(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】強化されたT細胞受容体STAR及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20250108BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20250108BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250108BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20250108BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250108BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250108BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250108BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250108BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250108BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/725 ZNA
C12N15/12
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K16/28
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/10
(21)【出願番号】P 2022564686
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(86)【国際出願番号】 CN2020103687
(87)【国際公開番号】W WO2021135178
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】201911389706.0
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522260986
【氏名又は名称】ブリスター イムノテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルイ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー, チュンヤン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ファン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-527555(JP,A)
【文献】Blood,2020年,Vol.136, Suppl.1,Article No.4,DOI:10.1182/blood-2020-136833
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
C07K 14/725
C12N 15/12
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の抗原結合領域及び第1の定常領域を含有するα鎖、並びに第2の抗原結合領域及び第2の定常領域を含有するβ鎖であるα鎖及びβ鎖を含有する、合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)であって、
前記第1の定常領域が、マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、N末端の位置1~4のアミノ酸が欠失しており、N末端の位置5~位置18のアミノ酸が、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、且つアミノ酸の番号が配列番号2を参照して
おり、
前記第2の定常領域がマウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域と比較して、N末端の位置1~6のアミノ酸が欠失しており、N末端の位置7~位置25のアミノ酸が、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、且つアミノ酸の番号が配列番号15を参照している、
合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項2】
天然のT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、前記第1の定常領域が位置48にシステイン置換を含有し、アミノ酸の番号が配列番号2を参照している、請求項1に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項3】
天然のT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、前記第1の定常領域において位置48のトレオニンがシステインに変異しており、アミノ酸の番号が配列番号2を参照している、請求項1又は2に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項4】
天然のT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、前記第1の定常領域が膜貫通領域において疎水性アミノ酸置換を含有し、膜貫通領域が、位置111~位置119のアミノ酸配列を含み、アミノ酸の番号が配列番号2を参照している、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項5】
天然のT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、前記第1の定常領域が、位置112、位置114及び/又は位置115に疎水性アミノ酸置換を含有し、アミノ酸の番号が配列番号2を参照している、請求項1~4のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項6】
天然のT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、前記第1の定常領域において、位置112のセリンがロイシンによって置換されており、位置114のメチオニンがイソロイシンによって置換されており、及び/又は位置115のグリシンがバリンによって置換されており、アミノ酸の番号が配列番号2を参照している、請求項1~5のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項7】
前記第1の定常領域が、配列番号8として示される膜貫通領域を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項8】
前記第1の定常領域が
、配列番号
11~13及び配列番号3
4として示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項9】
天然のT細胞受容体のβ鎖の定常領域と比較して、前記第2の定常領域において、位置56のセリンがシステインに変異しており、アミノ酸の番号が配列番号15を参照している、請求項1~
8のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項10】
前記第2の定常領域が、配列番
号21として示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項11】
i)前記第1の定常領域が配列番号34として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の定常領域が配列番号37として示されるアミノ酸配列を含有する
、
ii)前記第1の定常領域が配列番号11として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の定常領域が配列番号21として示されるアミノ酸配列を含有する、
iii)前記第1の定常領域が配列番号12として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の定常領域が配列番号37として示されるアミノ酸配列を含有する
、
又は
iv)前記第1の定常領域が配列番号13として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の定常領域が配列番号21として示されるアミノ酸配列を含有する、
請求項1~
10のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項12】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が、独立的に又は組み合わせて標的抗原に特異的に結合する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項13】
標的抗原が疾患関連抗原である、請求項
12に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項14】
前記標的抗原が、CD16、CD64、CD78、CD96、CLL1、CD116、CD117、CD71、CD45、CD71、CD123、CD138、ErbB2(HER2/neu)、がん胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、CD19、CD20、CD30、CD40、ジシアリルガングリオシドGD2、導管上皮ムチン、gp36、TAG-72、スフィンゴ糖脂質、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、プロスターゼ特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGA-1a、p53、プロステイン、PSMA、生存及びテロメラーゼ、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン様増殖因子(IGF1)-I、IGF-II、IGF-1受容体、メソテリン、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、5T4、ROR1、Nkp30、NKG2D、腫瘍間質抗原、フィブロネクチンの外部ドメインA(EDA)及び外部ドメインB(EDB)、テネイシン-C A1ドメイン(TnC A1)、線維芽細胞関連タンパク質(FAP)、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD33、CD34、CD133、CD138、Foxp3、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、GM-CSF、サイトカイン受容体、内皮因子、主要組織適合性複合体(MHC)分子、BCMA(CD269、TNFRSF17)、TNFRSF17(UNIPROT Q02223)、SLAMF7(UNIPROT Q9NQ25)、GPRC5D(UNIPROT Q9NZD1)、FKBP11(UNIPROT Q9NYL4)、KAMP3、ITGA8(UNIPROT P53708)及びFCRL5(UNIPROT Q68SN8)から選択されるがん関連抗原である、請求項
13に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項15】
前記第1の抗原結合領域が前記標的抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含有し、前記第2の抗原結合領域が前記抗体の軽鎖可変領域を含有する、又は第1の抗原結合領域が標的抗原に特異的に結合する軽抗体の軽鎖可変領域を含有し、前記第2の抗原結合領域が抗体の重鎖可変領域を含有する、請求項
12~
13のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項16】
前記第1の抗原結合領域が、配列番号22として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号23として示されるアミノ酸配列を含む、若しくは第1の抗原結合領域が配列番号23として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号22として示されるアミノ酸配列を含み、それ故に前記STARがEGFRに特異的に結合する、又は
前記第1の抗原結合領域が、配列番号44として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号45として示されるアミノ酸配列を含む、若しくは第1の抗原結合領域が配列番号45として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号44として示されるアミノ酸配列を含み、それ故に前記STARがCD19に特異的に結合する、又は
前記第1の抗原結合領域が、配列番号46として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号47として示されるアミノ酸配列を含む、若しくは第1の抗原結合領域が配列番号47として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号46として示されるアミノ酸配列を含み、それ故に前記STARがCD20に特異的に結合する、又は
前記第1の抗原結合領域が、配列番号48として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号49として示されるアミノ酸配列を含む、若しくは第1の抗原結合領域が配列番号49として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号48として示されるアミノ酸配列を含み、それ故に前記STARがCD22に特異的に結合する、又は
前記第1の抗原結合領域が、配列番号24として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号25として示されるアミノ酸配列を含む、若しくは第1の抗原結合領域が配列番号25として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号24として示されるアミノ酸配列を含み、それ故に前記STARがGPC3に特異的に結合する、又は
前記第1の抗原結合領域が、CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含有し、重鎖可変領域が、配列番号28として示される重鎖CDR1、配列番号29として示される重鎖CDR2、及び配列番号30として示される重鎖CDR3を含有し、前記第2の抗原結合領域が、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域を含有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号31として示される軽鎖CDR1、配列番号32として示される軽鎖CDR2、及び配列番号33として示される軽鎖CDR3を含有する、若しくは前記第1の抗原結合領域が、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域を含有し、前記軽鎖可変領域が、配列番号31として示される軽鎖CDR1、配列番号32として示される軽鎖CDR2、及び配列番号33として示される軽鎖CDR3を含有し、前記第2の抗原結合領域が、CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含有し、前記重鎖可変領域が、配列番号28として示される重鎖CDR1、配列番号29として示される重鎖CDR2、及び配列番号30として示される重鎖CDR3を含有し、それ故に前記STARがCD19に特異的に結合する、又は
前記第1の抗原結合領域が、配列番号26として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号27として示されるアミノ酸配列を含み、若しくは前記第1の抗原結合領域が、配列番号27として示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の抗原結合領域が、配列番号26として示されるアミノ酸配列を含み、それ故に前記STARがCD19に特異的に結合する、
請求項1~
15のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項17】
前記第1の抗原結合領域が、前記標的抗原に特異的に結合する単鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含有し、及び/又は前記第2の抗原結合領域が、前記標的抗原に特異的に結合する単鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含有する、請求項
12~
13、及び15のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項18】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が、同一の標的抗原に結合する、請求項
17に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項19】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が、同じ標的抗原の異なる領域に結合する、請求項
17に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項20】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が、それぞれCD19及びCD20、又はそれぞれCD19及びCD22、又はそれぞれCD38及びBCMA、又はそれぞれPDL1及びEGFRに結合している、請求項
17に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)のα鎖及びβ鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項22】
同一のリーディングフレーム内に、i)α鎖をコードするヌクレオチド配列、ii)β鎖をコードするヌクレオチド配列、及びiii)i)とii)との間にある自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項
21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記自己切断ペプチドが、2Aポリペプチドである、請求項
22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
調節配列に作動可能に連結された、請求項
21~
23のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項25】
ウイルスベクターである、請求項
24に記載の発現ベクター。
【請求項26】
レンチウイルスベクターである、請求項
25に記載の発現ベクター。
【請求項27】
治療用T細胞を調製する方法であって、請求項1~
20のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)をT細胞において発現させるステップを含む、方法。
【請求項28】
請求項
21~
23のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項
24~
26のいずれか一項に記載の発現ベクターをT細胞に導入するステップを含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~
20のいずれか一項に記載の合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)を含むか、又は請求項
27若しくは
28に記載の方法によって得られる、治療用T細胞。
【請求項30】
請求項
29に記載の治療用T細胞及び薬学的に許容できる担体を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
対象における疾患を治療するための医薬を調製するための、請求項
29に記載の治療用T細胞又は請求項
30に記載の医薬組成物の使用。
【請求項32】
前記疾患が、肺がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、黒色腫、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、鼻咽頭がん、咽喉がん、子宮頸がん、子宮体部腫瘍、骨肉腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、前立腺がん、子宮がん、肛門がん、精巣がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性又は急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、及び慢性リンパ性白血病を含む)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓又は尿管がん、腎盂腎がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、及びアスベスト誘発がんを含む環境誘発がん、並びにこれらのがんの組合せからなる群から選択される、請求項
31に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に関し、特に、強化されたT細胞受容体STAR及びその用途に関する。具体的には、改良された合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)、STARを含有するT細胞、及びそれらの使用が開示される。
【背景技術】
【0002】
ヒト体内の免疫細胞による腫瘍細胞の排除は、樹状細胞が腫瘍細胞の変異体遺伝子を認識して、変異体情報をT細胞に提示する様式で実現される。続いてT細胞が、変異を保有する腫瘍細胞を探し出して死滅させる。時には、腫瘍細胞が、変異したペプチド断片を提示することができるMHC分子をダウンレギュレートし、その結果、T細胞による死滅を回避して、制御不能ながんに徐々に進行する。
【0003】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、近年、有効性に優れる抗がん免疫療法である。天然のT細胞が腫瘍細胞を認識する方法とは異なり、CAR-T細胞は腫瘍細胞の認識のためにMHC分子に依拠しない。CAR分子は主に3つの部分で構成され、これには、抗体に由来する抗原認識構造ドメインであって標的抗原の認識を担う細胞外領域と、膜貫通領域と、T細胞受容体に由来し、刺激を受けた際にT細胞活性化シグナルの伝達を担うシグナル伝達分子及び共刺激シグナル伝達分子である細胞内領域とがある。その作用原理は以下の通りである:CAR分子が対応する抗原に結合すると、CAR分子は凝集し、それにより局所的リン酸化レベルを上昇させ、下流シグナルを活性化し、最終的にT細胞のエフェクター機能を開始させて標的腫瘍細胞を死滅させる。
