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特許7614596CCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】CCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20250108BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250108BHJP
【FI】
G06T1/00 340Z
G06T7/00 350B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024192269
(22)【出願日】2024-10-31
【審査請求日】2024-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2023-0150096
(32)【優先日】2023-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523345091
【氏名又は名称】ワールド ヴァーテックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ジョン
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-513858(JP,A)
【文献】特表2020-522829(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第118038350(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCTV映像から認識された実際オブジェクトの固有特徴点を検出し、固有特徴点が検出された実際オブジェクトを仮想オブジェクトに変換して実際オブジェクトに対する非識別化を行い、非識別化処理された映像及び固有特徴点を送信するエッジデバイスと、
前記エッジデバイスから非識別化処理された映像及び固有特徴点を受信して人工知能学習用データとして用いる管理サーバと、を含み、
前記エッジデバイスは、
CCTV映像から実際人物オブジェクトの固有顔特徴点を検出して実際人物オブジェクトをそれぞれ認識する人物オブジェクト顔認識部と、
前記固有顔特徴点がメタデータとして含まれた実際人物オブジェクトの顔に対する外形的属性の変化により、実際人物オブジェクトを仮想人物オブジェクトに変換してCCTV映像の実際人物オブジェクトが非識別化処理された非識別化映像を生成し、顔の外形的属性をドメイン化して各外形的属性に対する変化の程度を調整するが、外形的属性の変化結果がCCTV映像内の実際人物オブジェクト間で重複しないように非識別化の程度を調整する人物オブジェクト顔非識別化実行部と、
CCTV映像から実際人物オブジェクトに対する衣服特徴を検出する人物オブジェクト衣服特徴検出部と、
前記衣服特徴に基づいた実際人物オブジェクトの服装に対する外形的属性の変化により、実際人物オブジェクトの服装に対する非識別化を行い、服装の外形的属性をドメイン化して各外形的属性に対する変化の程度を調整するが、外形的属性の変化がCCTV映像内の実際人物オブジェクト間で重複しないように非識別化の程度を調整する人物オブジェクト服装非識別化実行部を含む
ことを特徴とするCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム。
【請求項2】
前記エッジデバイスは、
前記非識別化映像及び前記メタデータを前記管理サーバに圧縮して送信するデータ送信部と、をさらに含む
請求項1に記載のCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム。
【請求項3】
前記人物オブジェクト顔認識部は、
姿勢推定(Pose Estimation)モデルのアルファポーズ(Alpha Pose)を用いて予め設定されたポイントを実際人物オブジェクトに対する顔検出領域として設定する顔検出領域設定部を含む
請求項1に記載のCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム。
【請求項4】
前記人物オブジェクト顔認識部は、
実際人物オブジェクトに対する検出領域の最小サイズ、検出信頼度、最大検出数、及び非検出オプションのうちの少なくとも1つのパラメータを調整するパラメータ調整部を含み、
前記パラメータ調整部は、
実際人物オブジェクトから検出される固有顔特徴点の数を調整することで、前記非検出オプションに対するパラメータを調整し、
前記非検出オプションは、マスクの着用により実際人物オブジェクトの顔に対する露出度がマスクを着用していない実際人物オブジェクトと比較して相対的に低いと予測される場合に、実際人物オブジェクトから検出される固有顔特徴点の数を減らして設定するオプションであり、前記非検出オプションに対するパラメータは、実際人物オブジェクトから検出される固有顔特徴点である
請求項1に記載のCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム。
【請求項5】
前記人物オブジェクト顔非識別化実行部は、
実際人物オブジェクトの髪色、髪型、肌の色、ひげ、老化及び表情のうちの少なくとも1つの外形的属性を変化させることで、実際人物オブジェクトを仮想人物オブジェクトに変換する
請求項1に記載のCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム。
【請求項6】
前記人物オブジェクト服装非識別化実行部は、
実際人物オブジェクトの服装に対する色、デザインパターン、スタイル及び種類のうちのいずれか1つの外形的属性を変化させる
請求項1に記載のCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、CCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムに関する。
【0002】
なお、本発明は、下記の国家研究開発事業による支援を受けたものである。
[課題固有番号]1781000008
[課題番号]RS-2023-00221181
[部署名]個人情報保護委員会
[課題管理(専門)機関名]韓国インターネット振興院
[研究事業名]個人情報保護強化技術に関する研究開発(R&D)
[研究課題名]顔認識CCTVにおける同一被写体の繋がり分析を可能にするリアルタイム顔非識別化技術
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]株式会社ワールドバーテック、World Vertex Co., Ltd.
