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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】骨盤底筋サポート着衣
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/04 20060101AFI20250108BHJP
   A41C 1/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A41B9/04 C
A41C1/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024550550
(86)(22)【出願日】2024-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2024017549
【審査請求日】2024-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2023078935
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507186551
【氏名又は名称】株式会社三井メディカルジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】三井 桂子
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065708(WO,A1)
【文献】特開2008-73235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/04
A41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃、後身頃及び股部を備えたパンツ部を有し、
編物により形成され、
前記前身頃及び前記後身頃は、それぞれ、前記股部の幅方向中心線の延長線が幅方向の略中心を通過する所定の幅を有する中央領域と、前記中央領域の両側に位置する側部領域とをそれぞれ有し、
前記中央領域の伸長弾性率が、前記側部領域の伸長弾性率よりも高く、
前記股部は、
外側編地、内側編地、並びに、前記外側編地及び前記内側編地間の中間層を備えた3層構造からなり、
前記中間層が、略環状で所定の厚みを有し、前記外側編地及び前記内側編地よりも厚み方向のクッション性が高く、
前記中間層によって厚み方向に膨出し、着用時に女性の外性器の周辺部に当接する環状膨出部が形成されており、
前記環状膨出部に取り囲まれた凹部の底面を構成する編地が、前記外側編地及び前記内側編地同士が一体となるように編成されている
骨盤底筋サポート着衣。
【請求項2】
前記中間層は、前記外側編地及び前記内側編地の編成時に挿入されるインレイ糸により形成されている請求項1記載の骨盤底筋サポート着衣。
【請求項3】
前記インレイ糸が、コットンを含む糸である請求項2記載の骨盤底筋サポート着衣。
【請求項4】
前記内側編地は、前記外側編地よりも伸長弾性率が低い請求項1記載の骨盤底筋サポート着衣。
【請求項5】
前記股部の外側に設けられ、着用時に前記股部を前記外性器に近づける方向に付勢する弾性生地をさらに有する請求項1記載の骨盤底筋サポート着衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨盤底筋を下方から支える補助機能を果たす骨盤底筋サポート着衣に関する。
【背景技術】
【0002】
骨盤底筋(肛門挙筋(骨盤隔膜)、肛尾靭帯、深会陰横筋、尿道括約筋、肛門挙筋等の総称で骨盤底筋群とも呼ばれる)は、骨盤の下部に位置し、主に内臓を支える働きをするが、出産、加齢等によりその機能に衰えが生じる場合がある。骨盤底筋の機能が衰えは、尿漏れ、姿勢の崩れ、運動機能の低下等の要因になる場合があり、さらには骨盤臓器が正常の位置から下垂する骨盤臓器脱につながる場合もある。そのため、骨盤底筋の収縮法の習得等を目的とした運動が推奨されている。特許文献1は、そのような運動を正しく行わせて効果を高めるためのガードルを開示している。このガードルは、該ガードルの脚部の内側部分を作用領域とし、この作用領域から前身頃側へ延びる前面引き上げ構造と、後身頃側へ延びる後面引き上げ構造とからなる伸張性帯状構造を備え、それらの弾性により引っ張り力が相互に伝達するようになっていると共に、脚部の作用領域とその近傍に、弾性変形し難い難伸長性構造を形成したものである。脚部の作用領域に弾性力が作用することで、骨盤底筋の収縮に寄与できるとしている。
