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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20250108BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20250108BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250108BHJP
   C08F 216/06 20060101ALI20250108BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/30 102
B32B27/18 Z
C08F216/06
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021509031
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010828
(87)【国際公開番号】W WO2020195896
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019063702
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】沼田 幸裕
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-176589(JP,A)
【文献】特開2015-078324(JP,A)
【文献】特開2011-031455(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02460656(EP,A1)
【文献】特開2005-288948(JP,A)
【文献】特開2016-020085(JP,A)
【文献】特開2018-176741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
C08J7/04-7/06
C08C191/00-19/44
C08F6/00-246/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の表面に無機酸化物薄膜層、ガスバリア性樹脂組成物層を積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、該ガスバリア性樹脂組成物層は、下記の化学式1で表わされる構造単位を分子内に有するポリビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)、分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂(成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、および無機層状化合物(成分D)を含有して、使用するポリマー単独の酸素ガスバリア性(d1)と添加する無機層状化合物の厚み(W)、長さ(L)、体積分率(Vf)から下記式1で計算される酸素ガスバリア性の理論値(d2)に対して55%以上の性能を発現すると共に、該ガスバリア樹脂組成物層は下記の条件1~3を満足することを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
条件1:該ガスバリア樹脂組成物層を形成するバリア性塗工剤中に含まれる前記成分Aの質量をWA、バリア性塗工剤中に含まれる前記成分Bの質量をWBとしたとき、WA/WB=20/80~70/30である。
条件2:前記成分Bの質量をWB、前記成分Cの質量をWCとしたとき、WB/WC=95/5~70/30である。
条件3:さらにバリア性塗工剤中に含まれる前記成分Dの質量をWDとしたとき、(WA+WB)/WD=95/5~70/30である。

【化1】

(ただし、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1~3の炭化水素基である。)

d2=d1+d1・L・Vf/2W ・・・ 式1
【請求項2】
前記成分Aが、下記の化学式2で表わされるラジカル重合性モノマーとビニルエステルモノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
【化2】

(R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~3の炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子または-CO-R基(式中、Rは、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。)
【請求項3】
前記成分Aが、下記の化学式3で表わされるポリビニルアルコール系共重合体樹脂である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
【化3】

(ただし、RおよびRは前記と同じ定義、Xは共重合成分として用いられたラジカル重
合性モノマーの分子構造に由来し、他の二つの構造単位に該当しない構造単位を表わす。)
l、m、nは、一分子あたりのそれぞれの構造単位の平均数を表し、l+m+n=300~4000、l/(l+m+n)=0.001~0.2、m/(l+m+n)=0.8~0.99、n/(l+m+n)=0~0.1の関係を満足する。)
【請求項4】
前記成分Bが、下記の条件4および/または条件5を満足するビニルアルコール系(共)重合体樹脂である請求項1~のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
条件4:ビニルエステルモノマーとカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である。
条件5:ビニルエステルモノマーを含むラジカル重合性モノマーの(共)重合体のケン化物のアセトアセチル化物である
【請求項5】
前記成分Bが、分子内に下記の化学式4で表わされる構造単位および/または下記の化学式5で表わされる構造単位を含むポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂である請求項1~のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【化4】

(ただし、Rは水素またはメチル基である。)
【化5】
【請求項6】
前記成分Bが、下記の化学式6で表わされるポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂である請求項1~のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【化6】

(ただし、Rは水素またはメチル基である。また、Yは共重合成分として用いられたラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、他の三つの構造単位に該当しない構造単位を表わす。
o+p+q+rは300~4000であって、(o+p)/(o+p+q+r)=0.001~0.25、q/(o+p+q+r)=0.75~0.999、r/(o+p+q+r)=0~0.2の関係を満足する。)
【請求項7】
無機酸化物薄膜層が酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む無機酸化物を少なくとも1種類以上含有してなる請求項1~のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムを使用したガスバリア性包装袋であって、袋の外側から基材フィルム層、無機酸化物薄膜層、ガスバリア性樹脂組成物層の順になるように配置されたガスバリア性包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し、水蒸気や酸素などに対するガスバリア性に優れ、菓子・生活用品・電子部品・医薬品等、高い防湿性を必要とされる用途として好適なガスバリア性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバリア性フィルムとしてプラスチックフィルムの表面にアルミニウムなどの金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの無機酸化物の薄膜を積層させたフィルムが知られていた。なかでも、酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物などの無機酸化物の薄膜を積層させたフィルムは、透明であり内容物の確認が可能であることから食品・生活用品・電子部品・医薬品等の包装用用途で広く用いられている。(例えば、特許文献1参照)
これらの無機薄膜は薄膜形成の工程でピンホールやクラック等が発生し易く、さらに加工工程において無機薄膜層がひび割れてクラックが発生し、期待通りの十分なガスバリア性は得られていない。
【0003】
また、プラスチックフィルムの表面に樹脂組成物をコートすることによるガスバリア性フィルムも多く提案されている。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと示す)やエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと示す)はそれ自体高い酸素バリア性を持ちガスバリアコート剤として実用化され、既知の技術として広く知られている(例えば、特許文献2参照)がガスバリア性は得られていない。