[研究期間]2023.04.01~2025.12.31
【背景技術】
【0003】
最近、知能型映像監視技術分野でディープラーニング技術の利用が急増しており、一部の応用では、人間の認識能力を超える成功的な技術開発が行われている。ディープラーニングに基づく顔認識技術を開発するためには大規模な学習データベースが必要であるが、構築された学習データベースが外部に露出すると、プライバシー侵害の問題が発生する可能性がある。
【0004】
このため、学習データベースの確保自体が困難な状況である。これによって、学習用データベースとして収集された映像が外部に流出する場合でも、個人情報が露出しないと共に学習データベースとしても使用できるようにする保護技術が求められている。
【0005】
これによって、顔画像が露出した場合に発生する可能性のあるプライバシー侵害の問題を解決するために、映像情報に対するマスキング技術(モザイク、スマイルアイコン処理など)や暗号化技術などが用いられている。
【0006】
このように処理されたCCTV映像は、マーケティングへの利用や人工知能学習用データへの利用が不可能であるという問題があり、このような既存技術が顔学習データベースに適用されるとしても、顔学習のためにはアンマスキング又は復号化過程を経て元の顔画像を用いるため、根本的に安全な対策とは言えない。
【0007】
特に、モザイク(mosaic)処理又はぼかし(blur)処理を施した映像は、肖像権やプライバシー侵害を回避する方法としては適切であるが、該当映像内の人物オブジェクトに対する認識又は特徴の検出が不可能であるため、学習データとしての利用は事実上不可能であり、映像内に多数の人物が登場する場合、多くのモザイクやぼかしにより映像自体が目障りになり、視聴者が集中しにくくなるため、マーケティング用途としての利用も困難であるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許公報第10-2023-0080111号(公開日:2023年06月07日)
【文献】韓国公開特許公報第10-2020-0036656号(公開日:2020年04月07日)
【文献】韓国登録特許公報第10-2515011号(登録日:2023年03月23日)
【文献】韓国公開特許公報第10-2022-0122457号(公開日:2022年09月02日)
【文献】韓国登録特許公報第10-2420151号(公開日:2022年07月07日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、撮影映像内の顔を存在しない仮想の顔に実時間で変換して非識別化処理するが、人工知能の学習及び分析に利用可能なように固有特徴と追跡性は維持することで、顔認識映像に対する安全な利用とプライバシーの保護が可能であり、敏感な個人情報の不正使用及び侵害脅威を防止できる、CCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係るCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムは、CCTV映像から認識された実際オブジェクトの固有特徴点を検出し、固有特徴点が検出された実際オブジェクトを仮想オブジェクトに変換して実際オブジェクトに対する非識別化を行い、非識別化処理された映像及び固有特徴点を送信するエッジデバイスと、前記エッジデバイスから非識別化処理された映像及び固有特徴点を受信して人工知能学習用データとして用いる管理サーバと、を含む。
【0011】
また、前記エッジデバイスは、CCTV映像から実際人物オブジェクトの固有顔特徴点を検出して実際人物オブジェクトをそれぞれ認識する人物オブジェクト顔認識部と、前記固有顔特徴点がメタデータとして含まれた実際人物オブジェクトの顔に対する外形的属性の変化により、実際人物オブジェクトを仮想人物オブジェクトに変換してCCTV映像の実際人物オブジェクトが非識別化処理された非識別化映像を生成する人物オブジェクト顔非識別化実行部と、前記非識別化映像及び前記メタデータを前記管理サーバに圧縮して送信するデータ送信部と、を含んでもよい。
【0012】
また、前記人物オブジェクト顔認識部は、姿勢推定(Pose Estimation)モデルのアルファポーズ(Alpha Pose)を用いて予め設定されたポイントを実際人物オブジェクトに対する顔検出領域として設定する顔検出領域設定部を含んでもよい。
【0013】
また、前記人物オブジェクト顔認識部は、実際人物オブジェクトに対する検出領域の最小サイズ、検出信頼度、最大検出数、及び非検出オプションのうちの少なくとも1つのパラメータを調整するパラメータ調整部を含み、前記パラメータ調整部は、人物オブジェクトから検出される固有顔特徴点の数を調整することで、前記非検出オプションに対するパラメータを調整することができる。
【0014】
