(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】体液の体外処理のためのアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20250108BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250108BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A61M1/36 161
G01N33/53 D
G01N33/53 V
G01N33/543 545A
(21)【出願番号】P 2022519764
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2020076145
(87)【国際公開番号】W WO2021063708
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-03
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522123038
【氏名又は名称】ヘモチューン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランゲネッガー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】モーラ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,ジャン―クロード
(72)【発明者】
【氏名】ハルティナー,ウルジナ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0264186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0192434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0102948(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109201016(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
G01N 33/53
G01N 33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 入口ポートと出口ポートとの間で相互接続された体外フローライン;
- 前記体外フローラインに、体液に含有される第1のタイプの標的分子に少なくとも向けられた少なくとも第1の結合剤に結合した機能性磁気粒子を含む第1の混合物をインジェクトするための少なくとも第1のインジェクション装
置;
- 前記機能性磁気粒子と前記第1のタイプの標的分子との間の治療有効レベルの複合体化を可能にするために、前記機能性磁気粒子のインジェクション後に前記体液
のサンプル中の前記機能性磁気粒子を混合するための混合ユニット
であって、前記体外フローラインに沿って前記第1のインジェクション装置の下流に配置される前記混合ユニット;
- 前記体液から前記機能性磁気粒子及びそれに結合した前記標的分子を磁気的に分離するための磁場領域を含む分離ユニットであって、好ましくは、前記分離ユニットは磁気フィルター、好ましくは永続的磁気フィルターである、分離ユニット
であって、前記体外フローラインに沿って前記混合ユニットの下流に配置される前記分離ユニット
を含み、
前記第1の混合物とは異なり且つ機能性磁気粒子を含有する第2の混合物を、前記患者から取り出された前記体液のサンプルを含む前記体外フローラインに添加する、少なくとも第2のインジェクション装置を更に含み、
前記第2のインジェクション装置は、前記第1のインジェクション装置の下流に、又はそれと一緒に配置され、
前記第2のインジェクション装置において、前記第2の混合物に含有される前記機能性磁気粒子は、前記第1の結合剤とは異なり、前記体液のサンプルに含有され且つ前記第1の標的分子とは異なる第2のタイプの標的分子に向けられた第2の結合剤に結合されている、又は前記第2のインジェクション装置において、前記第2の混合物に含有される前記機能性磁気粒子は、前記第1の結合剤に結合されているが、前記第1の混合物においてとは異なる濃度で前記第2の混合物に存在し、
前記入口ポートの下流且つ前記第1のインジェクション装置の上流に、前記入口ポートにおいて体外フローラインに入った後に前記体液のサンプルの検査サンプルの取り出しをする診断サンプルポートを更に含み、
前記診断サンプルポートを通じて取り出された前記患者の体液のサンプルに関する、外部又は関連付けられた診断ユニットから獲得されたデータであって、前記患者の免疫状態についての情報を提供する前記データに基づいて、前記第1のインジェクション装置及び前記第2のインジェクション装置を制御するために、前記体外フローラインと電気的に又はワイヤレスで連絡して配置される制御ユニットを更に含み、
前記制御ユニットは、前記第1のインジェクション装置及び前記第2のインジェクション装置を別個にコントロールするために配置され、前記第1のインジェクション装置及び前記第2のインジェクション装置は、以下のもの:結合剤のタイプ、インジェクション速度、インジェクションの時間、インジェクション用量、インジェクション濃度、インジェクション圧力、のうちの少なくとも1つの観点から前記制御ユニットにより制御され、前記第2のインジェクション装置は、別個に、しかし前記第1のインジェクション装置による前記第1の混合物のインジェクションと協調して制御される、
調節不全の免疫反応である敗血症に罹患した患者の
体液のサンプルの体外式磁気分離ベース
の浄化のためのアセンブリ。
【請求項2】
前記機能性磁気粒子が、ナノ吸着剤である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記診断ユニットは、前記患者の体液のサンプルにおける少なくとも1種のマーカー分子の発現又は少なくとも1種のマーカー分子の濃度をアッセイによって又はセンサーによって測定することに適応している、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記制御ユニットはユーザーインターフェースを含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
以下のもの:前記体液
のサンプルのフローを前記フローラインを通じて送り出すためのポンプ装置、インキュベーションユニット、調整ユニット、血栓フィルターユニット、弁、熱交換器、点滴チャンバー、圧力センサー、フローセンサー、分散センサー、温度センサー、のうちの少なくとも1つを更に含
む、請求項
1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記第1のインジェクション
装置と関連付けられた少なくとも1つの貯蔵槽を更に含み、前記貯蔵槽は、少なくとも前記第1のインジェクション
装置によってインジェクトされる対象となる前記磁気粒子を含
む、請求項
1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記分離ユニットが磁気フィルターである、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記分離ユニットが永続的磁気フィルターである、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記アセンブリが調整ユニットを更に含む場合、前記調整ユニットは分散ユニットである、請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記貯蔵槽が使い捨て可能である、請求項6に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体液サンプルから少なくとも1種の有害物質を除去する工程を含む、調節不全の免疫反応、とりわけ敗血症に罹患した患者の体液の体外処理のためのex vivo方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重篤な感染関連多臓器機能不全である敗血症は、21世紀における入院患者の死亡の最多原因である。敗血症は、宿主細胞による制御されない炎症反応を伴う多段階の過程であり、それは多臓器不全及び死亡をもたらし得る。他の主要な伝染性の病気とは異なり、敗血症に対する治療はこれまでのところ非特異的であり、主として、臓器機能を支援すること、並びに、静脈内輸液、抗生物質、及び酸素の投与に限定されている。敗血症を特異的に標的にする認可された薬剤はない。集中治療室における敗血症患者の長期滞在に起因して、莫大な費用が生じる。2017年に、WHOは、敗血症の阻止、診断、及び管理を改善するという決議を採択することによって、敗血症を世界的な健康の優先事項であると宣言した。故に、この疾患に対する有効な治療手法には大きな必要性がある。
【0003】
免疫解決の主な因子は、炎症促進性及び抗炎症性の力の均衡である。炎症促進性及び抗炎症性過程の両方とも敗血症開始後すぐに始まるが、始まりの時点で、通常、初期の過炎症相の優勢があり、その規模は、病原体毒性、細菌負荷、宿主遺伝因子、年齢、及び宿主併存疾患を含めた多くの因子によって判定され、その後に抗炎症性過程が続く。後の相では、敗血症患者において及び重度の非感染性SIRS(熱傷、外傷、大手術、出血、又は心停止後の虚血再灌流等の全身性炎症反応症候群)を有する患者において、抗炎症性過程が炎症促進性の力を圧倒し得る。今日、多くの重篤な疾患(critically ill)の患者は、重篤な疾患の早期に、随伴する炎症反応及び対抗調節的抗炎症反応の兆候を示す、又は早期の炎症促進性から後期の抗炎症性の表現型への移行を経験することが十分に確立されている。そのような顕著な抗炎症の「正味の効果」、すなわち結果として生じる表現型は、「敗血症(又は損傷)関連免疫抑制(SAI/IAI)」と称される。敗血症を有する患者の過半数が免疫抑制を発生させると推定される。免疫系の初期の過炎症状態ではなくむしろ顕著に抑制された状態が、敗血症関連死の大多数を占めると認識されている。敗血症により誘導される免疫麻痺(immunoparalysis)は、敗血病巣を効果的に排除することができず、敗血症患者を二次感染、並びに、潜伏感染の再活性化に対してより脆弱にし、それ故、死亡率の増加をもたらす。
