(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/42 20060101AFI20250108BHJP
D06F 25/00 20060101ALI20250108BHJP
D06F 33/06 20060101ALI20250108BHJP
D06F 58/02 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
D06F37/42 A
D06F25/00 A
D06F33/06
D06F58/02 L
(21)【出願番号】P 2020212204
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】金田 隆二
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-232999(JP,A)
【文献】特開平04-187181(JP,A)
【文献】特開昭63-267400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00 - 34/34
D06F 37/42
D06F 25/00
D06F 58/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を出し入れするための衣類投入口を有する筐体と、
前記筐体内において回転自在に配置され、衣類を出し入れするためのドラム開口を開閉可能なドラム開閉蓋が周面に取り付けられた略円筒形状のドラムと、
前記ドラムを回転駆動するための誘導モータと、
前記誘導モータを制御する制御手段と、
前記ドラムが所定回転位置にあることを検出するドラム位置検出手段を備え、
前記制御手段は、前記ドラムが回転しているときに前記誘導モータに対して停止命令が発行された場合に、前記ドラム位置検出手段により前記ドラムが所定回転位置にあることを検出した後、所定時間T1が経過するまで待って前記誘導モータを停止させて、前記誘導モータを停止させたときから所定時間T2が経過して前記ドラムが惰性回転で回転して停止するまで待って、前記ドラムの前記ドラム開閉蓋が前記筐体の前記衣類投入口と対向する範囲内に配置されるように、ドラム位置合わせを行うことを特徴とする乾燥機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ドラムが回転しているときに前記誘導モータに対して停止命令が発行された場合に、前記ドラムの前記ドラム開閉蓋が前記筐体の前記衣類投入口より少し手前で停止するように前記ドラムを回転させた後で前記ドラムを間欠的に回転させながらドラム位置合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の乾燥機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ドラム位置検出手段により前記ドラムが所定回転位置にあることを検出した時点で前記
ドラムを間欠的に回転させる運転を終了して、その後、所定時間T3が経過するまで待って、前記ドラムの所定回転位置から所定角度θ以上ずれていなければ、ドラム位置合わせを終了することを特徴とする請求項2に記載の乾燥機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記誘導モータを停止させたときから所定時間T3が経過するまで待って、前記ドラムの所定回転位置から所定角度θ以上ずれていれば、前記
ドラムを間欠的に回転させる運転をやり直すことを特徴とする請求項3に記載の乾燥機。
【請求項5】
前記所定時間T1、前記所定時間T2、前記
ドラムを間欠的に回転させる運転時のオン時間TONとオフ時間TOFF及び前記所定時間T3は、前記停止命令が発行されたときの前記誘導モータの回転負荷に基づいて切り替えられることを特徴とする請求項3または4に記載の乾燥機。
【請求項6】
前記ドラムの内周面には、バッフルが形成されており、
前記ドラムが回転しているときに前記停止命令が発行された場合、前記ドラム位置
検出手段により前記ドラムが所定回転位置にあることを検出した後、所定時間T1が経過するまで待って前記誘導モータを停止させるタイミングは、前記ドラムが回転する際に前記バッフルが前記ドラム内の衣類を持ち上げようとするタイミングであることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機に関する。
【0002】
ドラム型乾燥機として、乾燥機の筐体上部に衣類投入口を設けたトップオープン型乾燥機がある。この乾燥機では、筐体内において水平方向に沿った回転軸周りに回転可能に配置されたドラムを有している。ドラムの周面には、衣類を出し入れするためのドラム開口が形成されており、そのドラム開口は、ドラム開閉蓋により開閉可能に設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このトップオープン型乾燥機では、筐体上部に設けた衣類投入口から衣類を投入することが可能であり、衣類の取り出しが非常にし易い。また、ドラム径を大きく保ったまま幅方向を自由に設計できるため、置き場所にバリエーションをもたせることが可能である。
【0004】
