(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】胃がん診断用のマイクロRNAバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20250108BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20250108BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20250108BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
G01N33/50 P ZNA
C12N15/113 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081954
(22)【出願日】2020-05-07
(62)【分割の表示】P 2017504739の分割
【原出願日】2015-08-11
【審査請求日】2020-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】10201404742W
(32)【優先日】2014-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】504354117
【氏名又は名称】エイジェンシー・フォー・サイエンス,テクノロジー・アンド・リサーチ
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(73)【特許権者】
【識別番号】511002216
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティー ホスピタル (シンガポール) ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】トー ヘン-フォン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ リーハン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ルイヤン
(72)【発明者】
【氏名】イェオー カイ グアン
(72)【発明者】
【氏名】ソー ボク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チュー フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ウェイ ペン
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】福井 悟
【審判官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/010584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
G01N
C12N
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の胃がんを検出する方
法であって、
前記被験者から得られた血清または血漿サンプル中の少なくとも6つのmiRNAの発現レベルを決定する工程を含み、ここで、少なくとも6つのmiRNAのうち1つはhsa-miR-142-5pであり、
前記miRNAが、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-29c-3p、hsa-miR-93-5p、hsa-miR-140-5p
、hsa-miR-183-5p
、hsa-miR-424-5p
、hsa-miR-27a-5p、
およびhsa-miR-616-5pからなる群より選択される「アップレギュレートされた」miRNAであるか;または、
hsa-miR-103a-3p、hsa-miR-30a-5p、hsa-miR-181a-5p
、hsa-miR-26a-5p、
およびhsa-miR-126-3pからなる群より選択される「ダウンレギュレートされた」miRNAのいずれかであり、前記決定することが、アップレギュレートおよび/またはダウンレギュレートされたmiRNAの発現を決定することを含み、コントロールと比較して、「アップレギュレートされた」miRNAのアップレギュレーションおよび「ダウンレギュレートされた」miRNAのダウンレギュレーションが、
がんを有する対象を示す、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記コントロールが胃がんの無い被験者である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、または少なくとも12種類のmiRNAの発現レベルを決定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年8月7日に出願されたシンガポール特許出願第10201404742W号の優先権の利益を主張し、この出願の内容は、あらゆる目的のため完全に参照によって本明細書中に取り込まれる。
【0002】
本発明は、生化学、特にバイオマーカーに関する。特に、本発明は、がん関連バイオマーカーとそのバイオマーカーを使用して、患者ががん(例、胃がん)に罹患する尤度を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
胃がんは4番目に多いがん(一年あたり>100万症例)であり、全世界で、がんによる第2番目に多い死亡原因となっている。胃がんの予後は不良であり、5年生存率は10%未満である。この主たる理由は、通常、疾患の進んだ状態で症状が呈されるからである。従って、臨床実績を改善するためには、疾患の初期検出と正確なモニタリングが必要である。現在、内視鏡検査が、唯一の確実な初期診断方法であるが、その費用とリスクが高いので、スクリーニング検査としては限定されている。侵襲性のより低い胃がんスクリーニング検査が非常に望ましく、不必要な内視鏡検査を省くことが期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、胃がんを検出する代替法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの観点で提供されるのは、被験者の胃がんを検出または診断する方法、あるいは、被験者が胃がんを発症する尤度を決定する方法であって、前記被験者から得られる非細胞性生体液サンプル中のmiRNAと少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定する工程を含み、コントロールと比較する場合の前記miRNA発現の差次的発現が、胃がんを有する前記被験者の指標となり、前記miRNAが、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-29c-3p、hsa-miR-93-5p、hsa-miR-140-5p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-183-5p、hsa-miR-29b-3p、hsa-miR-424-5p、hsa-miR-101-3p、hsa-miR-106b-3p、hsa-miR-128、hsa-miR-1280、hsa-miR-140-3p、hsa-miR-15b-3p、hsa-miR-186-5p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR-197-3p、hsa-miR-19a-3p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-20b-5p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-23a-5p、hsa-miR-25-3p、hsa-miR-27a-5p、hsa-miR-29a-3p、hsa-miR-29b-2-5p、hsa-miR-29c-5p、hsa-miR-338-5p、hsa-miR-425-3p、hsa-miR-4306、hsa-miR-450a-5p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-500a-3p、hsa-miR-501-5p、hsa-miR-532-3p、hsa-miR-550a-5p、hsa-miR-579、hsa-miR-589-5p、hsa-miR-590-5p、hsa-miR-598、hsa-miR-616-5p、hsa-miR-627、hsa-miR-629-3p、hsa-miR-629-5p、hsa-miR-93-3p、hsa-miR-195-5p、hsa-miR-18a-3p、hsa-miR-363-3p、hsa-miR-181a-2-3p、hsa-miR-16-5p、hsa-miR-501-3p、hsa-miR-23a-3p、hsa-miR-339-3p、hsa-miR-15a-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-374b-5p、hsa-miR-650、hsa-miR-1290、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-320c、hsa-miR-130a-3p、hsa-miR-320e、hsa-miR-378a-3p、hsa-miR-9-5p、hsa-miR-200b-3p、hsa-miR-141-3p、hsa-miR-191-5p、hsa-miR-628-5p、hsa-miR-484、hsa-miR-425-5pからなる群より選択される「アップレギュレートされた」miRNAであるか;または、hsa-miR-103a-3p、hsa-miR-30a-5p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-107、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-99b-5p、hsa-miR-339-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-136-5p、hsa-miR-139-5p、hsa-miR-146a-5p、hsa-miR-154-5p、hsa-miR-193b-3p、hsa-miR-23c、hsa-miR-30b-5p、hsa-miR-337-5p、hsa-miR-382-5p、hsa-miR-409-3p、hsa-miR-411-5p、hsa-miR-485-3p、hsa-miR-487b、hsa-miR-495、hsa-miR-885-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-362-5p、hsa-miR-671-3p、hsa-miR-454-3p、hsa-miR-328、hsa-miR-320a、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-27a-3p、hsa-miR-30d-5p、hsa-miR-10a-5p、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-497-5p、hsa-miR-134、およびhsa-miR-150-5pからなる群より選択される「ダウンレギュレートされた」miRNAのいずれかである、方法である。
【0006】
別の観点で提供されるのは、被験者の胃がんステージを検出または診断する方法、あるいは、被験者が胃がんのステージにある尤度を決定する方法であって、前記被験者から得られる非細胞性生体液サンプル中に、表8、表15、表16、および表17からなる群より選択される表の少なくとも一つに掲載されるマイクロRNA(miRNA)と少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定する工程を含み、コントロールと比べる場合の前記サンプル中のmiRNA発現の差次的発現により、前記被験者が胃がんステージ1、ステージ2、ステージ3、またはステージ4のいずれか一つにあると診断する、方法である。
【0007】
さらに別の観点で提供されるのは、被験者の胃がんを検出または診断する方法であって、(a)非細胞性生体液サンプル中の少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定する工程であって、前記miRNAが、hsa-miR-103a-3p、hsa-miR-142-5p、hsa-miR-29c-3p、hsa-miR-30a-5p、hsa-miR-107、hsa-miR-26a-5p、hsa-miR-140-5p、hsa-miR-148a-3p、hsa-miR-29b-3p、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-181a-5p、hsa-miR-27a-5p、hsa-miR-616-5p、hsa-miR-484、hsa-miR-4306、hsa-miR-590-5p、hsa-miR-362-5p、hsa-miR-106b-3p、hsa-miR-497-5p、hsa-miR-18b-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-200b-3p、hsa-miR-197-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-99a-5p、hsa-miR-885-5p、hsa-miR-598、hsa-miR-454-3p、hsa-miR-130a-3p、hsa-miR-150-5p、hsa-miR-30d-5p、hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-532-3p、hsa-miR-23a-5p、hsa-miR-21-3p、hsa-miR-136-5p、hsa-miR-1280、およびhsa-miR-16-5pからなる群より選択されるmiRNAと少なくとも90%の配列同一性を有する工程と、(b)工程(a)で測定された前記miRNAの前記発現レベルに基づくスコアを生成する工程と、(c)前記スコアを使用して前記被験者が胃がんを有する尤度を予想する工程であって、前記被験者の前記発現レベルを、ポジティブコントロール(胃がん被験者由来のサンプル)またはネガティブコントロール(胃がんの無い被験者由来のサンプル)のものと比較する分類アルゴリズムによって、前記スコアが計算される工程を含み、前記スコアは、前記被験者が、i.前記スコアがポジティブコントロールのスコアの範囲内に収まる、胃がんを有するか;またはii.前記スコアがネガティブコントロールのスコアの範囲内に収まる、胃がんを有しない(胃がんが無い)かのいずれかの尤度を同定する、方法である。
