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特許7614635木材のトレーサビリティ管理方法およびその方法に使用されるアプリケーションプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】木材のトレーサビリティ管理方法およびその方法に使用されるアプリケーションプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/00 20060101AFI20250108BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20250108BHJP
【FI】
A01G23/00 551Z
G06Q50/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021074284
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168664
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2024-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】316007920
【氏名又は名称】株式会社Andeco
(74)【代理人】
【識別番号】100142114
【弁理士】
【氏名又は名称】小石川 由紀乃
(72)【発明者】
【氏名】早川 慶朗
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-115768(JP,A)
【文献】特開2012-059136(JP,A)
【文献】特開2007-168392(JP,A)
【文献】特開2003-330998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0089708(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/00-23/14
B27D 1/00- 3/04
B27H 1/00- 7/00
B27J 1/00- 7/00
B27K 1/00- 9/00
B27L 1/00-11/08
B27M 1/00- 3/38
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
市場に流通させる木材に取り付けられて当該木材と共に移動するICタグと、当該ICタグが取り付けられた木材に関するトレーサビリティ情報を蓄積するデータベースを備えると共に、このデータベースへの情報の登録を求める登録リクエストおよび情報の閲覧を求める閲覧リクエストをインターネットを介して受け付けて当該リクエストに応答する管理サーバと、前記ICタグと通信するための近距離無線機能と前記管理サーバと前記の各リクエストの送信を含む通信を行うための遠距離無線機能とを有する携帯端末装置とを用いた方法であって、
前記携帯端末装置において、
前記ICタグとの通信により当該ICタグに固有の識別コードを読み取ったことに応じて、前記データベースへの登録対象の情報を入力するための入力画面を表示し、
前記入力画面から入力された情報を当該画面が表示される直前に読み取られた識別コードと組み合わせて自装置のメモリに保存すると共に、この保存情報を前記管理サーバへの送信が完了するまで削除できないようにし、
前記管理サーバとの通信が可能な環境下において、前記メモリに保存されている未送信情報を含む登録リクエストを前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバにおいて、
不特定数の前記携帯端末装置からの登録リクエストにより送信された情報を、同一の識別コードが含まれるもの毎にまとめて前記データベースに保存すると共に、任意の通信端末装置からインターネットを介して前記データベースに保存された識別コードの1つを含む閲覧リクエストを受けたことに応じて、当該識別コードに対応する情報を前記データベースから読み出し、読み出された情報を前記閲覧リクエストを送信した通信端末装置に送信する、
ことを特徴とするトレーサビリティ管理方法。
【請求項2】
前記ICタグとして、1本のネジにより前記木材に固定することが可能な構成のものを使用する、請求項1に記載されたトレーサビリティ管理方法。
【請求項3】
前記管理サーバにおいて、
前記任意の通信端末装置からの閲覧リクエストに含まれる識別コードが前記データベースに登録済の他の識別コードにあらかじめ定めた規則に基づく付加コードを加えた構成のものであったとき、当該閲覧リクエストの識別コードに対応する情報と前記他の識別コードに対応する情報とを前記データベースから読み出し、双方の情報を前記閲覧リクエストの送信元の通信端末装置に送信する、
請求項1に記載されたトレーサビリティ管理方法。
【請求項4】
前記管理サーバに、前記データベースにトレーサビリティ情報が登録された木材を販売するためのウェブサイトを管理する機能を持たせると共に、トレーサビリティ情報の登録者としてあらかじめ当該管理サーバに登録されたユーザの認証コードをもってログインした携帯端末装置のみから前記登録リクエストを受け付けるようにし、
当該管理サーバにおいて、
前記登録されたユーザの認証コードをもってログインした携帯端末装置からの登録リクエストを受けたとき、その登録リクエストの情報を前記ログインをしたユーザを特定する情報に紐づけて前記データベースに登録し、
前記登録されたユーザの認証コードをもってログインした携帯端末装置から当該ユーザを特定する情報に紐づけられてデータベースに登録されている情報に係る木材の出品を求める出品リクエストを受けたとき、そのリクエストに対応する情報を含めたウェブページを作成して前記ウェブサイトにアップロードする、
請求項1または3に記載されたトレーサビリティ管理方法。
【請求項5】
ICタグと通信するための近距離無線機能と、インターネット通信のための遠距離無線機能とを有する携帯端末装置を、前記ICタグが取り付けられた木材に関するトレーサビリティ情報を蓄積するデータベースを備える管理サーバ用の端末装置として機能させるためのプログラムであって、
前記ICタグとの通信により当該ICタグに固有の識別コードを読み取ったことに応じて、前記データベースへの登録対象の情報を入力するための入力画面を表示し、この画面への操作による情報の入力を受け付ける手段、
前記入力画面から入力された情報を、当該画面が表示される直前に読み取られた識別コードと組み合わせて自装置のメモリに保存すると共に、当該保存情報を前記管理サーバへの送信が完了するまで削除できないようにする手段、
前記管理サーバとの通信が可能な環境下において、前記メモリに保存されている未送信情報の登録を求める登録リクエストを前記管理サーバに送信する手段、
の各手段の機能を前記携帯端末装置に設定するためのプログラムが含まれる、
トレーサビリティ管理用のアプリケーションプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場に流通させる木材について、伐採時または伐採前の原木の情報まで遡って確認できるようにするための情報管理技術に関する。特に本発明は、管理対象の木材にICタグを取り付け、このICタグを介して新規の情報の登録や登録済の情報を読み出せるようにする情報管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグを木材の流通管理に使用した従来の管理システムとして、下記の特許文献1,2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、木材の識別情報が書き込まれたICカード(ICタグに相当)を当該木材に固定し、加工や検査の都度、ICカードから読み取った情報に基づいて作業を行うと共に、加工作業の内容や検査の合否をICカードに書き込みながら、木材を流通させることが記載されている。さらに特許文献1には、最終的にICカードから読み取った合否の判定結果に基づいて合格した木材のみを分別して出荷することや、外部の情報記憶装置をICカードと併用できることなどが記載されている。
【0004】
特許文献2には、木材に取り付けられた電子タグ(ICタグに相当)に管理情報を書き込み、以後も作業の都度、電子タグに管理情報を追加すると共に、データベースを有する管理装置にも同様の管理情報を送信して情報を蓄積することが記載されている。さらに特許文献2には、原木の伐採から製材加工までの間に電子タグが取り外されることがないように電子タグを木材の芯部に埋め込むことや、電子タグに一度書き込まれた情報を消去できないようにすることによって、トレーサビリティに係る情報の信頼度を確保することが記載されている。
【0005】
これらのほか、特許文献3に示すように、バーコードなどのパターンコードが印刷されたラベルを木材に貼付し、パターンコードを読み取ることによってトレーサビリティ情報を保持するコンピュータにアクセスして管理情報を確認できるようにしたシステムも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-130853号公報
【文献】特開2007-26415号公報
【文献】特開2008-301783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、NFC(Near Field Communicationの略)の通信規格が適用されたICタグ(一般に「NFCタグ」と呼ばれる。)が普及し、スマートフォンなどの汎用の携帯端末装置にもNFCの通信機能が組み込まれるものが多く出回るなど、ICタグを用いた情報管理を容易に行うことができる環境が整いつつある。
