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特許7614597ガスケット、ガスケットの製造方法及びガスケットの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ガスケット、ガスケットの製造方法及びガスケットの使用方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20250108BHJP
   F16L 23/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16J15/10 G
F16J15/10 A
F16L23/02 D
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2024537181
(86)(22)【出願日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2024015489
【審査請求日】2024-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524176317
【氏名又は名称】林 正隆
(73)【特許権者】
【識別番号】524176328
【氏名又は名称】塘 博衛
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】林 開俊
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173837(JP,A)
【文献】特開2007-051257(JP,A)
【文献】特開平09-269069(JP,A)
【文献】特開平09-096388(JP,A)
【文献】実開平01-083965(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方にシート表面を有し、他方にシート裏面を有し、前記シート表面から前記シート裏面を貫通する貫通孔が形成されたシート状基材を備え、
前記シート状基材は、
中空部が前記貫通孔となる筒部と、
前記筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記筒部を囲むように設けられる延設部と、を備え、
前記延設部は、
第1延設部と、
前記第1延設部よりも前記シート表面側に位置する第2延設部と、を備え、
前記第1延設部と前記第2延設部とが隣接することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記第1延設部と前記第2延設部とは密接していることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記シート表面及び前記シート裏面に対して押し当て力が加わったとき、前記押し当て力に起因して前記筒部に生じるひずみエネルギーを開放可能な程度に、前記第1延設部と前記第2延設部とが個別に変形可能となっていることを特徴とする請求項2記載のガスケット。
【請求項4】
一方にシート表面を有し、他方にシート裏面を有し、前記シート表面から前記シート裏面を貫通する貫通孔が形成されたシート状基材と、
前記シート状基材の外側の側面に形成された側面切り込みと、を備え、
前記側面切り込みは、前記外側の側面から前記貫通孔に向かう方向に延び、
前記側面切り込みの先端部は、前記外側の側面と前記貫通孔との間の中途部に位置するとともに、前記貫通孔を囲むように形成されることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
前記シート状基材のうち、前記側面切り込みによって分断された部分を第1分断片と第2分断片と定義した際、前記第1分断片と前記第2分断片とが密接していることを特徴とする請求項4記載のガスケット。
【請求項6】
前記側面切り込みは、
第1側面切り込みと、第2側面切り込みと、を備え、
前記第1側面切り込みと前記第2側面切り込みとは、前記シート表面から前記シート裏面に向かって並ぶように形成されることを特徴とする請求項4または5記載のガスケット。
【請求項7】
前記分断片の厚みは、前記側面切り込みの端部から前記貫通孔までの長さよりも、薄いことを特徴とする請求項4または5記載のガスケット。
【請求項8】
前記シート状基材は、
中空部が前記貫通孔となる筒部と、
前記筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記筒部を囲むように設けられる延設部と、を備え、
前記延設部は、
第1延設部と、
前記第1延設部よりも前記シート表面側に位置する第2延設部と、を備え、
前記側面切り込みは、前記第1延設部と前記第2延設部との間に位置することを特徴とする請求項4記載のガスケット。
【請求項9】
前記シート状基材は、
前記筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記筒部を囲むように設けられる第3延設部を備え、
前記第3延設部は、前記第2延設部からみて前記第1延設部と反対側の位置に配され、
前記第2延設部と前記第3延設部とは密接していることを特徴とする請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケット。
【請求項10】
前記筒部と前記延設部とは一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケット。
【請求項11】
前記シート状基材は円環状となっており、
前記延設部は、円環状となっていることを特徴とする請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケット。
【請求項12】
前記シート表面側から前記シート裏面側における前記第1延設部及び前記第2延設部の長さは、前記筒部の厚みよりも、薄いことを特徴とする請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケット。
【請求項13】
形成材料が熱可塑性フルオロポリマーであることを特徴とする請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケット。
【請求項14】
第1流路が形成された第1部品と第2流路が形成された第2部品との間に配され、前記第1流路と前記第2流路とが連通するように前記第1部品と前記第2部品との接合を行う際に用いられるガスケットの製造方法であって、
前記ガスケットは、請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケットであり、
前記筒部は、
前記第1延設部と連なる第1筒部と、
前記第2延設部と連なる第2筒部と、を備え、