【0004】
そこで、蒸着フィルムのバリア性不足をガスバリア樹脂で補う目的で上記のようなビニルアルコール系樹脂、特にPVAのようなバリア樹脂を無機薄膜層上に組合せて積層した技術も広く知られている。また、上記PVAのような樹脂中に無機層状化合物を添加してさらに酸素バリア性を向上させる技術も広く知られている。無機層状化合物はガスが透過する際の障壁となる為、添加量を増加させると、その分障壁も増加する為、酸素ガスバリア性は向上する傾向にある。しかしながら、添加量が多くなるにつれ、塗液が増粘してしまい、塗工が困難になってしまう。また、塗膜の曇りが大きくなってしまったり、ラミネートした際の密着性が低くなってしまう。無機層状化合物の添加量を低くすることで上記の不具合を回避しているが、十分な酸素ガスバリア性が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許2929609号公報
【文献】特開平7-80986号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】分子材料研究所 栗田秀樹 東亞合成研究年報 TREND 2003 第6号, p.49.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、従来の蒸着フィルムでは得られなかった高度な酸素バリア性を発現して、且つ、フィルムの良好な外観性、密着性を両立して、高度な酸素ガスバリア性を必要とする菓子・生活用品・電子部品・医薬品等の包装用途に用いることができるガスバリア性積層フィルムおよびガスバリア性包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、従来技術の無機層状化合物を添加した塗工品の酸素ガスバリア性は非特許文献1に示される酸素ガスバリア性理論値から大きく乖離している事を確認した。その理由が無機層状化合物の剥離や分散が不十分である為だということが分かった。分散が不十分な理由はコート液に十分なせん断がかけられていないことが原因だと考えられ、これに対して、リバースグラビアコート法でリバースロールの回転比を1.1~2.0の範囲で塗液に高せん断をかけて塗工することで無機層状化合物の剥離や分散が向上し、酸素ガスバリア性理論値に対して55%以上の高い酸素ガスバリア性を発現してかつ、フィルムの良好な外観性、密着性が両立することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0009】
1.基材フィルムの少なくとも一方の表面に無機薄膜層、ガスバリア性樹脂組成物層を積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、該ガスバリア性樹脂組成物層は、下記の化学式1で表わされる構造単位を分子内に有するポリビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)、分子内にカルボニル基を有するポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂(成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、および無機層状化合物(成分D)を含有して、使用するポリマー単独の酸素ガスバリア性(d1)と添加する無機層状化合物の厚み(W)、長さ(L)、体積分率(Vf)から下記式1で計算される酸素ガスバリア性の理論値(d2)に対して55%以上の性能を発現することを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【0010】
【化1】
(ただし、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1~3の炭化水素基である。)
【0011】
d2=d1+d1・L・Vf/2W ・・・ 式1
【0012】
2.該ガスバリア樹脂組成物層は下記の条件1~3を満足することを特徴とした1.に記載のガスバリア性積層フィルム。
条件1:該ガスバリア樹脂組成物層を形成するバリア性塗工剤中に含まれる前記成分Aの質量をWA、バリア性塗工剤中に含まれる前記成分Bの質量をWBとしたとき、WA/WB=20/80~70/30である。
条件2:前記成分Bの質量をWB、前記成分Cの質量をWCとしたとき、WB/WC=95/5~70/30である。
条件3:さらにバリア性塗工剤中に含まれる前記成分Dの質量をWDとしたとき、(WA+WB)/WD=95/5~70/30である。
【0013】
3.前記成分Aが、下記の化学式2で表わされるラジカル重合性モノマーとビニルエステルモノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である1.または2.に記載のガスバリア性積層フィルム。
【0014】
【化2】
(R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~3の炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子または-CO-R基(式中、Rは、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。)
【0015】
4.前記成分Aが、下記の化学式3で表わされるポリビニルアルコール系共重合体樹脂である1.~3.のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【0016】
【化3】
(ただし、RおよびRは前記と同じ定義、Xは共重合成分として用いられたラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、他の二つの構造単位に該当しない構造単位を表わす。)
l、m、nは、一分子あたりのそれぞれの構造単位の平均数を表し、l+m+n=300~4000、l/(l+m+n)=0.001~0.2、m/(l+m+n)=0.8~0.99、n/(l+m+n)=0~0.1の関係を満足する。)
【0017】
5.前記成分Bが、下記の条件4および/または条件5を満足するビニルアルコール系(共)重合体樹脂である1.~4.のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
条件4:ビニルエステルモノマーとカルボニル基含有ラジカル重合性モノマーとを含むラジカル重合性モノマーの共重合体のケン化物である。
条件5:ビニルエステルモノマーを含むラジカル重合性モノマーの(共)重合体のケン化物のアセトアセチル化物である。
6.前記成分Bが、分子内に下記の化学式4で表わされる構造単位および/または下記の化学式5で表わされる構造単位を含むポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂である1.~5.のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【0018】
【化4】
(ただし、Rは水素またはメチル基である。)
【0019】
【化5】
【0020】
7.前記成分Bが、下記の化学式6で表わされるポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂である請求項1~6のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
【0021】
【化6】
(ただし、Rは水素またはメチル基である。また、Yは共重合成分として用いられたラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、他の三つの構造単位に該当しない構造単位を表わす。
o+p+q+rは300~4000であって、(o+p)/(o+p+q+r)=0.001~0.25、q/(o+p+q+r)=0.75~0.999、r/(o+p+q+r)=0~0.2の関係を満足する。)
【0022】
8.無機薄膜層が酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む無機酸化物を少なくとも1種類以上含有してなる1.~7.のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
9.前記1~8のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルムを使用したガスバリア性包装袋であって、袋の外側から基材フィルム層、無機薄膜層、ガスバリア性樹脂組成物層の順になるように配置されたガスバリア性包装袋。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、従来のものよりも酸素に対する高度なガスバリア性を有して、且つ、良好な外観性、密着性を有するガスバリア性積層フィルムおよびガスバリア性包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明は、基材フィルムの少なくとも一方の表面に無機薄膜層、ガスバリア性樹脂組成物層を積層してなるガスバリア性積層フィルムであって、該ガスバリア性樹脂組成物はビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)、分子内にカルボニル基を有するビニルアルコール系重合体樹脂(成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、無機層状化合物(成分D)および水系媒体(成分E)を含有するものからなるガスバリア性積層フィルムであるが、以下に各構成要素について詳述する。