【0004】
免疫抑制は、HLAクラスII表面発現の低減を有する単球不活性化、炎症促進性メディエーターの放出の低減、及び食作用の低下を含む、損なわれた先天性及び適応免疫反応によって特徴付けられ、感染排除が損なわれる。これは、免疫寛容の増強、免疫細胞アポトーシスの増加、及び遺伝子発現プロファイルの変更と関連付けられ得る。興味深いことに、最近のデータは、それぞれの変化が循環免疫細胞だけに限られていないこと、並びに、同等の抗炎症表現型が、例えば脾臓又は肺組織及び他の固形臓器に見出され得ることを示している。故に、免疫刺激治療は、敗血症に対する考え得る補助的治療として浮上している。
【0005】
敗血症性ショックとは、感染に反応しての臓器損傷又は障害である敗血症が、危険なほどに低い血圧及び細胞代謝の異常につながった場合に生じる、死に至る可能性がある医学的病態である。炎症促進性及び抗炎症性反応の両方とも、代謝亢進効果をもたらす幅広い炎症反応を伴う敗血症性ショックにおいて役割を果たす。
【0006】
細菌、真菌、及びウイルスを含めた、多くのタイプの微生物が敗血症を引き起こし得る。しかしながら、細菌が最も多い原因である。グラム陰性及びグラム陽性細菌の両方とも、敗血症を引き起こす主要な役割を果たす。これらの細菌は、それらが免疫防御を逃れ且つ遠隔臓器に広まるのを可能にする広範な病原性因子、及び細胞表面の特異的受容体を介して宿主細胞と相互作用し且つ調節不全の免疫反応を誘発する毒素を産生する。敗血症性ショックの全症例の半数以上は、グラム陰性細菌によって引き起こされる。内毒素は、グラム陰性細菌によって産生される細菌膜リポ多糖(LPS)であり、免疫反応を引き起こす。これらの毒素の効果は、単球、マクロファージ、及び他の白血球によって大量に放出される、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、並びに、IL-1(インターロイキン1)、IL-6、及びIL-8を含めた他のサイトカインによって主として媒介される。これらのサイトカインが、今度は、免疫系の他の細胞に対して並びに他のタイプの細胞に対する顕著な効果を有する。単球及びマクロファージの刺激と平行して、C3及びC5タンパク質並びにそれらの切断産物C3a及びC5aが中心的役割を果たす補体系が活性化される。
【0007】
利用可能な治療がないことに起因して、敗血症患者の標準治療は、感染制御及び支持療法に限定される。
【0008】
患者の血液からの不要な炎症促進性成分の除去に向けられた方法が開発されている。例えば血液製剤の製造のための、血液から内毒素不純物を除去するための方法には、例えば特許文献1又は特許文献2に開示される、滅菌、γ線を用いた照射、酸又は塩基を用いた処理が含まれる。更なる手順には、患者の血漿を、有害な成分を含んでいない血漿代替物で部分的に置き換える高額な血漿交換療法が含まれる。しかしながら、潜在的に有益な成分も患者から除去され、感染症を移す高いリスクがある。
【0009】
他の手順は、血液を濾過する膜を使用するが、これらの方法は選択性を欠き、タンパク質も同時に除去し、それはその後再度置き換えられる必要がある。血液灌流又は血液浄化は、患者の血液から毒性の又は不要な物質を除去するために使用される体外式の医学的過程である。典型的に、この目的のために、血液は吸着性(adsorband)物質に通される。活性炭、イオン交換樹脂等の非特異的結合物質への体外吸着によって敗血症を治療する様々な方法が記載されている。
【0010】
体液の公知の処理には、例えば特許文献3に記載される、広範な炎症性分子の非特異的吸着が含まれる。特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7は、内毒素及び/又は補体因子、及び/又は、TNF及び/又はインターロイキンに対する抗体を含むポリマー担体との免疫吸着を伴う療法を開示し、一方で特許文献8は、固体基板に結合し且つ様々な標的に対するアフィニティーを有する炭水化物を使用する。
【0011】
その後、新規のバイオマーカーを使用した、より大きな患者コホートにおける免疫状態特徴付けにより、より深い理解が可能となった。個々の免疫反応を見た場合、高い個体間分散及び極めて動的な変化が経時的に観察され得る。
【0012】
これまでのところ、薬理学的作用物質が全身性炎症反応症候群(SIRS)の転帰を改善することは実証されていない。成人における重度敗血症の治療のために、唯一の薬剤のみが承認されている:組み換えヒト活性化プロテインC(rhAPC)、つまりドロトレコギンアルファ(活性型)である。しかしながら、この薬剤は、それが、敗血症の原因として、SIRSの炎症促進状態を標的としたものの惨憺たる結果に終わったため、撤退された。
【0013】
過去10年で、敗血症研究分野は、早期の過炎症を標的にすることから、持続的な敗血症誘導性免疫抑制を反転させることに焦点を推移させている。有効な修正により、過活動反応を鈍化させるべきである、又は抑制された反応をブーストすべきであると認識されている。
【0014】
宿主及び病原体の特徴及びそれらの間での相互作用の種々の組み合わせは、同じ臨床像につながり得る。それ故、普遍的に適用可能な診断基準及び治療アルゴリズムを規定するのは難しい。言い換えれば、敗血症は、病因及び重症度が異なる不均質な患者集団を含む、感染に対する調節不全の免疫反応であるものの、最先端の治療法は、個々の免疫系の実際の排除能を考慮に入れず、それ故、個々の患者の特異的免疫状態に対処しない。患者の免疫状態に応じて、同じ薬剤又は治療が有益であり得る、無効であり得る、又は有害でさえあり得る。敗血症の重症度及び転帰を決定するのは宿主の免疫反応である。重篤な疾患の患者は、損傷又は病原性傷害に対して異なって反応する。「A」という患者は、免疫学的恒常性の復活及びその後の生存を有する顕著な炎症相を経験し得る一方で、「B」という患者は、ウイルス再活性化率、二次(再)感染率、及び死亡率が増加する損傷関連免疫抑制(IAI)の持続相に入り得る。このことは、個体間の反応パターンの重要性及び介入的治療手法の適用前の個々の患者特徴付けの必要性を強調する(非特許文献1)。
【0015】
敗血症によって特徴付けられる調節不全の免疫反応は、複数の経路及びメディエーターを伴う。これまでのところ、特定の経路又は過程を遮断する単剤による治療的介入は失敗している。
【0016】
更に、敗血症は急性病態である。敗血症の経過中、患者は、種々の生物学的機構が疾患進行を推進する種々の相を通り抜ける。1つの相において支配的であり得るメディエーターは、おそらく別の相ではそれほど重要でない。例えば、IL-1又はTNFαは、過炎症相では優勢に存在し、短い循環時間を有する。いったん患者が過炎症相を通り抜けると、彼らの血漿レベルは減少し、これらの分子を標的にすることは、いかなる患者改善にもつながらない可能性が高いであろう。疾患関連化合物が、それらが敗血症進行を推進している段階で標的にされない場合、これらの化合物を標的にする介入は効果を有しない可能性が高いであろう。臨床医は、潜在的に壊滅的な新たな感染の発症をできる限り早く検出するために、病因、臨床像、及びバイオマーカーに頼る必要がある。集中治療室受け入れ時の患者の不均質な疾患段階、敗血症の急激な疾患進行、及び徹底的な患者特徴付けの欠如は、介入タイミングを非常に難しくし、結論の出ない敗血症治験につながった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第3644175号明細書
【文献】米国特許第3659027号明細書
【文献】欧州特許第3384916号明細書
【文献】国際公開第00/58005号
【文献】国際公開第00/08463号
【文献】欧州特許第1163004号明細書
【文献】米国特許第5,853,722号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0136586号明細書
【非特許文献】
【0018】
【文献】Pfortmuellerら、「Assessment of Immune Organ Dysfunction in Critical Illness:Utility of Innate Immune Response Markers」、Intensive Care Medicine Experimental 5、no.1(2017年10月23日):49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
それ故、治療された患者における療法の転帰を改善するために、個々の免疫機能性を考慮する、治療のための個々の手法、すなわちより個別化した免疫療法を提供することが本発明の目的である。言い換えれば、本発明は、特異的な患者の現時点での免疫状態に従って炎症性メディエーターを別個に且つ選択的に標的にすることに焦点を合わせる。免疫抑制された患者は、集中治療室における長期の滞在期間を示し、死亡又は二次感染の高いリスクがある(敗血症誘導性免疫抑制を有する患者の死亡は、全敗血症死亡率の65%を占める)ことから、本方法は、一方では過炎症を有する敗血症患者、とりわけ敗血症誘導性免疫抑制を有する者に主に焦点を合わせる。本発明の根底にある目標は、複数の主な経路に作用することによって免疫機能を回復させ、それによって、持続的な敗血症誘導性免疫抑制に罹患した患者の臨床転帰を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的のために、体液、好ましくは血液のサンプルが、患者の循環から提供され又は採取され、それを循環に戻す前に処理される。記載される免疫吸着を実施する治療用アセンブリは体外フローラインを含み、それは、身体の外側に血液を運ぶ機器全体として本明細書において規定される。この目的のために、体外フローラインは、患者への2つの接続ポートを含み、第1の接続ポートは、フローラインへの、患者からの未処理の体液の入口又は患者の未処理の体液のサンプルの入口を含む。第2の接続ポートは、フローラインから患者への処理された体液の出口を含む(静脈-静脈又は静脈-動脈)。2つの接続ポートの間で、体外フローラインは、場合によっては血液を体外フローラインに送り出す流体ポンプによって推進されて、身体の外側に血液を運ぶ。
