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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 3/26 20060101AFI20250108BHJP
   A43B 3/10 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A43B3/26
A43B3/10 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024550549
(86)(22)【出願日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2024014326
【審査請求日】2024-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2023063109
(32)【優先日】2023-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507186551
【氏名又は名称】株式会社三井メディカルジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】三井 桂子
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-534184(JP,A)
【文献】特開2020-199011(JP,A)
【文献】中国実用新案第212852658(CN,U)
【文献】特開2003-245102(JP,A)
【文献】実開昭53-13452(JP,U)
【文献】登録実用新案第3191012(JP,U)
【文献】登録実用新案第3176164(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 3/00- 3/00
A34B 23/00-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールと、前記ソールに固定されるアッパーとを備えた履物であって、
前記アッパーが、つま先部側において内側甲被部と外側甲被部とに分離されていると共に、つま先部から履き口までの足背対応部において相互に重なり合った重なり範囲を有し、前記重なり範囲における前記内側甲被部と前記外側甲被部が、前記履き口から前記つま先部側の外縁部に向かった少なくとも所定の範囲において相互に接合されておらず、かつ、前記重なり範囲において少なくとも上側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部のつま先部側の外縁部が前記ソールに固定されている、履物。
【請求項2】
前記重なり範囲において上側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部のつま先部側の外縁部は、前記ソールの外周に沿って、足の内側又は外側からそれぞれ反対側に向かって少なくともつま先部の頂点に至る範囲に配置され、前記ソールに固定されている請求項1記載の履物。
【請求項3】
前記重なり範囲において上側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部のつま先部側の外縁部は、前記ソールの外周に沿って、足の内側又は外側からそれぞれ反対側に向かってつま先部の頂点を越えた位置に至る範囲に配置され、前記ソールに固定されている請求項2記載の履物。
【請求項4】
前記アッパーが、弾性素材を用いて形成され、つま先部及びかかと部のうちの少なくとも一方において、所定の圧迫圧を付与可能である請求項1記載の履物。
【請求項5】
前記圧迫圧が、30mmHg以上である請求項4記載の履物。
【請求項6】
前記重なり範囲における着用者のつま先に対応するつま先高さの非着用時の内寸が、着用者のつま先の高さ以下である請求項4記載の履物。
【請求項7】
前記アッパーのかかと部が、非着用時において、着用者のかかとの傾斜よりも前傾姿勢となるように付勢された形状である請求項4記載の履物。
【請求項8】
前記アッパーが、編物から形成されている請求項1記載の履物。
【請求項9】
前記アッパーが、少なくとも一部に厚み方向に膨出する凸部を有する請求項1記載の履物。
【請求項10】
前記アッパーが、外面形成層、内面形成層、並びに、前記外面形成層及び内面形成層間の中間層を備えた3層構造からなり、前記外面形成層は、前記内面形成層よりも伸縮性が相対的に高く、前記中間層は、前記外面形成層及び内面形成層よりも厚み方向のクッション性が相対的に高い請求項4記載の履物。
【請求項11】
前記重なり範囲における、前記内側甲被部及び前記外側甲被部が、前記ソールとの境界から前記履き口方向に向かった中途位置までの範囲に、その範囲より前記履き口寄りに位置する範囲と比較して剛性の高い部位を有する請求項1記載の履物。
【請求項12】
前記重なり範囲において下側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部の外縁部のつま先側端部が、前記ソールに固定されていない請求項1記載の履物。