【0025】
1.基材フィルム
本発明で用いる基材フィルムは、有機高分子からなり、溶融押出し後、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムである。有機高分子としては、ナイロン4・6、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12などで代表されるポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどで代表されるポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどで代表されるポリオレフィンの他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ乳酸などを挙げることができる。これらのうちで、ポリエステル又はポリアミドが好ましく、ポリエステルがより好ましい。
また本発明における基材フィルムは、積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の各層の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
また基材フィルムには他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。基材フィルムの製造方法については、共押出し法、キャスト法など、既存の方法を使用することができる。
【0026】
これらの中でも、好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。これらのうちで、ポリカプロアミド(ナイロン6)が好ましい。
【0027】
また、好ましいポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン‐2,6‐ナフタレートなどが用いられるが、これらのうちで、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらを主成分とする共重合体であっても良く、ポリエステル共重合体を用いる場合、そのジカルボン酸成分の主成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸又は2,6‐ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸及びピロメリット酸などの多官能カルボン酸の他にアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが用いられる。
また、グリコール成分の主成分としてはエチレングリコール又は1,4‐ブタンジオールが用いられるが、他にジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、p‐キシリレングリコールなどの芳香族グリコール、1,4‐シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、平均分子量が150~20000のポリエチレングリコールなども用いることができる。
ポリエステル中の好ましい共重合成分の比率は2%以下である。共重合成分が20%を超えるときはフィルム強度、透明性、耐熱性などが劣る場合がある。
【0028】
さらに上記の有機高分子には、公知の添加物,例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、などを添加されてもよく、基材フィルムとしての透明度は特に限定するものではないが、透明性を有する包装材料積層体として使用する場合には、50%以上の透過率をもつものが望ましい。
本発明における基材フィルムは、本発明の目的を損なわないかぎりにおいて、薄膜層を積層するに先行して、前記基材フィルムをコロナ放電処理、グロー放電、火炎処理、表面粗面化処理等の表面処理を施しても良く、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾が施されても良い。本発明におけるプラスチックフィルムは、その厚さとして1~500μmの範囲が望ましく、さらに好ましくは2~300μmの範囲で、最も好ましくは3~100μmである。
基材フィルムは、機械的強度を付与する観点より、縦方向あるいは横方向の少なくとも1方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましく、縦方向および横方向の2方向に延伸された2軸延伸フィルムであることが好ましい。2軸延伸フィルムの延伸方式は、同時2軸延伸や逐次2軸延伸等の任意の方式を採用することができる。
【0029】
2.無機薄膜層
本発明における無機薄膜層は無機酸化物薄膜が好ましい様態として挙げられる。例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなど薄膜にできるものなら特に制限はないが、好ましくは酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む無機酸化物を少なくとも1種類以上含有してなる薄膜層である。
ここでいう、酸化ケイ素及び、又は酸化アルミニウムを含む無機酸化物を少なくとも1種類以上含有してなる薄膜層とは、無機酸化物から公知の方法で形成された薄膜である。
ここでいう酸化ケイ素とはSi、SiOやSiOなどの各種珪素酸化物の混合物からなり、酸化アルミニウムとは、AlOやAlなどの各種アルミニウム酸化物の混合物からなり、各酸化物内における酸素の結合量はそれぞれの製造条件によって異なってくる。
【0030】
酸化ケイ素および酸化アルミニウムからなる二元系無機酸化物薄膜の比重を、薄膜の比重と薄膜中の酸化アルミニウムの含有量(質量%)D=0.01A+b(D:薄膜の比重、A:薄膜中の酸化アルミニウムの含有量)という関係式であらわすとき、b値が1.2~2.2であるのが好ましく、さらに好ましくは1.7~2.1である。
【0031】
また、二元系無機酸化物薄膜の比重の値が、無機酸化物薄膜中の酸化アルミニウムの含有量(質量%)との関係を、D=0.01A+b(D:薄膜の比重、A:薄膜中の酸化アルミニウムの質量%)で示すとき、b値が1.6よりも小さい領域のときには、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜の構造が粗となり、また、b値が2.2よりも大きい領域の場合、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜が硬くなる傾向にある。
【0032】
二元系無機酸化物薄膜中に占める酸化アルミニウムの含有量は、20~99質量%であるのが好ましく、20~75重量%であるのがより好ましい。
二元系無機酸化物薄膜中の酸化アルミニウムの含有量が20質量%未満になると、ガスバリア性が必ずしも十分ではなくなり、二元系無機酸化物薄膜中の酸化アルミニウム量が99質量%を超えると、蒸着膜の柔軟性が低下し、ガスバリア性積層体の曲げや寸法変化に比較的弱く、二者併用の効果が低下するといった問題が生じることがある。
【0033】
本発明において、無機薄膜層の膜厚は、通常1~50nm、好ましくは5~30nmである。膜厚が1nm未満では満足のいくガスバリア性が得られ難く、また、50nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上の効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0034】
無機薄膜層を形成する典型的な製法を酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含む無機酸化物系薄膜の形成により説明すると、蒸着法による薄膜形成法としては真空加熱蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法、あるいはCVD法(化学蒸着法)などが適宜用いられる。例えば真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてAlまたはSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物などが用いられる。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱などを採用することができ、また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気などを導入したり、オゾン添加、イオンアシストなどの手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、プラスチックフィルムにバイアスを印加したり、プラスチックフィルムを加熱したり冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。上記蒸着材料、反応ガス、基板バイアス、加熱・冷却などは、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0035】
