(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】充填用ノズルの支持構造
(51)【国際特許分類】
F16L 27/093 20060101AFI20250108BHJP
B67D 7/42 20100101ALI20250108BHJP
【FI】
F16L27/093
B67D7/42 Z
(21)【出願番号】P 2023057010
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 達也
(72)【発明者】
【氏名】松本 明寛
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏彦
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-084891(JP,A)
【文献】特開2020-001818(JP,A)
【文献】特開2004-067179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/093
B67D 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填ノズル
(1)とディスペンサー
(10)のガス供給配管とを接続する充填ホース
(2)にスイベルジョイント
(3)を配置し、
前記スイベルジョイント
(3)は、充填ノズル
(1)側に連通するノズル側部材
(3B)とディスペンサー
(10
)側に連通するディスペンサー側部材
(3A)を有し、ノズル側部材
(3B)とディスペンサー側部材
(3A)は相対的に回転可能であり、ノズル側部材
(3B)に形成された高圧ガス流路
(3AR)とディスペンサー側部材
(3A)に形成された高圧ガス流路
(3BR)は相互に直交して
おり、
前記スイベルジョイント(3)に接続された充填ホース(2)の端部は安全継手(4)に接続されており、前記安全継手(4)はノズル側部材(4A)とディスペンサー側部材(4B)を有し、ノズル側部材(4A)内の流路とディスペンサー側部材(4B)内の流路が直交しており、
前記安全継手(4)のディスペンサー側部材(4B)は軸受としての機能を有するピローブロック(4C)と結合しており、前記ピローブロック(4C)はディスペンサーの部材(10G)に固定されて充填ホース(2)がディスペンサーの部材(10G)に対して回転(R5)することを許容し、充填ホース(2)が撓み弾性反撥力(FC)が発生してもピローブロック(4C)の回転により充填ホース(2)を回動せしめして、前記弾性反撥力(FC)を逃がす機能を有していることを特徴とする支持構造。
【請求項2】
前記安全継手のディスペンサー側部材は第2のスイベルジョイントに接続している請求項
1の支持構造。
【請求項3】
充填ノズルに介装されたスイベルジョイントに、第2のスイベルジョイントを接続する請求項
1の支持構造。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れか1項の支持構造を有し、配管系の折り曲げ部には、内部に流路が形成された二つの部材を有し、
前記二つの部材の流路の中心軸同士が直交しているスイベルジョイントが配置されていることを特徴とするディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池車輌(FCV)に水素を供給する水素供給装置の様に、高圧ガスを充填する装置に関する。より詳細には、本発明は、高圧ガスを充填する充填装置の充填用ホースと充填用ノズルを支持する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水素充填装置(水素ディスペンサー)の様に高圧ガスを取り扱う充填装置における充填用ホースは、油のような液体燃料供給用の充填ホースに比較して、剛性が高く、操作性が良くない場合が多い。
そして、剛性が高い充填用ホースを撓ませて充填用ノズルをFCVのレセプタクルに結合した場合、充填用ホースの弾性反撥力が充填用ノズルに作用して、水素充填後にFCVのレセプタクルから充填用ノズルを外すことが困難になる場合がある。
すなわち、高圧ガス用の充填装置においては、充填用ホースの剛性が高いことに起因して、操作性が悪いという問題と、充填後にレセプタクルから充填用ノズルを外すことが困難になるという問題が存在する。そして、係る問題に対する有効な解決策は、未だに提案されていない。
【0003】
