(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】オリゴガラクツロン酸多糖、複合体及びその調製方法並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C08B 37/06 20060101AFI20250108BHJP
A61K 31/732 20060101ALI20250108BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20250108BHJP
A61K 36/734 20060101ALI20250108BHJP
A61K 36/725 20060101ALI20250108BHJP
A61K 36/75 20060101ALI20250108BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20250108BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20250108BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20250108BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20250108BHJP
【FI】
C08B37/06
A61K31/732
A61K36/48
A61K36/734
A61K36/725
A61K36/75
A23L29/231
A23L33/105
A61P35/00
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2023544454
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2022117713
(87)【国際公開番号】W WO2023036219
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】202111050134.0
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523277677
【氏名又は名称】シャンハイ・ケンショー・メディカル・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ヤンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ルー
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113633689(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113480676(CN,A)
【文献】特開2004-107295(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110652013(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112266941(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104211831(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレンジの皮を前処理して安定な水溶性ペクチンゲルを得る工程1と、
pHを12.0~13.0に制御しながら、80~100℃までマイクロ波で加熱する条件下で、前記安定な水溶性ペクチンゲルに水酸化ナトリウムを加えて、結合切断水溶性ペクチンゲルを形成するアルカリ加水分解-マイクロ波法による処理の工程2と、
前記結合切断水溶性ペクチンゲルに対して脱メトキシ基化処理を行い、粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルを得る脱メトキシ基化処理の工程3と、
孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を維持しながら高フラックスの抽出を保持し、カットオフ分子量が10
3~10
4である限外濾過膜を使用して高度抽出を行う限外濾過膜精製の工程4とを含
み、
前記工程3において、前記脱メトキシ基化処理は、具体的に、凍結・乾燥・濃縮を経て、粗製ペクチンの濃度が10~20g/Lとなるように調整し、NaOHを加えてpHを9~10に維持しながら、4℃で8~48時間反応させて脱メチル化を行い、その後に10%の氷酢酸を使用して酸性度を調整し、反応を終了させることにより行われる、ことを特徴とするオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【請求項2】
前記工程3の後に、前記粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルに対して粗抽出処理を行い、また粗抽出処理後のホモガラクツロン酸多糖の含有量が70%を超える場合には、酵素分解処理を行うが、ホモガラクツロン酸多糖の含有量が70%未満である場合には、酵母発酵処理を行い、
前記工程4の後に、減圧下での回転蒸発濃縮、低温下での乾燥処理がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【請求項3】
前記酵素分解処理には、まず、等電点法による脱タンパク質を行い、酢酸緩衝液のpH値を4.5に調整し、ペクチンの最終濃度が2~5wt%となるように調整し;そして、
酵素活性が32U/gのリアーゼ(P
L)、
酵素活性が4212U/gの特異的エンドポリガラクツロナーゼ(Endo-polygalacturonases,endo-PG,E.C.3.2.1.1
5)、
酵素活性が66.7U/gのペクチンエステラーゼ(PE、E.C.3.1.1.1
1)及びプロトペクチナーゼを含む固形化ペクチナーゼを加え、pHを3.0~6.0に制御し、45
℃で60~90分間維持し、
前記酵母発酵処理には、2wt%のスクロース溶液に酒醸造用活性乾酵母を加えて、均一に撹拌し、25~30℃で2~4時間置いたままで活性化させ;そして、1~5wt%の活性化させた酵母を濃度が2~5wt%のペクチン水溶液に加えて、30℃で24~48時間発酵させる、ことを特徴とする請求項2に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【請求項4】
前記オリゴガラクツロン酸多糖は、ガラクツロン酸の含有量が93~98%であり、エステル化度が12~14%である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【請求項5】
オリゴガラクツロン酸多糖610~710重量部、および
オウギ25~35重量部、炒りサンザシ5~25重量部、赤いナツメ5~25重量部およびチンピ6~20重量部を含むオリゴガラクツロン酸多糖の複合体であって、
前記オリゴガラクツロン酸多糖の分子量が3kDa~8kDaであ
り、
前記オリゴガラクツロン酸多糖は、ガラクツロン酸の含有量が93~98%であり、エステル化度が12~14%である、ことを特徴とするオリゴガラクツロン酸多糖の複合体。
【請求項6】
前記オウギ、
前記炒りサンザシ、
前記赤いナツメ、
前記チンピを前処理してから水に浸漬させた後、30~60分間煮詰め、ろ過することによりエキスペーストを得る工程と、
前記エキスペーストと
前記オリゴガラクツロン酸多糖とを混合して、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体を得る工程とを含む、ことを特徴とする請求項5に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体の調製方法。
【請求項7】
前記前処理は、順番に行われた洗浄、超音波粉砕、篩い分けを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記浸漬は、固液体積比が1:5~15であり、浸漬時間が20~60分である、ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項9】
前記煮詰め時間が30~
50分である、ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項10】
請求項5に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を有効成分として含有する慢性炎症関連疾患を治療するための医薬品
。
【請求項11】
請求項5に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を有効成分として含有する慢性炎症関連疾患を治療するための食品。
【請求項12】
請求項5に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を有効成分として含有する慢性炎症関連疾患を治療するためのヘルスケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月8日に中国国家知識産権局へ提出された、出願番号が202111050134.0であり、発明の名称が「ホモガラクツロナン多糖、複合体及びその調製方法並びにその使用」である中国特許出願に基づいた優先権を主張し、その内容全体が援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は多糖類の分野に関し、特にホモガラクツロナン多糖、複合体及びその調製方法並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
