(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】入札競売装置と入札競売法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/08 20120101AFI20250108BHJP
【FI】
G06Q30/08
(21)【出願番号】P 2023145488
(22)【出願日】2023-09-07
【審査請求日】2023-09-07
【審判番号】
【審判請求日】2024-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507407146
【氏名又は名称】株式会社MOTA
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】甘城 裕之
(72)【発明者】
【氏名】関根 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】安井 唯人
(72)【発明者】
【氏名】梅原 充詩
【合議体】
【審判長】松田 直也
【審判官】佐藤 智康
【審判官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-054926(JP,A)
【文献】特開2020-126379(JP,A)
【文献】特開2009-211380(JP,A)
【文献】特開2002-183508(JP,A)
【文献】特開2005-122637(JP,A)
【文献】特開2007-164675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
競売対象商品と売手名と連絡先とを含む売手情報を売手が入力する複数の売手端末装置と、各売手端末装置から送信される売手情報を受信する競売仲介装置と、競売仲介装置から送信される売手情報の商品情報を受信する複数の買手端末装置とを備え、
買手は、競売仲介装置から各買手端末装置が受信する商品情報に含まれる購入を希望する競売対象商品、購入希望価格及び買手名を含む買手情報を各買手端末装置から競売仲介装置に送信して競売に参加し、
競売仲介装置は、同一の競売対象商品について買手端末装置から異なる多数の買手情報を受信するとき、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択し、当該選択した買手情報の買手端末装置に、売手情報のうちの売手名及び連絡先を送信すること
によって、売手に購入希望価格の高額順に選択された買手のみとの売買交渉を可能とすること、を特徴とする入札競売装置。
【請求項2】
選択した1者以上の買手情報を売手端末装置に送信する請求項1に記載の入札競売装置。
【請求項3】
買手が買手端末装置から競売仲介装置に送信する買手情報に含まれる購入希望価格は、(i)具体的な購入希望価格又は(ii)競売仲介装置が商品情報と共に買手端末装置に送信する商品の提案価格に対し乗ずる乗数若しくは提案価格に加える加算値で表され、
多数の買手情報を受信する競売仲介装置は、買手の具体的な購入希望価格及び提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加えられる加算値に等しい購入希望価格の中から、高額順に1者以上の買手情報を選択する請求項1又は2に記載の入札競売装置。
【請求項4】
競売仲介装置は、多数の中古商品情報、競売商品情報及び商品販売価格を記憶する競売記憶装置を有し又は競売商品データベースに接続され、
競売仲介装置は、売手端末装置から送信される商品情報に含まれる競売対象商品を特定し、競売対象商品と同一型及び類似型の商品を競売記憶装置又は競売商品データベースで検索して、商品の平均価格を算出し、
競売仲介装置は、算出した平均価格に等しい商品の提案価格を商品情報と共に買手端末装置に送信する請求項1又は2に記載の入札競売装置。
【請求項5】
競売仲介装置は、売手端末装置から送信される売手情報を受信する毎に、商品情報に含まれる競売対象商品を特定し、売手情報を受信する一定日数前以降競売記憶装置又は競売商品データベースに記録された競売対象商品と同一型及び類似型の商品を検索して、商品の平均価格を算出し、