本出願人は、給油所におけるガンタイプの給油ノズルと給油ホースとの接続部にスイベルジョイントを設けた技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。係る技術(特許文献1)は有用ではあるが、給油装置と水素ディスペンサーでは充填ホースの剛性が全く異なり、作動流体の温度範囲と圧力範囲が大きく相違する。そのため、水素ディスペンサーの充填ノズルと充填ホースの接続部に、特許文献1と同様なスイベルジョイントを設けたのみでは、水素ディスペンサーの充填ホースの剛性による操作の困難性は解消せず、水素充填後にレセプタクルから充填ノズルを外すことが困難になるという問題を解消することは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、充填ホースの剛性による操作の困難性を解消することが出来て、充填後にレセプタクルから充填ノズルを外すことが困難になることを防止出来る支持構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の支持構造(100)は、充填ノズル(1)とディスペンサー(10)のガス供給配管とを接続する充填ホース(2)にスイベルジョイント(3)を配置し、
前記スイベルジョイント(3)は、充填ノズル(1)側に連通するノズル側部材(3B)とディスペンサー(10)側に連通するディスペンサー側部材(3A)を有し、ノズル側部材(3B)とディスペンサー側部材(3A)は相対的に回転可能であり、ノズル側部材(3B)に形成された高圧ガス流路(3AR)とディスペンサー側部材(3A)に形成された高圧ガス流路(3BR)は相互に直交しており、
前記スイベルジョイント(3)に接続された充填ホース(2)の端部は安全継手(4)に接続されており、前記安全継手(4)はノズル側部材(4A)とディスペンサー側部材(4B)を有し、ノズル側部材(4A)内の流路とディスペンサー側部材(4B)内の流路が直交しており、
前記安全継手(4)のディスペンサー側部材(4B)は軸受としての機能を有するピローブロック(4C)と結合しており、前記ピローブロック(4C)はディスペンサーの部材(10G)に固定されて充填ホース(2)がディスペンサーの部材(10G)に対して回転(R5)することを許容し、充填ホース(2)が撓み弾性反撥力(FC)が発生してもピローブロック(4C)の回転により充填ホース(2)を回動せしめして、前記弾性反撥力(FC)を逃がす機能を有していることを特徴としている。
なお、本明細書において、「充填ホース」という文言は、充填配管を包含する意味で用いられる場合がある。
【0008】
ここで、前記安全継手(4)のディスペンサー側部材(4B)は(配管6を介して、或いは、配管を介さずに直接)第2のスイベルジョイント(3-1)に接続しているのが好ましい(支持構造100-2、100-3)。
或いは、充填ノズル(1)に介装されたスイベルジョイント(3:第1のスイベルジョイント)に、第2のスイベルジョイント(3-1)を接続するのが好ましい(支持構造100-4)。
【0009】
ここで、本発明のディスペンサー(10)は、上述した支持構造(100~100-4:請求項1~請求項4の何れかの支持構造)を有し、配管系の折り曲げ部(エルボ部)には、内部に流路が形成された二つの部材を有し、当該二つの部材の流路の中心軸同士が直交しているスイベルジョイント(3、3-1)が配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成を具備する本発明によれば、充填ノズル(1)とディスペンサー(10)のガス供給配管(例えば水素供給配管)とを接続する充填ホース(2)にスイベルジョイント(3:第1のスイベルジョイント)を配置し、当該スイベルジョイント(3)は、充填ノズル(1)側に連通するノズル側部材とディスペンサー(10)側に連通するディスペンサー側部材を有し、ノズル側部材とディスペンサー側部材は相対的に回転可能であり、ノズル側部材に形成された高圧ガス流路(3AR)とディスペンサー側部材に形成された高圧ガス流路(3BR)は相互に直交しているので、充填ノズル(1)近傍に当該スイベルジョイント(3)を設ければ、例えばFCVのレセプタクルに充填ノズル(1)を結合された際に、充填ホース(2)が急角度で折れ曲がってしまうことは無い。そのため、充填ノズル(1)近傍の充填ホース(2)の弾性反撥力がレセプタクルと充填ノズル(1)との結合部に作用して、充填ノズル(1)がレセプタクルから外れないという事態を防止出来る。
ここで、ノズル側部材に形成された流路とディスペンサー側部材に形成された流路が直交するスイベルジョイントは、ガソリン給油装置では用いられているが、水素ディスペンサーでは用いられておらず、ガソリン給油装置に比較して充填ホースの剛性が高い水素ディスペンサーにおいては、上述した作用は有用である。