また、前記人物オブジェクト顔非識別化実行部は、実際人物オブジェクトの髪色、髪型、肌の色、ひげ、老化及び表情のうちの少なくとも1つの外形的属性を変化させることで、実際人物オブジェクトを仮想人物オブジェクトに変換してもよい。
【0015】
また、前記人物オブジェクト顔非識別化実行部は、顔の外形的属性をドメイン化して各外形的属性に対する変化の程度を調整するが、外形的属性の変化結果がCCTV映像内の実際人物オブジェクト間で重複しないように非識別化の程度を調整してもよい。
【0016】
また、前記エッジデバイスは、CCTV映像から実際人物オブジェクトに対する衣服特徴を検出する人物オブジェクト衣服特徴検出部と、前記衣服特徴に基づいた実際人物オブジェクトの服装に対する外形的属性の変化により、実際人物オブジェクトの服装に対する非識別化を行う人物オブジェクト服装非識別化実行部と、をさらに含んでもよい。
【0017】
また、前記人物オブジェクト服装非識別化実行部は、実際人物オブジェクトの服装に対する色、デザインパターン、スタイル及び種類のうちのいずれか1つの外形的属性を変化させてもよい。
【0018】
また、前記人物オブジェクト服装非識別化実行部は、服装の外形的属性をドメイン化して各外形的属性に対する変化の程度を調整するが、外形的属性の変化がCCTV映像内の実際人物オブジェクト間で重複しないように非識別化の程度を調整してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮影映像内の顔を存在しない仮想の顔に実時間で変換して非識別化処理するが、人工知能の学習及び分析に利用可能なように固有特徴と追跡性は維持することで、顔認識映像に対する安全な利用とプライバシーの保護が可能であり、敏感な個人情報の不正使用及び侵害脅威を防止できる、CCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムの全体構成を示す概要図である。
図2】本発明の実施形態に係るエッジデバイスの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る人物オブジェクト顔認識部の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る顔検出領域設定部の機能を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るパラメータ調整部の機能を説明するために示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るエッジデバイスの全体動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される用語について簡略に説明し、本発明について具体的に説明する。
本発明で使用される用語は、本発明における機能を考慮して可能な限り現在広く使用されている一般的な用語を選択したが、これは、当該分野に従事する技術者の意図又は前例、新しい技術の出現などにより変化する可能性がある。また、場合によっては、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、当該発明の説明においてその意味を詳しく説明する。したがって、本発明で使用される用語は単純な用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本発明の全体的な内容に基づいて定義される。
明細書全体を通じて、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素が排除されることを意味するものではなく、他の構成要素が含まれていてもよいことを意味する。また、明細書に記載された「…部」、「モジュール」などの用語は、少なくとも1つ以上の機能や動作を処理する単位を意味し、これはハードウェア又はソフトウェアとして具現されるか、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして実現されてもよい。
以下、添付の図面を参考して本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態に実施することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。また、図面では、本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通じて同様の部分には同様の図面符号を付した。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムの全体構成を示す概要図であり、図2は、本発明の実施形態に係るエッジデバイスの構成を示すブロック図であり、図3は、本発明の実施形態に係る人物オブジェクト顔認識部の構成を示すブロック図であり、図4は、本発明の実施形態に係る顔検出領域設定部の機能を示す図であり、図5は、本発明の実施形態に係るパラメータ調整部の機能を説明するために示す図であり、図6は、本発明の実施形態に係るエッジデバイスの全体動作を示す図である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム1000は、エッジデバイス100及び管理サーバ200のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0024】