しかしながら、トップオープン型乾燥機では、ドラムを停止する際、ドラムの外周面に設けたドラム開閉蓋を筐体上部の衣類投入口に対向させる必要がある。そのため、ドラムを停止する際のドラム位置合わせの制御が不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された乾燥機では、ドラムの駆動にインバータモータを使用しており、ドラムの回転方向や回転量を細かく制御しながらドラム位置合わせを行うことが可能であるが、インバータモータは非常に高価である。これに対して、乾燥機において、比較的安価な誘導モータによりドラムの駆動を行うようにすると、インバータモータのようにドラムを逆回転させたりドラムの回転量を細かく制御できず、ドラム位置合わせを適正に行うことが困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、誘導モータを使用してドラムを駆動する乾燥機においてドラム位置合わせを適正に実施可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乾燥機は、衣類を出し入れするための衣類投入口を有する筐体と、前記筐体内において回転自在に配置され、衣類を出し入れするためのドラム開口を開閉可能なドラム開閉蓋が周面に取り付けられた略円筒形状のドラムと、前記ドラムを回転駆動するための誘導モータと、前記誘導モータを制御する制御手段と、前記ドラムが所定回転位置にあることを検出するドラム位置検出手段を備え、前記制御手段は、前記ドラムが回転しているときに前記誘導モータに対して停止命令が発行された場合に、前記ドラム位置検出手段により前記ドラムが所定回転位置にあることを検出した後、所定時間T1が経過するまで待って前記誘導モータを停止させて、前記誘導モータを停止させたときから所定時間T2が経過して前記ドラムが惰性回転で回転して停止するまで待って、前記ドラムの前記ドラム開閉蓋が前記筐体の前記衣類投入口と対向する範囲内に配置されるように、ドラム位置合わせを行うことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る乾燥機において、前記制御手段は、前記ドラムが回転しているときに前記誘導モータに対して停止命令が発行された場合に、前記ドラムの前記ドラム開閉蓋が前記筐体の前記衣類投入口より少し手前で停止するように前記ドラムを回転させた後で前記ドラムを間欠的に回転させながらドラム位置合わせを行うことが好適である。
【0010】
本発明に係る乾燥機において、前記制御手段は、前記ドラム位置検出手段により前記ドラムが所定回転位置にあることを検出した時点で前記ドラムを間欠的に回転させる運転を終了して、その後、所定時間T3が経過するまで待って、前記ドラムの所定回転位置から所定角度θ以上ずれていなければ、ドラム位置合わせを終了することが好適である。
【0011】
本発明に係る乾燥機において、前記制御手段は、前記誘導モータを停止させたときから所定時間T3が経過するまで待って、前記ドラムの所定回転位置から所定角度θ以上ずれていれば、前記ドラムを間欠的に回転させる運転をやり直すことが好適である。
【0012】
本発明に係る乾燥機において、前記所定時間T1、前記所定時間T2、前記ドラムを間欠的に回転させる運転時のオン時間TONとオフ時間TOFF及び前記所定時間T3は、前記停止命令が発行されたときの前記誘導モータの回転負荷に基づいて切り替えられることが好適である。
【0013】
本発明に係る乾燥機において、前記ドラムの内周面には、バッフルが形成されており、前記ドラムが回転しているときに前記停止命令が発行された場合、前記ドラム位置検出手段により前記ドラムが所定回転位置にあることを検出した後、所定時間T1が経過するまで待って前記誘導モータを停止させるタイミングは、前記ドラムが回転する際に前記バッフルが前記ドラム内の衣類を持ち上げようとするタイミングであることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非常に高価なインバータモータによりドラムを駆動する乾燥機ではなく、比較的安価な誘導モータによりドラムを駆動する乾燥機において、ドラムのドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口と対向する範囲内に配置されるようにドラム位置合わせを行うことができる。そのため、ドラムが回転しているときに、どのようなタイミングで停止命令が発行されても、ドラム停止時にドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口付近で停止しており、ドラムに対する衣類の出し入れを容易に行うことができる。
【0015】
本発明によれば、ドラムが回転しているときに停止命令が発行された場合、ドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口付近より少し手前までドラムを回転させた後でドラムを間欠的に回転させながらドラム位置合わせを行うため、ドラムが回転しているときに停止命令が発行された後、ドラムのドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口と対向する範囲内に配置されるように、ドラムを早く停止させることができる。
【0016】
本発明によれば、ドラム位置合わせを行う際に使用される所定時間T1などの値を適正に設定することにより、ドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口と対向する範囲内に配置されるようにドラムを確実に停止することができる。
【0017】
本発明によれば、ドラムの間欠運転を行うことによりドラム位置合わせを行った場合に、ドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口と対向する範囲内を過ぎてしまった場合でも、誘導モータの間欠運転からやり直すことにより、ドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口と対向する範囲内に配置されるようにドラムを停止することができる。