【0011】
また本発明において、前記スイベルジョイント(3)に接続された充填ホース(2)の端部は安全継手(4)に接続されており、当該安全継手(4)はノズル側部材(4A)とディスペンサー側部材(4B)を有し、ノズル側部材(4A)内の流路とディスペンサー側部材(4B)内の流路が直交しており、前記安全継手(4)のディスペンサー側部材(4B)は軸受(4C:軸受としての機能を有するピローブロック)と結合していれば、充填ホース(2)が撓み、弾性反撥力(FC)が発生しても、軸受(4C)の回転により充填ホース(2)が回動して、当該弾性反撥力(FC)を逃がすことが出来る。
そのため、充填ホース(2)が撓むことにより生じる弾性反撥力(FC)がレセプタクルと充填ノズル(1)との結合部に作用することを防止して、充填ノズル(1)がレセプタクルから外れないという事態を防止することが出来る。
【0012】
さらに本発明において、前記安全継手(4)のディスペンサー側部材(4B)が(配管6を介して、或いは、配管を介さずに直接)第2のスイベルジョイント(3-1)に接続しているか、或いは、充填ノズル(1)に介装されたスイベルジョイント(3:第1のスイベルジョイント)に、第2のスイベルジョイント(3-1)が接続されていれば、充填ホース(2)は3方向に回転することになるので、充填ホース(2)の何れの方向に対する弾性反撥力或いは張力は、3方向の回転の何れかにより吸収される。
そのため、充填ホース(2)を操作する際に、その弾性反撥力が吸収されるので、取り扱いが容易になり、操作性が向上する。
【0013】
本発明によれば、上述した支持構造(100~100-4:請求項1~請求項4の何れかの支持構造)において、配管における機器と配管との接続箇所が緩んだ場合に、配管を例えば熱交換器(5)に対して回転させて締め込んでも、当該回転による回転トルクはスイベルジョイントにより吸収される。そのため、配管と熱交換器(5)等の接続箇所の緩みを解消できると共に、回転トルクによるダメージは生じない。また、配管ストレスを緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の実施形態で用いられるスイベルジョイントの断面図である。
【
図3】形成された流路の中心軸が直交するタイプのスイベルジョイントを用いるメリットを示す説明図である。
【
図4】形成された流路の中心軸が同一方向に延在するジョイントのデメリットを示す説明図である。
【
図7】第3実施形態の第1変形例を示す説明図である。
【
図8】第3実施形態の第2変形例を示す説明図である。
【
図9】ディスペンサー内部の配管系を示す説明図である。
【
図10】本発明の第4実施形態の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図示の実施形態では、主として水素を供給する場合を例示して説明する。
最初に、
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1において、本発明の第1実施形態に係る支持構造は全体を符号100で示されている。支持構造100は、充填ノズル1と、図示しないディスペンサー10側(
図9参照)から水素を供給する配管である充填ホース2と、両者を介装するスイベルジョイント3を有している。
スイベルジョイント3は、その一端が充填ノズル1と接続されており、充填ノズル1を回転自在(
図1の矢印R1)に支持している。
スイベルジョイント3の他端は充填ホース2と接続されており、充填ホース2はディスペンサー10側の部材に接続されている。スイベルジョイント3はノズル側部材(
図1では符号3Bで示す部材)、ディスペンサー側部材(
図1では符号3Aで示す部材)を有している。詳細は
図2を参照して後述するが、スイベルジョイント3においては、回転可能な部材を符号3Aで示し、回転しない部材を符号3Bで示している。
図1において、符号2Aは充填ホース2側の接続部材を示す。
【0016】
第1実施形態の支持構造100によれば、高圧ガス(例えば水素ガス)を充填する際に、高圧の水素ガスが流れる方向は、水素ガスがスイベルジョイント3を通過する位置において直角に変更される。そのため、FCVのレセプタクルに充填ノズル1が結合して固定されていても、充填ノズル1近傍の領域において充填ホース2が急角度で折れ曲がることは無く、弾性反撥力が軽減される。従って、充填ノズル1近傍の領域における充填ホース2の弾性反撥力がレセプタクルと充填ノズル1との結合部に作用して、充填ノズル1がレセプタクルから外れないという事態が防止出来る。
図1において、スイベルジョイント3により、充填ホース2は紙面に垂直な方向である矢印B1方向に回動可能である。