前記エッジデバイス100は、CCTV映像から認識された実際オブジェクトの固有特徴点を検出し、固有特徴点が検出された実際オブジェクトを仮想オブジェクトに変換して実際オブジェクトに対する非識別化を行い、非識別化処理された映像及び固有特徴点に対するデータ(メタデータ)を人工知能学習データとして管理サーバ200に送信することができる。
【0025】
本実施形態において、オブジェクトは、人(人物)を対象として行ってもよいが、これに限定されず、動物(犬、猫などのペット)を対象として行ってもよい。ただし、以下のオブジェクトについては、発明の目的に最も適合する対象として人(人物)を対象として説明する。
【0026】
このようなエッジデバイス100は、図2に示すように、人物オブジェクト顔認識部110、人物オブジェクト顔非識別化実行部120、人物オブジェクト衣服特徴検出部130、人物オブジェクト服装非識別化実行部140、及びデータ送信部150のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0027】
前記人物オブジェクト顔認識部110は、CCTV映像から実際人物オブジェクトの固有顔特徴点を検出して、実際人物オブジェクトをそれぞれ認識することができる。
【0028】
このような人物オブジェクト顔認識部110は、SOTAモデルである「Retina Face」モデルを用いて画像及び動画で実時間で顔を検出し、検出された顔画像からオブジェクトごとの固有顔特徴点を抽出することができる。「Retina Face」モデルの「Backbone」を軽いモデルに変更するこどで、CPU環境でも実時間で推論が可能である。「Retina Face」モデルは、5個の特徴点から1000個の特徴点まで柔軟に抽出可能なモデルであり、特徴点をオブジェクト分析に用いるのに適している。
【0029】
また、人物オブジェクト顔認識部110は、FPN(Feature Pyramid Network)を適用することで、CCTV映像での問題点となる様々なスケールの顔画像に対する特徴点を抽出することができる。また、人物オブジェクト顔認識部110は、それぞれの「Pyramid」レベルに「Context Module」が追加され、それによる収容領域が強化されることで、CCTV映像内の小さな顔画像でも高い検出性能を維持することができる。
【0030】
また、人物オブジェクト顔認識部110は、オブジェクト探知モデルの画像に対する前処理機能をCUDA(Compute Unified Device Architecture)で実現することができ、「TensorRT」モデルを用いて高速化を実現することもできる。
前記人物オブジェクト顔認識部110は、図3に示すように、顔検出領域設定部111及びパラメータ調整部112のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0031】
前記顔検出領域設定部111は、顔検出率と持続的な追跡のために姿勢推定(Pose Estimation)モデルのアルファポーズ(Alpha Pose)を用いて予め設定されたポイントを実際人物オブジェクトに対する顔検出領域として設定することができる。顔検出モデルのみ適用する場合には、顔の側面は精度が悪く後面は検出できない点から、当該オブジェクトに対する持続的な追跡性能が低下するため、姿勢推定モデルを適用することで、顔検出が不可能な場合でもオブジェクトに対する持続的な追跡が可能となる。
【0032】
例えば、姿勢推定により、首を示すポイントの上には顔領域として設定され、設定された領域による検出プロセスが行われてもよい。このような姿勢推定により得られた特定のキーポイント(Key point)の上には顔があると推定することができるため、既存の顔認識結果と組み合わせることで、より信頼度の高い結果を提供することができる。
【0033】
前記パラメータ調整部112は、実際人物オブジェクトに対する検出領域の最小サイズ、検出信頼度、最大検出数、及び非検出オプションのうちの少なくとも1つのパラメータを調整することができる。
【0034】
より具体的には、パラメータ調整部112は、画像又は映像内から検出できる顔の最小サイズに対するパラメータ設定(調整)、検出信頼度に対する閾値の設定(調整)、クラスタ化された顔を最大に検出できる数の設定(調整)、固有顔特徴点の数の調整によって非検出オプションに対するパラメータ調整することができる。非検出オプションの場合、マスク着用などにより顔の露出度が低いオブジェクトは、顔の特徴点が検出されない可能性が高いため、特徴点の数を調整してエッジデバイス100の負荷を調整することで、そのような状況でもオブジェクトに対する特徴点を検出できるようにする。