【0021】
本発明は、体外フローラインにおける、調節不全の免疫反応に、とりわけ敗血症に罹患した患者の体液の体外処理のための方法に関する。ほとんどの場合、調節不全の免疫反応は、病原性微生物、炎症細胞、又は炎症性タンパク質による傷害によって引き起こされる又は悪化する(aggrevated)。そのような調節不全の免疫反応は、自己免疫疾患の結果でもあり得る。方法は、以下の工程を含む、敗血症患者の体液のサンプルから少なくとも1種の有害物質を除去する工程を含む。
【0022】
第1のインジェクション装置によって、体液、好ましくは血液に含有される第1のタイプの標的分子に少なくとも向けられた、すなわちそれに対する結合アフィニティーを有する少なくとも第1の結合剤に結合した機能性磁気粒子を含有する第1の混合物を、調節不全の免疫反応に、とりわけ敗血症に罹患した患者から取り出された体液のサンプルを含む体外フローラインに添加し、前記体液は少なくとも前記第1のタイプの標的分子を含有する、第1のインジェクション工程。少なくとも前記第1の結合剤を含有する前記第1の混合物を治療有効用量で添加する、すなわち前記患者の体液のサンプルにおける少なくとも前記第1のタイプの標的分子の濃度を低下させるために必要な濃度及び用量で前記結合剤を含む。
【0023】
- その後、前記第1の混合物の前記機能性磁気粒子を今は含む前記体液を混合して、前記機能性磁気粒子への少なくとも前記第1のタイプの標的分子の十分な結合を確保する。
- その後、体液のサンプルにおける少なくとも前記第1のタイプの標的分子の濃度が低下するように、少なくとも前記第1のタイプの標的分子に結合した前記機能性磁気粒子を、前記患者の体液のサンプルから分離する。安全性目的のために、また、標的分子に結合していない過剰な機能性磁気粒子もフィルター除去する。
- 前記第1のインジェクション工程は、獲得された、すなわち前記患者の体液のサンプルから収集されたデータに基づいて制御され、前記データは、前記患者の免疫状態についての情報を提供する。前記データに基づいて、前記第1のインジェクション工程は、以下のもの:インジェクション速度、インジェクションの時間、インジェクション用量、濃度、インジェクション圧力、のうちの少なくとも1つの観点から制御される。データは、体液サンプルの一部分をアッセイに出すことによって、又は下で更に記載されるように、少なくとも1つのセンサーによって、フローライン内の体液におけるパラメーターを直接測定することによって獲得される。
【0024】
好ましくは、本発明に従った方法は、好ましくは第2のインジェクション装置によって、機能性磁気粒子を含有する、前記第1の混合物とは異なる第2の混合物を、敗血症に罹患した前記患者から取り出された体液を含む前記体外フローラインに添加する、少なくとも第2のインジェクション工程を含む。前記第2のインジェクション工程は、前記第1のインジェクション工程の上流で、その下流で、又はそれと同時に行われる。前記第1のインジェクション工程及び前記第2のインジェクション工程は、前記患者の免疫状態についての情報を提供するデータに基づいて、互いとは別個にそれぞれ個々に制御される。インジェクション速度、時間、量、濃度等、第2の結合剤を含有する第2の混合物のインジェクションパラメーターは、別個に、しかし第1の混合物のインジェクションと協調して制御され得る。
【0025】
前記第2のインジェクション工程において、前記第2の混合物に含有される前記機能性磁気粒子は、好ましくは、少なくとも前記第1の結合剤とは異なり、前記体液に含有され且つ前記第1のタイプの標的分子とは異なる第2のタイプの標的分子に少なくとも向けられた少なくとも第2の結合剤に結合している。
【0026】
代替策として、前記第2のインジェクション工程において、第2の結合剤の代わりに又はそれに加えて、前記第2の混合物は、少なくとも前記第1の結合剤を、しかしながら前記第1の混合物においてとは異なる濃度で含有する。
【0027】
第1の及び/又は第2の混合物は、好ましくは、バッファー又は他の試薬中に含有されたスラリー、懸濁液、又は乾燥粉末である。好ましくは、第1の及び/又は第2の混合物は、相当する標的分子の濃度を低下させるために必要な選択された結合剤の有効治療濃度を有する。相当する標的分子の濃度は、例えば標準値に従った、又は診断ユニットによって受信されたデータに基づいて制御ユニットにおける処理機によって算出された所定の値まで好ましくは低下する。
【0028】
本発明の方法は、第3の又は更なるインジェクション混合物を含む、少なくとも第3の又は更なるインジェクション工程を更に含み得、第3のインジェクション工程は、第1のインジェクション工程及び/又は第2のインジェクション工程とは別個に個々に制御される。
【0029】
好ましくは、方法は、前記第1のインジェクション工程、及び/又は、前記第2の又は任意の更なるインジェクション工程の上流に、前記患者の免疫状態についての情報を提供するデータが獲得される診断工程を更に含む。その中で、好ましくは、前記患者の体液における少なくとも1種の標的分子又はマーカー分子の発現又は濃度は、それぞれアッセイにおいて又はセンサーによって測定される。好ましいアッセイには、内毒素活性アッセイ(EAA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれる。
【0030】
診断工程は、まず第一に、体液における少なくとも1種のタイプの免疫状態バイオマーカー分子の過剰な又は不十分な濃度を規定し又は検出し且つ同定する働きをする。この文脈における「過剰な」又は「不十分な」とは、標準物質、コンピュータープログラム、又は医師によって入力されたデータによって提供される所定の値と比較した場合に、病態生理学的な又は異常に高い若しくは低い濃度又は発現のレベルを意味する。
【0031】
提案される体外処理を受ける前に、患者は、好ましくは臨床的査定をあらかじめ受ける。患者の年齢及び考え得る併存疾患と組み合わせた臨床症状の結果に基づいて、「高リスク」患者下位群が規定され得る。この下位群に関しては、好ましくは、臨床的査定に加えて、体液を更なる免疫学的特徴付けに出す。とりわけ、臨床症状の結果に基づいて免疫抑制が疑われる場合、医師は、先天性及び適応免疫機能の両方を反映する免疫状態バイオマーカーを使用することによって、よりコストのかかる免疫表現型検査を付加的に行うことを決定し得る。そのような免疫状態バイオマーカーに関する例は、単球性ヒト白血球抗原-DR(mHLA-DR)である。循環する単球上のmHLA-DRの低減は、重篤な疾患の患者における免疫抑制の発生に対する信頼性の高いマーカーである。実際、このマーカーの発現の減少は、重篤な疾患の患者における院内感染に対するより高い死亡率又はリスクと関連付けられることが定期的に報告されている。
【0032】
免疫麻痺/免疫抑制機構は幾重にもなっている。フローサイトメトリー若しくは免疫組織化学によるmHLA-DR発現の低下の検出、又はex vivo刺激直後のTNFα産生の低下の検出、及びELISA若しくは同等の方法によるサイトカイン判定は、単球不活性化の指標又はマーカーである。
【0033】
負の調節分子PD-(L)1若しくはCTLA-4及びBTLAのうちの一方、又はLAG-3及びTIM-3のうちの一方の発現の増加は、フローサイトメトリー又は免疫組織化学によって検出され得る。フローサイトメトリー又は免疫組織化学によって検出されるIL-7受容体の発現の減少は、受容体の下方調節の指標である。
【0034】
sFAS又はFAS-Lの発現の増加は、ELISAによって検出され得、アポトーシスの指標である。これは、リンパ球(その特異的サブセット)の数の発現の低下にも当てはまり、それは、白血球分化を査定することによって及びフローサイトメトリーによって検出され得る。総リンパ球数も、免疫抑制を検出するより単純なマーカーとして働き得る。CD4+及びCD25+(Treg)細胞の発現又は骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の発現が増加することがフローサイトメトリーによって示される場合、免疫細胞の抑制が疑われ得る。IL-10、IL-13、IL-4、IL-1ra、TGF-β等の抗炎症性サイトカインの濃度の増加、又はIL-10/TNF-αの比率の増加は、ELISA又は同等の方法によってアッセイされ得る。
【0035】
好ましくは、一般的マーカーのアッセイの他に、免疫状態のより詳細な特徴付けを達成するためにゲノミクス又はメタボロミクスも使用される。
【0036】
例えば、敗血症と関連付けられる免疫状態バイオマーカー分子の通常を上回る又は下回る濃度又は発現によって示される、病態生理学的変化が血中において検出されるという条件で、過剰な濃度が、上で言及されるバイオマーカーの病態生理学的発現パターンをもたらす特異的標的分子を取り出すことによって、治療的処置を個体及び時間依存的様式で適応させるために、免疫学的査定から受信されたデータが使用される。
【0037】
体外処理の診断工程における査定又は診断は、患者から体液、好ましくは血液のサンプルを採取し且つアッセイをランすることによって、又は、サンプルのアリコートにおける若しくは直接フローラインにおける特異的標的分子の濃度を少なくとも1つのセンサーによって測定することによって行われ得る。
【0038】