【0008】
詳細な説明を参照し、以下の非限定例と添付した図面とを合わせて考慮すると、本発明はよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、胃がんを有する患者に検出されるmiRNAを区分した模式図を示す。
【
図2】
図2は、臨床サンプル中に検出されるmiRNAをハイスループットmiRNA RT-qPCTによって測定する作業フロー図の例を示す。
図2は、臨床サンプル由来のトータルmiRNAの単離から、最終データ処理および統計解析までのプロセス中に起こる工程を示す。
図2に解説されるように、臨床サンプルはまず、「単離」(サンプル(例、患者の血清)からmiRNAを単離および精製することを指す)工程に掛けられる。次に、サンプルに、スパイクイン(spike-in)miRNA(人工合成miRNA模倣物(すなわち、22~24塩基の範囲の長さの小分子単鎖RNA))を加える。これらのスパイクインmiRNAをサンプル中に加えて、(単離、逆転写、増強、およびqPCRを含む)各種工程での効率をモニターする。次に、miRNAを、多くの複数グループへと分割する。この工程を、「多重設計」(miRNAアッセイを工夫して、複数の多重グループ(1グループ当たり45~65個のmiRNA)へとインシリコ(in silico)で分割して、RTプロセスおよび増強プロセス中の非特異的増幅とプライマー-プライマー相互作用を最小限にする設計)と呼ぶ。次に、サンプルは、「多重逆転写」プロセス(各種逆転写プライマープールを組み合わせ、互いに異なる多重グループに加えて、cDNAを合成するプロセス)を経る。cDNAの合成に際しては、PCRプライマープールを、(ある種の多重グループ(croup)から)合成された各cDNAプールと組み合わせ、そして、最適化タッチダウンPCRを実行して、そのグループのトータルcDNA量を同時に増加させる。トータル(全)cDNA量の増加工程を、「増強」工程と呼ぶ。増強後であって、データ処理および統計解析前に、増強されたcDNAは、一重qPCR(増強したcDNAプールを384穴プレート中のいろいろなウエルに分配し、そして、一重qPCR反応をその後実施する工程を指す)を経る。臨床サンプル中のmiRNAの測定と同時に、合成miRNAの検量線を一緒に測定して、全ての測定での絶対コピー数を補間して得る。従って、
図2は、以下の実験セクション中に起こるmiRNAサンプル処理の詳細な工程ごとの作業フローを提供する。
【
図3】
図3は、被験者から得られるサンプル中に一貫して検出されるmiRNAのヒートマップを示す。
図3は、(表4に掲載される)全ての確実に検出されるmiRNAのヒートマップ表示を示す。miRNAの発現レベル(コピー/ml)を、log2スケールで提示し、平均がゼロとなるように標準化した。各点の色はその濃度に相当する。階層的クラスタリングを、ユークリッド距離に基づいて、両次元(miRNAとサンプル)に関して行う。水平方向にある線に関して:黒色が胃がん被験者を表し、そして、白色は正常/コントロール被験者を表す。
【
図4】
図4は、制御されるmiRNAのヒートマップを示す。特に、
図4で示すヒートマップは、胃がんにおいて制御されるmiRNAの全てを示し、それらは表6に掲載される。miRNAの発現レベル(コピー/ml)を、log2スケールで提示し、平均がゼロとなるように標準化した。グレイスケールはmiRNAの濃度に相当する。階層的クラスタリングを、ユークリッド距離に基づいて、両次元(miRNAとサンプル)に関して行う。水平方向にある線に関して:黒色が胃がん被験者を表し、そして、白色は正常/コントロール被験者を表す。
【
図5】
図5は、(サブタイプやステージに関わらず)すべての胃がん被験者におけるトップランクのアップレギュレートされるmiRNA(hsa-miR-142-5p)とダウンレギュレートされるmiRNA(hsa-miR-99b-5p)の発現レベルを、正常/コントロール被験者と比較したものを示す箱ひげ図を示す。発現レベル(コピー/ml)を、log2スケールで示す。箱ひげ図は、発現レベル分布の25%目、50%目、および75%目に該当する、被験者のmiRNA発現レベルを示す。AUCは、受信者動作特性曲線下面積を指す。
【
図6】
図6は、すべての確実に検出されるmiRNA間の相関分析の結果を示すドットプロットを示す。log2スケールの発現レベル(コピー/mL)に基づいて、ピアソンの線形相関係数を、(表4に掲載される)191個全ての確実に検出されるmiRNAターゲット間で計算した。各ドットは、p値(相関をゼロからの差としたものに関して)が0.01未満であって、相関係数が0.5よりも高い(左図、正の相関がある)miRNAペア、または、-0.5よりも低い(右図、負の相関がある)miRNAペアを示す。
【
図7】
図7は、胃がんバイオマーカーの相関分析の結果を示すドットプロットを示す。log2スケールの発現レベル(コピー/mL)に基づいて、ピアソンの線形相関係数を、(表6に掲載される)胃がん被験者で変化のある75個全てのmiRNAターゲット間で計算した。各ドットは、p値(相関をゼロからの差とした場合)が0.01未満であって、相関係数が0.5よりも高い(左図、正の相関がある)miRNAペア、または、-0.5よりも低い(右図、負の相関がある)miRNAペアを示す。従って、まとめると、
図6と
図7によると、多数のがん関連miRNAと非関連miRNAは正の相関があることが分かり、このことは、胃がん診断用の最適なmiRNAの組合せの選択を難しくしている。
【
図8】
図8は、胃がんの各種ステージにおける各種上位評価miRNAの感度と特異度を、正常/コントロールに比較してプロットしたグラフを示す。より具体的には、
図8は、胃がん被験者の各種ステージにおける、(AUC(受信者動作特性曲線下面積)に基づく)上位のアップレギュレートされたmiRNA(行1)とダウンレギュレートされたmiRNA(行2)を、正常/コントロール被験者のmiRNAと比較した場合の受信者動作特性曲線を示す。
【
図9】
図9は、胃がんの各種ステージのバイオマーカー間の重なりを説明するベン図を示す。これらのベン図を、表8、9、10、および11に基づいて作成する。従って、
図9は、胃がんの各種ステージを決定するために使用されるmiRNAが、(ステージ3とステージ4(これらの二つのステージは臨床的に密接に関係すると考えられる)の両方に観察される大きな重複を除いて)、それらが相関するステージに特異的であるように見えることを示す。
【
図10】
図10は、インシリコでの4重交差検証(four fold cross validation)中の発見相と検証相における、多変量バイオマーカーパネル(miRNAの種類の数は3~10)の診断力(AUC)の箱ひげ図を示す。サンプルの発見セットに基づいていて、且つ、別の独立したサンプルセットで検証するモデルとして、線形サポートベクターマシンを使用するSFFS(sequence forward floating search)を用いて、3~10種類のmiRNAを有するバイオマーカーパネルを同定した。4重交差検証を複数回実施した。箱ひげ図は、正常/コントロールと胃がん被験者の分類に関して、miRNAセットのAUCの25%目、50%目、および75%目を示した。
図10は、各種多変量バイオマーカーパネルから得られるデータの頑健性を示す。
【
図11】
図11は、交差検証過程中の発見セット(黒色のバー)と検証セット(ネズミ色のバー)における、各種多変量バイオマーカーパネルのAUCの平均を示す棒グラフを示す。エラーバーは、AUCの標準偏差を示す。パネルにより多くの種類のmiRNAを含ませた場合の検証セットにおけるAUCの改善の有意性を検定するために、右側t検定を実施して全ての隣接するネズミ色のバーを比較した。*: p値< 0.05; **: p値< 0.01; ***: p値< 0.001。従って、
図11は、多変量バイオマーカーパネルセットにおける、miRNAの各種類数間でのAUCの差を示す。
【
図12】
図12は、被験者が胃がんを有する尤度を決定するのに使用される、本明細書中に記載の方法の工程をまとめた模式図を示す。
【
図13】
図13は、被験者が胃がんステージの一つにある尤度を決定するのに使用される、本明細書中に記載の方法の工程をまとめた模式図を示す。
【
図14】
図14は、被験者が胃がんを有する尤度を決定する際の、本明細書中に記載の多変量解析法の工程をまとめた模式図を示す。
【
図15】
図15が示すのは、(A)本試験でのコントロールと胃がん被験者のがんリスクスコアの箱ひげ図表示;(B)本試験のコントロールと胃がん被験者に関して、がんリスクスコアをロジスティック分布に適用させたものの確率分布;(C)胃がんを有する未詳の被験者(ハイリスク集団に属する)の確率が、がんリスクスコアの値に依存すること(ハイリスク集団の胃がんの保有率は、国立大学病院(National University Hospital)のデータに基づくと、0.0067であった);(D)各種がんリスクスコアレベルでの、未詳の被験者が胃がんを有する確率(リスク)の増加倍率を、ハイリスク集団での胃がんの保有率と比較したもの、である。点線は、被験者を、がんリスクが高い群(H)、がんリスクが中程度の群(M)、またはがんリスクが低い群(L)に区分けする閾値スコアの境界である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
表の簡単な説明
詳細な説明を参照し、以下の非限定例と添付した表とを合わせて考慮すると、本発明はよりよく理解される。
【0011】
表1は、胃がんに関する、血清/血漿中マイクロRNAバイオマーカー試験のまとめを示す。表1は、無細胞の血清/血漿サンプル中のmiRNAレベルを測定する各種試験をまとめる。RT-qPCRで検証された結果だけを、この表に掲載する。「GC」は胃がん被験者を指し、そして、「C」はコントロール被験者を指す。
【0012】
表2は、本開示の実験セクションで分析された胃がん被験者の臨床情報を示す。全ての血清は、任意の治療前に236人の胃がん被験者から回収し、使用前まで-80℃で保管した。ピロリ菌(H.Pylori)感染の状態を、「H Pylori」(ピロリ菌(Helicobacter pylori)を指す)と標識した列に示す。
【0013】
表3は、正常被験者(コントロール)の臨床情報を示す。全ての正常/コントロール被験者(237人の被験者)は、サンプルが回収された時点での内視鏡検査によって胃がんが無いことが確認された。被験者は、2年ごとに内視鏡検査スクリーニングをして、3~5年間追跡調査され、その被験者がこの期間内に胃がんを発症しなかったかどうかを確認した。全ての血清を、使用前まで-80℃で保管した。ピロリ菌(H.Pylori)の状態を、「H Pylori」(ピロリ菌(Helicobacter pylori)を指す)と標識した列に示す。
【0014】
表4は、胃がん被験者と正常被験者(コントロール)の両者の血清サンプル中で確実に検出される191種類のmiRNAの配列を示す。miRNAが「確実に検出される」と考えられる場合とは、血清サンプルの少なくとも90%が500コピー/mlより高い濃度を有していた場合である。そのmiRNAを、miRBase V18リリースに従って命名した。
【0015】
表5は、胃がん被験者と健常コントロール(正常被験者/コントロール)の両者の特徴のまとめを示す。
【0016】
表6は、正常被験者(コントロール)と胃がん被験者との間で差次的に発現されるmiRNAを一覧にする。正常/コントロール被験者と(サブタイプとステージに関わらず)全ての胃がん被験者との間で比較すると、75種類のmiRNAは、偽発見率補正(Bonferroni法)後に、p値が0.01未満であった。AUC-受信者動作特性曲線下面積。変化倍率-がん集団でのmiRNAの発現レベル(コピー/ml)の平均値を、正常/コントロール集団のもので割り算したもの。
【0017】
表7は、本試験と他の文献リポートとの間の比較を示す。表4(即ち、≧500コピー/mlの発現レベルを有するmiRNA)に掲載されていないmiRNAを、本試験の検出限界以下(N.D.)と考える。従って、表7は、当該技術分野で言われている差次的に制御されるmiRNAの大多数が、本開示の例示的miRNAとは異なることを示す。
【0018】
表8は、正常被験者(コントロール)とステージ1の胃がん被験者との間で差次的に発現されるmiRNAを一覧にする。正常/コントロール被験者とステージ1の胃がん被験者との間で比較すると、20種類のmiRNAは、偽発見率補正(Bonferroni法)後に、p値が0.01未満であった。AUC-受信者動作特性曲線下面積。変化倍率-がん集団でのmiRNAの発現レベルの平均値を、正常/コントロール集団のもので割り算したもの。
【0019】
