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特許7614651既知環境下で軌道計画を実施する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】既知環境下で軌道計画を実施する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20250108BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021573744
(86)(22)【出願日】2020-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 IB2020055345
(87)【国際公開番号】W WO2020250101
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】62/860,821
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523057725
【氏名又は名称】カハ エラスティック ダイナミック ソリューションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAJA ELASTIC DYNAMIC SOLUTIONS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】デッラ トーレ,ルーヴェン
(72)【発明者】
【氏名】グラス,ガイ
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルートを計画する方法において、当該方法が、
中央演算装置によって、倉庫の物理領域を示す3次元重み付きグラフを作成する工程であって、第3次元が複数の平面を有し、各平面が特定の時間における前記物理領域を表しており、さらに、前記3次元重み付きグラフにおける複数のノードが、前記3次元重み付きグラフの異なる平面の間を通過するエッジによってのみ接続することができるものである、3次元重み付きグラフを作成する工程と、
前記中央演算装置によって、前記3次元重み付きグラフについてのエッジ情報を提供または計算する工程であって、前記エッジ情報が前記3次元重み付きグラフにおける2つのそれぞれのノードの間の重みを表すものであり、それぞれの重みは、移動物体が前記3次元重み付きグラフにおける前記エッジの1つのノードから前記エッジの第2のノードへと移動する時間間隔を表すものである工程と、
前記中央演算装置によって、移動物体情報を提供する工程と、
前記中央演算装置で任務情報を受信する工程であって、それぞれの任務情報が、起点ノードおよび任務が完了するターゲットノードを含むものである工程と、
前記中央演算装置によって、前記3次元重み付きグラフとともに、前記任務情報および前記移動物体情報に基づいて、任務の起点ノードから任務のターゲットノードまでのルートを算出する工程と、
算出された前記ルートを実行するように、前記中央演算処理装置とデータ通信可能な移動物体に送達する工程と、
算出された前記ルートおよび前記移動物体情報に基づいて、影響を受けたノードを算出する工程と、
算出された前記ルートによって割り当てられたノードを使用することを避け、前記影響を受けたノードを使用することを避けるため、前記3次元重み付きグラフを更新する工程と、
前記任務情報および前記3次元重み付きグラフにおける変更点に基づいて、次の任務のための、次のルートを算出する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記3次元重み付きグラフを更新する工程は、封鎖ノードおよびエッジに関する情報のみを含むグラフレイヤーを保存することで、実行される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レイヤーを取り除く工程をさらに含み、
前記レイヤーは最新ではない、ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記中央演算装置で、リアルタイムまたは準リアルタイムで、移動物体の位置を受信する工程と、
算出された前記ルートと異なる部分に基づいて、前記3次元重み付きグラフを更新する工程と、
をさらに含む、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記異なる部分に基づいて実施された、前記更新に従って、計画されたルートにおいて影響を受けた部分を再計算する工程、をさらに含む、ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記3次元重み付きグラフにおけるエッジの重みを、十分に高い値に変更することにより、一時的な封鎖を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記3次元重み付きグラフの更新には、封鎖する移動物体の識別に関する情報は含まれない、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記再計算する工程には、任務に向けて以前に算出されたルートを、異なる移動物体を割り当てることが含まれる、ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