【0008】
しかし、単なる管理の記録だけでなく、エンドユーザにわかりやすい情報を提供するためには、関係者の自由なコメントや画像データなどを記録する必要があり、そのような記録をICタグのメモリ容量だけで行うのは困難である。また、汎用の携帯端末装置では、ICタグへの情報の書き込み機能がない機種や、書き込みはできるが書き込まれた情報を確認することができない機種が多いため、汎用の携帯端末装置に大事な情報の書き込みを担わせるのは危険である。
【0009】
これらの実情をふまえると、トレーサビリティ情報を一元管理するインターネットサーバを設け、このサーバに管理対象の情報を送信して保存する方法を採用するのが妥当と思われる。その場合に通常想起できるのは、特許文献3に記載されているように木材にその識別コードを表すパターンコード(2次元コードまたはバーコード)のラベルを取り付け、パターンコードを読み取ることによって上記のサーバにアクセスし、管理対象の情報の送信や登録済の情報の確認を行えるようにする方法である。
【0010】
しかし、パターンコードは容易に複製できるので、正規の木材と同一のパターンコードが取り付けられた偽の木材が出回ったり、木材がない場所で複製されたパターンコードによりサーバにアクセスしてデータベースに偽の情報が書き込まれるなどの不正が行われるおそれがある。
【0011】
また、情報の取り違えや改ざんを防ぐには、現場で実際の木材を確認しながら情報入力作業を行う必要があるが、その現場は山中の電波が届かない場所であることが多いため、現場からの情報をサーバに送信することは難しい。
【0012】
本発明は上記の問題に着目し、汎用の携帯端末装置でも木材のトレーサビリティ情報の登録を容易に行うことができると共に、情報の改ざんや情報を読み出すためのツールの複製行為を高い確度で防げるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、市場に流通させる木材に取り付けられて当該木材と共に移動するICタグと、当該ICタグが取り付けられた木材に関するトレーサビリティ情報を蓄積するデータベースを備えると共に、このデータベースへの情報の登録を求める登録リクエストおよび情報の閲覧を求める閲覧リクエストをインターネットを介して受け付けて当該リクエストに応答する管理サーバと、前記ICタグと通信するための近距離無線機能と前記管理サーバと通信するための遠距離無線機能とを有する携帯端末装置とを使用して、以下の方法を実施する。
【0014】
まず携帯端末装置では、ICタグとの通信により当該ICタグに固有の識別コードを読み取ったことに応じて、データベースへの登録対象の情報を入力するための入力画面を表示し、この入力画面から入力された情報を当該画面が表示される直前に読み取られた識別コードと組み合わせて自装置のメモリに保存すると共に、この保存情報を管理サーバへの送信が完了するまで削除できないようにする。その後、管理サーバとの通信が可能な環境下において、メモリに保存されている未送信情報を含む登録リクエストを管理サーバに送信する。
【0015】
管理サーバでは、不特定数の前記携帯端末装置からの登録リクエストにより送信された情報を、同一の識別コードが含まれるもの毎にまとめて前記データベースに保存する。また、任意の通信端末装置(前出の携帯端末装置またはそれ以外の通信端末装置)からインターネットを介してデータベースに保存された識別コードの1つを含む閲覧リクエストを受けたことに応じて、当該識別コードに対応する情報をデータベースから読み出し、読み出された情報を閲覧リクエストを送信した通信端末装置に送信する。
【0016】
上記の方法においてICタグから読み出される識別コードは、当該ICタグの製造コードなど、個々のICタグ毎に異なる固有の情報である。このICタグを管理対象の木材に取り付けることによって、現場の作業者は、携帯端末装置をICタグにかざして識別コードを読み取らせることによって、当該携帯端末装置に入力画面を表示させ、直ちに必要な情報を入力することができる。このときの現場が遠距離無線用の電波が届かない、または届きにくい地域にあっても、入力された情報を直前に読み取られた識別コードと組み合わせて携帯端末装置のメモリに保存することによって、遠距離無線通信を安定して行える場所に作業者が移動したときに、未送信の情報を管理サーバに送信することができる。
【0017】
上記の方法によれば、ICタグに情報を書き込む必要がないので、木材が様々な場所に移動して多数の情報を登録する必要が生じた場合や、画像データなどの大容量のデータが登録対象になる場合でも、管理サーバのデータベースが置かれるメモリ装置に十分な容量を確保することによって、難なく対応することができる。また、ICタグに情報が書き込まないようにすることによって、情報の改ざんや複製を防ぐこともできる。
【0018】
上記の方法に使用されるICタグは、木材と共に屋外に置かれたり、長時間搬送されることをふまえ、本体が頑丈で、防水機能を有していることが望ましい。また、1本のネジにより木材に固定することが可能な構成にすれば、管理のスタート地点になることが多い伐採現場でも簡単に取り付けることができ、容易に外れないようにすることができる。
【0019】
本発明によれば、1本の木材のトレーサビリティ情報は1つのICタグの識別コードに紐づけられてデータベースに登録されることになる。しかし、木材が製材加工などにより複数に分割された後は、分割後の木材のトレーサビリティ情報をそれぞれの木材毎に管理すると共に、分割前のトレーサビリティ情報が分割後の各木材に引き継がれるようにするのが望ましい。
【0020】
上記の管理を可能にするために、本発明の一実施形態の管理サーバでは、任意の通信端末装置からの閲覧リクエストに含まれる識別コードが前記データベースに登録済の他の識別コードにあらかじめ定めた規則に基づく付加コードを加えた構成のものであったとき、当該閲覧リクエストの識別コードに対応する情報と前記他の識別コードに対応する情報とを前記データベースから読み出し、双方の情報を前記閲覧リクエストの送信元の通信端末装置に送信する。
【0021】
上記の実施形態によれば、流通経路の中間地点で1本の木材が複数に分割されたとき、その分割後の各木材に、元の木材に取り付けられていたICタグの識別コードに木材毎に異なる内容の付加コードを加えた識別コードを割り当て、それらの識別コードが保存されたICタグを各木材に取り付けて最初の登録リクエストを行うことによって、その後に発生する情報を分割後の木材毎に蓄積することができる。また、これらの木材のうちの1つの識別コードを含む閲覧リクエストを受けたときは、その識別コードについて蓄積された情報のほか、当該識別コードから付加コードを除いた識別コードに関して蓄積された情報、すなわち分割前の木材に関する情報も読み出され、双方の情報が閲覧リクエストを送信した通信端末装置に送信される。
【0022】
なお、上記の実施形態では、分割後の木材のサイズや種類によっては、ICタグに代えて、上記付加コード付きの識別コードを表すパターンコードを木材に取り付け、このパターンコードから識別コードを読み取った場合にも、管理サーバに登録リクエストや閲覧リクエストを送信できるようにしてもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態では、管理サーバに、前記データベースにトレーサビリティ情報が登録された木材を販売するためのウェブサイト(ECサイト)を管理する機能を持たせると共に、トレーサビリティ情報の登録者としてあらかじめ認定されたユーザの認証コードをもってログインした携帯端末装置のみから登録リクエストを受け付け、その登録リクエストの情報を前記ログインをしたユーザを特定する情報に紐づけてデータベースに登録する。さらに管理サーバは、上記の認証コードをもってログインした携帯端末装置から当該ユーザを特定する情報に紐づけられてデータベースに登録されている情報に係る木材の出品を求める出品リクエストを受けたとき、そのリクエストに対応する情報を含めたウェブページを作成して上記のウェブサイトにアップロードする。
【0024】
上記の実施形態によれば、木材の流通過程において木材を売却できる権限を持つようになった人自身が、管理サーバへの登録作業の後に、その登録した情報の公開によって出品をすることができる。また既存の流通の仕組みにとらわれずに、山林の所有者や中間の販売業者をエンドユーザに直接に結びつけて、契約を成立させることもできる。
【0025】
さらに本発明は、上記の管理方法を実施するために携帯端末装置にインストールされるアプリケーションプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、固有の識別コードが保存されているICタグを木材に取り付け、当該木材に関する情報をICタグの識別コードに紐づけて管理サーバに蓄積することができるので、情報の改ざんや複製を高い確度で防ぐことができる。また、ICタグに情報を書き込む必要がないので、登録できるデータ容量を大幅に増やすことができ、管理目的の情報にとどまらず、個々の木材に関する詳細な情報をエンドユーザにわかりやすく伝えるための情報を登録することができる。
【0027】
さらに、ICタグから識別コードを読み取った直後に情報の入力を行わせることによって、偽の情報の登録や登録対象の取り違えを防ぐと共に、入力された情報を管理サーバへの送信が完了するまでメモリに保存することによって、遠距離無線通信が困難な現場の関係者も、容易に登録作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明が適用されたトレーサビリティ管理システムの概略構成を表す説明図である。