【0003】
また、特許文献2は、略平板状の股間装着物を股間に当て、それを牽引紐で上方に牽引するサポーターに関するもので、骨盤底筋を上方に持ち上げて支え、骨盤底筋の機能低下を防ぐものである。特許文献3は、伸長性シートと低伸長性シートを組合せ、特に、骨盤臓器脱を抑制又は防止を目的とした女性用下着を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5661405号公報
【文献】特開2016-94690号公報
【文献】特許第5492339号公報
【文献】WO2019/065708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、骨盤臓器脱は、上記のように骨盤臓器が正常位置から下垂する現象で、重力により、膣口を開口させてその外部に脱出しようとする力が作用する。従って、単に女性器に対して骨盤底筋を上方に押圧する方向への力を加えただけでは、膣口の開口を防ぐことが難しい。しかるに、特許文献1及び2は、膣乃至外陰部が直接接する股部分に接している部分を上方に押し上げて骨盤底筋を上方に押し上げるだけである。そのため、骨盤臓器脱の予防効果は極めて低い。特許文献3は、骨盤臓器脱の予防効果がある旨を述べているが、その機能は、特許文献1及び2とほぼ同様であり、股部分を上方に押し上げる力しか作用せず、骨盤臓器脱の予防効果の点で高い効果は期待できないと考えられる。
【0006】
一方、本発明者が提案した特許文献4に示された技術は、環状部が膣口を狭める方向への力を加えられる点で骨盤臓器脱の予防効果が高い。また、環状部によって外性器の周辺部が押圧されることで、会陰部に生じるリンパ浮腫や静脈瘤の予防にも効果がある。しかしながら、着用時における歩行等の体動により環状部が変形すると、その変形量によっては当接位置にずれが生じたりして十分な効果を発揮できない場合がある。また、外性器の周辺部を押圧する場合、デリケートな部分であり、着衣としてはより柔らかな感触であることが望ましい。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、柔らかな接触感のものでありながら、骨盤底筋を支持し、骨盤臓器脱やリンパ浮腫等の予防効果をより高めることができる骨盤底筋サポート着衣を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、
前身頃、後身頃及び股部を備えたパンツ部を有し、
編物により形成され、
前記前身頃及び前記後身頃は、それぞれ、前記股部の幅方向中心線の延長線が幅方向の略中心を通過する所定の幅を有する中央領域と、前記中央領域の両側に位置する側部領域とをそれぞれ有し、
前記中央領域の伸長弾性率が、前記側部領域の伸長弾性率よりも高く、
前記股部は、
外側編地、内側編地、並びに、前記外側編地及び前記内側編地間の中間層を備えた3層構造からなり、
前記中間層が、略環状で所定の厚みを有し、前記外側編地及び前記内側編地よりも厚み方向のクッション性が高く、
前記中間層によって厚み方向に膨出し、着用時に女性の外性器の周辺部に当接する環状膨出部が形成されており、
前記環状膨出部に取り囲まれた凹部の底面を構成する編地が、前記外側編地及び前記内側編地同士が一体となるように編成されている
骨盤底筋サポート着衣を提供する。
【0009】
前記中間層は、前記外側編地及び前記内側編地の編成時に挿入されるインレイ糸により形成されていることが好ましい。
前記インレイ糸が、コットンを含む糸であることが好ましい。
前記内側編地は、前記外側編地よりも伸長弾性率が低い構成であることが好ましい。
【0010】
前記股部の外側に設けられ、着用時に前記股部を前記外性器に近づける方向に付勢する弾性生地をさらに有する構造とすることもできる。
この場合、前記弾性生地が、前記前身頃及び前記後身頃間に、前記股部の外面を通過して設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、編物により形成されており、特に、股部は、外側編地及び内側編地と、それらの間の中間層とを含む3層構造からなり、所定の厚みを有する中間層によって環状膨出部が形成されている。女性の外性器の周辺部に当接するのは内側編地であるため、肌への当たり感が柔らかいと共に、環状膨出部のクッション性が高いため、局部的な圧迫感を和らげつつ、外性器の周辺部への押圧力を高めることができる。その結果、リンパ液の流れを促し、リンパ浮腫等の予防効果をより高めることができる。