移動物体の一部は、実際の移動物体であり、移動物体の一部はシミュレーションされた移動物体である、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ルートを計画するシステムにおいて、当該システムが、
中央演算装置とデータ通信可能な少なくとも2つの移動物体を、備え、
前記中央演算装置が、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを備える少なくとも1つのメモリと、を有し、
前記コンピュータプログラムコードは、前記中央演算装置に、
複数の平面を有する3次元重み付きグラフが保存されたデータベースを維持する工程であって、各平面が、特定の時間における倉庫の2次元の物理領域を表しており、前記3次元重み付きグラフにおける複数のノードが、前記3次元重み付きグラフの異なる平面の間を通過するエッジによってのみ接続することができるものである、データベースを維持する工程と、
前記中央演算装置において、前記3次元重み付きグラフについてのエッジ情報を受信または計算する工程であって、前記エッジ情報が前記3次元重み付きグラフにおける2つのそれぞれのノードの間の重みを表すものであり、それぞれの重みは、移動物体が前記3次元重み付きグラフにおける前記エッジの2つのノードの間を移動する時間間隔を表すものである、エッジ情報を受信または計算する工程と、
移動物体情報のデータベースを維持する工程と、
前記中央演算装置において、ユーザあるいは外部システムから任務情報を受信する工程であって、それぞれの任務情報が起点ノードおよびターゲットノードを含むものである工程と、
前記中央演算装置によって、前記3次元重み付きグラフを利用し、既定のパラメータおよび前記移動物体情報に基づいて、第1任務の第1位置から第1任務の第2位置へのルートを算出する工程と、
算出された前記ルートおよび前記移動物体情報に基づいて、影響を受けたノードを算出する工程と、
算出された前記ルートによって割り当てられたノードを使用することを避け、前記影響を受けたノードを使用することを避けるように、前記3次元重み付きグラフを更新する工程と、
前記任務情報および前記3次元重み付きグラフにおける変更点に基づいて、次の任務のための、次のルートを算出する工程と、を少なくとも実行させるよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
前記3次元重み付きグラフを更新する工程は、封鎖ノードおよびエッジに関する情報のみを含むグラフレイヤーを保存することで、実行される、ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記レイヤーを取り除く工程をさらに含み、
前記レイヤーは最新ではない、ことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
リアルタイムまたは準リアルタイムで、移動物体の位置を受信する工程と、
算出されたルートと異なる部分に基づいて、前記3次元重み付きグラフを更新する工程と、
をさらに含む、ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記異なる部分に基づいて実施された、前記更新に従って、算出されたルートにおいて影響を受けた部分を再計算する工程、をさらに含む、ことを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記3次元重み付きグラフにおけるエッジの重みを、十分に高い値に変更することにより、一時的な封鎖を表す、ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記3次元重み付きグラフの更新には、封鎖する移動物体の識別に関する情報は含まれない、ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記再計算する工程には、任務に向けて以前に算出されたルートを、異なる移動物体を割り当てることが含まれる、ことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
移動物体の一部は、実際の移動物体であり、移動物体の一部はシミュレーションされた移動物体である、ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、一部が制御された環境下で軌道計画を実施する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ロボットやその他の自律走行車の軌道計画および挙動は、センサを必要とするような、複雑な衝突回避システムを必要としている。