【0018】
本発明によれば、ドラム位置合わせを行う際に使用される所定時間T1などの値が、停止命令が発行されたときの誘導モータの回転負荷に基づいて切り替えられるため、例えばドラム内の衣類の量にかかわらず、ドラム開閉蓋が筐体の衣類投入口と対向する範囲内に配置されるようにドラムを確実に停止することができる。
【0019】
本発明によれば、バッフルがドラム内の衣類を持ち上げようとするタイミングで誘導モータを停止させることにより、停止命令が発行された後、ドラムを早く停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る乾燥機1の構成を示す模式図である。
【
図2】ドラム回転時の磁気センサ12からの出力を示している。
【
図3】
図3(a)は、磁気センサ12により第1磁石11aが検出される時刻t
1の時点でのドラム回転位置を示し、
図3(b)は、磁気センサ12により第2磁石11bが検出される時刻t
2の時点でのドラム回転位置を示す図である。
【
図4】誘導モータ6の回転数と負荷との関係を示す図である。
【
図5】本実施形態の乾燥機1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態の乾燥機1において行われるドラム位置合わせの手順を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態の乾燥機1において停止命令が発行されたときの制御を説明する図である。
【
図9】
図9(a)は、ドラム3の回転数と負荷量との関係を示す図であり、
図9(b)は、所定時間T
1と負荷量との関係を示す図である。
【
図10】ドラム3が実際に停止するまでの時間T
2’と負荷量との関係を示す図である。
【
図12】
図12(a)は、所定時間T
ONと負荷量との関係を示す図であり、
図12(b)は、所定時間T
OFFと負荷量との関係を示す図である。
【
図13】ドラム3の間欠運転を停止した後、実際にドラムが停止するまでの動作を説明する図である。
【
図14】ドラム3内の温度と負荷量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の乾燥機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本実施形態の乾燥機1は、循環方式の乾燥機であり、箱形状の筐体2と、筐体2内に配置されるドラム3とを備える。なお、筐体2内には、ドラム3内の衣類から水分を取り除くための除湿機構(ヒータとブロワファン、ヒートポンプ等)が配置されるが、その説明は省略する。なお、
図1では、筐体2の衣類投入口2aの開閉蓋2c及びドラム3のドラム開閉蓋3cが開けられた状態が図示されている。
【0023】
図1に示す筐体2は、略直方体形状である。筐体2の上面には、ドラム3に対して衣類を出し入れするための衣類投入口2aが形成されるとともに、この衣類投入口2aを開閉可能な開閉蓋2cが取り付けられる。筐体2には、電源ボタン、一時停止ボタン、乾燥運転についての種々の設定操作を行うボタン、運転開始操作を行う開始ボタンなどが配置される操作部18(
図5参照)が設けられる。
【0024】
筐体2内には、衣類を収容するための略円筒形状の周面を有するドラム3が配置される。ドラム3は、水平軸を中心に回転可能に軸支されている。
【0025】
ドラム3の背面は、主軸5が接続されており、その主軸5は、図示しない軸受によって回転自在に支承される。主軸5には、主プーリ5aが取り付けられている。筐体2の底部には、誘導モータ6が設置され、誘導モータ6の回転軸には、モータプーリ6aが取り付けられる。モータプーリ6aの回転動力は、動力伝達ベルト8を介して主プーリ5aに伝達される。これにより、誘導モータ6が駆動されると、ドラム3が主軸5aを中心に回転する。
【0026】
ドラム3の周面には、ドラム3に対して衣類を出し入れするためのドラム開口3aが形成されるとともに、このドラム開口3aを開閉可能なドラム開閉蓋3cが取り付けられる。
図1に示すように、ドラム3のドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置された状態において、衣類投入口2aの開閉蓋2cが開けられた後、ドラム開閉蓋3cを開けることができる。
【0027】
ドラム3の内周面には、ドラム3内に突出するように3つのバッフル10が設けられている。バッフル10は、ドラム3が回転する際にドラム3に収容された衣類を持ち上げるための突起である。そのため、乾燥工程時において、ドラム3がモータ6の駆動力によって回転されると、ドラム3内の衣類がバッフル10により持ち上げられて自然落下する。
【0028】
ドラム3の外周面には、第1磁石11a及び第2磁石11bが取り付けられている。第1磁石11a及び第2磁石11bは、ドラム3の回転方向に離れて配置される。また、筐体2の底部には、第1磁石11a及び第2磁石11bを検出可能な磁気センサ12が配置される。そのため、
図1に示すように、ドラム3が左周りに1回転する際、磁気センサ12は、第1磁石11aを検出した後で、第2磁石11bを検出する。そのため、乾燥機1では、第1磁石11a、第2磁石11b及び磁気センサ12により、ドラム3が回転している際のドラム3の回転位置を検知することができる。
【0029】
本実施形態において、磁気センサ12は、ドラム3が回転しているときに、
図2に示すように、第1磁石11aを検出したときに(時刻t
1)にHigh出力を出力し、第2磁石11bを検出したときに(時刻t
2)にLow出力を出力する。なお、時刻t
1から次に磁石11aを検出する時刻t
1’までの時間がドラム回転周期である。ドラム回転周期がt