買手端末装置は、競売対象商品の提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加える加算値を記憶する記憶部を備え、競売仲介装置から商品情報と提案価格とを受信したとき、記憶する乗数若しくは加算値を自動的に競売仲介装置に送信する請求項4に記載の入札競売装置。
【請求項6】
競売仲介装置は、売手端末装置からの売手情報を受信した後の特定時刻迄又は一定時間経過迄、売手端末装置から売手情報を受信し、特定時刻後又は一定時間経過後は、買手端末装置からの買手情報の受信を停止して、複数の買手情報を売手端末装置に送信する請求項1又は2に記載の入札競売装置。
【請求項7】
競売仲介装置は、売手端末装置からの商品情報を受信した後の特定時刻迄又は一定時間経過迄を買手情報の受信可能時間とし、
競売仲介装置は、受信可能時間外に買手端末装置から送信される買手情報の受信を停止して、複数の買手情報を売手端末装置に送信する請求項6に記載の入札競売装置。
【請求項8】
買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択する経済的基準と共に、買手に対する売手の懇意度又は親密度順に買手を順位付ける主体的基準、地図上又は距離上売手に近い買手順に買手を順位付ける地理的基準、売手が好む商品の性質順に買手を順位付ける趣味的基準及び買手数を決定する買手数基準の中から単一又は複数の基準により、1者以上の買手情報を選択する請求項1又は2に記載の入札競売装置。
【請求項9】
買手の購入希望価格は、下限購入希望価格と、下限購入希望価格より高額の上限購入希望価格を含み、
競売仲介装置は、経済的基準に従い買手の下限購入希望価格の高額順に買手情報を選択する請求項1又は2に記載の入札競売装置。
【請求項10】
競売対象商品と売手名と連絡先とを含む売手情報を売手端末装置が競売仲介装置に送信する過程と、
受信した売手情報の競売対象商品情報を競売仲介装置が買手端末装置に送信する過程と、
買手が購入を希望する競売対象商品、購入希望価格及び買手名を含む買手情報を買手端末装置が競売仲介装置に送信する過程と、
同一の競売対象商品について買手端末装置から異なる多数の買手情報を受信する競売仲介装置が、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択し、当該選択した買手情報の買手端末装置に、売手情報のうちの売手名及び連絡先を送信する
ことによって、売手に購入希望価格の高額順に選択された買手のみとの売買交渉を可能とする過程と、
を含むことを特徴とする入札競売法。
【請求項11】
選択した1者以上の買手情報を競売仲介装置が売手端末装置に送信する過程を含む請求項10に記載の入札競売法。
【請求項12】
(i)具体的な購入希望価格又は(ii)競売仲介装置が商品情報と共に送信する競売対象商品の提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加える加算値で表される購入希望価格を含む買手情報を買手端末装置が競売仲介装置に送信する過程と、
同一の競売対象商品について買手端末装置からの多数の買手情報を競売仲介装置が受信する過程と、
買手の具体的な購入希望価格及び提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加えられる加算値に等しい購入希望価格の中から、競売仲介装置が高額順に1者以上の買手情報を選択する過程と、
を含む請求項10又は11に記載の入札競売法。
【請求項13】
多数の中古商品情報、競売商品情報及び商品の販売価格を記憶する競売記憶装置を競売仲介装置に設け又は競売商品データベースを競売仲介装置に接続する過程と、
競売仲介装置が、売手端末装置から送信される商品情報に含まれる競売対象商品を特定する過程と、
競売仲介装置が、競売対象商品と同一型及び類似型の競売記憶装置又は競売商品データベースに含まれる商品を検索して、商品の平均価格を算出する過程と、
売手情報の商品情報と共に、提案価格として算出した平均価格を競売仲介装置が買手端末装置に送信する過程と、
を含む請求項12に記載の入札競売法。
【請求項14】
競売対象商品の提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加える加算値を記憶する記憶部を買手端末装置に設ける過程と、