【0004】
CD19タンパク質標的化キメラ抗原受容体T細胞(CD19-CAR-T)療法は、再発・難治性B細胞リンパ腫の治療に対して、米国で2件の臨床適用が承認されている。しかし、CAR-T療法は固形腫瘍の治療では困難に直面していた。T細胞療法が固形腫瘍の治療において良好な有効性を達成できていないことには複数の要因があり、重要な理由の1つは、CAR-T細胞の機能が腫瘍微小環境で阻害され、T細胞が枯渇及びアポトーシスを受けやすいことである。最近の研究は、T細胞の機能障害がキメラ抗原受容体のシグナル伝達経路特性に関連する可能性を示唆している。
【0005】
T細胞受容体(TCR)複合体分子は複数の鎖を含有し、そのTCRα鎖及びTCRβ鎖はMHCポリペプチド分子の認識を担い、他の6つのCD3サブユニットはTCRα/β鎖に結合し、シグナル伝達の機能を有する。天然のTCR複合体はITAMシグナル配列を計10個含有し、CARよりも強いシグナルの伝達が理論的には実現可能である。以前の研究により、TCRシグナルの伝達はCARシグナルのものよりも遅いが、TCRシグナルのほうがより持続的であることが示されている。したがって、天然のTCRシグナル伝達機能を使用することによって、T細胞機能障害を軽減して、より優れた抗固形腫瘍効果を発揮することを可能にする新規受容体を構築することが可能である。
【0006】
TCRの細胞外領域は抗体のFabドメインと非常に類似しており、そのため、TCR可変領域配列を抗体可変領域配列で置換することで、抗体の特異性及び天然TCRのより優れたシグナル伝達機能の両方を有し、完全なT細胞活性化を媒介することができる合成TCR及び抗原受容体(STAR)を得ることができる。
【0007】
しかし、天然TCR由来のSTARには、依然として、膜安定性が不良であること、α/β鎖対形成能力が低いこと、内因性TCRとのミスマッチ、T細胞への導入が困難であること、などといった問題がある。したがって、改良されたSTARに対する需要は今も現場にある。
【発明の概要】
【0008】
他に指示又は定義されない限り、使用されるすべての用語は、当業者に理解されるであろう当技術分野における通常の意味を有する。また、標準的マニュアル、例えば、Sambrook et al.“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”;Lewin,“Genes VIII”;及びRoitt et al.“Immunology”(8th Edition)、並びに本明細書に引用される一般的な先行技術も参照される。その上、特に指示のない限り、具体的に記載されていないすべての方法、ステップ、技法及び操作は、それ自体が公知である様式で実施することができ、また実施されており、その様式は当業者に知られているであろう。また、例えば、標準的マニュアル、上記の一般的な先行技術及びそこに引用されている他の参考文献も参照される。
【0009】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、その用語によって連結される項目のすべての組合せを範囲に含み、各組合せは、本明細書に個々に列挙されていると考えるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、「A」、「A及びB」及び「B」を範囲に含む。例えば、「A、B及び/又はC」は、「A」、「B」、「C」、「A及びB」、「A及びC」、「B及びC」、「A及びB及びC」を範囲に含む。
【0010】
「含む」という用語が、本明細書でタンパク質又は核酸の配列を記載するために使用される場合、タンパク質若しくは核酸はその配列からなってもよく、又はタンパク質若しくは核酸の一方若しくは両方の末端が追加のアミノ酸若しくはヌクレオチドを有してもよいが、本発明に記載される活性は依然として存在する。さらに、ポリペプチドのN末端の開始コドンによってコードされるメチオニンは、特定の現実の状況下(例えば、特定の表現系において発現される場合)では保持されるが、ポリペプチドの機能が実質的に影響されないことは、当業者には明らかである。したがって、特定のポリペプチドのアミノ酸配列が本発明の明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、N末端の開始コドンによってコードされるメチオニンは含有していなくてもよいが、メチオニンを含む配列もこれに関して範囲に含まれており、したがって、コードするヌクレオチド配列も開始コドンを含むことができ、その逆についても同様である。
【0011】
一態様では、本発明は、α鎖及びβ鎖を含む合成T細胞受容体及び抗原受容体(STAR)を提供し、ここでα鎖は第1の抗原結合領域及び第1の定常領域を含み、β鎖は第2の抗原結合領域及び第2の定常領域を含み、
第1の定常領域は、天然のT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、i)N末端改変、ii)システイン置換;及び/若しくはiii)疎水性アミノ酸置換を含む、天然のT細胞受容体のα鎖の定常領域のバリアントであり、及び/又は
第2の定常領域は、天然のT細胞受容体のβ鎖の定常領域と比較して、i)N末端改変、及びii)システイン置換を含む、天然のT細胞受容体のβ鎖の定常領域のバリアントである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】STARの構造を示す。A、STARのプロトタイプの構造図;B:改良されたSTARの構造図;C、複数の異なる標的抗原を標的とするデュアルSTARの構造図。
【
図2】ヒト及びマウスのT細胞受容体のα鎖及びβ鎖の定常領域の配列アラインメント結果を示す。
【
図3】ヒト及びマウスのTCRα鎖定常領域のN末端の18アミノ酸の配列アラインメント結果を示す。UserSeq1はヒト配列であり、UserSeq2はマウス配列である。
【
図4】ヒト及びマウスのTCRβ鎖定常領域のN末端の25アミノ酸の配列アラインメント結果を示す。UserSeq1はヒト配列であり、UserSeq2はマウス配列である。
【
図5】複数の異なる改変を組み合わせた定常領域変異体を示す。
【
図6】EGFRを標的とするCetux STARの様々な変異体の機能を示す。
【
図7-1】GPC3を標的とするGC33 STARの様々な変異体の機能を示す。
【
図7-2】GPC3を標的とするGC33 STARの様々な変異体の機能を示す。
【
図8】CD19を標的とする334 STARの組込み変異体の機能を示す。
【
図9】CD19/CD20を標的とするFMC63-2C6 STARの組込み変異体の機能を示す。
【
図10】CD19/CD22を標的とするFMC63-M791 STARの組込み変異体の機能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一部の実施形態では、抗原結合領域は、定常領域のN末端に融合されている。
【0014】
一部の実施形態では、α鎖及びβ鎖は、T細胞における発現を受けて機能的TCR複合体を形成することができる。例えば、α鎖及びβ鎖は、T細胞における発現の後に、細胞の内因性CD3分子(CD3εδ、CD3γε、CD3ζζ)に結合して8サブユニットのTCR複合体を形成することができ、このTCR複合体は細胞表面に表示され、標的抗原に結合するとT細胞を活性化する。機能的TCR複合体は、標的抗原への特異的結合を受けてT細胞を活性化することができる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「N末端改変」とは、参照されるアミノ酸配列(ポリペプチド又はタンパク質)のN末端が1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含むことを意味し、この用語は、参照されるアミノ酸配列(ポリペプチド又はタンパク質)のN末端からの1つ又は複数の連続したアミノ酸の欠失も含み得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「システイン置換」又は「疎水性アミノ酸置換」は、参照されるアミノ酸配列(ポリペプチド又はタンパク質)における元のアミノ酸のシステイン又は疎水性アミノ酸による置換を指し、ここで疎水性アミノ酸置換は、親水性アミノ酸が疎水性アミノ酸によって置換されていることであり得、また、低疎水性アミノ酸が高疎水性アミノ酸によって置換されていることであり得る。
【0017】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、ヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域、非ヒト霊長類T細胞受容体のα鎖の定常領域、齧歯類、例えば、マウスのT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来する。ヒトT細胞受容体のα鎖の例示的な定常領域は、配列番号1に記載されたアミノ酸配列を含む。マウスT細胞受容体のα鎖の例示的な定常領域は、配列番号2に記載されたアミノ酸配列を含む。一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来する。
【0018】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、天然のT細胞受容体α鎖定常領域と比較してN末端に18アミノ酸以内の改変を含む。一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来し、配列番号3に記載されたアミノ酸配列(DIQNPEPAVYQLKDPRSQ)が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第1の定常領域は、配列番号4に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-N.DLTに対応する)を含む。
【0019】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、天然のT細胞受容体α鎖定常領域と比較してN末端に改変を含み、ここでN末端の位置15~18のアミノ酸の1つ若しくは複数又はすべてが欠失しており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置15~18のアミノ酸の1つ若しくは複数又はすべてが、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置15~18のアミノ酸の1つ若しくは複数又はすべてが、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置1~14のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第1の定常領域は、配列番号5に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-N.Rec-4に対応する)を含む。
【0020】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端からのX個の連続したアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、及び/又はN末端の位置(X+1)~18からのアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、Xは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18である。
【0021】
例えば、一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~14のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第1の定常領域は、配列番号34に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-N.Rec-1に対応する)を含む。
【0022】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~8のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置9~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第1の定常領域は、配列番号35に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-N.Rec-2に対応する)を含む。
【0023】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~12のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置13~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第1の定常領域は、配列番号36に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-N.Rec-3に対応する)を含む。
【0024】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、天然のT細胞受容体α鎖定常領域と比較して位置48にシステイン置換を含み、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の実施形態では、天然のT細胞受容体α鎖定常領域と比較して、第1の定常領域の位置48のトレオニンはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、システイン置換を含む第1の定常領域は、配列番号6(ヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来する)に記載されたアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、システイン置換を含む第1の定常領域は、配列番号7(マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来する)に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-Cysに対応する)を含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸番号は配列番号xを指す」(配列番号xは、本明細書に列挙される特定の配列である)は、記載される特定のアミノ酸の位置番号が、配列番号x上の対応するアミノ酸の位置番号であることを意味する。異なる配列におけるアミノ酸の対応関係は、当技術分野で周知の配列アラインメント法に従って決定することができる。例えば、アミノ酸の対応関係は、EMBL-EBI(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/)からのオンラインアラインメントツールによって決定することができ、ここで2つの配列のアラインメントは、デフォルトのパラメータを使用することによってNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用することによって行うことができる。例えば、ポリペプチドのN末端から位置46にあるアミノ酸は、配列アラインメントにおいて配列番号xの位置48にあるアミノ酸と整列化され、この場合に、ポリペプチドにおけるアミノ酸を、本明細書で「ポリペプチドの位置48のアラニンであり、アミノ酸の位置は配列番号xを参照している」と記載してもよい。
【0026】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、天然のT細胞受容体のα鎖定常領域と比較して膜貫通領域内に疎水性アミノ酸置換を含み、例えば、膜貫通領域は、位置111~119にアミノ酸配列を含み、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の実施形態では、第1の定常領域は、天然のT細胞受容体α鎖定常領域と比較して、位置112、114及び/又は115に疎水性アミノ酸置換を含み、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の実施形態では、天然のT細胞受容体α鎖定常領域と比較して、第1の定常領域の位置112のセリンはロイシンで置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンで置換されており、及び/又は位置115のグリシンはバリンで置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の実施形態では、天然のT細胞受容体α鎖定常領域と比較して、第1の定常領域の位置112のセリンはロイシンで置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンで置換されており、及び/又は位置115のグリシンはバリンで置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の実施形態では、疎水性アミノ酸置換を含む第1の定常領域は、配列番号8に記載された膜貫通領域(マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来する)を含む。一部の特定の実施形態では、疎水性アミノ酸置換を含む第1の定常領域は、配列番号9(マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来する)に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-TM9に対応する)を含む。
【0027】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~4のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、位置48のトレオニンはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号11に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-Cys-N.Rec-1に対応する)を含む。
【0028】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~4のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、位置112のセリンはロイシンによって置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンによって置換されており、位置115のグリシンはバリンによって置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号12に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-TM9-N.Rec-1に対応する)を含む。
【0029】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、位置48のトレオニンはシステインに変異しており、位置112のセリンはロイシンに置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンに置換されており、位置115のグリシンはバリンに置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号10に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-Cys-TM9に対応する)を含む。
【0030】
一部の実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~4のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、位置48のトレオニンはシステインに変異しており、位置112のセリンはロイシンによって置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンによって置換されており、位置115のグリシンはバリンによって置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号13に記載されたアミノ酸配列(TCRaC-Cys-TM9-N.Rec-1に対応する)を含む。
【0031】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、ヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域、非ヒト霊長類T細胞受容体のβ鎖定常領域、及び齧歯類、例えばマウスのT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来する。例示的なヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域は、配列番号14に記載されたアミノ酸配列を含む。例示的なマウスT細胞受容体のα鎖定常領域は、配列番号15に記載されたアミノ酸配列を含む。一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来する。
【0032】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、天然のT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して、N末端に25のアミノ酸以内の改変を含む。一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、配列番号16に記載されたアミノ酸配列(DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQK)が、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第2の定常領域は、配列番号17に記載されたアミノ酸配列(TCRbC-N.DLTに対応する)を含む。
【0033】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、天然のT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較してN末端に改変を含み、ここでN末端の位置17及び21~25のアミノ酸の1つ若しくは複数又はすべてが欠失しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置17及び21~25のアミノ酸の1つ若しくは複数又はすべてが、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置17及び位置21~25のアミノ酸の1つ若しくは複数又はすべてが、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置1~16のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸で置換されており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第2の定常領域は、配列番号18に記載されたアミノ酸配列(TCRbC-N.Rec-4に対応する)を含む。