表9は、正常被験者(コントロール)とステージ2の胃がん被験者との間で差次的に発現されるmiRNAを一覧にする。正常/コントロール被験者とステージ2の胃がん被験者との間で比較すると、62種類のmiRNAは、偽発見率補正(Bonferroni法)後に、p値が0.01未満であった。AUC-受信者動作特性曲線下面積。変化倍率-がん集団でのmiRNAの発現レベル(コピー/ml)の平均値を、正常/コントロール集団のもので割り算したもの。
【0020】
表10は、正常被験者(コントロール)とステージ3の胃がん被験者との間で差次的に発現されるmiRNAを一覧にする。正常/コントロール被験者とステージ3の胃がん被験者との間で比較すると、43種類のmiRNAは、偽発見率補正(Bonferroni法)後に、p値が0.01未満であった。AUC-受信者動作特性曲線下面積。変化倍率-がん集団でのmiRNAの発現レベルの平均値を、正常/コントロール集団のもので割り算したもの。
【0021】
表11は、正常被験者(コントロール)とステージ4の胃がん被験者との間で差次的に発現されるmiRNAを一覧にする。正常/コントロール被験者とステージ4の胃がん被験者との間で比較すると、74種類のmiRNAは、偽発見率補正(Bonferroni法)後に、p値が0.01未満であった。AUC-受信者動作特性曲線下面積。変化倍率-がん集団でのmiRNAの発現レベルの平均値を、正常/コントロール集団のもので割り算したもの。
【0022】
表12は、多変量バイオマーカーパネルの同定プロセスで同定されるmiRNAを一覧にする。6、7、8、9、および10種類のmiRNAで組み立てるバイオマーカーパネルに関して選択されるmiRNAの素性をまとめた。全てのパネル中でのmiRNAの出現回数をパネルの総数で割ったものを、出現率として定義する。上位10%と下位10%のAUCを有するパネルを除外して、交差検証分析の無作為化プロセスによって生まれた亜集団由来の不正確なデータを適用することに起因する偽発見バイオマーカーをカウントすることを避けた。その中で4以上の出現回数を有するmiRNAだけを一覧にした。胃がんの各種ステージでのmiRNA変化を、表6と8~11に基づいて定義した。
【0023】
表13は、多変量バイオマーカーパネル選択プロセスでしばしば選択されるmiRNAの存在率の統計を示す。二つのmiRNAグループ(hsa-miR-134、hsa-miR-1280、hsa-miR-27a-5pグループとhsa-miR-425-5p、hsa-660-5pグループ)由来の様々な数のmiRNAを使用するmiRNAパネルのパーセンテージ。検証セット(
図10)のAUCによって定義される、6、7、8、9、10種類のmiRNAのバイオマーカーパネルの上位10%と下位10%は、数から除外した。
【0024】
表14は、正常/コントロールと(ステージに関わらない)胃がんとの間で差次的に発現されるmiRNA((表1に一覧表示される)当該技術分野で過去に報告されていないもの)の一覧である。
【0025】
表15は、正常/コントロールとステージ2の胃がんとの間で差次的に発現されるmiRNA(当該技術分野で過去に報告されていないもの)の一覧である。
【0026】
表16は、正常/コントロールとステージ3の胃がんとの間で差次的に発現されるmiRNA(当該技術分野で過去に報告されていないもの)の一覧である。
【0027】
表17は、正常/コントロールとステージ4の胃がんとの間で差次的に発現されるmiRNA(当該技術分野で過去に報告されていないもの)の一覧である。
【0028】
表18は、正常/コントロールと胃がんのステージ1、ステージ2、ステージ3、ステージ4、または全てのステージとの間で差次的に発現されるmiRNA(当該技術分野で過去に報告されていないもの)の一覧である。表18は、表14、表8、表15、表16、および表17を合わせたものである。
【0029】
表19は、miRNAの発現レベルが胃がん被験者で変化した、多変量バイオマーカーパネルに使用するためにしばしば選択されるmiRNA(すなわち、表12の有意グループ)(当該技術分野で過去に報告されていないもの)の一覧である。
【0030】
表20は、miRNAの発現レベルが胃がん被験者で変化しなかった、多変量バイオマーカーパネルに使用するためにしばしば選択されるmiRNA(すなわち、表12の非有意グループ)(当該技術分野で過去に報告されていないもの)の一覧である。
【0031】
表21は、多変量バイオマーカーパネルの同定プロセスでしばしば選択される12種類のmiRNA(それらのKi係数値と伴に)であって、出現率が>20%のものの一覧であり、それらを組み合わせて、
図15にあるがんリスクスコア(式1)を計算する。
【0032】
発明の詳細な説明
マイクロRNA(miRNA)は、小分子非コードRNAであって、遺伝子発現の制御に働き、そして、その発現異常は各種がん(例、胃がん)の発病に関与する。マイクロRNAを使用して、被験者ががんを発症する尤度を決定することができることが知られている。
【0033】
従って、一つの観点で提供されるのは、被験者が胃がんを発症するか又は有する尤度を決定する方法である。一つの例では、
図12は、被験者が胃がんを発症するか又は有する尤度を決定する方法の工程のまとめである。一つの例では、本方法は被験者の胃がんを検出または診断するためのものでもある場合がある。一つの例では、本方法はインビトロ方法である。一つの例では、本明細書中に記載される方法は、被験者から得られる非細胞性生体液サンプル中の、表18に掲載されるマイクロRNA(miRNA)と少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定または決定する工程を含む場合があり、コントロールと比較する場合のmiRNA発現の差次的発現が前記被験者が胃がんを有することの指標となり、前記miRNAが、表18に「アップレギュレートされたもの」として一覧にされるmiRNAであるか、または、表18に「ダウンレギュレートされたもの」として一覧にされるmiRNAであるかのいずれかである、方法である。
【0034】
表18は、患者が胃がんを発症するか又は有する尤度を決定するのに使用可能なmiRNAを表にするが、それは以下のものである。
【0035】
【0036】
【0037】
本明細書に使用される用語「miRNA」、「マイクロRNA」、または「miR」は、内在性非コード遺伝子産物を含むRNA(RNAアナログ)であって、その遺伝子の前駆RNA転写産物は、小型のステムループを形成することができて、そこで、成熟型「miRNA」は、エンドヌクレアーゼDicerによって切断される。miRNAは遺伝子によってコードされるが、mRNAとは異なり、miRNAはmRNAの発現を制御する。一つの例では、用語「miRNA」または「マイクロRNA」は、少なくとも10個のヌクレオチド且つ35個以下のヌクレオチドが共有結合した短鎖RNA分子を指す。一つの例では、本ポリヌクレオチドは、その長さが、10~33個のヌクレオチド、15~30個のヌクレオチド、17~27個のヌクレオチド、18~26個のヌクレオチド、即ち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35個のヌクレオチドの分子であって、任意ではあるが、ラベルや配列伸長(例、ビオチンストレッチ)を含まない。本明細書中に記載のmiRNAの配列は、本明細書中に提供される表4に提供され、表4は、配列番号:1~配列番号:191のmiRNAを含む。当業者により理解されるであろうことは、miRNAが「ATGC」等の文字を含む配列を有するある型のポリヌクレオチドであることである。理解され得るのは、他に注記しない限りは、ヌクレオチドが5’->3’の順に、左から右へとなっていて、「A」がデオキシアデノシドを表し、「C」がデオキシシチジンを表し、「G」がデオキシグアノシドを表し、そして「T」がデオキシチミジンを表すことである。文字A、C、G、およびTを使用して、塩基それ自身、ヌクレオシド、または塩基を含むヌクレオチドを指し、これは当該技術分野では標準的である。この用語には、天然の核酸塩基、糖、およびヌクレオチド間(骨格)結合から構成されるオリゴヌクレオチド、ならびに、似たように機能するか又は特異的に機能が改善した非天然部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。天然ポリヌクレオチドでは、ヌクレオシド間結合は典型的にはホスホジエステル結合であって、その構成部品を「ヌクレオチド」と呼ぶ。用語「オリゴヌクレオチド」にはまた、(例えば、塩基や糖が)完全もしくは部分的に改変または置換されたオリゴヌクレオチドが含まれる場合がある。
【0038】
本開示の技術分野で理解されるであろうことは、本明細書中に記載の任意の方法では、miRNAは、表4に掲載されるmiRNAの配列と100%の配列同一性を有しない場合があることである。従って、一つの例では、評価されるmiRNAは、表8、表15、表16、表17、表18、表19、または表20のいずれか一つ(表4を参照する)に掲載されるmiRNAと、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%の配列同一性を有する場合がある。一つの例では、評価されるmiRNAは、一つ、二つ、三つ、または四つのヌクレオチド置換を有してもよい。従って、本明細書中に記載の方法で使用されるmiRNAは、表8、表15、表16、表17、表18、表19、または表20に掲載される配列(表4に提供される配列を参照する)に特異的にハイブリダイズまたは結合することができる場合がある試薬を使用して検出可能である。本明細書中で使用される用語「にハイブリダイズする」および「ハイブリダイゼーション」は、用語「に特異的」および「特異的に結合する」と互換して使用され、そして、相補的核酸と配列特異的に非共有結合で相互作用すること、例えば、標的核酸配列と標的に特異的な核酸配列プライマーまたはプローブとの間の相互作用を指す。一つの例では、ハイブリダイズする核酸プローブは、70%、80%、90%より大きい、または100%の選択性でハイブリダイズするものである(すなわち、本明細書中に記載のmiRNAの一つとのクロスハイブリダイゼーションが、30%未満、20%未満、10%未満で起こる場合がある)。当業者に理解されるであろうことは、本明細書中に記載のmiRNAに「ハイブリダイズする」核酸プローブは、その長さと組成を考慮して決定可能であることである。一つの例では、本明細書中に記載のmiRNAにハイブリダイズする核酸プローブは、一つ、二つ、または三つの塩基ペアが対応していない場合がある。一つの例では、本明細書中に記載の用語「miRNA」には、miRNAの3’端および/または5’端が、その生産中に、修飾や消化される場合があるmiRNAが含まれる。一つの例では、miRNAの3’端および/または5’端が、その生産中に、修飾や消化されたmiRNAを、本発明のアッセイでピックアップする。一つの例では、本明細書中で開示されるmiRNAは、表4に掲載される配列と3、4、または5個のヌクレオチドが異なる場合があるmiRNAを含んでもよい。
【0039】
本明細書中で使用される用語「がん」は、がんが生じる細胞の典型的性質(例、制御不能な増殖、不死化、転移能、早い成長および増殖速度、ならびにある種の特徴のある形態的特徴であって当該分野で既知のもの)を有する細胞の存在を指す。一つの例では、「がん」は胃がん(gastric cancer)又は胃癌(stmach cancer)である場合がある。一つの例では、「がん」には、前がん及び悪性がんを含んでもよい。従って、用語「胃がん」は、国立衛生局の国立がん研究所(National Cancer Institute of the National Health)によって記載される胃がんの全てのステージをカバーする。
【0040】
一つの例では、当業者によって理解されるであろうことは、本明細書中に記載の方法がドクター/医師によって行われる工程を含まないことである。従って、本明細書中に記載の方法から得られる結果は、臨床データや他の臨床症状と組み合わせる必要がある場合があり、その後、医師によりなされる最終診断が被験者に提示可能である。被験者が胃がんを有するかどうかの最終診断は、医師の守備範囲にあり、本開示の一部分とは見なされない。従って、本明細書中で使用される用語「決定する」、「検出する」、および「診断する」ことは、被験者がその発症の任意のステージの疾患(例、胃がん)を有する確率または尤度の同定を指すか、あるいは、被験者がその疾患を発症する特質の決定を指す。一つの例では、「診断する」、「決定する」、「検出する」ことは症状の呈示前に起こる。一つの例では、「診断する」、「決定する」、「検出する」ことは、(他の臨床症状と合わせて)臨床医/医師が胃がんを有することが疑われる被験者の胃がんを確認することを可能とする。
【0041】
本明細書中で使用される用語「差次的発現」は、一つのサンプルにおける、miRNA量として測定される一又は複数のmiRNA発現レベルを、第二のサンプルにおける同一の一又は複数のmiRNAの発現レベルと比較する場合の差を指すか、あるいは、所定の基準値またはコントロールと比べた場合の差を指す。差次的発現は、当該技術分野で既知の方法(例、アレイハイブリダイゼーション、次世代シークエンシング、RT-PCR、および当業者に理解可能な他の方法)によって、測定可能である。
【0042】
差次的発現が観察されるかどうかを決定するのに使用されるコントロール群は、本明細書中に記載の方法の目的に依存して異なっていてもよい。しかしながら、一般則として、本明細書中に記載の任意の所定の方法では、コントロール群は当業者によって容易に決定可能である。他に具体的に述べない限りは、一つの例では、コントロール群は、胃がん関連疾患の全くない被験者である場合がある。一つの例では、コントロール群は、既往症の無い健常者である場合がある。一つの例では、コントロール群は、非胃がん関連疾患(例、限定はされないが、胃炎、腸上皮化生、腸の萎縮等)を有することが知られる被験者である場合がある。一つの例では、コントロールは、サンプルの性状や他の因子(例、訓練データセットを取得した被験者に基づいて、その被験者の性別、年齢、人種)についてばらつきがあってもよい。一つの例では、コントロール被験者は、アジア人またはその子孫(例、華人、華人の子孫)である場合がある。