競売仲介装置は、売手端末装置から送信される売手情報を受信する毎に、商品情報に含まれる競売対象商品を特定する過程と、
売手情報を受信する一定日数前以降競売記憶装置又は競売商品データベースに記録される競売対象商品と同一型及び類似型の商品を検索して、商品の平均価格を算出する過程と、
競売仲介装置から商品情報と商品の提案価格とを受信したとき、買手端末装置の記憶部に記憶される乗数若しくは加算値を自動的に競売仲介装置に送信する過程と、
を含む請求項12に記載の入札競売法。
【請求項15】
買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択する経済的基準と共に、買手に対する売手の懇意度又は親密度順に買手を順位付ける主体的基準、地図上又は距離上売手に近い買手順に売手を順位付ける地理的基準、売手が好む商品の性質順に買手を順位付ける趣味的基準及び買手数を決定する買手数基準の中から単一又は複数の基準により、1者以上の買手情報を選択する過程を含む請求項10又は11に記載の入札競売法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、販売する商品の売手と買手とを仲介する入札競売装置と、入札競売装置を利用して知り合う商品の売手と買手とが売買交渉を行う入札競売法とに関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両を売買する従来の交渉では、売手が販売を希望する車両の状態及び条件並びに販売金額について、売手と買取業者とが打合せ・契約を行う。次に、買取業者は、実車販売価格の査定を行い、売手と相談して、販売対象となる実車の販売価格を決定する。その後、買取業者は、売手と交渉を行い、買取価格について合意に達して、買取商談が成立する。このように、従来の交渉では、売手と買取業者との間で各車両の販売価格を個別に決定する手順が特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-43756公報
【文献】特開2022-172534公報
【文献】特開2009-129286公報
【文献】特許第6788296号公報
【0004】
特許文献1は、車両を点検整備する複数の店舗の各店について、店舗ID及び店舗位置情報を含む店舗情報を記憶する店舗情報記憶部と、購入希望の車両種別及び購入地域の情報を含む顧客が入力する顧客商品情報を受信する受信部と、店舗情報及び顧客商品情報に基づいて顧客に提示する店舗候補を複数選定し、選定した複数の店舗候補の夫々で顧客が利用可能なポイント額を決定するポイント額決定部と、選定した複数の店舗候補毎のポイント額を顧客に対して出力する出力部とを備える車両販売管理装置を示す。顧客は、車両のアフターサービスを担う店舗を顧客が選定するのに役立つ情報を入手できる。
【0005】
特許文献2は、車両に関連する予め設定された車両情報を第1の端末装置に表示する制御部と、車両情報の選択を受け付ける選択受付部とを備え、制御部が、選択受付部によって車両情報の選択が受け付けられた場合に、車両情報に関連する複数の車両の個々の車両情報を第1の端末装置に表示して、車両の購入検討者が、所望の車両を見つけ易い車両販売支援装置を示す。
【0006】
特許文献3は、オークション管理システムからの落札車両情報を取得する落札車両情報取得手段と、落札車両情報取得手段により取得した落札車両情報に基づき、車両価格の推定を行う車両価格推定手段と、所定の車両を買取保証特約付き部分支払契約にて取得する場合の据置き額及び買取保証額を車両価格推定手段によって推定した車両価格に基づいて決定し、据置き額又は買取保証額に基づき買取保証特約付き部分支払契約にて支払う支払額を算出する支払額算出手段と、支払額算出手段によって算出した買取保証額及び支払額を表示する表示手段とを備え、部分支払契約の支払年数が異なる複数のパターンの夫々について、表示手段は、支払額を一画面に表示して、部分支払契約の多様化に対応して車両販売管理を行う車両販売管理システムを示す。
【0007】