3.ガスバリア性樹脂組成物層
本発明におけるガスバリア性樹脂組成物層は、ビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)、分子内にカルボニル基を有するビニルアルコール系重合体樹脂(成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、および無機層状化合物(成分D)を含有することが好ましい。なお、ガスバリア性樹脂組成物層を形成するためのガスバリア性塗工剤については後述する。
【0036】
<ガスバリア性樹脂、架橋剤>
従来、PVA等のビニルアルコール系樹脂はそれ自体高い酸素ガスバリア性を持っていることが知られており、酸素バリア性樹脂としては広く利用されてきた。また、無機層状化合物を添加することによりさらなるバリア性が発現することが分かっている。しかし、それらの酸素ガスバリア性の実力は非特許文献1に示されるような無機物添加時のバリア性の理論値に対して乖離がある。
気体分子が高分子フィルムを透過する現象は、溶解拡散理論で説明されており、透過係数(P)は溶解度係数(S)と拡散係数(D)の積で表わされ、P=D・Sとなる。ここで、拡散係数(D)は、ガス行路長により決定されると考えられる。
無機層状化合物はガスが透過する際の障壁となる為、十分な分散がされていれば、ガスが無機層状化合物を避けて透過していく迷路効果で、樹脂厚み以上の長いガス透過経路(ガス行路長)となり、結果として高い酸素ガスバリア性が発現するが、従来品は無機層状化合物の分散が不十分のため、理想的な酸素ガスバリア性が発現できていないと考えられる。
そこで、塗液に高いせん断をかけた状態で塗工することにより無機層状化合物が十分に分散した塗膜が形成され、非特許文献1に示されるような無機物添加時の酸素ガスバリア性の理論値に対して55%以上の高い酸素ガスバリア性が発現することを見出した。
【0037】
ここで言う酸素ガスバリア性の理論値は非特許文献1で示された下記式1で計算した。d1:ポリマー単独のガス行路長、d2:ポリマー・無機層状化合物ハイブリッドのガス行路長、W=無機層状化合物の厚み、L=無機層状化合物の長さ、Vf=無機層状化合物の体積分率。
(酸素ガスバリア性理論値計算式)
d2=d1+d1・L・Vf/2W ・・・ 式1
【0038】
また、酸素ガスバリア性とは酸素透過度(OTR)を意味する。本発明では作成したフィルムを23℃、65%RHの条件下でOTR評価を実施した。
【0039】
4.ガスバリア性塗工剤
本発明のガスバリア性樹脂組成物層を形成するためのガスバリア性塗工剤では、変性ビニルアルコール系(共)重合体樹脂(成分A、成分B)、ヒドラジン系架橋剤(成分C)、無機層状化合物(成分D)および溶媒(成分Eと記載することがある)を含有する。
【0040】
<変性ビニルアルコール系(共)重合体樹脂>
本発明のガスバリア性塗工剤で含有する、下記の化学式1で表わされる構造単位を分子内に有するビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A)について説明する。
【0041】
【化1】
(RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1~3の炭化水素基である。)
【0042】
成分Aを合成するための材料、合成方法、ケン化方法等の詳細については、特開2006-176589号公報で開示されている。そして、同公報で特に好適と記載されている材料、合成方法、ケン化方法等を用いて得られるポリビニルアルコール系共重合体樹脂は、本発明のガスバリア性塗工剤の成分Aとしても好適に利用できる。
ここで、成分Aの分子内に、前記化学式1で表わされる構造単位を導入する方法としては、ビニルエステル系モノマーと、下記化学式2で表わされるラジカル重合性モノマーとを共重合する方法が利用でき、得られた共重合体をケン化してポリビニルアルコール系共重合体樹脂とする。
【0043】
【化2】
【0044】
なお、前記化学式2において、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~3の炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子または-CO-R基(式中、Rは、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0045】
また、前記化学式2で表わされるラジカル重合性モノマーとしては、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ジアシロキシ-2-ブテン、1-ヒドロキシ-4-アシロキシ-2-ブテン、1,4-ジアシロキシ-1-メチル-2-ブテン、1,5-ジアシロキシ-2-ペンテン、1,6-ジアシロキシ-2-ヘキセン、1,6-ジアシロキシ-3-ヘキセンなどが挙げられ、なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、R1、R2がメチレン基で、R3、R4が-CO-R5で、R5がアルキル基である1,4-ジアシロキシ-2-ブテンが好ましく、そのなかでも特にR3がメチル基である1,4-ジアセトキシ-2-ブテンがより好ましい。
以上の共重合成分と製造方法から得られるポリビニルアルコール系共重合体樹脂は、簡略的に、下記の化学式3で表わすことができる。
【0046】
【化3】
【0047】
ここで、RおよびRは式1の定義と同じである。また、Xは共重合成分として用いられたラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、他の二つの構造単位に該当しない構造単位を表わし、具体的には、式2で表わされるラジカル重合性モノマーが共重合され、ケン化された後も、RまたはRの少なくとも一つが-CO-R基である部位、ビニルエステル系モノマーが共重合された後、ケン化されなかった部位、および必要に応じて用いられるその他のラジカル重合性モノマーの共重合された部位が該当する。なお、式3は簡略的に三つの構造単位のブロック共重合体の形態を表示しているが、三つの構造単位の配列には特に制限がなく、ランダム共重合体も含むものである。
l、m、nは、一分子あたりのそれぞれの構造単位の平均数を表し、l+m+n=300~4000、l/(l+m+n)=0.001~0.2、m/(l+m+n)=0.8~0.99、n/(l+m+n)=0~0.1の関係を満足する。
この様な成分Aの市販品としては、OKS-1109、OKS-8049(日本合成化学(株)社製)等を挙げることができる。
【0048】
本発明のガスバリア性樹脂組成物層を形成するためのガスバリア性塗工剤では、分子内にカルボニル基を有するビニルアルコール系(共)重合体樹脂(以下、成分Bと記載することがある)を含有する。なお、「(共)重合」という言葉には、一種類のラジカル重合性モノマーを利用する単独重合と、二種類以上のラジカル重合性モノマーを利用する共重合の両方を含み、「(共)重合体樹脂」という言葉には、一種類のラジカル重合性モノマーを単独重合して得られる単独重合体樹脂と、二種類以上のラジカル重合性モノマーを共重合して得られる共重合体樹脂の両方を含む。
まず、成分Bの分子内にカルボニル基を導入する方法としては、(1)ビニルエステル系モノマーと、分子内にカルボニル基を有し、ケン化によりポリビニルアルコール系共重合体の分子からカルボニル基が除去されることのないカルボニル基含有モノマーとを共重合する方法、(2)ビニルエステル系モノマーを含む重合成分を重合した後、ケン化により水酸基を生成させ、さらに水酸基をアセチル化する方法、等が利用できる。
【0049】
具体的に、前記(1)のビニルエステル系モノマーとしては、前記に挙げたものがそのまま利用できる。また、カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、ビニルケトン類、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等を挙げることができ、好ましくは、ジアセトン(メタ)アクリルアミドである。
前記のビニルエステル系モノマーと、カルボニル基含有モノマーと、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲でその他のラジカル重合性モノマーとを共重合する方法としては、通常の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の方法が特に制限なく利用できる。この方法によれば、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミドを共重合成分として利用した場合、成分Bとして、ポリビニルアルコール系共重合体樹脂の分子内に下記の化学式4で表わされる構造単位を導入することができる。
【0050】
【化4】
(ただし、Rは水素またはメチル基である)
【0051】
さらに、先に、ポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂を合成した後、分子内の水酸基に対するアセトアセチル化によりカルボニル基を導入する方法も利用できる。