【0012】
また、環状膨出部に取り囲まれた凹部の底面を形成する編地は、外側編地及び内側編地同士が一体となるように編成されることにより構成されている。よって、この底面を形成する編地は、外側編地及び内側編地のそれぞれと比較して伸び率が低くなり、環状膨出部の形状が大きく変形することを抑制でき、歩行等の体動で外性器の周辺部から位置ずれすることを抑制し、環状膨出部による押圧力を確実に発揮させることができる。また、環状膨出部は、形状の大きな変形が抑制される構成でありながら、前後方向に引っ張られることで、凹部を挟んだ環状膨出部を構成する部分同士を近接させる方向に力が作用し、この力は膣口の広がりを抑制する力となるため、骨盤臓器脱の予防にも効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、本発明の一の実施形態に係る骨盤底筋サポート着衣の前方から見た斜視図であり、図1(b)は後方から見た斜視図である。
図2図2は、図1の骨盤底筋サポート着衣の展開図である。
図3図3(a)は、股部、環状膨出部及び弾性生地を示した斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図であり、図3(c)は、図3(a)のB-B線断面図である。
図4図4は、環状膨出部の作用を説明するための図である。
図5図5(a)は、本発明の実施形態に係る骨盤底筋サポート着衣の股部、環状膨出部及び弾性生地を示した斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のC-C線断面図であり、図5(c)は、図5(a)のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の骨盤底筋サポート着衣は、パンツ部を有する構成である。ここでいう「パンツ部を有する」とは、全体がパンツとなっているものパンツ型と、パンツ部が一部を構成しているパンティーストッキングタイプのもののいずれも含む意味である。
【0015】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1図4は、本実施形態の骨盤底筋サポート着衣10を示した図である。これらの図に示したように、本実施形態の骨盤底筋サポート着衣10は、パンツ型であり、前面に位置する前身頃11、後面に位置する後身頃12、並びに、前身頃11及び後身頃12間の股間に対応する位置の股部13を有している。股部13の内側には、必要に応じて股部13の範囲を二重にするため股布を設けることも可能であるが、本実施形態では、股布は設けず、股部13を構成する内側編地132が直接肌に接する(図3(b),(c)参照)。なお、ここでいうパンツ型には、脚部の短いショーツのほか、脚部が長いタイプ、あるいは、サニタリー用、ガードル状のものなど、一般的に肌着、補正着として用いられるタイプのものを全て含む意味である。
【0016】
前身頃11、後身頃12、及び股部13は、全て編物から形成されている。従って、これらは、織物で形成する場合のように部位毎に分かれているものを縫製したものではなく、編み機により一体に編成されている。また、編物であるため、前身頃11、後身頃12及び股部13は、所定の伸縮性を有している。
【0017】
前身頃11及び後身頃12は、図1及び図2に示したように、それぞれ、股部13の幅方向中心線L1の延長線L2,L3が幅方向の略中心を通過する所定の幅を有する中央領域11a,12aと、中央領域11a,12aの両側に位置する側部領域11b,12bとをそれぞれ有している。また、中央領域11a,12a及び側部領域11b,12bの端部は、着用者の腰付近に位置する上縁領域11c,12cとなっている。中央領域11a,12aは、所定の幅を有するが、本実施形態では、股部13との境界部13a,13b側の幅よりも、上縁領域11c,12c側の幅の方が広い略逆三角形状に形成されている。境界部13a,13b側から上縁領域11c,12c側に至るまでほぼ同程度の幅で形成することもできるが、本実施形態では、中央領域11a,12aにおいて、所望の伸長弾性率を得るために上縁領域11c,12c側の幅を広くしている。
【0018】
中央領域11a,12aは、側部領域11b,12bよりも伸長弾性率が高くなっている。本実施形態では、面に沿ったいずれの方向においても、中央領域11a,12aの伸長弾性率が側部領域11b,12bの伸長弾性率より高くなっているが、股部13を幅方向中心線L1に沿って引っ張る力を付与する機能を果たすものであるため、少なくとも延長線L2,L3に沿った方向の伸長弾性率が側部領域11b,12bの伸長弾性率よりも高いことが必要である。