【0043】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、表18に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、コントロールと比較すると、胃がんを有すると疑われる被験者から得られたサンプル中でアップレギュレートされることが判明した場合である。従って、一つの例では、コントロールと比べて、表18中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAのアップレギュレーションは、被験者が胃がんを有する指標となる場合があるか、または、それにより被験者が胃がんを有すると診断する。
【0044】
本明細書中に記載の任意の例または方法において、本明細書中で使用される用語「アップレギュレートされる」は、コントロールと比較して、miRNA発現レベルの増加、または、より多くコピーのmiRNAの検出を指す。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.01以上である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.02~約2.5である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表6に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.05~約1.53である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.10倍、約1.15倍、約1.20倍、約1.25倍、約1.30倍、約1.35倍、約1.40倍、約1.45倍、約1.50倍である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。本明細書中で使用されるコントロールは、胃がんの無い被験者である場合がある。
【0045】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、表18に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、コントロールと比較すると、胃がんを有すると疑われる被験者から得られたサンプル中でダウンレギュレートされることが判明した場合である。従って、一つの例では、コントロールと比べて、表18中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAのダウンレギュレーションは、被験者が胃がんを有する指標となる場合があるか、または、それにより被験者が胃がんを有すると診断することもできる。
【0046】
本明細書中に記載の任意の例または方法において、本明細書中で使用される用語「ダウンレギュレートされる」は、コントロールと比較して、miRNA発現レベルの減少、または、より少ないコピーのmiRNAの検出を指す。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.99以下であることが示される場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.98~約0.3である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表6に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.5~約0.92であることが示される場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、miRNA発現は、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.95倍、約0.90倍、約0.85倍、約0.80倍、約0.75倍、約0.70倍、約0.65倍、約0.60倍、約0.55倍である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。本明細書中で使用されるコントロールは、胃がんの無い被験者である場合がある。
【0047】
用語「約」を本明細書中に使用して、値が当該分野で既知の誤差(値を決定するのに採用される機器や方法の使用から生じ得るもの)の固有のばらつき、または、試験被験者間に存在するばらつきを含むことを示す。従って、一つの例では、用語「約」は、本明細書中に記載される本開示全体で使用される発現の変化倍率の文脈では、言及した値の±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、または±0.5%を意味する。
【0048】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表18に掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表18に掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、少なくとも40種類、少なくとも45種類、少なくとも50種類、少なくとも55種類、少なくとも60種類、少なくとも65種類、少なくとも70種類、少なくとも75種類、少なくとも80種類、少なくとも85種類、少なくとも90種類、少なくとも95種類、少なくとも100種類、少なくとも105種類、少なくとも107種類、または全ての差次的発現を測定可能である。一つの例では、本方法は、表18に掲載される1~108種類のmiRNA、または、表18に掲載される2~10、11~30、31~50、50~70、71~90、または91~108種類のmiRNAを測定することができる。一つの例では、本方法は、表18に掲載される全てのmiRNAの差次的発現を測定可能である。
【0049】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表18中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAおよび表18中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAの差次的発現を測定可能である。一つの例では、本方法は、表18中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、少なくとも40種類、少なくとも45種類、少なくとも50種類、少なくとも55種類、少なくとも60種類、少なくとも65種類、または70種類の差次的発現を測定可能であり、そして、表18中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、または38種類の差次的発現を測定可能である。
【0050】
一つの例では、本明細書中に記載される方法は、被験者から得られる非細胞性生体液サンプル中の、表14に掲載されるマイクロRNA(miRNA)の発現レベルを測定する工程を含む場合がある。
【0051】
表14は、患者が胃がんを発症するか又は有する尤度を決定するのに使用可能なmiRNAを表にするが、それは以下のものである。
【0052】
【0053】
当該分野で既知であるように、増殖性疾患が進行する場合(治療する場合も、しない場合もある)、その疾患の臨床症状は進行ステージ間で異なる。従って、当業者が胃がん/胃癌がどのように進行したかを決定するのを補助するために、国立衛生局の国立がん研究所は、胃がん/胃癌に観察されるステージの一般的臨床症状を公開した。胃がんのステージには、厳密にはその定義内に限定はされないが、以下に記載の次のステージが含まれる。
【0054】
ステージI:ステージIでは、がんは、胃壁の粘膜(最も内側の層)の内壁に既に形成される。ステージIは、がんがどこに広がっていたかによって、ステージIAとステージIBに分割される。
【0055】
ステージIA:がんは、胃壁の粘膜下層(粘膜に隣接する組織層)中に既に広がっている場合がある。
【0056】
ステージIB:がんは、胃壁の粘膜下層(粘膜に隣接する組織層)中に既に広がっている場合があり、そして、腫瘍の近くの1または2カ所のリンパ節に見出される;あるいは、がんは胃壁の筋肉層へと既に広がっている。
【0057】
ステージII:ステージIIの胃がんは、がんがどこに広がっていたかによって、ステージIIAとステージIIBに分割される。
【0058】
ステージIIA:がんは、胃壁の漿膜下層(漿膜に隣接する組織層)に既に広がっているか;胃壁の筋肉層に既に広がっていて、腫瘍の近くの1または2カ所のリンパ節に見いだされるか;あるいは、胃壁の粘膜下層(粘膜に隣接する組織層)に既に広がっていて、腫瘍の近くの3~6カ所のリンパ節に見いだされる。
【0059】
ステージIIB:がんは、胃壁の漿膜(最も外側の層)に既に広がっているか;胃壁の漿膜下層(漿膜に隣接する組織層)に既に広がっていて、腫瘍の近くの1または2カ所のリンパ節に見いだされるか;胃壁の筋肉層に既に広がっていて、腫瘍の近くの3~6カ所のリンパ節に見いだされるか;あるいは、胃壁の粘膜下層(粘膜に隣接する組織層)に既に広がっていて、腫瘍の近くの7カ所以上のリンパ節に見いだされる。
【0060】
ステージIII:ステージIIIの胃がんは、がんがどこに広がっていたかによって、ステージIIIA、ステージIIIB、およびステージIIICに分割される。
【0061】
ステージIIIA:がんは、胃壁の漿膜(最も外側の)層に既に広がっていて、腫瘍の近くの1または2カ所のリンパ節に見いだされるか;胃壁の漿膜下層(漿膜に隣接する組織層)に既に広がっていて、腫瘍の近くの3~6カ所のリンパ節に見いだされるか;あるいは、胃壁の筋肉層に既に広がっていて、腫瘍の近くの7カ所以上のリンパ節に見いだされる。
【0062】
ステージIIIB:がんは、近辺の器官(例、脾臓、横行結腸、肝臓、横隔膜、膵臓、腎臓、副腎、または小腸)に既に広がっており、腫瘍の近くの1または2カ所のリンパ節に見いだされるか;胃壁の漿膜(最も外側の層)に既に広がっていて、腫瘍の近くの3~6カ所のリンパ節に見いだされるか;あるいは、胃壁の漿膜下層(漿膜に隣接する組織層)に既に広がっていて、腫瘍の近くの7カ所以上のリンパ節に見いだされる。
【0063】
ステージIIIC:がんは、近辺の器官(例、脾臓、横行結腸、肝臓、横隔膜、膵臓、腎臓、副腎、または小腸)に既に広がっており、腫瘍の近くの3カ所以上のリンパ節に見いだされる場合があるか;あるいは、胃壁の漿膜(最も外側の層)に既に広がっていて、腫瘍の近くの7カ所以上のリンパ節に見いだされる。
【0064】
ステージIV:ステージIVでは、がんは身体の遠位部に既に広がっている。
【0065】
当業者によって理解されるように、被験者が特定のステージにあるかどうかについてを決定することは、任意の治療または緩和ケアに如何に最適に取り組むかに関する明瞭なガイドラインを臨床医に提供するのに有用である場合がある。従って、一つの観点では、本開示は、被験者の胃がんステージを検出または診断する方法を提供する。一つの例では、本方法は、被験者が胃がんのあるステージにある尤度を決定する。この観点では、本方法は、被験者から得られる非細胞性生体液サンプル中の、表8、表9、表15、表10、表16、表11、または表17からなる群より選択される表の少なくとも一つに掲載されるマイクロRNA(miRNA)と少なくとも90%の配列同一性を有するmiRNAの発現レベルを測定する工程を含み、コントロールと比べる場合の前記被験者から得られる前記サンプル中のmiRNA発現の差次的発現が、前記被験者が胃がんステージ1、ステージ2、ステージ3、またはステージ4のいずれか一つにある尤度の指標となる場合があるか、または、前記差次的発現により、前記被験者が胃がんステージ1、ステージ2、ステージ3、またはステージ4のいずれか一つにあると診断する場合がある。本明細書中で使用されるコントロールは、胃がんの無い被験者である場合がある。一つの例では、
図13は、被験者が胃がんのステージの一つを発症するか又は有する尤度を決定する方法の工程のまとめである。
【0066】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、コントロールと比較する場合、表8中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ1にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ1にあると診断可能であり、前記miRNAが、表8中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる場合である。表8を、実験セクションにおいてさらに詳細に説明する。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.01~約2.5以上である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.10倍、約1.15倍、約1.20倍、約1.25倍、約1.30倍、約1.35倍、約1.40倍、約1.45倍、約1.50倍である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表8に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.11~約1.57である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。