診断工程を行うことに関して、前記アセンブリは、故に、更に好ましい実施形態において、好ましくは前記第1の及び/又は任意の更なるインジェクション装置の上流に、診断ユニットを含む。体外フローラインは、故に、未処理の体液が体外フローラインに入った後に診断検査を受けるように診断ユニットを含み得又はそれに接続され得又はそれと関連付けられ得、それに基づいて、例えばインジェクトされる対象となる物質のタイプ、濃度、及び量が選定される。その中で、患者の免疫状態についての情報を提供する付加的なデータが獲得される。この目的のために、体外フローラインは診断サンプルポートを含有し得、それを介して、体液の検査サンプル又はアリコートが取り出されて、検査/分析のための外部又は関連付けられた診断装置に移り得る。そのようなサンプルポートの使用は、治療の継続期間にわたる患者の免疫状態のモニタリングを可能にする。
【0039】
本出願の意味における「未処理の」とは、体外フローラインに又は処理の現時点での通路/ラウンドに目下含有される体液の特異的サンプルという観点から「未処理の」として理解されるべきである。それは、同じ又は他の体外フローラインにおける以前の通路/ラウンドの処理において以前に処理された体液を含み得る。多分、体液のサンプルは、第1のインジェクション混合物をインジェクトし、その後に第1の分離工程が続くことによって第1ラウンドの処理のためにフローラインを通じて導かれ、次いでより後の段階で、少なくとも第2のインジェクション混合物がインジェクトされ、その後に少なくとも第2の分離工程が続く、少なくとも第2ラウンドの処理のために再度フローラインに入る。
【0040】
体外フローラインが患者の身体に接続された場合、体外フローラインにおいて患者の身体から体液を継続的に取り出し、それを診断し、それを処理し、場合によってはそれを再度診断し、処理された体液を患者の身体に継続的に戻すことが可能である。そのような体外回路は、血液等の体液の継続的処理を可能にする。診断工程を繰り返し、必要に応じて処理の間の様々な回数の免疫状態表現型検査も含め、患者の免疫状態の動的変化に従って処理を適応させることによって、経時的な患者の必要性に最適に反応することが可能である。例えば、患者は、身体におけるある特定の免疫アクチベーター又はサプレッサーの放出等、治療の経過中に患者の身体において非所望の反応を誘発し得る感染の治療として抗生物質等の薬剤を投与されるべきであり、これは考慮に入れられ得、体外フローラインにおける処理を調整して、体液から過剰量のこれら非所望の物質を取り出す等し得る。
【0041】
診断ユニットにおいて、病理学的免疫状態と関連したバイオマーカー分子の過剰な又は不十分な濃度の判定後、体液における過剰な濃度の少なくとも第1の及び/又は第2の若しくは任意の更なるタイプの標的分子が同定され、適切な又は必要なタイプ及び濃度の相当する少なくとも第1の及び/又は第2の若しくは更なる結合剤が選択される。選択された結合剤は、少なくとも第1の及び/又は第2の若しくは更なるインジェクションユニットによってインジェクトされる対象となる磁気粒子に結合される対象となる、少なくとも第1の及び/又は第2の若しくは更なる同定された標的分子に結合し得る。それによって、それぞれの標的分子の濃度は、体液サンプルからの除去によって所望の値まで下がり得る。
【0042】
1つの好ましい実施形態に従った診断工程は、少なくとも第1のインジェクション工程のその上流で行われ、体液における第1のタイプの標的分子の濃度は、好ましくは第1のセンサーによって測定される。好ましくは、少なくとも第2のインジェクション工程の上流で、体液における少なくとも第2のタイプの標的分子の濃度は、同じ第1のセンサーによって又は異なる第2のセンサーによって別個に測定される。代替的に、体液のサンプルは、体外フローラインに沿って種々の時点で体外フローラインから取り出され得、上で言及される診断ユニットにおいて、例えばアッセイによって分析され得る。診断工程から、すなわち診断ユニット、例えば相当するセンサー又はアッセイから生じるデータ、例えば濃度データは、第1の及び/又は第2の若しくは更なるインジェクション工程においてインジェクトされる磁気粒子に結合される対象となる、同定された少なくとも第1の及び/又は第2の若しくは更なるタイプの標的分子に結合し得る、適当なタイプの少なくとも第1の及び/又は第2の若しくは更なる結合剤を選択するための根拠として働く。次いで、体液に添加される対象となる機能性磁気粒子に結合したそれぞれの結合剤の有効治療濃度が、受信されたデータに基づいて算出される。
【0043】
診断工程及びその分析、並びに、それ故、インジェクションに必要な又は適した結合剤のタイプ及び濃度の選択も、診断装置によって又は医師によって行われる。前記患者の免疫状態についての情報を提供する前記患者の体液から前記診断工程において獲得されたデータは、次いで好ましくは、前記体外フローラインと電気的に又はワイヤレスで連絡して配置されている制御ユニットに送信される。前記制御ユニットは、好ましくは、少なくとも前記第1のインジェクション工程を制御する。好ましくは、前記制御ユニットはユーザーインターフェースを含む。前記制御ユニットは、ユーザー又は医師に情報を提供し、以下のもの:標的分子のタイプ、結合剤のタイプ、ナノ吸着剤のタイプ、インジェクトされる対象となる混合物の濃度、インジェクションの用量、圧力、時間、処理の長さ、サイクルの数(継続的な場合)等、のうちの少なくとも1つを判定する又は選択することを可能にする。
【0044】
好ましくは、血中における関心対象の1種以上の標的分子の濃度は、内毒素及び他の除去される標的の濃度を判定するために、体外フローラインの始まりの時点及び終わりの時点でモニターされて、「単一通路除去」を示す。好ましくは、内毒素、並びに主な抗炎症性サイトカインの1つであるIL-10、並びに補体系の最も強力な炎症性ペプチドの1つである例えばC5a、並びに炎症促進性及び抗炎症性機能の両方を有し且つ炎症性疾患における臨床的重症度及び敗血症を有する患者における致死的転帰と密接に相関する重要なサイトカインである例えばIL-6が、好ましくは各サイクルの処理の直前及び後に測定される。この目的のために、第2の又は更なる診断ユニット又は診断サンプルポートは、それぞれ、分離ユニット又は分離工程の下流に配置され得る。
【0045】
診断患者データが、例えばコンピューター又は別個の保管ユニットに、後続の分析のために保管されればとりわけ有利である。次いで、分析の結果は、治療アルゴリズムの開発及び改善に、並びに患者集団を規定するために、並びに最終的に場合によっては特異的患者集団に対する最適な薬学的製品を開発するためにも役立ち得る。
【0046】
前記第1のインジェクション工程及び/又は任意の更なるインジェクション工程においてインジェクトされる前記機能性磁気粒子は、好ましくはナノサイズの磁気吸着剤、いわゆるナノ吸着剤である。前記磁気粒子のそれぞれは、好ましくは、磁気コア及び少なくとも1つの機能的層を含み、好ましくは前記機能的層は、非特異的吸着を阻止する防汚物質を含む少なくとも第1の副層と、少なくとも前記第1のタイプ及び/又は前記第2のタイプのそれぞれの標的分子に結合するためのアフィニティー結合構造を含む第2の副層とを含む。
【0047】
好ましい実施形態によれば、前記第1のインジェクション工程において及び/又は前記第2のインジェクション工程において、前記機能性磁気粒子に結合した前記第1の結合剤及び/又は前記第2の結合剤若しくは任意の更なる結合剤は、以下の群:抗体、ペプチド、レクチン(lectine)、化学的キレート剤、ポリマーから選択され、好ましくは、少なくとも前記第1の結合剤及び/又は少なくとも前記第2の結合剤は、前記第1のタイプの標的分子及び/又は前記第2のタイプの標的分子に少なくとも向けられた又はそれに対する結合アフィニティーを有する抗体又はアプタマーである。抗体の場合、前記第1の混合物における少なくとも前記第1の結合剤及び/又は前記第2の混合物における少なくとも前記第2の結合剤は、モノクローナル又はポリクローナル抗体のいずれかであり得る。アプタマーの場合、この短い一本鎖核酸配列は、DNA又はRNAオリゴヌクレオチドのいずれかであり得る。
【0048】
前記機能性磁気粒子に結合している少なくとも前記第1の結合剤は、好ましくは、病原体関連分子パターンの免疫アクチベーター、炎症促進性メディエーター、抗炎症性メディエーター、補体因子、又はその切断産物の群から選択される第1のタイプの標的分子又はマーカーに少なくとも向けられ、好ましくは、前記第1の結合剤は、以下の群から選択される第1のタイプの標的分子に少なくとも向けられ、且つ/又は前記第2の結合剤は、以下の群から選択される第2のタイプの標的分子に少なくとも向けられる:サイトカイン、一酸化窒素、トロンボキサン、ロイコトリエン、リン脂質(血小板活性化因子のような)、プロスタグランジン、キニン、例えばC5、C3、又はそれらの切断産物、例えばC5a、C3a等の補体因子、凝固因子、超抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、フリーラジカル、プロテアーゼ、アラキドン酸代謝産物、プロスタサイクリン、ベータエンドルフィン、心筋抑制因子、アナンダミド、2-アラキドノイルグリセロール、テトラヒドロビオプテリン、細胞断片、並びにヒスタミン、ブラジキニン、及びセロトニンを含めた化学物質。より好ましくは、少なくとも前記第1の結合剤は、以下の群から選択される第1のタイプの標的分子に少なくとも向けられ、且つ/又は少なくとも前記第2の結合剤は、以下の群から選択される第2のタイプの標的分子に少なくとも向けられる:LPS、リポタイコ酸(lipotechoic acid)、TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-15、IL-18、IL-33、HMGB1(高移動度群タンパク質B1)、GM-CSF、IFNγ、C5a、C3a、セリンプロテアーゼ、例えばC5転換酵素又はC3転換酵素、セリンペプチダーゼ、例えばC5aペプチダーゼ又はC3aペプチダーゼ、ペプチドホルモン、例えばアドレノメデュリン(ADM)等。
【0049】
第2の又は更なるインジェクション混合物を用いた第2の又は更なるインジェクション工程の場合、本発明の方法における更なるタイプの任意の第2の又は更なる結合剤に結合される対象となる、任意の第2の及び/又は更なるタイプの標的分子も、好ましくは、上で言及される群から選択される。
【0050】