これにより、周囲の状況が詳細に把握できている場合であっても、走行車において、局所的にコンピュータ操作のための電力が必要とされると同時に、電力が消費され、また、動きが減速し、さらに、意図しない障害物が存在することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本出願で説明する、改良されたシステムおよび方法は、長年にわたって求められていたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一形態によれば、方法は、3次元をなす平面のそれぞれが、時間単位を表す平面を表し、さらに、異なる平面間のノードのみを繋げることができる、物理領域を示す3次元重み付きグラフを作成する工程と、グラフにおいて、初期エッジ情報を提供または計算する工程と、移動物体情報を提供する工程と、任務情報を受信する工程と、重み付きグラフを利用し、定義済のパラメータおよび移動物体情報に基づいて、第1任務の第1位置から第1任務の第2位置へのルートを算出する工程と、算出されたルートおよび移動物体情報に基づいて、影響を受けたノードを算出する工程と、算出されたルートによって割り当てられたノードを使用することを避け、影響を受けたノードを使用することを避けるため、グラフを更新する工程と、任務情報およびグラフにおける変更点に基づいて、次の任務のための、次のルートを算出する工程と、を含み、初期エッジ情報を提供または計算する工程において、各エッジは、グラフにおける2つのノード間の重みを表し、重みは、時間を表し、グラフにおける3次元をなす平面を利用することで、表される、ことを特徴とする。
【0005】
本発明のさらなる形態によれば、グラフを更新する工程は、封鎖ノードおよびエッジに関する情報のみを含むグラフレイヤーを保存することで、実行される。
【0006】
本発明のさらなる形態によれば、レイヤーを取り除く工程をさらに含み、レイヤーは最新ではない。
【0007】
本発明のさらなる形態によれば、リアルタイムまたは準リアルタイムで、移動物体の位置を受信する工程と、計画された軌道と異なる部分に基づいて、グラフを更新する工程と、をさらに含む。
【0008】
本発明のさらなる形態によれば、異なる部分に基づいて実施された、更新に従って、計画されたルートにおいて影響を受けた部分を再計算する工程、をさらに含む。
【0009】
本発明のさらなる形態によれば、グラフにおけるエッジの重みを、十分に高い値に変更することにより、一時的な封鎖を表す。
【0010】
本発明のさらなる形態によれば、グラフの更新には、封鎖する移動物体の識別に関する情報は含まれない。
【0011】
本発明のさらなる形態によれば、再計算する工程には、任務に向けて算出された以前の軌道に対し、異なる移動物体を割り当てることが含まれる。
【0012】
本発明のさらなる形態によれば、移動物体の一部は、実際の移動物体であり、移動物体の一部はシミュレーションされた移動物体である。
【0013】
本発明の別の形態によれば、システムは、少なくとも1つのプロセッサを備える中央演算装置とデータ通信可能な少なくとも2つの移動物体と、コンピュータプログラムコードを備える少なくとも1つのメモリとを備える。該コンピュータコードは、少なくとも1つのプロセッサにより、演算装置に、3次元が時間を表し、2次元物理領域を表す、3次元重み付きグラフのデータベースを維持する工程と、グラフにおいて、初期エッジ情報をユーザから受信または計算する工程と、移動物体情報のデータベースを維持する工程と、ユーザあるいは外部システムから任務情報を受信する工程と、重み付きグラフを利用し、定義済のパラメータおよび移動物体情報に基づいて、第1任務の第1位置から第1任務の第2位置へのルートを算出する工程と、算出されたルートおよび移動物体情報に基づいて、影響を受けたノードを算出する工程と、算出されたルートによって割り当てられたノードを使用することを避け、影響を受けたノードを使用することを避けるため、グラフを更新する工程と、任務情報およびグラフにおける変更点に基づいて、次の任務のための、次のルートを算出する工程と、を少なくとも実行させるよう構成され、初期エッジ情報を提供または計算する工程において、各エッジは、グラフにおける2つのノード間の重みを表し、重みは、時間を表し、グラフにおける3次元をなす平面を利用することで、表される。
【0014】
本発明における追加の形態および/または利点を以下に詳述する。これらは、詳細説明から推断可能、および/または、本発明を実践することで習得可能である。
【0015】
本発明およびその実用化について説明するため、複数の実施形態を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。さらに、以下の図面を参照して説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、商業用倉庫の例を示す。
図2図2は、時間の経過により変化するマップを示す。
図3図3は、本発明の実施形態における、二つのノード間の繋がりを示すものであり、ここで、各平面は、時間単位を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明全体を通して、当業者であれば誰でも本発明を活用できるよう、説明がなされ、本発明の発明者によって検討された最良の形態を明らかにする。ただし、一部が制御された環境下で軌道計画を実行する手段および方法を提供するにあたり、本発明の包括的な原則が具体的に示されるため、種々の変更が加えられることは、当業者にとって明らかであろう。
【0018】