【0067】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表8中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表8中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、または8種類のmiRNAの差次的発現を測定することができる。
【0068】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、コントロールと比較する場合、表8中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ1にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ1にあると診断可能な場合である。一つの例では、前記miRNAには、表8中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.9以下である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNA発現は、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.95倍、約0.90倍、約0.85倍、約0.80倍、約0.75倍、約0.70倍、約0.65倍、約0.60倍、約0.55倍である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表8に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.68~約0.84である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。
【0069】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表8中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表8中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、または12種類のmiRNAの差次的発現を測定することができる。
【0070】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表8中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAおよび表8中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、本方法は、表8中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、または8種類のmiRNAの差次的発現を測定することができ、そして、表8中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、または12種類の差次的発現を測定することができる。
【0071】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、コントロールと比較する場合、表9または表15中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ2にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ2にあると診断可能な場合である。表9を、実験セクションにおいてさらに詳細に説明する。一つの例では、前記miRNAには、表15中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。
【0072】
表15は、患者がステージ2の胃がんを発症(罹患)するか又は有する尤度を決定するのに使用されるmiRNAを表にするが、それは以下のものである。
【0073】
【0074】
【0075】
一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.01~約2.5以上である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.10倍、約1.15倍、約1.20倍、約1.25倍、約1.30倍、約1.35倍、約1.40倍、約1.45倍、約1.50倍である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表9に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.13~約2.13である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。
【0076】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表9または表15中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表9または15中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、少なくとも40種類、少なくとも45種類、少なくとも50種類、または54種類のmiRNAの差次的発現を測定可能である。
【0077】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、コントロールと比較する場合、表9または表15中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ2にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ2にあると診断可能な場合である。一つの例では、前記miRNAには、表15中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.9以下である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNA発現は、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.95倍、約0.90倍、約0.85倍、約0.80倍、約0.75倍、約0.70倍、約0.65倍、約0.60倍、約0.55倍である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表9に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.56~約0.87である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。
【0078】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表9または表15中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表9または表15中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、または8種類のmiRNAの差次的発現を測定することができる。
【0079】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表9または表15中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAおよび表9または表15中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAの差次的発現を測定可能である。一つの例では、本方法は、表9または表15中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、少なくとも40種類、少なくとも45種類、少なくとも50種類、または54種類の差次的発現を測定可能であり;そして、表9または表15中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、または8種類の差次的発現を測定可能である。
【0080】
一つの例では、被験者がステージ2の胃がんを有する可能性があるかどうかについての診断または指標を提供可能な本明細書中に記載の方法が表15を使用する場合、本方法は、限定はされないが、miR-20a-5p、miR-223-3p、miR-17-5p、miR-106b-5p、miR-423-5p、およびmiR-21-5pを含む任意の一又は複数のmiRNAの発現レベルを比較する工程をさらに含んでもよい。
【0081】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、コントロールと比較する場合、表10または表16中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ3にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ3にあると診断可能な場合である。表10を、実験セクションにおいてさらに詳細に説明する。一つの例では、前記miRNAには、表16中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。
【0082】
表16は、患者がステージ3の胃がんを発症(罹患)するか又は有する尤度を決定するのに使用されるmiRNAを表にするが、それは以下のものである。
【0083】
【0084】
一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.01~約2.5以上である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.10倍、約1.15倍、約1.20倍、約1.25倍、約1.30倍、約1.35倍、約1.40倍、約1.45倍、約1.50倍である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表10に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.20~約1.93である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。
【0085】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表10または表16中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表10または表16中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、または37種類のmiRNAの差次的発現を測定可能である。
【0086】
一つの例では、差次的発現が観察される場合は、コントロールと比較する場合、表10または表16中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ3にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ3にあると診断可能な場合である。一つの例では、前記miRNAには、表16中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.9以下である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNA発現は、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.95倍、約0.90倍、約0.85倍、約0.80倍、約0.75倍、約0.70倍、約0.65倍、約0.60倍、約0.55倍である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表10に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.72~約0.88である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。
【0087】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表10または表16中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表10または表16中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、または6種類のmiRNAの差次的発現を測定することができる。
【0088】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表10または表16中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAおよび表10または表16中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAの差次的発現を測定可能である。一つの例では、本方法は、表10または16中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、または37種類のmiRNAの差次的発現を測定することができるし、そして、表10または表16中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、または6種類のmiRNAの差次的発現を測定することができる。