前記第1筒部と前記第2筒部とを分断する分断ステップを備えることを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項15】
前記分断ステップの前に行われるものであり、前記ガスケットの厚みが、前記第1部品と前記第2部品との接合が可能な厚みよりも大きいか否かを判別する判別ステップを備え、
前記ガスケットの厚みが、前記第1部品と前記第2部品との接合が可能な厚みよりも大きいと判別したときには、前記第1部品と前記第2部品との接合が可能な厚みとなるように、前記分断ステップを行うことを特徴とする請求項14記載のガスケットの製造方法。
【請求項16】
前記分断ステップでは、前記ガスケットから、前記第1延設部と前記第1筒部とを備える第1ガスケットと、前記第2延設部と前記第2筒部とを備える第2ガスケットと、を得るように、前記第1筒部と前記第2筒部とを分断することを特徴とする請求項14記載のガスケットの製造方法。
【請求項17】
第1流路が形成された第1部品と第2流路が形成された第2部品との間に配され、前記第1流路と前記第2流路とが連通するように前記第1部品と前記第2部品との接合を行う際に用いられるガスケットの製造方法であって、
前記ガスケットは、請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケットであり、
前記筒部は、
前記第1延設部と連なる第1筒部と、
前記第2延設部と連なる第2筒部と、を備え、
前記第1部品及び前記第2部品から前記ガスケットを取り外す取外ステップと、
前記取外ステップの後に行われ、前記第1筒部と前記第1延設部とを前記ガスケットから取り除く除去ステップと、を備えることを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項18】
前記筒部は、
前記第2筒部からみて前記第1筒部とは反対側の位置に配された第3筒部をさらに備え、
前記シート状基材は、前記第3筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記第3筒部を囲むように設けられるとともに、前記第2延設部と前記第1延設部とに対して密接する第3延設部を備えることを特徴とする請求項17記載のガスケットの製造方法。
【請求項19】
前記除去ステップでは、前記第3筒部と前記第3延設部とを前記ガスケットから取り除くことを特徴とする請求項18記載のガスケットの製造方法。
【請求項20】
第1部品に形成された第1流路と第2部品に形成された第2流路とが連通するように前記第1部品と前記第2部品との間に配されるガスケットの製造方法であって、
前記ガスケットは、請求項1ないし3及び8のうちいずれか1項記載のガスケットであり、
前記シート状基材の側面または前記側面となる母材に刃を当てることにより、側面切り込みを形成する側面切り込み形成ステップを備え、
前記側面切り込みは、前記側面に形成される切込みであり、
前記側面切り込み形成ステップは、
前記シート状基材に設定された基準位置から前記シート状基材の厚み方向に対して所定厚みだけ離れた開始位置に刃をセットする刃位置決めステップと、
前記刃位置決めステップの後に行われ、前記開始位置から前記シート状基材の側面に対して前記刃を侵入させる刃侵入ステップと、
前記刃侵入ステップの後に行われ、前記シート状基材から前記刃を退避させる刃退避ステップと、を備え、
前記刃侵入ステップでは、前記外側の側面と貫通孔との中途部まで前記刃の侵入を行い、
前記刃侵入ステップによって形成される側面切り込みは、前記貫通孔を囲むように形成されることを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項21】
前記中途部から前記貫通孔までの長さよりも、前記所定厚みが薄いことを特徴とする請求項20記載のガスケットの製造方法。
【請求項22】
前記側面切り込み形成ステップでは、コントローラによって前記刃の位置が制御されるとともに、前記側面切込みが複数形成され、
前記コントローラは、前記側面切り込みの先端部から前記貫通孔までの長さよりも、前記側面切込みの間隔が薄くなるように前記刃の制御を行うことを特徴とする請求項20記載のガスケットの製造方法。
【請求項23】
前記刃位置決めステップは、
前記基準位置は前記シート状基材のシート表面である第1刃位置決めステップと、
前記基準位置は、前記第1刃位置決めステップの前記開始位置である第2刃位置決めステップと、を備え、
前記刃侵入ステップは、
前記第1刃位置決めステップの後に行われる第1刃侵入ステップと、
前記第2刃位置決めステップの後に行われる第2刃侵入ステップと、を備え、
前記刃退避ステップは、
前記第1刃侵入ステップの後に行われる第1刃退避ステップと、
前記第2刃侵入ステップの後に行われる第2刃退避ステップと、を備えることを特徴とする請求項20記載のガスケットの製造方法。
【請求項24】
形成材料が熱可塑性フルオロポリマーであることを特徴とする請求項14記載のガスケットの製造方法。
【請求項25】
第1部品に形成された第1流路と第2部品に形成された第2流路とが連通するように前記第1部品と前記第2部品との間に配されるガスケットの使用方法であって、
前記ガスケットは、請求項1ないし及び8のうちいずれか1項記載のガスケットであり、
前記筒部は、
前記第1延設部と連なる第1筒部と、
前記第2延設部と連なる第2筒部と、を備え、
前記第1部品及び前記第2部品から前記ガスケットを取り外す取外ステップと、
前記取外ステップの後に行われ、前記第1筒部と前記第1延設部とを前記ガスケットから取り除く除去ステップと、
前記除去ステップを経た前記ガスケットを用いて、前記第1部品と前記第2部品との接合を行う接合ステップと、を備えることを特徴とするガスケットの使用方法。
【請求項26】
第1部品に形成された第1流路と第2部品に形成された第2流路とが連通するように前記第1部品と前記第2部品との間に配されるガスケットの使用方法であって、
前記ガスケットは、請求項1ないし及び8のうちいずれか1項記載のガスケットであり、
前記筒部は、
前記第1延設部と連なる第1筒部と、
前記第2延設部と連なる第2筒部と、
前記第2筒部からみて前記第1筒部とは反対側の位置に配された第3筒部と、を備え、
前記シート状基材は、前記第3筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記第3筒部を囲むように設けられるとともに、前記第2延設部と前記第1延設部とに対して密接する第3延設部を備え、
前記第1部品及び前記第2部品から前記ガスケットを取り外す取外ステップと、
前記取外ステップの後に行われ、前記第1筒部と前記第1延設部とを前記ガスケットから取り除く除去ステップと、
前記除去ステップを経た前記ガスケットを用いて、前記第1部品と前記第2部品との接合を行う接合ステップと、を備えることを特徴とするガスケットの使用方法。