具体的には、合成したポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂に対して、ガス状または液状のジケテンを直接反応させる方法、酢酸等の有機酸を予め吸着吸蔵させた後、これに不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを反応させる方法、あるいは有機酸とジケテンの混合物を噴霧して反応させる方法等により、ジケテンを反応させ(反応生成工程)、その後、炭素数1~3のアルコールを用いて未反応のジケテンを洗浄除去し(洗浄工程)、ついで所定の条件にて乾燥させる(乾燥工程)ことにより製造することができる。
この方法によれば、成分Bとして、ポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂の分子内に下記の化学式5で表わされる構造単位を導入することができる。
【0052】
【化5】
【0053】
以上の共重合成分と製造方法から得られるポリビニルアルコール系重合体樹脂は、簡略的に、下記の化学式6で表わすことができる。
【0054】
【化6】
【0055】
は水素またはメチル基である。また、Yは共重合成分として用いられたラジカル重合性モノマーの分子構造に由来し、他の三つの構造単位に該当しない構造単位を表わし、具体的には、ビニルエステル系モノマーが共重合された後、ケン化されなかった部位、および必要に応じて用いられるその他のラジカル重合性モノマーの共重合された部位が該当する。なお、化学式6は簡略的に四つの構造単位のブロック共重合体の形態を表示しているが、四つの構造単位の配列には特に制限がなく、ランダム共重合体も含むものである。
o+p+q+rは300~4000であって、(o+p)/(o+p+q+r)=0.001~0.25、q/(o+p+q+r)=0.75~0.999、r/(o+p+q+r)=0~0.2の関係を満足する。
【0056】
<ヒドラジン系架橋剤>
本発明のガスバリア性塗工剤で含有するヒドラジン系架橋剤(成分C)は、分子中に2個以上のヒドラジン残基を有する化合物であり、好ましくは下記の化学式7で示されるアルキレンジヒドラジン、あるいは、飽和脂肪族二塩基酸、不飽和二塩基酸のジヒドラジド化合物等が使用できる。
【0057】
【化7】
式中、Zは1~8個の炭素を有するアルキレン基、あるいは1~10個の炭素を有する飽和または不飽和二塩基酸の残基を表す。
【0058】
具体的に、アルキレンジヒドラジンとして、メチレンジヒドラジン、エチレンジヒドラジン、プロピレンジヒドラジン、ブチレンジヒドラジン等を挙げる事ができる。また、飽和脂肪族二塩基酸のジヒドラジド化合物として、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等を挙げる事ができ、更に不飽和二塩基酸のジヒドラジド化合物として、フタル酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等を挙げる事ができる。
【0059】
<無機層状化合物>
本発明のガスバリア性塗工剤で含有する無機層状化合物(成分D)としては、層間にカチオン性の金属原子や無機の原子団を有し、後記する溶媒により、または別途、膨潤・へき開処理する際の溶媒により、当該金属原子や無機の原子団がイオン化して溶媒中に溶出することで、へき開する性質を利用する。
成分Dは、厚み0.5~3nm程度、幅100nm~数μm程度の薄膜状の層が多数積層された構造からなり、その層は、一層でも高いガスバリア能力を有する。したがって、ガスバリア性塗工剤中の成分Dの含有量が同じであっても、よりへき開の度合いが進んだ系の方が形成される塗工皮膜のガスバリア性は高くなる。さらに、塗工皮膜に伸びや剥離の応力がかかったときに、よりへき開の度合いが進んだ系では、無機層状化合物の未へき開の部位の層間剥離に起因する破壊強度の低下を抑制できる。この様に、成分Dは、層間にあるカチオン性の金属原子等を水などでイオン化して溶媒中に溶出させることにより、簡単に一層近くまでへき開できるという点から、本発明の効果を奏する材料として極めて好適である。 これらの無機層状化合物としては、膨潤性を持つ粘土鉱物が好ましく、具体的に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を有する2層構造よりなるタイプと、シリカの4面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を両側から挟んだ3層構造よりなるタイプに分類される。前者としてはカオリナイト族、ジャモン石群に属するアンチゴライト族等を挙げることができ、後者としては層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
具体的には、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができ、これらは天然物であっても合成物であってもよい。また鱗片状シリカ等も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、塗工剤として使用した場合のガスバリア性能、塗工適性が優れるという点から、モンモリロナイトの使用が好ましい。
【0060】
<溶媒>
本発明のガスバリア性塗工剤で含有する溶媒としては、前記のポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂を溶解することが可能な水性、非水性のどちらの溶媒でも使用できる。水性溶媒としては、水を主たる成分として、必要に応じて水溶性の有機溶剤を併用することができる。ここで、併用可能な水溶性の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとその誘導体、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が例示できる。この様な有機溶剤を利用すると、成分Aや成分Bの溶解性の向上や、ガスバリア性塗工剤の乾燥性および基材フィルムに対する湿潤性の調整等を図ることができる。
また、必要であれば成分Aと成分Bを溶解する有機溶剤を用いて非水性溶媒とすることも可能である。この場合、別途、水中で成分Dの層間にあるカチオン性の金属原子等をイオン化して溶出させ、膨潤・へき開させる分散処理を行った後、水を他の有機溶剤に置換することにより、ガスバリア性塗工剤として完全な非水性溶媒系を実現することができる。非水性溶媒系では、水に対する溶解度の低い有機溶剤でも利用できるようになるため、上記のガスバリア性塗工剤の乾燥性や基材フィルムに対する湿潤性の調整がより幅広く行える他、添加剤や適応できる基材フィルムの種類も多くできる等の可能性がある。
非水性溶媒系で利用可能な有機溶剤としては、上記に挙げた有機溶剤の他、酢酸プロピルや酢酸ブチル等のより遅乾性の酢酸エステル系溶剤、等が挙げられる。
【0061】
<添加剤>
本発明のガスバリア性塗工剤には、レベリング剤、消泡剤、ワックス・シリカ等のブロッキング防止剤、金属せっけん、アマイド等の離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等、必要に応じて加えることができる。
【0062】
<含有比>
本発明のガスバリア性塗工剤で用いられるこれらの材料の中でも、成分Aと成分Bとの含有比率については、優れたガスバリア性を有し、高い皮膜凝集力が維持できるという観点から、バリア性塗工剤中に含まれる前記成分Aの質量をWA、バリア性塗工剤中に含まれる前記成分Bの質量をWBとしたとき、WA/WB=20/80~70/30であること好ましい。
ここで、WA/WB=20/80~70/30の範囲よりWAの含有比率が高くなると、成分Cと架橋するカルボニル基の濃度が低くなるため、ガスバリア性塗工剤を塗工して得られる皮膜の凝集力や、基材とするプラスチックフィルムに対する接着性が低下する可能性がある。また、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、十分なラミネート強度が得られなくなる可能性がある。一方、WAの含有比率が低くなると、薄膜において良好なガスバリア性、特に良好な水蒸気バリア性が得られなくなる可能性がある。
【0063】
また、成分Cの含有比率については、WB/WC=95/5~70/30であることが好ましい。
ここで、WB/WC=95/5~70/30の範囲よりWBの含有比率が高くなると、ガスバリア性塗工剤を塗工して得られる皮膜の凝集力や、基材とするプラスチックフィルムに対する接着性が低下する可能性がある。また、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、十分なラミネート強度が得られなくなる可能性がある。一方、WBの含有比率が低くなることは、成分Cの含有比率が大過剰であることを意味し、薄膜において良好なガスバリア性、特に良好な水蒸気バリア性が得られなくなる可能性がある。
また、成分Dの含有比率については、バリア性塗工剤中に含まれる前記成分Dの質量をW
Dとしたとき、(WA+WB)/WD=95/5~70/30であることが好ましい。
ここで、(WA+WB)/WD=95/5~70/30の範囲より(WA+WB)の含有比率が高くなると、薄膜において良好なガスバリア性が得られなくなる可能性がある。一方、(WA+WB)の含有比率が低くなると、ガスバリア性塗工剤を塗工して得られる皮膜の凝集力が低下し、基材とするプラスチックフィルムに対する接着性が低下し、ラミネート複合フィルムに利用されたときに、十分なラミネート強度が得られなくなる可能性がある。