【0034】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して、N末端からX個の連続したアミノ酸が欠失しており、及び/又はN末端の位置(X+1)~25のアミノ酸が、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、Xは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25である。
【0035】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~6のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置7~25のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第2の定常領域は、配列番号37に記載されたアミノ酸配列(TCRbC-N.Rec-1に対応する)を含む。
【0036】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~12のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置13~25のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第2の定常領域は、配列番号38に記載されたアミノ酸配列(TCRbC-N.Rec-2に対応する)を含む。
【0037】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~18のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置19~25のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、N末端改変を含む第2の定常領域は、配列番号39に記載されたアミノ酸配列(TCRbC-N.Rec-3に対応する)を含む。
【0038】
一部の実施形態では、天然のT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して、第2の定常領域は、位置56にシステイン置換を含み、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の実施形態では、天然のT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して、第2の定常領域の位置56のセリンはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、システイン置換を含む第2の定常領域は、配列番号19(ヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来する)に記載されたアミノ酸配列を含む。一部の特定の実施形態では、システイン置換を含む第2の定常領域は、配列番号20(マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来する)に記載されたアミノ酸配列(TCRbC-Cysに対応する)を含む。
【0039】
一部の実施形態では、第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~6のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置7~25のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、位置56のセリンはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、第2の定常領域は、配列番号21に記載されたアミノ酸配列(TCRbC-Cys-N.Rec-1に対応する)を含む。
【0040】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~4のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照しており、且つ第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~6のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、N末端の位置7~25のアミノ酸が、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号34に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の定常領域は、配列番号37に記載されたアミノ酸配列を含む。
【0041】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、位置48のトレオニンはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号2を参照しており、且つ第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して、位置56のセリンはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号7に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の定常領域は、配列番号20に記載されたアミノ酸配列を含む。
【0042】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、位置112のセリンはロイシンで置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンで置換されており、位置115のグリシンはバリンで置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照しており、且つ第2の定常領域は、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域である。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号9に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の定常領域は、配列番号15に記載されたアミノ酸配列を含む。
【0043】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、N末端の位置1~4のアミノ酸は欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、位置48のトレオニンはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号2を参照しており、且つ第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~6のアミノ酸は、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置7~25のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸で置換されており、位置56のセリンはシステインに変異しており、位置56のシステインはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号11に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の定常領域は、配列番号21に記載されたアミノ酸配列を含む。
【0044】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来し、N末端の位置1~4のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、位置112のセリンはロイシンで置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンで置換されており、位置115のグリシンはバリンで置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照しており、且つ第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~6のアミノ酸が、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、N末端の位置7~25のアミノ酸が、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号12に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の定常領域は、配列番号37に記載されたアミノ酸配列を含む。
【0045】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来し、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して、位置48のトレオニンはシステインに変異しており、位置112のセリンはロイシンで置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンで置換されており、位置115のグリシンはバリンで置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照しており、且つ第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、位置56のセリンは天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較してシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。一部の特定の実施形態では、第1の定常領域は、配列番号10に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の定常領域は、配列番号20に記載されたアミノ酸配列を含む。
【0046】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域に由来し、N末端の位置1~4のアミノ酸は、天然のマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域と比較して欠失しており、ここでN末端の位置5~18のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域の対応するアミノ酸によって置換されており、位置48のトレオニンはシステインに変異しており、位置112のセリンはロイシンで置換されており、位置114のメチオニンはイソロイシンで置換されており、位置115のグリシンはバリンで置換されており、アミノ酸番号は配列番号2を参照しており、且つ
第2の定常領域は、マウスT細胞受容体のβ鎖定常領域に由来し、N末端の位置1~6のアミノ酸は、天然のマウスT細胞受容体のβ鎖定常領域と比較して欠失しており、N末端の位置7~25のアミノ酸は、天然のヒトT細胞受容体のβ鎖定常領域の対応するアミノ酸で置換されており、位置56のセリンはシステインに変異しており、位置56のシステインはシステインに変異しており、アミノ酸番号は配列番号15を参照している。
【0047】
一部の好ましい実施形態では、第1の定常領域は、配列番号13に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の定常領域は、配列番号21に記載されたアミノ酸配列を含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、「抗原結合領域」は、それが単独で、又は別の抗原結合領域と組み合わせて、標的抗原に特異的に結合し得ることを意味する。
【0049】
本明細書に記載される「抗原」又は「標的抗原」は、抗体によって認識されて結合されることが可能な任意の抗原、好ましくは疾患関連抗原、より好ましくはがん関連抗原であってもよい。例示的ながん関連抗原としては、CD16、CD64、CD78、CD96、CLL1、CD116、CD117、CD71、CD45、CD71、CD123、CD138、ErbB2(HER2/neu)、癌胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、CD19、CD20、CD30、CD40、ジシアリルガングリオシド(disialylganglioside)GD2、導管上皮ムチン、gp36、TAG-72、スフィンゴ糖脂質、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、プロスターゼ特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGA-1a、p53、プロステイン、PSMA、生存及びテロメラーゼ、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン様増殖因子(IGF1)-I、IGF-II、IGF1受容体、メソテリン、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、5T4、ROR1、Nkp30、NKG2D、腫瘍間質抗原、フィブロネクチンの外部ドメインA(EDA)及び外部ドメインB(EDB)、テネイシン-C A1ドメイン(TnC A1)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD33、CD34、CD133、CD138、Foxp3、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、GM-CSF、サイトカイン受容体、内皮因子、BCMA(CD269、TNFRSF17)、TNFRSF17(UNIPROT Q02223)、SLAMF7(UNIPROT Q9NQ25)、GPRC5D(UNIPROT Q9NZD1)、FKBP11(UNIPROT Q9NYL4)、KAMP3、ITGA8(UNIPROT P53708)及びFCRL5(UNIPROT Q68SN8)が挙げられるが、これらには限定されない。
【0050】
抗原結合領域は、任意の市販の抗体を含む、1つ又は複数の既知の抗体、例えば、FMC63、リツキシマブ、アレムツズマブ、エプラツズマブ、トラスツズマブ、ビバツズマブ、セツキシマブ、ラベツズマブ、パリビズマブ、セビルマブ、ツビルマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、オマリズマブ、エファツズマブ、ケリキシマブ、シプリズマブ、ナタリズマブ、クレノリキシマブ、ペムツモマブ、エドレコロマブ、カンツズマブに由来することができる。一部の好ましい実施形態では、抗原結合領域は、受託番号CGMCC No.17095(2019年1月21日に、China General Microbiological Culture Collection Center,Institute of Microbiology,Chinese Academy of Sciences at No.3,Yard 1,Beichen West Road,Chaoyang District,Beijingで受託)を有するハイブリドーマ細胞334によって産生されるモノクローナル抗体334である。
【0051】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含み、第2の抗原結合領域は、抗体の軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域を含み、第2の抗原結合領域は、抗体の重鎖可変領域を含む。
【0052】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号22に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号23に記載されたアミノ酸配列を含み、或いは、第1の抗原結合領域は配列番号23に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号22に記載されたアミノ酸配列を含み、それによってSTARはEGFRに特異的に結合する。
【0053】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号44に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号45に記載されたアミノ酸配列を含み、或いは、第1の抗原結合領域は配列番号45に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号44に記載されたアミノ酸配列を含み、それによってSTARはCD19に特異的に結合する。
【0054】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号46に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号47に記載されたアミノ酸配列を含み、或いは、第1の抗原結合領域は配列番号47に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号46に記載されたアミノ酸配列を含み、それによってSTARはCD20に特異的に結合する。
【0055】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号48に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号49に記載されたアミノ酸配列を含み、或いは、第1の抗原結合領域は配列番号49に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号48に記載されたアミノ酸配列を含み、それによってSTARはCD22に特異的に結合する。
【0056】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号24に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号25に記載されたアミノ酸配列を含み、或いは、第1の抗原結合領域は配列番号25に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号24に記載されたアミノ酸配列を含み、それによってSTARはGPC3に特異的に結合する。
【0057】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号28に記載された重鎖CDR1、配列番号29に記載された重鎖CDR2、及び配列番号30に記載された重鎖CDR3を含み、第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は、配列番号31に記載された軽鎖CDR1、配列番号32に記載された軽鎖CDR2、及び配列番号33に記載された軽鎖CDR3を含み、又は、第1の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は、配列番号31に記載の軽鎖CDR1、配列番号32に記載の軽鎖CDR2、及び配列番号33に記載の軽鎖CDR3を含み、第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含み、第2の抗原結合領域は、配列番号28に記載された重鎖CDR1、配列番号29に記載された重鎖CDR2、及び配列番号30に記載された重鎖CDR3を含み、それによってSTARはCD19に特異的に結合する。
【0058】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は、配列番号26に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は、配列番号27に記載されたアミノ酸配列を含み、又は或いは、第1の抗原結合領域は配列番号27に記載されたアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号26に記載されたアミノ酸配列を含み、それによってSTARはCD19に特異的に結合する。
【0059】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する単鎖抗体(scFvなど)又は単一ドメイン抗体(ラクダ抗体など)を含む。一部の実施形態では、第2の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する単鎖抗体(scFvなど)又は単一ドメイン抗体(ラクダ抗体など)を含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、同一の標的抗原に結合する。一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、同一の標的抗原の異なる領域(異なるエピトープなど)に結合する。一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、異なる標的抗原に結合する。例えば、一部の例示的な実施形態では、2つの抗原結合領域は、それぞれCD19及びCD20、又はそれぞれCD19及びCD22、又はそれぞれCD38及びBCMA、又はそれぞれPDL1及びEGFRに結合することができる。
【0060】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号22に記載されたアミノ酸配列及び配列番号23に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、EGFRに特異的に結合する。
【0061】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号44に記載されたアミノ酸配列及び配列番号45に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する。
【0062】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号46に記載されたアミノ酸配列及び配列番号47に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD20に特異的に結合する。