【請求項27】
前記除去ステップでは、前記第3筒部と前記第3延設部とを前記ガスケットから取り除くことを特徴とする請求項26記載のガスケットの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット、ガスケットの製造方法及びガスケットの使用方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、フランジ付継手の封印材として、さまざまな産業分野で広く使用されている部品である。ガスケットは、複数の機械部品の合わせ面に挟まれるように配され、合わせ面からの漏れやそこへの流入を防ぐように設計されている。また、荷重、温度、圧力などの過酷な条件にも耐えるよう様々な工夫がされている。例えば、特許文献1では、フッ素ゴムからなる第1部材と、第1部材よりも硬質の材料であり、耐プラズマ性や耐腐食ガス性が良好なフッ素樹脂からなる第2部材と、から構成された複合シール材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5126995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスケットを長期間使用していると、複数の機械部品からの押し付けにより、ガスケットが裂けたり割れたりする。この結果、ガスケットとしての寿命は短くなってしまう。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、従来に比べて寿命が長いガスケット、ガスケットの製造方法及びガスケットの使用方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスケットは、一方にシート表面を有し、他方にシート裏面を有し、前記シート表面から前記シート裏面を貫通する貫通孔が形成されたシート状基材を備え、前記シート状基材は、中空部が前記貫通孔となる筒部と、前記筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記筒部を囲むように設けられる延設部と、を備え、前記延設部は、第1延設部と、前記第1延設部よりも前記シート表面側に位置する第2延設部と、を備え、前記第1延設部と前記第2延設部とが隣接することを特徴とする。
【0007】
前記第1延設部と前記第2延設部とは密接していることが好ましい。前記シート表面及び前記シート裏面に対して押し当て力が加わったとき、前記押し当て力に起因して前記筒部に生じるひずみエネルギーを開放可能な程度に、前記第1延設部と前記第2延設部とが個別に変形可能となっていることが好ましい。
【0008】
本発明のガスケットは、一方にシート表面を有し、他方にシート裏面を有し、前記シート表面から前記シート裏面を貫通する貫通孔が形成されたシート状基材と、前記シート状基材の外側の側面に形成された側面切り込みと、を備え、前記側面切り込みは、前記外側の側面から前記貫通孔に向かう方向に延び、前記側面切り込みの先端部は、前記外側の側面と前記貫通孔との間の中途部に位置するとともに、前記貫通孔を囲むように形成されることを特徴とする。
【0009】
前記シート状基材のうち、前記側面切り込みによって分断された部分を第1分断片と第2分断片と定義した際、前記第1分断片と前記第2分断片とが密接していることが好ましい。前記側面切り込みは、第1側面切り込みと、第2側面切り込みと、を備え、前記第1側面切り込みと前記第2側面切り込みとは、前記シート表面から前記シート裏面に向かって並ぶように形成されることが好ましい。前記分断片の厚みは、前記側面切り込みの端部から前記貫通孔までの長さよりも、薄いことが好ましい。前記シート状基材は、中空部が前記貫通孔となる筒部と、前記筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記筒部を囲むように設けられる延設部と、を備え、前記延設部は、第1延設部と、前記第1延設部よりも前記シート表面側に位置する第2延設部と、を備え、前記側面切り込みは、前記第1延設部と前記第2延設部との間に位置することが好ましい。
【0010】
前記シート状基材は、前記筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記筒部を囲むように設けられる第3延設部を備え、前記第3延設部は、前記第2延設部からみて前記第1延設部と反対側の位置に配され、前記第2延設部と前記第3延設部とは密接していることが好ましい。
【0011】
前記筒部と前記延設部とは一体形成になっていることが好ましい。前記シート状基材は円環状となっており、前記延設部は、円環状となっていることが好ましい。前記シート表面側から前記シート裏面側における前記第1延設部及び前記第2延設部の長さは、前記筒部の厚みよりも、薄いことが好ましい。形成材料が熱可塑性フルオロポリマーであることが好ましい。
【0012】
本発明のガスケットの製造方法は、上記のガスケットに関するものであり、前記筒部は、前記第1延設部と連なる第1筒部と、前記第2延設部と連なる第2筒部と、を備え、前記第1筒部と前記第2筒部とを分断する分断ステップを備えることを特徴とする。
【0013】
前記分断ステップの前に行われるものであり、前記ガスケットの厚みが、前記第1部品と前記第2部品との接合が可能な厚みよりも大きいか否かを判別する判別ステップを備え、前記ガスケットの厚みが、前記第1部品と前記第2部品との接合が可能な厚みよりも大きいと判別したときには、前記第1部品と前記第2部品との接合が可能な厚みとなるように、前記分断ステップを行うことが好ましい。前記分断ステップでは、前記ガスケットから、前記第1延設部と前記第1筒部とを備える第1ガスケットと、前記第2延設部と前記第2筒部とを備える第2ガスケットと、を得るように、前記第1筒部と前記第2筒部とを分断することが好ましい。
【0014】
本発明のガスケットの製造方法は、上記のガスケットに関するものであり、前記筒部は、前記第1延設部と連なる第1筒部と、前記第2延設部と連なる第2筒部と、を備え、前記第1部品及び前記第2部品から前記ガスケットを取り外す取外ステップと、前記取外ステップの後に行われ、前記第1筒部と前記第1延設部とを前記ガスケットから取り除く除去ステップと、を備えることを特徴とする。
【0015】
前記筒部は、前記第2筒部からみて前記第1筒部とは反対側の位置に配された第3筒部をさらに備え、前記シート状基材は、前記第3筒部の外側面から外側へ延びるとともに前記第3筒部を囲むように設けられるとともに、前記第2延設部と前記第1延設部とに対して密接する第3延設部を備えることが好ましい。前記除去ステップでは、前記第3筒部と前記第3延設部とを前記ガスケットから取り除くことが好ましい。
【0016】