【0017】
図1で用いられるスイベルジョイント3の横断面を示す
図2において、回転可能な部材3A(
図1ではディスペンサー側に位置する部材)はピン状部3A1とノズル接続部3A2とを備え、回転しない部材3B(
図1ではノズル側に位置する部材)は本体部3B1とホース接続部3B2とを備えている。
図2において、回転可能な部材3Aのピン状部3A1は回転しない部材3Bの本体部3B1の中空部3BRCに挿入され、回転自在に支持される。それにより回転可能な部材3Aは回転しない部材3Bにより回転自在に支持され、
図2の矢印R2、
図1の矢印R1で示す様に、相対的に回転可能である。ここで、回転可能な部材3Aの高圧ガス流路3ARと回転しない部材3Bの高圧ガス流路3BRは相互に直交している。
回転可能な部材3Aのピン状部3A1には高圧ガスの流路3ARが形成され、流路3ARは半径方向外方に延在する貫通口3AR1を介して中空部3BRCに連通している。一方、回転しない部材3Bの本体部3B1には高圧ガスの流路3BRが形成され、中空部3BRCに連通している。
ピン状部3A1は軸線方向に移動しないように後述する方法で固定されている。そのため、回転可能な部材3Aと回転しない部材3Bが相互に回転しても、回転可能な部材3Aの高圧ガス流路3ARと回転しない部材3Bの高圧ガス流路3BRは、中空部3BRCを介して常に連通している状態が保持される。
【0018】
図2において、回転可能な部材3Aのピン状部3A1は、回転しない部材3Bの本体部3B1から外れないように、或いは、抜けてしまわない様に構成されている。
回転しない部材3Bの本体部3B1における(回転可能な)部材3A取付側の中空部3B3と、(回転可能な)部材3A取付側と反対側(ノズル側とは離隔した側)の中空部3B4には、それぞれリテーナ30、31が挿入されている。リテーナ30、31は、その外周に形成された雄ネジが、それぞれネジ嵌合部32、33に螺合して、回転しない部材3Bの本体部3B1に固定されている。
回転可能な部材3Aのピン状部3A1はベアリング34、35を介してリテーナ30、31に回転自在に支持されている。
ベアリング34、35の一端部にはスナップリング36、37が配置され、回転可能な部材3Aのピン状部3A1が、回転しない部材3Bの本体部3B1或いはリテーナ30、31から抜けてしまうことを防止している。
なお、抜けるのを防止するのであればスナップリング36、37である必用はない。
また、ピン状部3A1におけるノズル接続部3A2側端部には、スラストベアリング38が配置されている。
なお、
図1~
図4では、回転可能な部材3Aは充填ホース2に接合して「ディスペンサー側部材」となっており、回転しない部材3Bは充填ノズル1と接合して「ノズル側部材」となっている。ただし、回転可能な部材3Aを充填ノズル1と接続して「ノズル側部材」とせしめ、回転しない部材3Bを充填ホース2と接合して「ディスペンサー部材」とすることも可能である。
【0019】
次に
図3、
図4を参照して、回転可能な部材3Aの高圧ガス流路3ARと回転しない部材3Bの高圧ガス流路3BRが直交するタイプのスイベルジョイント3(
図1、
図2参照)のメリットを説明する。
図3において、スイベルジョイント3の一端(回転可能な部材3A側)に接続された充填ノズル1を、FCV側のレセプタクル101と結合している。スイベルジョイント3の他端(回転しない部材3B側)は充填ホース2の一端に接続され、充填ホース2の他端はディスペンサー側部材10Gに接続されている。
ここで、スイベルジョイント3は、回転可能な部材3Aの高圧ガス流路3ARと回転しない部材3Bの高圧ガス流路3BRが直交するタイプであるため、FCVのレセプタクル101に充填ノズル1を結合した際に、充填ノズル1近傍の領域の充填ホース2が急角度で折れ曲がってしまうことは無く、充填ノズル1近傍の領域の充填ホース2には強い弾性反撥力は発生しない。そのため、充填ノズル1近傍の領域の充填ホース2には強い弾性反撥力は発生して、当該弾性反撥力がレセプタクル101と充填ノズル1との結合部に作用して、充填ノズル1がレセプタクル101から外れなくなる事態が防止される。
また、
図3において、充填ホース2が撓むと、弾性反撥力FCが作用して、充填ノズル1をレセプタクル101側に押圧する事態も想定されるが、ディスペンサー側部材10Gに充填ホース2を矢印D方向に回動する機構を設けることにより、充填ホース2を矢印D1方向に回動して、弾性反撥力FCを逃がすことが出来る。その結果、スイベルジョイント3の近傍、充填ノズル1、レセプタクル101には充填ホース2による強い弾性反撥力は作用しない。