【0064】
<塗液の攪拌方法>
塗液の攪拌方法としては一般的なプロペラ式の攪拌機を用いることができる。具体的には調液タンクに上記溶媒とガスバリア性樹脂組成物の各材料を入れて、プロペラ式の攪拌機を用いて十分に撹拌させて溶媒にガスバリア性樹脂組成物の各材料を溶解、分散させる。
【0065】
(2)積層方法
ガスバリア性樹脂組成物層を無機薄膜層上に積層させる方法としては、ガスバリア性樹脂組成物の各材料を溶媒に溶解・分散させた塗工液を無機薄膜層を有するフィルムの無機薄膜層上に塗工する方法、ガスバリア性樹脂組成物を溶融して無機薄膜層を有するフィルムの無機薄膜層上に押し出してラミネートする方法、ガスバリア性樹脂組成物のフィルムを別途作成してこれを無機薄膜層を有するフィルムの無機薄膜層上に接着剤等で貼り合わせる方法が挙げられる。中でも、塗工による方法が簡便性、生産性等の面から好ましい。
【0066】
以下、好ましい積層方法として、ガスバリア性樹脂組成物の各材料を溶媒に溶解・分散させた塗工液を無機薄膜層を有するフィルムの無機薄膜層上に塗工する方法について記載する。
ガスバリア性樹脂組成物の溶媒(溶剤)としては、ビニルアルコール系重合体樹脂を溶解し得る水性及び非水性のどちらの溶剤でも使用できるが、水もしくは水とイソプロピルアルコールとの混合溶剤を用いることが好ましい。塗工の方式は、塗工中の塗液へ高せん断がかけられる塗工方法であれば、特に限定されないが、リバースグラビアコーターでリバースロールのギア比1.1~2.0の範囲での塗工が好ましい。ギア比が1.1を下回ると塗液の供給が不安定となり、塗工ムラが生じて塗膜が安定しないため、高いバリア性が発現できない。また、ギア比が2.0を上回ると塗工する蒸着フィルムの無機蒸着層に傷が入ってしまい、蒸着層のバリア性が損なわれてしまい、高いバリア性が発現できない。
【0067】
(3)ガスバリア性樹脂組成物層の厚み
ガスバリア性樹脂組成物層の厚み(μm)は好ましくは0.01~0.70μmであり、より好ましくは0.05~0.50μmであり、特に好ましくは0.08~0.50μmである。0.01μm未満であるとガスバリア性が低下し、0.70μmを超えるとコート時に乾燥不足が生じて、作成したロールでブロッキングなどの不具合が生じたり、ガスバリア性樹脂組成物層が脆くなりラミネート強度が低下する恐れがある。
【0068】
(4)ガスバリア性樹脂組成物層の乾燥条件
ガスバリア性樹脂組成物の塗工液のコート後の乾燥温度は好ましくは100~200℃であり、より好ましくは130~200℃であり、さらに好ましくは150~200℃である。100℃未満であるとコート層の乾燥不足が生じて、作成したロールでブロッキングなどの不具合が生じる。またガスバリア性樹脂組成物層が脆くなりラミネート強度が低下する。
一方、200℃を超えるとフィルムに熱がかかりすぎてしまい基材フィルムが脆くなったり、収縮してしまい加工性が悪くなってしまう。
【0069】
(5)ガスバリア性積層フィルムの積層順
該ガスバリア性積層フィルムの防湿性を発現する為には、高湿側から基材フィルム層、無機薄膜層、ガスバリア性樹脂組成物層の順に配置することが必要である。湿度依存性の大きいガスバリア性樹脂組成物層よりも高湿側に無機薄膜層を配置することでガスバリア性樹脂組成物層が高湿度下になることによるバリア性の低下を防ぐことができる。
【0070】
なお、この時のガスバリア性測定方法は以下の通りである。
(6)水蒸気透過度
上記の無機薄膜層およびガスバリア性樹脂組成物層を積層したガスバリア性積層フィルムを水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN?W3/33MG MOCON社製)にガスバリア性積層フィルムの基材フィルムの面が測定機の調湿ガスが流れる側になるように設置し、JIS K7126 B法に準じて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、ガスバリア性積層フィルムへの調湿は、フィルム基材側からガスバリア性樹脂組成物層側へ水蒸気が透過する方向とし、4時間実施した。
【0071】
本発明のガスバリア性積層フィルムは食品包装用途を初め、様々な用途に用いることができ、それに合わせてさらに、ヒートシール層、印刷層、他の樹脂フィルム、これらの層を接着するための接着剤層等、他の素材と積層することが出来る。積層の際には、本発明のガスバリア性積層フィルムの上に直接溶融押し出しラミネートする方法、コーティングによる方法、フィルム同士を直接または接着剤を介してラミネートする方法など、公知の手段を採用することが出来る。
また、高いガスバリア性が求められる場合には、本発明のガスバリア性積層フィルムを2枚以上積層することもできる。また、ガスバリア性樹脂組成物層の上にさらに無機蒸着層を設けたり、さらにその上にガスバリア性樹脂組成物層を設けるなど、交互に積層しても良い。さらには、基材フィルムの両面に無機蒸着層とガスバリア性樹脂組成物層および必要に応じてアンカー層等を設けても良い。
例えば、防湿性を必要とする菓子・生活用品・電子部品・医薬品等の蓋材や包装袋として用いる場合には、ガスバリア性樹脂組成物層の上にポリエチレンやポリプロピレンなどのヒートシール層を設けることが好ましい。また、ガスバリア性樹脂層とヒートシール層の間に他の樹脂フィルムを積層しても良い。他の樹脂フィルムとしては基材フィルムとして挙げたような樹脂フィルムを用いることができる。これらの積層の際には接着剤を介して積層することができる。
特に容器や包装袋の内部に乾燥剤などの水分を吸着する材料を設置するのが好ましい使用形態である。
【0072】
本発明のガスバリア性積層フィルムは高湿となる外側から順に基材フィルム、無機薄膜層、ガスバリア性樹脂組成物層の配置となるような、内容物を外部の湿気から保護する包装袋に使用するのが特に有効である。
【実施例
【0073】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0074】
(1)酸素ガスバリア性理論値に対する実力値評価
使用したガスバリア性樹脂組成物層と添加している無機層状化合物の添加量、サイズを元に、下式1を用いて酸素ガスバリア性理論値を計算した。
d2=d1+d1・L・Vf/2W ・・・ 式1
【0075】
例えば実施例1の場合はポリマー単独のOTRが4.94mL/m2・d・MPaであることから、これをポリマー単独のガス行路長としてd1=4.94、添加している無機層状化合物の平均厚みが1.2nmであることからW=1.2、平均粒子計が560nmであることからL=560、ポリマーに対して無機層状化合物の体積分率が0.071であることからVf=0.071として、上記式1へ数値を入れて、d1を求めるとd2=86.7となる。無機層状化合物添加時のガス行路長の理論値としては86.7となり、ポリマー単独のガス行路長の17.55倍長くなる。ガス透過行路長が17.55倍長くなるということはOTRとしては1/17.55になる為、ポリマー単独のOTRが4.94mL/m2・d・MPaを17.55で割った数値がOTRの理論値となる。ここではOTR理論値は0.3mL/m2・d・MPaと算出した。
次に酸素ガスバリアの実測値は下記にある方法で測定した。測定値は0.40mL/m2・d・MPaであった。これらの数値を元に酸素ガスバリア理論値に対する実力値(ガスバリア理論値/ガスバリア実測値×100)を計算すると75%となる。実施例2~7、比較例1~6、8~13も同様の方法で評価をした。なお、比較例7は無機層状化合物を添加していないため、理論値計算はしていない。なお、上記の酸素ガスバリア理論値に対する実力値(%)は、小数点以下1桁の値を四捨五入して整数値(%)として求めた。
【0076】
(2)ガスバリア性積層フィルムの水蒸気透過度
実施例・比較例で得られたガスバリア性積層フィルムを水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN-W3/33MG MOCON社製)にガスバリア性積層フィルムの基材フィルムの面が測定機の調湿ガスが流れる側になるように設置し、JIS K7126 B法に準じて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、ガスバリア性積層フィルムへの調湿は、フィルム基材層側からガスバリア性樹脂組成物層側に水蒸気が透過する方向とし、4時間実施した。
【0077】
(3)ガスバリア性積層フィルムの酸素透過度(OTR)
実施例・比較例で得られたガスバリア性積層フィルムを酸素透過度測定装置(OX-TRAN 2/20 MOCON社製)にガスバリア性積層フィルムの基材フィルムの面が測定機の酸素ガスが流れる側になるように設置し、JIS K7126-2法に準じて、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で酸素透過度を測定した。なお、ガスバリア性積層フィルムへの調湿は、ガスバリア性コート層側、フィルム基材側いずれも湿度65%RHにして、4時間実施した。
【0078】
(ガスバリア性樹脂組成物層を形成するための塗工液の調製)
以下に実施例、比較例で使用するガスバリア性樹脂組成物層を形成するための塗工液の調製について説明する。
【0079】