特許文献4は、電池将来価格を車両の現在の価格から差し引いた価格を販売価格として決定し、駆動用電池が所定の劣化度合である車両を所定の期間後に車両販売者に返却することを条件として該車両が車両利用者に販売されたことを示す情報をサーバーに記録させ、車両が返却された際に駆動用電池の劣化度合に基づいて電池買戻価格を決定し、電池将来価格と電池買戻価格との差に応じて車両買戻価格を決定する車両販売システムを示す。この車両販売システムでは、駆動用電池を搭載する車両を購入する車両利用者の負担を効果的に軽減すると共に、販売から所定期間の経過後に車両を買戻すことができる。
【0008】
従来では、大量の車両査定情報を保持する各自動車売買業者は、車両の販売者又は購入者と納得の行くまで十分に交渉して、車両の販売価格又は購入価格を決定しない限り、最終的に売買契約が成立しない難点がある。例えば、自動車売買業者の入札では、車両の情報を確認するとともに、中古車の相場を確認し、車両の販売金額を決定したうえで、入札しなければならない。また、従来の一括査定サービスでは、車両の金額査定の申込みをした直後から、申込者に多量の電話着信が発生して、電話の対応に苦慮する欠点があった。売手が提供する商品に対し、競合する多数の買手から1者以上の買手を的確に選択する競売形態を形成する入札競売装置は、従来では、提案されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、販売する商品の売手と買手とを仲介する入札競売装置及び入札競売装置を利用する入札競売法を提供することを目的とする。また、本発明は、基本的に電話での対応を要せずに、販売される商品の購入を希望する複数の買手を紹介する入札競売装置及び入札競売装置を利用する入札競売法を提供することを目的とする。更に、本発明は、高額順の1者以上の買手情報を選択する入札競売装置及び入札競売法を提供することを目的とする。他面、本発明の別の目的は、競売仲介装置に表示される商品について競売仲介装置が算出する商品の平均価格に乗ずる乗数又は平均価格に加える加算値を購入希望価格情報としてその都度手動で入札することなく自動的に競売仲介装置に送信して競売に参加する入札競売装置及び入札競売装置を利用する入札競売法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による入札競売装置(1)は、競売対象商品と売手名とを含む売手情報を売手が入力する複数の売手端末装置(3)と、各売手端末装置(3)から送信される売手情報を受信する競売仲介装置(2)と、競売仲介装置(2)から送信される売手情報の商品情報を受信する複数の買手端末装置(4)とを備える。買手は、競売仲介装置(2)から各買手端末装置(4)が受信する商品情報から、購入を希望する商品、購入希望価格及び買手名を含む買手情報を各買手端末装置(4)から競売仲介装置(2)に送信して競売に参加する。
【0011】
買手端末装置(4)から異なる多数の買手情報を受信するとき、競売仲介装置(2)は、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択する。その後、競売仲介装置(2)は、選択した1者以上の買手情報を売手端末装置(3)に送信しかつ/又は選択した買手情報の買手端末装置(4)に対してのみ売手名及び連絡先情報を送信するので、売手端末装置(3)に表示される買手情報を見る売手は、選択された複数の買手と個別に売買交渉を行える。
【発明の効果】
【0012】
本発明による入札競売装置(1)は、下記の利点を有する。
1.競売仲介装置(2)は、広範囲地域の売手の売手端末装置(3)から多数の売手情報を受信すると共に広範囲地域の買手の買手端末装置(4)から多数の買手情報を受信して、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を機械的に選択するので、商品の入札と競売とを迅速に行うことができる。
2.売手端末装置(3)と買手端末装置(4)とを接続する入札競売装置(1)は、売手と買手とが売買交渉を開始する電子的な競売市場を形成する。
3.競売仲介装置(2)が自動的に選択する複数の買手と売手とが直接売買交渉を行うので、売手は、煩瑣な電話対応、営業担当者又は仲介者との煩雑な交渉事務を回避できる。