a秒であった場合、ドラム回転数N(rpm)は、60/t
aで算出される。
【0030】
図3(a)は、磁気センサ12により第1磁石11aが検出される時刻t
1の時点でのドラム回転位置(ドラム角度)を示し、
図3(b)は、磁気センサ12により第2磁石11bが検出される時刻t
2の時点でのドラム回転位置(ドラム角度)を示している。
図3(a)及び
図3(b)の何れの場合も、ドラム3のドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置される。すなわち、筐体2の衣類投入口2aが筐体2の上面部にある乾燥機1において、時刻t
1と時刻t
2の間(High出力の範囲内)であれば、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置される。
【0031】
本実施形態の乾燥機1では、ドラム3が回転しているときに、どのようなタイミングで停止命令が発行されても、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるように、ドラム3が停止するように制御される(以降、これを「ドラム位置合わせ」と称する場合がある)。
【0032】
具体的には、本実施形態の乾燥機1において、ドラム3が回転しているときに停止命令が発行された場合、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近より少し手前に配置されるようにドラム3を回転させた後でドラム3の間欠運転(誘導モータ6の間欠運転)を行うことにより、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内で停止するようにドラム3の回転が制御される。
【0033】
なお、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近より少し手前に配置されるようにドラム3を回転させるとは、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲近傍に配置されるようにドラム3を回転させることである。例えば、ドラム開閉蓋3cの回転方向下流側の端部が、筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲の回転方向上流側の端部近傍に配置されるようにドラム3を回転させることが好ましいが、少なくとも、
図1においてドラム開閉蓋3cが主軸5より右側の領域に配置されるようにドラム3を回転させた後でドラム3の間欠運転を行うことにより、ドラム位置合わせを終了し、ドラム3を早く停止することができる。
【0034】
本実施形態において、停止命令とは、例えば、乾燥工程が開始された後であらかじめ決められた乾燥時間が経過して乾燥工程を終了するために自動的に供給される停止命令、使用者により一時停止ボタンが操作されたときに供給される停止命令、使用者により電源ボタンが操作されて電源オフされたときに供給される停止命令、などが含まれる。
【0035】
なお、本実施形態では、
図3(a)に示すように、磁気センサ12により第1磁石11aが検出されるときのドラム3の回転位置が、ドラム位置合わせを行う際にドラム3の所定回転位置として使用される。
【0036】
(誘導モータ6の回転数)
誘導モータ6の回転数は、電源周波数により決まるため、例えば誘導モータ6への負荷(トルク)がゼロのとき、すなわち、同期回転時のドラム回転数N0は、以下のようになる。
N0=2・R・f/p
なお、Rはドラム3と誘導モータ6のプーリ比、fは電源周波数(日本の場合、50Hzまたは60Hz)、pはモータの極数である。
【0037】
実際には、誘導モータ6には負荷がかかるため、トルク(回転力)が発生する。誘導モータ6の回転数と負荷(トルク)との関係は、
図4に示すようになる。
図4から分かるように、トルクが上がるほど、すなわち負荷が増えるほど、回転数が遅くなることが分かる。逆に言えば、回転数を測定することで、負荷の量を推定することが可能になる。なお、同期回転数とトルクの関係は線形にはならないが、実使用においてはあまりトルクを上げると回転数が急激に落ちてしまうため、同期回転数に近い範囲で使用する。したがって、回転数とトルクの関係は、ほぼ線形であると仮定することができる。なお、乾燥機1におけるドラム3の回転数は、通常50~60rpm程度である。
【0038】
図5は、本実施形態の乾燥機1の電気的構成を示すブロック図である。乾燥機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御部30によって制御される。制御部30は、システム全体の制御を司る中央制御部(CPU)を備え、この制御部30にメモリを接続する。また、制御部30により、メモリに格納されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われるとともに、メモリには、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶される。
【0039】
メモリには、それぞれ以下に詳述する値である、負荷ゼロの時の回転数NL、最大定格負荷(R)の時の回転数NH、負荷ゼロの時の所定時間T1であるT1L、最大定格負荷(R)の時の所定時間T1であるT1H、負荷ゼロの時の所定時間T2であるT2L、最大定格負荷(R)の時の所定時間T2であるT2Hなどが記憶される。制御部30には、操作部18と、誘導モータ6と、磁気センサ12とが接続される。
【0040】
本実施形態の乾燥機1において行われるドラム位置合わせの手順について、
図6に基づいて説明する。