<前記式1の構造単位を分子内に有するビニルアルコール系共重合体樹脂(成分A 以下、成分Aと略記)、分子内にカルボニル基を有するビニルアルコール系重合体樹脂(成分B 以下、成分Bと略記)、無機層状化合物(以下、成分Dと略記)の混合溶液(以下、混合溶液と略記)>
精製水/IPA(イソプロパノール)を主とする水系混合溶媒に、成分A/成分B/成分Dを混合し、固形分濃度4.2質量%となるように調合。
【0080】
以下に実施例で使用する混合溶液について記載する。
成分Aは式1で表される構造単位を分子内に有するポリビニルアルコール系共重合体樹脂を示し、成分Bは式6で表されるポリビニルアルコール系(共)重合体樹脂を示し、成分Dはモンモリロナイトを示す。
<混合溶液1>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=34/51/15の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液2>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=17/68/15の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液3>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=25.5/59.5/15の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液4>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=42.5/42.5/15の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液5>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=59.5/25.5/15の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液6>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=0/85/15の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液7>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=40/60/0の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液8>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=38/57/5の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液9>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=28/42/30の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液10>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=24/36/40の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
<混合溶液11>
混合溶液の固形分の組成比を成分A/成分B/成分D=68/17/15の割合で混合し、固形分濃度6.5質量%となるように調合。
【0081】
<架橋剤>
ヒドラジン系架橋剤(成分C)(サカタインクス社、商品名 エコステージ架橋剤S、固形分約5%)
【0082】
<混合溶媒A>
精製水とIPAを1:1の割合で混合した。
【0083】
<実施例1~3、および比較例1~5のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液1を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の実施例1~3、および比較例1~3のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0084】
<実施例4のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液2を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の実施例4のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0085】
<実施例5のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液3を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の実施例5のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0086】
<実施例6のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液4を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の実施例6のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0087】
<実施例7のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液5を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の実施例7のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0088】
<比較例6のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液6を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例6のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0089】
<比較例7のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液7を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例7のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0090】
<比較例8のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液8を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例8のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0091】
<比較例9のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液9を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例9のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0092】
<比較例10のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A34.5質量部に対して、混合溶液10を61.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を4.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例10のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0093】
<比較例11のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A35.0質量部に対して、混合溶液1を63.4質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を1.6質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例11のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0094】
<比較例12のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合¥溶媒A31.5質量部に対して、混合溶液1を51.5質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を17.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例10のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0095】
<比較例13のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の調製>