オリゴガラクツロン酸多糖(Homogalacturonan,HG)は、リンゴの滓、ヒマワリの花托(receptacle)、柑橘類の皮、レモンの皮などを原料として作製された「変性シトラスペクチン」(Modified citrus pectin,MCP)から抽出されたペクチン多糖であり、加水分解されて低エステル化されると、分子量がより小さくて分岐鎖がない繊維になる。その繊維は、化学成分が均一で溶けやすく、経口服用されやすい。
【0004】
低分子シトラスペクチン(LCP)は、米国サントレー社が柑橘類の皮を原料として製造した「変性シトラスペクチン」に相次ぐ次世代製品であり、化学成分が不安定な混合物であり、その分子量が10kDa~20kDaにわたり、エステル化度が10%~25%の範囲である。低分子シトラスペクチンLCPは、ラムガラクツロナンI(Rhamngalacturonan I,RGI)、ラムガラクツロナンII(Rhamngalacturonan II,RGII)、ホモガラクツロナン(Homogalacturonan,HG)およびキシロガラクツロナン(Xylogalacturonan,XG)、アラビナン(Arabinan)、アラビノガラクタンI、およびアラビノガラクタンIIなどの糖鎖を含む、さまざまな多糖類の混合物である。
【0005】
従来の文献には、ガレクチン(Galectin-3)が血液中の腫瘍細胞間の凝集、腫瘍細胞とマトリックスとの間の識別及び接着を直接媒介できることが報告された。また、Galectin-3は、さまざまな高転移性腫瘍細胞により高発現され、Galectin-3の高発現が原発腫瘍でも転移性腫瘍病変でも検出され、その発現の増加が腫瘍の増殖や転移と正の相関を示し、特定の腫瘍悪性腫瘍に対する診断マーカーとして使用される可能性があることが確認された。したがって、Galectin-3で媒介される接着・凝集作用を阻害またはブロックすることによって、癌転移の治療・制御を図る可能性があると考えられている。
【0006】
MCPは、Galectin-3の高親和性リガンドであり、体内のGalectin-3リガンドに対して競合阻害する作用がある。Plattら(Platt D et al., Modulation of the lung colonization of B16-F1 melanomacells by citrus pectin[J].JNCI Cancer Spectrum,1992,84(6):438)によるインビトロでの細胞凝集試験及び細胞接着試験では、MCPが細胞表面でのGalectin-3を阻害することで細胞間の相互識別及び接着機能を抑制し得ることが確認された。MCPが一定の濃度に達すると、腫瘍細胞表面でのGalectin-3はほぼMCPに結合して阻害されるので、細胞間の相互識別や凝集がブロックされることが可能になる。幾つかの動物試験によると、MCPが腫瘍の増殖や転移を効果的に抑制できることが確認された。
【0007】
本特許出願に記載されているオリゴガラクツロン酸多糖は酸化ストレスや慢性炎症を媒介する炎症因子Galectin-3や免疫細胞MDSCに対して、インビトロでMDSCの増殖に拮抗し、インビボで脾臓内でのMDSCの蓄積を抑制し、全身性慢性炎症を軽減する作用を持つことについて、本発明の出願前に一切開示も報告もなかった。
【0008】
本発明は、医薬品、食品またはヘルスケア製品として、Galectin-3関連のMDSC細胞の分化や凝集、MDSCに制御される下流T細胞や好中球の割合変化及び機能変化、ならびにそれによって誘発される全身性の酸化ストレス、慢性炎症、フリーラジカル損傷及び早期老化疾患を解消するために用いられるオリゴガラクツロン酸多糖の用途、を提供することを目的とする。オリゴガラクツロン酸多糖は、化学構造式が次のとおりである。
【0009】
【0010】
本発明の発明者らは、化合物HGが、MDSC細胞表面上のGalectin-3リガンドに拮抗することによって、インビトロでMDSC細胞の増殖に拮抗し、インビボで脾臓内でのMDSCの蓄積を抑制する役割を発揮し、MDSCによって誘発される酸化ストレス、慢性炎症、フリーラジカル損傷及び早期老化疾患のコントロールを実現できることを見い出した。このような化合物は、単独で使用される場合、その自体が人体に顕著な毒性や副作用を生じない。オリゴガラクツロン酸多糖は、プレバイオティクスとして、腸内のプロバイオティクスに栄養を与えたり、糖や脂質の代謝調節を支えたりする役割を持っている。従来の文献には、オリゴガラクツロン酸多糖及びその誘導体に関する報告が発見されなかった。
【発明の概要】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、抗炎症作用を有するオリゴガラクツロン酸多糖及びその調製方法並びにその使用を提供することを目的とする。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の工程:
(1)アルカリ分解-マイクロ波法による前処理、
(2)酵素法/酵母発酵法による分解、
(3)孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を維持しながら高フラックス抽出を維持し、カットオフ分子量が103~104である限外濾過膜による高度抽出、
(4)低温で乾燥させ、精製されたオリゴガラクツロン酸多糖を得ることを含むオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法を提供する。
【0013】
本発明は、分子量が3kDa~7kDaであり、エステル化度が5%~15%であるオリゴガラクツロン酸多糖610~710重量部と、オウギ25~35重量部と、炒りサンザシ5~25重量部と、赤いナツメ5~25重量部と、チンピ6~20重量部とを含むオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を提供する。
【0014】
好ましい一実施形態において、前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、分子量が3kDa~7kDaであり、エステル化度が5%~15%であるオリゴガラクツロン酸多糖620~640重量部と、オウギ20~30重量部と、炒りサンザシ5~15重量部と、赤いナツメ5~15重量部と、チンピ6~15重量部とを含む。
【0015】
好ましい一実施形態において、本発明は、オリゴガラクツロン酸多糖625重量部と、オウギ25重量部と、炒りサンザシ10重量部と、赤いナツメ10重量部と、チンピ8重量部とを含む、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体を提供する。
【0016】
前記オリゴガラクツロン酸多糖中のガラクツロン酸は、HGの電荷、酸性アルカリ性、溶解性、粘度などの特性に影響を与え、しかも体内の吸収や分布などの薬学的特性にも影響を与えることができる。エステル化度が高いほど、溶解度が低くなる。エステル化度が低くなると、オリゴガラクツロン酸多糖の生体利用率の向上に寄与する。
【0017】
また、本発明は、オレンジの皮を前処理して安定な水溶性ペクチンゲルを得る工程1と;pHを12.0~13.0に制御しながら、80~100℃までマイクロ波で加熱する条件下で、前記安定な水溶性ペクチンゲルに水酸化ナトリウムを加えて、結合切断水溶性ペクチンゲルを形成するアルカリ加水分解-マイクロ波法による処理の工程2と;前記結合切断水溶性ペクチンゲルに対して脱メトキシ基化処理を行い、粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルを得る脱メトキシ基化処理の工程3と;孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を維持しながら高フラックスの抽出を保持し、カットオフ分子量が103~104である限外濾過膜を使用して高度抽出を行う限外濾過膜精製の工程4とを含む、オリゴガラクツロン酸多糖の調製方法を提供する。
【0018】
好ましい一実施形態において、工程3において、前記脱メトキシ基化処理は、具体的に、凍結・乾燥・濃縮を経て、粗製ペクチンの濃度が10~20g/Lとなるように調整し、NaOHを加えてpHを9~10に維持しながら、4℃で8~48時間反応させて脱メチル化を行い、その後に10%の氷酢酸を使用して酸性度を調整し、反応を終了させることにより行われる。好ましい一実施形態においては、工程3の後に、前記粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルに対して粗抽出処理を行い、また粗抽出処理後のホモガラクツロン酸の含有量が70%を超える場合には、酵素分解処理を行うが、ホモガラクツロン酸の含有量が70%未満である場合には、酵母発酵処理を行う。好ましい一実施形態においては、工程4の後に、減圧下での回転蒸発濃縮、低温下での乾燥処理がさらに含まれる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、任意選択的に、前記酵素分解処理には、まず、等電点法による脱タンパク質を行い、酢酸緩衝液のpH値を4.5に調整し、ペクチンの最終濃度が2~5wt%となるように調整し;また、リアーゼ(PL、酵素活性が32U/g)、特異的エンドポリガラクツロナーゼ (Endo-polygalacturonases,endo-PG,E.C.3.2.1.15、4212U/g)、ペクチンエステラーゼ (PE,E.C.3.1.1.11、66.7U/g)及びプロトペクチナーゼを含む固形化ペクチナーゼを加え、pHを3.0~6.0に制御し、45℃(最大60℃)で60~90分間維持する。また、本発明の好ましい実施形態において、任意選択的に、前記酵母発酵処理には、2wt%のスクロース溶液に酒醸用造活性乾酵母を加えて、均一に撹拌し、25~30℃で2~4時間置いたままで活性化させ、そして、1~5wt%の活性化させた酵母を濃度が2~5wt%のペクチン水溶液に加えて、30℃で24~48時間発酵させる。