図2】上記のトレーサビリティ管理システムに使用されるICタグの構成例を表す斜視図である。
図3】上記のICタグの内部構成を表す断面図である。
図4】上記のICタグを木材に取り付けた状態を表す断面図である。
図5】複数の木材に上記のICタグを1つずつ取り付けた例を表す正面図である。
図6】上記のトレーサビリティ管理システムに使用される管理サーバの機能ブロックである。
図7】トレーサビリティデータベースのデータ構成例を表す説明図である。
図8】上記のトレーサビリティ管理システムに使用される専用端末装置の機能ブロック図である。
図9-1】上記の専用端末装置で登録リクエストに含める情報の入力が行われるときに表示される画面の推移を表す説明図である。
図9-2】図9-1の続きの画面の推移を表す説明図である。
図10】上記の専用端末装置で管理サーバに閲覧リクエストが送信されるときに表示される画面の推移を表す説明図である。
図11】管理サーバが登録リクエストを受けたときに実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図12】管理サーバが閲覧リクエストを受けたときに実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図13】管理サーバが出品リクエストを受けたときに実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1)トレーサビリティ管理システムの概要
図1は、本発明が適用された木材のトレーサビリティ管理システムS(以下、単に「管理システムS」という。)の概略構成を表したものである。
この管理システムSには、管理対象の木材に取り付けられるICタグ1と、トレーサビリティデータベース200を備える管理サーバ2と、このデータベース200への情報の登録を許可された者として管理サーバ2に登録されたユーザ(以下、「会員ユーザ」という。)が所有する携帯端末装置3とが含まれる。
【0030】
図1では、ICタグ1および携帯端末装置3を1つずつしか示していないが、実際には、これらは複数かつ任意の数をもって管理システムSに含まれる。またこの実施例では、会員ユーザの携帯端末装置3をスマートフォンとするが、これに代えてタブレット端末などのスマートフォンと同じオペレーションシステムが組み込まれた携帯端末装置を使用することもできる。これらの携帯端末装置には、当該装置を管理システムSの端末装置として機能させるための専用アプリケーション30が組み込まれている。
【0031】
管理サーバ2は、上記の専用アプリケーション30が入った携帯端末装置3のほか、専用アプリケーション30が入っていない一般的な通信端末装置4(パーソナルコンピュータ4a、スマートフォン4b、タブレット端末4cなど)とも、後述する管理サイトやECサイトを介して通信を行うことができる。
【0032】
以下では、専用アプリケーション30のプログラムがインストールされた携帯端末装置3を「専用端末装置3」と呼び、その他の通信端末装置4を「一般端末装置4」と呼ぶことにする。ただし、専用端末装置3でも、専用アプリケーション30の機能を使わずに、管理サイトを介して管理サーバ2にアクセスすることもできる。
【0033】
専用端末装置3からは、管理サーバ2に対し、トレーサビリティ情報の登録を求める登録リクエスト、トレーサビリティ情報の閲覧を求める閲覧リクエスト、ECサイトへの出品を求める出品リクエストを含む複数種のリクエストをインターネットを介して送信することができる。
【0034】
一般端末装置4は、通常はECサイトを閲覧できるだけであるが、管理サーバ2に一般ユーザとして登録された登録情報に基づいて管理サーバ2にログインすることによって、出品された物品(木材または伐採前後の原木)への購入申し込みや、出品前の物品に関するトレーサビリティ情報の閲覧を行うことが可能になる。また、一般ユーザであっても、自身のスマートフォン4bやタブレット端末4cに専用アプリケーション30のプログラムをインストールすることによって、ICタグ1からの情報の読み取りによって、そのICタグ1が取り付けられている木材に関するトレーサビリティ情報を閲覧したり、後述する年輪画像の照合を行うことができる。しかし、一般ユーザの端末装置4b,4cの専用アプリケーション30では、使用開始のための管理サーバ2への初回のログインによって、登録リクエストや出品リクエストの機能が無効になる。
【0035】
(2)管理システムの基本の構成および機能
以下、上記管理システムの主要な構成要素であるICタグ1、管理サーバ2、専用端末装置3の構成や機能について、順を追って説明する。
【0036】
<ICタグ1の構成>
図2はこの実施例で使用されるICタグ1の前面側および背面側の外観を表し、図3は当該ICタグ1の内部構成を表す。
このICタグ1は、硬質プラスチック製のケース体11の内部にICチップ12やアンテナコイルを含む回路基板13が収容された構成のものである。ケース体11は上下一対のケース半体11a,11bを射出成形により成型かつ一体化して成るもので、中央部に厚み部分を貫通するネジ穴10が形成されている。内部の回路基板13の中央部にもネジ穴10に対応する大きさの貫通穴が形成され、その外周に沿ってアンテナコイルが配置されている。
ICチップ12には、NFCの規格に基づく無線通信を実施するための回路や不揮発性メモリが組み込まれている。
【0037】
図2(A)および図3に示すように、ケース体11のネジ穴10の内壁面には先端部を前方に向けた4個の針状突起14が等角度間隔をおいて配備される。図2(B)に示すように、ケース体11の背面には4個の四角錐状の支持突起15が等角度間隔を隔てて配備される。また、ケース体11の前面には、シンボルマークを表す凹部16が形成されている。
【0038】
上記構成のICタグ1は、図4に示すように、ネジ穴10に差し込まれた木ネジ6によって管理対象の木材5に取り付けられる。木ネジ6が木材5の内部に埋め込まれるのに伴って底面の支持突起15も同木材5に食い込み、ケース体10の支持強度が高められる。またネジ止めが完了した木ネジ6の頭部によって針状突起14が潰されるので、針状突起14が潰れているか否かによって、ICタグ1が使用されたことがあるか否かを見分けることができる。
【0039】
ICチップ12のメモリには、製造者により書き込まれた製造コードが保存されている。この製造コードはICチップ12毎に固有の内容の情報であって、書き込み禁止領域に保存されるため、読み出すことはできるが、削除したり、別のコードに変更することは不可能である。したがって、同一の製造コードが書き込まれた偽のICチップ12を製作することも不可能である。
【0040】
この実施例では、上記の利点に着目し、図5に示すように、各木材5に1つずつICタグ1を取り付け、それらのICタグ1から読み出される製造コードを木材5を特定するための識別コードとして、当該ICタグ1が取り付けられた木材5のトレーサビリティ情報と紐付けて管理サーバ2に蓄積する。
【0041】
以下では、このICタグ1の識別コードを「タグID」と呼ぶことにする。
この実施例では、針状突起14の状態により新品のICタグ1を見分ける仕組みによって、流通経路に入る前の木材5に過去に使用されたことのないICタグ1を取り付け、そのタグIDを木材5のトレーサビリティ情報に紐づけることによって、木材5のトレーサビリティ情報の信頼性を高めることができる。取り付け後も、前面の凹部16が表すシンボルマークによって、他のICタグと容易に見分けることができる。さらに、一本の木ネジ6のみで木材5に取り付けることができるので、木材5への固定作業を容易にすることができる。
【0042】
なお、ICタグ1は伐採後の原木または丸太に取り付けられることが多いが、これに限らず、生育段階からの情報を蓄積するために伐採前の樹木にICタグ1を取り付け、これを伐採後も維持する運用も可能である。
【0043】
伐採された山林から搬出された丸太は、一般に原木市場に運ばれ、そこで購入者が定まると製材所に運ばれる。そこまでは一本の丸太の状態で維持されることが多いが、製材所に移動すると、複数に分割されて、それぞれが新たな木材(以後は符号なし)に加工される。これらの木材にも新たなICタグ1が取り付けられる。新しいICタグ1にも固有のIDコードが保存されているが、この実施例では、1本の丸太が分割されるまでに生じたトレーサビリティ情報を分割後の木材にも引き継がせるために、最初に取り付けられたICタグ1のタグIDにあらかじめ定めた規則に基づく付加コードを加えた構成のタグIDを、新しいICタグ1に書き込むようにしている。
【0044】
以下、分割前の丸太に取り付けられていたICタグ1を「親タグ」と言い、分割後の木材に取り付けられる新しいICタグ1を「子タグ」と言い、それぞれのタグIDを「親タグID」「子タグID」と言う。
子タグも親タグと同じ構成(図2および図3に示した構成)のものを使用することができるが、分割後の木材のサイズや種類によっては、カード型やシール型などのICタグに変更される。
【0045】
<管理サーバ2の構成・機能>
図6は、管理サーバ2の基本構成を示す機能ブロック図である。
管理サーバ2は、1または複数のコンピュータを含むもので、そのメモリ内に、不特定多数の木材のトレーサビリティ情報を木材毎にまとめて蓄積するためのトレーサビリティデータベース200と、会員ユーザおよび一般ユーザに関する情報を登録するためのユーザ情報記憶部210とが設けられる。さらに管理サーバ2には、管理サイト用処理部21,専用端末用通信処理部22,認証処理部23,登録情報処理部24,リクエスト処理部25,データ管理部26,画像照合部27,ECサイト用処理部28,決済処理部29などの処理機能が設けられる。