【0041】
<ステップS1>
ステップS1において、制御部30は、操作部18に対して行われた操作内容に基づいて、乾燥機1の電源がオン状態になったことを検知する。
【0042】
<ステップS2>
ステップS2において、制御部30は、乾燥機1が接続される電源の電源周波数を検知する。電源周波数は、例えば
図7に示すような回路を用いて検知することができる。
図7において、R1はフォトカプラに過電流が流れないための電流制限用抵抗、R2はフォトカプラON時に5VとGNDに短絡電流が流れないようにするための電流制限用抵抗である。交流電源に応じてフォトカプラがON/OFFすることにより、電源周波数に応じた矩形波出力を得ることができる。
【0043】
<ステップS3>
ステップS3において、制御部30は、操作部18に対して行われた操作内容に基づいて、乾燥機1の乾燥運転が開始されたことを検知する。すると、制御部30は、ドラム3を回転させて乾燥運転を行う。
【0044】
<ステップS4>
ステップS4において、制御部30は、操作部18に対して行われた操作内容に基づいて、乾燥機1の停止命令が発行されたことを検知する。
【0045】
<ステップS5>
ステップS5において、制御部30は、乾燥機1の運転停止命令が発行されたときのドラム3の回転数(誘導モータ6の回転数)を記憶する。
【0046】
<ステップS6>
ステップS6において、制御部30は、ステップS2で検知した電源周波数fと、ステップS5で記憶した乾燥機1の停止命令が発行されたときのドラム3の回転数Nとに基づいて、所定時間T1を算出する。
【0047】
(所定時間T
1)
本実施形態の乾燥機1では、停止命令が発行されたときに、すぐに誘導モータ6を停止せず、
図8(a)に示すように、磁気センサ12が第1磁石11aを検知するまで待ち、第1磁石11aを検知した後、
図8(b)に示すように、所定時間T
1が経過した後に、誘導モータ6を停止させる。ドラム3が回転しているときに誘導モータ6を停止しても、その後もドラム3は、惰性回転で回り続け、
図8(c)に示すように、時間T
2’後に停止する。そのため、所定時間T
1は、誘導モータ6を停止させた後、ドラム3が、惰性回転で回り続けて、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近より少し手前で停止するように調整される。
【0048】
上述したように、第1磁石11aを検知した後、所定時間T
1が経過したときに誘導モータ6を停止させるが、
図8(b)に示すように、ドラム3内のバッフル10が衣類を持ち上げるタイミングで誘導モータ6を停止させると、より短い時間でドラム3を停止させることが可能である。そのため、ドラム3内のバッフル10が衣類を持ち上げるタイミングで誘導モータ6を停止させるように、第1磁石11aと磁気センサ12を配置することが好適である。
【0049】
以下、所定時間T1の算出方法について説明する。
【0050】
ドラム3が惰性回転する時間T2’は、負荷が小さければ長く、負荷が大きければ短くなるため、逆に、所定時間T1は、負荷が小さければ短く、負荷が大きければ長くする必要がある。
【0051】
上述したように、ドラム3の回転数(誘導モータ6の回転数)と負荷量は、
図9(a)に示すように、ほぼ線形の関係がある。すなわち、負荷ゼロ(無負荷)時の回転数をN
L、最大定格負荷(R)時の回転数N
Hとすると、負荷rと回転数Nの関係は以下のようになる。なお、負荷ゼロでも実際にはドラム3を回転させるだけのトルクは必要になるので、N
Lと上述した同期回転数N
0は等しい値ではない。
N=N
L-{(N
L-N
H)×r/R}
【0052】
同様に、所定時間T
1と負荷量との関係は、
図9(b)に示すように、無負荷の場合の所定時間T
1をT
1L、定格負荷(R)の時の所定時間T
1をT
1Hとすると、負荷量rと所定時間T
1の関係は以下のようになる。
T
1=T
1L+{(T
1H-T
1L)×r/R}
【0053】
上述した2式からr/Rを消去すると、以下のようになる。
T1=T1L+{(T1H-T1L)×(NL-N)/(NL-NH)}
【0054】
すなわち、負荷ゼロの時の回転数NL、最大定格負荷(R)の時の回転数NH、負荷ゼロの時の所定時間T1であるT1L、最大定格負荷(R)の時の所定時間T1であるT1Hをあらかじめ測定しておけば、停止命令が発行された時点でのドラム回転数Nから所定時間T1を計算することができる。なお、この計算値は上述したように電源周波数で異なるため、日本のように同じ仕向け地の中で周波数が地域によって異なる場合は、周波数枚にT1L,T1H等を測定しておき、電源周波数に応じた値を用いる必要がある。
【0055】
<ステップS7>
ステップS7において、制御部30は、磁気センサ12の出力に基づいて第1磁石11aが検出されたか否かを繰り返し判定する。制御部30により第1磁石11aが検出されたと判定されると、ステップS8に進む。
【0056】
<ステップS8>
ステップS8において、制御部30は、ステップS6で算出した所定時間T1が経過したか否かを繰り返し判定する。制御部30により所定時間T1が経過したと判定されると、ステップS9に進む。
【0057】
<ステップS9>
ステップS9において、制御部30は、誘導モータ6を停止する。
【0058】
<ステップS10>
ステップS10において、制御部30は、ステップS2で検知した電源周波数fと、乾燥機1の停止命令が発行されたときのドラム3の回転数Nとに基づいて所定時間T2を算出する。
【0059】
(所定時間T2)