「標的分子」という用語は、本出願の目的上、より広い意味で、分子、並びに高分子量のより大きなタンパク質、及び分子のアセンブリ又は凝集体、例えばLPSのミセル等を含めた標的化合物として理解され得る。また、病原体、よってすなわち細菌細胞、ウイルス細胞、真菌細胞、又は好中球、単球、及び調節性T細胞(TReg)等の免疫細胞は、体液から、例えば血液から取り出される対象となる標的化合物又は標的分子として働き得る。
【0051】
更に好ましい実施形態によれば、言及されるインジェクション工程のいずれかは、患者の治療のためのある用量の医薬のインジェクションも含み得る。ある用量の医薬は、あらかじめ混合されたインジェクション混合物に含有され得る、又は機能性磁気粒子のインジェクションの前、それと一緒に、若しくはその後に別個の容器からインジェクトされ得る。投薬パラメーター、すなわちインジェクションの時間及び速度、医薬の選定及び濃度は、好ましくは制御器によって、とりわけ診断データの分析に基づくアルゴリズムによって制御される。
【0052】
本発明は、体外フローラインを含む、調節不全の免疫反応に、例えば敗血症に罹患した患者の体外式磁気分離ベースの体液浄化のためのアセンブリに更に関する。その中で、前記アセンブリは、前記患者の身体への取り付けのための入口ポートと出口ポートとの間で相互接続された体外フローラインを含む。入口ポートは、患者の循環から体外フローラインへの未処理の血液の進入に、又は体外フローラインへの未処理の血液のサンプルのインジェクションに役立つ。同じように、フローラインの出口ポートは、体外回路の場合には、体外フローラインから出る処理された血液を患者の循環に戻すのに役立つ、又は非継続的な処理法の場合には、例えば後の使用のための保管のために、更なる処理、分析のために、若しくは治療されていない患者へのインジェクションのために、体外フローラインからそれぞれのサイクル後に処理された血液のサンプルを取り出すのに役立つ。
【0053】
前記アセンブリは、前記体外フローラインに、体液に含有される第1のタイプの標的分子に少なくとも向けられた少なくとも第1の結合剤に結合した機能性磁気粒子を含む第1の混合物をインジェクトするための少なくとも第1のインジェクション装置を更に含む。
【0054】
前記アセンブリは、好ましくは、前記機能性磁気粒子と前記第1のタイプの標的分子との間の治療有効レベルの複合体化又は結合を可能にするために、前記機能性磁気粒子のインジェクション後に前記体液中の前記機能性磁気粒子を混合するための混合ユニットを更に含む。
【0055】
混合工程は、例えば、第1の及び/又は第2のインジェクションユニットの下流にある別個の混合ユニットにおいて起こり得る。1つの実施形態において、磁気粒子及び体液は、1本の共通のチューブを通じて混合ユニットに入り、その場合、少なくとも1つのインジェクション装置は、混合ユニットの上流に設置される。1つの実施形態において、体液は、混合チャンバー及び少なくとも1つのインジェクション装置を含むインジェクションユニットに入り、混合チャンバーは、体液用の1つの入口、及び少なくとも1つのインジェクション装置用の又はそのようなインジェクション装置の内容物用の別個の入口を含む。この場合における体液は、前記混合チャンバーにおいて機能性磁気粒子と接触する。
【0056】
すべてのインジェクション工程の後に、個々の混合工程が行われれば有利であり得、その場合、少なくとも1つの混合ユニットは、少なくとも1つのインジェクションユニットの下流にある又はその中にある体外フローラインに沿って配置される。故に、第1の混合ユニットは、第1のインジェクションユニットの下流に又はその中に設置され得、第2の混合ユニットは、第2のインジェクションユニットの下流に又はその中に設置され得る。代替的に、アセンブリは、それぞれがいくつかの個々の別個の入口:体液用の第1の入口、及び混合チャンバーに接続されたインジェクション装置からの機能性磁気粒子用の少なくとも1つの付加的な入口を含む、1以上の混合ユニットを含み得る。それ故、1つの実施形態において、第1の及び第2のインジェクション装置はそれぞれ、機能性磁気粒子を混合ユニットにインジェクトし、それは、処理される対象となる体液も別個の入口を通じて受ける。異なる実施形態において、第1のインジェクション装置は、磁気粒子を、未処理の体液を受ける第1の混合チャンバーにインジェクトし、第2のインジェクション装置は、磁気粒子を第1の混合チャンバーの下流にある第2の混合チャンバーにインジェクトし、それは体液を別個に受ける。これらの場合では、体液及び磁気粒子が、異なる入口又はチューブを通じて別個に混合チャンバーに入る場合、磁気粒子は混合ユニットにおいて体液と初めて接触し、その上流では接触しない。代替的に、混合工程は、例えばフローラインに渦巻き状のフローを提供することによって、フローラインに沿っても行われ得る。次いで、フローラインにおける最も遠い下流にある混合ユニットは、混合ユニットの下流に設置される磁気分離ユニットと流体連絡する。
【0057】
好ましくは、機能性磁気粒子は、磁気分離ユニットに入る前に体液サンプルと混合される。
【0058】
混合ユニットは、体外フローライン自体の一部分でもあり得、それは、体液が磁気分離ユニットへのフローラインを進み続ける前に、体液中の標的分子への機能性磁気粒子の十分な曝露時間を確保するために、フローラインの内容物に垂直フローを与えるような特異的様式で形成され得る、例えば曲がりくねり得る又は屈折し得るが、必ずしもそうであるわけではない。
【0059】
本発明に従ったアセンブリは、前記体液から前記機能性磁気粒子及びそれに結合した前記標的分子を磁気的に分離するための磁場領域を含む、分離工程を行うための分離ユニットを更に含む。好ましくは、前記磁気分離ユニットは、少なくとも1つの磁気フィルター、好ましくは永続的磁気フィルターを含む。代替策として、磁気フィルターは、体外フローラインと関連付けられた制御ユニットによって制御され得る。好ましくは、それは、外部磁石、磁気的に引き付ける材料から形成されたフィルター、及び容器を含有する。磁石は、好ましくは、処理されたサンプルに磁気粒子が残らないことを確保するために、故に、いかなる磁気粒子も患者の身体に入るのを阻止するために永続的磁石であるが、しかしながら、代替的に電磁石も使用され得る。容器は、好ましくは、入口及び出口を含む。体液と磁気粒子との混合物は、入口を通じて磁気分離ユニットに入り、処理されたサンプルは、出口を通じて濾過液の形態で出て、保管又は患者の身体への処理されたサンプルの戻しのために収集される。磁気粒子が患者の循環系に入るのを阻止するために、別の好ましい実施形態によれば、アセンブリは、磁気分離ユニットの下流に、体液における残存磁気粒子の存在を判定するためのセンサーを含む。磁気分離後に磁気粒子がフローラインに残る場合、制御ユニットは、体液のフローを、それが来た磁気分離ユニットに再度通過させるであろう、又は付加的な分離工程のための更なる磁気分離ユニットを通過させるであろう。体液が磁気粒子を含んでいないと判定された場合、体液のフローは体外フローラインの出口に向けられ、それは、保管若しくは輸送のために収集される、又は患者にすぐに戻される。
【0060】
前記アセンブリは、好ましくは、前記体外フローラインと電気的に又はワイヤレスで連絡して配置されている少なくとも1つの制御ユニットを更に含む。有利には、制御ユニットは、第1の及び/又は任意の更なるインジェクション装置及び診断ユニットと、及び/又は、分離ユニットと連絡する。制御ユニットは、好ましくは、処理アセンブリをモニターするように配置される。それは、好ましくは、前記患者の免疫状態についての情報を提供するデータを受信し、前記第1の及び/又は任意の更なるインジェクション工程を制御する。制御ユニットは、好ましくは、様々なパラメーターを制御するためのハードウェア及びソフトウェア構成要素を有するコンピューターを含む。互いにも影響し得るこれらのパラメーターには、以下のもの:流速、インジェクション速度、インジェクション時間、磁気粒子の濃度、結合剤の濃度、標的分子の濃度、体液温度、圧力、運転時間、磁気分離ユニットの運転、サイクル回数(処理される対象となるサンプルの数、又は体外フロー回路を通じた患者の身体からの血液の継続的フロー及び患者の身体への戻しの場合には、サイクルの数)、のうちの少なくとも1つが含まれる。前記アセンブリは、好ましくは、様々なパラメーターをモニターし且つ操縦するためのユーザーインターフェースを含む。前記ユーザーインターフェースは、例えば療法の状態を呈示し得、インジェクション装置と相互作用し得る。故に、インジェクトされる混合物の量及びインジェクトされる機能性磁気粒子の濃度を変えること、並びにインジェクションのための結合剤の必要なタイプを選択することが可能である。好ましくは、アセンブリの構成要素は、好ましくは制御ユニットに設置された処理機と電気的に又はワイヤレスで連絡している。
【0061】
更に好ましい実施形態によれば、上で言及されるように、前記アセンブリは、機能性磁気粒子を含有する第2の混合物を、前記患者から取り出された体液を含む前記体外フローラインに添加する、少なくとも第2のインジェクション装置を含む。前記第2のインジェクション装置は、前記第1のインジェクション装置の上流に、その下流に、又はそれと一緒に配置され得、前記第1のインジェクション装置及び前記第2のインジェクション装置は、前記患者の免疫状態についての情報を提供するデータに基づいて、制御ユニットによって互いとは別個にそれぞれ個々に制御される。前記第2の混合物に含有される前記機能性磁気粒子が、前記第1の結合剤とは異なり、前記体液に含有され且つ前記第1の標的分子とは異なる少なくとも第2のタイプの標的分子に向けられた第2の結合剤に結合されていれば、又は前記第2のインジェクション装置において、前記第2の混合物に含有される前記機能性磁気粒子は、前記第1の結合剤に結合されているが、前記第1の混合物においてとは異なる濃度で前記第2の混合物に存在するという点ではとりわけ好ましい。第2のインジェクション装置は、第1のインジェクション装置の上流に、その下流に、又はそれと一緒に配置され得、第1のインジェクション装置及び第2のインジェクション装置は、制御ユニットによって、同じ又は異なる制御ユニットによって、互いとは別個にそれぞれ個々に制御される。