4.低額購入希望価格を主張する買手は、競売から排除されて、販売価格面で売手に有利な入札競売装置(1)の利用が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の入札競売装置の電子的構成を示すブロック図
【
図2】本発明の他の実施の形態を示す入札競売装置の電子的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の入札競売装置(1)は、競売対象商品と売手名とを含む売手情報を売手が入力する複数の売手端末装置(3, 3a, 3b, 3c)と、各売手端末装置(3, 3a, 3b, 3c)から送信される売手情報を受信する競売仲介装置(2)と、競売仲介装置(2)から送信される売手情報の商品情報を受信する複数の買手端末装置(4, 4a, 4b, 4c)とを備える。入札競売装置(1)は、売手が売手端末装置(3)に入力する全商品を競売取扱対象とする。入札競売装置(1)が取扱う商品は、例えば、車両を含む民生品、業務用製品、ブランド品、不動産を含む有体財産権、特許権、商標権を含む無体財産権及び引越し、リフォームを含む提供業務又は役務(サービス)から選択される。
【0015】
本発明の全競売対象商品について入札競売装置(1)の実施の形態を説明することは不可能であるから、入札競売装置(1)の競売対象商品を車両に限定して、本発明の実施の形態を例示して説明する。しかしながら、本発明の入札競売装置及び入札競売法を他の商品にも、車両と同様に、本発明を適用できることは明白である。即ち、車両を除く民生品、業務用製品、ブランド品、不動産を含む有体財産権、特許権、商標権を含む無体財産権及び引越し、リフォームを含む提供業務又は役務(サービス)から選択される有体商品及び無体商品も、本発明の入札競売装置(1)の取扱対象である。
【0016】
売手名は、売手の主体を表す氏名又は名称である。複数の売手端末装置(3)の各々から送信される売手情報を受信する競売仲介装置(2)は、売手情報の商品情報を各買手端末装置(4)に送信する。買手は、買手端末装置(4)の商品情報から購入を希望する商品、購入希望価格及び買手名を含む買手情報を競売仲介装置(2)に送信して競売に参加する。買手名は、買手の主体を表す氏名又は名称である。
【0017】
複数の売手端末装置(3)の各々と複数の買手端末装置(4)の各々は、車両の販売と購入とを営む企業、店舗又は個人が所有するコンピュータ、スマートフォンを含む電子端末である。売手端末装置(3)と買手端末装置(4)は、インターネット、イントラネット、有線又は無線接続装置を含むコンピュータネットワークにより競売仲介装置(2)に双方向通信可能に接続されるので、入札競売装置(1)は、売手端末装置(3)と競売仲介装置(2)との間、買手端末装置(4)と競売仲介装置(2)との間を双方向に送受信可能に接続される。このため、競売仲介装置(2)を介して売手端末装置(3)と買手端末装置(4)との間を接続する情報電子通信ネットワークが形成される。
【0018】
本発明の入札競売装置(1)を実施して、車両を競売に入札する際に、売手は、売手車両情報と、売手を表す売手名情報とを含む売手情報を入札競売装置(1)の売手端末装置(3)に入力して、売手情報を競売仲介装置(2)に送信する。車両情報は、販売する車両の種類、即ち車両の車種:例えば、プリウス、車両の型式、即ち年式:例えば、2020年、車両の等級、即ちグレード:例えば、2.5S、車体色:黒色、事故歴:なし、車両の使用期間、即ち走行距離1万km等であり、売手情報は、売手名情報、住所若しくは所在地、電話番号、メールアドレスを含む。売手は、売手端末装置(3)のあるどの場所でも競売仲介装置(2)に常時アクセスして、売手情報を送信し、車両の競売の申込を行える。
【0019】
買手は、競売仲介装置(2)から各買手端末装置(4)が受信する商品情報に含まれる購入を希望する競売対象商品、購入希望価格及び買手名を含む買手情報を各買手端末装置(4)から競売仲介装置(2)に送信して競売に参加する。買手情報は、買手名情報、住所若しくは所在地、電話番号、メールアドレス及びホームページアドレス、買手情報に関連付けて付与される管理符号を含む。買手が買手情報を競売仲介装置(2)に送信する際に、競売利用料金の事前支払が要求されれば、買手は、競売仲介装置(2)に競売利用料金を事前に支払うと共に、購入希望価格情報を含む買手情報を競売仲介装置(2)に買手端末装置(4)から送信する必要がある。競売利用料金は、例えば500円又は購入希望価格の0.1%である。買手端末装置(4)から買手情報を受信する競売仲介装置(2)は、買手情報をそのまま売手端末装置(3)に送信しない。また、売手車両情報送信時に、車両の売手と買手は、直接面談しない。