【請求項13】
リンパ浮腫若しくは静脈還流障害の改善又は予防用である請求項4記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮腫等の改善や予防に効果のある履物の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ液の流れが悪くなってリンパ管よりリンパ液が漏れ出し皮下に溜まり、四肢が腫れるリンパ浮腫と称される症状がある。先天的なリンパ管の機能障害のほか、癌の手術等において行われるリンパ管やリンパ節の切除等を要因として発症する場合がある。リンパ浮腫の予防や治療には、適度な運動、リンパドレナージ、圧迫療法、リンパ管静脈吻合術などが有効であるが、リンパ節を切除した場合には完治は難しい。なかでも、足に浮腫が生じると、それ以前から着用していた靴を履くことが困難となる場合もある。
【0003】
特許文献1では、甲部中央につま先に向かって延びる切り込みが形成された靴本体と、切り込みを覆い、面ファスナーを介して甲部に貼着可能な覆い部とを有する靴が開示されている。リウマチによる変形や浮腫などで市販の靴の着用が困難な足であっても、覆い部を面ファスナーから剥がして足を入れると、切り込みが広がって履くことができ、その後、覆い部を面ファスナーを介して甲部に貼り合わせて使用される。
【0004】
特許文献2では、分断された内側甲被と外側甲被を有すると共に、両者を接続する薄布からなる舌革を有する介護用の靴が開示されている。足先に腫れやむくみが生じている場合に、舌革が伸びるように、内側甲被及び外側甲被間を広げて足を入れる。足を入れた後、内側甲被及び外側甲被間に掛け渡される止着片を面ファスナーを介して接合して使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3191012号公報
【文献】実用新案登録第3176164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の靴は甲部中央に設けた切り込みが広がり、特許文献2の靴は分断された内側甲被と外側甲被との間隔が広がり、それによって腫れの生じた足でも容易に履くことができる。しかしながら、いずれも、履き口から足を靴内に入れた後、舌片又は止着片を面ファスナーを介して甲部に接合する必要がある。これらを甲部に接合しない場合には、つま先で地面を蹴り上げる際に靴が脱げやすく、歩行に支障を来す。ところが、浮腫の程度によっては、足の甲(足背)が高過ぎてあるいは足幅が広くなり過ぎて、舌片や止着片での固定を行い難い場合もある。また、履き口から足を靴内に入れた後、さらに、舌片や止着片を面ファスナーによって接合する作業自体が面倒であり、浮腫の程度、その原因となっている病の程度、あるいは年齢等によっては、自ら前屈みになって舌片や止着片を接合する動作をとることが容易でない場合もある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、足に浮腫やリウマチ等による変形を起こしている場合でも容易に履くことができると共に、歩行も円滑に行うことができ、特に、リンパ浮腫若しくは静脈還流障害の改善又は予防用として適する履物を提供することを課題とし、好ましくは、腫れが収まった状態でも着用可能な履物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、
ソールと、前記ソールに固定されるアッパーとを備えた履物であって、
前記アッパーが、つま先部側において内側甲被部と外側甲被部とに分離されていると共に、つま先部から履き口までの足背対応部において相互に重なり合った重なり範囲を有し、前記重なり範囲における前記内側甲被部と前記外側甲被部が、前記履き口から前記つま先部側の外縁部に向かった少なくとも所定の範囲において相互に接合されておらず、かつ、前記重なり範囲において少なくとも上側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部のつま先部側の外縁部が前記ソールに固定されている、履物
を提供する。
【0009】
前記重なり範囲において上側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部のつま先部側の外縁部は、前記ソールの外周に沿って、足の内側又は外側からそれぞれ反対側に向かって少なくともつま先部の頂点に至る範囲に配置され、前記ソールに固定されていることが好ましい。
前記重なり範囲において上側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部のつま先部側の外縁部は、前記ソールの外周に沿って、足の内側又は外側からそれぞれ反対側に向かってつま先部の頂点を越えた位置に至る範囲に配置され、前記ソールに固定されていることがより好ましい。
【0010】
前記アッパーが、弾性素材を用いて形成され、つま先部及びかかと部のうちの少なくとも一方において、所定の圧迫圧を付与可能であることが好ましい。
前記圧迫圧が、30mmHg以上であることが好ましい。
【0011】