【0063】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号48に記載されたアミノ酸配列及び配列番号49に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD22に特異的に結合する。
【0064】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号24に記載されたアミノ酸配列及び配列番号25に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、GPC3に特異的に結合する。
【0065】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号28に記載された重鎖CDR1、配列番号29に記載された重鎖CDR2、及び配列番号30に記載された重鎖CDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号31に記載された軽鎖CDR1、配列番号32に記載された軽鎖CDR2、及び配列番号33に記載された軽鎖CDR3を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する。
【0066】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号26に記載されたアミノ酸配列及び配列番号27に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する。
【0067】
別の態様では、本発明は、α鎖及びβ鎖を含み、α鎖が第1の抗原結合領域及び第1の定常領域を含み、β鎖が第2の抗原結合領域及び第2の定常領域を含む、合成T細胞受容体抗原受容体(STAR)を提供し、
ここで第1の定常領域は、天然のT細胞受容体のα鎖定常領域又は本明細書に開示される天然のT細胞受容体のα鎖定常領域のバリアントであり、第2の定常領域は、天然のT細胞受容体のβ鎖定常領域又は本明細書に開示される天然のT細胞受容体のβ鎖定常領域のバリアントであり、
第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、異なる標的抗原又は同一の標的抗原の異なる領域に特異的に結合する。
【0068】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する単鎖抗体(scFvなど)又は単一ドメイン抗体(ラクダ抗体など)を含む。
【0069】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号22に記載されたアミノ酸配列及び配列番号23に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、EGFRに特異的に結合する。
【0070】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号44に記載されたアミノ酸配列及び配列番号45に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する。
【0071】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号46に記載されたアミノ酸配列及び配列番号47に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD20に特異的に結合する。
【0072】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号48に記載されたアミノ酸配列及び配列番号49に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD22に特異的に結合する。
【0073】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号24に記載されたアミノ酸配列及び配列番号25に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、GPC3に特異的に結合する。
【0074】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号28に記載された重鎖CDR1、配列番号29に記載された重鎖CDR2、及び配列番号30に記載された重鎖CDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号31に記載された軽鎖CDR1、配列番号32に記載された軽鎖CDR2、及び配列番号33に記載された軽鎖CDR3を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する。
【0075】
一部の実施形態では、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域に含まれる単鎖抗体は、配列番号26に記載されたアミノ酸配列及び配列番号27に記載されたアミノ酸配列を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、CD19に特異的に結合する。
【0076】
一部の例示的な実施形態では、2つの抗原結合領域は、それぞれCD19及びCD20、又はそれぞれCD19及びCD22、又はそれぞれCD38及びBCMA、又はそれぞれPDL1及びEGFRに結合することができる。
【0077】
別の態様では、本発明は、本発明の合成T細胞受容体抗原受容体(STAR)のα鎖及び/又はβ鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0078】
一部の実施形態では、本ポリヌクレオチドは、1つのリーディングフレーム内に、i)α鎖をコードするヌクレオチド配列、ii)β鎖をコードするヌクレオチド配列、及びiii)i)とii)との間に位置する自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。α鎖をコードするヌクレオチド配列は、β鎖をコードするヌクレオチド配列の5’末端又は3’末端に位置していてもよい。
【0079】
本明細書で使用される「自己切断ペプチド」は、細胞内で自己切断を達成し得るペプチドを意味する。例えば、自己切断ペプチドは、細胞内でプロテアーゼによって認識されて特異的に切断されるように、プロテアーゼ認識部位を含むことができる。
【0080】
或いは、自己切断ペプチドは2Aポリペプチドであってもよい。2Aポリペプチドは、翻訳中に自己切断が起こるウイルス由来の短いペプチドのクラスである。2Aポリペプチドを使用して、同一のリーディングフレーム内で発現させようとする2つの異なる標的タンパク質を連結すると、2つの標的タンパク質はほぼ1:1の比で生成される。一般的に使用される2Aポリペプチドは、ブタテッショウウイルス-1由来のP2A、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス由来のT2A、ウマ鼻炎Aウイルス由来のE2A、及び口蹄疫ウイルス由来のF2Aであり得る。中でも、P2Aの開裂効率が最も高く、そのためP2Aが好ましい。これらの2Aポリペプチドの様々な機能的バリアントも当技術分野において公知であり、そのようなバリアントも本発明に使用することができる。
【0081】
別の態様では、本発明は、調節配列に作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0082】
本発明の「発現ベクター」は、直鎖状核酸セグメント、環状プラスミド及びウイルスベクターであってもよく、又は翻訳され得るRNA(mRNAなど)であってもよい。一部の好ましい実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターである。
【0083】
「調節配列」及び「調節エレメント」は互換的に使用され、コード配列の上流(5’非コード配列)、中間、又は下流(3’非コード配列)に位置して、関連するコード配列の転写、RNAのプロセシング若しくは安定性、又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。発現調節エレメントは、目的のヌクレオチド配列の転写、RNAのプロセシング若しくは安定性、又は翻訳を制御することができるヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、エンハンサー及びポリアデニル化認識配列を含み得るが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、調節エレメント(例えば、限定されないが、プロモーター配列、転写終結配列など)がヌクレオチド配列の転写が転写調節エレメントによって制御及び調節されるように、核酸配列(例えば、コード配列又はオープンリーディングフレーム)に連結されていることを意味する。調節エレメント領域を核酸分子に作動可能に連結するための手法は、当技術分野において公知である。
【0085】
別の態様では、本発明は、治療用T細胞を調製する方法であって、T細胞において本発明の合成T細胞受容体抗原受容体(STAR)を発現させるステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、本発明のポリヌクレオチド又は本発明の発現ベクターをT細胞に導入するステップを含む。
【0086】
別の態様では、本発明は、本発明の合成T細胞受容体抗原受容体(STAR)を含むか、又は本発明の方法によって得られる、治療用T細胞を提供する。
【0087】
本発明のT細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍を含む多数の非限定的な供給源から、様々な非限定的な方法によって得ることができる。一部の実施形態では、細胞は、健康なドナー又はがんと診断された患者に由来し得る。一部の実施形態では、細胞は、異なる表現型特性を示す細胞の混合集団の一部であり得る。例えば、T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、続いて特異的抗体による活性化及び増殖を実施することによって得ることができる。
【0088】
本発明の諸態様の一部の実施形態において、T細胞は、対象の自己細胞に由来する。本明細書で使用する場合、「自家」とは、対象を治療するために使用される細胞、細胞株、又は細胞集団が、対象に由来することを指す。一部の実施形態では、T細胞は異種細胞に由来し、例えば、対象のヒト白血球抗原(HLA)と適合するドナーに由来する。標準的なスキームを使用して、ドナー由来の細胞を非アロ反応性細胞に転換し、必要に応じて細胞を複製して、1人又は複数の患者に投与し得る細胞を生成することができる。
【0089】
別の態様では、本発明は、本発明の治療用T細胞及び薬学的に許容できる担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0090】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容できる担体」は、生理的に適合性である任意及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(注射又は注入などによる)に好適である。
【0091】
別の態様では、本発明は、対象におけるがんなどの疾患の治療のための医薬の製造における、本発明の治療用T細胞又は本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0092】
本明細書で使用する場合、「対象」は、本発明の細胞、方法、又は医薬組成物によって治療することができる、がんなどの疾患に罹患しているか、又は罹患しやすい生物を指す。非限定的な例としては、ヒト、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、シカ、及び他の非哺乳動物が挙げられる。好ましい一実施形態では、対象はヒトである。
【0093】
別の態様では、本発明は、対象におけるがんなどの疾患を治療する方法であって、本発明の治療用T細胞又は本発明の医薬組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0094】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」又は「治療有効用量」又は「有効量」は、対象への投与後に治療効果を生じさせるのに少なくとも十分である物質、化合物、材料又は細胞の量を指す。したがって、それは、疾患又は状態の症状の予防、治癒、改善、停止又は部分的な停止のために必要な量である。例えば、本発明の細胞又は医薬組成物の「有効量」は、好ましくは、疾患の症状の重症度の低下、疾患の無症候期の頻度及び期間の増加、又は疾患によって引き起こされる障害若しくは能力障害の予防をもたらす。例えば、腫瘍の治療に関して、本発明の細胞又は医薬組成物の「有効量」は、好ましくは、治療を受けていない対象と比較して、腫瘍細胞増殖又は腫瘍増殖を、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%阻害する。腫瘍増殖を阻害する能力は、ヒト腫瘍に対する治療効果を予測するために使用し得る動物モデル系において評価することができる。或いは、腫瘍細胞増殖を阻害する能力を試験することによってそれを評価することもでき、これは当業者に周知のアッセイによってin vitroで測定することができる。
【0095】
本発明の医薬組成物における細胞の実際の投与量レベルは、患者に毒性を及ぼすことなく、特定の患者、組成物、及び投与様式について、所望の治療応答を達成するのに有効な量の細胞が得られるように変化させることができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康状態及び病歴、並びに医療技術分野で周知の同様の要因を含む、種々の薬物動態学的因子に依存すると考えられる。
【0096】
本発明による治療用T細胞又は医薬組成物又は医薬の投与は、注射、注入、植え込み又は移植を含む、任意の便利な方法で実施することができる。本明細書に記載の細胞又は組成物の投与は、静脈内、リンパ内、皮内、腫瘍内、髄内、筋肉内、又は腹腔内投与によることができる。一実施形態では、本発明の細胞又は組成物は、好ましくは静脈内注射によって投与することができる。
【0097】
本発明の様々な態様の実施形態では、がんは、肺がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、黒色腫、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、肝臓がん、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部がん、神経膠腫、胃がん、上咽頭がん、咽喉がん、子宮頸がん、子宮体部腫瘍、骨肉腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、前立腺がん、子宮がん、肛門がん、精巣がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性又は急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、及び慢性リンパ性白血病を含む)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓又は尿管がん、腎盂腎がん、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、及びアスベスト誘発がんを含む環境誘発がん、並びにこれらのがんの組合せからなる群から選択される。
【実施例】
【0098】
実施例1.STAR及びその変異体の定常領域ドメインの設計
1.1 STARのプロトタイプの設計
B細胞によって産生される分泌型抗体(Ab)又はB細胞受容体(BCR)は、遺伝子構造、タンパク質構造及び空間的配座の点で、T細胞受容体(TCR)との類似性が非常に大きい。抗体及びTCRは両方とも、可変領域及び定常領域から構成され、可変領域は抗原認識及び結合に役割を果たし、定常領域ドメインは構造的相互作用及びシグナル伝達に役割を果たす。TCRα及びβ鎖(又はTCRγ及びδ鎖)の可変領域を抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)に置き換えることにより、合成T細胞受容体及び抗体受容体(STAR)と呼ばれる合成キメラ分子を構築することができ、その構造は
図1に示されている。
【0099】
STAR分子は2本の鎖を有し、第1の鎖は、抗原認識配列(例えば、抗体の重鎖可変領域VH)をT細胞受容体α鎖(TCRα)の定常領域(Cα、ヒトTCRaC-WT、配列番号1)に融合させることによって得られ、第2の鎖は、抗原認識配列(例えば、抗体の軽鎖可変領域VL)をT細胞受容体β鎖(TCRβ)の定常領域(Oβ、ヒトTCRbC-WT、配列番号14)に融合させることによって得られる。構築物中の抗原認識ドメイン(VH、VL又はscFvなど)及び定常領域ドメイン(TCRα、β、γ及びδ定常領域)は、構成は異なるが類似の機能を有する複数の構築物を形成するように配置して組み合わせることができる。
【0100】
STAR分子の第1の鎖及び第2の鎖がT細胞において発現された後、STAR分子の第1の鎖及び第2の鎖は、小胞体において細胞の内因性CD3εδ、CD3γε及びCD3ζζ鎖と組み合わされて8サブユニットの複合体を形成することができ、この複合体は複雑な様式で細胞膜の表面に提示される。免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)は、TCR分子内にシグナル伝達効果を有する配列モチーフであり、その保存配列はYxxL/Vである。CD3ε、δ、γ及びε鎖の細胞内領域は1つのITAM配列を含有し、CD3ζ鎖の細胞内領域は3つのITAM配列を含有するため、完全なSTAR複合体はITAM配列を計10個含有する。STARの抗原認識配列が特異的抗原と組み合わされると、細胞内ITAM配列が徐々にリン酸化され、そのため下流シグナル経路が活性化されて、NF-κβ、NFAT、AP-1などの転写因子が活性化され、T細胞が誘発されて活性化され、エフェクター機能が生じる。
【0101】
1.2 マウス由来STARの設計
STARのプロトタイプの設計には、ヒト起源のTCRα/β鎖(又はTCRγ及びδ鎖)の定常領域配列を使用する。ヒト、霊長類及びマウスのTCRα/β鎖の定常領域配列(マウスTCRaC-WT、配列番号2及びマウスTCRbC-WT(配列番号15)(又はTCRγ及びδ鎖)は、機能保存性が高く、重要なアミノ酸配列が同一であるため、互いに置換可能である。
【0102】
ひとたびT細胞に形質導入されると、STAR分子は定常領域を介してT細胞の内因性TCRと誤対合を形成する。この誤対合の問題は、一方ではSTAR分子が適切に対合する効率を低下させ、その機能を損なうが、他方では誤対合が未知の特異性を生成する可能性を高め、安全性リスクを増大させる。この問題を解決するために、ヒトT細胞に移入された後のSTAR分子の機能が強化されるように、STAR分子の定常領域をマウス配列で置換した。ヒト及びマウスの配列のアラインメントは
図2に示されている。
【0103】
1.3 STARの定常領域のN末端における改変の設計
STAR分子の設計をさらに最適化するためにSTAR分子内の特定の配列を改変したが、1つの改変スキームは、STAR分子の定常領域のN末端を欠失させたことである。TCRα鎖定常領域のN末端の18アミノ酸を欠失させ(このマウス配列は配列番号3のDIQNPEPAVYQLKDPRSQである)(生成された定常領域配列はマウスTCRaC-N.DLT、配列番号4である)、TCRβ鎖定常領域のN末端の25アミノ酸を欠失させた(このマウス配列は配列番号16のDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKである)(生成された定常領域配列はマウスTCRbC-N.DLT、配列番号17である)。これらの2つの領域は定常領域のN末端に位置し、Ig様C1型ドメインには属さず、分子内ジスルフィド結合形成にも関与しないが、主としてヒンジとして機能し、異なる欠失スキームが設計されているSTARの機能に影響を及ぼす。本発明によれば、より良い効果を得るために、定常領域の特定の配列を再編成させた。再編成は、部分配列が欠失し、部分配列にヒト化変異が加えられたことを意味する。この領域改変は以下の利点を有する:第1に、ヒンジ領域の機能的最適化により、STAR及び内因性TCRの誤対合を減少させることができ、第2に、最適化されたSTAR分子のサイズが天然のTCRのサイズにより類似していることで、共刺激分子の結合、免疫シナプスの形成及び安定化、T細胞のその後のエフェクター機能が促進される。
【0104】
ヒト化変異の意義は、STAR分子における非ヒト配列を最小化すると同時に、STAR分子の機能を確保して、STAR-T細胞が臨床応用において受容体によって拒絶される可能性を最大限回避することである。具体的な転位スキームは以下の通りである。
【0105】
TCRα鎖定常領域のN末端での18アミノ酸(マウス配列はDIQNPEPAVYQLKDPRSQである)の再編成のためのスキーム:
図3は、マウスTCRα鎖定常領域のN末端での18アミノ酸のヒト配列とのアラインメントを示しており、UserSeq1はヒト配列であり、UserSeq2はマウス配列である。アミノ酸特性分析を通じて、マウス由来配列及びヒト由来配列はいずれもE6D、K13R、R16K、Q18S部位で同一の性質のアミノ酸置換に属し、P15S部位では極性アミノ酸に置換される非極性アミノ酸に属するため、この部位付近のタンパク質の性質は保存されず、機能に影響を及ぼさずに改変が可能であることが見出された。結論として、マウスTCRα鎖定常領域のN末端の位置1~14のアミノ酸配列は保持されてヒト化され、位置15~18のアミノ酸を欠失させて、マウスTCRaC-N.Rec-4、配列番号5が生成された。
【0106】
さらに、この領域のヒンジ効果を考慮し、すべての切詰めが効果に影響を及ぼす可能性があるため、マウスTCRα鎖定常領域のN末端の位置1~4のアミノ酸を欠失させ、位置5~18のアミノ酸をヒト化して、この改変をマウスTCRaC-N.Rec-1と呼び、生成された定常領域配列は配列番号34である;マウスTCRα鎖定常領域のN末端の位置1~8のアミノ酸を欠失させ、位置9~18のアミノ酸をヒト化して、この改変をマウスTCRaC-N.Rec-2と呼び、生成された定常領域配列は配列番号35である;及び、マウスTCRα鎖定常領域のN末端の位置1~12のアミノ酸を欠失させ、位置13~18のアミノ酸をヒト化して、生成された定常領域配列はマウスTCRaC-N.Rec-3、配列番号36であった。対照として、マウスTCRα鎖定常領域のN末端における位置1~18のアミノ酸のランダムな再編成も行ったところ、生成された定常領域配列はマウスTCRaC-N.rRec、配列番号40である。
【0107】
TCRβ鎖定常領域のN末端での25アミノ酸(マウス配列はDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKである)の再編成のスキーム:
図4は、マウスTCRβ鎖定常領域のN末端での25アミノ酸のヒト配列とのアラインメントを示しており、UserSeq1はヒト配列であり、UserSeq2はマウス配列である。アミノ酸特性分析を通じて、マウス由来配列及びヒト由来配列はR3KとL12V部位とでのみ同一特性のアミノ酸置換に属し、T6F、K8E、D11A、K17E、A21S、N22H、K23T部位ではすべて異なるアミノ酸特性の置換に属しており、その結果、これらの部位付近のタンパク質の特性は保存されず、機能に影響を及ぼさずに改変が可能であることが見出された。結論として、マウスTCRβ鎖定常領域のN末端の位置1~16のアミノ酸配列は保持されてヒト化され、位置17及び21~25のアミノ酸を欠失させて、生成された定常領域配列はマウスTCRbC-N.Rec-4(配列番号18)である。
【0108】
さらに、この領域のヒンジ効果を考慮し、すべての切詰めが効果に影響を及ぼす可能性があるため、マウスTCRβ鎖定常領域のN末端の位置1~6のアミノ酸を欠失させ、位置13~25のアミノ酸をヒト化したところ、生成された定常領域配列はマウスTCRbC-N.Rec-l、配列番号37である;マウスTCRβ鎖定常領域のN末端の位置1~12のアミノ酸も欠失させ、位置13~25のアミノ酸をヒト化したところ、生成された定常領域配列はマウスTCRbC-N.Rec-2、配列番号38である;及び、マウスTCRβ鎖定常領域のN末端の位置1~18のアミノ酸も欠失させ、位置19~25のアミノ酸をヒト化したところ、生成された定常領域配列はマウスTCRbC-N.Rec-3、配列番号39である。対照として、マウスTCRβ鎖定常領域のN末端における位置1~25のアミノ酸のランダムな再編成も行ったところ、マウスTCRbC-N.rRec、配列番号41の定常領域配列が生成された。
【0109】
1.4 STARの定常領域のC末端の改変の設計
本発明では、マウスTCRα鎖定常領域のC末端の15アミノ酸を欠失させて、その結果、その定常領域配列はマウスTCRaC-C.DLT(配列番号42)である。
【0110】
本発明では、マウスTCRβ鎖定常領域のC末端の15アミノ酸を欠失させて、その結果、その定常領域配列はマウスTCRbC-C.DLT(配列番号43)である。
【0111】
1.5 分子間ジスルフィド結合を導入するSTARのシステイン点変異の設計
STAR分子の設計をさらに最適化するために、STAR分子の特定の配列を改変し、1つの改変スキームは、STAR分子の2つの鎖間の対合を強化して内因性TCRとの誤対合を減少させる目的で分子間ジスルフィド結合を導入するために、STAR分子にシステイン点変異を実施することであった。具体的なスキームを以下に示す。
【0112】
TCRα鎖定常領域において、位置48のトレオニンTをシステインCに変異させ(生成された定常領域配列は、ヒトTCRaC-Cys、配列番号6及びマウスTCRaC-Cys、配列番号7である)、TCRβ鎖定常領域において位置56のセリンSをシステインCに変異させた(生成された定常領域配列は、ヒトTCRbC-Cys、配列番号19及びマウスTCRbC-Cys、配列番号20である)。新たに追加された2つのシステインはSTARの2つの鎖の間にジスルフィド結合を形成すると考えられ、STARの2つの鎖と内因性TCR鎖との間の誤対合は減少し、STAR分子がより安定な複合体を形成するのを助け、ひいてはより良好な機能性が得られた。
【0113】
1.6 STARの膜貫通領域における疎水性アミノ酸置換の設計
STAR分子の設計をさらに最適化するために、本発明は、STAR分子内の特定の配列を改変する。1つの改変スキームは、STAR分子の安定性を高め、STAR分子がより長く機能するのを助けるために、STAR分子の膜貫通領域において疎水性アミノ酸置換を実施することである。具体的なスキームは以下の通りである。
【0114】
TCRα鎖定常領域の膜貫通領域の111~119のアミノ酸領域において3つのアミノ酸部位を変異させ、位置112のセリンSはロイシンLに変化させ、位置114のメチオニンMをイソロイシンIに変化させ、位置115のグリシンGをピリミジンVに変化させた。この領域の全アミノ酸配列はLSVMGLRILからLLVIVLRILに変化し、この改変はマウスTCRaC-TM9と呼ばれ、生成された定常領域配列は配列番号9である。この設計は、膜貫通領域の疎水性を高め、TCR膜貫通領域によって保有される正電荷によって引き起こされる不安定性を打ち消し、その結果、STAR分子が細胞膜上により安定に存在し、それ故により良い機能を得ることができる。
【0115】
1.7 N末端改変、システイン改変及び膜貫通領域改変の組合せ
本発明者らは、上述のN末端改変、システイン改変及び膜貫通領域改変を組み合わせて、マウスTCRaC-Cys-N.Rec-1(配列番号11)、マウスTCRaC-TM9-N.Rec-1(配列番号12)、マウスTCRaC-Cys-TM9(配列番号10)、マウスTCRaC-Cys-TM9-N.Rec-1(配列番号13)、及びマウスTCRbC-Cys-N.Rec-1(配列番号21)を設計した。
【0116】
1.8 STARの可変領域及び定常領域の交換配置及び組合せ
STAR分子は、可変領域ドメイン及び定常領域ドメインという2つの部分に分けることができる。可変領域ドメインは、抗原認識能力を有するアミノ酸配列からなり、一般に、以下の分子クラスで構成される:抗体軽鎖可変領域、抗体重鎖可変領域、単鎖抗体(scFv)、リガンド受容体結合領域、ナノボディなど。定常領域ドメインは、TCR定常領域、又はCD3サブユニットと統合する能力を有する関連配列からなり、典型的には、TCRα、β、γ及びδ鎖の定常領域を含む。
【0117】
STAR構築物における抗原認識ドメイン及び定常領域ドメインは、構成は異なるが類似の機能を有する種々の構築物を形成するように配置して組み合わせることができる。下の表に、考えられる配置及び組合せのいくつかを示す。
【表1】
【0118】
実施例2.STARの抗原認識ドメインの設計
1)標的選択
STARの標的選択は、主として遺伝子発現のバンクによって達成され、一般に、好適なSTAR標的の発現レベルは、通常の細胞と比較して、疾患又は関連細胞上で概ね高い発現又は特異的発現を有する。好適な標的が決定された後、標的を認識するための抗原認識ドメインは、一般に抗体、SCFV、VHH又は抗原に対応する受容体などである。重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、アルパカ単鎖抗体(VHH)、並びに抗体の受容体及びリガンドは、マウス、アルパカ、配列決定又は公表された配列の免疫処置によって得ることができる。得られたマウス由来又はアルパカ配列は、一般に、ヒト細胞における発現及び機能にとってより有益であるように、ヒト化及びコドン最適化を受ける必要がある。好適な配列が得られた後に、得られた配列をレンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターに連結し、ベクター構築が正しいか否かを配列決定法によって検出した後に、ウイルスのパッケージング及び感染を介してベクターを体細胞において発現させ、タグタンパク質RFP、GFP、MYC、HISなどを使用してSTARタンパク質の発現、膜ローディング、抗原結合などを検出する。有用な標的としては、GPC3、EGFR VIII、CD22、CD20、MSLN、GD2、LIRB4、ROR1、クローディン18.2、CD7、CD47及びCD24が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
2)標的細胞株及びツール細胞株の表
本発明では、STARの機能を説明するために複数の標的細胞株を使用し、標的細胞が遺伝子工学的手段を介してルシフェラーゼ遺伝子を得たことから、in vitro機能検出が容易になった。ルシフェラーゼは、細胞機能を研究するための一般的な物質であり、この酵素活性は系にルシフェラーゼ基質を添加することによって判定され、ルシフェラーゼ活性は標的遺伝子の発現、結合強度、細胞数などと密接に関連している。本発明では、ルシフェラーゼを安定に発現させるための標的細胞株を樹立して、標的細胞の量をルシフェラーゼの量によって示し、その結果、機能性細胞の死滅機能が示された。具体的な細胞は以下の通りであった:
【表2】
【0120】
3)抗原認識ドメイン(抗体、scFv、Fab、VHHなど)の選択
抗原認識ドメインは、抗原を認識する抗体、抗体の単鎖可変領域、可変領域、ナノボディ、抗原認識のための受容体などに由来し得る。STARの設計において、ウイルスはT細胞形質転換のための主要な経路であり、レンチウイルス又はレトロウイルスのパッケージングはパッケージングのサイズに関連するため、より小さい抗体認識単位が好まれ、例えば、抗体単鎖可変領域及びナノボディはサイズの点でより良い選択である。同一抗原を目標とする場合、従来の抗体は、先行技術として抗体認識ドメインを広くスクリーニングする方法の1つであるが、一方、ファージライブラリー、アフィニティー最適化、マウスハイブリドーマのスクリーニング、アルパカモノクローナル抗体のスクリーニング、ヒト化などによる完全ヒト化抗体ライブラリーの構築の手法によって、抗原を認識する全く新しい抗体が得られた。さらに、抗原を認識し得る特異的分子としての抗原の受容体は、抗原認識ドメインの主要な選択肢の1つである。
【0121】
実施例3.STAR及びその変異体のプラスミド構築
1)プラスミドの供給源
レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、タンパク質発現ベクター、ファージミド、レンチウイルスパッケージングプラスミド、レトロウイルスパッケージングプラスミドなどを含む、本発明に使用されるベクターはすべて、営利会社から購入されるか、又は営利会社によって合成され、ベクターの完全長配列が得られており、明確な酵素切断部位が公知である。
【0122】
2)断片の供給源
本発明に採用される遺伝子セグメントは、シグナルペプチド、抗体結合領域、ヒンジ領域、TCR定常領域、タグタンパク質などを含み、これらはすべて、営利会社によって合成された。対応する機能的配列は、プライマー合成PCR様式で1つ又は複数の標的断片を連結することによって得られた。
【0123】
3)プラスミド構築及び配列決定方法
本方法に使用したレンチウイルスベクターはpHAGE-EF1a-GFPであり、pHAGR-EF1A-WPRE-AMPベクターは、制限エンドヌクレアーゼNot I/Cla Iを介して得られ、断片遺伝子は合成及びPCR法を介して得られ、完全なベクターは、Gibsson/NEBuilder及び他の組換え酵素の作用の下での相同組換え法を介して得られた。レトロウイルスベクターRVKM-CMV-GFPから制限酵素Xho I/BamH Iによってベクター断片が得られ、一方、挿入断片遺伝子は合成及びPCR法によって得て、ベクター及び断片を相同組換え法によって連結した。原核生物発現ベクターはpET-28aベクターとし、使用する制限エンドヌクレアーゼ部位はXhoI及びNcolとし、真核生物発現ベクターはPVRC8400とし、使用する制限エンドヌクレアーゼ部位はXhoI及びXbaIとして、プライマーをヒト抗原遺伝子に従って設計し、制限エンドヌクレアーゼ消化部位をプライマーの2つの末端に付加し、抗原細胞外セグメント及びCセグメントの切り詰められたhisタグを、標的細胞ウェル遺伝子から増幅させて、その後の精製に使用した。プライマーは付着末端PCRを使用して、酵素消化産物の付着末端のセンス鎖及びアンチセンス鎖に従ってそれぞれ設計し、プライマーをそれぞれ、酵素消化後にベクターとの一段階組換え連結に供されることになるPCRに供し、連結産物の5μLを形質転換のための連結後に50μLのDH5αコンピテント細胞に添加し、37℃インキュベーター中で転置して12~16時間培養した。
【0124】
4)プラスミド抽出方法
プラスミド抽出のためにアルカリ溶解法を採用し、プラスミド抽出の後に、260nm光吸収によりプラスミド濃度を検出した。一次配列決定結果が正しいプラスミドの形質転換を行って、抽出に供せられるモノクライン(monocline)を選択する必要があり、プラスミドが正しいか否かは酵素消化によって同定された。
【0125】
プラスミドpHAGE-EF1A-IRES-RFPを上記の方法によって得た。定常領域は、TCRa/bC-WT(TCRaC-WT及びTCRbC-WTを含む)、TCRa/bC-N.DLT(TCRaC-N.DLT及びTCRbC-N.DLTを含む)、TCRa/bC-C.DLT(TCRaC-C.DLT及びTCRbC-CDLTを含む)、TCRa/bC-N.Rec-1(TCRaC-N.Rec-1及びTCRbC-N.Rec-1を含む)、TCRa/bC-N.Rec-2(TCRaC-N.Rec-2及びTCRbC-N.Rec-2を含む)、TCRa/bC-N.Rec-3(TCRaC-N.Rec-3及びTCRbC-N.Rec-3を含む)、TCRa/bC-N.Rec-4(TCRaC-N.Rec-4及びTCRbC-N.Rec-4を含む)、TCRa/bC-N.rRec(TCRaC-N.rRec及びTCRbC-N.rRecを含む)、TCRa/bC-Cys(TCRaC-Cys及びTCRbC-Cysを含む)、TCRa/bC-TM9(TCRaC-TM9及びTCRbC-WTを含む)、TCRa/bC-Cys-N.Rec-1(TCRaC-Cys-N-Rec-1及びTCRbC-Cys-N-Rec-1を含む)、TCRa/bC-TM9-N.Rec-1(TCRaC-TM9-N.Rec-1及びTCRbC-N.Rec-1を含む)、TCRa/bC-Cys-TM9(TCRaC-Cys-TM9及びTCRbC-Cysを含む)、TCRa/bC-Cys-TM9-N.Rec-1(TCRaC-Cys-TM9-N.Rec-1及びTCRbC-Cys-N.Rec-1を含む)の様々なpHAGE-EF1A-Cetux-VL-TCRaC-P2A-VH-TCRbC-IRES-RFP及びpHAGE-EF1A-GC33-VL-TCRaC-P2A-VH-TCRbC-IRES-RFPプラスミドである;異なる標的について、TCR定常領域はすべてpHAGE-EF1A-334-VL-TCRbC-P2A-VH-TCRaC-IRES-RFP、pHAGE-EF1A-2C6-VL-(G4S)3-VH-TCRbC-P2A-FMC63-VL-(G4S)3-VH-TCRaC-IRES-RFP、pHAGE-EF1A-M971-VL-(G4S)3-VH-TCRbC-P2A-334-VL-(G4S)3-VH-TCRaC-IRES-RFP及び他のプラスミドである。
【0126】
実施例4.ツールプラスミド及び細胞株の構築
1)プラスミドpHAGE-ルシフェラーゼ-GFPの構築
レンチウイルスベクターとしてのpHAGEは、標的遺伝子を標的細胞ゲノムに安定に挿入することができ、安定な細胞株を構築するための重要な方法である。ルシフェラーゼは触媒活性を有する酵素であり、基質を触媒して化学的自己発光を発生させることができ、標的細胞がルシフェラーゼを安定に発現して基質を添加した後に、標的細胞の数を示すことができるため、標的細胞に対する機能性細胞の影響が反映される。PHAGE-EF1Aベクターは制限酵素Not I/Cla I制限酵素切断部位を保有しており、この2つの酵素を使用することによってベクターを切断し、NCBIからルシフェラーゼ及びGFP配列を入手して、営利会社であるRuibiotechにより断片を合成させ、Overlap PCR法を使用してルシフェラーゼ遺伝子及びGFP遺伝子を組み合わせた後に、相同組換え法を使用することによってルシフェラーゼ-GFP断片をpHAGEベクター中に連結させ、EF1A及びWPREでそれぞれ順方向及び逆方向プライマーを設計し、配列決定を行って、ベクター構築が成功したか否かを判定した。
【0127】
2)ルシフェラーゼを有する標的細胞株の作製(細胞株の表)
ルシフェラーゼ及びGFPを使用したレンチウイルスベクターの構築に成功した後、レンチウイルスをLentix-293Tによってパッケージングし、レンチウイルス溶液をPEG8000濃縮法によって濃縮し、勾配希釈法を使用してウイルス力価を測定し、続いて標的細胞を感染させたが、これには以下の表の細胞株が含まれるが、これらに限定されない:
【表3】
【0128】
感染72時間後に蛍光顕微鏡でGFP陽性細胞が存在するか否かを観察し、続いてフローソーターでGFP陽性細胞を選別し、モノクローンを選択し、ライブラリーを構築して貯蔵した。一方、ルシフェラーゼ基質及び標的細胞の共培養を実施して、ルシフェラーゼの発現及び発現量を検出した。
【0129】
3)TCRa/bノックアウトJurkat細胞株の構築
TCRの構造及び配列特性に基づいて、α鎖及びβ鎖の定常領域にガイド配列を設計し、TCRα-β-Jurkat細胞株を構築した。TCRのα鎖及びβ鎖の定常領域エクソン配列をそれぞれNCBIで入手し、α鎖及びβ鎖の定常領域エクソン1配列を、ガイド配列を設計するためにtools.genome-engineering.orgのウェブサイトに提出して、その結果に従ってオリゴ配列を合成した。続いて、sgRNA-LentiCRISPRレンチウイルスベクターを構築し、CRISPRレンチウイルスベクターをBsmBI制限酵素で消化して、フィルター配列を除去し、連結末端を露出させて、自己連結を減少させるためにプラスミドを37℃で1時間アルカリホスファターゼで処理した。酵素消化に供した系をゲル回収のためアガロースゲル電気泳動に供したところ、標的断片のプラスミド骨格は約11500bpであり、一方、切断されたフィルターバンドは-2000bpの位置に存在した;合成されたガイド配列のオリゴ単鎖をin vitroでT4リガーゼ及びT4 PNKを使用することによって処理し、2本鎖にアニーリングさせて、連結のために末端にリン酸基を付加した;アニールした2本鎖ガイド配列を水で200倍に希釈して、LentiCRISPRと連結させてBsmBI酵素消化に供し、Stbl3大腸菌(Escherichia coli)への形質転換を行って、プラスミドをウイルスコーティング感染のために抽出した。α鎖のガイド配列はLentiCRISPR-puroにリンクし、β鎖のガイド配列はLentiCRISPR-BSDにリンクしていた。sgRNA-LentiCRISPRレンチウイルスのパッケージング及び濃縮は、以下のステップを含む:あらかじめ10cm皿にHEK-293Tを播種し、細胞が80%~90%に増殖した時点でトランスフェクション系を調製し、トランスフェクション系をHEK-293Tに添加し、細胞を37℃インキュベーターに戻して培養し、時間を0時間として記録する;トランスフェクション後12時間で、新鮮な10%FBS-DMEMに交換する;トランスフェクションの48時間後及び72時間後にウイルスを収集する;ウイルス含有培地の遠心分離及び濾過を行い、PEG8000を添加して均一に混合し、4℃で12時間以上静置し、3500rpmで30分間遠心分離する;上清を廃棄し、好適な量の培地で再懸濁沈殿を行う;-80℃での凍結保存を実施するか、又は直接使用を行う。Jurkat T細胞の感染、薬物死滅スクリーニング、及びモノクローナル細胞株の同定には、Jurkat T細胞を12ウェル又は24ウェルのプレートに接種するステップを含めた;細胞密度は大きすぎてはならない;α鎖及びβ鎖のsgRNA-LentiCRISPRウイルスを同時に適量添加し、ポリブレン(合計容積に応じて1:1000で添加)を添加して均一に混合した;1000rpmでの遠心感染を実施し、32℃の遠心分離を90分間実施し、細胞を取り出して37℃のインキュベーターに入れ、時間を0時間として記録した;10~12時間後に溶液を交換した;48時間後に、ピューロマイシン及びブラスチシジンを適切な最終濃度で添加したところ、薬物死滅の48時間後に、非感染対照群の細胞はすべて死滅した。生存細胞を吸引除去し、遠心分離後に完全培地で培養してTCRα-β-Jurkat細胞ライブラリーを得た;TCRα-β-Jurkat細胞ライブラリーの単一細胞をフロー型Ariaを使用して96ウェルプレートに分取し、培養を2週間行い、増殖した単一細胞を吸引して、拡大培養を行った;TCRα鎖及びTCRβ鎖のそれぞれの抗体を使用してモノクローナル細胞株を同定し、この2つの鎖が欠損している細胞株を増幅して、内因性TCRがノックアウトされたJurkat T細胞株を得た。
【0130】
実施例5.T細胞への形質導入のためのウイルス系の樹立
1)レンチウイルス系及びパッケージング方法(異なる世代)
Lentix-293T細胞を、5×105/mLに従って10cm培養皿に接種し、37℃で5% CO2インキュベーター中で培養し、細胞密度が約80%に達した時点でトランスフェクトした(顕微鏡下で観察)。3つのプラスミドを500uLの無血清DMEMと、PMD2.G:PSPAX:伝達プラスミドの比を1:2:3として十分に混合した。54uLのPEI-maxを500uLの無血清DMEMと十分に混合し、室温で5分間放置した(プラスミドに対するPEI-Maxの体積対質量比は3:1であった)。プラスミド混合溶液にPEI-max混合溶液をゆっくりと加え、均一になるようにブロー及び撹拌を少し行って、室温で15分間放置した。最終的な混合溶液を培地にゆっくりと添加して十分に均一に混合した後、混合溶液をインキュベーターに戻して12~16時間連続培養し、6% FBS DMEM培地に移して連続培養して、48時間及び72時間のウイルス溶液を採取した。
【0131】
2)ウイルス力価測定方法
Jurkat-C5細胞を5×105/mLに従って平底96ウェルプレートに接種し、10% FBSを含有する100uLの1640培地及び0.2uLの1000×ポリブレンを各ウェルに添加した。ウイルスを希釈する場合には、1640完全培地を使用することによって10倍希釈を実施し、ウイルスがウイルス原液である場合には第1のウェルのウイルス量は100uLとし、ウイルスが濃縮液である場合には第1のウェルのウイルス量は1uLとした;希釈した細胞を100uL/ウェルでウイルスウェルに添加して混合し、32℃、1500rpmで90分間の遠心分離を実施し、5% CO2インキュベーター中で37℃、72時間の培養を行った。96ウェル平底プレート上の細胞を丸底96ウェルプレート上に吸引し、4℃、1800rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄した。200uLの1×PBSを添加した後、4℃、1800rpmで5分間の遠心分離を実施し、上清を廃棄した。4%組織固定液を200uL添加し、暗所での保存を実施して、フローサイトメーターへのローディングを実施した。フローサイトメーターを使用することによって感染効率を測定し、力価を計算する場合には感染率2%~30%のウェルを選択し、計算式は力価(TU/mL)=1.5×104×陽性率/ウイルス体積(uL)×1000とした。
【0132】