【0020】
売手端末装置(3)から売手が売手情報を送信する競売仲介装置(2)は、多数の中古商品情報、競売商品情報及び商品の販売価格を記憶する競売記憶装置(12)を有し又は競売商品データベースに接続される。競売対象商品が車両の場合、競売記憶装置(12)は、多数の車両情報、各車両の売手情報、車両の競売を希望する買手情報、各車両情報、売手情報、買手情報に関連付けて付与される同一の管理符号との集合体を体系的にかつ検索可能に記憶する仲介データベースを構成するが、管理符号は、車両(商品)毎に異なる。電子計算機を備える競売仲介装置(2)の検索装置により仲介データベースの情報を検索できる。
【0021】
売手端末装置(3)からの売手情報を受信する競売仲介装置(2)は、売手情報に含まれる売手車両情報を関連する管理符号と共に、多数の買手端末装置(4)に送信する。競売仲介装置(2)から売手車両情報を受信する多数の買手端末装置(4)の各々は、売手車両情報を表示するので、買手端末装置(4)に表示される売手車両情報を見て、車両の購入を希望する買手は、売手車両と、買手名と、買手の購入希望価格とを含む買手情報を買手端末装置(4)から競売仲介装置(2)に送信して、買手は、競売に参加できる。
【0022】
同一の競売対象商品について買手端末装置(4)から異なる多数の買手情報を受信するとき、競売仲介装置(2)は、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択し、選択した1者以上の買手情報を関連する売手端末装置(3)に送信する。このとき、選択した買手情報の買手端末装置(4)にも売手名情報を同時に送信してもよく、売手端末装置(3)には1者以上の買手情報を送信せず、選択した買手情報の買手端末装置(4)に売手名情報を送信してもよい。
【0023】
競売仲介装置(2)は、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択し、選択した1者以上の買手情報を売手端末装置(3)に送信するので、売手は、高額で車両(商品)を販売できると共に、売手が選択した1者以上の買手のみと売買交渉を行って、売買交渉を円滑に進めることができる。買手の購入希望価格の高額順で1者以上の買手情報に選択されない買手は、売買交渉には参加できない。本明細書では、競売仲介装置(2)が自動的に買手を選定する前に買手が競売に参加する形態を「事前競売制」という。
【0024】
前記の実施の形態では、買手が買手端末装置(4)から競売仲介装置(2)に送信する購入希望価格を具体的な購入希望価格として買手が競売に参入して、競売仲介装置(2)が、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択し、選択した1者以上の買手情報を売手端末装置(3)に送信する例を説明した。別法として、本発明の他の実施の形態では、購入希望価格は、競売仲介装置(2)が商品情報と共に買手端末装置(4)に送信する商品の提案価格に対し乗ずる乗数若しくは提案価格に加える加算値で表される。
【0025】
即ち、買手端末装置(4)に送信する商品情報と共に、競売仲介装置(2)は、買手端末装置(4)に商品の提案価格を送信して、買手は、商品の提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加える加算値で購入希望価格を表すことができる。本明細書では、競売仲介装置(2)が自動的に提案価格を算出し、買手が商品の提案価格に乗ずる乗数(レート、%)若しくは提案価格に加える加算値を事前に設定して、競売仲介装置(2)から買手端末装置(4)に商品情報と共に送信される提案価格に自動的に乗数を乗じ又は加算値を加えて、買手が競売に参加する形態を「自動競売制」という。自動競売制では、低い乗数又は加算値として減算値を送信し競売に参加して、選択された方が、買手にとって有利である。