前記重なり範囲における着用者のつま先に対応するつま先高さの非着用時の内寸が、着用者のつま先の高さ以下であることが好ましい。
前記アッパーのかかと部が、非着用時において、着用者のかかとの傾斜よりも前傾姿勢となるように付勢された形状であることが好ましい。
【0012】
前記アッパーが、編物から形成されていることが好ましい。
前記アッパーが、少なくとも一部に厚み方向に膨出する凸部を有することが好ましい。
前記アッパーが、外面形成層、内面形成層、並びに、前記外面形成層及び内面形成層間の中間層を備えた3層構造からなり、前記外面形成層は、前記内面形成層よりも伸縮性が相対的に高く、前記中間層は、前記外面形成層及び内面形成層よりも厚み方向のクッション性が相対的に高い構成であることが好ましい。
【0013】
前記重なり範囲における、前記内側甲被部及び前記外側甲被部が、前記ソールとの境界から前記履き口方向に向かった中途位置までの範囲に、その範囲より前記履き口寄りに位置する範囲と比較して剛性の高い部位を有することが好ましい。
前記重なり範囲において下側に位置する前記内側甲被部又は前記外側甲被部の外縁部のつま先側端部が、前記ソールに固定されていない構成とすることもできる。
【0014】
本発明の履物は、リンパ浮腫若しくは静脈還流障害の改善又は予防のために有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アッパーがつま先部側において内側甲被部と外側甲被部とに分離されて構成されていると共に、つま先部から履き口までの足背対応部において相互に重なり合った重なり範囲を有し、かつ、重なり範囲における内側甲被部と外側甲被部が相互に接合されていない構成である。このため、履き口から足を挿入した場合には、内側甲被部と外側甲被部がそれぞれ外方に大きく変位することができ、浮腫の生じた足であっても容易に履くことができる。
【0016】
また、重なり範囲において少なくとも上側に位置する内側甲被部又は外側甲被部のつま先部側の外縁部がソールに固定されている。このため、重なり範囲における内側甲被部と外側甲被部が少なくとも一部において相互に接合されていない構成でありながら、歩行時につま先を蹴り上げる際の力を受け止めることができ、歩行に支障を来すこともない。よって、本発明によれば、従来のように、2つに分離された各甲被部をつなげるための舌片や止着片が不要で、着用時にそれらを固定する動作も不要である。浮腫の程度が進んでいる患者や高齢者、あるいは手の不自由の人でも容易に使用できる。
また、アッパーを、弾性素材を用いて形成し、つま先部及びかかと部のうちの少なくとも一方において、所定の圧迫圧を付与可能な構成とすることにより、リンパ浮腫若しくは静脈還流障害の改善又は予防用として特に適する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一の実施形態に係る履物の斜視図である。
図2図2は、上記実施形態の履物の分解斜視図である。
図3図3(a)は、図1のI-I線断面図であり、図3(b)は、図1のII-II線断面図である。
図4図4は、図1のつま先付近の構成を示した拡大図である。
図5図5は、他の態様に係る履物の斜視図である。
図6図6は、さらに他の態様に係る履物の斜視図である。
図7図7(a)は、図6のIII-III線断面図であり、図7(b)は、図6のIV-IV線断面図である。
図8図8は、内側甲被部のつま先側の外縁部を固定しない態様を説明するための断面図である。
図9図9(a)は、本発明の他の実施形態に係る履物を示す側面図であり、図9(b)は、その平面図である。
図10図10は、図9の実施形態に係る履物を着用した状態のイメージ図である。
図11図11(a)は、図9の実施形態に係る履物のアッパーの、ソールへの固定前の外面方向から見た斜視図であり、図11(b)は、その内面方向から見た斜視図であり、図11(c)は、上記アッパーのソールへの固定前において、つま先部側を近接させた状態の平面図である。
図12図12は、アッパーの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1及び図2は、本発明の一の実施形態にかかる履物1を示す図である。履物1は、アッパー10と、縫製や接着等、公知の種々の方法により一体化されるソール20とを有して構成される。
【0019】
アッパー10は、足の内側を主として被覆する内側甲被部110及び足の外側を主として被覆する外側甲被部120とを有して構成される。内側甲被部110及び外側甲被部120は、つま先部2から履き口3までの足背対応部4において平面視で重なり合っている重なり範囲Aを有している。本実施形態では、この重なり範囲Aにおいて、内側甲被部110が外側甲被部120の下側に位置している。
【0020】
重なり範囲Aにおいて下側に位置する内側甲被部110は、本実施形態では、つま先部2からかかと部5に至る足の内側の範囲を被覆する。なお、土踏まずに相当する部位を中足部とし、中足部より前方を前足部、中足部より後方を後足部として区分した場合に、内側甲被部110は、少なくとも前足部に相当する範囲を被覆可能なものであってもよい。
【0021】