本実施形態の乾燥機1では、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近より少し手前で停止するように調整した後、ドラム3を間欠的に回転させてドラム3の位置合わせを行うが、誘導モータ6を停止させた後、所定時間T2が経過したときに、ドラム3が停止したとみなしてドラム4の間欠運転を開始する。
【0060】
以下、所定時間T2の算出方法について説明する。
【0061】
誘導モータ6を停止させた後、ドラム3が停止するであろう所定時間T
2が経過するまで待つ。この所定時間T
2は、短い方がドラム開閉蓋3cを開けるまでの時間を短くできるので望ましいが、ドラム3が実際に停止するまでの時間T
2’より長くする必要がある。上述したように、時間T
2’は、
図10に示すように、負荷量に依存し、以下のようになる。
T
2’=T
2’
L-{(T
2’
L-T
2’
H)×r/R}
【0062】
そのため、時間T2’は、所定時間T1と同様に、負荷ゼロの時の回転数NL、最大定格負荷(R)の時の回転数NH、負荷ゼロの時の時間T2’であるT2’L、最大定格負荷(R)の時の時間T2’であるT2’Hをあらかじめ測定しておけば、停止命令が発行された時点でのドラム回転数Nから時間T2’を計算することができる。
T2’=T2’L-{(T2’L-T2’H)×(NL-N)/(NL-NH)}
【0063】
所定時間T2は、時間T2’より長ければよいため、T2’に一定時間Tcを足すか、あるいは、T2’に一定比率Rt(1以上)をかけるかのいずれかの方法で、T2’よりも長い時間に設定すればよい。
T2=T2’+Tc
T2=T2’×Rt
すなわち、負荷ゼロの時の所定時間T2であるT2L、最大定格負荷(R)の時の所定時間T2であるT2Hをあらかじめ設定しておけば、停止命令が発行された時点でのドラム回転数Nから所定時間T2を計算することができる。
T2=T2L-{(T2L-T2H)×(NL-N)/(NL-NH)}
【0064】
<ステップS11>
ステップS11において、制御部30は、ステップS10で算出した所定時間T2が経過したか否かを繰り返し判定する。制御部30により所定時間T2が経過したと判定されると、ステップS12に進む。
【0065】
<ステップS12>
ステップS12において、制御部30は、ステップS2で検知した電源周波数fと、ステップS5で記憶した乾燥機1の運転停止命令が発行されたときのドラム3の回転数Nとに基づいて、所定時間TONを算出する。所定時間TONは、ドラム3を間欠運転する際にドラム3を回転駆動する時間である。
【0066】
<ステップS13>
ステップS13において、制御部30は、ステップS2で検知した電源周波数fと、ステップS5で記憶した乾燥機1の運転停止命令が発行されたときのドラム3の回転数Nとに基づいて、所定時間TOFFを算出する。所定時間TOFFは、ドラム3を間欠運転する際にドラム3を回転駆動しない時間である。
【0067】
<ステップS14>
ステップS14において、制御部30は、所定時間TON及び所定時間TOFFに基づいてドラム3の間欠運転を行う。
【0068】
(ドラム3の間欠運転、所定時間T
ON、所定時間T
OFF)
本実施形態の乾燥機1では、乾燥機1の停止命令が発行された後で、所定時間T
2が経過してドラム3が停止したであろう後、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、誘導モータ6は、所定時間T
ONのオン状態と所定時間T
OFFのオフ状態とが交互に繰り返される制御を繰り返し、ドラム3をゆっくり回転させる。すなわち、ステップ11において所定時間T
2が経過して、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近より少し手前までドラム3を回転させた後は、ドラム3を間欠的に回転させながら、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるようにドラム位置合わせを行う。
【0069】
ドラム3を間欠的に回転させる際の所定時間TONは、負荷に大きく依存する。すなわち、負荷が大きいときに所定時間TONが短すぎるとドラム3が回らないし、逆に、負荷が小さいときに所定時間TOFFが長すぎるとドラム3が惰性で回りすぎてドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近で停止しない。
【0070】
また、所定時間T
OFFは、短い方がドラム位置合わせの時間が短くて済むが、特に負荷が小さいときに、所定時間T
OFFが短すぎると所定時間T
ONで回転したドラム3が停止する前に、再び、誘導モータ6が回ることになり、回転が加速され続けて、やはりドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近で停止しなくなる。すなわち、所定時間T
ONと所定時間T
OFFは、
図12(a)及び
図12(b)に示すように逆の関係にある。
【0071】
所定時間TONと所定時間TOFFを式で表すと、以下のようになる。
TON=TONL+{(TONH-TONL)×r/R}
TOFF=TOFFL-{(TOFFL-TONH)×r/R}
【0072】
ここからT1,T2’と同様に、r/Rを消去すると、以下のように回転数Nから算出できる式にすることができる。
TON=TONL+{(TONH-TONL)×(NL-N)/(NL-NH)}
TOFF=TOFFL-{(TOFFL-TONH)
【0073】
<ステップS15>
ステップS15において、制御部30は、磁気センサ12からの出力に基づいて第1磁石11aが検出されたか否かを繰り返し判定する。制御部30により第1磁石11aが検出されたと判定されると、ステップS16に進む。
【0074】
<ステップS16>