本発明のガスケットの製造方法は、上記のガスケットに関するものであり、前記シート状基材の側面または前記側面となる母材に刃を当てることにより、前記側面切り込みを形成する側面切り込み形成ステップを備え、前記側面切り込み形成ステップは、前記シート状基材に設定された基準位置から前記シート状基材の厚み方向に対して所定厚みだけ離れた開始位置に刃をセットする刃位置決めステップと、前記刃位置決めステップの後に行われ、前記開始位置から前記シート状基材の側面に対して前記刃を侵入させる刃侵入ステップと、前記刃侵入ステップの後に行われ、前記シート状基材から前記刃を退避させる刃退避ステップと、を備え、前記刃侵入ステップでは、前記外側の側面と貫通孔との中途部まで前記刃の侵入を行い、前記刃侵入ステップによって形成される側面切り込みは、前記貫通孔を囲むように形成されることを特徴とする。
【0017】
前記中途部から前記貫通孔までの長さよりも、前記所定厚みが薄いことが好ましい。前記側面切り込み形成ステップでは、コントローラによって前記刃の位置が制御され、前記コントローラは、前記側面切り込みの先端部から前記貫通孔までの長さよりも、前記分断部の厚みが薄くなるように前記刃の制御を行うことが好ましい。前記刃位置決めステップは、前記基準位置は前記シート状基材のシート表面である第1刃位置決めステップと、前記基準位置は、前記第1刃位置決めステップの前記開始位置である第2刃位置決めステップと、を備え、前記刃侵入ステップは、前記第1刃位置決めステップの後に行われる第1刃侵入ステップと、前記第2刃位置決めステップの後に行われる第2刃侵入ステップと、を備え、前記刃退避ステップは、前記第1刃侵入ステップの後に行われる第1刃退避ステップと、前記第2刃侵入ステップの後に行われる第2刃退避ステップと、を備えることが好ましい。形成材料が熱可塑性フルオロポリマーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来に比べて寿命が長いガスケット、ガスケットの製造方法及びガスケットの使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は、第1配管と、第2配管と、第1配管と第2配管とを連結するガスケットと、を備える継手機構の概要を示す側面図であり、(B)は、継手機構の分解図である。
図2】(A)は、ガスケットの概要を示す正面図であり、(B)は、ガスケットの概要を示す側面図であり、(C)は、ガスケットの概要を示す底面図である。
図3】(A)は、ガスケットの概要を示す側面図であり、(B)は、ガスケットの側面の概要を示す拡大図であり、(C)は、ガスケットの概要を示すIIIc-IIIc’線断面図である。
図4】(A)は、貫通孔の全周を囲むようにガスケットの側面に設けられた側面切り込みの概要を示す説明図であり、(B)は、ガスケットの概要を示す正面図であり、(C)は、側面切り込み上に設定されたIVc-IVc’線に関するガスケットの概要を示す断面図であり、(D)は、IVd-IVd’線に関する円環分割部及び一体部の断面の概要を示す断面図である。
図5】(A)~(C)は、表面及び裏面から外力が加わったときのガスケットの概要を示すIIIc-IIIc’線断面図であり、(A)は変形前のものであり、(B)は、分断片が、表面側から裏面側へ向かうにしたがって径方向外側へ大きく変形したものであり、(C)は、厚み方向において、表面側及び裏面側から中央に向かうにしたがって、分断片が径方向外側へ大きく変形したものである。
図6】ガスケットの使用方法の概要を示すフロー図である。
図7】(A)は、最も外側に位置する分断片が残った状態のガスケットの概要を示すIIIc-IIIc’線断面図であり、最も外側に位置する分断片が取り除かれた状態のガスケットの概要を示すIIIc-IIIc’線断面図である。(C)は、一体部及び円環分断部の概要を示す拡大断面図である。(D)は、一体部に設けられた切断ラインCLの概要を示す拡大断面図である。なお、(C)及び(D)においては、図が煩雑になるため、断面を示すハッチングを省略する。
図8】ガスケットの製造装置の概要を示す説明図である。
図9】ガスケットの製造方法の概要を示すフロー図である。
図10】(A)は、ガスケットの製造方法において、基材に設定される刃の侵入経路SLの概要を示す断面図である。(B)は、ガスケットの製造方法によって、側面に側面切り込みが形成されたガスケットの概要を示す側面図である。
図11】(A)は、ガスケットの製造方法において、1本目の側面切り込みが形成された基材の概要を示す断面図である。(B)は、ガスケットの製造方法において、2本目の側面切り込みが形成された基材の概要を示す断面図である。(C)は、ガスケットの製造方法において、4本目の側面切り込みが形成された基材の概要を示す断面図である。
図12】(A)は、ガスケット(変形例)の概要を示す正面図であり、(B)は、ガスケット(変形例)の概要を示す側面図であり、(C)は、ガスケット(変形例)の概要を示す底面図である。
図13】(A)は、ガスケット(変形例)の概要を示す側面図であり、(B)は、ガスケット(変形例)の側面の概要を示す拡大図であり、(C)は、ガスケット(変形例)の概要を示すXIIIc-XIIIc’線断面図である。
図14】(A)は、貫通孔の全周を囲むように設けられた側面切り込みの概要を示す説明図であり、(B)は、ガスケット(変形例)の概要を示す正面図である。
図15】ガスケットの使用方法の概要を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(A)に示すように、継手機構Hは、第1配管1Pと、第2配管2Pと、第1配管1Pと第2配管2Pとを連結するガスケット100と、を備える。ガスケット100は、第1配管1Pに設けられた第1フランジ1Fと、第2配管2Pに設けられた第2フランジ2Fと、の間に配される。図1(B)に示すように、ガスケット100は、シート状の基材10(シート状基材)を備える。基材10は、第1フランジ1Fに当接する表面11(シート表面)と、第2フランジ2Fに当接する裏面12(シート裏面)と、を備える。基材10には、表面11から裏面12まで貫通する貫通孔10Xが形成される。貫通孔10Xは、第1配管1Pの第1流路1Rと、第2配管2Pの第2流路2Rと、を連通する。
【0021】
第1フランジ1F及び第2フランジ2Fには、それぞれ、ボルト孔(図示省略)が形成される。ボルト孔にボルトBを挿入し、ボルトBに対しナットNを螺合する。こうして、第1フランジ1F及び第2フランジ2FにおけるボルトB及びナットNの締結により、第1配管1P及び第2配管はガスケット100を介して連結する(図1(A))。これにより、第1流路1R及び第2流路2Rは、貫通孔10Xによって連通するとともに、ガスケット100により外部空間から密閉された状態となる。
【0022】