外側甲被部120も、本実施形態では、つま先部2からかかと部5に至る足の外側の範囲を被覆する。外側甲被部120も、内側甲被部110と同様に少なくとも前足部の範囲を被覆可能な構成とすることもできる。
【0022】
外側甲被部120は、外縁部121がソール20の外周に沿って、かつ、本実施形態では内側に折り曲げられて接合される(図3(a),(b)参照)。接合手段は任意であり縫製や接着等の各種手段を用いることができる。図4に示したように、外縁部121のうち重なり範囲A内に位置するつま先部2側の外縁部121Aのつま先側端部121a1は、つま先部2の頂点2aを越えた反対側(ここでは足の内側)の適宜の位置まで延びている。
【0023】
内側甲被部110は、外縁部111がソール20の外周に沿って、かつ、本実施形態では内側に折り曲げられて接合される(図3(a),(b)参照)。外縁部111のうちつま先部2側の重なり範囲A内に位置する外縁部111Aは、外側甲被部120のつま先部2側の外縁部121Aに重ね合わせて接合される。よって、本実施形態では、内側甲被部110と外側甲被部120とは、つま先部2から履き口3に至るまでの足背対応部4において、つま先部2側における外縁部111A,121Aのみが相互に接合され、その他の重なり範囲Aでは、接合されずに重なり合っているだけの構成となっている。すなわち、図4に示したように、履き口3を形成する内縁部114,124のうち、重なり範囲A内に位置する部位114A,124Aは、それぞれ上下に離間可能となっている。
【0024】
歩行時において、つま先を中心としてかかとを蹴り上げた際には、足背による押圧力を受け止める部位が必要となる。本実施形態において外側甲被部120は、つま先部2側の外縁部121Aが、つま先部2の頂点2aを越えた位置までソール20に接合されている。従って、つま先を中心としてかかとを蹴り上げた際には、この外側甲被部120が足背による押圧力を受け止める。よって、歩行時において履物が脱げてしまうことを防止できる。
【0025】
また、本実施形態では、内側甲被部110のつま先部2側の外縁部111Aも外側甲被部120のつま先部2側の外縁部121Aと共にソール20に接合されている。そのため、歩行時につま先を蹴り上げた際には足背がまず内側甲被部110に当接し、次に内側甲被部110が外側甲被部120に当接する。よって歩行時の足背から受ける押圧力は、外側甲被部120だけでなく内側甲被部110によっても受け止められて分散され、歩行時の違和感が抑制される。
【0026】
内側甲被部110及び外側甲被部120は、かかと部5側に位置する端縁112及び122が接合されている(図1参照)。接合手段は任意であり縫製や接着等の手段を用いることができる。但し、内側甲被部110及び外側甲被部120は、つま先部側において分離され、上記のように重なり範囲Aにおいて相互に接合されていない構成であればよく、かかと部5側では分離されずに、内側甲被部110及び外側甲被部120が一体に形成されたものであってもよい。
【0027】
また、内側甲被部110及び外側甲被部120を前足部の範囲のみ、あるいは前足部及び中足部の範囲のみ等、かかと部5よりも前方までの範囲にとどめた場合には、端縁112及び122は相互に接合されず、例えば、サンダルのように端縁112及び122の後方が開放された形態として提供される。
【0028】
内側甲被部110及び外側甲被部120としては、消臭、防臭、抗菌の機能を発揮する繊維や糸等から構成される素材を用いることが好ましい。このような素材としては公知の種々のものを用いることができ、ポリマー改質によって繊維自体を弱酸性としたもの、ポリマーそのものを消臭性をもつ薬剤で改質したもの、消臭剤をバインダーで繊維表面に付着させたもの、におい成分を吸着するとともにさらに金属イオンで分解する機能を付与したもの等種々のものを用いることができる。
【0029】
内側甲被部110及び外側甲被部120は、弾性素材を有して構成されることが好ましい。内側甲被部110及び外側甲被部120の全てを弾性素材から構成してもよいし、一部に弾性素材を含む構成としてもよい。弾性素材は、ゴム又は合成樹脂で所定の弾性を有するものが用いられる。また、内側甲被部110及び外側甲被部120は、編物から形成し、編み目の伸縮を利用したものであってよい。編物を構成する糸として弾性糸を含めた構成としてもよい。
【0030】
内側甲被部110及び外側甲被部120は、ソール20と各外縁部111,121との境界から、内側甲被部110と外側甲被部120の内縁部114,124によって形成される履き口3方向に向かった中途位置までの所定の範囲Bを、履き口3寄りの範囲Cと比較して剛性の高い部位を有する構成とすることが好ましい(図5参照)。範囲Bの全てが範囲Cよりも高い剛性であってもよいし、一部に範囲Cよりも剛性の高い部分を有する構成でもよい。剛性の高い部分を有する構成とすることで、歩行時につま先を蹴り上げた際の足背による押圧力をより受け止めやすくなる。但し、剛性を高くしすぎると当たり感ないしは違和感となるため、そのような当たり感等を生じない程度とする。剛性を高くする手段としては、例えば、内側甲被部110及び外側甲被部120を構成している素材を範囲Bにおいて加熱し、一部を軟化させ、その後硬化させることで形成することができる。また、編物で構成した場合に、編み目の大きさ、糸の素材を範囲Bと範囲Cとで異ならせることで形成することもできる。さらには、範囲Bに、範囲Cとはガラス転移点の異なる糸を用い、当該糸のみが軟化する温度で加熱し、その後硬化させることにより範囲Bに剛性の高い部分を設けることもできる。また、範囲Bに、範囲Cよりも剛性の高いフィルム等を固着して形成することもできる。さらに、範囲Bと範囲Cを構成する素材を異ならせ、範囲Bの方が範囲Cより剛性の高い素材、あるいは、範囲Cの方が範囲Bより弾性の高い素材から構成することもできる。