【0089】
一つの例では、被験者がステージ3の胃がんを有する可能性があるかどうかについての診断または指標を提供する本明細書中に記載の方法は表16を使用する。本方法は、限定はされないが、miR-21-5pm、miR-223-3p、およびmiR-423-5pを含む任意の一又は複数のmiRNAの発現レベルを比較する工程をさらに含んでもよい。
【0090】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、コントロールと比較する場合、表11または表17中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ4にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ4にあると診断可能な場合である。表10を、実験セクションにおいてさらに詳細に説明する。一つの例では、前記miRNAには、表17中に「アップレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。
【0091】
表17は、患者がステージ4の胃がんを発症(罹患)する尤度を決定するのに使用されるmiRNAを表にするが、それは以下のものである。
【0092】
【0093】
一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.01~約2.5以上である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.10倍、約1.15倍、約1.20倍、約1.25倍、約1.30倍、約1.35倍、約1.40倍、約1.45倍、約1.50倍である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表11に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約1.12~約1.86である場合に、「アップレギュレートされる」と考えることができる。
【0094】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表11または表17中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表11または15中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも17種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、少なくとも40種類、少なくとも45種類、または46種類のmiRNAの差次的発現を測定可能である。
【0095】
一つの例では、差次的発現が観察される場合とは、コントロールと比較する場合、表11または表17中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAが、被験者が胃がんステージ4にあることの指標となる可能性があるか、または、前記miRNAによって、被験者が胃がんステージ4にあると診断可能な場合である。一つの例では、前記miRNAには、表17中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。一つの例では、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.9以下である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、その変化に関する統計検定でのp値は、0.05未満である場合がある。一つの例では、当該分野で既知の統計検定(t検定(p値<0.01))を使用して、p値が計算可能である。別の例では、統計検定は、t検定(p値<0.01)であって、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)に対して補正されたものである。このやり方を、以下の例で例示的に使用した。一つの例では、miRNA発現は、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.95倍、約0.90倍、約0.85倍、約0.80倍、約0.75倍、約0.70倍、約0.65倍、約0.60倍、約0.55倍である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。一つの例では、表11に例示されるように、miRNAは、コントロールに対する発現レベルの変化倍率が少なくとも約0.48~約0.90である場合に、「ダウンレギュレートされる」と考えることができる。
【0096】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表11または表17中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される一又は複数のmiRNAの差次的発現を測定可能である。従って、一つの例では、本方法は、表11または17中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、または28種類のmiRNAの差次的発現を測定可能である。
【0097】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表11または表17中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAおよび表11または表17中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも一つのmiRNAの差次的発現を測定可能である。一つの例では、本方法は、表11または17中に「アップレギュレートされたもの」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、少なくとも40種類、少なくとも45種類、または46種類のmiRNAの差次的発現を測定することができるし、そして、表11または表17中に「ダウンレギュレートされたもの」として掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、または28種類の差次的発現を測定することができる。
【0098】
一つの例では、被験者がステージ4の胃がんを有する可能性があるかどうかについての診断または指標を提供する本明細書中に記載の方法は表17を使用する。本方法は、限定はされないが、miR-21-5pm、miR-223-3pm、miR-20a-5pm、miR-106b-5p、およびmiR-17-5pを含む任意の一又は複数のmiRNAの発現レベルを比較する工程をさらに含んでもよい。
【0099】
さらに別の観点で提供されるのは、被験者の胃がんを検出または診断する方法、あるいは、被験者が胃がんを有する尤度を決定する方法であって、(a)非細胞性生体液サンプル中で、表12または表19中に掲載されるmiRNAと少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定する工程と、(b)工程(a)で測定されたmiRNAの発現レベルに基づいてスコアを生成する工程と、(c)前記スコアを使用して、前記被験者が胃がんを有する尤度を予測する工程とを含み、前記被験者の前記発現レベルを、ポジティブコントロール(胃がん被験者由来のサンプル)またはネガティブコントロール(胃がんの無い被験者由来のサンプル)と比較する分類アルゴリズムによって、前記スコアが計算され、前記スコアは、前記被験者が、(i)前記スコアが前記ポジティブコントロールのスコアの範囲内に収まる、胃がんを有するか;または(ii)前記スコアがネガティブコントロールのスコアの範囲内に収まる、胃がんを有しない(すなわち、胃がんが無い)かのいずれかの尤度を同定する、方法である。一つの例では、前記miRNAには、表19中に掲載されるmiRNAの少なくとも一つを含むことができる。一つの例では、被験者の胃がんを検出または診断する方法、あるいは、被験者が胃がんを有する尤度を決定する方法は、多変量法と呼ばれる場合がある。一つの例では、多変量法は、臨床データによって決定されて、亜集団または群の代表となったmiRNAを使用してもよい。一つの例では、多変量バイオマーカーパネルには、表12に掲載されるバイオマーカー(胃がんと関連することが分かっているmiRNAと胃癌と関連しないことが分かっているmiRNAの両方を含むもの)が含まれる場合がある。一つの例では、多変量法に使用可能で、胃がんと関連するmiRNAが、表19中に含まれる場合がある。表12を、実験セクションにおいてさらに詳細に説明する。一つの例では、
図14は、被験者が胃がんを発症(罹患)する尤度を決定する多変量法の工程のまとめである。
【0100】
表19は、miRNAの発現レベルが胃がん被験者で変化した、多変量バイオマーカーパネルに使用するためにしばしば選択されるmiRNAを表とし、それは以下のものである。
【0101】
【0102】
上述したように、多変量法は、表12に掲載されるバイオマーカー(胃がんと関連することが分かっているmiRNAと胃癌と関連しないことが分かっているmiRNAの両方を含むもの)を決定する工程を含んでもよい。従って、一つの例では、多変量法が表19に掲載されるmiRNAを使用すると、本方法は、ネガティブコントロールと比較する場合、発現レベルが被験者で変わっていない少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定する工程をさらに含む可能性がある。一つの例では、ネガティブコントロールと比較する場合、発現レベルが被験者で変わっていないmiRNAは、表20に掲載される任意の一つのmiRNAであってもよい。
【0103】
表20は、miRNAの発現レベルが胃がん被験者と関連しなかった、多変量バイオマーカーパネルに使用するためにしばしば選択されるmiRNAを表とし、それは以下のものである。
【0104】
【0105】
一つの例では、当該分野で既知の、本明細書中に記載の多変量法では、スコアは分類アルゴリズムを使用して計算可能である。一つの例では、分類アルゴリズムには、限定はされないが、サポートベクターマシンアルゴリズム、ロジスティック回帰アルゴリズム、多項ロジスティック回帰アルゴリズム、フィッシャーの線形判別アルゴリズム、二次分類アルゴリズム、パーセプトロンアルゴリズム、k近傍法、人工神経回路網アルゴリズム、ランダムフォレストアルゴリズム、決定木アルゴリズム、ナイーブベイズアルゴリズム、適応ベイズネットワークアルゴリズム、および複数の学習アルゴリズムを組み合わせたアンサンブル学習法が含まれる。当業者によって理解されるように、分類アルゴリズムは、ポジティブコントロールとネガティブコントロールの発現レベルを使用して、プレトレーニング可能である。
【0106】
本明細書中に記載の多変量法の特定の観点では、ポジティブコントロールは、胃がんを有する被験者から得られるサンプルであってもよいし、ネガティブコントロールは、胃がんの無いコントロールから得られるサンプルであってもよい。一つの例では、胃がんの無いコントロールは、上記したものである場合がある。つまり、一つの例では、胃がんの無いコントロールは、胃がん関連疾患の全くない被験者である場合がある。一つの例では、胃がんの無いコントロールは、既往症の無い健常者である場合がある。一つの例では、胃がんの無いコントロールは、非胃がん関連疾患(例、限定はされないが、胃炎、腸上皮化生、腸の萎縮等)を有することが知られる被験者である場合がある。一つの例では、コントロールは、サンプルの性状や他の因子(例、訓練データセットを取得した被験者に基づく、被験者の性別、年齢、人種)についてばらつきがあってもよい。一つの例では、コントロール被験者は、華人または華人の子孫である場合がある。
【0107】
当業者によって理解されるように、miRNAの発現レベルは、濃度、log(濃度)、Ct/Cqの数値、2のCt/Cq乗の数値等のいずれか一つである場合がある。
【0108】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、被験者が胃がんを有する尤度を決定可能な場合のあるデータトレーニング済みの式を使用する場合がある。一つの例では、アルゴリズムは、複数のmiRNAの測定を組み合わせて、被験者が胃がんを有するリスクの予想用のスコアを与える。そのアルゴリズムは、複数の遺伝子標的の情報を組み合わせて、単一のmiRNAバイオマーカーを使用するよりも良い予想正確性を与える。一つの例では、有用なパネルを構築するためのmiRNAバイオマーカーの最小数は4である。例えば、
図11に示されるのは、4種類のmiRNAを有するバイオマーカーパネルは、有用なバイオマーカーパネルとなると考えられる検証セットにおけるAUCの平均値が>0.8である。バイオマーカーパネルの性能の(AUC値に関する)改善は、miRNAの種類の数が7より大きい場合は、有意に増加しない。従って、一つの例では、性能が最大な最適パネルを構築するためのmiRNAの最小数は、7種類のmiRNAである。一つの例では、被験者が胃がんを有する尤度を決定するためのスコアを計算するのに使用可能な式は、以下のものである。
【0109】
A × miRNA1 + B × miRNA2 + C × miRNA3 + D。
【0110】
式中、miRNA1、miRNA2、miRNA3はmiRNAの発現レベルと関連する値であって、それは、コピー数、log(コピー数)、Ct/Cqの数値、または他の数値であってもよい。そして、A、B、C、Dは係数であって、正でも負でもよい。例えば、被験者が胃がんを有する尤度を決定するためのスコア(すなわち、がんリスクスコア)は、以下の実施例と