継手機構Hは、石油プラント、食品プラント、医薬品プラント、化学プラント、半導体製造装置(ドライエッチング装置やプラズマCVD装置等)等のようなパイピングプラントにおける配管(金属製又は樹脂製)の継手部分に適用される。
【0023】
以下、説明の便宜上、水平面内における任意の方向をX方向とし、水平面内における任意の方向のうちX方向と直交する方向をY方向とし、水平面に直交する方向をZ方向とする。
【0024】
図2(A)~2(C)に示すように、ガスケット100は、シート状の基材10(シート状基材)を備える。基材10は、Z方向において、自身の厚みを有する。正面視において、基材10の輪郭は円形状であり、基材10の中央部には、Z方向に延びる貫通孔10Xが形成される。貫通孔10Xは、基材10の表面11及び基材10の裏面12において、それぞれ円形状に開口する。貫通孔10Xは、基材10の輪郭線に対して同心円状となっている。基材10の外側半径は、R1であり、内側半径はR2である。このため、基材10は、平面視円環状に形成される。また、基材10の表面11及び裏面12は、ともに平坦となっている。
【0025】
基材10の外側半径R1は、フランジ1F、2Fに設けられたボルト孔よりも径方向内側となるように設定されていればよい。また、基材10の内側半径は、貫通孔10Xの壁面14から突出しないように設定されていることがよく、貫通孔10Xの壁面14と面一となっていることが好ましい。
【0026】
基材10の形成材料として、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0027】
熱可塑性材料としては、ポリケトン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー、ポリベンゾイミダゾール、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせが挙げられる。特定の一例においては、熱可塑性材料としては、ポリケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせなどのポリマーが挙げられる。さらなる一例においては、熱可塑性材料としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせなどのポリケトンが挙げられる。熱可塑性フルオロポリマーの一例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー(THV)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル系樹脂、熱硬化性メラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル系樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化性ロジン変性マレイン酸樹脂、熱硬化性ロジン変性フマル酸樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
基材10の形成材料として、上述した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等に加え、強度、硬度、シール性の点から、グラファイト、シリコンカーバイド(SiC)、ガラス繊維(SiO)、金属酸化物などの無機フィラー、エンジニアリング樹脂粉末などの有機フィラーなどの充填材を添加することが好ましい。具体的には、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどがあげられ、有機フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド構造を有するイミド系フィラー;ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシベンゾエート、有機顔料としても用いられるイソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料などをあげることができる。
【0030】
図2に示すように、基材10の外側面13は、基材10の輪郭線を形成し、壁面14は、貫通孔10Xの輪郭線を形成する。図3(A)~3(B)に示すように、基材10の外側面13には、側面切り込み13Sが形成される。さらに、側面切り込み13Sは、図3(C)及び図4に示すように、貫通孔10Xの中心となる軸線AXに向かってのび、側面切り込み13Sの先端部13STは、外側面13との壁面14との間の中途部に位置する。すなわち、側面切り込み13Sの先端部13STは、貫通孔10Xの壁面14から所定の長さL1だけ離れている。図3(C)に示すように、側面切り込み13Sは、表面11又は裏面12に対して平行となっていることが好ましい。
【0031】
側面切り込み13Sは、表面11から裏面12に向かうにしたがって、所定間隔L2をあけて並ぶように形成される。各側面切り込み13Sは、互いに平行となっていることが好ましい。
【0032】
また、図4(A)に示すように、側面切り込み13Sは、貫通孔10Xの全周を囲むように形成される。それぞれの側面切り込み13Sの先端部13STから貫通孔10Xの壁面14までの長さL1は、貫通孔10Xの中心となる軸線AX周りにおいて等しいことが好ましい。このため、側面切り込み13Sの先端部13STは、基材10の平面視において、半径R3の円形となる(図2(A))。
【0033】
図3(C)及び図4に示すように、基材10の平面視において、先端部13STよりも径方向外側に位置する部分を円環分割部10Dと、先端部13STよりも径方向内側に位置する部分を一体部10T(筒部)と、それぞれ定義すると、円環分割部10Dは、全体として円環状に形成されるものであり、側面切り込み13Sによって分断された分断片10DX(延設部)がZ方向に並ぶ。それぞれの分断片10DXは、外側半径R1であり、内側半径R3の円環状であり、厚みは、L2である。また、Z方向に隣り合う分断片10DXは互いに密接した状態となっている。隣り合う分断片10DXは互いに密接する範囲は、一体部10Tの全周に及ぶものであり、分断片10DX全体であることが好ましい。一体部10Tは、円筒状に形成されるものであり、一体部10Tの中空部は貫通孔10Xとなる。一体部10Tの外側半径は、R3であり、一体部10Tの内側半径はR1である。
【0034】
ここで、一体部10Tの径方向長さL1(=R3-R2)は、基材10全体の径方向長さ(=R1-R2)に比べ短い。また、円環分割部10Dは、それぞれ、円柱状の一体部10Tの外周面部から径方向外側へ水平にのびる分断片10DXからなるため、側面切り込み13Sが形成されない場合に対し、個々の分断片10DXは、径方向における変形(図5(B)~5(C))が容易となる。このため、表面11又は裏面12において基材10への押し当て力が加わったとき、一体部10Tは、側面切り込みが形成されない基材に比べ、せん断方向へ変形しやすくなる(図5)。