【0062】
上で言及されるように、インジェクションは、第1の及び/又は第2の及び/又は更なる混合物を既に含有するインジェクションカートリッジを使用することによって行われ得る。この場合、第1の及び/又は第2の及び/又は更なる混合物は、好ましくは、1種以上のタイプの標的分子に少なくとも向けられた少なくとも第1の及び/又は第2の及び/又は更なる結合剤に既に結合した、機能性磁気ナノ粒子のあらかじめ混合された懸濁液である。
【0063】
代替的に、アセンブリは、磁気粒子の第1の貯蔵槽からの1つの入口、及び少なくとも第1の結合剤を含有する少なくとも第2の貯蔵槽からの1つの入口を有するインジェクション装置を含み得る。この場合、成分/構成成分の投薬量/濃度は、あらかじめ算出され、好ましくは制御ユニットによって制御される。
【0064】
それぞれの患者の免疫反応のパターンが既知である場合、(免疫アクチベーター/サプレッサーの排出)、機能性磁気ナノ粒子のあらかじめ混合された懸濁液のインジェクションは、インジェクションの用量及び時間に関する所定のパターンで行われ得る。1つを上回る数のインジェクション装置を提供することによって、処理は経時的に調整され得る。インジェクトされる混合物は、例えばタイプ又は濃度又はインジェクション速度若しくは時間の観点において変わり得る。種々の、場合によっては必要な混合物は、前もって調製され得る、例えば店頭で購入され得、使用できる状態で保管され得る、又は使用まで個々のインジェクション装置にそれぞれあらかじめ接続され得る。
【0065】
前記アセンブリの好ましい実施形態は、上で言及されるように、前記第1の及び/又は前記第2の若しくは任意の更なるインジェクションユニットと関連付けられた少なくとも1つの貯蔵槽を含み、少なくとも前記1つの貯蔵槽は、相当するインジェクションユニットによってインジェクトされる対象となる前記磁気粒子を含む。貯蔵槽は、バッファー又は他の適切な試薬を含有し得る。貯蔵槽は、その内容物の流体レベル、温度、又は他の特性を検出するためのセンサーを含み得る。センサーは、好ましくは、場合によっては制御ユニットの一部である処理機と電気的に又はワイヤレスで連絡している。好ましくは、前記貯蔵槽は使い捨て可能であり、一方で、場合によっては必要な電子的付属品は、好ましくは再利用可能である。貯蔵槽が、機械的分散の場合には撹拌機、又は超音波による分散の場合には超音波プローブを含有すれば有利である。
【0066】
体外フローラインを通じて輸送される体液は、典型的に、アセンブリの種々のユニット間のチューブ類、すなわち体外フローラインに含有される。チューブ類は、選択された流速及び医学的使用に適した任意の直径を含み得る。適切なチューブ類の材料には、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリウレタン、及びウレタン、並びにその混合物又は組み合わせ等の熱可塑性プラスチックが含まれる。
【0067】
本発明の更に好ましい実施形態によれば、前記アセンブリは、前記体液を前記フローラインに送り出すための流体ポンプ装置を含む。継続的フローラインの場合、フローラインは、患者の動脈と静脈との間で相互接続され、故に、動脈と静脈との間に典型的に存在する圧力差に起因して、いかなるポンプ手段の必要性もない。前記アセンブリの更に好ましい実施形態は、好ましくは別個の混合ユニットの上流に、標的分子が結合剤に結合するのを可能にするためのインキュベーションユニットを更に含有する。代替策として、混合する要素はインキュベーションユニットに含まれ、制御ユニットによって推進され得る。
【0068】
前記アセンブリの更に好ましい実施形態は、以下のもの:調整ユニット、血栓フィルターユニット、弁、熱交換器、点滴チャンバー、圧力センサー、フローセンサー、分散センサー、温度センサー、複合体化センサー、のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0069】
前記アセンブリが、相当するインジェクションユニットによるインジェクションに対して前記磁気粒子を調整するための少なくとも1つの調整ユニットを含む場合、前記調整は、好ましくは、ナノ粒子がインジェクションに対して最適に分配されるように分散される、分散ユニットである。アセンブリが分散ユニットを含む場合、それは、好ましくは、インジェクションユニットの上流に設置される、すなわち好ましくは、インジェクトされる対象となる磁気粒子は、インジェクトされる前に分散される。
【0070】
調整は、好ましくは、患者の免疫状態についての情報を提供する、患者の体液から獲得されたデータに基づいて行われ、制御ユニットによって又は所定の標準物質に従って制御される。
【0071】
必要に応じて、アセンブリは、フローライン内の体液の流圧を感知するための少なくとも1つの圧力センサーを含む。付加的に、とりわけ、処理された体液を患者に戻すために患者の身体に取り付けられる対象となるフローラインからの出口に、又は処理された体液サンプルを患者に戻しインジェクトするために患者の身体に取り付けられる対象となる入口に、それぞれ、体外フローラインを通じた体液のフローを促し且つ調節する1以上の弁を提供することが有利であり得る。
【0072】
本発明の1つの好ましい実施形態は、磁気粒子と選択されたタイプの標的分子との間の複合体化のレベルを判定するための少なくとも1つのセンサーを含む。複合体化のレベルが十分である場合、センサーからデータを受信する処理機/制御ユニットは、体液を前方へ分離ユニットに向かわせるであろう。複合体化のレベルが不十分である場合、処理機は、体液をインジェクションユニットに戻すガイドをするであろう、又は最適化のために、下流のインジェクションユニットに、第1の及び/又は第2の結合剤に結合した選択された機能性磁気粒子の算出された濃度の付加的な用量を体液にインジェクトするように指揮するであろう。
【0073】
本発明は、調節不全の免疫反応、例えば敗血症に罹患した患者の体液の磁気分離ベースの体液浄化のための上記方法を行うための上記アセンブリの使用に更に関する。
【0074】
本発明は、インジェクションユニットが、少なくとも2つのインジェクション装置を含み、そのうちの第1のインジェクション装置は、体液における第1のタイプの標的分子に少なくとも向けられた少なくとも第1の結合剤に結合した磁気粒子を含み、少なくとも第2のインジェクション装置は、第1の結合剤とは異なる少なくとも第2の結合剤に結合した磁気粒子を含み、前記第2の結合剤は、体液における第2のタイプの標的分子に少なくとも向けられることを特徴とする、調節不全の免疫反応、例えば敗血症に罹患した患者の体液の体外処理のための記載されるex vivo方法における使用のための、又は上で記載されるアセンブリにおける使用のためのインジェクションユニットに更に関する。好ましくは、第1のインジェクションユニット及び少なくとも第2のインジェクションユニットは、互いとは別個に個々に制御される。
【0075】
上で記載されるアセンブリを使用することによって、患者の血管からの循環血液を体外回路に通し且つ患者の血管に戻す工程を含み、患者の血中における少なくとも第1のタイプの標的分子、すなわちマーカーの濃度を測定することによって、患者の免疫状態が判定される診断工程を更に含む、調節不全の免疫反応に、例えば敗血症に罹患した患者に対して治療的手順を実施するための方法が行われ得る。
【0076】
数ある中でも、敗血症誘導性免疫抑制を有する患者における、単球反応性を回復させること及び臓器機能を改善することは、この新規の治療的介入の目標である。過去の治療ストラテジーとは対照的に、本発明に従った方法は、LPS又はリポタイコ酸等の病原性化合物、並びにサイトカイン及び補体因子等の炎症性メディエーターの特異的低下に焦点を合わせる。本発明は、医師が診断検査の結果を解釈し、最も適当なやり方で治療様態を合理化することを可能にするであろう。
【0077】
本発明の治療は、内毒素及び主な炎症性メディエーター等の病原体関連分子の中で標的を選定する選択的な多標的手法の後、いくつかの介入地点で敗血症カスケードを中断することをとりわけ目指す。固有の技術に起因して、個々のサイトカイン又は他の炎症性メディエーターは、他に影響を及ぼすことなく標的にされ得る。これにより、炎症促進性及び抗炎症性分子を区別すること、並びに磁気的血液浄化を適用して、調節不全の免疫反応を有する患者、例えば敗血症性ショック患者における免疫均衡を回復させることが可能となる。
【0078】
本発明は、患者の個々の免疫状態に適応され得、患者の必要性に従って治療診断の経過にわたって適応され得る治療法を提供する。本発明の技術は、伝統的な血液濾過法、透析、及び血液灌流と比較して、患者の血液からの疾患関連化合物のより選択的で効率的で且つより穏やかな除去を可能にする。
【0079】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項において定められる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態は、本発明の好ましい実施形態を例示するためのものであり、それを限定するためのものではない図面を参照して、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】3つの考え得る異なる処理法を示す図。
図1Aは、過炎症性メディエーターを除去することによる、過炎症との闘いを示している;
図1Bは、免疫抑制メディエーターを除去することによる、免疫能力の回復を示している;及び
図1Cは、過炎症と免疫抑制との均衡を示している。
【
図2】体外処理が基づく、様々な診断工程及び表現型検査工程のフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1A~1Cにおいて、各症例における体外処理の影響を含めた、「損傷」、すなわち病原性傷害に対する3人の例示的な患者の免疫反応が示されている。上で記載されるように、各患者は、数ある中でも、彼の臨床症状、年齢、併存疾患、又は治療の時点に応じて個々の免疫状態を有する。