図15に記載されるように、多変量バイオマーカーパネル同定プロセスにおいてしばしば選択される12種類のmiRNA(表21)で出現率が>20%のものを組み合わせて計算可能である。一つの例では、スコアを前記式から得る場合、スコアが高/低ければ高/低いほど、被験者が胃がんを有する確率がより高い。一つの例では、その範囲が明確に規定されていない場合がある理由は、係数が調整される場合があるからだ。例えば、全ての係数(すなわち、A、B、またはC)は、半量であってもよいか、または、Dの値が訓練データセットによるトレーニングに依存して変化してもよい。一つの例では、スコアの値は、胃がんを有するリスクと正または負に相関する場合がある。実際の相関は、訓練データセットに依存する可能性があり、そして、当業者は、訓練データセットの樹立に際して要求される必要な調整に精通している。
【0111】
一つの例では、その範囲が明確に規定されていない場合がある理由は、係数が調整される場合があるからだ。例えば、全ての係数(すなわち、A、B、またはC)は、倍量であってもよいか、または、Dの値が訓練データセットによるトレーニングに依存して変化してもよい。一つの例では、スコアの値は、胃がんを有するリスクと正または負に相関する場合がある。実際の相関は、訓練データセットに依存する可能性があり、そして、当業者は、訓練データセットの樹立に際して要求される必要な調整に精通している。
【0112】
一つの例では、全ての係数(すなわち、A、B、またはC)は、半量に故意に調製可能であり、および/または、Dの値も、故意に変更して、ほどんどの被験者用の式に基づいて計算された値の範囲を0~100に調整可能である。一つの例では、スコアの値は、胃がんを有するリスクと正または負に相関する場合がある。実際の相関は、訓練データセットに依存する可能性があり、そして、当業者は、訓練データセットの樹立に際して要求される必要な調整に精通している。
【0113】
一つの例では、本明細書中に記載の方法は、表12または表19中に「有意」として掲載される少なくとも一つのmiRNAおよび表12または表20中に「非有意」として掲載される少なくとも一つのmiRNAの発現レベルを測定可能である。一つの例では、本方法は、表12中に「有意」として掲載される少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、または42種類のmiRNAの差次的発現を測定することができるか、あるいは、表19中に掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、少なくとも10種類、少なくとも11種類、少なくとも12種類、少なくとも13種類、少なくとも14種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、または38種類の差次的発現を測定することができるか;および、表12中に「非有意」として掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、または12種類の差次的発現を測定することができるか、あるいは、表20中に掲載されるmiRNAの少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも6種類、少なくとも7種類、少なくとも8種類、少なくとも9種類、または10種類の差次的発現を測定することができる。
【0114】
一つの例では、本明細書中に記載の多変量法が表19に掲載される胃がん関連miRNAを使用する場合、本方法は、miR-21-5p、miR-20a-5pm、miR-17-5p、miR-423-5p、およびmiR-223-3pからなる群より選択される任意の一又は複数のmiRNAの発現レベルを測定する工程をさらに含んでもよい。
【0115】
本明細書中に記載の多変量法が表20に掲載される非関連miRNAを使用する一つの例では、本明細書中に記載の方法は、miR-34a-5pおよびmiR-27b-3pからなる群より選択される任意の一又は複数のmiRNAの発現レベルを測定する工程をさらに含んでもよい。
【0116】
胃がんと相関するmiRNAセットを想到する例示的アプローチを以下にまとめる。また、一般的作業フローを、
図1、2、および14に示す。
【0117】
工程1:トータルRNA(又は、そのサブフラクション)を、胃がんを有する被験者(複数可)のサンプル(例、血漿、血清、またはその他の血液画分)から、適切なキットおよび/または精製方法を使用して、抽出する。
【0118】
工程2:各サンプルから、一つのmiRNA、または、配列番号:1~配列番号:191からなる群より選択される少なくとも一つのmiRNAのセットの量(発現レベル)を、実験的手法を使用して測定する。一つの例では、少なくとも一つのmiRNAは、表12、19、および20に掲載される群から選択可能である。これらの手法は、当該分野で既知の手法であって、限定はされないが、アレイに基づくアプローチ、増幅方法(PCR、RT-PCR、もしくはqPCR)、シークエンシング、次世代シークエンシング、および/または質量分析を含む。
【0119】
工程3:各単一miRNAバイオマーカーの診断値と重複に関する情報を集めるため、数学的方法を適用する。これらの方法は、当該技術分野での既知の方法であり、限定はされないが、基本的な数学的アプローチ(例、商(fold quotients)、シグナル・ノイズ比、相関)、統計法(仮説検定(例、t検定、Wilcoxon-Mann-Whitney検定)としてのもの)、受信者動作特性曲線下面積、情報理論アプローチ(例、相互情報量、クロスエントロピー)、確率理論(例、結合確率と条件付き確率)、または、これまでに述べた方法の組合せと改変を含む。
【0120】
工程4:工程3)で得られた情報を使用して、各miRNAバイオマーカーに関して、診断内容または診断値を推測する。しかしながら、通常、この診断値は小さすぎて、80%の壁を超える正確な率、特異度、および感度を有する非常に正確な診断を得ることができない。胃癌の診断に適するmiRNAの診断内容を、
図1に掲載する。この図には、表12、19、および20に掲載されるmiRNAが含まれる。
【0121】
工程5:胃癌に罹患する個人の診断成績を向上するために、一より多いmiRNAバイオマーカーを採用してもよい。従って、胃がんの検出用に適合させたmiRNAバイオマーカーセット(表12または、表19および20に掲載されるmiRNAを含む場合があるもの)を選択/定義するために、統計学的学習/機械学習/バイオインフォマティクス/コンピューター的アプローチをセットの選択に適用する。これらの手法には、限定はされないが、ラッパー部分集合選択手法(例、前進ステップワイズ法、後進ステップワイズ法、組合せ法、最適化法)、フィルター部分集合選択方法(例、工程3に述べた方法)、主成分分析、または、そのような方法の組合せと改変(例、ハイブリッド法)が含まれる。
【0122】
工程6:工程5で選択/定義された部分集合(少数のみ(少なくとも一つ、少なくとも二つ、またはそれ以上のセット)~全ての測定miRNAの範囲にある場合があるもの)を、その後使用して、胃がんの診断を実施する。この目的のために、統計学的学習/機械学習/バイオインフォマティクス/コンピューター的アプローチを適用し、それらには、限定はされないが、任意の型の目的変数ありの分析または目的変数なしの分析(分類手法(例、ナイーブベイズ法、線形判別分析、二次判別分析用神経ネットワーク、ツリーに基づくアプローチ、サポートベクターマシン、近傍法)、回帰手法(例、線形回帰、重回帰、ロジスティック回帰、プロビット回帰、順序ロジスティック回帰、順序プロビット回帰、ポアソン回帰、負の二項回帰、多項ロジスティック回帰、切断回帰)、クラスタリング手法(例、k平均法、階層クラスタリング、PCA)、これまでに述べたアプローチの改造、拡張、および組合せ)が含まれる。
【0123】
工程7:部分集合選択(工程5)と機械学習アプローチ(工程6)を組み合わせることによって、胃がんを診断するアルゴリズムまたは数学的関数を得る。このアルゴリズムまたは数学的関数を、個人(被験者)のmiRNAプロフィール(miRNA発現プロフィールデータ)に適用して、胃がんの診断を実施する。
【0124】
本明細書中に記載の方法のいずれにおいても、非細胞性生体液には、体液の細胞成分を全く含まない任意の体液を含んでもよい。従って、一つの例では、被験者から抽出する際に、生体液または体液は、被験者の体液または生体液に一般的に見られる細胞性成分を含む場合がある。しかしながら、この生体液または体液は、当該分野で既知の方法を用いて処理されて、その生体液または体液内に含有される任意の細胞性成分を除去することもできる。例えば、体液または生体液の細胞性成分を除去する遠心分離または精製プロセスを実施する場合があり、その後、本開示の方法を実行してもよい。従って、一つの例では、体液または非細胞性生体液には、限定はされないが、羊水、母乳、気管支洗浄液、脳脊髄液、初乳、間質液、腹腔液、胸水、唾液、精液、尿、涙、全血(血漿、赤血球、白血球、および血清を含むもの)の非細胞性成分が含まれる。一つの例では、非細胞性生体液は、血清または血漿であってもよい。
【0125】
本明細書中に記載の方法のいずれにおいても、本明細書中で使用される用語「被験者」および「患者」は、互換的に使用されて、動物(例、哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、および昆虫)を指すことができる。一つの例では、被験者は、哺乳類(例、非ヒト哺乳類(例、イヌ、ネコ、または霊長類)およびヒト)である場合がある。一つの例では、被験者は、霊長類(例、チンパンジーおよびヒト)であってもよい。一つの例では、被験者はヒトである場合がある。一つの例では、被験者は胃がん(胃癌)を有するか、又は、有しないヒトである場合がある。本開示の実験セクションでは、訓練データセットを、華人または華人の子孫である被験者から得た。従って、一つの例では、被験者はアジア人の子孫である場合がある。一つの例では、被験者は、華人または華人の子孫である場合がある。
【0126】
一つの例では、本明細書中に記載される方法は、キットとして提供可能である。キットは、必要な構成要素または本明細書中に記載のmiRNAを検出する構成要素を含んでもよい。構成要素には、本明細書中に記載のmiRNAとハイブリダイズ可能なプライマー/プローブ、試薬、容器、および/または本明細書中に記載のmiRNAとプライマー/プローブを検出するように構成された機器が含まれる場合がある。一つの例では、キット内の容器には、本明細書中に記載のmiRNAのレベルを検出または測定可能なプライマー/プローブセットであって、使用前に放射性元素で標識されるものが含まれる場合がある。キットは、一又は複数のmiRNAを逆転写および増幅するための物質の容器(例、dNTP(4種類の各デオキシ核酸dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP)、バッファー、逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼを含む複数の容器)を含んでもよい。キットはまた、ポジティブコントロール反応および/またはネガティブコントロール反応用の核酸鋳型(複数可)を含む場合がある。キットは、被験者から得られるサンプル由来のmiRNAの単離に必要な、任意の反応構成要素またはバッファーをさらに含んでもよい。
【0127】
本明細書中で解説的に記載される発明は、本明細書中では具体的に開示されない任意の要素(複数可)、制限(複数可)が無くても適切に実施可能である。従って、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」等は、広くおよび制限なしに読解されたい。また、本明細書中で採用される用語および表現は、説明のための用語として使用され、限定するためのものではない。そして、示され且つ記載される特徴またはその部分の任意の等価物を除外するような用語および表現を使用する意図はない。しかし、請求項の発明の範囲内で各種改変が可能であることが認識される。従って、理解されるべきは、本発明が好ましい実施形態と任意選択の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書中やその他の開示中で実体化された発明の改変および変形は当業者によって復元可能であって、そして、そのような改変および変形が本発明の範囲内であると考えられることである。
【0128】
本発明を、本明細書中で広く且つ一般的に記載した。本一般開示内に収まるそれより狭い種および下位属のグループもまた、本発明の部分を形成する。これは、取り上げた材料が本明細書中に具体的に記載されているか否かに関わらず、その属から任意の主題要素を除去する仮定的または否定的限定を有する本発明の一般的記載を含む。
【0129】
他の実施形態は、以下の請求項と非限定的実施例内である。また、本発明の特徴または観点がマーカッシュ群の言葉で記載されている場合、当業者は、本発明がまた、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの下位群に関してそれにより記載されていることを認識する。
【実施例】
【0130】
実験セクション
方法
分析前処理(サンプル回収とマイクロRNA抽出):正常被験者(すなわち、胃がんの無いコントロール)と胃がん被験者由来の血清サンプルを、シンガポール胃がん協会のメンバーが遠心分離して回収し、処理し、そして、-80℃で凍結保存した。200μlの血清由来のトータルRNAを、半自動化QiaCubeシステム上で、十分に確立されたカラムベースのmiRNeasyキット(Qiagen、Hilden、ドイツ)を使用して単離した。血清には、少量のRNAが含まれている。RNAのロスを削減し、抽出効率をモニターするために、合理的設計の単離増強剤(MS2)とスパイクインコントロールRNA(MiRXES)を、単離前に検体に加えた。