【0031】
図6及び図7(a),(b)に示したように、内側甲被部110及び外側甲被部120の内面113,123は、少なくとも一部に厚み方向に膨出する凸部113a,123aを有する構成とすることが好ましい。凸部113a,123aを有することにより、歩行時には足に密接して足の固定機能を果たすと共に、足背(特に、内側及び外側)が刺激され、リンパ液の流れを促し、浮腫の改善に寄与できる。歩行時においては、足を踏み出す度に、凸部113a,123aが当接を繰り返すため、リンパ液の流れを促すのに効果的である。
【0032】
凸部113a,123aは、例えば内側甲被部110及び外側甲被部120を編物から形成する場合、当該凸部113a,123aを形成する部位に、インレイ線材を挿入して形成することができる。また、編物や織物からなる一対の布間に、綿、発泡樹脂等のクッション材を配置し、ステッチで押さえて、当該凸部113a,123aに相当する部位を膨出させたキルティング状としたものを内側甲被部110及び外側甲被部120として用いることもできる。内側甲被部110及び外側甲被部120を合成樹脂製のシート材から形成する場合、当該シート材にクッション材を固着して凸部113a,123aとしたり、シート材と凸部113a,123aとなるクッション材を一体成型したりすることも可能である。
【0033】
また、内側甲被部110及び外側甲被部120にそれらと別部材からなる裏地(図示せず)を設け、この裏地に凸部を設けた構成とすることもできる。この凸部は、上記と同様に、裏地を編物から形成した場合には、インレイ線材を挿入して形成したり、キルティング地を形成する手法を用いたりして形成できる。また、裏地となるシート材に凸部を一体成型により形成することもできる。
【0034】
アッパー10を構成する内側甲被部110及び外側甲被部120は、上記のように重なり範囲Aを有するように交差しており、図1図4図6に示したように、交差点6を含む内縁部114,124により取り囲まれた範囲が履き口3となる。すなわち、履き口3は、内側甲被部110及び外側甲被部120の内縁部114,124の形状のほか、両者の交差角度によっても形状が変化する。例えば、内縁部114,124の交差角度を鋭角にしたり、鈍角にしたりして、足背の露出範囲の異なるデザインとすることができる。また、内縁部114,124の形状によって交差部が円弧状となるように形成したり、履物の幅方向に略直線部が形成される形状としたりすることもできる。さらに、内縁部114,124を、図1に示したように波形にするなどの加工を施してデザイン性を高めることができる。
また、履き口3の周囲を構成する内縁部114,124付近は、その面に沿った方向に伸縮性が高くなっていることが好ましい。それにより、足を入れる際には、内縁部114,124が伸びることで容易に履ける一方、着用者の足首回りにフィットするため、歩行時において脱げてしまうことを抑制できる。アッパー10に伸縮性の高い内縁部114,124や凸部113a,123aといった特性の異なる部位を形成することに鑑みると、アッパー10は、特に、編物から形成すると好ましい。例えば、平編みで編成しつつ、インレイ線材を挿入して上記の凸部113a,123aを形成し、さらに、内縁部114,124付近をリブ編みとすることで履き口3の周方向の伸縮性を高めることができるなど、編み組織を変えることで所望のアッパー10を製作することができる。
【0035】
アッパー10を構成する内側甲被部110及び外側甲被部120の各外縁部111,121には上記のように縫製や接着等によりソール20が接合され、履物1が形成される。ソール20は、合成樹脂製、ゴム製、木製、皮革製など公知の種々のものを用いることができる。また、ソール20は、アウターソールのみからなるもの、アウターソールに加え、ミッドソールを有するスニーカーなどに適用されるもの、アウターソールに加え、インソールや中物などを備えた革靴などに適用されるもの、ヒール付きのもの等、種々の構成とすることができる。また、本実施形態では、内側甲被部110の外縁部111及び外側甲被部120の外縁部121をいずれも内側に折り曲げてソール20に接合している。従って、着用時の違和感を防止するため、各外縁部111,121を被覆するように中敷きを配置させたりすることももちろん可能である。
【0036】