【0020】
本発明に係る前記オリゴガラクツロン酸多糖は、ガラクツロン酸の含有量が93~98%であり、エステル化度が12~14%である。
【0021】
本発明では、オリゴガラクツロン酸多糖が抗慢性炎症および白血球増加の効果を有することを見い出した上で、伝統的な中国漢方医薬の理論を基盤とし、脾気虚弱、営気や衛気に効くようないくつかの生薬を配合し、疾患を鑑別・治療する過程中に、分量や種類の加減を重ねて調合をアレンジすることによって、消化促進、抗炎症、免疫力向上など総合的な作用を有する前記方剤を完成することに至った。
【0022】
オリゴガラクツロン酸多糖は、免疫細胞表面のガレクチン(Galectin)ファミリーリガンドに拮抗することによって、MDSC細胞、T細胞、好中球の機能調節を発揮し、MDSC細胞を中心とした上下流の免疫細胞の総合的な作用によって誘発された慢性炎症、全身性の炎症に対する拮抗作用を実現することができる。このような化合物は、免疫調節機能を持っている一方、白血球を増加させる機能も持っているため、化学療法における血液毒性を軽減することができ、かつ単独で使用しても人体に顕著な毒性や副作用はない。
【0023】
本発明に使用されるオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、君臣佐使という中国漢方医薬の理論に基づいて配合されたものであって、抗菌作用や抗炎症作用を発揮する従来の漢方薬とは異なり、性質も味も寒涼性ではなく、「攻」の役目を取らずに、「臣薬」として核心成分であるHGを補助する役割を果たし、それによって脾胃の働きを高めて気を補い、これによる抗慢性炎症の機能をサポートし、身体全体の機能を強化し、HGによる抗炎症や抗酸化ストレス効果を高めることが期待できる。
【0024】
MCP/LCPは主として、体内の重金属の除去や腫瘍転移の制御などに対して機能しており、MDSCやTregなどの炎症性サイトカインGalectinの酸化ストレスや慢性炎症反応に対するものではなく、MCP/LCPが化学治療マウスの白血球に対する増加効果を有するという報告もない。HGに漢方薬のオウギ、サンザシ、赤ナツメ、チンピを配合することは、その抗慢性炎症効果を高め、補気、脾の健全、湿気取りなどの観点からHGの効能を高め、1+1>2という相乗効果を実現するためである。それに対して、漢方薬だけで抗炎症や抗酸化ストレスの目的を達成しようとする場合は、中国漢方医学の理論に従い、性質も味も寒冷性で、主に「攻」と「殺」の役目をもつ生薬を配合する必要になるため、脾胃の失調や気血の不足などの多くの副作用が起きる恐れがある。そこで、本発明では、中国漢方医学の理論に基づいて、HGを「君薬」とし、サンザシ、赤ナツメ、チンピを「臣薬」とし、これら3つの生薬による脾胃の改善、補気、脾の健全、湿気取りを働かせることによって、HGによる抗炎症効果を高めるようにした。
【0025】
オウギは、臨床的に使用量が少量であり、30~60g/日の用量で単独で使用され、粉末にして直接服用されてもよく、水で煮詰めた後エキスペーストとすることもあり、血圧の上昇、白血球の生成、抗炎症作用を明らかに有するが、この場合は、その益気固表や利尿消腫の効果が捨てられている。オウギは、HGの補佐臣薬とすれば、経口利用性の向上を図ることができ、ただし、HGによる炎症細胞の拮抗作用を高めることではなく、HGの欠点を補うという目的で使用されている。
【0026】
漢方薬複合物において、オウギは主成分であり、補助薬である赤ナツメは脾臓を健全にし、気血を補い、他の生薬の機能を調節し、気と血のバランスを取らせるために配合されている。サンザシは、活血や血行を良くし、食欲増進や消化を良くし、気の巡りを良くするために用いられ、主に食欲促進、気の巡りや活血を良くするために配合されている。生サンザシは、ビタミンCやフラボノイドも豊富に含有するため、西洋医学の理論から活血や血管拡張のメカニズムが裏付けられており、オウギの主な機能の強化、炎症の抵抗、白血球の増加という役目が図れる。また、チンピによれば、気の巡りを良くし、気機の疎通を促進し、他の生薬の効用メカニズムを強化し、脾胃停滞や食欲不振などの問題を解決することができる。
【0027】
このように、チンピは気の巡りを良くし、サンザシは血行を促進し、赤ナツメは血を補い、オウギは気を補うようにそれぞれの役割を利用することにより、HGの吸収性をより効果的に促進し、体内でのHGの働き効率を向上させるのに役立つ。
【0028】
任意選択的に、このオリゴガラクツロン酸多糖の複合体において、オリゴガラクツロン酸多糖の使用量は、重量部として、610部、620部、630部、640部、650部、660部、670部、680部、690部、700部、710部および610~710 部のうちの任意値であってもよく;オウギの使用量は、25部、30部、35部および25~35部のうちの任意値であってもよく; 炒りサンザシの使用量は、5部、6部、7部、8部、9部、10部、11部、12部、13部、14部、15部、16部、17部、18部、19部、20部、21部、22部、23部、24部、25部、および5~25部のうちの任意値であってもよく;赤ナツメの使用量は、5部、6部、7部、8部、9部、10部、11部、12部、13部、14部、15部、16部、17部、18部、19部、20部、21部、22部、23部、24部、25部および5~25部のうちの任意値であってもよく;チンピの使用量は、6部、7部、8部、9部、10部、11部、12部、13部、14部、15部、16部、17部、18部、19部、20部および6~20部のうちの任意値であってもよい。
【0029】
前記赤ナツメは、種を取り除きスライスして得られた赤ナツメのスライスであることが好ましい。
【0030】
また、本発明は、
オウギ、炒りサンザシ、赤いナツメ、チンピを前処理してから水に浸漬させた後、30~60分間煮詰め、ろ過することによりエキスペーストを得る工程と、
前記エキスペーストとオリゴガラクツロン酸多糖とを混合して、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体を得る工程とを含む、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の調製方法を提供する。
【0031】
前記前処理は、順番に行われた洗浄、超音波粉砕、篩い分けを含むことが好ましい。
【0032】
前記浸漬は、固液体積比が1:5~15であり、浸漬時間が20~60分であることが好ましい。
【0033】
また、前記浸漬は、任意選択的に固液体積比が1:5、1:10、1:15、および1:5~15のうちの任意値であってもよく、時間が20分、30分、40分、50分、60分、および20~60分のうちの任意値であってもよい。
【0034】
前記煮詰めの時間は30~90分であることが好ましい。
【0035】
また、前記煮詰めの時間は、任意選択的に30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分および30~90分のうちの任意値であってもよい。
【0036】
また、本発明は、慢性炎症関連の疾患を治療するための医薬品、食品またはヘルスケア製品の調製におけるオリゴガラクツロン酸多糖の複合体の使用を提供する。前記慢性炎症関連の疾患には、MDSC関連の慢性炎症、酸化ストレス、フリーラジカル損傷、白血球減少症およびT細胞サブセットの不均衡が含まれている。
【0037】
好ましい一実施形態において、前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、哺乳動物に対して無毒であり(米国FDAでは変性ペクチンの上限服用量について規制されていない)、しかも哺乳動物の慢性炎症関連の疾患の予防または治療のために直接使用されてもよく、あるいは薬学的に許容される担体等と混合して製剤化されることもできる。
【0038】
薬学的に許容される担体としては、例えば、担体として一般に使用される様々な有機または無機担体物質が挙げられ、固形製剤に対して賦形剤、潤滑剤、結合剤または崩壊剤を添加することができ、液体製剤に対して溶媒、増溶剤、緩衝剤を添加することができる。必要に応じて、防腐剤、甘味料、着色料、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。
【0039】
賦形剤は、乳糖、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等からなる群より選択されることがある。
【0040】
潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等からなる群より選択されることがある。
【0041】
結合剤は、スクロース、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等からなる群より選択されることがある。
【0042】
溶媒は、滅菌水、蒸留水、エタノール、プロピレングリコール、コーン油、オリーブ油等からなる群より選択されることがある。
【0043】
増溶剤は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、マンニトール、トレハロース、コレステロール、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウム等からなる群より選択されることがある。
【0044】
緩衝剤は、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液からなる群より選択されることがある。
【0045】
防腐剤は、クロロブタノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸、フェニルエチルアルコール等からなる群より選択されることがある。