ステップS16において、制御部30は、所定時間TON及び所定時間TOFFに基づいたドラム3の間欠運転を停止する。
【0075】
<ステップS17>
ステップS17において、制御部30は、ステップS2で検知した電源周波数fと、ステップS5で記憶した乾燥機1の運転停止命令が発行されたときのドラム3の回転数Nとに基づいて、所定時間T3を算出する。
【0076】
(所定時間T
3)
本実施形態の乾燥機1では、ドラム3の間欠運転を行っているときに、
図13(a)に示すように、
磁気センサ12により第1磁石11aが検出されると、ドラム3の間欠運転を終了する。間欠運転を終了した後もドラム3は惰性回転するため、間欠運転を終了した後、所定時間T
3が経過するまで待って、ドラム3が停止したであろうときまでに、
図13(b)に示すように、磁気センサ12により第1磁石11aが検出される位置から角度θtずれており、磁気センサ12により第1磁石11aが検出される位置から所定角度θ以上ずれていなければ、ドラム位置合わせを終了する。間欠運転を終了した後、所定時間T
3が経過するまで待って、ドラム3が停止したであろうときまでに、
図13(c)に示すように、磁気センサ12により第1磁石11aが検出される位置から所定角度θずれており、磁気センサ12により第1磁石11aが検出される位置から所定角度θ以上ずれていれば、ドラム3の間欠運転をやり直す。
【0077】
以下、所定時間T3の算出方法について説明する。
【0078】
所定時間T3の算出方法として、まず、上述したドラム3の間欠運転の所定時間TON及び所定時間TOFFを、間欠運転後の惰性回転角度がほぼ同じになるよう調節することが考えられる。これが可能であった場合には、所定時間T3は、負荷量によらず一定の値を用いることが可能である。本実施形態では、所定時間T3を負荷量によらず一定の値としている。
【0079】
<ステップS18>
ステップS18において、制御部30は、ドラム3の間欠運転を終了した後、所定時間T3が経過したか否かを繰り返し判定する。制御部30により所定時間T3が経過したと判定されると、ステップS19に進む。
【0080】
<ステップS19>
ステップS19において、制御部30は、磁気センサ12からの出力に基づいて第2磁石11bが検出されたか否かを繰り返し判定する。制御部30により第2磁石11bが検出されたと判定されると、ステップS14に進む。また、制御部30により第2磁石11bが検出されないと判定されると、ステップS20に進む。
【0081】
<ステップS20>
ステップS20において、制御部30は、ドラム位置合わせを終了する。すなわち、この状態において、ドラム3のドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置される。
【0082】
本実施形態の乾燥機1は、衣類を出し入れするための衣類投入口2aを有する筐体2と、筐体2内において回転自在に配置され、衣類を出し入れするためのドラム開口3aを開閉可能なドラム開閉蓋3cが取り付けられた略円筒形状のドラム3と、ドラム3を回転駆動するための誘導モータ6と、ドラム3が回転しているときに誘導モータ6に対して停止命令が発行された場合に、ドラム3のドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるように、誘導モータ6を制御してドラム位置合わせを行う制御手段である制御部30とを備える。
【0083】
このような構成であると、非常に高価なインバータモータによりドラムを駆動する乾燥機ではなく、比較的安価な誘導モータ6によりドラム3を駆動する乾燥機1において、ドラム3のドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるようにドラム位置合わせを行うことができる。そのため、ドラム3が回転しているときに、どのようなタイミングで停止命令が発行されても、ドラム停止時にドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近で停止しており、ドラム3に対する衣類の出し入れを容易に行うことができる。
【0084】
本実施形態の乾燥機1において、制御部30は、ドラム3が回転しているときに誘導モータ6に対して停止命令が発行された場合に、ドラム3のドラム開閉蓋3cが筐体の衣類投入口より少し手前で停止するようにドラム3を回転させた後でドラム3を間欠的に回転させながらドラム位置合わせを行う。
【0085】
このような構成であると、ドラム3が回転しているときに停止命令が発行された場合、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2a付近より少し手前までドラム3を回転させた後でドラム3を間欠的に回転させながらドラム位置合わせを行うため、ドラム3のドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるように、ドラム3を早く停止させることができる。
【0086】
本実施形態の乾燥機1において、ドラム3の外周面に取り付けられた磁石11aを検出するドラム位置検出手段である第1磁石11a、第2磁石11b及び磁気センサ12を備え、制御部30は、ドラム3が回転しているときに停止命令が発行された場合、磁気センサ12によりドラム3の外周面に取り付けられた磁石11aを検出した後、所定時間T1が経過するまで待って誘導モータ6を停止させ、誘導モータ6を停止させたときから所定時間T2が経過した後、誘導モータ6を間欠運転してドラム3を間欠的に回転させ、磁気センサ12によりドラム3の外周面に取り付けられた磁石11aを検出した時点で間欠運転を終了して、その後、所定時間T3が経過するまで待って、磁気センサ12によりドラム3の外周面に取り付けられた磁石11bを検出しなければ、ドラム位置合わせを終了する。