混合溶媒A35.2質量部に対して、混合溶液11を63.8質量部添加し、充分に攪拌混合した後、エコステージ架橋剤を1.0質量部添加し、15分程度、攪拌混合して固形分約4.2%の比較例10のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を得た。
【0096】
(実施例1のガスバリア性積層フィルム)
酸化アルミニウムの無機薄膜層10nmを形成した厚み12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの無機薄膜層上に、上記ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液をリバースグラビアコート法によって塗布し、120℃で乾燥させガスバリア性樹脂層を形成し、ガスバリア性積層フィルムを作製した。
リバースグラビア塗工時のリバースロールの回転比は1.1とした。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0097】
(実施例2のガスバリア性積層フィルム)
リバースグラビア塗工時のリバースロールの回転比を1.5とした以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0098】
(実施例3のガスバリア性積層フィルム)
リバースグラビア塗工時のリバースロールの回転比を2.0とした以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0099】
(実施例4のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記実施例4のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0100】
(実施例5のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記実施例5のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0101】
(実施例6のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記実施例6のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0102】
(実施例7のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記実施例7のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0103】
(比較例1のガスバリア性積層フィルム)
上記ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の塗工方法をダイレクトグラビアコート法に変更した以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0104】
(比較例2のガスバリア性積層フィルム)
上記ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の撹拌時間をさらに45分長く実施した以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0105】
(比較例3のガスバリア性積層フィルム)
上記ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液の塗工方法をバーコート法に変更し、塗布前の塗工液をホモジナイザーによる高速撹拌により得た以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0106】
(比較例4のガスバリア性積層フィルム)
リバースグラビア塗工時のリバースロールの回転比を0.5とした以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0107】
(比較例5のガスバリア性積層フィルム)
リバースグラビア塗工時のリバースロールの回転比を2.5とした以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0108】
(比較例6のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例6のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て実施例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0109】
(比較例7のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例7のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0110】
(比較例8のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例8のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0111】
(比較例9のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例9のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0112】
(比較例10のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例10のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0113】
(比較例11のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例11のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0114】
(比較例12のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例12のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0115】
(比較例13のガスバリア性積層フィルム)
塗工液に上記比較例13のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液を用いた以外は全て比較例1と同じ方法でガスバリア性積層フィルムを作成した。
なお、ガスバリア性樹脂層の厚みは乾燥後、約0.3μmであった。
【0116】
上記結果を表1及び表2に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
上記結果から、塗工方式をリバースグラビア塗工へ変更した実施例1~7、比較例6のOTRのガスバリア性理論値に対する実力値評価はいずれも55%以上となった。塗工時にコート液に高いせん断がかかったことにより、無機層状化合物が十分分散して、理想的な迷路効果が発現したものだと考える。 比較例6はWVTRについて不十分であった。これは使用した塗工液の樹脂成分に水蒸気バリア性に寄与する成分Aが全く入っていないことが理由であると考えられる。
【0120】
比較例1~5、8~10のOTRのガスバリア性理論値に対する実力値評価はいずれも30%未満となった。この理由について、比較例1~3、8~10は塗工方式がリバースグラビアではなくダイレクトグラビアやバーコートによるもので塗工時のコート液に高いせん断がかけられなかった為、無機層状化合物の分散が不十分であったことが原因だと考える。比較例4はリバースロールの回転比が低すぎる為に塗液の供給が不安定となり、塗工ムラが生じて、塗膜が安定しなかったことが原因だと考える。比較例5はリバースロールの回転比が高すぎる為に塗工する蒸着フィルムの蒸着層に傷が入ってしまったことが原因だと考える。比較例7はOTR、WVTRともに不十分であった。バリア性に寄与する成分Dが添加されていないことがないことが理由であると考えられる。比較例10はフィルム外観の悪化や密着性の低下を確認した。成分Dの添加量が多すぎることで塗液が増粘して不安定になり、塗工が困難になったことでフィルムの曇りが発生したものだと考えられる。また、皮膜の凝集力が低下することで、密着性の低下がおきたものだと考えられる。比較例11は密着性の低下を確認した。架橋部分である成分Bに対して架橋剤である成分C量が少なく、未架橋部が残ることが原因だと考えられる。また、比較例12はOTR、WVTRともに不十分であった。架橋剤である成分Cが過剰量あり、バリア性に寄与する成分A、Bの量が少なくなった為だと考えられる。比較例13は密着性の低下を確認した。架橋部分である成分Bの量が少ない為、架橋部分が少なくなったことが原因だと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明により、従来のものよりも酸素に対する高度なガスバリア性を有するガスバリア性積層フィルムおよびガスバリア性包装袋を提供することができる。本発明のガスバリア性フィルムは、高度な酸素バリア性を必要とする菓子・生活用品・電子部品・医薬品等の包装用途や真空断熱材などの工業用途にも広く用いることができる。