なお、図6に示したように、内側甲被部110及び外側甲被部120におけるかかと部5の上縁部付近(アキレス腱に対応する部位)において、上記の凸部113a,123aとは別途に、膨出部130を設けることが好ましい。膨出部130は、凸部113a,123aと同様に、インレイ線材やクッション材を用いて形成できる。アキレス腱付近を支持でき、フィット感が高くなり、歩行時に脱げてしまうことを防止するのに役立つ。
【0037】
本実施形態の履物1を使用する場合、使用者は、履き口3から足を入れる。足を入れると、内側甲被部110及び外側甲被部120が重なり範囲Aにおいて相互に接合されていないため、内側甲被部110及び外側甲被部120はそれぞれ外方に大きく広がる。足を入れた後は、内側甲被部110及び外側甲被部120のつま先部2側の外縁部111A,121Aが共にソール20に接合されているため、いずれも元の状態に戻ろうとする。特に、外側甲被部120のつま先側端部121a1が本実施形態のようにつま先部2の頂点2aを越えて反対側に位置していると、外方に広がった場合には、内側甲被部110方向に付勢される力がより強く働く。また、好ましくは、内側甲被部110のつま先側端部111a1もつま先部2の頂点2aを越えた反対側に位置していると、外方に広がった後、元の位置に復帰しようとする力がより強く働く。よって、足を入れた後は、外側甲被部120及び内側甲被部110のいずれもが元の状態に復帰しようとするため、足の表面に密接する。
【0038】
例えば、一方の足はリンパ浮腫が生じていない通常の状態で、他方の足がリンパ浮腫で足囲が大きくなっている場合、まず一方の足を履き口3から足入れすると、それに応じて内側甲被部110が外方に広がり容易に足入れできる。他方のリンパ浮腫が生じている足を履き口3から足入れした場合は、内側甲被部110及び外側甲被部120が重なり範囲Aにおいてにおいて相互に接合されていないため、外方により大きく広がり、足に腫れが生じていても、容易に履くことができる。
【0039】
着用した状態では、内側甲被部110及び外側甲被部120のいずれにも、元の位置に復帰しようとする力が作用するため、浮腫の生じていない足でも、浮腫の生じている足でも、いずれであっても、各足の表面に密接する。歩行時においても、浮腫の有無に関わらず、内側甲被部110及び外側甲被部120が密接しているため、つま先を蹴り上げる際の足背の力を受け止めることができ、歩行に支障を生じることもない。歩行時には、凸部113a,123aが、つま先の蹴り上げ動作、かかとの着地動作、その間における重心移動により、足の表面を押圧して刺激する。これにより、リンパ液の流れの改善を促し、腫れの抑制につながる。
【0040】
履物1を脱ぐ際には、内側甲被部110及び外側甲被部120が重なり範囲Aにおいて相互に接合されておらず、大きく外方に広がるため、浮腫の生じていない足、浮腫の生じている足のいずれも容易に脱ぐことができる。従って、本実施形態の履物1は、両足とも浮腫が全く生じていない状態で履くことができると共に、片足あるいは両足に浮腫が生じても履くことができ、患者の経済的負担の軽減に役立つ。また、内側甲被部110及び外側甲被部120の交差点6付近の形状や内縁部114,124の形状等を種々のものとすることでデザインに富んだものを提供でき、浮腫用、治療用といった意識ではなく、通常の靴とさほど変わらない意識で着用することができる。
【0041】
上記実施形態では、外側甲被部120の下側に位置する内側甲被部110のつま先部2側の外縁部111Aを、外側甲被部120のつま先部2側の外縁部121Aと共にソール20に固定しているが、図8に示したように、内側甲被部110のつま先部2側の外縁部111Aは、外側甲被部120との重なり範囲Aにおいて、外側甲被部120のつま先部2側の外縁部121Aやソール20に固定しない構成とすることもできる。
【0042】
この場合、内側甲被部110を外方に広げると、外縁部111Aのつま先側端部111a1は内縁部114の延長上に位置しているため(図2参照)、内縁部114を外方に広げた際には、つま先側端部111a1側も外方に傾くように動き、より大きく広がりやすくなる。従って、腫れの程度がより大きい場合にも対応できる。内側甲被部110が大きく外方に広がっても、外側甲被部120のその上側に位置しているため、足入れした後は、外側甲被部120の復元力に追従して内側甲被部110も足の表面に密接する。歩行時においても、内側甲被部110の外方への広がりは、外側甲被部120によって押さえられるため、つま先蹴り上げ時の足背による押圧力も受け止めることができ歩行に支障を来すこともない。
【0043】
なお、上記実施形態では、内側甲被部110及び外側甲被部120の各外縁部111,121をいずれもソール20に対して内側に折り曲げて接合しているが、これは単なる一例であることはもちろんであり、外側に折り曲げて接合することも可能であるし、ソール20への固定用のその他の部材を用いて固定することも可能であり、限定されるものではない。
【0044】