【0087】
このような構成であると、ドラム位置合わせを行う際に使用される所定時間T1などの値を適正に設定することにより、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるようにドラム3を確実に停止することができる。
【0088】
本実施形態の乾燥機1において、誘導モータ6を停止させたときから所定時間T3が経過するまで待って、磁気センサ12によりドラム3の外周面に取り付けられた磁石11bを検出されれば、誘導モータ6の間欠運転をやり直す。
【0089】
このような構成であると、ドラム3を間欠的に回転させてドラム位置合わせを行った場合に、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内を過ぎてしまった場合でも、誘導モータ6の間欠運転からやり直すことにより、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるようにドラム3を停止することができる。
【0090】
本実施形態の乾燥機1において、所定時間T1、所定時間T2、間欠運転時のオン時間TONとオフ時間TOFF及び所定時間T3は、停止命令が発行されたときの誘導モータ6の回転負荷に基づいて切り替えられる。
【0091】
このような構成であると、ドラム位置合わせを行う際に使用される所定時間T1などの値が、停止命令が発行されたときのドラム3の回転負荷に基づいて切り替えられるため、例えばドラム3内の衣類の量にかかわらず、ドラム開閉蓋3cが筐体2の衣類投入口2aと対向する範囲内に配置されるようにドラムを確実に停止することができる。
【0092】
本実施形態の乾燥機1において、ドラム3の内周面には、バッフル10が形成されており、ドラム3が回転しているときに停止命令が発行された場合、磁気センサ12によりドラム3の外周面に取り付けられた磁石11aを検出した後、所定時間T1が経過するまで待って誘導モータ6を停止させるタイミングは、ドラム3が回転する際にバッフル10がドラム3内の衣類を持ち上げようとするタイミングである。
【0093】
このような構成であると、バッフル10がドラム3内の衣類を持ち上げようとするタイミングで誘導モータ6を停止させることにより、停止命令が発行された後、ドラム3を早く停止させることができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0095】
例えば上記実施形態では、所定時間T3を負荷量によらず一定の値としたが、それに限られない。例えば、所定時間T3を、所定時間T1及び所定時間T2と同様に、負荷量に応じた値を算出してもよい。ここでは、所定時間T3を回転数Nから算出する際の数式は以下のようになる。
T3=T3L+{(T3L-T3H)×(NL-N)/(NL-NH)}
【0096】
上記実施形態では、所定時間T1、所定時間T2、所定時間TON及び所定時間TOFFが負荷量に比例するとして算出する方法を説明したが、それに限られない。これらの値が負荷量に比例しない場合は、負荷量をいくつかのランクに分けて、ランク毎に最適な値を定めておけば、より正確な制御が可能である。すなわち、互いに異なる負荷量の範囲に対して、その範囲毎に最適な値を設定してもよい。なお、上記変形例の所定時間T3についても同様である。
【0097】
上記実施形態では、ドラム3の回転数に基づいて負荷量を推定する方法を説明したが、それに限られない。例えば、ドラム3の主軸5に重量センサを設けて、その重量センサにより検出される衣類の重量に基づいて負荷量を直接測定してもよい。また、乾燥工程においてドラム3内の温度は、
図14に示すように、負荷量に応じて以下のように変化する。そのため、ドラム3内の温度を測定する温度センサを設け、その温度センサにより検出されるドラム3内の温度に基づいて負荷量を推定してもよい。
【0098】
上記実施形態では、ドラム3の回転位置を検出するドラム位置検出手段として、第1磁石11a、第2磁石11b及び磁気センサ12を有しているが、ドラム位置検出手段の構成は任意である。ドラム位置検出手段は、例えばドラム3を撮影するカメラでもよい。
【0099】
上記実施形態では、ドラム3が回転しているときに誘導モータ6に対して停止命令が発行された場合に、バッフル10がドラム3内の衣類を持ち上げようとするタイミングで誘導モータ6を停止させるが、それに限られない。誘導モータ6は、必ずしもバッフル10がドラム3内の衣類を持ち上げようとするタイミングで停止しなくてもよい。
【0100】
上記実施形態では、ドラム3の内周面に3つのバッフル10が設けられている場合を説明したが、バッフル10の数は、任意である。例えば、ドラム3の内周面にバッフル10が設けられてなくてもよいし、乾燥機1のドラム3の内周面に1つのバッフル10のみが設けられてもよい。
【0101】
上記実施形態では、循環方式の乾燥機1について説明したが、それに限られない。本発明は、例えばドラム3の周面に多数の通気孔が形成され、乾燥工程時に、給気ダクトからの空気がドラム3内に供給されるとともに、ドラム3内の空気が排気ダクトを介して筐体2の外部へと排出される乾燥機にも適用できる。
【0102】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 乾燥機
2 筐体
2a 衣類投入口
3 ドラム
3a ドラム開口
3c ドラム開閉蓋
6 誘導モータ
10 バッフル
11a 第1磁石(ドラム位置センサ)
11b 第2磁石(ドラム位置センサ)
12 磁気センサ(ドラム位置センサ)
30 制御部(制御手段)