【0019】
また、上縁領域11c,12cも側部領域11b,12bよりも伸長弾性率が高くなっており、着用者の腰からの位置ずれを抑制する機能を有する。中央領域11a,12aの伸長弾性率が高く、また、その端部に位置する上縁領域11c,12cも伸長弾性率が高いため、着用時において、股部13は、各上縁領域11c,12c方向に引っ張られる弾性力が作用する。
【0020】
伸長弾性率を上記のような関係とするために、中央領域11a,12aでは、所定の弾性力を有する弾性糸を用いて編成し、側部領域11b,12bは、中央領域11a,12aの編成に用いた弾性糸よりも細く形成されたものなど、弾性力の低い弾性糸を用いたり、弾性糸の編み込み本数を少なくしたりして編成する。上縁領域11c,12cは、中央領域11a,12aの編成に用いた弾性糸と同様の弾性糸をインレイ編みで挿入するなどして編成する。なお、いずれの場合も、弾性糸としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエステル弾性糸等を用いることができる。
【0021】
編み組織により、伸長弾性率を調整することも可能である。本実施形態では、中央領域11a,12aは、平編みとし、延長線L2,L3に沿った縦方向の伸縮性がそれに直交する方向よりも高く、かつ、側部領域11b,12bの伸長弾性率よりも中央領域11a,12aの伸長弾性率が高くなっている。側部領域11b,12bは、ガーター編みで編成しており、中央領域11a,12aよりも編地の縦方向への伸び率が高くなっている。上縁領域11c,12cは、リブ編みとし、着用時の腰の周方向への伸縮性がそれに直交する方向よりも高くなるように編成している。
【0022】
股部13は、図3(a)~(c)に示したように、外側編地131、内側編地132、並びに、外側編地131及び内側編地132間の中間層133を備えた3層構造から構成される。外側編地131及び内側編地132は、本実施形態ではいずれも平編みから形成されている。いずれも弾性糸を用いて編成されているが、内側編地132は外側編地131よりも伸長弾性率が低く、伸び率が高い特性を有するように、すなわち、相対的に伸びやすいように編成されている。内側編地132は、外性器の周辺部の肌に直接接触するため、柔らかい感触とするためである。一方、外側編地131の伸長弾性率が高いことにより、内側編地132よりも高い復元力が作用するため、内側編地132と同等以下の伸長弾性率とする場合と比較して、内側編地132側の面の外性器の周辺部への押圧力を高めることができる。
【0023】
外側編地131及び内側編地132をこのような関係とするためには、上記の前身頃11及び後身頃12の中央領域11a,12aと側部領域11b,12bとの関係で説明したように、弾性糸の材質や直径を異ならせることにより達成できる。
【0024】
中間層133は、着用時に女性の外性器の周辺部に対応する位置に略環状に形成され、所定の厚みを有し、外側編地131及び内側編地132よりも厚み方向のクッション性(衝撃吸収性)が高くなっている。中間層133は、インレイ糸をインレイ編みにより挿入して形成することが好ましい。インレイ糸としては、太めの糸や毛糸を複数積層されるように挿入したり、弾性糸の挿入本数を増やしたりするなどして、厚み方向の弾力性を調整し、クッション性を高めた構成とする。インレイ糸としては、特にコットンを含む糸を用いることで柔らかさが増す。中間層133をインレイ糸により形成することにより、外側編地131及び内側編地132の編成と、インレイ糸の挿入を編み機により連続的に行うことができ便利であり、好ましい。インレイ糸の材質、太さ、挿入数などを調整することで、中間層133のクッション性の調整も容易である。
【0025】
中間層133は、上記のように略環状に形成されるが、中間層133の形状は、編み機においてインレイ糸の挿入位置を設定することで、容易に略環状に形成できる。また、インレイ糸を複数積層するように挿入する調整も容易であるため、中間層133の厚さの調整も容易である。中間層133が所定の厚さを有する略環状に形成されていることで、股部13は、中間層133の形成位置において、少なくとも内側編地132が、本実施形態では外側編地131及び内側編地132の両方が厚み方向外方に膨出した形状の環状膨出部134を有する構造となっている。この環状膨出部134のうち、内側編地132が配置されている面が女性の外性器の周辺部に当接する。