なお、前述の充填ホース2を矢印D方向に回動する機構は、例えば、
図5等を参照して後述する安全継手4で構成することが出来る。
【0020】
一方、
図4では、相互に回転する部材(ノズル側部材、ディスペンサー側部材)の高圧ガス流路が同一方向に延在するタイプのジョイント103で充填ホース2と充填ノズル1を接続している。
図4の場合、FCVのレセプタクル101に充填ノズル1を結合すると、充填ノズル1近傍の領域ADにおいて、充填ホース2は小さな曲率半径で折曲しなければならず、係る折曲により、充填ホース2及び充填ノズル1には、矢印FDで示す弾性反撥力が作用してしまう。
そのため、
図4に示すジョイント103を使用した場合は、充填ノズル1近傍領域の充填ホース2が小さな曲率半径で折曲されることで生じた弾性反撥力FDが、レセプタクル101と充填ノズル1との結合部に作用して、充填ノズル1がレセプタクル101から外れないという事態が発生する恐れがある。
【0021】
図1では、充填ノズル1の長手方向(中心軸方向)の端部にスイベルジョイント3が配置されている。それに対して、
図11の変形例の様に、充填ノズル1の側方にスイベルジョイント3を接続することも出来る。
図11の変形例(第1実施形態の変形例)のその他の構成及び作用効果は、
図1~
図4の第1実施形態と同様である。
【0022】
次に
図5を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図5の第2実施形態では、
図3、
図4において充填ホース2を矢印D方向に回動する機構を備えている。
図5において、第2実施形態の支持構造は全体を符号100-1で示されている。支持構造100-1は、第1実施形態に係る支持構造100と同様に、充填ノズル1と、充填ホース2と、充填ノズル1と充填ホース2の間に配置されるスイベルジョイント3を有している。それに加えて第2実施形態の支持構造100-1は、充填ホース2におけるスイベルジョイント3とは反対側の端部に設けられた安全継手4を有している。
安全継手4は、ノズル側部材4Aとディスペンサー側部材4Bを有し、ノズル側部材4A内の高圧ガス流路(図示せず)とディスペンサー側部材4B内の高圧ガス流路(図示せず)は直交している。そして安全継手4のディスペンサー側部材4Bは、接続部材6Aを介して第2のスイベルジョイント3-1に接続している。
【0023】
図5において、安全継手4のディスペンサー側部材4Bはピローブロック4Cと結合している。ピローブロック4Cは軸受としての機能を有し、安全継手4のディスペンサー側部材4B(安全継手4)が、
図5において矢印R5で示す様に回転することを許容する機能を有している。なお、軸受としてはピローブロックでなくても良い。
明確には図示されていないが、ピローブロック4Cは、ディスペンサーの所定位置の部材に固定される。ピローブロック4Cを固定される部材、固定位置については、ケース・バイ・ケースである。
安全継手4がピローブロック4Cにより矢印R5方向に回転することは、
図3において(ディスペンサー側部材10Gに設けた機構により)充填ホース2を矢印D方向に回動することに相当する。換言すれば、
図5で示す様に、ピローブロック4Cと安全継手4を組み合わせることにより、充填ホース2を
図3における矢印D方向に回動することが可能になる。また、ホースが引かれた場合に離脱する方向へ追従することもある。
図5で示す支持構造100-1によれば、充填ホース2が撓み、弾性反撥力FC(
図3参照)が発生しても、ピローブロック4C(軸受)の回転により充填ホース2が回動して、弾性反撥力FCを逃がすことが可能である。その結果、弾性反撥力FCがレセプタクルと充填ノズル1との結合部に作用することが防止され、充填ノズル1がレセプタクルから外れないという事態を防止出来る。
図5の第2実施形態によるその他の構成及び作用効果は、
図1~
図4の第1実施形態と同様である。
【0024】
図6を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図6の第3実施形態に係る支持構造は、全体を符号100-2で示されている。図示しない充填ノズル1側の構造(充填ノズル1、充填ホース2、スイベルジョイント3)については
図5と同様である。充填ホース2のスイベルジョイント3(図示しない)とは反対側の端部には、
図5と同様の安全継手4が設けられており、安全継手4のディスペンサー側部材4Bは、軸受としての機能を有するピローブロック4Cと結合している。
図6の第3実施形態の支持構造100-2では、安全継手4のディスペンサー側部材4Bは配管6を介して、第2のスイベルジョイント3-1に接続しており、第2のスイベルジョイント3-1は配管7を介してディスペンサー10側に連通している。