【実施例1】
【0083】
[実施例A]
過炎症メディエーターの除去
敗血症の場合、第1のモデルAに従った反応が、炎症促進性及び抗炎症性反応の両方とともに急速に起こる。重度敗血症は、発熱及び異常に増加した循環量を含めた圧倒する過炎症相によって特徴付けられ、敗血症性ショックをもたらす。心血管虚脱、代謝異常、及び多臓器機能不全は、敗血症性ショックのそのような重度の症例における主な死因である。治療には、抗炎症剤又は抗サイトカイン剤を用いた短時間作用型療法が含まれる。
【0084】
患者Aでは、
図1Aに示されるように、病原性傷害の後、標準的な診察の後及び「敗血症救命キャンペーン(surviving sepsis campaign)」の後に過炎症が疑われる。一次感染は、グラム陰性感染として同定される。この診断に基づいて、LPS及び炎症促進性サイトカイン(早期炎症促進性サイトカインIL-1、TNFα、及びIL-18)を、本発明に従った体外処理において血液から除去する。この目的のために、例えばポリミキシンB若しくはその誘導体、LPSに向けられたモノクローナル抗体、マンノース結合レクチン、又はポリエチレンイミン(PEI)から選択される、LPSに向けられた第1の結合剤に結合したインジェクトする機能性磁気粒子を、患者Aから取り出された血液を含む体外フローラインに添加する。次いで、IL-1に対する第2の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性磁気粒子の第2のインジェクションを行い、その後に、TNFαに対する第3の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性磁気粒子の第3のインジェクション、及びIL-18に対する第4の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性粒子の第4のインジェクションが続く。
【0085】
代替的に、様々な標的分子に向けられた複数の必要な結合剤とともに複数の機能性磁気粒子を含有する、1種以上のあらかじめ混合されたインジェクション混合物、例えば特別な「過炎症ミックス」を使用する。処理された血液を、患者Aの循環系に戻す。6時間後、TNFα及びIL-1の濃度の測定は、短い循環時間を有してこれらの標的のレベルの減少を示す。それ故、TNFアルファ及びIL-1吸着剤(結合剤)の投薬量は低下する。
【0086】
8時間後、病原体系統が同定され、最も強力な適当な抗生物質を投与する。抗生物質誘導性LPS放出が予測され、それが、LPS除去(LPSに対する吸着剤/結合剤)の投薬量を増加させる理由である。LPSは様々な供給源を有することから、LPS除去の効率は、例えばLPSに対するモノクローナル抗体及びポリミキシンB又はその誘導体からなる、LPSに向けられた種々の結合剤の混合物を適用することによって増加し得る。
【0087】
過炎症相の後、患者Aは、免疫抑制の短い対抗相を通り抜け、回復する。
【0088】
それ故、過炎症が検出された場合、過炎症性メディエーターを除去する。
【実施例2】
【0089】
[実施例B]
免疫抑制メディエーターの除去
とりわけ高齢患者における併存疾患は、免疫反応を損ない得る。この第2のモデルBに従って反応する患者では、敗血症の発生は、鈍化した又は不在の過炎症相、及び抗炎症状態の急速な発生をもたらし得る。この場合、免疫アジュバント療法が、最善の治療として働く。患者Bにおいて、一次感染は、グラム陽性感染として同定される。病原性傷害の後、患者Bは、正常な炎症相、それに続く免疫抑制の相を有して反応する可能性がある(示されるとおり)。しかしながら、患者Aに類似して、患者は過炎症の相をまず呈示する(
図Bに示されず)。グラム陽性感染の診断に基づいて、標準的な診察の後及び「敗血症救命キャンペーン」の後に過炎症が疑われる場合、リポタイコ酸及び炎症促進性サイトカイン(早期炎症促進性サイトカインIL-1、TNFα、及びIL-18)を、本発明に従った体外処理において血液から除去する。この目的のために、リポタイコ酸に向けられた第1の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合したインジェクトする機能性磁気粒子を、患者Bから取り出された血液を含む体外フローラインに添加する。次いで、IL-1に対する第2の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性磁気粒子の第2のインジェクションを行い、その後に、TNFαに対する第3の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性磁気粒子の第3のインジェクション、及びIL-18に対する第4の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性粒子の第4のインジェクションが続く。
【0090】
代替的に、様々な標的分子に向けられた複数の必要な結合剤とともに複数の機能性磁気粒子を含有する、1種以上のあらかじめ混合されたインジェクション混合物、例えば特別な「免疫抑制ミックス」を使用する。
【0091】
処理された血液を、患者Bの循環系に戻す。6時間後、TNFα及びIL-1の濃度の測定は、短い循環時間を有してこれらの標的のレベルの減少を示す。それ故、TNFアルファ及びIL-1吸着剤(結合剤)の投薬量は低下する。
【0092】
図1Bに示されるように、考え得る過炎症相(患者Aに類似した)又は正常な炎症相(患者Aとは対照的に)の2日後、患者Bは、mHLA-DR測定によって確認される持続的免疫抑制に入り、それは二次感染及び死亡のリスクを増加させる。傷害がグラム陽性病原体由来であるにもかかわらず、胃腸の膜は障害を受けることが多く、故に透過性であることから、胃腸からの転移に起因して高レベルのLPSが測定される。それ故、LPSの除去を開始する。更に、IL-10、IL-6、及びC5aの除去を開始する、というのも、それらの過剰発現(高濃度)は、損なわれた免疫反応につながるためである。IL-10、IL-6、C5a、及びLPSの除去は、mHLA-DRによって確認される免疫機能の回復につながる。患者Bは生存する。
【0093】
それ故、免疫能力が損なわれた場合、免疫抑制メディエーターを除去することによって、免疫能力は回復する。
【実施例3】
【0094】
[実施例C]
免疫反応の均衡の回復
敗血症に対する考え得る免疫反応の第3のモデルCは、過炎症及び低炎症又は免疫抑制状態の間でのサイクルを示す。そのような患者が敗血症を発生した場合、彼らは初期の過炎症反応、それに続く低炎症(hypoinflammtory)状態又は免疫抑制の相を呈示する。二次感染の場合、そのような患者は、繰り返される過炎症反応を発生し得、回復に、又は重度の免疫抑制の危険性を有する低炎症相の再突入につながる。
【0095】
患者Cでは、
図1Cに示されるように、標準的な診察の後及び「敗血症救命キャンペーン」の後に過炎症が検出される。一次感染は、グラム陰性感染として同定される。この診断に基づいて、LPS及び炎症促進性サイトカイン(短い循環時間を有する早期炎症促進性サイトカインIL-1、TNFα、及びIL-18)を、本発明に従った体外処理において血液から除去する。この目的のために、例えばポリミキシンB若しくはその誘導体、LPSに向けられたモノクローナル抗体、マンノース結合レクチン、又はポリエチレンイミン(PEI)(患者Aにおいてと同様に)から選択される、LPSに向けられた第1の結合剤に結合したインジェクトする機能性磁気粒子を、患者Cから取り出された血液を含む体外フローラインに添加する。次いで、IL-1に対する第2の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性磁気粒子の第2のインジェクションを行い、その後に、TNFαに対する第3の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性磁気粒子の第3のインジェクション、及びIL-18に対する第4の結合剤、例えばモノクローナル抗体に結合した機能性粒子の第4のインジェクションが続く。ここでも、様々な標的分子に向けられた複数の必要な結合剤とともに複数の機能性磁気粒子を含有する、あらかじめ混合されたインジェクション混合物、例えば「過/低混合物」を使用することが可能である。
【0096】
次いで、処理された血液を、患者Cの循環系に戻す。過炎症相の2日後、患者Cは、mHLA-DR測定によって確認される持続的免疫抑制に入り、それは二次感染及び死亡のリスクを増加させる。胃腸からの転移に起因して、高レベルのLPSが測定される。それ故、LPSの除去を開始する。更に、IL-10、IL-6、TGFβ、及びC5aの除去を3~5日目から開始する、というのも、それらの過剰発現(高濃度)は、損なわれた免疫反応につながるためである。
【0097】
過炎症相は、炎症促進性サイトカインの除去を用いて6日目に治療される(上記を参照されたい)。次いで、免疫抑制を7~8日目に治療し、患者Cの回復につながる。
【0098】
それ故、過炎症及び免疫抑制の不均衡が検出された場合、各相を別個に且つ続いて治療することによって、均衡は回復する。
【0099】
図2は、本発明に従った体外処理の制御につながる工程のフローチャートを示している。
【0100】
臨床症状に基づいて、救急医又は集中治療医は、過炎症又は免疫抑制(又は持続的炎症、免疫抑制、及び異化症候群(PICS))のいずれかを疑う。この疑いに基づいて、一般的臨床基準、すなわち体温、心拍数、呼吸数、及び全般的臓器機能等の一般的マーカーをチェックすることによって、免疫状態又は機能をまず評価する。
【0101】
SIRSに対する一般的基準は以下のものである。
- 体温:温度>38℃(100.4°F)又は<36℃(96.8°F)
- 心拍数:>90
- 呼吸数:>20又はPaCO2<32mmHg(PaCO2=動脈血二酸化炭素分圧)
- 白血球数(WBC):>12,000/mm3、<4,000/mm3、又は>10%桿状核球(band)
【0102】