以下のプラスミドのウイルスpHAGE-EF1A-IRES-RFPを、上記の方法によってパッケージングした;定常領域は、TCRa/bC-WT(TCRaC-WT及びTCRbC-WTを含む)、TCRa/bC-N.DLT(TCRaC-N.DLT及びTCRbC-N.DLTを含む)、TCRa/bC-C.DLT(TCRaC-C.DLT及びTCRbC-CDLTを含む)、TCRa/bC-N.Rec-1(TCRaC-N.Rec-1及びTCRbC-N.Rec-1を含む)、TCRa/bC-N.Rec-2(TCRaC-N.Rec-2及びTCRbC-N.Rec-2を含む)、TCRa/bC-N.Rec-3(TCRaC-N.Rec-3及びTCRbC-N.Rec-3を含む)、TCRa/bC-N.Rec-4(TCRaC-N.Rec-4及びTCRbC-N.Rec-4を含む)、TCRa/bC-N.rRec(TCRaC-N.rRec及びTCRbC-N.rRecを含む)、TCRa/bC-Cys(TCRaC-Cys及びTCRbC-Cysを含む)、TCRa/bC-TM9(TCRaC-TM9及びTCRbC-WTを含む)、TCRa/bC-Cys-N.Rec-1(TCRaC-Cys-N.Rec-1及びTCRbC-Cys-N.Rec-1を含む)、TCRa/bC-TM9-N.Rec-1(TCRaC-TM9-N.Rec-1及びTCRbC-N.Rec-1を含む)、TCRa/bC-Cys-TM9(TCRaC-Cys-TM9及びTCRbC-Cysを含む)及びTCRa/bC-Cys-TM9-N.Rec-1(TCRaC-Cys-TM9-N.Rec-1及びTCRbC-Cys-N.Rec-1を含む)の様々なpHAGE-EF1A-Cetux-VL-TCRaC-P2A-VH-TCRbC-IRES-RFP及びpHAGE-EF1A-GC33-VL-TCRaC-P2A-VH-TCRbC-IRES-RFPプラスミドとした;異なる標的について、TCR定常領域はすべて、TCRa/bC-Cys-TM9-N.Rec-1及び他のプラスミドのpHAGE-EF1A-334-VL-TCRbC-P2A-VH-TCRaC-IRES-RFP、pHAGE-EF1A-2C6-VL-(G4S)3-VH-TCRbC-P2A-FMC63-VL-(G4S)3-VH-TCRaC-IRES-RFP及びpHAGE-EF1A-M971-VL-(G4S)3-VH-TCRbC-P2A-334-VL-(G4S)3-VH-TCRaC-IRES-RFPpHAGE-EF1A-334-VL-TCRbC-P2Aとした。
【0133】
実施例6.T細胞の培養及び感染方法の樹立
1)Jurkat T細胞株の培養方法
Jurkat T細胞株を、10% FBSを含有するRPMI1640培地で培養した。培養密度は3×105/ml、最大でも3×106/mlを超えないこととし、継代は1日~2日毎に行い、細胞を計数し、必要な量の細胞を採取して、密度を調整するために培地を補充して、細胞をCO2培養ボックスに入れて培養した。
【0134】
2)Jurkat T細胞株の感染方法
本方法は、細胞を計数し、遠心分離及び液体交換のために1×106/mlの細胞を採取し、10% FBSを含有する1 mlのRPMI1640培地を使用して再懸濁し、24ウェルプレートに添加し、好適な量のウイルス液を添加し、1500rpmで90分間遠心分離し、CO2インキュベーター中で培養するというステップを含む。感染の12時間後に、液体を10% FBSを含有する新鮮なRPMI1640培地で完全に交換し、陽性率を72時間後に検出した。
【0135】
3)ヒト初代T細胞の培養方法
初代T細胞はFicoll分離法により入手し、10% FBS及び100 IU/ml IL-2を含むX-VIVO培地中で培養し、CD3及びレトロネクチンr-フィブロネクチン(最終濃度5ug/ml)をプレコートしたプレートに添加し、初期培養密度は1×106/mlとした。その後の培養密度は5×105/ml、最大でも3×106/mlを超えないこととし、継代は1日~2日毎に行った。
【0136】
4)ヒト初代T細胞の感染方法
初代T細胞を48時間培養した後、ウイルス液を添加し、MOI=20として1500rpmで90分間の遠心分離を実施し、細胞をCO2インキュベーターに入れて培養した。感染の24時間後に、10% FBS及び100 IU/ml IL-2を含有するX-VIVO培地を補充し、十分な移行を行い、感染効率を72時間後にタグタンパク質又は抗体を介して検出した。
【0137】
5)感染効率の検出方法
感染の72時間後、細胞に均等にブローを行って計数し、遠心分離のために5×105/mlを採取して、上清を廃棄し、染色溶液をPBS+2% FBS+2mM EDTAとし、対応する抗体をインキュベーションのために添加し、インキュベーションを30分間実施し、続いて洗浄のためにPBSを2回添加し、検出のためローディングを実施した。
【0138】
実施例7.T細胞におけるSTAR及びその変異体の発現検出方法
遺伝子形質転換によるT細胞形質転換過程において、標的遺伝子の発現、膜ローディング、及び細胞表面での分布はT細胞の機能に影響を及ぼすため、蛍光タンパク質を介してウイルス感染効率を検出し、STARのN末端にmyc抗体を連結させることによって、フロー抗体を介してSTARの膜ローディング効率を検出した。STARの構造はTCRに由来するため、STARが内因性TCRと誤対合するかどうかは無傷STARの発現量に影響し、誤対合効率はRFP陽性比とSTAR myc陽性比とを比較することによって評価した。
【0139】
1)STARの膜ローディング効率の検出
構築したpHAGE-EF1A-myc-STAR-IRES-RFPプラスミドをLentix-293Tによるウイルスパッケージングに供し、ウイルス濃度及び力価検出を行い、続いてJurkatC5及び初代T細胞を感染させ、感染の72時間後に感染細胞を収集し、FITC-抗myc抗体及びAPC-抗mTCR-β抗体で染色を行い、フローサイトメーター(BD Fortessa)を使用してRFP/FITC/APC蛍光チャネルを検出した。FITC又はAPCが明らかな陽性細胞集団を有する場合には、STARの膜ローディング発現が可能であり、FITC及びAPCの両方が発現しない場合には、STARは膜ローディングを実現しないことが示された。
【0140】
2)STARと内因性TCRとの誤対合の確率の評価
構築されたpHAGE-EF1A-myc-STAR-IRES-RFPプラスミドをLentix-293Tによるウイルスパッケージングに供し、ウイルス濃度及び力価検出を実施し、続いてJurkat及び初代T細胞を感染させ、感染の72時間後に感染細胞を収集し、FITC-抗myc抗体及びAPC-抗-mTCR-β抗体を使用することによって染色を行い、フローサイトメーター(BD Fortessa f4)を使用することによってフローRFP/FITC/APC蛍光チャネルを検出した。RFP陽性率とFITC又はAPC陽性率との間に差が検出された。
【0141】
実施例8.T細胞におけるSTAR及びその変異体のin vitroレベルの機能的検出方法
1)T細胞と標的細胞とのin vitro共培養方法
T細胞はT細胞株Jurkat C5、Jurkatを含み、初代細胞株は懸濁細胞であり、標的細胞は異なる抗原及び細胞株に従って懸濁細胞及び接着細胞に分けることができ、RAJIなどの懸濁標的細胞をT細胞と共培養し、RAJIなどの懸濁標的細胞及びT細胞を共培養する場合には、対応する数の細胞を同時に採取し、細胞を遠心培養用の標的細胞培地と均一に混合した。また、細胞が接着性の標的細胞である場合には、あらかじめ1日前に標的細胞を接種する必要があるとし、続いて一定数のT細胞を添加したが、本方法は、パッケージング及び精製されたSTARウイルスを使用することによってT細胞株又は初代T細胞を感染させ、共培養の1日前に感染効率に関するフロー型検出を実施し、機能細胞と標的細胞との比を一般に10:1、5:1及び1:1の比を使用して決定し、感染効率に応じてT細胞の総数を計算するステップを含み、ここで標的細胞の使用量は一般に4E5/ウェル(24ウェルプレート)とした。
【0142】
2)標的抗原によるT細胞の刺激方法
適用の標的は一般に細胞表面タンパク質であり、抗原は、T細胞の機能を検出するためにT細胞の活性化のために直接使用することができ、典型的には、5μg/mlの抗原(1×コーティング緩衝液希釈、一例として24ウェルプレートを採用する場合)の300マイクロリットルを一晩ウェルプレートをコーティングするために使用し、続いて抗原を廃棄し、陽性T細胞の1E6/ウェルを添加し、T細胞の機能を検出するために6、12及び24時間の遠心活性化の後にT細胞を収集した。
【0143】
3)T細胞の分泌サイトカインの分析:ELISA
T細胞は活性化の過程で多数のサイトカイン(一般的な例としては、TNF-α、IFN-γ及びIL-2が挙げられる)を放出して、T細胞が標的細胞を死滅させること、又はT細胞自身の増殖を促進することの一助とする。標的細胞又は抗原によって刺激された後に、T細胞を収集して遠心分離し、上清を採取した。TNF-α、IFN-γ及びIL-2 ELISAキットには、それぞれヒトIL-2 Uncoated ELISA、ヒトTNF-α Uncoated ELISA及びヒトIFN-γ Uncoated ELISA(物品番号88-7025、88-7346、88-7316)を使用した。具体的なステップは以下の通りである:10×コーティング緩衝液をddH2Oで1Xに希釈し、コーティング抗体(250×)を添加して均一に混合し、続いて混合物を1ウェル当たり100μlで96ウェルプレート(ELISA専用)に添加した。4℃で一晩静置するために保存フィルムで密封した後、96ウェルプレートを1×PBST(洗浄緩衝液とも呼ばれ、0.05% Tween20が1×PBSに添加されている)を各回1ウェル当たり260μl用いて3回洗浄した;5×ELISA/ELISPOT希釈剤をddH2Oで1×に希釈した;産物を1ウェル当たり200μlで96ウェルプレートに添加した;96ウェルプレートを室温で1時間静置した。96ウェルプレートをPBSTで1回洗浄し、希釈して標準曲線(その範囲はそれぞれ2~250、4~500、4~500であった)を得た;試料を1×希釈液で20~50倍に希釈した。試料及び標準曲線に1ウェル当たり100μl及び2つのマルチポアを添加した;常温で2時間インキュベートした後、96ウェルプレートをPBSTで3回洗浄した;1×希釈剤で希釈した検出抗体を1時間のインキュベーションのために添加し、続いて96ウェルプレートをPBSTで3回洗浄した;続いて、1×希釈剤で希釈したHRPを添加して30分間インキュベートし、続いて96ウェルプレートを6回洗浄した;現像用にTMBを添加し、現像時間は15分を超えないこととした;現像を停止するために2N H2SO4を添加した;450nmでの光吸収を行うことによって光吸収を検出した。
【0144】
4)T細胞の死滅機能の検証:ルシフェラーゼ検出
24時間の共培養の後、細胞懸濁液をわずかに均一にブローし、各ウェルから150μLの細胞懸濁液を採取して、白色の96ウェルプレートに添加した;各ウェルから2つのマルチポアを選択した;ルシフェラーゼ基質(promega)を添加した。振盪(低速)を、10分間のコインキュベーションのために実施した;続いて、ゲインを100に固定したマルチモードリーダーを使用して化学ルミネセンス値を検出した。細胞死滅の計算:死滅効率=100%-(エフェクター細胞-標的化細胞ウェルの値/対照細胞-標的化細胞ウェルの値)。
【0145】
実施例9.動物腫瘍モデルのレベルでT細胞におけるSTAR受容体及びその変異体の機能を検出する方法
1)実験動物モデル
この実験にはモデルとしてNSG免疫不全マウスを使用した。このマウスは、NOD-Prkdcem26Il2rgem26/Njuの遺伝型を有し、T細胞、B細胞及びNK細胞が欠損している;このマウスはマクロファージ及び樹状細胞にも欠陥がある。NSGマウスは、最も完全な免疫不全を示すマウス系統に属し、移植腫瘍及びT細胞に対する拒絶反応を示さず、T細胞治療の前臨床研究に広く応用されている。この実験では、6~8週齢の雌性NSGマウスを使用した。各バッチの実験におけるマウス間の体重差を2g以内に制御した。マウスは、病原体汚染を防ぐために、特定病原体が除去された(SPF)クリーングレードバリア下にて個別に換気されたケージ内で飼育され、通常の食餌及びわずかに酸性のpHの飲料水を与えられた。
【0146】
2)腫瘍モデルの樹立
本発明はSTAR-T細胞の機能を検証するために様々な腫瘍モデルを使用しており、その結果、STAR-T細胞の効果の普遍性が検証された。血液腫瘍モデルの構築において、この実験には異種移植のためにヒトバーキットリンパ腫細胞株のRaji細胞を使用した。Raji細胞は、レンチウイルスベクターを介してルシフェラーゼ遺伝子を発現させるための細胞株であり、ルシフェリンの化学発光及び生体イメージングの様式で、マウスにおけるRaji腫瘍の発生及び変化をリアルタイムでモニターする。本モデルでは、種々の用量(一般に約1~3×106個の細胞)のRaji-ルシフェラーゼ細胞を、6~8週齢の雌NSGマウスに尾静脈再注入によって接種した。3日後にマウスにルシフェリンカリウム塩溶液を腹腔内注射し、体内の腫瘍細胞の蛍光シグナルを生体イメージング様式で検出した。Raji細胞はマウスの中で急速に増殖し、血液を介して全身に分布しており、その結果、臓器に感染して固形腫瘍を形成し、マウスの体重減少などの症状を引き起こす確率が一定程度ある;治療的処置を行わない場合、Raji腫瘍負荷は約30~40日後にマウスを死亡させる。
【0147】
固形腫瘍異種移植モデルの構築において、本実験では、ヒト類表皮癌A431細胞株、ヒト非小細胞肺がんA549細胞株、ヒト肝臓がんHuh-7及びHepG2、ヒト神経膠腫U87及びU251細胞株、並びにヒト乳がんMDA-MB-231細胞株を含む様々な腫瘍型を選択した。これらの細胞はレンチウイルスベクターを介してルシフェラーゼ遺伝子を発現し、ルシフェリンの化学発光と生体イメージング様式でマウスにおける腫瘍の発生と変化をリアルタイムでモニターした。本モデルでは、種々の用量(悪性度及び腫瘍の異なる特徴に応じて2×105~3×106個の範囲)の細胞をマトリゲルと混合した後、皮下注射によりマウスに混合物を皮下接種した。3日後にマウスにルシフェリンカリウム塩溶液を腹腔内注射し、体内の腫瘍細胞の蛍光シグナルを生体イメージング様式で検出した。皮下接種された固形腫瘍は一般に侵襲性を有さず、移行が困難であり、通常は皮下に高密度の腫瘍塊を形成する。各腫瘍塊の長さ、幅及び高さをノギスで測定し、腫瘍の進行を各腫瘍のサイズによってさらにモニターした。治療的処置を行わない場合、これらの固形腫瘍細胞によって形成された腫瘍塊は、約20日~40日後に動物福祉倫理基準の仕様に達し、すなわち、各腫瘍塊の最大サイズが15mmを超え、各腫瘍塊のサイズが1500mm3を超え、皮下腫瘍領域に発熱が生じるか、又は腫瘍がマウスの活動及び摂食に有意に影響し、その場合には動物を安楽死させるべきである。
【0148】
3)動物実験の操作方法
実験動物としてのマウスに対する操作方法は、捕獲、固定、番号付け、麻酔、剃毛、投与、採血、殺処理及び解剖を含み、この実験において使用される番号付け方法は、足指クリップ法、耳標法及び毛色マーキング法を含む。この実験において、使用される麻酔方法は、イソフルランの吸入麻酔及びアベルチン又はペントバルビタールの注射麻酔を含む。剃毛方法は、マウスの局所部位をハサミ又はカミソリで剃毛することを含む。投与方法は、腹腔内注射、尾静脈注射、皮下注射、眼窩静脈叢注射、頭蓋内注射などを含む。採血方法は、眼窩採血、眼球摘出による採血、尾静脈採血などを含む。殺処理方法は、頸部牽引による殺処理、炭酸ガスによる殺処理などを含む。すべての操作は、実験動物の研究及び使用の計画(動物プロトコール)の承認後に実施した。
【0149】
4)腫瘍増殖のモニタリング手段
この実験は、主として2つの方法で腫瘍増殖を検出する。第1のものはin vivo蛍光イメージング法であり、ルシフェラーゼ遺伝子を有する腫瘍細胞をコロニー形成のために動物に注入した。マウスにルシフェリンカリウム塩溶液を腹腔内注射して、基質が酵素の作用下で放射する特定の波長の光を、体内の腫瘍細胞の蛍光シグナルを、生体イメージング機器に装着された敏感なCCD装置で検出した。さらに、専用ソフトウェアを使用して、蛍光シグナルを定量的に分析し、熱画像を描出して、腫瘍の増殖を直感的且つ定量的に反映させることもできる。第2の方法は皮下腫瘍のサイズを測定することであり、各腫瘍の長さ、幅及び高さをノギスにより測定し、各体積値を特別な計算式によって明らかにする。一般的な計算式は、体積=長さ×幅×高さ、体積=3×長さ×幅×高さなどである。
【0150】
5)動物におけるT細胞の生存及び増殖の検出方法
体内でのT細胞の生存性及び増殖条件は、T細胞の最終的な抗腫瘍効果に直接関連する。動物におけるT細胞の生存性及び増殖条件を検出するために、この実験ではマウスから定期的に血液を採取し、末梢血中のSTAR-T細胞の比率、細胞状態及び細胞分類を分析した。具体的な操作は以下の通りである:約1週間毎にマウスをイソフルランで麻酔し、約100μlの量で眼窩血の採取を行った。血液試料を抗凝固、血漿採取、赤血球溶解などに供した後に、残りの細胞をフロー染色に供し、CD4/CD8比、及びCCR7、CD45RA、PD-1、LAG-3、TIM-3などの分子を検出して、T細胞サブセットの分析及び細胞状態の分析を行った。一方、フローサイトメーター及びデジタルPCRによる計数法により、各マウスの末梢血中のSTAR-T細胞の絶対量値を求めた。さらに、実験の最後にマウスを解剖して、マウスの他の免疫器官におけるT細胞の比率を検出した。
【0151】
6)動物におけるT細胞の安全性に関する評価方法
STAR-T細胞の細胞毒性及び安全性を評価するために、細胞が実験動物に副作用を起こしたか否かを検出することができる。マウスの行動状態を観察すること、マウスの病理学的分析を実施すること、分析のためにマウスの重要臓器をスライスすること、及び他の様式により、再注入したT細胞が有意な細胞毒性を有するか否かを評価することができる。一方、マウスの非腫瘍組織におけるT細胞浸潤分析により、T細胞が非腫瘍組織に対してオフターゲット死滅効果を有するか否かをさらに判定することが可能である。さらに、各マウスの血中サイトカイン(IL-2、IFN-γ、TNFα又はIL-6など)のレベルを検出することによって、T細胞が全身性サイトカインストームを引き起こすか否かを判定することができる。
【0152】
7)T細胞の腫瘍浸潤能力の評価方法
T細胞が腫瘍に浸潤する能力は、固形腫瘍に対処する上で中心となる能力である。T細胞の浸潤能力を検出するために、腫瘍組織を分離し、消化して、単一細胞を得るために細かく粉砕し、腫瘍組織中のT細胞の割合をフロー染色により検出した。一方、腫瘍細胞、腫瘍間質細胞及び免疫細胞を、密度勾配遠心法(Percoll勾配及びFicoll勾配など)によって腫瘍懸濁液からさらに分離して、精製された腫瘍浸潤T細胞を得た;精製された腫瘍浸潤T細胞の特性(ケモカイン受容体発現及びT細胞消耗度を含む)を、シークエンシング法などを使用することによって詳細に分析した。
【0153】
実施例10.抗EGFR STAR受容体の構築及び定常領域の改変の同定
10.1.抗EGFR STAR受容体の構築
(1)EGFRを標的とする抗体の配列に関する決定
抗体重鎖可変領域(抗EGFR Cetux-VH、配列番号22)及び抗体軽鎖可変領域(抗EGFR Cetux-VL、配列番号23)により、センツキシマブ(略してCetux)が選択された。コドンを最適化して配列を合成した。
【0154】
(2)EGFRを標的とするSTARの設計
STARは2つのポリペプチド鎖を含有した;抗EGFR Cetux-VLをマウスTCRbC-WT鎖に融合させて、第1のポリペプチド断片を形成させた;抗EGFR Cetux-VHをマウスTCRaC-WT鎖に融合させて、第2のポリペプチド断片を形成させた。この2つの鎖には両方ともGM-CSFシグナルペプチドを使用した。このSTARの遺伝子配列は、フューリン-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位でポリペプチドセグメントを介して連結された;2本のポリペプチド鎖は共に転写され、翻訳され、タンパク質として発現されると考えられる;続いてこのタンパク質はフューリン及びp2Aに対応するプロテアーゼによって切断されて、2つの独立したタンパク質鎖を形成する。T細胞の2つのタンパク質鎖及び内因性CD3サブユニット(ε、δ、γ、ζ)は複合体を形成し、GM-CSFシグナルペプチドの誘導下でこの複合体は細胞膜に移行して提示された(
図1に示す通り)。
【0155】
(3)遺伝子断片のクローニング及び集合
遺伝子合成及びクローニングの様式を通して、4つの断片「抗EGFR Cetux-VL」、「マウスTCRbC-WT」、「抗EGFR Cetux-VH」及び「マウスTCRaC-WT」が得られた。各プライマー対は、前方及び次の塩基に相同な25bp塩基を有していた;4つの断片をGibson Assembly法によってさらに組み換えて、レンチウイルスベクターpHAGEに連結させ、それによってSTARが得られた。
【0156】
(4)ベクターの形質転換及び配列決定
Gibson Assemblyの産物をDH5α株に形質転換導入し、アンピシリンを含有するLBプレート上で一晩増殖させた。モノクローナル細菌を配列決定のために選択し、配列決定用プライマーにはpHAGEベクター上のseq-pHAGE-F及びseq-pHAGE-Rプライマーを選択した。
【0157】
(5)プラスミド抽出
正しいことが配列決定された細菌をLB液体培地に接種して一晩培養した。プラスミドの抽出には、エンドトキシン除去機能を有するキットを使用した。プラスミドの濃度をNanodropで測定したところ、プラスミドの最終濃度は約1000ng/ulであり、A260/A280値は1.8よりも大きかった。このようにして、マウスTCRa/bC-WTの定常領域を有し、EGFRを標的とする、STARプラスミドpHAGE-EF1A-Cetux-VL-TCRaC-P2A-VH-TCRbC-IRES-RFPが得られた。
【0158】
同様に、TCRa/bC-N.DLT(TCRaC-N.DLT及びTCRbC-N.DLTを含有する)、TCRa/bC-C.DLT(TCRaC-C.DLT及びTCRbC-CDLTを含有する)、TCRa/bC-N.Rec-1(TCRaC-N.Rec-1及びTCRbC-N.Rec-1を含有する)、TCRa/bC-N.Rec-2(TCRaC-N.Rec-2及びTCRbC-N.Rec-2を含有する)、TCRa/bC-N.Rec-3(TCRaC-N.Rec-3及びTCRbC-N.Rec-3を含有する)、TCRa/bC-N.Rec-4(TCRaC-N.Rec-4及びTCRbC-N.Rec-4を含有する)、TCRa/bC-N.rRec(TCRaC-N.rRec及びTCRbC-N.rRecを含有する)、TCRa/bC-Cys(TCRaC-Cys及びTCRbC-Cysを含有する)、TCRa/bC-TM9(TCRaC-TM9及びTCRbC-WTを含有する)、TCRa/bC-Cys-N.Rec-1(TCRaC-Cys-N.Rec-1及びTCRbC-Cys-N.Rec-1を含有する)、TCRa/bC-TM9-N.Rec-1(TCRaC-TM9-N.Rec-1及びTCRbC-N.Rec-1を含有する)、TCRa/bC-Cys-TM9(TCRaC- Cys-TM9及びTCRbC-Cysを含有する)、TCRa/bC-Cys-TM9-N.Rec-1(TCRaC-Cys-TM9-N.Rec-1及びTCRbC-Cys-N.Rec-1を含有する)である定常領域を有する、様々なプラスミドpHAGE-EF1A-Cetux-VL-TCRaC-P2A-VH-TCRbC-IRES-RFPを構築した。
【0159】
上記のプラスミドをウイルスにパッケージングし、細胞をウイルスに感染させて、STARの膜形成効率を検出した。結果を
図6に示す。
10.2.抗EGFR STAR受容体の定常領域のN末端改変及び再編成変異体の機能
1)STARの定常領域のN末端の特定の配列を欠失させて、STARの機能を失わせた。
【0160】