【0025】
第2のスイベルジョイント3-1は、充填ノズル1に結合した前記スイベルジョイント3(第1のスイベルジョイント)と同様に、配管6側に接続する回転可能な部材3A-1(
図6ではノズル側部材)、配管7側に接続する回転しない部材3B-1(
図6ではディスペンサー側部材)を有しており、ノズル側部材3A-1に形成された高圧ガス流路とディスペンサー側部材3B-1に形成された高圧ガス流路は直交している。
そして、第2のスイベルジョイント3-1のディスペンサー側部材3B-1は、配管7を回転自在(
図6の矢印R6)に支持している。
【0026】
充填ホース2の取り扱いを容易にするのであれば、3方向に回転することが好ましい。回転軸が3軸であれば、充填ホース2の何れの方向に対する弾性反撥力或いは張力は、3つの回転軸の何れかが回転することにより吸収することが出来るからである。
図6の第3実施形態に係る支持構造100-2において、充填ノズル1側に設けられた第1のスイベルジョイント3(
図5参照:
図6では図示せず)により充填ホース2が回転する。そして、安全継手4に組み合わされたピローブロック4Cの軸受機能により、充填ホース2が矢印R5(
図5)方向に回転する。さらに、第2のスイベルジョイント3-1により、配管7が矢印R6(
図6)方向に回転するので、充填ホース2の何れの方向に対する弾性反撥力或いは張力であっても、第1及び第2のスイベルジョイント3、3-1、ピローブロック4Cの3方向の回転の何れかにより、吸収することが出来る。
従って、水素充填用の剛性の高い充填ホース2を操作するに際して、充填ホース2の弾性反撥力が第1及び第2のスイベルジョイント3、3-1、ピローブロック4Cの何れかにより吸収されるので、充填ホース2の取り扱いが容易になり、操作性が向上する。
図6の第3実施形態によるその他の構成及び作用効果は、
図1~
図4の第1実施形態、
図5の実施形態と同様である。
【0027】
図7を参照して、
図6の第3実施形態の第1変形例を説明する。
図6に示す支持構造100-2における配管6は、
図7の第1変形例に係る支持構造100-3においては省略されており、安全継手4のディスペンサー側部材4Bが、直接、第2のスイベルジョイント3-1に接続されている。
図7においても、
図6と同様に、充填ノズル1近傍の構造の図示は省略されている。
図7の第3実施形態の第1変形例の支持構造100-3では、ディスペンサーにおけるレイアウト的な制約等により、支持構造の配置スペースが限定される場合等に有効である。
図7の第3実施形態の第1変形例によるその他の構成及び作用効果は、
図6の第3実施形態と同様である。
【0028】
図8を参照して、第3実施形態の第2変形例を説明する。
図6の第3実施形態、
図7の第1変形例では、第2のスイベルジョイント3-1はピローブロック4Cよりもディスペンサー側の領域に設けられており、第1のスイベルジョイント3とは離隔して配置されている。
それに対して
図8の第2変形例に係る支持構造100-4では、充填ノズル1は第1のスイベルジョイント3及び第2のスイベルジョイント3-1を介して充填ホース2と接続されており、第1のスイベルジョイント3と第2のスイベルジョイント3-1は直接結合している。
第1のスイベルジョイント3の回転可能な部材3A(第1のスイベルジョイント3におけるノズル側部材)は、充填ノズル1を、
図8の矢印R1A方向について回転自在に支持している。第1のスイベルジョイント3の回転しない部材3B(第1のスイベルジョイント3におけるディスペンサー側部材)は、第2のスイベルジョイント3-1の回転可能な部材3A-1(第2のスイベルジョイント3-1におけるノズル側部材)と接続されている。
第2のスイベルジョイント3-1のノズル側部材3A-1は、第1のスイベルジョイント3に対して、
図8の矢印R2A方向について回転自在である。第2のスイベルジョイント3-1の回転しない部材3B-1(第2のスイベルジョイント3-1におけるディスペンサー側部材)は充填ホース2に接続されている。
図8の第2変形例における第2のスイベルジョイント3-1は、第1のスイベルジョイント3と同様の構成、機能を有しており、
図6、
図7における第2のスイベルジョイント3-1と同様な構成、機能を有している。
【0029】
図8では明示されていないが、充填ホース2のディスペンサー側は、
図5~
図7と同様に、安全継手4に接続されており、安全継手4はノズル側部材4A内の高圧ガス流路とディスペンサー側部材4B内の高圧ガス流路は直交しているタイプである(
図5~
図7参照)。そして、安全継手4のディスペンサー側部材4Bはピローブロック4C(