【0046】
甘味料は、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等からなる群より選択されることがある。
【0047】
酸化防止剤は、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩等からなる群より選択されることがある。
【0048】
本発明に係るオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤、注射剤等の形態とすることができる。
【0049】
慢性炎症関連の疾患を治療するための医薬品の調製における前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の使用においては、前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合製剤が、前記医薬品の全質量に対して5~95質量%を占めている。
【0050】
前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の用量は、100~500mg/kg体重/日であり、好ましく150~300mg/kg体重/日である。前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の服用頻度は、1日1回、1日2回または1日3回である。前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、3日間以上連続して服用されることができ、好ましくは、3日~100日間連続して服用される。
【0051】
好ましい一実施形態において、前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の用量は、200~400mg/kg体重/日である。
【0052】
好ましい一実施形態において、前記オリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、服用頻度が、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回であり、5~80日間連続して服用されることができる。
【0053】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明に係るオリゴガラクツロン酸多糖は、明確な免疫細胞標的を有し、抗炎症因子、抗慢性炎症、抗酸化フリーラジカルの効果を有するとともに、白血球レベルを増加する役割を持っている組成物である。本発明に係るオリゴガラクツロン酸多糖は、MDSC細胞関連の慢性炎症に拮抗することができ、オウギ、炒りサンザシ、赤ナツメ、チンピと相乗的に働き、より優れた抗慢性炎症効果をもっている。健康な方に使用される場合は、酸化ストレス、慢性炎症、フリーラジカル損傷又は早期老化疾患の軽減、サブヘルス状態の軽減が図れる。がん患者に使用される場合は、腫瘍微小環境における免疫抑制効果を解消し、末梢血および腫瘍浸潤リンパ球内のCD8エフェクターT細胞の割合を増加させることが図れるため、身体の抗腫瘍免疫力を強化する同時に白血球を増加させ、化学療法における血液毒性を軽減する効果がある。
【0054】
本発明に係るオリゴガラクツロン酸多糖の複合体の調製方法は、プロセスが簡単で、収率が高く、低コストである。
【0055】
本発明に係るオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、医薬品、食品またはヘルスケア製品等に幅広く利用されることができる。
【0056】
以下、説明されるように、本発明は、以下の技術案を提供する。
1.ペクチンを含む果皮および/または果滓を提供する工程1と、
工程1で得られた原料をアルカリ性水溶液と接触させてアルカリ処理を行い、混合物のpHを11以上に維持して結合切断水溶性ペクチンゲルを得る工程2と、
任意選択的に工程2で得られた結合切断水溶性ペクチンゲルを、pH9~11、0~8℃温度下で少なくとも2時間続いて濃縮させた後、pHを6~8の中性付近に調整し、前記結合切断水溶性ペクチンゲルに対して脱メトキシ基化処理を行うことで粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルを得る工程3と、
任意選択的にカチオン性交換樹脂を使用して、前記水溶性ペクチンゲルを粗抽出する工程4と、
高分子量不純物を除去する工程5と、を含み、
工程2において、前記アルカリ処理は、好ましくpHが12~13であり、好ましく少なくとも30分間、例えば30、40、50、60、70、80、90、100、110または120分間続けられ、
工程3において、前記濃縮は、好ましく凍結乾燥法で行われ、粗製ペクチンの濃度が好ましく少なくとも5g/L、例えば10、15、20、25、30または40g/L、具体的に10~20g/Lの範囲になるまで行われ、好ましくpHを9~10とし、好ましく2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、24、30、36、40、48、60、又は72時間以上続けられ、
工程4において、前記カチオン性交換樹脂は、例えば、スルホン酸基又はDEAE基を持つカチオン性交換樹脂であり、
工程5において、前記高分子量不純物の除去には、好ましくカットオフ分子量が少なくとも103~104Daである限外濾過膜を使用し、例えば、孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を維持しながら高フラックスの抽出を維持し、カットオフ分子量が103~104Daである限外濾過膜を使用する、オリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【0057】
2.工程2を実施する前に、前記果皮に対して酸処理を行うことで安定な水溶性ペクチンゲルを得ることをさらに含み、
前記酸処理は、好ましくpHが5~6で行われ、好ましく10~60分間、例えば10、15、20、30、40、45、50、60、75、90または120分間続けられる、技術案1に記載の方法。
【0058】
3.工程2のアルカリ処理において、マイクロ波で好ましく少なくとも50℃、例えば60、70、80、90または100℃まで加熱することをさらに含む、技術案1または2に記載の方法。
【0059】
4.工程2のアルカリ処理を行う前またはその後に、セルラーゼ酵素分解処理を行うことをさらに含み、前記酵素分解処理は、好ましくセルラーゼ1~10mg/gを添加し、酵素分解温度を室温から40℃まで、例えば38℃にした条件下で、少なくとも30分間、例えば30、40、45、50、60、70、75、80、90、100、120または150分間続けられる、技術案1から3のいずれか1項に記載の方法。
【0060】
5.前記果皮および/または果滓は、柑橘類、ナシ類、ブドウ類、ウリ科、バショウ科の果実またはヒマワリの花托、例えば、タンジェリン、ミカン、オレンジ、キンカン、レモン、ザボン、枳金柑(英名:Citrumquat、学名:Ruta Citrumquat Fortunella)、リンゴ、ナシ、ビワ、サンザシ、アンズ、プラム、ウメ、モモ、キウイ、バナナ、ブドウ、スイカ、ヒマワリに由来する、技術案1から4のいずれか1項に記載の方法。
【0061】
6.工程4で得られた粗抽出物に対しては、該粗抽出物中のホモガラクツロン酸の含有量が70%以上である場合に酵素分解処理を行い、または粗抽出物中のホモガラクツロン酸の含有量が70%未満である場合に酵母発酵処理を行うことをさらに含み、
前記酵素分解処理には、ペクチンの最終濃度を2~5wt%に調整し、pH4.5で等電点脱タンパク質を行った後に、脱タンパク質で得られた生成物に固形化ペクチナーゼ(ただし、該固形化ペクチナーゼは、リアーゼ(PL、酵素活性が32U/g)、特異的エンドポリガラクツロナーゼ(Endo-polygalacturonases、endo-PG、E.C.3.2.1.15、4212U/g)、ペクチンエステラーゼ(PE、E.C.3.1.1.11、66.7U/g)及びプロトペクチナーゼを含む)を添加し、pHを3.0~6.0に制御し、分解時間を少なくとも30分間、例えば30、40、45、50、60、70、75、80、90、100、110、120分間以上とし、好ましく温度を少なくとも37℃以上、例えば40、42、45、50、55または60℃とし、
前記酵母発酵処理には、ペクチンの最終濃度を2~5wt%に調整し、活性化されたサッカロミセス・セレビシエ(saccharomyces cerevisiae)1~5wt%を加え、好ましく発酵温度を室温から35℃まで、例えば30℃とし、発酵時間を好ましく少なくとも12時間、例えば12、18、24、36、48時間以上とする、技術案1から5のいずれか1項に記載の方法。
【0062】
7.アルカリ性pHがそれぞれ独立して、例えばNaOH、KOH、CaOH及びそれらの混合物からなる群より選ばれる強アルカリ剤で達成され、および/または
酸性pHがそれぞれ独立して、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、亜硫酸、酢酸及びそれらの混合物からなる群より選ばれる希酸で達成される、技術案1から6のいずれか1項に記載の方法。
【0063】
8.その中のガラクツロン酸の含有量が少なくとも90%、例えば93~98%であり、エステル化度が例えば12~14%であり、かつ/または、分子量が3kDa~8kDaであるオリゴガラクツロン酸多糖が得られる、技術案1から7のいずれか1項に記載の方法。
【0064】
9.技術案1から8のいずれか1項に記載のオリゴガラクツロン酸多糖を含有する食用組成物であって、
好ましくは、技術案1から8のいずれか1項に記載のオリゴガラクツロン酸多糖610~710重量部、ならびに