【0046】
トレーサビリティデータベース200には、専用端末装置3からの登録リクエストにより送信された種々の情報が、同一の木材に関わるものごとにまとめられ、タグIDに紐づけられて登録される。
【0047】
ユーザ情報記憶部210には、ユーザ毎に、氏名,住所,電話番号,Eメールアドレスなどの個人を特定するための情報や、ユーザ種別(会員・一般のいずれであるかを示すもの)、ログイン認証のための識別コード(以下「ユーザID」という。)およびパスワードなどが保存される。さらに会員ユーザに関しては、事業所名称やその事業種別を表す属性情報(山林所有者・伐採者・輸送業者・加工業者など)も保存される。また、会員ユーザのうち原木の伐採に関わる事業者については、受理された伐採届けを特定する情報(管理番号など)または伐採届けの画像データが保存される。
【0048】
管理サイト用処理部21は、インターネットに立ち上げられたユーザ専用のポータルサイト(以下「管理サイト」という。)を介して、登録されたユーザからのログインを受け付け、具体的なリクエストを受け付ける。ログインの認証は、認証処理部23がユーザ情報記憶部210の登録情報を用いて実行する。
【0049】
ログインしていない一般端末装置4から新規のユーザ登録の申し込みを受けた場合には、登録情報処理部24が動き、入力フォーム等を介して登録に必要な情報の送信を受け付け、受け付けた情報をユーザ情報記憶部210に登録する。
【0050】
専用端末用通信処理部22は、専用端末装置3と管理サイトを介さずに通信を行う機能である。専用端末装置3からのアクセスに対しても、認証処理部23によるログイン認証が行われ、認証後に各種リクエストを受け付ける。ただし、専用端末装置3にもユーザIDやパスワードが登録されるので、それらに基づき専用端末装置3を管理サーバ2に自動的にログインさせることができる。
【0051】
リクエスト処理部25は、管理サイト用処理部21や専用端末用通信処理部22が受け付けたリクエストを解析し、その内容に応じてデータ管理部26または画像照合部27を動かして、リクエストに応じた処理を実行させる。
【0052】
この実施例で受け付ける主要なリクエストは、トレーサビリティ情報の登録を求める登録リクエスト、トレーサビリティデータベース200に登録されている情報の閲覧を求める閲覧リクエスト、トレーサビリティデータベース200に情報が登録された木材のECサイトへの出品を求める出品リクエストである。いずれのリクエストにも、そのリクエストの対象の木材に取り付けられたICタグ1のタグIDやリクエストを送信したユーザのユーザIDが含まれる。
登録リクエストは専用端末用通信処理部22のみが受け付け、閲覧リクエストや出品リクエストは、専用端末用通信処理部22および管理サイト用処理部21の双方で受け付ける。
【0053】
上記のほか、管理サーバ2には、登録済の情報への補足情報の追加を求める更新リクエストや、トレーサビリティデータベース200に年輪の画像が登録されている木材を実際に撮影して得られた年輪画像と登録された年輪画像との照合を求める照合リクエストが送信される。更新リクエストも、専用端末用通信処理部22および管理サイト用処理部21の双方で受け付けることができるが、照合リクエストは専用端末用返信処理部22のみで受け付ける。
【0054】
データ管理部26は、上記各種リクエストのうち、年輪画像の照合リクエスト以外のリクエストに対する具体的な情報処理を実行する。画像照合部27は、年輪画像の照合リクエストに対する照合処理を行う。
【0055】
リクエスト処理部25は、データ管理部26や画像照合部27による処理結果に基づき、リクエストを送信した端末装置3または4に対する応答情報を作成する。この応答情報は、リクエストを受け付けた管理サイト用処理部21または専用端末通信処理部22からリクエストを送信した端末装置3,4に送信される。
【0056】
ECサイト用処理部28は、トレーサビリティデータベース200に情報が登録され、出品リクエストが受け付けられた木材を販売するためのECサイトを管理する。このECサイトでは、出品リクエストが受け付けられた木材のトレーサビリティ情報の一部が掲載されるが、サイトにアクセスした端末装置3,4から特定の物品の詳細情報の読み出しのリクエストを受けると、ECサイト用処理部28はトレーサビリティデータベース200から該当するトレーサビリティ情報の全て(ただし非公開に設定された情報がある場合はそれを除く。)を読み出し、それらの情報を含むウェブページを、リクエストを出した端末装置3,4に送信する。
【0057】
決済処理部29は、ECサイト用処理部28が特定の木材に対する購入の申し込みを受けたときに、外部の決済システムと協働して購入申込者から代金の支払いを受けるための処理を実施する。
【0058】
なお、ECサイトには一般端末装置4によりログインせずにアクセスすることができるが、購入の申し込みをするにはユーザ登録が必要である。購入のためにユーザ登録やログイン認証を行う必要が生じたときは、管理サイト用処理部21や登録情報処理部24や認証処理部23がこれらの処理に対応する。また、一般端末装置4がログイン状態にあるときは、管理サイトにアクセスすることも可能である。
【0059】
よって、ユーザ登録された一般ユーザは、管理サーバ2にログインすることによって、適宜、ブラウザに表示するサイトを切り替えて、出品されていない木材に関しても、トレーサビリティデータベース200の検索により、一部の情報を確認することができる。また、自身の携帯端末装置4b,4cに専用アプリケーション30のプログラムをインストールすることによって、原木市場などで特定の木材のICタグ1からタグIDを読み取って管理サーバ2に閲覧リクエストを送信し、当該特定の木材のトレーサビリティ情報を閲覧することができる。さらに、その特定の木材について年輪画像が登録されている場合には、目の前の実物の木材を撮影し、その画像を含む照合リクエストを管理サーバ2に送信し、管理サーバから照合結果の送信を受けることによって、当該木材が正規のものである可能性の高さを確認することができる。
【0060】
図7は、上記管理サーバ2のトレーサビリティデータベース200の構成例を表したものである。この例のトレーサビリティデータベース200には、各ICタグ1のタグIDが登録されるID管理テーブル201と、登録されたタグID毎に設けられる情報記憶部202とが含まれる。
【0061】
ID管理テーブル201には、登録リクエストに含められて管理サーバ2に送信され、後述する図11の処理により受け付けられた全てのタグIDが保存される。情報記憶部202の実体は対応するタグIDをフォルダ名とするフォルダであって、その内部に、対応する木材の基本情報が登録される基本情報テーブル204や3種類の下位フォルダ205,206,207が格納される。
【0062】
基本情報テーブル204は、原木の種類(樹種)、生育地、伐採日、出荷日、原木市場や製材所などへの入荷日などの一般的なトレーサビリティ情報が保存される。これらの情報の殆どは、後述する専用端末装置3の入力画面で示される選択肢の選択により入力される。
【0063】
さらにこの実施例の基本情報テーブル204には、登録リクエストに関する履歴情報、閲覧リクエストに関する履歴情報、対応する物品の現在の状態を表すステータス情報などが保存される。履歴情報には、リクエストの送信日時、送信者のユーザID、情報の入力や閲覧が行われた場所(GPS情報によるもの)、登録または閲覧された情報のファイル名などが含まれる。
【0064】
情報記憶部202に含まれる下位フォルダ205,206,207は、会員ユーザが後述する図9の操作画面から入力し、登録リクエストに含めて管理サーバ2に送信した情報(以下「投稿記録」という。)を保存するためのものである。フォルダ205には投稿記録の主要部分が保存され、フォルダ206には画像照合部27による照合対象の年輪画像の画像ファイルが保存され、フォルダ207には年輪画像以外の画像ファイルが保存される。これらのフォルダ205,206,207は1つずつに限らず、データ容量やデータの発生日時などに応じて複数を設定することができる。
【0065】
投稿記録用フォルダ205には、送信情報中のテキストデータ(基本情報テーブルに保存されたものも含む。)を含むhtmlファイルが保存される。送信情報に画像ファイルが含まれていた場合は、このhtmlファイルに当該画像ファイルへのハイパーリンクが設定される。
【0066】
上記のデータ構成によれば、閲覧請求に対して該当する投稿記録のhtmlファイルと、それに紐づけられている画像ファイルとを読み出し、これらを閲覧請求を送信した端末装置3,4に送信することによって、当該端末装置3,4に投稿記録のテキスト部分および画像の双方を表示させることができる。
【0067】
ただし、投稿記録のデータファイルはhtmlファイルに限らず、XMLファイルやcsvファイルとしても良く、単なるテキストファイルやその他の形式のファイルにしてもよい。画像ファイルへのハイパーリンクを設定できない形式のファイルにする場合も、その画像ファイルのファイル名や保存先にフォルダ名を当該ファイルに含めることによって、テキストデータと画像ファイルとの紐づけが維持される。
【0068】
<専用端末装置3の構成・機能>
図8は、専用端末装置3の構成を表す機能ブロック図であって、ハードウェア300の構成とソフトウェア(専用アプリケーション30)とを、破線枠により区分けして示している。なお、図8には示していないが、専用アプリケーション30とハードウェア300との間には、オペレーションシステムが存在する。また、オペレーションシステムと同様に、専用アプリケーション30が入る前の装置に標準装備されているソフトウェアのうち、ハードウェア300の制御に関わるソフトウェアや文字入力システム(IME)も、専用アプリケーション30に連動する。