【0035】
このように、人物オブジェクト顔認識部110は、ウォークスルー方式で混雑時に実時間で顔の特徴点を検出し、このようなウォークスルー方式では、正面の顔の認識だけでなく側面及び後面に対する認識も重要であり、このために姿勢推定モデルを適用することで、正面及び側面だけでなく側面と後面における顔認識も可能となる。多数の顔の特徴点を検出する過程で、遅延速度を低減するために、検出する特徴点の数を調整することで検出モデルの推論速度を向上させることができ、実時間顔検出速度を向上させるために、モデル構造の改善、重み剪定、モデル圧縮などのアルゴリズムを通じる軽量化の進行が可能となる。
【0036】
前記人物オブジェクト顔非識別化実行部120は、固有顔特徴点がメタデータとして含まれた実際人物オブジェクトの顔に対する外形的属性の変化により、実際人物オブジェクトを仮想人物オブジェクトに変換して、CCTV映像の実際人物オブジェクトが非識別化処理された非識別化映像を生成することができる。
【0037】
例えば、人物オブジェクト顔非識別化実行部120は、StarGAN、StarGAN2、STGAN、StyleGANEXなどのImage to Image Translation、Face Attribute Manipulation(Editing)モデルを参考して、顔の特徴をドメインとして指定及び学習することで、意図の通りに仮想の顔の特徴(属性)を調整することができる。「StarGAN」モデルは、単一のニューラルネットワークでマルチドメイン変換を行うことができるモデルであり、仮想顔画像を生成し、仮想顔特徴を特定して顔を変換するのに適している。すなわち、特定のパラメータ(ドメイン)を設定して、所望の外形的特徴(属性)を有する仮想の顔に変換することができ、様々な外形的特性の組み合わせによる非識別化の程度も調節することができる。
【0038】
前記人物オブジェクト顔非識別化実行部120は、実際人物オブジェクトの髪色、髪型、肌の色、ひげ、老化及び表情のうちの少なくとも1つの外形的属性を変化させることで、実際人物オブジェクトを仮想人物オブジェクトに変換することができる。このとき、人物オブジェクト顔非識別化実行部120は、顔の外形的属性をドメイン化して各外形的属性に対する変化の程度をそれぞれ調整するが、外形的属性の変化結果がCCTV映像内の実際人物オブジェクト間で重複しないように非識別化の程度を調整することができる。
【0039】
すなわち、1つのCCTV映像内で変換された仮想人物オブジェクト(変換された結果物)が互いに同一にならないように、外形的属性の変化の程度を調整することができる。例えば、実際人物オブジェクトAとBが存在する場合、AとBの髪色を同一に変換するか、同一の髪型や長さに変換するか、同一の肌の色に変換せず、互いに異なる組み合わせを含む外形的属性が適用されるように、その変化の程度や種類を設定することができる。多くのパラメータを同時に適用することにより非識別化の程度をさらに高めることができ、ランダムなパラメータの設定によりCCTV映像間で同一人物の追跡を断つかどうかを選択することもできる。
【0040】
このように、実際人物オブジェクトの外形的属性を変化させて仮想人物オブジェクトに変換しても、仮想人物オブジェクトのメタデータとして固有顔特徴点はそのまま維持することができる。すなわち、実際人物オブジェクトが仮想人物オブジェクトに変換されても、当該仮想人物オブジェクトの固有顔特徴点は、実際人物オブジェクトが有していた固有顔特徴点と同一に維持(当該オブジェクトの特徴は内在されている)され、映像内の仮想人物オブジェクトに対するオブジェクト追跡時にも当該固有顔特徴点に基づいた追跡性はそのまま維持することができる。
前記人物オブジェクト衣服特徴検出部130は、CCTV映像から実際人物オブジェクトに対する衣服特徴を検出することができる。
【0041】
例えば、CCTV映像内に実際人物オブジェクトAとBが存在する場合、Aは赤いロングワンピースを着ており、Bは黒い半袖シャツとショートパンツを着ているという各オブジェクトごとの衣服特徴(衣服の種類、色、デザインパターン、素材など)を検出することができる。
【0042】
前記人物オブジェクト服装非識別化実行部140は、衣服特徴に基づいた実際人物オブジェクトの服装に対する外形的属性の変化により、実際人物オブジェクトの服装に対する非識別化を行うことができる。
【0043】
より具体的には、人物オブジェクト服装非識別化実行部140は、実際人物オブジェクトの服装に対する色、デザインパターン、スタイル及び種類のうちのいずれか1つの外形的属性を変化させることができる。
【0044】