オウギ(astragali radix)25~35重量部、炒りサンザシ(fried crataegifructus)5~25重量部、赤いナツメ(jujubae fructus)5~25重量部、及びチンピ(citri reticulatae pericarpium)6~20重量部を含むか、それらの成分から調製される、食用組成物。
【0065】
10.オウギ、炒りサンザシ、赤いナツメ、チンピを前処理してから水に浸漬させ、少なくとも15分間、例えば15、20、25、30、40、45、50、60、70、75、80、90、100、120分間以上煮詰めた後、ろ過することによりエキスペーストを得る工程と、
前記エキスペーストとオリゴガラクツロン酸多糖とを混合して、前記食用組成物を得る工程とを含む、技術案9に記載の組成物を調製するための方法。
【0066】
11.前記浸漬用の固液体積比が1:5~15であり、浸漬時間が20~60分である、技術案10に記載の方法。
【0067】
12.慢性炎症関連の疾患を治療するために、好ましく医薬品、食品またはヘルスケア製品の形態として用いられる、技術案1から8のいずれか1項に記載の方法によって調製されたオリゴガラクツロン酸多糖、技術案9に記載の食用組成物
【0068】
以下に説明されるように、本発明は、以下の技術案をさらに提供する。
1.オレンジの皮を前処理して安定な水溶性ペクチンゲルを得る工程1と、
pHを12.0~13.0に制御しながら、80~100℃までマイクロ波で加熱する条件下で、前記安定な水溶性ペクチンゲルに水酸化ナトリウムを加えて、結合切断水溶性ペクチンゲルを形成するアルカリ加水分解-マイクロ波法による処理の工程2と、
前記結合切断水溶性ペクチンゲルに対して脱メトキシ基化処理を行い、粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルを得る脱メトキシ基化処理の工程3と、
孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を維持しながら高フラックスの抽出を保持し、カットオフ分子量が103~104である限外濾過膜を使用して高度抽出を行う限外濾過膜精製の工程4とを含む、ことを特徴とするオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【0069】
2.工程3において、前記脱メトキシ基化処理は、具体的に、凍結・乾燥・濃縮を経て、粗製ペクチンの濃度が10~20g/Lとなるように調整し、NaOHを加えてpHを9~10に維持しながら、4℃で8~48時間反応させて脱メチル化を行い、その後に10%の氷酢酸を使用して酸性度を調整し、反応を終了させることにより行われ、
工程3の後に、前記粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルに対して粗抽出処理を行い、また粗抽出処理後のホモガラクツロン酸の含有量が70%を超える場合には、酵素分解処理を行うが、ホモガラクツロン酸の含有量が70%未満である場合には、酵母発酵処理を行い、
工程4の後に、減圧下での回転蒸発濃縮、低温下での乾燥処理がさらに含まれる、ことを特徴とする技術案1に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【0070】
3.前記酵素分解処理には、まず、等電点法による脱タンパク質を行い、酢酸緩衝液のpH値を4.5に調整し、ペクチンの最終濃度が2~5wt%となるように調整し;そして、リアーゼ(PL、酵素活性が32U/g)、特異的エンドポリガラクツロナーゼ (Endo-polygalacturonases,endo-PG,E.C.3.2.1.15、4212U/g)、ペクチンエステラーゼ (PE,E.C.3.1.1.11、66.7U/g)及びプロトペクチナーゼを含む固形化ペクチナーゼを加え、pHを3.0~6.0に制御し、45℃(最大60℃)で60~90分間維持し、
前記酵母発酵処理には、2wt%のスクロース溶液に酒醸用造活性乾酵母を加えて、均一に撹拌し、25~30℃で2~4時間置いたままで活性化させ;そして、1~5wt%の活性化させた酵母を濃度が2~5wt%のペクチン水溶液に加えて、30℃で24~48時間発酵させる、ことを特徴とする技術案2に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【0071】
4.前記オリゴガラクツロン酸多糖は、ガラクツロン酸の含有量が93~98%であり、エステル化度が12~14%である、ことを特徴とする技術案1~3のいずれか1項に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
【0072】
5.技術案1から4のいずれか1項に記載のオリゴガラクツロン酸多糖610~710重量部、および
オウギ25~35重量部、炒りサンザシ5~25重量部、赤いナツメ5~25重量部およびチンピ6~20重量部を含むオリゴガラクツロン酸多糖の複合体であって、
前記オリゴガラクツロン酸多糖の分子量が3kDa~8kDaである、ことを特徴とするオリゴガラクツロン酸多糖の複合体。
【0073】
6.オウギ、炒りサンザシ、赤いナツメ、チンピを前処理してから水に浸漬させた後、30~60分間煮詰め、ろ過することによりエキスペーストを得る工程と、
前記エキスペーストとオリゴガラクツロン酸多糖とを混合して、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体を得る工程とを含む、ことを特徴とする技術案5に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体の調製方法。
【0074】
7.前記前処理は、順番に行われた洗浄、超音波粉砕、篩い分けを含む、ことを特徴とする技術案6に記載の調製方法。
【0075】
8.前記浸漬は、固液体積比が1:5~15であり、浸漬時間が20~60分である、技術案6に記載の調製方法。
【0076】
9.前記煮詰め時間が30~90分である、技術案6に記載の調製方法。
【0077】
10.慢性炎症関連疾患を治療するための医薬品、食品またはヘルスケア製品の調製における、技術案5に記載のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体、および技術案6~9のいずれか1項に記載の方法によって調製されたオリゴガラクツロン酸多糖の複合体、の使用。
【図面の簡単な説明】
【0078】
添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を示し、その説明とともに本発明の原理を解釈するために使用されている。なお、それらの図面は、本発明をより一層理解するために本明細書に含まれて本明細書の一部を構成する。
【0079】
【
図1】
図1は、インビトロ試験で、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体がマウス線維芽細胞の増殖に毒性作用を生じなかったことを示している。
【
図2】
図2は、4T1細胞のコロニー形成をトリパンブルー染色で定性分析した対比写真を示している。
【
図3】
図3は、マウス乳癌4T1移植腫瘍の化学療法による治療モデル試験におけるMDSC細胞の割合の対比図を示している。
【
図4】
図4は、マウス乳癌4T1移植腫瘍の化学療法による治療モデル試験における免疫抑制細胞MDSCおよびTreg細胞のレベルの対比図を示している。
【
図5】
図5は、マウス乳癌4T1移植腫瘍の化学療法による治療モデル試験における免疫活性化細胞Th1、Th17およびCD8
+キラーT細胞のレベルの対比図を示している。
【
図6】
図6は、マウス乳癌4T1移植腫瘍の化学療法による治療モデル試験における好中球の割合の対比図を示している。
【
図7】
図7は、LPSにより誘導されるマウスの慢性炎症試験におけるマウス体重曲線の対比図を示している。
【
図8】
図8は、LPSにより誘導されるマウスの慢性炎症試験における免疫抑制細胞MDSCおよびTreg細胞のレベルの対比図を示している。
【
図9】
図9は、LPSにより誘導されるマウスの慢性炎症試験における免疫活性化細胞Th1、Th17およびCD8
+キラーT細胞のレベルの対比図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下で、添付の図面および実施形態を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施形態が本発明を限定するものではなく、関連する内容を解釈するためにのみ使用されることは、理解されるであろう。なお、説明の便宜上、添付の図面には、本発明に関連する部分のみが示されている。
【0081】
なお、矛盾しない限り、本発明の実施形態および実施形態における特徴を互いに組み合わせ得ることに留意されたい。以下で添付の図面を参照しながら、実施形態と組み合わせて本発明について詳細に説明する。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
ホモガラクツロナン多糖の調製:
(1)オレンジの皮を洗浄し、煮沸して脱色させ、石油エーテルで2回脱エステル化することで、柑橘系精油やナリンギンなどの副産物を得、その後、後続の工程での粗製ペクチン性多糖の放出を促進するために、超音波で粉砕して皮の細胞壁構造を効率的に破壊した。
(2)酸化前処理:破砕した果皮を希塩酸または亜硫酸で溶解し、pHを5.0~6.0に制御し、30分保持した後、安定な水溶性ペクチンゲルを形成し、滓を濾して取り去った。
(3)酵素分解:6mg/gのセルラーゼを加え、温度を38℃に維持しながら、70分間酵素分解した。