図5~
図7参照)と結合し、ピローブロック4Cは軸受としての機能を有している。
従って、
図8の第2変形例においても、第1及び第2のスイベルジョイント3、3-1と、ピローブロック4C(
図8では図示せず)の軸受機能により、3方向の回転を許容しているので、充填ホース2の弾性反撥力や張力が何れの方向に作用しても、当該弾性反撥力や張力を吸収或いは逃がすことが出来る。そのため、充填ホース2の取り扱いが容易になり、操作性が向上する。また、ディスペンサーにおけるレイアウト的な制約状況が厳しい場合でも、適用可能である。
図8の第3実施形態の第2変形例によるその他の構成及び作用効果は、
図6、
図7の各実施形態と同様である。
【0030】
図示の実施形態は、充填ノズル或いは充填ホースの支持機構以外にも適用可能である。
図9、
図10を参照して、本発明を充填ノズル或いは充填ホースの支持機構以外に適用した第4実施形態について説明する。
最初に
図9を参照して、本発明が適用される水素ディスペンサー10の配管系の一例を説明する。
図9において、全体を符号10で示す水素ディスペンサーは、水素供給配管11、流量計12、流量調整弁13(圧力調整弁)、ガス管路冷却部14、遮断弁15、制御装置20を有している。流量計12、流量調整弁13(圧力調整弁)、ガス管路冷却部14、遮断弁15は、水素供給配管11に介装されている。ガス管路冷却部14は、
図10を参照して後述する熱交換器5(HEx)を含む。また、水素供給配管11には、入口側圧力計16、出口側圧力計17、温度計18が介装されている。
水素供給配管11の分岐箇所11Eから放散管19に接続する配管11-1には、脱圧弁21が介装される。
水素供給配管1の上流側は、図示しない水素ガス供給源(例えば水素ボンベ或いは水素貯蔵用タンク)に接続されている。水素供給配管11の下流側は、図示しない充填ホース、充填ノズルに連通しており、水素充填時には充填ホース、充填ノズルを介してFCV(燃料電池車輌)のタンクに接続される。
図9において、充填ホース、充填ノズルに連通する供給配管は、符号7で示されている。
符号22は充填開始SW、停止SW、緊急停止SWが収納されたスイッチボックス、符号23はガス検知器を示している。
制御盤24からの入力信号は制御装置20に入力され、制御装置20の出力結果は表示器25に表示され、必要に応じて報知機26に出力される。
【0031】
図9では明示されていないが、水素ディスペンサー内部の配管系では、配管を機器に対して締め込むことにより、接続する場合がある。
例えば熱交換器5(HEx)との接続箇所は、水素供給による急冷と常温の熱サイクル、高圧水素の供給時と非供給時との圧力サイクルにより、配管等の素材が膨張、回復を繰り返す。そのため、熱交換器と配管との接続箇所は、配管系のその他の箇所に比較して緩み易い。
接続箇所が緩んだ場合に、配管を回転して締め込むことが出来れば、簡単に作業が出来る。しかし、配管を回転して熱交換器に対して締め込んでしまうと、当該配管にトルクが付加され、配管や熱交換器の接続箇所にダメージを与える恐れがある。
【0032】
図10において、熱交換器5(HEx)は、
図1~
図8の実施形態で示すスイベルジョイント3を介して水素供給配管11に接続している。
図1~
図4で説明した様に、スイベルジョイント3は、内部に流路が形成された二つの部材を有し、二つの部材の流路同士が直交しているタイプのスイベルジョイントであり、
図10では、水素供給配管11における折曲部(エルボ)を構成している。
スイベルジョイント3を水素供給配管11における折曲部(エルボ)として用いれば、緩んでしまった接続部を締め込むため、配管を自在に回転しても、当該回転或いはそれによる回転トルクはスイベルジョイント3により吸収される。そのため、水素供給配管11と熱交換器5(HEx)等の接続箇所の緩みを簡単な作業で解消できると共に、配管や熱交換器の接続箇所に回転トルクによるダメージを与えることが防止される。
【0033】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0034】
1・・・充填ノズル
2・・・充填ホース
3・・・スイベルジョイント(第1のスイベルジョイント)
3-1・・・第2のスイベルジョイント
3A、3A-1・・・回転可能な部材
3B、3B-1・・・回転しない部材
3AR、3BR・・・高圧ガス流路
4・・・安全継手
4A・・・ノズル側部材
4B・・・ディスペンサー側部材
4C・・・ピローブロック(軸受としての機能を有する)
5・・・熱交換器(HEx)
10・・・ディスペンサー(水素ディスペンサー)
100(100-1~100-4)・・・支持構造