例えば、実際人物オブジェクトAに対して、赤いロングワンピースを着ているという衣服特徴が検出された場合に、黄色のショートツーピースのように服装の色、形態(スタイル)などを変換することができる。また、実際人物オブジェクトBに対して、黒い半袖シャツとショートパンツを着ているという衣服特徴が検出された場合に、上半身は白の長袖シャツ、下半身はグレーの長ズボンのように服装の色、形態(スタイル)などを変換することができる。
【0045】
このように、実際人物オブジェクトの衣服に対する外形的属性を変化させて他の服装に変換しても、仮想人物オブジェクトのメタデータとしての衣服特徴に対するデータはそのまま維持することができる。すなわち、実際人物オブジェクトの服装が仮想の新しい服装に変換されたとしても、当該仮想人物オブジェクトの衣服特徴データは、実際人物オブジェクトが有していた衣服特徴データと同一に維持され、映像内の仮想人物オブジェクトに対するオブジェクト追跡時にも当該衣服特徴データに基づいた追跡性はそのまま維持することができる。
【0046】
前記人物オブジェクト服装非識別化実行部140は、服装の外形的属性をドメイン化して各外形的属性に対する変化の程度を調整するが、外形的属性の変化がCCTV映像内の実際人物オブジェクト間で重複しないように非識別化の程度を調整することができる。
【0047】
すなわち、1つのCCTV映像内で変換された仮想人物オブジェクト(変換された結果物)の服装が互いに同一でないように、衣服に関連する外形的属性の変化の程度を調整することができる。例えば、実際人物オブジェクトAとBが存在する場合、AとBの両方が同一の色とスタイルの衣服に変換されるのではなく、互いに異なる組み合わせを含む外形的属性が適用されるように、その変化の程度や種類を設定することができる。
【0048】
このように、人物オブジェクト服装非識別化実行部140は、実際人物オブジェクトに対する服装非識別化を追加することで、個人情報保護機能をさらに強化することができる。
前記データ送信部150は、非識別化処理された映像を圧縮してメタデータ(固有顔特徴点、衣服特徴)と共に管理サーバ200に送信することができる。
前記管理サーバ200は、エッジデバイス100から非識別化処理された映像及び固有特徴点を受信して人工知能学習用データとして用いることができる。
【0049】
従来は、CCTV映像内の人物オブジェクトの顔をモザイク(mosaic)処理又はぼかし(blur)処理することにより、肖像権やプライバシーの侵害を回避していたが、このような映像処理方法では、人物オブジェクトに対する認識又は特徴の検出が不可能であるため、学習データとして利用することができなかった。
【0050】
本実施形態に係る非識別化処理された映像は、メタデータとして各人物オブジェクトに対する固有顔特徴点を内在しており、視聴者の立場では、映像内に登場する各個人を識別することはできないが、人工知能学習アルゴリズムでは、当該メタデータを用いて映像内の人物オブジェクトに対して学習することができるため、肖像権及びプライバシーを保護すると共に人工知能学習データとして利用することができ、CCTV映像に対するマーケティング用途などの様々な目的にも利用することができる。
【0051】
以上の説明は、本発明に係るCCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムを実施するための一実施形態に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲で請求するように、本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、様々な変更を実施できる範囲まで本発明の技術的精神がある。
【符号の説明】
【0052】
1000:CCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システム
100:エッジデバイス
110:人物オブジェクト顔認識部
111:顔検出領域設定部
112:パラメータ調整部
120:人物オブジェクト顔非識別化実行部
130:人物オブジェクト衣服特徴検出部
140:人物オブジェクト服装非識別化実行部
150:データ送信部
200:管理サーバ
【要約】
【課題】CCTV映像における認識オブジェクトに対する非識別化システムに関し、撮影映像内の顔を存在しない仮想の顔に実時間で変換して非識別化処理するが、人工知能の学習及び分析に利用可能なように固有特徴と追跡性は維持することで、顔認識映像に対する安全な利用とプライバシーの保護が可能であり、敏感な個人情報の不正使用及び侵害脅威を防止すること。
【解決手段】CCTV映像から認識された実際オブジェクトの固有特徴点を検出し、固有特徴点が検出された実際オブジェクトを仮想オブジェクトに変換して実際オブジェクトに対する非識別化を行い、非識別化処理された映像及び固有特徴点を送信するエッジデバイスと、前記エッジデバイスから非識別化処理された映像及び固有特徴点を受信して人工知能学習用データとして用いる管理サーバと、を含む。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6