以下の詳細な説明において、本発明の実施形態の全体像を把握するため、特定の詳細が多数明らかにされる。しかし、当業者であれば、これらの特定の詳細がなくとも、実施形態を実現し得るであろう。各特性によって全体像が想起されるように、各特性により明記しない部分も想起され得る。また、最終的に、特性が明示されれば、さらに新規特性も想起され得る。本明細書を通して、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態と関連付けて説明された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。
【0019】
「少なくとも1つ」、「1つ以上」、「および/または」といった表現は、制限を排除した表現であり、実質、連言的および選言的の両方で解釈される。例えば、「A、B、およびCのうち、少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうち、少なくとも1つ」、「A、B、およびCのうち、1つ以上」、「A、B、またはCのうち、1つ以上」、「A、B、および/または、C」といった表現はそれぞれ、A単独、B単独、C単独、AおよびB、AおよびC、BおよびC、または、A、B、Cの全て、を意味する。
【0020】
以下、「複数」という表現は、任意の正の整数を指す(例えば、1、5、10など)。
【0021】
本発明は、軌道計画に関する問題を解決する方法およびシステムに関する。ここで、ロボットやその他の自律走行車である移動物体は、所定の軌道のあらゆる箇所において、他の移動物体が確実に存在しない状態で、所定の目的座標まで移動することが求められる。
【0022】
一般的に、当該方法およびシステムによれば、衝突を検知する必要なく、また、リアルタイムで優先度の交渉をする必要なく、移動物体がとり得る自由軌道を算出することができる。自由軌道(一般的に、最短あるいは最速)を提供するにあたり、当該方法およびシステムは、スタート位置(起点ノード)からターゲット位置(ターゲットノード)までのノードセットに加えて、移動物体が軌道上の各位置(ノード)を離れる絶対時間、およびノードおよびエッジが移動物体の影響を受けた絶対時間、つまり、他の移動物体がそのノードおよびエッジを通過できない絶対時間を割り出す。こうした方法およびシステムにおいて、移動物体は、いかなる衝突関連センサも必要としない。
【0023】
当該方法において、例えば、図1に示すような、2次元(2D)または3次元(3D)の図で表される、商業用倉庫といった、すでに把握される位置関係が考慮される。ノードは、2D図のように割り当てられる。各ノードは、移動物体が通り得る位置を示し、それぞれが、少なくとも1つの近接ノードを有する。特定の移動物体が一つのノードから、その近接ノードに至るまでに要する時間の長さは、エッジまたは重みとして表される。
【0024】
本例においては、異なる種類のロボット群に、商業用倉庫内のあらゆる任務を遂行させることを目的とする。このためには、ロボットの所定の任務およびパラメータに基づいて、起動を計画するシステムを利用する必要がある。
【0025】
位置が決まると、当該方法では、物理領域、本例では、商業用倉庫のレイアウトおよび構造を示す3次元重み付きグラフを作成する必要がでてくる。上述のように、第2次元は、倉庫のレイアウトおよび構造を、第3次元は、時間を表す。第3次元は平面からなり、各平面は、時間単位(例えば、1秒)を表す。重み、つまり、ロボットがあるノードから別のノードまで移動するのに必要な時間は、時間単位において、ゼロを示すことはないため、グラフ内のノード間の接続は、その次元における平面を利用して、第3次元(時間)で移動することでのみ、成しえる。
【0026】
近位ヒューリスティックを回避し、CPUパワーをリアルタイムで削減するために、第一段階として、初期エッジ算出あるいは入力がグラフにおいて必要となる。初期グラフは、ノードを備え、二つの近接ノードはそれぞれ、移動物体ごと、あるいは、移動物体の種類ごとに、把握済みの重み/エッジを有する。これにより、初期グラフは、図3に示すように、3次元をなす平面を利用して、2つのノード間のすべての繋がりを示す。
【0027】
当該方法を用いた当該システムは、また、想定される全ての移動物体に関する情報を有するデータベースを必要とする。こうした情報には、例えば、移動物体の長さ、幅、積載物がない場合の速度、積載時の速度、移動制限等が含まれる。
【0028】
情報を受信すると、当該システムにおいて、軌道算出準備が整う。それにあたり、当該システムは、推敲する任務のリストを受信する。任務内容として、本例では、倉庫内の特定の場所からのオブジェクトの回収や、オブジェクトの配置換えなどが挙げられる。各任務は、少なくともスタート位置およびゴール位置を含み得る。さらなる実施形態において、任務には、工程および/または活動がさらに含まれ得る。
【0029】
当該システムにおける一回目の軌道算出では、第1位置(スタート位置)および第2位置(ゴール位置)が示され、外的制限要因が軌道計画に課されないため、ルート算出において、ユーザによって定義されたパラメータおよび移動物体の制限のみが考慮され得る。ユーザによって定義されたパラメータには、例えば、「最速ルートの算出」、「最短ルートの算出」、または「最も省エネなルートの算出」等が含まれる。移動物体の制限には、例えば、倉庫内において、幅が狭くて進入できない場所がある、等が含まれ得る。したがって、当該システムは、グラフ内で事前に算出された結果を利用して、関連移動物体の関連軌道を探索できる。