【0069】
ハードウェア300には、カメラモジュール301,タッチパネル302,NFC用通信回路303,GPSモジュール304,遠距離無線用通信回路305などが含まれる。
専用アプリケーション30には、撮影制御部31,GUI制御部32,ID読取処理部33,位置情報処理部34,遠距離通信制御部35,データ管理部36などの処理機能や、ユーザ情報記憶部37,送信データ記憶部38,参照データ記憶部39などの記憶機能が含まれる。
【0070】
ユーザ情報記憶部37には、この専用端末装置3を使用するユーザについて、管理サーバ2のユーザ情報記憶部210に登録されるのとほぼ同じ情報が保存される。さらに、この実施例のユーザ情報記憶部37には、専用端末装置3から管理サーバ2に対して行われた送信の履歴情報(送信されたリクエストの種類,リクエストに含まれたタグID,送信日時,管理サーバ2からの応答を受信した日時など)が保存される。
【0071】
送信データ記憶部38には、管理サーバ2に登録する情報として後述する入力画面から入力された情報が保存される。この記憶部38に保存される情報は、管理サーバ2に送信されるまでは削除できないように設定され、送信完了後も、ユーザが消去操作を行わない限り、保持される。
【0072】
参照データ記憶部39には、ユーザの業務に関して利用できる可能性がある情報(代表的な樹木の写真入り解説のリスト、森林の分布範囲を表すマップ情報、森林組合・原木市場・製材所などの所在地・連絡先一覧など)が登録される。この参照データ記憶部39の登録情報は、適宜、管理サーバ2の図示されていない情報提供機能からダウンロードして更新することができる。
【0073】
処理機能のうちのID読取処理部33は、NFC用通信回路303と協働して、ICタグ1からの情報の読み取り処理を行う。GUI制御部32は、タッチパネル302に専用アプリケーション30の操作画面を設定するためのもので、上記読み取り処理により、タグIDに適合する形式のコードが読み取られたことに応じてタッチパネル302に図9図10に示す構成の画面を表示し、その画面に対する操作を受け付ける。
【0074】
撮影制御部31は、カメラモジュール301と協働して撮影を行い、その撮影により生成された画像を管理サーバ2への登録候補として取得する。また、年輪画像以外の画像については、登録対象の情報入力の時点の前後の一定期間内にカメラモジュール301により生成された画像(専用アプリケーション30が起動していないときに生成されたものも含む。)を登録候補にすることもできる。
【0075】
位置情報処理部34は、入力画面の操作中にGPSモジュール304からその時点の位置情報を取得し、その位置情報を入力画面から入力された情報に追加する。
【0076】
遠距離通信制御部35は、遠距離無線用通信回路305(Wi-Fi,4G,5G等の規格に準拠する。)を介して、管理サーバ2にリクエストを送信し、当該リクエストに対する管理サーバ2からの応答を受け付ける。
【0077】
データ管理部36は、上記の各処理部の動作に連動して、各記憶部37,38,39に対し、情報の保存や読み出しを行う。またGUI制御部32が先に述べたリクエストのいずれかを送信する旨の指示操作を受け付けた場合には、そのリクエストがデータ管理部36によって送信データ記憶部38から読み出されて遠距離通信制御部35に渡され、遠距離無線用通信回路305によって管理サーバ2に送信される。
【0078】
(3)専用端末装置3における主要処理
つぎに、専用端末装置3において実施される主要な処理であるトレーサビリティ情報の登録および閲覧に関して、GUI制御部32によってタッチパネル302に表示される画面の推移を表す図9,10を参照して、処理の流れを説明する。
【0079】
図9(9-1)および図10の(a)は、タッチパネル302に表示される初期のメニュー画面を表している。このメニュー画面中の一番上の「タグ情報登録」のボタンが特定の木材のトレーサビリティ情報の登録する処理を選択するためのボタンであり、2番目の「タグ情報閲覧」のボタンが特定の木材のトレーサビリティ情報の閲覧を選択するためのボタンである。またメニュー画面中の下から2番目の「アップロード」のボタンは、「タグ情報登録」の処理により送信データ記憶部38に保存されている情報を管理サーバ2に送信する処理を選択するためのボタンである。
【0080】
<トレーサビリティ情報の登録処理>
図9図9-1および図9-2)は、タッチパネル302の表示画面がメニュー画面(図9-1の(a))から登録対象の情報の入力画面に移行し、その画面の内容がユーザの操作に応じて変化する様子を例示したものである。
【0081】
メニュー画面中の「タグ情報登録」のボタンがタップされると、ID読取処理部33およびNFC用通信回路303が起動して、ICタグ1からの識別コードの読み取りが可能になる。これに合わせて、GUI制御部32は、画面をICタグ1からの読み取り処理を指示するものに変化させる(図9-1の(b))。
【0082】
ユーザが上記の指示に従って、専用端末装置3を対象のICタグ1にかざし、識別コードの読み取りが完了すると、図9-1の(c)に示すような初期状態の入力画面に表示が切り替えられる。この入力画面では、読み取られた識別コード(タグID)が上部に表示されると共に、「機種」「種別」「登録日」「メモ」「年輪画像」「その他画像」の各項目の文字が表示されている。これらの文字部分がタップされると、その項目に対する情報の入力を受け付ける状態となる。
【0083】
「機種」および「種別」については、図9-1の(d)や図9-2の(e)に示すように、選択肢が表示され、それらの中からあてはまるものを選択する方法により入力が完了する。登録日についても、本日の日にちを初期値とするスクロールメニューが表示され、その中の日にちを選択する方法により入力が完了する。
【0084】
「メモ」がタップされると、テキスト入力の画面に一時的に切り替えられると共に文字入力システムが呼び出され、ユーザが自由にコメントを書き込むことができる状態になる。この画面にユーザがコメントを書き込んで終了操作を行うと、画面は元の入力画面に戻り、入力されたコメントがメモの欄に表示された状態となる(図9-2(f))。
【0085】
「年輪画像」や「その他画像」がタップされると、撮影制御部31およびカメラモジュール301が起動して、カメラモジュール301が撮影中の画像を表示する画面に一時的に切り替えられる。ユーザは、ここで撮影操作を行い、生成された画像への確定操作を行うと、その画像が登録対象の画像として、項目の下に表示される(図9-2(g))。
「その他画像」については、現時点から一定時間前までの範囲に保存されていた画像の中から選択することもできる。また、いずれの画像も1点に限らず、複数点の画像を入れることができる。ただし、年輪画像、その他の画像とも、必須の情報ではない。また年輪画像の入力の機能は、あらかじめ撮影の権限が与えられた会員ユーザ(原木の育成または伐採に携わる者)の専用端末装置3でのみ有効化される。
【0086】
入力情報が増えるにつれて、画面の下部の項目は表示できなくなるが、適宜スクロールをすることによって、図9-2(g)に示すように、隠れていた項目を画面の主要部に移動させることができる。また、情報の入力が進むと、GPSモジュール304が取得した現在の位置情報(緯度および経度)が位置情報処理部34によって具体的な住所に置き換えられ、その住所が画面の下部に表示される。さらに位置情報の下に登録ボタンRBも表示される。
【0087】
登録ボタンRBがタップされると、GUI制御部32からデータ管理部36に処理の主体が変更され、タグIDや項目名を含む入力画面内のテキストデータや、同じ画面に表示されていた画像のファイルを含む登録リクエストが作成され、送信データ記憶部38に保存される。この登録リクエストのテキストデータも、画像ファイルへのリンクを含むhtmlファイルとすることができるが、これに限らず、他の形式のファイルとしてもよい。
【0088】
上記の保存が終了すると、タッチパネル302の画面は、図9-1(a)の初期画面に戻る。このとき専用端末装置3が遠距離無線通信が可能な場所にあれば、引き続き、メニュー画面中の「アップロード」のボタンを操作することによって、送信データ記憶部38に保存された登録リクエストを管理サーバ2に送信することができる。
【0089】
専用端末装置3が遠距離無線通信は不可能または困難な環境にあるときも、ユーザは、現場を離れて遠距離無線通信が可能な場所に移動してから、「アップロード」のボタンを操作し、保存されている登録リクエストを管理サーバ2に送信することができる。
【0090】
なお、上記では、送信データ記憶部38に登録リクエストが保存されると説明したが、その保存情報は最終的に管理サーバ2に送信される登録リクエストに完全に一致しない場合がある。たとえば,送信データ記憶部38に保存された情報にリクエスト種別を表すコードやユーザIDが付加される場合がある。
【0091】
<トレーサビリティ情報の閲覧処理>
図10は、「タグ情報閲覧」のボタンの操作により閲覧リクエストが選択された場合の画面の推移を例示したものである。この選択操作は、専用端末装置4が遠距離無線通信が可能な場所にあるときのみ有効となり、操作に応じて初期メニュー画面(図10(a))からICタグ1への読み取りを指示する画面(図10(b))に移行する。タグIDの読み取りが完了すると、データ管理部36によって、読み取られたタグIDを含む閲覧リクエストが作成され、これが遠距離通信制御部35から遠距離無線通信回路305を介して管理サーバ2に送信される。この送信から管理サーバ2の応答情報を受信するまでの間、タッチパネル302は、図10(c)に示すような待機画面を表示する状態になる。