phge-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスTCRa/bC-N.DLT STAR及びマウスTCRa/bC-WT STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用することによってウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとの比は3:2:1であった;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿におけるプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3であり、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果は、マウスTCRa/bC-N.DLT STARのウイルスパッケージング効率がマウスTCRa/bC-WT STARのものよりも優れることが示されている。Jurkat C5及び初代T細胞を同じMOI(感染多重度)に供したところ、感染効率に有意差がないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスTCRa/bC-N.DLTの膜を形成することができないことが見出された。標的細胞A431、B16-tEGFR、A549との共培養から、マウスTCRa/bC-N.DLTは死滅能力を有しておらず、EGFR抗原による刺激後にサイトカインIL-2、TNFα、及びIFNγを分泌しないことが見出された。
【0161】
2)STARの定常領域のC末端の再編成により、STARの機能が失われた。
phge-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスTCRa/bC-C.DLT STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比を3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿におけるプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3であり、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。Jurkat C5及び初代T細胞を感染した;初代T細胞におけるウエスタンブロット法、RFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスTCRa/bC-C.DLTはタンパク質発現を有するが、膜形成を受けないことが見出された;このことは、マウスTCRa/bC-C.DLTから欠失した配列がSTARの機能にとって鍵であり、STARの再編成はランダムではないことを物語る。
【0162】
3)STARの定常領域のN末端の再編成は極めて重要な役割を果たした。
phge-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスTCRa/bC-N.Rec-1 STAR、マウスTCRa/bC-N.Rec-2 STAR、マウスTCRa/bC-N.Rec-3 STAR、マウスTCRa/bC-N.Rec-4 STAR、及びマウスTCRa/bC-WT STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比を3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果は、ウイルス力価に明らかな差はないことが示されている。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、感染効率に有意差はないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスTCRa/bC-WT STARと比較して、マウスTCRa/bC-N.Rec-1は内因性TCRとのミスマッチの点でミスマッチ比が低いことが見出された。標的細胞A431、B16-tEGFR及びA549との共培養から、マウスTCRa/bC-N.Rec-1は、マウスTCRa/bC-WT STARよりも強い標的細胞死滅能力を有することが見出された。配列分析では、マウスTCRa/bC-N.Rec-1が、マウスTCRa/bC-WT STARよりも配列のヒト起源においてより高度であることが示されている。免疫原性予測分析では、マウスTCRa/bC-N.RecがマウスTCRa/bC-WT STARよりも免疫原性が低いことが示されている。一方、マウスTCRa/bC-N.Rec-2 STAR、マウスTCRa/bC-N.Rec-3 STAR及びマウスTCRa/bC-N.Rec-4 STARの欠失は、STARの機能を失わせた。
4)STARの定常領域のN末端の再編成は配列特異性を有し、他の再編成様式は無効である。
【0163】
phge-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスTCRa/bC-N.Rec-1 STAR及びマウスTCRa/bC-N.rRec STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比を3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果は、ウイルス力価に明らかな差はないことが示された。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、感染効率に有意差はないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスTCRa/bC-N.Rec-1と比較して、マウスTCRa/bC-N.rRecは有意に増加したミスマッチ比を有することが見出された。標的細胞A431、B16-tEGFR及びA549との共培養から、マウスTCRa/bC-N.rRecの死滅機能はほぼ失われており、マウスTCRa/bC-N.Rec STARTの機能よりもはるかに不良であることが見出された。
【0164】
10.3.抗EGFR STAR受容体のシステイン点変異の変異体の機能
STAR受容体にシステイン点変異がある場合には、追加のジスルフィド結合が付加されて、複合体のマッチングを高めて安定化する効果を発揮することができる。phge-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスTCRa/bC-Cys STAR及びマウスTCRa/bC-WT STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドをpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比を3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果は、ウイルス力価に明らかな差はないことが示されている。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、感染効率に有意差はないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスTCRa/bC-WTと比較して、マウスTCRa/bC-Cysは内因性TCRとのミスマッチの点でミスマッチ比が有意に低下していることが見出された。標的細胞A431、B16-tEGFR及びA549との共培養から、マウスTCRa/bC-CysはマウスTCRa/bC-WTよりも強い標的細胞死滅能力を有することが見出された。マウスTCRa/bC-Cysは、EGFR抗原による刺激後のサイトカインIL-2、TNFα、IFNγの分泌レベルがより高かった。
【0165】
10.4.抗EGFR STAR受容体の膜貫通領域の特定部位での疎水性アミノ酸置換を実施する機能
STAR受容体の膜貫通領域の特定部位での疎水性アミノ酸置換は、重要な役割を果たす。STAR受容体にシステイン点変異がある場合には、追加的なジスルフィド結合が付加されて、複合体のマッチングを高めて安定化する効果を発揮することができる。phge-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスTCRa/bC-TM9 STAR及びマウスTCRa/bC-WT STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比は3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果は、ウイルス力価に明らかな差はないことが示されている。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、感染効率に有意差はないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスTCRa/bC-WTと比較して、マウスTCRa/bC-TM9は内因性TCRとのミスマッチの点でミスマッチ比が有意に低下していることが見出された。標的細胞A431、B16-tEGFR及びA549との共培養から、マウスTCRa/bC-TM9は、マウスTCRa/bC-WTよりも強い標的細胞死滅能力を有することが見出された。マウスTCRa/bC-Cysは、EGFR抗原による刺激後のサイトカインIL-2、TNFα、及びIFNγの分泌レベルがより高かった。
【0166】
10.5.抗EGFR STARの包括的変異体の機能
定常領域の改変戦略(N末端改変、Cys置換、膜貫通領域の疎水性改変)の3つの組合せ、対での組合せ、及び単一改変の効果を比較するために、phge-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、下表のすべてのSTARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比は3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、T細胞を同じMOIで感染させた後に、感染効率(すなわち、RFP陽性率)に有意差はないことが見出された。RFP及びEGFR-his-APC抗体染色から、対の変異組合せのミスマッチ比は単一変異戦略のものよりも有意に低いことが見出された。同じRFP陽性細胞の場合に、標的細胞A431、B16-htEGFR及びA549に対する、対の変異におけるSTAR-T細胞の死滅能力は単一変異戦略のものよりも有意に高かった;サイトカインIL-2、TNFα、IFNγの分泌レベルはさらに高い。しかし、3つの変異戦略を同時に組み合わせた場合には、最も低いミスマッチ比、同時での標的細胞に対するより強い死滅能力、及びサイトカインのより高い分泌レベルが示されている。全体の結果を
図6に示す。
【表4】
【0167】
実施例11.抗GPC3 STAR受容体の定常領域でのN末端改変、及び再編成変異体の機能
実施形態1における変異戦略に基づき、本発明は、定常領域の配列切詰め、再編成及びC末端再編成などの最適化ソリューションを実施した。GPC3については、抗体配列はGPC3を目標とするモノクローナル抗体GC33を選択した;抗体重鎖可変領域(抗GPC3 GC33-VH、配列番号25)及び抗体軽鎖可変領域(抗GPC3 GC33-VL、配列番号24)にphage-EF1A-IRES-RFPベクターを使用した;Gibsson Assemblyにより、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.DLT STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-C.DLT STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-1 STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-2 STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-3 STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-4 STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STARなどのベクターを組み換えて構築した。Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドをpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比は3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果を
図7に示す。
1)STARの定常領域のN末端での特定の配列の切詰めは、STARの機能を失わせた。
【0168】
結果は、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.DLT STAR及びマウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STARを示す。Jurkat C5及び初代T細胞を同じMOIに供したところ、感染効率に有意差がないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びGPC3-FITC染色から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.DLTの膜は形成されないことが見出された。標的細胞Huh-7とHepG2細胞との共培養から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.DLTは死滅能力を有していないことが見出された。
【0169】
2)STARの定常領域のC末端の再編成により、STARの機能が失われた。
Jurkat C5及び初代T細胞を感染させた;初代T細胞におけるRFP及びGPC3-FITC染色から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-C.DLTは膜形成を受けることができないことが見出された;このことは、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-C.DLTから欠失した配列がSTARの機能にとって鍵であり、STARの再編成はランダムではなかったことを物語っていた。標的細胞Huh-7とHepG2細胞との共培養から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-C.DLTは死滅機能を有していないことが見出された。
【0170】
3)STARの定常領域のN末端の再編成は極めて重要な役割を果たした。
Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、感染効率に有意差はないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-1と比較して、内因性TCRとのミスマッチの点でミスマッチ比が低いことが見出された。標的細胞Huh-7とHepG2細胞との共培養から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-1は、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STARよりも強い標的細胞死滅能力を有することが見出された。配列分析により、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-1が、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STARよりも配列のヒト起源においてより高度であることが示されている。免疫原性予測分析からは、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Recが、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STARよりも免疫原性が低いことが示されている。一方、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-2 STAR、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-3 STAR及びマウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-4 STARの欠失は、STARの機能を失わせた。
【0171】
4)STARの定常領域のN末端の再編成は配列特異性を有し、他の再編成様式は無効である。
初代T細胞におけるRFP及びEGFR-his-APC染色から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec-1と比較して、GC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.rRec、GC33 scFvは膜形成を受けることができないことが見出された。標的細胞Huh-7とHepG2細胞との共培養から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.rRecの死滅機能は失われており、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-N.Rec STARTの機能よりもはるかに不良であることが見出された。
【0172】
実施例12.抗GPC3 STAR受容体のシステイン点変異の変異体の機能
STAR受容体にシステイン点変異がある場合には、追加のジスルフィド結合が付加されて、複合体のマッチングを高めて安定化する効果を発揮することができる。phage-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-Cys STAR及びマウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比は3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果は、ウイルス力価に明らかな差はないことが示されている。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、感染効率に有意差はないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びGPC3-FITC染色から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WTと比較して、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-Cysは、内因性TCRとのミスマッチの点でミスマッチ比が有意に低下していることが見出された。標的細胞Huh-7とHepG2細胞との共培養から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-Cysは、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WTよりも強い標的細胞死滅能力を有することが見出された。
【0173】
実施例13.抗GPC3 STAR受容体の膜貫通領域の特定部位での疎水性アミノ酸置換を実施する機能
STAR受容体の膜貫通領域の特定部位での疎水性アミノ酸置換は、重要な役割を果たす。STAR受容体にシステイン点変異がある場合には、追加的なジスルフィド結合が付加されて、複合体のマッチングを高めて安定化する効果を発揮することができる。phage-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-TM9 STAR及びマウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WT STARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比は3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。結果は、ウイルス力価に明らかな差はないことが示されている。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、感染効率に有意差はないことが見出された。初代T細胞におけるRFP及びGPC3-FITCタンパク質染色から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WTと比較して、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-TM9は内因性TCRとのミスマッチの点でミスマッチ比が有意に低下していることが見出された。標的細胞Huh-7とHepG2細胞との共培養から、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-TM9は、マウスGC33-VH TCRa-GC33-VL TCRbC-WTよりも強い標的細胞死滅能力を有することが見出された。
【0174】
実施例14.抗GPC3 STARの包括的変異体の機能
改変戦略の3つの組合せ、対での組合せ、及び単一改変の効果を比較するために、phage-EF1A-IRES-RFPベクターを使用することによって、Gibsson Assemblyにより、以下の表のすべてのSTARベクターを組み換えて構築した;Lentix-293T細胞を使用してウイルスをパッケージングし、パッケージングプラスミドはpSPAX及びPMD2.Gとし、トランスファープラスミドとpSPAXとPMD2.Gとのパッケージング比は3:2:1とした;10cm培養皿のそれぞれに合計18μgのプラスミドが存在し、各培養皿のプラスミドとPEI-MAXとの比は1:3とし、すなわち54μLのPEIを使用した;トランスフェクションの12時間後に培地を交換し、48時間後及び72時間後にウイルス溶液を回収した;20000rpm、4℃で2時間の遠心分離の後、再懸濁のために無血清培地を使用した;ウイルスを100倍に濃縮して、ウイルス力価を検出した。Jurkat C5及び初代T細胞の感染から、T細胞を同じMOIで感染させた後に、感染効率(すなわち、RFP陽性率)に有意差はないことが見出された。RFP及びGPC3-FITCタンパク質染色から、対の変異組合せの膜形成効率は、単一変異戦略のものよりも有意に高いことが見出された。同じRFP陽性細胞の場合に、標的細胞Huh-7及びHepG2細胞に対する、対の変異におけるSTAR-T細胞の死滅能力は単一変異戦略のものよりも有意に高かった;しかし、3つの変異戦略を同時に組み合わせた場合には、最も低いミスマッチ率、同時での標的細胞に対するより強い死滅能力、及びサイトカインのより高い分泌レベルが示された。具体的な結果を
図7に示す。
【0175】
GPC3 GC33 STAR変異体を目標とする戦略を比較した。
【表5】
【0176】
実施例15.334-scFvをベースとする抗CD19 STARの包括的変異体の機能