図9図11は、本発明の他の実施形態に係る履物1’を示す。なお、上記実施形態と同じ部位は同じ符号で示す。本実施形態では、アッパー10として、図11(a),(b)に示したように、つま先部2側は分離されているが、かかと部5側は分離されていない内側甲被部110と外側甲被部120が一体となった素材を用い、これをソール20に固定している。また、アッパー10は、弾性糸を編み込んだ編地を使用し、所定の弾性を備えていると共に、インレイ線材を挿入することにより、キルティング状に形成し、内方及び外方のいずれにも突出する部分を有し、このうち内方に突出する部分が上記実施形態の凸部113a,123aに相当する。図11(a),(b)に示したアッパー10となる素材は、図11(c)に示したように、かかと部5を中心として、内側甲被部110及び外側甲被部120を、平面視で接近させ、さらに、上記実施形態の図5及び図6に示すように、両者が重なり合った重なり範囲Aが形成されるようにして、アッパー10が形成される。
【0045】
但し、上記実施形態においては、重なり範囲Aは、履き口3からつま先部2側の外縁部111A,121Aに至るまで相互に接合されていない構造であるが、本実施形態では、つま先部2寄りの一部の範囲A2が相互に接合されている。本実施形態では、縫製により接合しているが、接合手段は溶着等、任意である。これは、歩行時の足背による押圧力を受け止める剛性を発揮させるためと、後述するつま先高さの非着用時の内寸h1を所定の値以下の形状とするためであるが、本実施形態と上記実施形態は、いずれも、履き口3からつま先部2の外縁部111A,121Aに向かった少なくとも所定の範囲(本実施形態では、範囲A2を除いた履き口3寄りの範囲、上記実施形態では、ほぼ全ての範囲)において相互に接合されていない構成である。
【0046】
図9(a)は、ソール20にアッパー10を固定した状態を示す側面図であり、図9(b)はその平面図である。図9(a),(b)に示したように、本実施形態では、つま先部2側の内側甲被部110と外側甲被部120との重なり範囲Aのうち、着用者のつま先(足指)に対応するつま先対応範囲A1における底面(着用者の足裏が接触するインナーソールの面)との距離であるつま先高さの非着用時の内寸h1が、着用者のつま先(足指)の高さh2以下で形成されている。
【0047】
また、図9(a)に示したように、アッパー10のかかと部5の着用者のかかとの傾斜(かかとの背面のうち最も後方に突出している頂部Oを中心として足首に向かう、かかとの背面に沿った傾斜)方向によりも、非着用時において、所定の角度θ分、前傾姿勢となるように、アッパー10の素材の弾性力で付勢されている。
【0048】
なお、着用者のつま先高さやかかとの傾斜は、個人差がある。オーダーメイドの際は、特定の個人のデータを用いることができるが、オーダーメイド以外の場合には、例えば、足長や足囲に対応して、つま先高さやかかとの傾斜の値を予め統計的に求めておき、その値を基に汎用性の高い値で設計することができる。但し、リンパ浮腫患者の場合には、個人差が大きく、また、左右差もあるため、オーダーメイドで設計することが好ましい。
【0049】
本実施形態によれば、着用者が足を入れると、重なり範囲Aのうちのつま先対応範囲A1において、つま先高さh1が着用者のつま先高さh2まで持ち上がることになる。よって、図10に示したように、着用者のつま先に対して反力が作用し、圧迫圧P1が発生する。また、かかと部5が着用者のかかとに沿って角度θ分後傾することになるため、かかと部5の反力による弾性力が働き、着用者のかかとを前方に押しつける方向に付勢する。それにより、着用者のかかとにも所定の圧迫圧P2が作用する。
【0050】
図10に示したように、弾性ストッキングは、つま先が露出しているタイプが多い。つま先が露出していないタイプも、着用しにくくなるため、つま先における圧迫圧がそれほど高くないものも多い。かかとも同様であり、弾性ストッキングは、かかとへの圧迫圧がそれほど高くない。これに対し、本実施形態の履物1’によれば、つま先とかかとに対して所定の圧迫圧P1,P2を付与できる。よって、本実施形態の履物1’は、弾性ストッキングを合わせて着用することで、弾性ストッキングによる圧迫圧が不足する部分を補うことができる。よって、リンパ浮腫等の改善や予防を促すことができる。
【0051】
つま先対応範囲A1やかかと部5による圧迫圧P1,P2は、リンパ浮腫患や静脈還流障害の改善や予防用としては、30mmHg以上であることが好ましい。より好ましくは、30~60mmHgの範囲である。これらの圧迫圧P1,P2は、アッパー10として使用する素材の編み方、弾性糸の挿入数、弾性糸の素材、弾性糸の直径等により調整することができ、また、凸部113a,123aの突出量、凸部113a,123aを形成するインレイ線材や発泡樹脂等の弾性や素材等により調整することができる。つま先対応範囲A1におけるつま先高さの非着用時の内寸h1、アッパー10のかかと部5の前傾姿勢の角度θによっても調整することができる。
【0052】