【0092】
この後、遠距離通信制御部35が管理サーバ2からの応答を取得すると、その応答はデータ管理部36を介してGUI制御部32に渡され、図10(d)に示すように、閲覧対象のタグIDに対して管理サーバ2のトレーサビリティデータベース200に登録されている情報が表示される。
【0093】
図10では、説明の便宜のため、図9の例で入力された情報が管理サーバ2に送信されて投稿記録として登録された後に、閲覧の対象となって表示されたものとしている。この実施例では、登録対象の情報の入力画面に表示された情報を項目名も含めて送信データ記憶部38に保存した後に、その保存情報の全てを含む登録リクエストを管理サーバ2に送信し、管理サーバ2でも登録リクエストに含まれる情報の全てをトレーサビリティデータベース200に保存することによって、閲覧リクエストに対応する投稿記録を、その記録の元となる入力画面と同様の構成の画面により表示することができる。
【0094】
<過去の処理の確認・修正>
上記メニュー画面の3番目の「タグ一覧」は、これまでに自装置で読み取られたICタグ1とその読み取り後に行われた処理の内容を確認するためのものである。このボタンが選択されると、過去に読み取られたタグID,読み取りが行われた日時,読み取り後の処理内容(たとえば「登録」「閲覧」など)などの一覧表示画面が表示される。
【0095】
「登録」に関して管理サーバ2に送信されていない情報がある場合には、上記一覧表示の該当する欄にマーカーや目印マークなどの注意喚起表示が行われる。ユーザがその表示箇所をタップすると、画面は該当する情報の表示に切り替えられ、その画面で登録リクエストの送信を行うことができる。また送信の前に、コメントの修正や追加を行うこともできる。年輪画像以外の画像についても、登録リクエストの作成の前後の一定期間内に撮影された画像を追加することができる。
送信が完了した登録リクエストは、ユーザの操作により削除することができるが、送信が完了していない登録リクエストを削除する操作は無効となる。
【0096】
送信済みの情報についても、その表示箇所がタップされることによって、コメントの欄の誤記修正や追加を行い、その更新後の情報を更新コマンドとして管理サーバ2に送信することができる。
【0097】
さらにタグ一覧に含まれる送信済みの登録情報については、ECサイトへの出品を申し込む操作を行うことができる。この操作が行われると、データ管理部36によって、選択された情報に対応するタグIDや専用端末装置3のユーザIDを含む出品リクエストが作成され、遠距離通信制御部35および遠距離無線用通信回路305によって当該出品リクエストが管理サーバ2に送信される。ただし、専用端末装置3が遠距離無線通信ができない場所にあるときは、登録情報と同様に出品リクエストも送信データ記憶部38に保存され、遠距離無線通信が可能になってから、ユーザの操作に応じてまたは自動的に管理サーバ2に送信される。
【0098】
<子タグIDの登録処理>
メニュー画面の一番下の「補助」はメンテナンス用の項目であって、このボタンをタップすると、具体的なメンテナンス項目のボタンを含むサブメニューが表示される。このサブメニューの中に、伐採後の丸太が複数に分割されて、分割後の各木材に取り付ける子タグに子タグIDを書き込むための書込み処理が含まれている。
【0099】
子タグIDの書込み処理でも、図9-1(b)や図10(b)と同様の画面により、まず親タグIDの読み取り処理が行われる。読み取りが終了すると、子タグの数(木材の分割数)を入力する画面に移行し、入力が行われると、入力された数の子タグIDが自動生成される。
【0100】
この後は、また図9-1(b)や図10(b)と同様の画面になり(ただし、表示される文字が「タグ読み取り」ではなく、「タグ書き込み」となる。)、ユーザが各子タグに専用端末装置3を順にかざすことによって、それらの子タグに子タグIDが書き込まれる。従来技術の欄で述べたように、汎用の携帯端末装置ではICタグ1への書き込みの結果を確認することが難しいが、この実施例の専用アプリケーション30には、子タグへの書き込みの都度、書き込みが完了した旨のメッセージを通知したり、書き込まれた子タグIDと元の親タグIDとを並列表記するなど、書き込みが正常に行われたことを確認できる仕組みが設けられている。
【0101】
子タグIDが書き込まれた後の子タグに対して読み取り処理を行うと、上記の子タグIDのほか、子タグに元から保存されていたタグIDも読み出される。しかし、この実施例の専用端末装置3では、ID読取処理部33に、子タグIDをそのデータ形式から見分ける機能を持たせ、2種類のタグIDが読み取られたときは子タグIDが選択されるようにしている。この機能によれば、子タグIDの書き込み処理を行ったユーザ以外のユーザの専用端末装置3で子タグへの読み取り処理を行った場合でも、図9図10に示した画面のタグIDの欄には子タグIDのみが表示され、登録リクエストや選択リクエストに含まれるタグIDも子タグIDのみにすることができる。
【0102】
<その他の機能>
「補助」のサブメニューには、参照データ記憶部39の更新のためのダウンロードや、専用アプリケーション30のアップデート用のプログラムのダウンロードも含まれる。これらの処理の機能も、遠距離無線通信が可能な場所で有効になる。
【0103】
閲覧リクエストにより送信された情報中に年輪画像が含まれていた場合は、その画像をタップすることによって、年輪画像の照合リクエストを送信するための画面に移行することができる。
【0104】
年輪画像の照合リクエストでも、照合対象の木材に取り付けられているICタグ1からタグIDを読み取った後、撮影制御部31やカメラモジュール301を起動させて木材の年輪を撮影し、生成された画像に確定操作を行うことによって、その画像のファイルやタグIDを含むリクエスト情報が生成される。この照合リクエストも、登録リクエストと同様に送信データ記憶部38に保存され、遠距離無線通信が可能な環境下で管理サーバ2に送信される。
【0105】
送信データ記憶部38に保存されたリクエストは、管理サーバ2への送信が完了するまでは消去されずに保持されるが、専用アプリケーション30に、遠距離無線通信が可能な場所に一定時間以上滞在しても未送信の登録リクエストが送信されない場合にアラーム通知を出力する機能を付加することもできる。または、遠距離無線通信が可能になったことに応じて、送信データ記憶部38の未送信状態のリクエストを自動的に送信する機能を設けることもできる。
【0106】
上記のほか、専用アプリケーション30には、他の会員ユーザや一般ユーザとのコミュニケーションのためにインターネットを介して他の専用端末装置3と通信を行う機能や、管理サーバ2を介して一般端末装置から送信されたユーザ宛のメッセージを受信する機能や、そのメッセージへの返信の中継を管理サーバ2に要請する機能などを設けることができる。
【0107】
(4)管理サーバ2における処理の流れ
つぎに、管理サーバ2における3種類のリクエスト(登録リクエスト、閲覧リクエスト、照合リクエスト)に対する処理の流れを、フローチャートを用いて説明する。なお、これらの処理は、主としてリクエスト処理部25とデータ管理部26とが協働して実行するが、専用端末用通信処理部22などの他の処理部も関わるため、以下では管理サーバ2を処理の主体として説明する。
【0108】
<登録リクエストに対する処理>
図11は、専用端末装置3から登録リクエストの送信を受けたときに実行される処理の手順を、リクエスト中のタグIDにかかる処理を中心に表したものである。
【0109】
専用端末装置3からの登録リクエストには、ICタグ1から読み取られたタグIDや送信者のユーザIDと共に、前出の図9の画面で入力された情報が含まれている。このリクエストを受けた管理サーバ2では、まずリクエスト中のタグIDを抽出し(ステップS1)、このタグIDをトレーサビリティデータベース200のID管理テーブル201に登録されているタグIDと照合する(ステップS2)。
【0110】
上記の登録リクエストが、ICタグ1が管理対象の木材に取りつけられてから初めて送信されたリクエストであったときは、上記のタグIDはID管理テーブル201にはまだ登録されていない。したがって、ステップS3の判定は「NO」となってステップS4に進み、当該タグIDが付加コード付きのID、すなわち子タグIDであるかどうかの判定が行われる。
【0111】
付加コードがついていない通常の構成のIDであれば(ステップS4が「NO」)、管理サーバ2はステップS6に進み、登録リクエストから抽出したタグIDを新規のIDとしてID管理テーブル201に登録する。さらに、管理サーバ2は、トレーサビリティデータベース200内に、上記新規のIDをフォルダ名とするフォルダ、すなわち新規IDに対応する情報記憶部202を設定し(ステップS7)、この情報記憶部202内に登録リクエストに含まれていた各種情報を保存する(ステップS8)。
【0112】
一方、新規と判定されたタグIDに子タグIDであることを示す付加コードが付されていた場合は、管理サーバ2はステップS4からステップS5に進み、当該子タグIDから付加コードを除いた構成のタグID、すなわち親タグIDがID管理テーブル201に登録されているかどうかをチェックする。ここで親タグIDが登録されていることが確認できれば(ステップS5が「YES」)、以後は、上記のステップS6,S7,S8を実行することによって、新規の子タグIDをID管理テーブル201に登録すると共に、子タグIDに専用の情報記憶部202を設定し、その内部にリクエストに含まれていた各種情報を保存する。