【0035】
したがって、側面切り込み13Sが、基材10の形状変形を容易にする形状変形容易機構として機能する。一体部10Tは所定の厚みL1をもつので、一体部10Tの変形によるガスケット100の破れや損傷、貫通孔10Xを通過する流体の透過や漏れを抑制することができる。
【0036】
また、ガスケット100の全体の厚みは、分断片10DXの数の増減や、各分断片10DXの厚みの調節により、調節することが可能となる。このため、所望の厚みのガスケット100を得ることができる。
【0037】
なお、長さL1は、外部からの押し当て力によって、一体部10Tが破れないこと等、本発明の趣旨に反するものでなければ特に限定されないが、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい、0.5mm以上3mm以下であることがより好ましい、0.5mm以上2mm以下であることがさらに好ましい。また、間隔L2は、ガスケットが受けたひずみエネルギーを開放できる等、本発明の趣旨に反するものでなければ特に限定されないが、例えば、0.05mm以上1mm以下であることがより好ましい。
【0038】
次に、ガスケット100の使用方法について説明する。
【0039】
図1に示すように、第1流路1R及び第2流路2Rが貫通孔10Xを介して連通するように、第1フランジ1Fと第2フランジ2Fとの間にガスケット100を配する。次に、第1フランジ1Fに対し基材10の表面11を当てるとともに、第2フランジ2Fに対し基材10の裏面12を当てる。そして、ボルトB及びナットNの締結により、第1配管1P及び第2配管はガスケット100を介して連結する。これにより、第1流路1R及び第2流路2Rは、外部空間に対し密閉されるため、第1流路1R及び第2流路2Rを流通する物質の外部空間への漏れ出しや、外部空間にある物質の第1流路1R及び第2流路2Rへの混入を防止することができる。
【0040】
ところで、ガスケット100を長期間使用していると、第1フランジ1F及び第2フランジ2Fからの押し付けにより、ガスケット100には継続的に外力がかかったり、地震などの発生により、使用中のガスケット100には瞬間的に大きな外力がかかったりする場合がある。
【0041】
ガスケット100の場合には、側面切り込み13Sの形成により、比較的変形が容易な円筒状の一体部10Tと、一体部10Tの径方向における変形が容易な分断片10DXとが形成されるため、一体部10Tが変形しても、各分断片10DXは、一体部10Tの変形に追従して、個別の変形が可能となる(図5(A)~5(B))。結果、ガスケット100に外力がかかっても、当該外力に起因するひずみエネルギーは開放される。結果、ガスケット100内に余計な応力が発生しにくいため、ガスケット100の裂けや割れが発生しにくくなる。また、分断片10DXの最表面と最裏面とは、一体部10Tの変形した場合であっても、それぞれ、第1フランジ1F及び第2フランジ2Fに接した状態が維持されるため、ガスケット100としてのシール能力も維持される。
【0042】
さらに、ガスケット100を長期間使用していても、第1フランジ1F及び第2フランジ2Fの押し当て跡が分断片10DXにつきにくい。このため、メンテナンス等の目的で第1フランジ1F及び第2フランジ2Fを外した後、再び第1フランジ1F及び第2フランジ2Fを連結する際、シール能力を維持したガスケット100の再利用が可能となる。また、メンテナンス等の目的で第1フランジ1F及び第2フランジ2Fを一旦外した際、第1フランジ1F及び第2フランジ2Fに直接触れていた分断片10DXにおける押し当て跡が残ってしまう場合には、係る場合には、新品のガスケットに交換していたが、ガスケット100の場合には、第1フランジ1F及び第2フランジ2Fに直接触れていた分断片10DXを除去することにより、再利用することも可能である。この再利用方法については後述する。
【0043】
ガスケット100において、基材10の形状変形容易機構は、側面切り込み13Sによって構成されるため、別途の部材も不要である。このため、ガスケット100は単一材料により提供可能である。複数材料からなるガスケットに比べ、プラントにおけるコンタミのおそれが低い。
【0044】
なお、分断片10DXと一体部10Tとは一体となっていることが好ましい。これにより、ガスケット100としての構造はシンプルになるため、製造コストも抑えられ、品質も安定しやすい。
【0045】
また、分断片10DXのZ方向の厚さ、すなわち、側面切り込み13Sの形成ピッチL2は、一体部10Tの径方向の厚み、すなわち、先端部13STから貫通孔10Xの壁面14までの長さL1よりも薄いほうが好ましい。
【0046】
次に、ガスケットの利用方法について説明する。
【0047】
ガスケットの使用方法500(図6)は、取外ステップ510と、除去ステップ520と、接合ステップ530と、を備える。
【0048】
取外ステップ510では、図1(A)のようにして接合されていた第1フランジ1F及び第2フランジ2Fを外して、第1フランジ1F及び第2フランジ2Fの間に挟まれていたガスケット100を取り外す(図1(B))。
【0049】
除去ステップ520では、ガスケット100のうち、最表面に位置する部分と、最裏面に位置する部分と、を除去する。ここで、図7(C)に示すように、ガスケット100には、5つの分断片10DXが形成され、それぞれ一体部10Tに連なる。一体部10Tのうち、個々の分断片10DXに連なる部分を、一体片10TXとすると、最表面に位置する部分とは、最表面に位置する分断片10DXと、当該分断片10DXに連接する一体片10TXであり、最裏面に位置する部分とは、最裏面に位置する分断片10DXと、当該分断片10DXに連接する一体片10TXである。除去ステップ520によって所定の部位を除去するための切断ラインCL(図7(D))は、側面スリット13Sの先端部13STから壁面14まで径方向内側に延びる。このため、最表面に位置する部分を除去するためには、最表面に位置する側面切り込み13Sの先端部13STから壁面14まで径方向内側に延びる切断ラインCLを設定すればよい。同様に、最裏面に位置する部分を除去するためには、最裏面に位置する側面切り込み13Sの先端部13STから壁面14まで径方向内側に延びる切断ラインCLを設定すればよい。
【0050】
接合ステップ530では、除去ステップ520の後のガスケット100において、最表面側にある分断片10DXが第1フランジ1Fに当接するとともに、最裏面側にある分断片10DXが第2フランジ2Fに当接するようにして接合を行う。こうして、使用済みのガスケットを再利用することも可能である。
【0051】