なお、上記の説明においては、つま先高さの非着用時の内寸h1と、かかと部5の前傾姿勢の角度θの両方を調整しており、弾性ストッキングでは十分ではないつま先及びかかとの両方に対して、所定の圧迫圧を付与できる点で好ましいが、いずれか一方のみの構成を有するものであっても、弾性ストッキングによるリンパ浮腫等の改善又は予防効果を補うことができ、いずれも、本実施形態に含まれる態様である。また、弾性ストッキングに分類される製品として、「トゥキャップ」あるいは「フットキャップ」と呼ばれ、つま先を被覆する専用のものがある。これは、上記のようにつま先が覆われていない弾性ストッキングやつま先における圧迫圧が不足する弾性ストッキングを使用する場合等において、つま先の圧迫圧を補うために用いられる。しかしながら、例えば、外出時に、弾性ストッキングに加えて、「トゥキャップ」等を履き、さらに靴を履くといった作業は面倒であると共に、歩行時間によっては靴内が蒸れやすくなる。本実施形態によれば、履物1’自体が、所定の圧迫圧P1,P2を付与可能であるため、「トゥキャップ」等を履く必要がなくなり、装着時の面倒さが軽減され、また蒸れにくくなる。但し、「トゥキャップ」等との併用を妨げるものではなく、この場合には、「トゥキャップ」等によってもなお不足する圧迫圧を補うことができるという利点がある。
また、本実施形態において、つま先対応範囲A1で、親指とその他の4本指との間、あるいは各指の間等に、仕切り(図示せず)を設けることも可能であり、この仕切りに凸部を形成することで、指の間も所定の圧迫圧を付することが可能となる。
【0053】
また、つま先対応範囲A1及びかかと部5以外の部分において、着用時に所定の圧迫圧が付与されるようにすることも可能である。但し、つま先対応範囲A1及びかかと部5以外の部分以外の部分の圧迫圧があまり高いと履きにくくなるため、つま先対応範囲A1及びかかと部5以外の部分以外の部分では圧迫圧は低めとなるように、例えば、5~30mmHg程度となる設計とすることが好ましい。
【0054】
また、アッパー10は、上記のように、凸部113a,123aを有することが好ましいが、この部分の断面構造は、図12に示したように、アッパー10の外面を形成する外面形成層10a、アッパー10の内面113,123を形成する内面形成層10b、並びに、外面形成層10a及び内面形成層10b間の中間層10cを備えた3層構造となっているが、このうち、外面形成層10aの伸縮性が、内面形成層10bの伸縮性よりも相対的に高い構成であることが好ましい。中間層10cは、外面形成層10a及び内面形成層10bよりも厚み方向のクッション性(衝撃吸収性)が相対的に高い構成であることが好ましい。例えば、外面形成層10aや内面形成層10bの各編地を編成する際に用いる弾性糸の材料、径、使用本数等の調整により、外面形成層10aの伸長弾性率を内面形成層10bの伸長弾性率よりも相対的に高くすることができる。逆の関係、すなわち、外面形成層10aよりも内面形成層10bの伸長弾性率が高い場合には、足を入れた際の抵抗が強くなり過ぎ、履きにくくなる。特に、上記のように、リンパ浮腫患者用等として、つま先高さの非着用時の内寸h1を低くするほど、また、アッパー10のかかと部5の前傾姿勢の角度θを大きくするほど、基本的に履きにくくなるため、外面形成層10aの伸長弾性率が内面形成層10bの伸長弾性率よりも相対的に高い構成であることが好ましい。
【0055】
中間層10cは、例えば、インレイ線材として、太めの糸や毛糸を複数積層されるように挿入したり、弾性糸の挿入本数を増やしたりするなどして、厚み方向の弾力性を調整し、クッション性を高める構成とすることができる。編物により、外面形成層10a、内面形成層10b及び中間層10cを構成すれば、各編地の編成、インレイ線材の挿入などを調整することにより編み機で連続的に行うことができ便利であり、好ましい。
【0056】
但し、例えば、外面形成層10a及び内面形成層10bを、それぞれ織物や不織布等から形成した場合であっても、外面形成層10aの伸長弾性率が内面形成層10bの伸長弾性率よりも高い構成とし、中間層10cとして、綿、発砲樹脂等を用い、厚み方向のクッション性が外面形成層10aや内面形成層10bよりも高い構成とすることは可能である。
【0057】
なお、上記した履物1,1’は、外履き用及び室内履き用のいずれであってもよいことはもちろんである。
【0058】
1,1’ 履物
2 つま先部
3 履き口
4 足背対応部
5 かかと部
10 アッパー
10a 外面形成層
10b 内面形成層
10c 中間層
110 内側甲被部
111 外縁部
111A つま先部側の外縁部
112 端縁
113 内面
113a 凸部
114 内縁部
120 外側甲被部
121 外縁部
121A つま先部側の外縁部
122 端縁
123 内面
123a 凸部
124 内縁部
20 ソール
A 重なり範囲
【要約】
リンパ浮腫等により足に腫れがあっても容易に着用できると共に、通常時でも着用できる履物を提供する。
アッパー10が内側甲被部110と外側甲被部120とに分離されて構成され、つま先部2から履き口3までの足背対応部4において相互に重なり合った重なり範囲Aを有し、かつ、重なり範囲Aにおける内側甲被部110と外側甲被部120が相互に接合されていない構成である。このため、履き口3から足を挿入した場合には、内側甲被部110と外側甲被部120がそれぞれ外方に大きく変位することができ、浮腫の生じた足であっても容易に履くことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12