(4)アルカリ加水分解-マイクロ波法:密閉した培養槽内で、粗製ペクチンゲル水溶液に4mol/LのNaOHを等量に加え、pHを12.0~13.0に制御し、マイクロ波で80~100℃まで加熱させ(マイクロ波エネルギーにより、水分子を共振させ、長鎖多糖類の共有結合を前もって切断し、後に続く酵素加水分解や微生物発酵工程にかかる時間を短縮し原料消費を削減することが可能となる)、40~120分撹拌した後、室温まで急速に冷却させた。
(5)脱メトキシル化:凍結、乾燥および濃縮を行い、粗製ペクチンの濃度が10~20g/Lとなるように調整し、NaOHを添加し、pHを9~10に維持しながら、4℃で8~48時間反応させて脱メチル化を行い、その後に10%の氷酢酸を使用して酸性度を調整し、反応を終了させた。
(6)粗製ペクチンに対して厳格な品質管理を行い、「DEAE-Sepharose ffイオン交換カラム+SephadexG50 ゲルクロマトグラフィーカラム法」を用いて粗抽出を行い、そしてHPLC法またはMALLS-HPGPC法を用いて、得られたHGの分子量およびエステル化度を測定した。
(7)粗製ペクチン製品は、分子量が均一で、化学的性質が安定し、粗HGの含有量が70%以上にも達した場合、酵素分解法により分解させるが、粗HGの含有量が70%未満である場合、酵母発酵法を使用する。
(8)酵素分解法による分解:まず、等電点法による脱タンパク質を行い、酢酸緩衝液でpHを4.5に調整し、ペクチンの最終濃度を2~5%に調整した。固形化ペクチナーゼ:リアーゼ(PL、酵素活性が32U/g)、特異的エンドポリガラクツロナーゼ(Endo-polygalacturonases,endo-PG、E.C.3.2.1.15、4212U/g)、ペクチンエステラーゼ(PE、E.C.3.1.1.11、66.7U/g)及びプロトペクチナーゼを添加し、pHを3.0~6.0に制御しながら、45℃(最大60℃)で60~90分間維持した。
(9)粗HGの含有量が70%未満であるので、脱タンパク質工程を予めに行わずに、サッカロミセス・セレビシエ(saccharomycescerevisiae)発酵法を使用して発酵分解時間を延長させた。即ち、2%のスクロース溶液に酒醸用造活性乾酵母を加えて、均一に撹拌し、25~30℃で2~4時間置いたままで活性化させ、そして、1~5wt%の活性化済みの酵母を濃度が2~5%のペクチン水溶液中に加えて、30℃で24~48時間発酵させた。
(10)限外濾過膜による精製:限外濾過膜を使用して高度抽出を行った。ここでは、前記限外濾過膜は、孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を保持しながら高フラックス抽出を連続的に行い、カットオフ分子量が103~104であった。
(11)60~70℃で減圧下で回転蒸発濃縮させ、低温で乾燥させて、分子量が8kDaの精製オリゴガラクツロン酸多糖を得た。
【0083】
m-ヒドロキシビフェニル比色分析法によりガラクツロン酸の含有量を測定し、容積分析法によりエステル化度を測定した結果、ガラクツロン酸は、含有量が95%、エステル化度が12%であった。
【0084】
[実施例2]
ホモガラクツロナン多糖の調製:
(1)リンゴの皮を濯いだ。
(2)アルカリ加水分解:果皮400gを2Lの水に溶解させ、3mol/LのNaOHを400ml加えて、30分撹拌し、室温まで冷却させた。
(3)酵素分解:5mg/gのセルラーゼを加え、温度を38℃に維持し、酵素分解時間を90分とした。
(4)粗HGの含有量が70%未満であるので、脱タンパク質工程を予めに行わずに、サッカロミセス・セレビシエ(saccharomycescerevisiae)発酵法を使用して発酵分解時間を延長させた。即ち、2%のスクロース溶液に酒醸用造活性乾酵母を加えて、均一に撹拌し、25~30℃で2~4時間置いたままで活性化させた。1~5wt%の活性化済みの酵母を、濃度が2~5%のペクチン水溶液中に加えて、30℃で24~48時間発酵させた。
(5)限外濾過膜を使用して高度抽出を行った。ここでは、前記限外濾過膜は、孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を保持しながら高フラックス抽出を連続的に行い、カットオフ分子量が103~104であった。
(6)低温で乾燥させて、分子量が6kDaの精製オリゴガラクツロン酸多糖を得た。
m-ヒドロキシビフェニル比色分析法によりガラクツロン酸の含有量を測定し、容積分析法によりエステル化度を測定した結果、ガラクツロン酸の含有量が93%、エステル化度が14%であった。
【0085】
[実施例3]
実施例1で調製したオリゴガラクツロン酸多糖を使用した。
オリゴガラクツロン酸多糖625重量部と、オウギ25重量部と、炒りサンザシ10重量部、赤ナツメ10重量部、およびチンピ8重量部を用意した。
オウギ、炒りサンザシ、赤ナツメ、チンピを洗浄し、超音波で粉砕し、篩いにかけ、10倍の再蒸留水に30分間浸漬させ、弱火で1時間煮詰めた後、ろ過して、エキスペーストを作製した。その後、このエキスペーストをオリゴガラクツロン酸多糖と十分に混ぜて粉剤にした。
【0086】
[対比例1]
実施例1で調製したオリゴガラクツロン酸多糖を使用した。
炒りサンザシ、赤ナツメおよびチンピを加えずに、実施例3の方法に従ってオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を調製した。
【0087】
[実施例4]
実施例1で調製したオリゴガラクツロン酸多糖を使用した。オリゴガラクツロン酸多糖600重量部、オウギ35重量部、炒りサンザシ10重量部、赤ナツメ20重量部、およびチンピ6重量部を用意した。
オウギ、炒りサンザシ、赤ナツメ、チンピを洗浄し、超音波で粉砕し、篩いにかけた後、5倍の再蒸留水に40分間浸漬させ、弱火で0.5時間煮詰めた後、滓を濾して取り去り、エキスペーストを作製した。その後、このエキスペーストをオリゴガラクツロン酸多糖と十分に混ぜて錠剤にした。
【0088】
[実施例5]
実施例1で調製したオリゴガラクツロン酸多糖を使用した。
オリゴガラクツロン酸多糖700重量部、オウギ20重量部、炒りサンザシ20重量部、赤ナツメ10重量部、チンピ15重量部を用意した。
オウギ、炒りサンザシ、赤ナツメ、チンピを洗浄し、超音波で粉砕し、篩いにかけた後、10倍の再蒸留水に60分間浸漬させ、弱火で1.5時間煮詰めた後、滓を濾して取り去り、エキスペーストを作製した。その後、このエキスペーストをオリゴガラクツロン酸多糖と十分に混ぜてカプセルにした。
【0089】
[実施例6] 毒性作用がなかった
実施例3におけるオリゴガラクツロン酸多糖の複合体(以下、HG+漢方薬の複合物という)は、最適な比率に従って配合されたものであり、オリゴガラクツロン酸多糖625重量部と、オウギ25重量部と、炒りサンザシ10重量部と、赤ナツメ10重量部と、チンピ8重量部とを含有する。
【0090】
(1)インビトロ試験において、本出願のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、マウス線維芽細胞の増殖に対して有意な毒性作用を示さなかった。
Balb/c系マウス尾部由来の線維芽細胞
1×10
5
個を96ウェル細胞培養プレート内に無菌的に接種し、3ウェルあたりに濃度が
10μg/mlのオリゴガラクツロン酸多糖の複合体の完全細胞培養液1640を接種し、他の3ウェルに20
%の生理食塩水を入れて対照群とし、最終容量を0.2mlとし、24時間おきに細胞培養を終了させ、培養細胞の生存率をMTT法によって測定した。その結果を
図1に示した。
(2)インビトロ試験において、本出願のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、マウス4T1乳癌細胞に対して有意な殺傷効果を示さなかった。
【0091】
6ウェル細胞培養プレート内にBalb/c系マウス4T1乳がん細胞を無菌的に1ウェルに
1×10
4
個接種し、様々な濃度のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を含む完全細胞培養液1640(濃度がそれぞれに0.01、0.1、1.0、10.0、100.0
μg/mlである)を2ml加えた。対照群には、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体を含まない生理食塩水20
μlを使用した。48時間経過後に細胞培養を終了させ、トリパンブルーで染色し、4T1細胞が形成したコロニーの密度及び大きさを定性的に分析したところ、有意差が見られなかった。その結果を
図2に示した。
【0092】
[実施例7]
対数増殖期のマウスマクロファージRAW264.7を5×10
3
個/80μlのDMEM完全培地の密度で96ウェル培養プレート内に接種し、ブランク群、対照群、さまざまな濃度のサンプル群を設置し、1群に6つの並行ウェルを設定し、37℃で、5%(v/v)CO2インキュベーター内で培養した。一晩培養し、翌日に細胞密度が50~60%に達した時、培地およびさまざまな濃度のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体(実施例3で得られたオリゴガラクツロン酸多糖の複合体)をそれぞれに加えて8時間で前処理した。
【0093】
ブランク対照群には、100μlのDMEM完全培地のみを加えた。
陽性対照群には、LPSの最終濃度が500ng/mlとなるように、各ウェルにLPSを含む完全培地100μlを加えて培養した。
処理群1には、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の最終濃度が2μg/mlとなるように、培地中にオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を含むDEME完全培地を100μl加えた。