【0026】
股部13には、環状膨出部134が形成されることにより、それに取り囲まれた範囲は凹部135となる。凹部135は、中間層133が存在しない範囲であり、外側編地131及び内側編地132のみが存在する。凹部135が形成されている範囲では、外側編地131及び内側編地132は、2枚が別々に存在するのではなく、それぞれを形成する糸同士を相互に編む込むことで一体となっている。そのため、凹部135の底面135aを構成している編地は、外側編地131及び内側編地132の単独の編地よりも糸密度が高く、外側編地131及び内側編地132の単独の構成と比較して伸び率が低く、面方向の剛性が高くなっている。これにより、中間層133によって形成される環状膨出部134が、歩行等の体動に伴い、前後左右に引っ張られたり、着用者の太股に押圧されたりして大きく変形することが抑制され、さらに、環状膨出部134が外性器の周辺部から位置ずれすることが抑制される。
【0027】
なお、環状膨出部134の膨出量、すなわち、凹部135の底面135aからの高さは、外性器の周辺部への適度な押圧力を付与可能とするために、1.5~10mmの範囲とすることが好ましく、さらには、2~6mmの範囲とすることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の骨盤底筋サポート着衣10によれば、編地から構成されるため、全体的に伸縮力が作用し、フィット感が高い。また、前身頃11及び後身頃12においては、伸長弾性率の高い中央領域11a,12aと比較して、伸びやすく伸長弾性率が相対的に低い側部領域11b,12bを有しているため、全ての部位を中央領域11a,12aと同じ伸長弾性率で編成する場合と比較して臀部及び腰回りへの圧迫感が和らぐ一方、中央領域11a,12aでは必要な引張り力を発揮できる。
【0029】
前身頃11及び後身頃12における伸長弾性率の高い中央領域11a,12aは、股部13の幅方向中心線L1の延長線L2,L3が通過する範囲に所定幅で設けられているため、着用時においては股部13を幅方向中心線L1に沿った前身頃11及び後身頃12との各境界部13a,13bが相互に反対方向に引っ張られる力が作用する。その結果、股部13に形成された環状膨出部134が、外性器の周辺部に確実に押しつけられ、骨盤底筋を支持できる。環状膨出部134が外性器方向に押しつけられることにより、外性器の周辺部である会陰部、太股の付け根、鼠径部付近を刺激でき、リンパ液の流れを促し、リンパ浮腫の予防や改善に役立つ。しかも、凹部135の底面135aは、上記のように伸びにくい部位となっている。そのため、環状膨出部134の過度な変形が抑制され、歩行等の体動による位置ずれを抑制し、骨盤底筋の支持機能を従来のものと比較して向上させることができる。
【0030】
環状膨出部134は、凹部135の底面135aの剛性により過度な変形が抑制されるものではあるが、外側編地131及び内側編地132が一体となって構成された部分であるため所定の伸縮性を有している。そのため、図4に示したように、股部13が幅方向中心線L1に沿った前身頃11との境界部13a及び後身頃12のとの境界部13bが相互に反対方向に引っ張られることで(図4の矢印X方向)、凹部135を挟んだ一対の左右膨出部134a,134bを相互に接近させる方向(図4の矢印Y方向)の力が作用する。本実施形態では、この一対の左右膨出部134a,134bが大きく接近するような変形はしないが、両者を接近させる矢印Y方向への力が作用するため、膣口の広がりに対する抵抗となり、骨盤臓器脱防止機能を果たすことができる。
【0031】
また、環状膨出部134を構成する左右膨出部134a,134b及び前後膨出部134c,134dは、中間層133を構成する柔らかなインレイ糸により構成しているため、そのクッション性により、外性器の周辺部への強い押圧感を抑制できる。また、内側編地132は、外側編地131よりも伸長弾性率が低く伸びやすい編成であるため、肌への当たり感も柔らかく、違和感が少ないと共に、痛みの発生も抑制される。
【0032】