なお、上述したガスケットの利用方法500の除去ステップ520では、ガスケット100のうち、最表面に位置する部分と、最裏面に位置する部分と、を除去したが、本発明はこれに限られず、いずれか片方のみ除去してもよい。また、除去する範囲としては、最表面に位置する部分や、最裏面に位置する部分としたが、本発明はこれに限られず、最表面から複数の分断片10DX及び一体片10TXや、最裏面から複数の分断片10DX及び一体片10TXとしてもよい。
【0052】
なお、上述したガスケットの利用方法500の除去ステップ520において、ガスケット100から除去された部分は、別途のガスケットとして用いてもよい。
【0053】
なお、本発明は、判別ステップ710と、除去ステップ720と、を備えるガスケットの製造方法としてもよい。
【0054】
次に、ガスケット100を製造するガスケット製造設備200について説明する。
【0055】
ガスケット製造設備200は、図8に示す通り、刃210と、刃210を保持する刃保持装置220と、刃保持装置220を所定方向に移動する刃移動装置230と、を備える。
【0056】
刃保持装置220によって、刃210は、刃先が下を向く姿勢で保持される。刃移動装置230の制御の下、刃210を、水平方向Aに移動させるとともに、水平方向Aに直交する高さ方向Bに移動させることができる。
【0057】
ガスケット製造方法600は、図9に示す通り、対象物をセットする対象物セットステップ610と、刃210を用いて側面切り込み13Sを形成する側面切り込み形成ステップ620を備える。
【0058】
対象物セットステップ610では、対象物、すなわち側面切り込み13Sが形成されていない基材10(図8)をセットする。このとき、図8中のA方向は、基材10の厚み方向と一致し、図8中のB方向は、基材10の径方向と一致する。
【0059】
側面切り込み形成ステップ620は、所定の基準位置から対象物の厚み方向(図8中のA方向)に対して所定厚みだけ離れた開始位置に刃210をセットする刃位置決めステップ621と、開始位置から対象物の側面に対して刃210を侵入させる刃侵入ステップ622と、対象物から刃210を退避させる刃退避ステップ623と、を備える。
【0060】
刃位置決めステップ621では、基材10の表面11(所定の基準位置)から厚み方向(図10中のA方向)に対して所定厚みL2だけ離れた開始位置MB1に刃210をセットする(図10(A))。
【0061】
刃侵入ステップ622では、所定の侵入経路SL上にて刃210を移動させる。ここで、侵入経路SLは、基材10の径方向において開始位置MB1から中途部MB2までのびるとともに、基材10の周方向において貫通孔10Xを囲むように設定される。このため、刃侵入ステップ622では、開始位置MB1から基材10の外側面13に対して刃210を侵入させる。基材10の径方向における刃210の移動は、基材10の径方向内側に向かって行われ、外側面13と貫通孔の壁面14との中途部MB2に到達するまで行われる。さらに、基材10の周方向における刃210の移動は、貫通孔10Xの周りを周るようにして、基材10に対して相対的に行われる。このため、側面切り込み13Sは、貫通孔10Xを囲むように形成される。外側面13と貫通孔の壁面14との中途部MB2は、壁面14から距離L1だけ径方向外側に位置する。
【0062】
刃退避ステップ623では、基材10から刃210を退避させる。
【0063】
これにより、基材10の外側面13には、第1の側面切り込み13Sが、自身の貫通孔の全周を囲むように形成される(図11(A))。
【0064】
側面スリット13Sを複数形成する場合には、さらに、側面切り込み形成ステップ620を繰り返し行う。
【0065】
2回目の刃位置決めステップ621では、基材10の外側面13において、1回目の開始位置MB1(所定の基準位置)から厚み方向(図8、10中のA方向)に対して所定厚みL2だけ離れた開始位置MB3に刃210をセットする(図10(A))。
【0066】
2回目の刃侵入ステップ622では、開始位置MB3から基材10の外側面13に対して刃210を侵入させる。刃210の侵入は、外側面13と貫通孔の壁面14との中途部MB4に到達するまで行われる。刃210の侵入経路SLは、貫通孔10Xを囲むように設定されるため、側面切り込み13Sは、貫通孔10Xを囲むように形成される。外側面13と貫通孔の壁面14との中途部MB4は、壁面14から距離L1だけ径方向外側に位置する。
【0067】
刃退避ステップ623では、基材10から刃210を退避させる。
【0068】
これにより、基材10の外側面13には、第2の側面切り込み13Sが形成される(図11(B))。さらに、これを2回繰り返すことにより、基材10の外側面13には、4つの側面切り込み13Sが形成される(図11(C)~11(D))。こうして、ガスケット製造方法600により、側面切り込み13Sを外側面13に有するガスケット100が得られる(図10(B))。
【0069】
上記実施形態では、側面切り込み13Sが形成されていない基材10に対して、ガスケット製造方法600を行ったが、本発明はこれに限られず、基材10の母材に対して行ってもよい。この場合には、母材からガスケット100を切り出す切り出し工程を、側面切り込み形成ステップ620の後に行えばよい。なお、母材としては、特限定されないが、貫通孔として利用できる穴が形成されていることが好ましい。貫通孔として利用できる穴が形成されていない場合は、ガスケット製造方法600の前又は後に、貫通孔として利用できる穴を形成する工程を行えばよい。
【0070】
上記実施形態では、貫通孔10Xは、基材10の輪郭線に対して同心円状となっているとしたが、本発明はこれに限られず、貫通孔10Xは、基材10の輪郭線に対して偏心していてもよい。
【0071】
上記実施形態では、基材10の輪郭は、円形状であったが、本発明はこれに限られず、基材10の輪郭は、正面視、長方形やその他の多角形でもよい。
【0072】
以下、上記実施形態の変形例を説明するが、詳細な説明は上記実施形態と異なる部分にとどめ、同一の部材には同一の符号を付しその詳細の説明を省略する。
【0073】
図12(A)~12(C)に示すように、ガスケット300は、シート状の基材310(シート状基材)を備える。基材310は、Z方向において、自身の厚みを有する。正面視において、基材310の輪郭は、正面視、1辺がX1の正方形であり、基材310の中央部には、Z方向に延びる貫通孔310Xが形成される。貫通孔310Xは、基材310の表面311及び基材310の裏面312において、それぞれ、1辺がX2の正方形状に開口する。このため、基材310は、平面視矩形枠状に形成され、基材310の輪郭を形成する外側面313と、貫通孔310Xの輪郭を形成する内側面314と、を備える。
【0074】