【0026】
例えば、希望の乗算値として0.70~1.30を選択して、買手は、平均価格の70%~130%の安価又は高額な購入希望価格で競売に参加できる。また、例えば、±20万円の加算値を平均価格に加算し又は減算する購入希望価格で競売に参加できる。このように、平均価格への乗算値又は加算値に等しい購入希望価格を表す提案価格を含む買手情報を送信すると、競売仲介装置(2)は、購入希望価格順に買手を順位付ける経済的基準により、高額順の1者以上の買手情報を選択する。選択された複数の買手情報は、売手端末装置(3)に送信されかつ/又は選択した複数の買手情報の買手端末装置(4)に売手名情報が送信される。売手車両情報と、買手情報と、買手の購入希望価格情報とを売手端末装置(3)で見た売手は、選択された買手に対し販売交渉を行い、選択された買手は、売手に対し購入交渉を行うことができる。
【0027】
商品の平均価格を算出するため、競売仲介装置(2)は、多数の中古商品情報、競売商品情報及び商品販売価格を記憶する競売記憶装置(12)を有し又は競売商品データベースに接続される。競売仲介装置(2)は、売手端末装置(3)から送信される商品情報に含まれる商品を特定し、特定した商品と同一型及び類似型の商品を競売記憶装置(12)及び外部の競売商品データベースで検索して、商品の平均価格を算出する。例えば、競売仲介装置(2)は、売手情報を受信する60日等の一定日数前以降競売記憶装置(12)又は競売商品データベースに記録された特定した商品と同一型及び類似型の商品を検索して、商品の平均価格を算出する。競売仲介装置(2)が商品情報と共に買手端末装置(4)に送信する商品の提案価格は、売手情報の売手商品と同一型と類似型の商品の平均価格である。更に、多数の買手情報を受信する競売仲介装置(2)は、買手の具体的な購入希望価格及び提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加えられる加算値に等しい購入希望価格の中から、高額順に1者以上の買手情報を選択する。
【0028】
競売仲介装置(2)は、売手端末装置(3)から送信される売手情報を受信する毎に、商品情報に含まれる競売対象商品を特定し、売手情報を受信する60日等の一定日数前以降競売記憶装置(12)又は競売商品データベースに記録された競売対象商品と同一型及び類似型の商品を検索して、商品の平均価格を算出する。買手端末装置(4)は、競売対象商品の提案価格に乗ずる乗数若しくは提案価格に加える加算値を変更可能に記憶する記憶部を備える。競売仲介装置(2)から商品情報と提案価格とを受信したとき、記憶する乗数若しくは加算値を自動的に競売仲介装置(2)に送信する。買手は、市場の商品価格変動を考慮して、買手端末装置(4)の記憶部に記憶される乗数及び加算値を変更できる。
【0029】
競売仲介装置(2)の運営主体は、競売対象商品が車両の場合、車両の売買市場状態を考慮して、受信可能時間を適宜決定する。競売仲介装置(2)は、売手が売手端末装置(3)から競売仲介装置(2)に売手情報を送信した後、特定時刻迄又は一定時間経過前は、売手端末装置(3)から売手情報を受信するので、競売仲介装置(2)は、同一の売手車両について、多数の買手端末装置(4)から送信される買手の買手情報を受信する。しかしながら、売手が売手端末装置(3)から競売仲介装置(2)に売手情報を送信した特定時刻後又は一定時間経過後は、買手端末装置(4)からの買手情報の受信を停止する。例えば、競売仲介装置(2)は、売手端末装置(3)からの商品情報を受信した後、翌日の18時迄を買手情報の受信可能時間とすることができる。翌日の18時を経過した後、競売仲介装置(2)は、買手端末装置(4)から受信する買手情報の受信を拒否することができる。
【0030】
管理者が設定する競売仲介装置(2)の「買手選定基準」により、売手に有利な複数の買手を自動的に選択して、選択した複数の買手情報を売手端末装置(3)に送信する。前記の実施の形態では、競売仲介装置(2)により、購入希望価格の高額順の1者以上の買手情報を選択する経済的基準を示したが、本明細書では、「経済的基準」に加えて、「主体的基準」、「地理的基準」、「趣味的基準」及び「買手数基準」が用語「買手選定基準」に含まれる。競売仲介装置(2)は、買手選定基準に基づき、多数の買手から単数又は複数の売手を自動的に演算し選択する。「経済的基準」は、競売仲介装置(2)が買手の購入希望価格の高額順に、例えば3買手(購入者)情報を選択する方法である。