【0030】
ここで、当該システムは、軌道情報を移動物体に提供し、さらに、計画された軌道に基づいて、影響を受ける、全てのノードおよびエッジを算出し得る(図2参照)。ここから理解されるように、移動物体が移動するたびに、該移動物体が通過するノードに、あるいは、該移動物体が向かっているノードや、ノード間のエッジ(距離および速度に応じて、全て、あるいは一部)に、他の移動物体が進入しないようになっている。さらに、物理位置のレイアウトおよび構造に応じて、使用されないルートを封鎖する。さらに、例えば、移動物体の回転半径等に応じて、双方向に通行可能なルートであっても、封鎖することができる。
【0031】
上記のような一時的な封鎖(つまり、例えば、幅をとる半径旋回を行う際に必要な時間において)を表すには、2つのノード間のエッジの重みを、無限値に変更するか、3次元をなす関連する平面において、現実とはかけ離れた、任意の数値に変更すればよい。これにより、当該システムにおいて、非効率あるいは不可能なエッジまたはノードが使用されることを防ぐことができる。当該方法において、当該システムが、封鎖によって新たなルートを計画できないといった状況が引き起こされる場合がある。このような場合には、当該システムは、特別なエッジ、例えば、現在のノードから、現在のノードに「移動する」ためのエッジ(つまり、その場で待機)を追加し得る。例えば、一時的な封鎖の場合は、移動物体を5秒遅延させ、他のルートで行く場合は、7秒の遅延となり、さらに1秒間、その場で待機しても有利となる場合のように、その他の方向に移動させることなく、その場で待機させた方が有利である限り、特別なエッジが追加され得る。
【0032】
影響を受けるノードおよびルートの算出には、関連算出による時間制限があり、そのため、グラフの第3次元における特定の平面の関連ノードおよびエッジに対し、グラフの更新が必要となる。本発明の実施形態のいくつかにおいては、例えば、新規レイヤーとして、実際の変更点のみを保存する等、ストレージ、検索速度、CPU容量を圧迫しない方法で、変更が保存される。さらなる実施形態において、例えば、グラフにそれ以上影響しないであろう(つまり、最新ではない)任意のレイヤーを削除することで、限られたレイヤー数のみを保存してもよい。
【0033】
当該システムは、続いて、任務情報およびグラフにおける前回の変更点(封鎖)に基づいて次の任務のための次のルートの算出を続ける。これにより、当該システムは、外部システムを必要とすることなく、また、制限を受けずに、軌道を算出・計画できる。
【0034】
そして、算出された軌道は、移動物体に送信され、実行される。
【0035】
本発明の実施形態のいくつかにおいては、当該システムにおいて、移動物体の位置を把握する必要がある。これは、移動物体自体からの感知および/または報知、あるいは、図4に示す外部検知および報知システムのどちらかによって、実現され得る。
【0036】
当該方法では、移動物体が各ノードおよびエッジに到着し、そこから離脱した正確な時間が考慮されるため、物理世界によってもたらされたいかなる変更も、当該システムに組み込まれる必要がある。移動物体は、単に起点ノードからターゲットノードへ移動するだけでなく、他の移動物体との衝突回避のため、ノードからノードへの移動を、特定の時間に行わなければならない場合がある。
【0037】
割り当てられたルートに乗れなかったオブジェクトや、予測不能な障害物、その他予想外の理由等により、物理世界の変更が起こり得る。全ての場合において、オブジェクトに新しい軌道が割り当てられ、任務が遂行される。当該システムは、どのオブジェクトが影響を受け得るかを特定し、リアルタイムで新規ルートを算出する。
【0038】
本発明の実施形態のいくつかにおいては、ストレージを圧迫せず、データ検索の速度をあげ、CPU容量を減らさないために、当該システムは、どの移動物体が封鎖を引き起こしているかに関するグラフ情報を保存せず、サブシステムに問題のある移動物体を探索させてもよい。
【0039】
本発明の実施形態のいくつかにおいては、当該システムは、任務遂行中に、その任務を未完遂としてもよく、他の移動物体に引き継がせてもよい。不遵守時に、グラフへの変更により、定義済の効率閾値に基づいて、新たに引き継がれた移動物体を利用する際に、こうした決定が下される。
【0040】
本発明のさらなる実施形態においては、移動物体の移動をシミュレーションするのに、例えば、実働の2台のロボットに、100台のロボットを追加するシミュレーションをするのに、当該システムおよび方法を利用してもよい。実際にオブジェクトを物理位置で稼働させることなく、種々のケースをテストできるため、有効である。一例として、特定の台数のロボットが、X平方メートルの倉庫内で協働できるかどうかを試験する場合等に有効である。
【0041】
以上本発明において選択された実施形態について明らかにし、説明したが、本発明がこれら実施形態に制限されるものではないことは、理解されるものである。また、請求項やそれに準ずる箇所において定義される本発明の原則・本質の範囲から逸脱しない限りにおいて、これらの実施形態に変更を加えることができることも理解されたい。
図1
図2
図3