図5(a)~(c)は、本発明の他の実施形態の要部を示した図である。なお、上記実施形態と同様の構成は同じ符号で示す。本実施形態の骨盤底筋サポート着衣10は、股部13の外側に、弾性生地14が設けられている。弾性生地14は、股部13における前身頃11との境界部13a及び後身頃12との境界部13b間に掛け渡されている。弾性生地14は、前身頃11、後身頃12及び股部13と同様に編地から形成することができ、必要に応じて弾性糸を含んだ編地から形成することができる。弾性生地14は、股部13を形成している編地と比較し、伸長弾性率のより高い構成とすることが好ましい。その手段としては、弾性糸を含めて編成することで達成することができ、当該弾性糸の復元力により、境界部13a,13b間の張力をかけていない状態(着用前の収縮状態)での自然長が、股部13の幅方向中心線L1に沿った方向の長さよりも短くなるように形成された構成とすることができる。これにより、着用時においては、弾性生地14の復元力が股部13よりも高くなるため、股部13及び環状膨出部134を外性器の周辺部に押しつける方向に付勢することができる。
【0033】
すなわち、弾性生地14は、股部13及び環状膨出部134の外性器周辺部への押圧力を補助する機能を有する。例えば、前身頃11及び後身頃12の各中央領域11a,12aの伸長弾性率、股部13を構成する外側編地131及び内側編地132の伸長弾性率を上記実施形態より低めの設定とする一方、弾性生地14としては、伸長弾性率がそれらよりも高めのものを採用し、弾性生地14により高い押圧力を発揮させる構成とする。これにより、上記実施形態のものとは異なる履き心地のものを提供できる。よって、着用者の体格や好み等によって、上記実施形態の構造よりも、弾性生地14を有する本実施形態の構造が選択される場合もある。但し、弾性生地14を設けなくて済み、構成が簡易で、製造コストも安価となる点において、本実施形態よりも上記実施形態の構成がより好ましい。
【0034】
また、本実施形態と同様の構成とする一方、弾性生地14の境界部13a及び14aの少なくとも一方に面ファスナーや紐状のフック部材を設けることにより、少なくとも一方の境界部13a,14aを股部13に対して離接可能な構成とすることもできる。この場合には、境界部13a,14aの固定位置を調整することで、例えば、面ファスナーのループ側とフック側の位置を調整することで、弾性生地14によって発揮される外性器周辺部への押圧力を調整することもできる。
【0035】
なお、上記各実施形態では、骨盤底筋サポート着衣10としてパンツ型のものを示しているが、パンツ部を有する着衣であれば上記のものに限定されるものではない。例えば、パンティーストッキングタイプでも適用可能であり、その場合に、パンツ部以外のレッグ部において、適宜の加圧部を備え、使用者の脚部のリンパ液の流れを促進できる機能を有するものであってもよい。
【0036】
また、環状膨出部134は、上記各実施形態では、股部13を構成する編地にインレイ糸を中間層133として挿入することで一体に編成している。しかしながら、環状膨出部134を構成する中間層133を、股部13を構成する編地とは別に編成した編物、又は、織物、不織布、若しくは、シリコンゴム等を用いて所定形状に形成したものから構成し、これを、袋状に形成した外側編地131及び内側編地132の内部に挿入して環状膨出部134を形成することも可能である。但し、股部13が編地から構成されるため、上記のように、インレイ糸により一体に形成すると製造工程が複雑にならず、製造コストも抑制できる点で有利である。
【符号の説明】
【0037】
10 骨盤底筋サポート着衣
11 前身頃
11a 中央領域
11b 側部領域
12 後身頃
12a 中央領域
12b 側部領域
13 股部
131 外側編地
132 内側編地
133 中間層
134 環状膨出部
135 凹部
135a 底面
14 弾性生地
【要約】
骨盤底筋の支持、骨盤臓器脱の予防及びリンパ液の流れの改善効果をより高めることができると共に、着用時の接触感を柔らかなものとする。
本発明の骨盤底筋サポート着衣10は、編物により形成され、股部13は、外側編地131及び内側編地132と、それらの間の中間層133とを含む3層構造からなり、所定の厚みを有する中間層133によって環状膨出部134が形成されている。女性の外性器の周辺部に当接するのは内側編地132であるため、肌への当たり感が柔らかいと共に、環状膨出部134のクッション性が高いため、局部的な圧迫感を和らげつつ、外性器の周辺部への押圧力を高めることができる。リンパ液の流れを促し、リンパ浮腫等の予防効果をより高めることができる。
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図2
図3
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図5