【0031】
「主体的基準」は、売手と買手との懇意度又は親密度により競売仲介装置(2)の管理者が設定する買手順に先頭から順位付けて単数又は複数の買手、例えば3名を決定する方法である。「地理的基準」は、地図上又は距離で売手に近い買手順の先頭から単数又は複数の買手を順位付ける方法である。「趣味的基準」は、売手が好む車両の性質順に単数又は複数の買手を順位付ける方法である。売手が好む車両(商品)の性質は、車両の製造時期、場所若しくは年代、型式により、競売仲介装置(2)の管理者が設定する特性である。「買手数基準」は、1人、2人又は3人以上で20人までの買手数を決定する方法である。
【0032】
買手端末装置(4)から買手が競売仲介装置(2)に送信する車両の購入希望価格には、買手が希望する車両購入の上限希望価格と下限希望価格とが含まれる。買手選定基準として、経済的基準を売手が選択するとき、競売仲介装置(2)は、買手が入力する下限希望価格又は上限希望価格、特に下限希望価格を基準に、多数の買手から複数の買手を自動的に選択して、複数の買手情報を売手端末装置(3)に送信するが、同時に、選択した複数の買手端末装置(4)にも買手として選択した売手情報を送信してもよい。
【0033】
例えば、車両1台の買手の下限希望価格が100万円であり、上限希望価格が200万円とする買手情報が買手端末装置(4)から競売仲介装置(2)に送信されると、競売仲介装置(2)は、買手の下限希望価格100万円を経済的基準として、競売仲介装置(2)に予め設定する。従って、売手車両に対し多数の買手からの買手情報を受信する競売仲介装置(2)は、売手車両に対する買手の「下限希望価格100万円より高額の購入金額の高額順に買手情報を順位付けた先頭から複数の買手情報を選択」して、選択した買手情報を売手端末装置(3)に送信する。
【0034】
競売仲介装置(2)は、売手の買手選定基準により、買手の上限希望価格又は下限購入希望価格の高額順に選択される複数の買手情報の買手数を1人、2人又は3人以上の買手数に設定する。
【0035】
図2は、本発明の入札競売装置(1)の他の実施の形態の電気構成図を示し、
図2に示す
図1と同一符号は、同一の構成を示す。
図1の複数の売手端末装置と複数の買手端末装置を、
図2では代表して売手端末装置(3)と自動車販売店の買手端末装置(4)として示す。
図2に示す入札競売装置(1)の動作は、
図1と同一である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
車両を含む民生品、業務用製品、ブランド品、不動産を含む有体財産権、特許権、商標権を含む無体財産権及び引越し、リフォームを含む提供業務又は役務(サービス)等から選択される1種を競売商品の対象とする本発明の入札競売装置と入札競売法を、有体物及び無体物を競売する全ての取引分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・入札競売装置、 2・・競売仲介装置、 3, 3a, 3b, 3c・・売手端末装置、 4, 4a, 4b, 4c・・買手端末装置、 12・・競売記憶装置
【要約】 (修正有)
【課題】販売する商品の売手と買手とを仲介する入札競売装置と入札競売装置を利用する入札競売法とを提供する。
【解決手段】競売対象商品と売手名とを含む売手情報を売手が入力する複数の売手端末装置(3)と、各売手端末装置(3)から送信される売手情報を受信する競売仲介装置(2)と、競売仲介装置(2)から送信される売手情報の商品情報を受信する複数の買手端末装置(4)とを入札競売装置(1)に設ける。競売仲介装置(2)から各買手端末装置(4)が受信する商品情報から、買手は、購入を希望する商品、購入希望価格及び買手名を含む買手情報を各買手端末装置(4)から競売仲介装置(2)に送信して競売に参加する。競売仲介装置(2)は、買手端末装置(4)から異なる多数の買手情報を受信するとき、買手の購入希望価格の高額順に1者以上の買手情報を選択する。
【選択図】
図1