天板部12及び側面部13に、第1ノズル18をそれぞれ設けてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、第1棒状部材23及び第2棒状部材31の周面に第1螺旋状部24及び第2螺旋状部32をそれぞれ備える第1回転部材21及び第2回転部材27を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、
図9に示すように、第1螺旋状部24及び第2螺旋状部32の代わりに、又は第1螺旋状部24及び第2螺旋状部32の一部が、板状の複数の羽根部41を有していてもよい。
【0075】
羽根部41が、棒状部材からその円周方向に突出した形状で設けられた場合には、その突出した箇所に対向又は略対向する箇所からも、棒状部材からその円周方向に羽根部41が同様に突出した形状で設けられており、一対の羽根ユニットを形成してもよい。このとき、一対の羽根ユニットは、棒状部材の延在方向に等間隔に設けられていてもよい。
【0076】
また、棒状部材の軸方向と、羽根部41の面方向と、は水平方向で一致又は略一致していることが好ましい。
【0077】
また、棒状部材の延在方向に設けられた一対の羽根ユニットと一対の羽根ユニットの間には、これら一対の羽根ユニットと同形状又は略同形状の一対の羽根ユニットが、90°の回転対称に設けられていてもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、第2筒状部26に複数のスリットが設けられている形態を例示して説明したが、充分な乾燥機能を奏するのであれば、スリットの数は任意である。
【0079】
また、異物受容部29の内部に仕切板42を設けることにより、異物受容部29の内部空間を複数の空間に区画してもよい。このとき、仕切板42は、第2筒状部26の長手軸に垂直方向に設けられる。これにより、仕切板42は、異物受容部29の内部空間を、殺虫及び殺菌装置1の延在方向に区画できる。そのため、区画された内部空間ごとに、例えば温度、風量などの乾燥条件を変更することができる。例えば、異物受容部29の内部空間を2つの空間に区画する場合には、第2筒状部26の一端部側の異物受容部29の内部空間には、比較的温度が高く、かつ、多量の風を送風することができる。一方で、第2筒状部26の他端部側の異物受容部29の内部空間には、比較的温度が低く、かつ、少量の風を送風することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、ブロワを例に送風部28を説明したが、これに限定されない。例えば、送風部28は、回転軸の周方向に、環状かつ等間隔に配設された複数の羽根車を備える部材であってもよい。送風部28に設けられる羽根車は、図示しない駆動源から駆動力を与えられることにより、回転軸を中心として回転可能である。
【0081】
また、異物受容部29の内部空間を複数の空間に区画する場合には、送風部28も区画された空間に対応する個数、設けることができる。例えば、
図10に示すように、異物受容部29の内部空間を2つの空間に区画する場合には、第2筒状部26の一端部側の異物受容部29の内部空間には、60℃以上80℃以下の風の温度、かつ、70m
3/min以上90m
3/min以下の風量で送風することが好ましい。一方で、第2筒状部26の他端部側の異物受容部29の内部空間には、30℃以上50℃以下の風の温度、かつ、50m
3/min以上70m
3/min以下の風量で送風することが好ましい。
【0082】
このように、異物受容部29の内部空間を複数の空間に区画することにより、送風部28からの異なる温度を有する風を、異なる風量でも各空間に送風することが可能となり、第2筒状部26の他端部側に向かうにつれて効率的に冷却処理も行うことができる。
【0083】
また、本実施の形態2では、遠心分離により、穀物の表面から水及び蒸気の少なくとも1つを分離させる脱水部33を例示して説明したが、これに限定されない。充分に穀物の表面から水及び蒸気の少なくとも1つを分離させることができるのであれば、例えば、図示しない吸引機能を有する脱水部を用いてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 殺虫及び殺菌装置、10 加水部、11 筐体、12 天板部、13 側面部、14 漏斗部、15 管状部、16 バルブ、17 タンク部、18 第1ノズル、19 加熱部、20 第1筒状部、20a 胴部、20b カバー部、21 第1回転部材、22 噴射部、23 第1棒状部材、24 第1螺旋状部、25 第2ノズル、26 第2筒状部、26a 胴部、26b カバー部、27 第2回転部材、28 送風部、29 異物受容部、30 乾燥部、31 第2棒状部材、32 第2螺旋状部、33 脱水部、34 小筐体、35 大筐体、36 第3回転部材、37 第3棒状部材、38 第3螺旋状部、39 筒状部材、40 搬出部、41 羽根部、42 仕切板。