【0113】
何らかの手違いで、子タグIDに対応する親タグIDがID管理テーブル201に登録されていなかった場合(ステップS5が「NO」)には、管理サーバ2は登録リクエストをキャンセルし、リクエストを送信した専用端末装置3にエラー通知を送信する(ステップS10)。
【0114】
登録リクエスト中のタグIDがすでにID管理テーブル201に登録されていた場合(ステップS3が「YES」)には、管理サーバ2はIDの構成を問わずにステップS11に進み、上記のタグIDに対応する情報記憶部202内に登録リクエストに含まれていた各種情報を保存する。
【0115】
ステップS8やステップS11では、リクエスト中のテキストデータから基本情報テーブル204に登録すべき情報が抽出されて基本情報テーブル204に書き込まれると共に、投稿記録フォルダ205や画像フォルダ206,207に、先に述べた形式の情報が保存される。全ての情報の保存が終了すると、管理サーバ2はステップS9に進んでリクエストを出した専用端末装置3に登録完了の通知を送信し、その送信完了をもって、登録リクエストに対する処理を終了する。
【0116】
上記の処理手順によれば、分割される前の木材(丸太)に関する情報が登録対象となる場合も、分割後の木材が登録対象となる場合も、処理の手順を大きく変更することなく、対応することができる。ただし、登録リクエストから新規の子タグIDが抽出された場合のID管理テーブル201への登録処理においては、その子タグIDを親タグIDの下位に位置づける階層設定を行うことにしてもよい。
【0117】
<閲覧リクエストに対する処理>
図12は、専用端末装置3から閲覧リクエストが送信されたときの処理手順を表したものである。
【0118】
この場合も、管理サーバ2は、登録リクエストに対する処理と同様に、リクエスト中のタグIDを抽出して、ID管理テーブル201に登録されているかどうかの照合を行う(ステップS21,S22)。専用端末装置3の読み取り対象のICタグ1が、まだ一度も登録リクエストが受け付けられていない新規のICタグ1であった場合や偽物のICタグ1であった場合は、ステップS23が「NO」となってステップS29に進み、閲覧リクエストを出した専用端末装置3にエラー通知が送信される。
【0119】
閲覧リクエストから抽出されたタグIDがID管理テーブル201に登録されていた場合(ステップS23が「YES」)には、管理サーバ2はステップS24に進み、当該タグIDに対応する情報記憶部202から閲覧対象の情報の読み出しを行う。
【0120】
ここで上記の閲覧リクエストから抽出されたタグIDに付加コードが付されていなかった場合(ステップS25が「NO」)、すなわち分割前の木材または原木に取り付けられているICタグ1から読み取られたタグIDであった場合には、管理サーバ2はステップS28に進み、閲覧リクエストを出した専用端末装置3に上記ステップS24で読み出された情報を送信する。
【0121】
一方、上記のタグIDが付加コード付きの子タグIDであった場合(ステップS25が「YES」)には、管理サーバ2は当該子タグIDの親タグIDの情報記憶部202からも情報を読み出す(ステップS26)。そして、続くステップS27において、ステップS26で読み出された情報をステップS24で読み出された情報より過去の情報として統合し、閲覧リクエストを出した専用端末装置3に統合された情報を送信する。
【0122】
上記の処理手順によれば、分割後の木材が閲覧対象になった場合も、分割前の木材に関するトレーサビリティ情報まで確認することができるので、閲覧者は、閲覧リクエストを行った木材がどのような経緯で現在の形態になったかを詳しく確認することができる。
【0123】
ただし、子タグIDの情報と親タグIDの情報とを一度に送信することは必ずしも必要ではなく、まず子タグIDの情報を送信し、専用端末装置3から追加の送信の要求を受けたことに応じて親タグIDの情報を送信する、またはその逆の順序で送信するなど、情報の送信を複数回に分けることも可能である。
【0124】
ステップS28でも、分割前の木材について多数の情報が登録されていた場合には、それらの情報を複数回に分けて送信してもよい。
【0125】
また、ステップS27,S28のいずれにおいても、閲覧リクエストを出した専用端末装置3に対し、まず該当する登録情報の一部のみを抜粋して連ねたリスト情報、または基本情報テーブル204に登録されている情報を専用端末装置3に送信し、それらが表示された専用端末装置3において、ユーザが表示された情報の1つを選択したことに応じて、専用端末装置3から管理サーバ2に選択された情報の全体の送信を求めるリクエストを送信し、管理サーバ2がそのリクエストに応答するようにすることもできる。
【0126】
一般端末装置4でも、ECサイトで公開されている情報に対して詳細情報の読み出しを指定する方法や、管理サーバ2にログインして出品前の非公開情報を指定する方法によって、指定した情報に対応するタグIDを取得し、管理サーバ2に閲覧リクエストを送信することができる。管理サーバ2は、これらの閲覧リクエストを管理サイト用処理部21により受け付けて、図12と同様の手順で対応することができる。
【0127】
<出品リクエストに対する処理>
管理サーバ2に登録リクエストを送信した会員ユーザは、専用端末装置3のメニュー画面の「タグ一覧」から管理サーバに送信済みの投稿記録を呼び出して「出品」の指定を行う方法、または管理サイトの自分専用のページ(マイページ)に保存されている投稿記録のリストから出品するものを選択する方法によって、出品リクエストを送信することができる。
【0128】
出品リクエストにも、その出品の対象とする木材に取り付けられたICタグ1のタグIDとリクエストを出した会員ユーザのユーザIDが含まれる。また、対象の木材の値段や出荷が可能になる日にちなど、出品に必要な情報も、あらかじめユーザの操作により入力され、出品リクエストに含められる。
【0129】
図13は、管理サーバ2が上記いずれかの方法による出品リクエストを受けた場合の処理手順を表すものである。この場合も、管理サーバ2は、閲覧リクエストと同様に、出品リクエスト中のタグIDを抽出してID管理テーブル201の登録情報と照合し(ステップS31,32)、該当する登録が見つからなかった場合は、出品リクエストを送信した端末装置にエラー通知を送信する(ステップS33,S40)。
【0130】
出品リクエストから抽出されたタグIDがID管理テーブル201に登録されていることが確認できた場合(ステップS33が「YES」)には、管理サーバ2は、当該出品リクエストからユーザIDを抽出し(ステップS34)、抽出されたユーザIDにより上記タグIDの情報記憶部202の基本情報テーブル204を照合する(ステップS35)。
【0131】
この照合により、出品リクエスト中のユーザIDが最新の投稿記録のユーザIDに一致することが確認できた場合(ステップS36が「YES」)は、管理サーバ2はステップS37に進み、基本情報テーブル204のステータス情報をチェックする。
先の図7の例の基本情報テーブル204では、ステータス情報として、「流通前」「流通中」「出品中」「成約済」という4種類の情報が示されている。これらの情報はそれぞれ独立したフラグ情報である。
【0132】
これらのフラグ情報のうち、「流通前」または「流通中」がオンとなり、「出品中」および「成約済」がいずれもオフであれば、管理サーバ2は出品可能と判断してステップS38に進み、「出品中」のフラグをオフからオンに切り替える。
このフラグの切り替えによって、出品リクエストが受け付けられた状態となる。この後、管理サーバ2は、出品リクエストを送信した端末装置に受付完了通知を送信し、その送信完了をもって出品リクエストに対する処理を終了する。
【0133】
上記の出品リクエストの対象の木材が当該リクエストを送信した会員ユーザの管理からすでに離れ、次に木材を受け入れた会員ユーザがその受け入れに関する投稿記録を登録している場合は、基本情報テーブル201に登録されている最新の投稿記録のユーザIDが出品リクエストから抽出されたユーザIDと一致せず、ステップS36が「NO」となる。このときの管理サーバ2はステップS40に進んで、出品リクエストを送信した端末装置にエラー通知を送信する。
【0134】
出品リクエストを送信した会員ユーザより流通経路の上流にいる会員ユーザからの出品リクエストが受け付けられて、その「出品中」のフラグが解除されていない場合には、ステップS37が「NO」となり、同様にステップS40に進んでエラー通知が送信される。
【0135】
上記のとおり、出品リクエストの受付処理は、基本情報テーブル204のステータス情報を変更することで完了する。それとは別に、管理サーバ2では、ECサイト用処理部28が定期的にトレーサビリティデータベース200にアクセスして、ステータス情報が「出品中」に変更された情報をピックアップし、その情報をECサイトに公開する。このルーティン処理によって、出品リクエストの受付完了から所定時間が経過すると、該当する情報がECサイトに「新着情報」として公開され、リクエストをした会員ユーザの目的が達成される。
【0136】
ECサイトへの出品が完了した後も、出品した会員ユーザは、登録リクエストや更新リクエストの送信により情報を追加することができ、その追加された情報をECサイトにも反映させることができる。
【0137】
なお、図13の例では、最新の投稿記録をした会員ユーザに出品をする権限があるとしたが、これに限らず、たとえば特定の業種の会員ユーザのみ、またはあらかじめ定めた特定の会員ユーザのみに出品を認めることとして、それらのユーザのユーザIDを含む出品リクエストのみを受け付けるようにしてもよい。
【0138】