本発明者は、CGMCC No.17095の保存番号を有するハイブリドーマ細胞(2019年1月21日に、China General Microbiological Culture Collection Center of Institute of Microbiology,Chinese Academy of Sciences with an address of No.3,Courtyard No.1,Beichen Western Road,Chaoyang district of Beijingに保存)から産生された、CD19を標的とする新規なモノクローナル抗体334を入手している。この抗体は、抗CD19 334 VL(配列番号27)及び抗CD19 334 VH(配列番号26)を含有し、抗CD19 334 VHは、配列番号28として示される重鎖CDR1、配列番号29として示される重鎖CDR2、及び配列番号30として示される重鎖CDR3を含有する。抗CD19 334 VLは、配列番号31として示される軽鎖CDR1、配列番号32として示される軽鎖CDR2、及び配列番号33として示される軽鎖CDR3を含有する。
【0177】
1)抗体334によるCD19の特異的認識
ELISA法を使用することによって、標的抗原CD19及び非標的抗原CD20に対する抗体334の認識能力を同定した;トランスフェクション試薬PEIを使用することによって、抗体334を発現するプラスミドを293T細胞に形質転換導入した;72時間後に細胞上清を採取し、ELISA法を使用することによって抗原-抗体の特異的結合能力を検出した。実験結果から、抗体334が標的抗原CD19に有意に特異的に結合し、非標的抗原CD20に対する結合能力を有していないことが示されている。
【0178】
CD19-334抗体がヒト細胞によって発現される抗原CD19を特異的に認識し得ることを確認するために、WB試験を使用して、ヒト化CD19抗体に対するCD19-334抗体の認識能力を検出した。
【0179】
2)CD19陽性タンパク質試料の調製
ヒトリンパ腫細胞株においてRaji細胞(CD19抗体に関して高度の陽性発現)を通常通りに培養した;90%の細胞が融合した後に、6cm培養皿の懸濁細胞を採取して遠心分離を行い、細胞沈殿物を1.5mLの遠心管に収集した。200μLの総タンパク質抽出溶解試薬(RIPA)を添加して十分に撹拌して均一に混合した後、氷上で15分間溶解を行わせた。4℃に予冷した低温冷却遠心機に遠心管を入れて、4℃、12000rpmで15分間遠心分離し、上清を収集した。5×ローディング緩衝液を添加して、100℃で5分間タンパク質を変性させた。試料を氷上で20分間予冷した後に遠心分離に供し、続いてWB電気泳動に供した(CD19陰性対照群の細胞としてのヒト直腸がん細胞株M62と共に)。
(2)WB電気泳動:4%スペーサーゲルを調製し、分離ゲルは10% SDS-PAGEランニングゲルとした。抽出したCD19陽性タンパク質試料の40μL及び抽出したCD19陰性タンパク質試料の40μLを各ウェルに添加した。電気泳動は80Vで20分間実施した。電圧を120Vに調整し、電気泳動を40~60分間行った。
(3)膜転写:半乾燥転写システムを使用して、標的タンパク質を0.45μmのPVDF膜に転写させた。膜転写条件は15V及び1時間とした。
(4)閉鎖:転写された後のPVDF膜を、閉鎖のために5%脱脂乳粉末中に置き、振盪器によって室温で1時間振盪した。
(5)一次抗体のインキュベーション:PVDF膜上の残留粉乳をPBSTで清浄に洗い流し、残留緩衝液を濾紙を使用することによって吸って乾燥させ、PVDF膜を、CD19抗体ハイブリドーマ上清(5~8mL)を含有する一次抗体インキュベーションボックスに入れた。インキュベーションは4℃で一晩行った。
(6)PBSTすすぎ洗い:5分間×3回。
(7)二次抗体のインキュベーション:PVDFを、HRPで標識した抗マウス(1:20000)モノクローナル抗体の中に入れた。室温で1時間インキュベーションを行った。
(8)PBSTすすぎ洗い:5分間×3回。
(9)ゲルイメージャーを使用して現像及び写真撮影を行った。
【0180】
実験結果は、抗体334が、ヒトリンパ腫細胞株におけるRaji細胞内のCD19タンパク質(標的バンドのサイズが95kD)を認識し得ることを示している。
【0181】
3)抗体334のKd値の検出
ヒトリンパ腫細胞株においてRaji細胞(CD19抗体に関して高度の陽性発現)を通常通りに培養した;90%の細胞が融合した後に、6cm培養皿の懸濁細胞を採取して遠心分離を行い、細胞沈殿物を1.5mL遠心管に収集した;細胞沈殿物をPBSで再懸濁させ、細胞密度を5×106個/mLに調整した。
【0182】
1ウェル当たり5×106個のRaji細胞を96ウェルプレートに添加した;抗体334を希釈して、375nM、187.5nM、30nM、3nM、0.3nM、0.03nM、0.003nM及び0nMに精製し、96ウェルプレート中のRaji細胞に添加して4℃で30分間のインキュベーションを行った;続いて、2000rpmで5分間の遠心分離を行い、上清を廃棄した;PBSを添加して細胞を1回洗浄した後に、ヤギ抗マウスAlexaFluor555蛍光二次抗体を添加して、Raji細胞を30分間インキュベートした。インキュベーションを4℃で30分間行い、遠心分離を2000rpmで5分間行い、上清を廃棄した;PBSを添加して細胞を1回洗浄した後に、200μLのPBSを添加して細胞を再懸濁させた;種々の濃度のCD19-334抗体の下でのRaji細胞の蛍光強度を、フローサイトメトリーを使用することによって検出した;GraphPadソフトウェアを使用することによって計算を行い、CD19-334抗体のKd値を得た。
【0183】
検出結果は、種々の濃度下でのRaji細胞の蛍光強度によってフィッティングされた結合曲線を示す;GraphPadソフトウェアによって算出されたCD19-334抗体のKd値は1.528±0.25nMであった。
【0184】
4)334-scFvをベースとする抗CD19 STARの包括的変異体
myc-Cys-N.Rec-1-TM9-STAR-334抗CD19 STAR構造を、pHAGE-IRES-RFPベクターをベースとして構築した。使用した抗体結合配列は抗CD19 334 VL(配列番号27)及び抗CD19 334 VH(配列番号26)であり、抗CD19 334 VHは、配列番号28として示される重鎖CDR1、配列番号29として示される重鎖CDR2、及び配列番号30として示される重鎖CDR3を含有する。抗CD19 334 VLは、配列番号31として示される軽鎖CDR1、配列番号32として示される軽鎖CDR2、及び配列番号33として示される軽鎖CDR3を含有する。ウイルスを第2世代パッケージングプラスミドによってパッケージングした後に、Jurkat C5細胞を感染させた。フローサイトメトリーの結果から、STARは正常な膜形成に供することができ、標的細胞Raji及び抗体CD19タンパク質に結合することによって、CD69及びCD25などの活性化分子の発現を促進し得ることが見出された。初代T細胞をウイルスに感染させた後に、T細胞を標的細胞Raji、Jeko-1などと共培養すると、明らかにT細胞がIL-2、TNF-α、及びIFNγを分泌するように刺激され、T細胞を標的細胞を死滅させるように誘導することができる。一方、T細胞はさらに免疫抑制分子PD1、TIM3、LAG3などを発現し、このことはT細胞が活性化されて殺細胞機能を発揮することを物語る。Raji細胞を有するNSGマウスにおいてリンパ腫モデルを樹立した。抗CD19 STAR T細胞を使用して担がんマウスに作用させた;続いて対照群と比較して、抗CD19 STAR T細胞は明らかに腫瘍を死滅させる効果を有する可能性がある。結果を
図8に示す。
【0185】
実施例16.CD19-CD20に対するFMC63-2C6 STARの包括的変異体の機能
STARの構造において、Cα及びCβはscFvのVH及びVLに連結させることができ、さらに異なるscFvに連結させることができる;したがって、これは二重標的又は単一標的での二重認識部位の態様において可能である。myc-Cys-N.Rec-1-TM9-STAR-抗CD19/CD20 STAR構造をpHAGE-IRES-RFPベクターをベースとして構築し、ここで標的にはCD19に対するFMC63モノクローナル抗体(FMC63 VH、配列番号44、FMC63 VL、配列番号45)及びCD20に対する2C6モノクローナル抗体(2C6 VH、配列番号46、2C6 VL、配列番号47)を選択した。myc-Cys-N.Rec-1-TM9-STAR-FMC63-2C6構造を構築した;ウイルスを第2世代パッケージングプラスミドによってパッケージングした後に、Jurkat C5細胞を感染させた。フローサイトメトリーの結果から、STARは正常な膜形成に供し得ることが見出された。初代T細胞をウイルスに感染させた後に、標的細胞Raji、Raji-CD19 KO及びRaji-CD20 KOをT細胞と共培養すると、明らかにT細胞がIL-2、TNF-α及びIFNγを分泌するように刺激され、T細胞を標的細胞を死滅させるように誘導することができ、このことは、FMC63-2C6 STARが2つの両方の標的に対して良好な死滅能力を有しており、2つの標的のうちの一方の喪失によって引き起こされる腫瘍の再発が臨床的に回避され得ることを物語る。腫瘍担持モデルを、90% Raji+5% Raji-CD19 KO+5% Raji-CD20 KO細胞を使用して、NSGマウスにおいて樹立した;FMC63-2C6 STAR細胞を使用して担がんマウスに作用させた後に、対照群と比較して、FMC63-2C6 STAR細胞は明らかに腫瘍を完全に除去した可能性があり、このことはFMC63-2C6 STAR細胞が両方の標的に対して死滅作用を有することをさらに証明している。結果を
図9に示す。
【0186】
実施例17.CD19-CD22に対する334-M971 STARの包括的変異体の機能
STARの構造において、Cα及びCβはscFvのVHとVLに連結させることができ、さらに異なるscFvに連結させることができる;したがって、これは二重標的又は単一標的での二重認識部位の態様において可能である。myc-Cys-N.Rec-1-TM9-STAR-抗CD19/CD22 STAR構造を、pHAGE-IRES-RFPベクターをベースとして構築し、ここで標的にはCD19に対する334モノクローナル抗体(334 VH、配列番号26、334 VL、配列番号27)及びCD22に対するM971モノクローナル抗体(M971 VH、配列番号48、2 M971 VL、配列番号49)を選択した。myc-Cys-N.Rec-1-TM9-STAR-334-M971構造を構築した;ウイルスを第2世代パッケージングプラスミドによってパッケージングした後に、Jurkat C5細胞を感染させた。フローサイトメトリーの結果から、STARは正常な膜形成に供し得ることが見出された。初代T細胞をウイルスに感染させた後に、標的細胞Raji、Raji-CD19 KO及びRaji-CD22 KOをT細胞と共培養すると、T細胞がIL-2、TNF-α及びIFNγを分泌するように明らかに刺激され、T細胞を標的細胞を死滅させるように誘導することができ、このことは、334-M971 STARが2つの両方の標的に対して良好な死滅能力を有しており、2つの標的のうちの一方の喪失によって引き起こされる腫瘍の再発が臨床的に回避され得ることを物語る。腫瘍担持モデルを、90% Raji+5% Raji-CD19 KO+5% Raji-CD22 KO細胞を使用してNSGマウスにおいて樹立した;334-M971 STAR細胞を使用して担がんマウスに作用させた後に、対照群と比較して、FMC63-2C6 STAR細胞は明らかに腫瘍を完全に除去した可能性があり、このことはFMC63-2C6 STAR細胞が両方の標的に対して死滅作用を有することをさらに証明している。結果を
図10に示す。
【0187】
配列表
配列番号1 ヒトT細胞受容体(ヒトTCRaC-WT)のα鎖の定常領域
DIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号2 マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域(マウスTCRaC-WT)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号3 マウスT細胞受容体のα鎖の定常領域のN末端から欠失した配列
DIQNPEPAVYQLKDPRSQ
配列番号4 N末端改変を含有するマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域(マウスTCRaC-N.DLT)
DSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号5 N末端改変を含有するマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域(マウスTCRaC-N.Rec-4)
DIQNPDPAVYQLRDDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号6 システイン置換を含有するヒトT細胞受容体のα鎖の定常領域(ヒトTCRaC-Cys)
DIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKCVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号7 システイン置換を含有するマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域(マウスTCRaC-Cys)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号8 疎水性アミノ酸置換を含有するマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域の膜貫通領域
LLVIVLRIL
配列番号9 疎水性アミノ酸置換を含有するマウスT細胞受容体のα鎖の定常領域(マウスTCRaC-TM9)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号10 マウスTCRaC-Cys-M9
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号11 マウスTCRaC-Cys-N.Rec-1
PDPAVYQLRDSKSSDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号12 マウスTCRaC-Cys-N.Rec-1
PDPAVYQLRDSKSSDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号13 マウスTCRaC-Cys-TM9-N.Rec-1
PDPAVYQLRDSKSSDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号14 ヒトT細胞受容体(ヒトTCRbC-WT)のβ鎖の定常領域
DLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSVSYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDF
配列番号15 マウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域(マウスTCRbC-WT)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号16 マウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域のN末端から欠失した配列
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQK
配列番号17 N末端欠失を含有するマウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域(マウスTCRbC-N.DLT)
ATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号18 N末端改変を含有するマウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域(マウスTCRbC-N-Rec-4)
DLKNVFPPEVAVFEPSAEIATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号19 システイン置換を含有するヒトT細胞受容体のβ鎖の定常領域(ヒトTCRbC-Cys)
DLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSVSYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDF
配列番号20 システイン置換を含有するマウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域(マウスTCRbC-Cys)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号21 N末端改変及びシステイン置換を含有するマウスT細胞受容体のβ鎖の定常領域(マウスTCRbC-Cys-N-Rec-1)
PPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号22 抗EGFR Cetux-VH
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSNDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSAASTKG
配列番号23 抗EGFR Cetux-VL
DILLTQSPVILSVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELKRTVA
配列番号24 抗GPC3 GC33 VL
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHSNRNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQNTHVPPTFGQGTKLEIKR
配列番号25 抗GPC3 GC33 VH
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYEMHWVRQAPGQGLEWMGALDPKTGDTAYSQKFKGRVTLTADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRFYSYTYWGQGTLVTVSS
配列番号26 抗CD19 334 VH
QVQLQQSGAELVRPGASVKLSCKALGFIFTDYEIHWVKQTPVHGLEWIGAFHPGSGGSAYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMELSSLTFEDSAVYHCTRQLGPDWGQGTLVTVS
配列番号27 抗CD19 334 VL
DVVMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLESDGKTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLRISRVEAEDLGVYYCWQGTQFPWTFGGGTKLEIK
配列番号28 抗CD19 334重鎖CDR1
GFIFTDYE
配列番号29 抗CD19 334重鎖CDR2
FHPGSGGS
配列番号30 抗CD19 334重鎖CDR3
TRQLGPD
配列番号31 抗CD19 334軽鎖CDR1
QSLLESDGKTY
配列番号32 抗CD19 334軽鎖CDR2
LVS
配列番号33 抗CD19 334軽鎖CDR3
WQGTQFPWT
配列番号34 TCRaC-N・Rec-1
PDPAVYQLRDSKSSDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号35 TCRaC-N・Rec-2
VYQLRDSKSSDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号36 TCRaC-N・Rec-3
RDSKSSDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号37 TCRbC-N・Rec-1
PPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号38 TCRbC-N・Rec-2
FEPSEAEISHTQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号39 TCRbC-N.Rec-3
EISHTQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号40 N末端に18アミノ酸のランダムな再編成を伴うマウスTCRaC-N.rRec
NQSVDPDEQLIPYRKAQPDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号41 N末端に25アミノ酸のランダムな再編成を伴うマウスTCRbC-N.rRec
PEKREKSVAPAVKKLNLITFQDSPNATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号42 マウスTCRのα鎖の定常領域のC末端に15アミノ酸の欠失を伴うマウスTCRaC-C.DLT
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLK
配列番号43 マウスTCRのβ鎖の定常領域のC末端に15アミノ酸の欠失を伴うマウスTCRbC-C.DLT
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVL
配列番号44 抗CD19 FMC63 VH
AVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFGDYTMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCTKDNQYGSGSTYGLGVWGQGTLVTVSS
配列番号45 抗CD19 FMC63 VL
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGGGTKVEIK
配列番号46 抗CD20 2C6 VH
AVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFGDYTMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCTKDNQYGSGSTYGLGVWGQGTLVTVSS
配列番号47 抗CD20 2C6 VL
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGGGTKVEIK
配列番号48 抗CD22 M971 VH
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNSAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCAREVTGDLEDAFDIWGQGTMVTVSS
配列番号49 抗CD22 M971 VL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTIWSYLNWYQQRPGKAPNLLIYAASSLQSGVPSRFSGRGSGTDFTLTISSLQAEDFATYYCQQSYSIPQTFGQGTKLEIK
【配列表】