処理群2には、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の最終濃度が4μg/mlとなるように、培地中にオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を含むDEME完全培地を100μl加えた。
処理群3には、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の最終濃度が8μg/mlとなるように、培地中にオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を含むDEME完全培地を100μl加えた。
処理群4には、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の最終濃度が16μg/mlとなるように、培地中にオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を含むDEME完全培地を100μl加えた。
【0094】
LPSの最終濃度が500ng/mlとなるように、処理群1~4の各ウェルにLPSを含む完全培地 20μlを加えて、16時間処理した。培養終了後、MTT法を用いて培養後のRAW264.7細胞の生存率を測定した。
【0095】
マイクロプレートリーダーでA550nmにおける吸光度を読み取り、ブランク群の平均値を相対細胞生存率100%として、各群の相対細胞生存率を算出した(各群について、試験を6回繰り返して、得られた6組の平均値を測定結果とした)。
【0096】
【0097】
[実施例8]
以下、本出願のオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、インビトロで慢性炎症関連の免疫抑制細胞であるMDSC細胞およびTreg細胞の増殖および分化に拮抗する効果があったことが確認された。
(1)オリゴガラクツロン酸多糖の複合体を経口投与したことにより、腫瘍担持マウスの脾臓内のMDSC細胞の割合が有意に減少していたことが確認された。
腫瘍担持マウスにオリゴガラクツロン酸多糖の複合体を経口投与した試験の終了時点に、マウスの脾臓細胞を抽出し、フロー分析を行った結果、処理群(5-FU+オリゴガラクツロン酸多糖の複合体)では、免疫抑制細胞MDSCの割合が有意に減少していたことが観察された。その結果を
図3に示した。
(2)インビトロ培養において、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体によって免疫抑制細胞MDSCとTreg細胞の分化率が減少していたことが確認された。
1×10
6
個の腫瘍担持マウスの脾臓細胞を48ウェル細胞培養プレート内に培養した。対照群には1ウェルあたりに20μlの生理食塩水を加えた。処理群には、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体の濃度を10
μg/mlとし、最終容量を1mlとした。48時間経過後に細胞培養を終了させた。そして、フローサイトメトリーでIFN
g
+Th1細胞、IL-17a
+Th17細胞、およびCD8
+キラーT細胞の割合、CD4
+CD25
hi抑制性Treg細胞の割合、およびCD11b
+Gr-1
+抑制性MDSC細胞の割合を検出した。その結果を
図4及び
図5に示した。
(3)インビトロ培養において、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体によって、免疫陽性エフェクター細胞であるTh1、Th17、およびCD8
+キラーT細胞の分化率が増加していたことが見られた。その結果を
図5に示した。
【0098】
[実施例9]
オリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、白血球を増加させ、化学療法の血液毒性を軽減する効果があったことが確認された。
腫瘍担持マウスの脾臓内に、5-FU+オリゴガラクツロン酸多糖の複合体による処理群では、好中球の割合が、5-FUによる化学療法群と比較して増加していた。その結果を
図6に示した。
【0099】
[実施例10] LPSにより誘導されるマウスの慢性炎症試験
8~10週齢の雌Balb/cマウスをランダムに、1群に8匹、5群に分けた。
ブランク群には、100μlの生理食塩水を腹腔内注射した。
陽性対照群及び処理群には、低用量LPSを0日目から21日目まで8回腹腔内注射した(0.5mg/kg体重、50μl、3日に1回)。
オリゴガラクツロン酸多糖による治療群には、低用量LPSを腹腔内注射し(0.5mg/kg体重、50μl、3日に1回)、0日目から、毎日にオリゴガラクツロン酸多糖(実施例1)を2g/kg体重/日の投与量で経口投与した。
オリゴガラクツロン酸多糖+オウギによる治療群には、低用量LPSを腹腔内注射し(0.5mg/kg体重、50μl、3日に1回)、0日目から、毎日にオリゴガラクツロン酸多糖+オウギ(対比例1)を2.03g/kg体重/日の投与量で経口投与した。
オリゴガラクツロン酸多糖の複合体による治療群には、低用量LPSを腹腔内注射し(0.5mg/kg体重、50μl、3日に1回)、0日目から、毎日にオリゴガラクツロン酸多糖の複合体(実施例3)を2.17g/kg体重/日の投与量で経口投与した。
【0100】
22日目(21日間の腹腔内注射+経口投与後):
(1)ブランク群では、マウスの精神状態が正常で、摂食量および水分用量が正常であり、摂食や運動や排泄行動に明らかな異常は見られなかった。
(2)陽性対照群では、マウスの精神状態が悪く、倦怠感がありそうで、摂食量および水分用量が減少し、刺激に対する反応が遅く、だるくて怒りっぽくなり、体重の減少が顕著で、脱毛が生じ、排尿に明らかな異常が見られなかったが、大便に水分が多く軟らかく、偶にはドロ状、粘液や膿や血液が混じっていた。
(3)オリゴガラクツロン酸多糖による治療群(HGによる治療群)では、マウスの精神状態が改善し、摂食量および水分用量がほぼ正常に戻り、体重が緩やかに増加し、薄毛が余りにも見られず、排尿に明らかな異常が見られず、大便が基本的に正常の形になり、偶には粘液便が見られた。
(4)オリゴガラクツロン酸多糖+オウギによる治療群(HG+オウギによる治療群)では、マウスの精神状態が改善し、摂食量および水用量がほぼ正常に戻り、体重が正常に徐々に増加し、薄毛は余りにも見られず、排尿には明らかな異常が見られず、大便が正常の形になり、偶には粘液便が見られた。
(5)オリゴガラクツロン酸多糖の複合体による治療群(HG+漢方薬複合物による治療群)では、精神状態が良好であり、摂食量および水分用量が正常で、活発に動き、体重増加が正常で、毛色がつやつやとし、大便が正常の形になり、楕円形で顆粒状、黄褐色、硬めの質感で、粘液や膿や血液はなかった。
【0101】
試験過程中に、各群におけるマウスの体重成長曲線を記録した結果から、陽性対照群において慢性炎症による発症が明らかに悪くなったこと、およびHG、HG+オウギ、HG+漢方薬複合物による治療が有効であったことが見られた。その結果を
図7に示した。
【0102】
LPSにより誘導されるマウスの慢性炎症試験の終了時点で、マウス脾臓細胞を取り出し、フロー分析した。その結果、陽性対照群では、低濃度LPSを長期にわたって腹腔内に注射したことにより、脾臓免疫抑制細胞であるMDSC細胞とTreg細胞が有意に増加していたこと;オリゴガラクツロン酸多糖による治療群、およびオリゴガラクツロン酸多糖+オウギによる治療群では、LPS処理によって引き起された慢性炎症に起因したMDSC細胞とTreg細胞の割合の増加が減少していたこと;オリゴガラクツロン酸多糖の複合体による治療群では、オリゴガラクツロン酸多糖による治療群、及びオリゴガラクツロン酸多糖+オウギによる治療群と比較して、LPS慢性炎症に起因した免疫抑制細胞MDSCとTreg細胞の増加がより一層有意に減少していたこと、が示された。その結果を
図8に示した。
【0103】
【0104】
[実施例11]
LPSによって誘導されるマウスの慢性炎症試験の終了時点で、マウス脾臓細胞を取り出し、フローサイトメトリーでIFNg
+Th1細胞、IL-17a
+Th17細胞およびCD8
+キラーT細胞の割合を検出した。その結果を
図9に示した。
図9には、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体によって免疫促進性(正)エフェクター細胞Th1、Th17、およびCD8
+キラーT細胞の分化率が増加していたことが示されている。
【0105】
【0106】
上記の試験から明らかなように、本出願によるオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、インビトロ試験において、マウス線維芽細胞に対して有意な殺傷効果を示さなかったうえで、免疫細胞の分化を制御することもでき、CD4制御性T細胞の割合を減少させたり、MDSC細胞の割合を減少させたりする作用を持っていた。オリゴガラクツロン酸多糖をマウスに経口投与した後、インビボでMDSC細胞関連の慢性炎症に対する拮抗、末梢血中のCD4 Treg細胞の割合の減少、CD8 T細胞の割合の上昇が可能になり、またインビボでマウス4T1乳がん移植腫瘍の化学療法モデルに引き起こした白血球の減少に拮抗して、白血球を有意に増加できる機能を示し、腫瘍を接種した部位の浸潤リンパ球内のMDSC細胞の割合を減少させ、CD8T細胞の割合を増加させることができた。
【0107】
特に、LPSによって誘導されるマウスの慢性炎症試験では、オリゴガラクツロン酸多糖の複合体をマウスに経口投与した後、インビボでMDSC細胞関連の慢性炎症に拮抗し、末梢血中のCD4 Treg細胞の割合を減少させ、CD8 T細胞の割合を上昇させることができた。特に、オリゴガラクツロン酸多糖と比較して、本出願によるオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、MDSC細胞関連の慢性炎症に拮抗し、末梢血中のCD4 Treg細胞の割合を減少させ、CD8 T細胞の割合を増加させるという良好な効果を示した。