患者が2以上のSIRS基準を提示するが、血行動態の安定性(すなわちベースライン時の血圧)を有する場合、より詳細な臨床的査定を行って、感染性病因の可能性を判定しなければならない。
【0103】
更に、敗血症の診断のために、プロカルシトニン(PCT)検査が救急医及び集中治療医によって使用される。プロカルシトニンは、重度の炎症及び感染の最も意味のあるバイオマーカーと見なされる。正常では、PCTは、血中に極めて低い濃度でのみ存在する。その産生及び放出は、炎症性サイトカイン及び細菌内毒素によってほぼあらゆる臓器によって刺激され得る。それ故、PCTの濃度が高ければ高いほど、全身性感染及び敗血症の可能性が高い。
【0104】
標準的モニタリングに基づいて、感染が疑われる又は確認された場合、患者は敗血症を有すると診断され、乳酸レベルを獲得して、低灌流及び炎症の程度を判定する。収縮期血圧が<90である又は正常の>40mmHg下降した場合、乳酸アシドーシスが指標であり得る臓器機能不全、低血圧、又は低灌流の場合に重度敗血症が診断される。乳酸レベル≧4mmol/Lは、重度敗血症の指標と見なされ、広域抗生物質、静脈内輸液、及び昇圧剤を用いた積極的管理が開始されるべきである(別名EGDT)。低血圧を有する重度敗血症は、適正な輸液蘇生にもかかわらず、敗血症性ショックの指標である。疑われる又は確認された感染及び血行動態の不安定性を提示する患者は、敗血症性ショックに対して直ちに治療されるべきである。これらの患者にはSIRS基準が存在する可能性があると考えられるが、WBC又は乳酸等の実験室の値を待ちながら、積極的管理を遅らせるべきではない。2以上の臓器不全の証拠の場合、多臓器機能不全症候群が診断される。敗血症、重度敗血症、及び敗血症性ショックの早期識別、並びに広域及び臓器特異的抗生物質の早期投与が、最も重大な行動である。
【0105】
患者が過炎症の相にいる場合、次いで、感染源は、細菌性、ウイルス性、又は真菌性であると同定される。細菌感染の場合、感染源は、グラム陰性又はグラム陽性である細菌として更に特定され得る。活動性感染源が同定された後、感染源に応じて治療を選択する。
【0106】
患者が免疫抑制の状態にあることが見出された場合、とりわけ患者が高リスク下位群に属することが見出された場合、免疫状態表現型検査を行う。
【0107】
敗血症が臨床的に診断された後、「敗血症救命キャンペーン」後の治療が直ちに誘導される。その間に、表現型検査によって、すなわち様々な標的物質/マーカーの濃度をアッセイすることによって、免疫状態の表現型を更に特定する。標的物質/マーカーの測定は、好ましくは、リポ多糖の場合には内毒素活性アッセイ(EAA検査)によって、及びサイトカイン/補体因子の場合には酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって行われる。患者のゲノミクス及びメタボロミクスをアッセイすることによって、免疫状態の更なる特徴付け及びより正確な病因論が可能である。
【0108】
表現型検査の結果に基づいて適応され得る提案される治療は、炎症患者に対する適応治療を含み、治療用アセンブリは、特異的アフィニティー結合剤、例えば炎症標的に対する、例えばLPS、TNF、IL6、IL8、IL10、及び好ましくはまたC3a、C5aに対する抗体を備えた、1種又はいくつかの既定の吸着剤、好ましくは磁気ナノ吸着剤を含む。これらの吸着剤のうちの1種又はいくつかを、患者の免疫状態に従って、すなわち、好ましくは免疫状態表現型検査を含む上で記載される診断工程の結果に基づいて投薬する。治療の継続期間にわたって、インジェクション混合物、すなわち吸着剤/結合剤混合物は、経時的な患者の実際の免疫状態に適応され得る。1回以上のサイクルの処理の前及び後の体液の繰り返される診断検査により、インジェクトされる機能性磁気ナノ吸着剤のタイプ及び/又は濃度及び/又は量の調整が可能となる。
【0109】
提案される治療選択肢:
グラム陰性細菌感染の結果としての過炎症の場合に除去される対象となる標的分子:
- 一次感染病原体、すなわち全細菌
- 一次感染PAMPS(病原体関連分子パターン):LPS、細菌毒素、フラジェリン、細菌RNA/DNA、ペプチドグリカン
- 炎症促進性免疫メディエーター:TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、GM-CSF、IFNγ
- 補体因子:C5a、C3a
【0110】
グラム陽性細菌感染の結果としての過炎症の場合に除去される対象となる標的分子:
- 一次感染病原体、すなわち全細菌
- 一次感染PAMPS:リポタイコ酸、細菌毒素、フラジェリン、細菌RNA/DNA、ペプチドグリカン
- 炎症促進性免疫メディエーター:TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、GM-CSF、IFNγ
- 補体因子:C5a、C3a
【0111】
グラム不定細菌感染の結果としての過炎症の場合に除去される対象となる標的分子:
- 一次感染病原体、すなわち全細菌
- 一次感染PAMPS:細菌毒素、フラジェリン、細菌RNA/DNA、ペプチドグリカン
- 炎症促進性免疫メディエーター:TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、GM-CSF、IFNγ
- 補体因子:C5a、C3a
【0112】
ウイルス感染の結果としての過炎症の場合に除去される対象となる標的分子:
- ウイルス
- 一次感染PAMPS:ウイルスRNA/DNA、ペプチドグリカン
- 炎症促進性免疫メディエーター:TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、GM-CSF、IFNγ
- 補体因子:C5a、C3a
【0113】
真菌感染の結果としての過炎症の場合に除去される対象となる標的分子:
- 真菌細胞
- 一次感染PAMPS:真菌毒素、キチン、真菌DNA/RNA
- 炎症促進性免疫メディエーター:TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、GM-CSF、IFNγ
- 補体因子:C5a、C3a
【0114】
既に解消された一次感染にもかかわらず、主な問題は二次感染又は免疫系の不均衡である場合の、過炎症の場合に除去される対象となる標的分子:
- 一次感染PAMPS:LPS(例えば、腸の穴の開いた膜から血管系に入った);
- DAMPS(障害関連分子パターン):HMGB1、ヒストン、細胞DNA/RNA
- 炎症促進性免疫メディエーター:TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、GM-CSF、IFNγ
- 補体因子:C5a、C3a
【0115】
依然として活動性の感染源を有する、免疫抑制の場合に除去される対象となる標的分子:
- 一次感染PAMPS:感染タイプに従って、上記を参照されたい;
- DAMPS:HMGB1、ヒストン、細胞DNA/RNA
- 免疫抑制効果を有するサイトカイン:IL-6、IL-10、IL-33、TGFβ
- 補体因子:C5a、C3a
【0116】
解消された一次感染にもかかわらず、主な問題は二次感染又は免疫系の不均衡である場合の、免疫抑制の場合に除去される対象となる標的分子:
- 一次感染PAMPS:LPS(例えば、腸の穴の開いた膜から血管系に入った);
- DAMPS:HMGB1、ヒストン、細胞DNA/RNA
- 免疫抑制効果を有するサイトカイン:IL-6、IL-10、IL-33、TGFβ
- 補体因子:C5a、C3a
【0117】
図2に示される処理工程は、処理工程はフィードバックループの一部でもあり得ることから、直線的形式で適用される必要はなく、1以上の工程は、時間が異なる時点で収集された診断データに基づいて、故にコンピュータープログラムで実行される又は医療関係者に対する取扱説明書に翻訳される考え得るアルゴリズムに基づいて制御される。
【0118】
本発明に従ったアセンブリの図式的概観が
図3に示されている。この具体的な実施形態において、アセンブリは、体外回路、すなわち体外フローラインを含む。この体外フローラインは、この場合には血液である体液の継続的処理又は浄化のために、調節不全の免疫反応に罹患した患者の身体に接続され得る。しかしながら、体外回路は、患者の身体から接続を切られ得、患者の身体からあらかじめ取り出された未処理の血液のサンプルが、体外フローラインの入口ポートにインジェクトされ得る。未処理の血液は、体外フローラインに接続された又はそれと関連付けられた診断ユニットにおいて診断される。
図3に示される実施形態において、診断結果は制御器によって解釈され、それは、インジェクションユニットを作動させ(acutate)且つ適切なナノ吸着剤を投薬する。血液は、血液ポンプによって体外フローラインを走り抜ける。描かれたアセンブリは、少なくとも1つの吸着剤貯蔵槽及び/又は少なくとも1つの調整ユニットを更に含有し得る(示されず)。4つのインジェクションユニット/装置は、機能性ナノ磁石を含有する別個のあらかじめ混合されたインジェクション混合物が、体外フローラインに流入する未処理の血液へのそれぞれのインジェクション混合物のインジェクションのために取り付けられるインジェクションポートの形で示されている。インジェクション工程の後、血液は、結合剤、すなわちナノ吸着剤への標的分子の十分な複合体化のために混合され且つインキュベートされる。示される実施形態において、混合工程及びインキュベーション工程は、体外フローラインの区分において行われる。十分な、場合によっては所定のレベルの複合体化に到達した後、血液は分離ユニットに向かい、磁気粒子は、ここでは毒性物質又は標的分子に結合しているそれらの結合剤から分離され、その除去、すなわち全除去又は濃度の低下は、処理の結果である。体外処理のそのような単一「サイクル」又は通路の最終産物は、浄化された血液であり、それは、患者の身体に継続的に戻され得る、又は保管、更なる処理サイクル(場合によっては、他の結合剤を用いた)、若しくは時間がより後の時点における患者の身体への戻しのために体外フローラインの出口ポートで取り出され得る。