上記のとおり、この実施例では、トレーサビリティ情報を登録する権限を持つ会員ユーザが、自身の管理下にある木材についての登録処理後に、当該木材をECサイトに出品して、一般ユーザが購入できるようにしたので、既存の流通の仕組みでは考えられないようなマッチングが実現する可能性がある。
【0139】
たとえば、山林の所有者が生育中の樹木にICタグ1を取り付けて、その樹木に関する情報をトレーサビリティデータベース200に登録した後に出品リクエストを送信し、ECサイトでその情報を見た家具職人が購入を申し込んだり、原木市場でなかなか買い手がつかない丸太について、市場関係者が格安の値段を付けて出品リクエストを送信し、ECサイトでその情報を見た建設業者が購入を申し込むなど、様々な結びつきが発生する可能性がある。
【0140】
上記の例のように、原木または原木に近い状態の木材についてECサイトを介して売買契約が成立した後も、製材加工などの通常の作業を経て購入者の元に届けられ、それが完了するまで、トレーサビリティ情報の蓄積が続けられる。
【0141】
このほか、ECサイトに、出品されている木材について、一般ユーザが問い合わせなどのコメントの書き込みを受け付ける機能を持たせ、書き込まれたコメントを出品者に転送し、コメントを出したユーザに出品者からの返信を転送することもできる。
【0142】
(5)その他のリクエストに対する処理
上記主要3種類のリクエスト以外のリクエストに対する管理サーバ2の処理について、以下、簡単に説明する。
【0143】
<年輪画像の照合リクエストに対する処理>
専用端末装置3から年輪画像の照合リクエストを受けた管理サーバ2では、画像照合部27がリクエスト中のタグIDによりトレーサビリティデータベース200にアクセスして、当該タグIDに紐付けられている年輪画像を読み出し、この画像を照合リクエスト中の画像と比較する。この比較の結果は、リクエスト処理部25によって、「適合」または「不適合」という文字情報や適合度を表す数値情報などに編集され、専用端末用通信処理部22から専用端末装置3に送信される。
【0144】
照合リクエストを送信した後の専用端末装置3は、閲覧リクエストを送信したときと同様の待機画面(図10(c))を表示して待機しているが、管理サーバ2から上記の応答を受信すると、その受信情報を示す画面に表示を切り替える。
この一連の処理によって、ユーザは、照合対象の木材が伐採のときと同一のものである可能性の高さを確認することができる。
【0145】
<投稿記録の更新リクエストに対する処理>
会員ユーザは、出品リクエストのときと同様に、専用端末装置3のメニュー画面の「タグ一覧」から管理サーバ2に送信済みの投稿記録を呼び出して「コメント編集」「画像追加」等の指定を行う方法、または管理サイトのマイページに保存されている投稿記録のリストから対象の投稿記録を選択する方法によって、管理サーバ2に投稿記録の更新リクエストを送信することができる。
【0146】
上記の更新リクエストを受けた管理サーバ2では、そのリクエスト中のタグIDの情報記録部202の基本情報テーブル204にアクセスし、当該リクエスト中のユーザIDに対応する投稿記録が履歴情報に含まれているかどうかを確認する。ここで該当する履歴情報が見つかると、管理サーバ2は更新リクエストを受け付け、当該リクエスト中の更新された投稿記録を投稿記録フォルダ205や画像フォルダ207に保存する。ただし、更新前の投稿記録のファイルも削除されることなく、アーカイブファイルに保存される。
【0147】
(6)追加できる機能および変形例
上記の実施例では、木材および木材として流通させる予定の原木をトレーサビリティ管理の対象として説明したが、管理の対象をより広げて、木材から製作される最終形態の商品(家具、雑貨、楽器、扉、床材など)もトレーサビリティ管理やECサイトへの出品の対象とすることができる。
【0148】
そのように対象を広げた場合、対象の物品が分割される機会も多くなるが、それらの分割においても、分割前の物品に取り付けられていたICタグ1を親タグとして、分割後の物品の1つ1つにシールタイプ等の子タグを取り付け、その子タグに親タグのタグIDに付加コードをつけた構成の子タグIDを書き込むことによって、最初に使用されたICタグ1のタグIDを最上位として、毎時の分割による子タグIDの階層構造を形成することができる。
【0149】
よって、各段階の子タグIDの付加コードの構成等について規則を定め、その規則を管理サーバ2に登録しておけば、管理サーバ2は、閲覧リクエストに含まれるタグIDを上記の規則にあてはめることによって、当該タグIDより上位のタグIDを全て特定し、それらのタグIDについてトレーサビリティデータベース200に登録されている情報を読み出し、閲覧リクエストに対する応答として、リクエストを出した端末装置に送信することができる。
【0150】
親タグIDの情報を子タグIDに引き継ぐ方法としては、子タグIDが登録される都度、親タグIDの情報記憶部202を内部の情報ごと複製してその複製を子タグIDの情報記憶部202とする方法も考えられる。しかし、分割の回数や分割される個数が増えると、同一の情報が何度も重複登録され、管理サーバ2のメモリが圧迫されてしまう。
【0151】
しかし、上述した方法によれば、子タグIDの情報記憶部202には、その子タグIDに対応する物品の情報しか保存されないので、管理サーバ2のデータ容量が無駄に増えるおそれがない。また、タグIDの繋がりを特定するための処理に大きな負荷がかかることもなく、どの段階の物品についても、最初の木材または原木の情報まで遡って確認することが可能になる。
【0152】
分割を重ねて分割後の個数が多くなる場合は、ICタグ1に代えて2次元コードなどのパターンコードにより子タグIDを表すこととして、パターンコードが印刷されたラベルを管理対象の物品に貼付してもよい。その場合にも、専用アプリケーション30に、パターンコードの読み取りによって登録対象の情報の入力や閲覧リクエストの送信などを行う機能を追加することによって、上記の実施例と同様の管理を行うことができる。
【0153】
なお、加工の現場において、1つの木材が複数に分割された後に、分割後の各木材を組み合わせて1つの物品が製作される場合など、分割後の木材が再び一体になる場合には、それらの木材に新たな子タグを取り付ける必要はなく、それらの一体化による物品にも分割前の木材のICタグまたはパターンコードを使用してよい。
【0154】
上記の実施例では、子タグIDを専用アプリケーション30の補助機能により生成するとしたが、これに限らず、親タグIDを読み取った専用端末装置3から管理サーバ2に当該親タグIDや子タグの数を含むID発行リクエストを送信し、そのリクエストに対する管理サーバ2からの応答により子タグIDを取得してもよい。
【0155】
またICタグ1に代えてパターンコードを使用する場合は、上記のID発行リクエストに対し、管理サーバ2でパターンコードの画像を生成してその画像ファイルを管理サイトの非公開ページからダウンロードできるようにしてもよい。その場合には、たとえば、会員ユーザの登録されているEメール宛に上記のダウンロードページのurlを通知することをもって、ID発行リクエストへの応答とすることができる。
【0156】
上記の実施例では、使用されるICタグ1のタグIDは、最初の登録リクエストによる情報が登録されるまで管理サーバ2には登録されないようにしたが、あらかじめ使用される予定のICタグ1のタグIDをID管理テーブル201に登録してもよい。そうすれば管理サーバ2では、最初の登録リクエストを受けた段階から、その登録リクエスト中のタグIDの適否を判定することができるので、偽のICタグ1が使用されるのを防ぐことができる。特に、森林保護の観点から伐採数が限定されている地域に対しては、上記の対策をとることにより、定められた数を超える樹木が不正に伐採されることを、高い確度で防ぐことができる。
【0157】
上記の実施例では、専用端末装置3に子タグIDを見分ける機能をもたせ、閲覧リクエストを生成する際に、子タグに対する読み取り処理により取得した2種類のタグIDのうちの子タグIDのみを閲覧リクエストに含めて管理サーバ2に送信した。しかしこれに限らず、専用端末装置3の側では子タグから読み取った2種類のタグIDを閲覧リクエストに含めて送信し、それを受け取った管理サーバ2の側でタグIDの選別を行うようにしてもよい。また、この方法を採用する場合は、管理サーバ2が子タグの読み取りによる初めての登録リクエストを受信したときに、子タグに元から保存されていたタグID(製造コード)も子タグIDに紐付けてID管理テーブル201に登録し、以後、これら2種類のタグIDの組み合わせにより受信する各種リクエストの正当性を判別することもできる。
【0158】
上記のように管理サーバ2に子タグIDを見分ける機能を持たせれば、専用アプリケーション30を入れていない一般端末装置4b,4cでも、子タグからのタグIDの読み取り処理によって閲覧リクエストや年輪画像の照合リクエストを送信し、管理サーバ2からその子タグが取り付けられている物品に関するトレーサビリティ情報の送信を受けることができる。
【符号の説明】
【0159】
S トレーサビリティ管理システム
1 ICタグ
2 管理サーバ
3 専用端末装置(携帯端末装置)
30 専用アプリケーション
32 GUI制御部
33 ID読取処理部
35 遠距離通信制御部
36 データ管理部
38 送信データ記憶部
200 トレーサビリティデータベース
201 ID管理テーブル
202 情報記憶部
302 タッチパネル
303 NFC用通信回路
305 遠距離無線用通信回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13