図13(A)~13(C)に示すように、基材310の外側面313には、側面切り込み313Sが形成される。側面切り込み313Sは、貫通孔310Xの中心となる軸線AXに向かってのび、側面切り込み313Sの先端部313STは、外側面313と内側面314との間の中途部に位置する。すなわち、側面切り込み313Sの先端部313STは、内側面314から所定の長さL1だけ離れている。
【0075】
側面切り込み313Sは、表面311から裏面312に向かって、所定間隔L2をあけて並ぶように形成される。各側面切り込み313Sは、互いに平行となっていることが好ましい。
【0076】
図14に示すように、側面切り込み313Sは、貫通孔310Xの全周を囲むように形成される。図13(C)及び図14に示すように、それぞれの側面切り込み313Sの先端部313STから内側面314までの長さL1は、軸線AX周りにおいて等しいことが好ましい。正面視における側面切り込み313Sの先端部313STの形状は、一辺がR3の正方形状となる(図12)。
【0077】
図13(C)及び図14(B)に示すように、基材310の平面視において、先端部313STよりも軸線AX側に位置する部分を分割部310Dと、先端部313STよりも軸線AX側に位置する部分を一体部310T(筒部)と、それぞれ定義すると、分割部310Dは、全体として矩形状の枠体であり、側面切り込み313Sによって分断された分断片310DX(延設部)がZ方向に並ぶ。それぞれの分断片310DXの厚みは、L2である。また、隣り合う分断片310DXは互いに接した状態となっている。一体部310Tは、四角筒状に形成される。
【0078】
ここで、一体部310Tの径方向長さL1(=(R3-R2)/2)は、基材310全体の径方向長さ(=(R1-R2)/2)に比べ短い。また、分割部310Dは、それぞれ、一体部310Tの外側面313Sから軸線AXと反対側(径方向外側)に向かってのびる分断片10DXからなるため、側面切り込み313Sが形成されない場合に対し、個々の分断片310DXは、径方向における変形が容易となる。このため、表面311又は裏面312において基材310への押し当て力が加わったとき、一体部310Tは、側面切り込み213が形成されない基材に比べ、せん断方向へ変形しやすくなる。
【0079】
次に、ガスケットの使用方法について説明する。
【0080】
ガスケットの使用方法700(図15)は、判別ステップ710と、除去ステップ720と、接合ステップ730と、を備える。
【0081】
判別ステップ710では、ガスケット100の厚みが、第1部品1Pと第2部品2P(図1)との接合が可能な厚みよりも大きいか否かを判別する。
【0082】
判別ステップ710において、ガスケット100の厚みが、第1部品1Pと第2部品2P(図1)との接合が可能な厚みよりも大きいと判別された場合、除去ステップ720が行われる。除去ステップ720では、ガスケット100の厚みが、第1部品1Pと第2部品2P(図1)との接合が可能な厚みとなるように一体部10Tを所定位置で切断し、最表面側又は最裏面側から所定枚数の分断片10DXと、当該分断片10DXに連接する一体片10TXとを除去する(図7(C)~7(D))。
【0083】
接合ステップ730では、除去ステップ720の後のガスケット100において、最表面側にある分断片10DXが第1フランジ1Fに当接するとともに、最裏面側にある分断片10DXが第2フランジ2Fに当接するようにして接合を行う。実際のフランジの間隔に応じて、ガスケットの厚さ調節を現場で行うことができる。
【0084】
なお、上述したガスケットの利用方法600の除去ステップ620において、ガスケット100から除去された部分は、別途のガスケットとして用いてもよい。すなわち、ガスケットの利用方法600は、厚み調整としても利用可能であるとともに、1つガスケット100から複数のガスケットに分割することも可能である。別途のガスケットとしては、側面切り込み13Sを有するものであってもよいし、側面切り込み13Sを有さないものであってもよい。
【0085】
なお、取外ステップ510と、除去ステップ520と、を備えるガスケットの製造方法としてもよい。
【0086】
上記実施形態では、基材310の輪郭は、正面視、1辺がX1の正方形であり、貫通孔310Xは、正面視、正方形状に開口したが、本発明はこれに限られず、基材310の輪郭は、正面視、長方形やその他の多角形でもよいし、貫通孔310Xは、正面視、長方形状やその他の多角形状に開口してもよい。
【0087】
上記実施形態では、外側面13に側面切り込み13Sが4本設けられたガスケット100について説明したが、本発明はこれに限られず、側面切り込み13Sが1本設けられたガスケット100でもよいし、側面切り込み13Sの数が、2本、3本または5本以上であってもよい。
【0088】
上記実施形態では、分断片10DXと一体部10Tとは一体となっているとしたが、本発明はこれに限られず、分断片10DXと一体部10Tとは別体となっていてもよい。かかる場合には、分断片10DXと一体部10Tとは、融着や溶着等によって、固着されていてもよい。
【0089】
上記実施形態では、樹脂製の基材について説明したが、本発明はこれに限られず、金属製の基材でもよい。金属製の基材の場合、基材の形成材料としては、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等を用いることができる。
【0090】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0091】
10 基材
10D 円環分割部
10DX 分断片
10T 一体部
10X 貫通孔
11 表面
12 裏面
13 側面
13S 側面切り込み
13ST 先端部
14 壁面
200 ガスケット製造設備
300 ガスケット
310 基材
310D 分割部
310DX 分断片
310T 一体部
310X 貫通孔
311 円筒体
311 表面
312 裏面
313 外側面
313S 外側面切り込み
313ST 先端部
314 内側面
500 ガスケットの使用方法
600 ガスケットの製造方法
700 ガスケットの使用方法
【要約】
従来に比べて寿命が長いガスケット、ガスケットの製造方法及びガスケットの使用方法を提供する。
【解決手段】ガスケット100は、シート状の基材10(シート状基材)を備える。基材10は、Z方向において、自身の厚みを有する。正面視において、基材10の輪郭は円形状であり、基材10の中央部には、Z方向に延びる貫通孔10Xが形成される。貫通孔10Xは、基材10の表面11及び基材10の裏面12において、それぞれ円形状に開口する。基材10の外側面13には、側面切り込み13Sが形成される。さらに、側面切り込み13Sは、図3(C)及び図4に示すように、貫通孔10Xの中心となる軸線AXに向かってのび、側面切り込み13Sの先端部13STは、外側面13との壁面14との間の中途部に位置する。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15