【0108】
なお、本発明の実施例は、本発明における上記の技術案を好適に例示する役割で用いられ、本発明における上記の多糖類の調製における具体的な工程または工程の組み合わせに該当すれば、本発明に記載された実施例および対比例の効果の範囲を含むものとすることに留意されたい。
【0109】
したがって、本出願によるオリゴガラクツロン酸多糖の複合体は、免疫力の強化、肝臓の保護、抗慢性炎症、抗酸化ストレス、老化防止などの新たな機能を有することから、医薬品、食品またはヘルスケア製品の調製に使用されると、この医薬品、食品またはヘルスケア製品は、MDSC関連の慢性炎症の治療に使用することが可能になり、白血球の上昇、化学療法の血液毒性の軽減といった治療効果も図れる。
【0110】
本明細書の記載において、「一実施例/形態」、「いくつかの実施例/形態」、「例」、「具体例」、「いくつかの例」などの用語は、その実施例/形態または例と組み合わせて記載された具体的な特徴、構造、材料または特性が、本出願の少なくとも1つの実施例/形態または例に含まれることを意味することが意図されている。本明細書において、上記の用語の概略的な表現は必ずしも同じ実施例/形態または例を指すとは限らない。しかも、ここに記載された具体的な特徴、構造、材料または特性は、いずれか1つまたは複数の実施例/形態または例において適切な方法で組み合わせ得る。また、互いに矛盾しない限り、当業者なら、本明細書に記載された異なる実施例/形態または例と、異なる実施例態/形態または例の特徴とを結合したり組み合わせたりする可能性がある。
【0111】
さらに、「第1」や「第2」などの用語は、記述のためにのみ使用されており、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的特徴の数を暗黙的に指定したりするものとして解釈されるべきではない。したがって、「第1」や「第2」として限定される特徴は、少なくとも1つのこの特徴を明示的または暗黙的に含み得る。本明細書の記載において、「複数」とは、別段に明確な限定がない限り、2つ、3つなど少なくとも2つを意味することが意図されている。
【0112】
上記の実施形態は本発明を明確に説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことは、当業者に理解されるべきであろう。当業者であれば上記の開示に加えて他の変更や補正を行い得るが、これらの変更や補正は依然として本発明の範囲内に含まれるものとする。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
ペクチンを含む果皮および/または果滓を提供する工程1と、
工程1で得られた原料をアルカリ性水溶液と接触させてアルカリ処理を行い、混合物のpHを11以上に維持して結合切断水溶性ペクチンゲルを得る工程2と、
任意選択的に工程2で得られた結合切断水溶性ペクチンゲルを、pH9~11、0~8℃温度下で少なくとも2時間続いて濃縮させた後、pHを6~8の中性付近に調整し、前記結合切断水溶性ペクチンゲルに対して脱メトキシ基化処理を行うことで粗製脱メトキシ基化水溶性ペクチンゲルを得る工程3と、
任意選択的にカチオン性交換樹脂を使用して、前記水溶性ペクチンゲルを粗抽出する工程4と、
高分子量不純物を除去する工程5と、を含む方法であって、
工程2において、前記アルカリ処理は、好ましくpHが12~13であり、好ましく少なくとも30分間、例えば30、40、50、60、70、80、90、100、110または120分間続けられ、
工程3において、前記濃縮は、好ましく凍結乾燥法で行われ、粗製ペクチンの濃度が好ましく少なくとも5g/L、例えば10、15、20、25、30または40g/L、具体的に10~20g/Lの範囲になるまで行われ、好ましくpHを9~10とし、好ましく2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、24、30、36、40、48、60、又は72時間以上続けられ、
工程4において、前記カチオン性交換樹脂は、例えば、スルホン酸基又はDEAE基を持つカチオン性交換樹脂であり、
工程5において、前記高分子量不純物の除去には、好ましくカットオフ分子量が少なくとも10
3
~10
4
Daである限外濾過膜を使用し、例えば、孔径が1~10nmであり、0.05~0.5MPaの低差圧を維持しながら高フラックスの抽出を維持し、カットオフ分子量が10
3
~10
4
Daである限外濾過膜を使用する、オリゴガラクツロン酸多糖の調製方法。
[態様2]
工程2を実施する前に、前記果皮に対して酸処理を行うことで安定な水溶性ペクチンゲルを得ることをさらに含む方法であって、
前記酸処理は、好ましくpHが5~6で行われ、好ましく10~60分間、例えば10、15、20、30、40、45、50、60、75、90または120分間続けられる、態様1に記載の方法。
[態様3]
工程2のアルカリ処理において、マイクロ波で好ましく少なくとも50℃、例えば60、70、80、90または100℃まで加熱することをさらに含む、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
工程2のアルカリ処理を行う前またはその後に、セルラーゼ酵素分解処理を行うことをさらに含む方法であって、
前記酵素分解処理は、好ましくセルラーゼ1~10mg/gを添加し、酵素分解温度を室温から40℃まで、例えば38℃にした条件下で、少なくとも30分間、例えば30、40、45、50、60、70、75、80、90、100、120または150分間続けられる、態様1から3のいずれか1項に記載の方法。
[態様5]
前記果皮および/または果滓は、柑橘類、ナシ類、ブドウ類、ウリ科、バショウ科の果実、又はヒマワリの花托に由来し、例えば、タンジェリン、ミカン、オレンジ、キンカン、レモン、ザボン、枳金柑(Citrumquat)、リンゴ、ナシ、ビワ、サンザシ、アンズ、プラム、ウメ、モモ、キウイ、バナナ、ブドウ、スイカ、ヒマワリに由来する、態様1から4のいずれか1項に記載の方法。
[態様6]
工程4で得られた粗抽出物に対しては、該粗抽出物中のホモガラクツロン酸の含有量が70%以上である場合に酵素分解処理を行い、または粗抽出物中のホモガラクツロン酸の含有量が70%未満である場合に酵母発酵処理を行うことをさらに含む方法であって、
前記酵素分解処理には、ペクチンの最終濃度を2~5wt%に調整し、pH4.5で等電点脱タンパク質を行った後に、脱タンパク質で得られた生成物に固形化ペクチナーゼ(ただし、該固形化ペクチナーゼは、リアーゼ(PL、酵素活性が32U/g)、特異的エンドポリガラクツロナーゼ(Endo-polygalacturonases、endo-PG、E.C.3.2.1.15、4212U/g)、ペクチンエステラーゼ(PE、E.C.3.1.1.11、66.7U/g)及びプロトペクチナーゼを含む)を添加し、pHを3.0~6.0に制御し、分解時間を少なくとも30分間、例えば30、40、45、50、60、70、75、80、90、100、110、120分間以上とし、好ましく温度を少なくとも37以上、例えば40、42、45、50、55または60°0とし、
前記酵母発酵処理には、ペクチンの最終濃度を2~5wt%に調整し、活性化されたサッカロミセス・セレビシエ(saccharomyces cerevisiae)1~5wt%を加え、好ましく発酵温度を室温から35まで、例えば30°0とし、発酵時間を好ましく少なくとも12時間、例えば12、18、24、36、48時間以上とする、態様1から5のいずれか1項に記載の方法。
[態様7]
アルカリ性pHがそれぞれ独立して、例えばNaOH、KOH、CaOH及びそれらの混合物からなる群より選ばれる強アルカリ剤で達成され、および/または
酸性pHがそれぞれ独立して、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、亜硫酸、酢酸及びそれらの混合物からなる群より選ばれる希酸で達成される、態様1から6のいずれか1項に記載の方法。
[態様8]
その中のガラクツロン酸の含有量が少なくとも90%、例えば93~98%であり、エステル化度が例えば12~14%であり、かつ/または、分子量が3kDa~8kDaであるオリゴガラクツロン酸多糖が得られる、態様1から7のいずれか1項に記載の方法。
[態様9]
態様1から8のいずれか1項に記載のオリゴガラクツロン酸多糖を含有する食用組成物であって、
好ましくは、態様1から8のいずれか1項に記載のオリゴガラクツロン酸多糖610~710重量部、ならびに
オウギ(astragali radix)25~35重量部、炒りサンザシ(fried crataegifructus)5~25重量部、赤いナツメ(jujubae fructus)5~25重量部、及びチンピ(citri reticulatae pericarpium)6~20重量部を含むか、それらの成分から調製される、食用組成物。
[態様10]
オウギ、炒りサンザシ、赤いナツメ、チンピを前処理してから水に浸漬させ、少なくとも15分間、例えば15、20、25、30、40、45、50、60、70、75、80、90、100、120分間以上煮詰めた後、ろ過することによりエキスペーストを得る工程と、
前記エキスペーストとオリゴガラクツロン酸多糖とを混合して、前記食用組成物を得る工程とを含む、態様9に記載の組成物を調製するための方法。
[態様11]
前記浸漬は、固液体積比が1:5~15であり、浸漬時間が20~60分である、態様10に記載の方法。
[態様12]
慢性炎症関連の疾患を治療するために、好ましく医薬品、食品またはヘルスケア製品の形態として用いられる、態様1から8のいずれか1項に記載の方法によって調製されたオリゴガラクツロン酸多糖、態様9に記載の食用組成物。