【0131】
RT-qPCR:阻害剤の存在を検出し、RT-qPCR効率をモニターするための第二のセットのスパイクインコントロールRNAを加えた最適化多重逆転写反応物中で、単離されたトータルRNAと合成RNA標準をcDNAに変換した。Impron II(Promega(登録商標))逆転写酵素を使用して、製造事業者の取扱説明書に従って、逆転写反応を実行した。合成cDNAを、その後、多重増強工程に供し、そして、Sybr Green系一重qPCRアッセイ(MIQE対応)(MiRXES(登録商標))を使用して定量した。ABI(登録商標)ViiA-7 384装置を、qPCR反応のために使用した。miRNAのRT-qPCR測定の作業フローの概説と詳細を
図2にまとめる。
【0132】
データ処理:未処理の閾値までのサイクル数(Ct)を処理して、そして、各サンプル中の標的miRNAの絶対コピー数を、合成miRNAの検量線を補間することによって決定した。RNA単離とRT-qPCRの処理中に導入された技術的ばらつきを、スパイクインコントロールRNAによって標準化した。単一miRNAの解析に関しては、生物学的ばらつきを、全てのコントロールと疾患サンプルに渡って安定的に発現される検証済み内在性基準miRNAセットによって、さらに標準化した。
【0133】
試験設計
十分に設計された臨床試験(症例コントロール試験)を実施して、胃がんの診断用バイオマーカーの正確な同定を保証した。平均年齢が68.0±10.9歳の胃がん(ステージ1~4)を有する合計237名の華人患者を、この試験に用いた。そして、コントロール群として機能する、年齢と性別が合った正常な(健康/胃がんの無い)別の236名の華人被験者と比較した。全てのがん被験者は、内視鏡検査と生検により確認され、そして、血清サンプルを任意の治療前に回収した。全ての正常(健康な)被験者は、胃がんが無いことをサンプル回収時に内視鏡検査によって確認し、そして、二年ごとに内視鏡検査スクリーニングして3~5年間追跡調査し、被験者がこの期間内に胃がんを発症しなかったことを確認した。被験者の詳細な臨床情報を、表2および3に表にする。全ての血清サンプルを、使用前まで-80℃で保管した。試験した被験者の特性を、表5にまとめる。多数のコントロール被験者(正常/健常/胃がんの無い被験者)が、胃の疾患(例、胃炎、腸上皮化生、および腸の萎縮)を有していた。従って、コントロール群は、胃がんに関するハイリスク集団に相当した。ピロリ菌を有する胃がん患者のパーセンテージ(78.8%)は、コントロール群のもの(55.7%)よりも多いけれども、その差がわずかなので、ピロリ菌を胃がんのバイオマーカーとして使用することを支持するには不十分であった。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
血液中に循環する、細胞から遊離したmiRNAが様々な組織源を起源とする場合があることが知られている。その結果、固形胃腫瘍の存在が原因のmiRNAレベルの変化は、他の供給源由来の同じmiRNAの存在によって複雑化している場合がある。従って、がんとコントロール群に見られるmiRNAの発現レベルの差を決定することは、難しく、そして、予想としては差ははっきりとしない。また、血液の容量が大きいこと(成人では5L)による希釈効果のため、細胞から遊離したmiRNAのほとんどは、血液中でものすごく量が少ないことが知られている。従って、限定量の血清/血漿サンプル由来の複数のmiRNA標的の正確な測定は、重要であって、そして、非常に大きな難題を提示する。低感度または半定量的スクリーニング方法(マイクロアレイ、シークエンシング)を使用する代わりに、miRNAの発現が有意に変化することの発見および胃がんの診断用の多変量miRNAバイオマーカーパネルの同定を最も容易にするために、本実験的試験では、
図2にまとめられた作業フローを用いてqPCRに基づくアッセイを実行するように選択した。
【0148】
本実験セクションで使用される作業フローでは、全ての反応を、miRNA標的に関して一重態様で少なくとも2回実施し、合成RNA「スパイクイン」コントロールに関しては少なくとも4回実施した。そのようなハイスループットqPCR試験の結果の正確性を保証するために、何回も繰り返した後に、本試験を、循環バイオマーカーを発見するための強力な作業フローへと設計/確立した(「方法」セクションと
図2を参照されたい)。この作業フローでは、各種人工設計「スパイクイン」コントロールを使用して、単離、逆転写反応、増強、およびqPCRプロセスの技術的ばらつきを監視および補正した。全てのスパイクインコントロールは、非天然合成miRNA模倣物(22~24塩基長の範囲の小分子単鎖RNA)であって、それらは、全ての既知ヒトmiRNAに配列相同性が極めて低いようにインシリコで設計されて、従って、アッセイで使用するプライマーへのクロスハイブリダイゼーションが最小限になっていた。また、miRNAアッセイを工夫して多数の多重群にインシリコで分けて、非特異的な増幅とプライマー-プライマー相互作用を最小限とした。合成miRNAを使用して、全ての測定における絶対コピー数の補間用の検量線を作成し、従って、技術的ばらつきをさらに補正した。複数レベルのコントロールを有するこの作業フローを用いる場合、予想では、発現レベルが低い循環するmiRNAであっても、確実に且つ再現性良く検出可能である。
【0149】
miRNAバイオマーカー
バイオマーカーの同定に向けた工程では、正常(コントロール)状態と疾患状態での各miRNAの発現レベルを比較する。472個の血清サンプル(胃がんと正常/コントロールのもの)全ての578種類(miRBaseバージョン10リリース)のヒトmiRNAの発現レベルを、強力な作業フローと高感度qPCRアッセイ(MiRXES、シンガポール)を使用して定量的に測定した。
【0150】
本実験設計では、200μlの血清を抽出し、トータルRNAを逆転写し、そして、タッチダウン増幅によって増強して、cDNAの量を増加させるが、miRNAの発現レベルの比率は変化させない(
図2)。増強cDNAを、その後、qPCR測定用に希釈した。希釈効果に基づく単純計算で明らかになったのは、miRNA(血清中で、≦500コピー/mlのレベルで発現するもの)が一重qPCRアッセイの検出限界(≦10コピー/ウエル)に近いレベルで定量されることである。そのような濃度では、測定は、技術限界(ピペッティングとqPCRでの誤差)に起因して非常に困難なものとなる。従って、≦500コピー/mlの濃度で発現するmiRNAを、解析から除外し、本試験では検出できないものと見なした。
【0151】
アッセイした総miRNA(合計578種類のmiRNAをアッセイした)の約33%が高発現であることが分かった。これら191種類のmiRNA(発現レベル≧500コピー/ml;表4)は、血清サンプルの90%より多くで確実に検出された。そして、これらは他の技術を使用して以前報告されたものよりもずっと多かった。このことは、強力な実験設計とコントロールをしっかり取った作業フローを使用することの重要性を強調する。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
ヒートマップを、その後、作成して、全ての検出された血清中miRNA(191種類の検出miRNA、
図3)の発現レベルを表した。各種亜集団のmiRNAを一緒にクラスタリングしたが、検出されたmiRNAの総数に基づく目的変数なしの階層クラスタリングによっては、がん群とコントロール群の間に明らかな違いはないように見えた。従って、特徴選択を全くしなければ、両群に関するmiRNAプロフィール全体は類似して見えた。
【0158】
191種類の血清中miRNAの発現を、その後、比較した。
【0159】
・A]正常/コントロールと胃がん(ステージまたはサブタイプに関わらず)との間。
・B]胃がんの各種ステージ(ステージ1~4)間、および
・C]正常/コントロールと胃がんの各種ステージとの間。
【0160】
二群間の差次的発現の有意性は、当該分野で既知のBonferroni型多重比較法を使用する偽発見率(FDR)推測値に対して補正されたt検定(p値<0.01)に基づいて計算された。
【0161】
A]正常/コントロールと胃がん(ステージまたはサブタイプに関わらず)で差次的に発現されたmiRNAの同定
胃がんのびまん型、腸型、または混合型のいずれかを有することが臨床的に確認された患者由来のサンプルを、一緒にグループ分けし、そして、正常/コントロールドナー由来のサンプルと比較した。コントロール群とがん群との間で有意な差次的発現を示した75種類のmiRNAのプールを同定した(p値<0.01、表6)。この推定上のバイオマーカーの発現のほとんどが、胃がん被験者でより高いことが見出された他のレポート(表1)と違っていて、本試験は、がん被験者では51種類のmiRNAがアップレギュレートされるが、24種類はダウンレギュレートされることを実証した(表6)。従って、本実験設計は、より多くの制御されるバイオマーカーを同定した。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
本試験の結果(表6)を、他の報告において血液中で差次的に発現されると同定された30種類のmiRNA(表1)と比較すると、たった6つのmiRNA(hsa-miR-106b-5p、hsa-miR-17-5p、hsa-miR-20a-5p、hsa-miR-21-5p、hsa-miR-223-3p、およびhsa-miR-423-5p)が、共通してアップレギュレートされることが判明した(表7)。従って、文献中で差次的に制御されるといわれるmiRNAの大半は、本試験では確認されなかった。興味深いことに、胃がんの潜在的バイオマーカーである69種類の新規miRNAをここに同定した。
【0166】
【0167】
この75種類のバイオマーカーのセットを使用すると、胃がん被験者と正常/コントロール被験者との間のより差のあるクラスタリングが、miRNAのプロフィールのヒートマップにおいて観察された(
図4)。水平方向にある線を見ると、胃がん被験者(黒色)の大多数が、ある集中した領域にクラスタリングされ、正常/コントロール被験者の大多数は、マップ中の残りの空間に残されていた。トップランクのアップレギュレートされたmiRNA(hsa-miR-142-5p)とダウンレギュレートされたmiRNA(hsa-miR-99b-5p)に関するAUC値は、それぞれ、ほんの0.71と0.67であった(
図5)。75種類の差次的なmiRNAの各々またはその数個の組合せは、胃がんの診断用のバイオマーカーまたはバイオマーカーパネルとして役立つことができる。
【0168】
そのmiRNAの発現は、ヒートマップ(
図3、4)に説明されるように、サブグループにクラスタリングされることが判明した。各クラスターは、約10~20種類のmiRNA(
図3、4;点線間)を有する。全ての検出可能なmiRNAの分析は、これらの多くのものが正に相関する(ピアソン相関係数>0.5)(
図6)ことを明らかにした。同じ観察が、胃がん特異的miRNAにも見られた(
図7)。これらの結果は、ある群のmiRNAが全ての被験者の間で同様に制御されることを示した。その結果、診断成績を向上するために一又は複数の差のあるmiRNAを別のものと置換することによって、miRNAのパネルが組立て可能である。そして、75種類の有意に変化するmiRNA全てが、胃がんに関する多変量インデックス診断アッセイの開発に重要であった。
【0169】
B]正常/コントロールと胃がんの各種ステージとの間で差次的に発現されるmiRNAの同定。
胃がんの各種ステージ間のmiRNAの発現を、その後、比較した。ステージとサブタイプを考慮に入れる二方向ANOVAを用いると、36種類のmiRNA(191種類の血清中miRNAのプール由来のもの)が、胃がん被験者の各種ステージ間で差次的に発現されることが判明した(偽発見率補正後のANOVA検定のp値は<0.01であった。データ未発表)。
【0170】
各種ステージ間の差異を知ったので、次に取り組んだのは、正常/コントロールとがんの各ステージとの間で差次的に発現されるmiRNAの同定であった。この新規検索過程で見つかった差のあるmiRNAの総数は113であった(表8~11;それら表中、プロフィールは重複していた)。これらの中では、20種類のmiRNA(8種類のアップレギュレートされるものと12種類のダウンレギュレートされるもの)、62種類のmiRNA(54種類のアップレギュレートされるものと8種類のダウンレギュレートされるもの)、43種類のmiRNA(37種類のアップレギュレートされるものと6種類のダウンレギュレートされるもの)、または、74種類のmiRNA(28種類のアップレギュレートされるものと46種類のダウンレギュレートされるもの)のプールが、正常/コントロールと、それぞれ、対応するステージ1、2,3、および4、との間での差次的発現を示した(FDR補正後のp値は<0.01;表8~11)。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
3種類のmiRNA(hsa-miR-486-5p、hsa-miR-19b-3p、hsa-miR-411-5p)は例外ではあるが、がんの全てのステージをまとめて使用する解析から発見された75種類のmiRNA(表6)の残りは、がんの各ステージを独立して解析した際に同定されたこれら113種類のmiRNAの部分集合であることが判明した。胃がんの各種ステージ間で差次的に制御されることが分かった(一つを除く)36種類のmiRNAのほとんどが、正常/コントロール(N)と胃がんの各ステージ(S1~S4)を比較した際に差次的に発現されることが判明した(表8~11)。各ステージ間の差異は、胃がんの検出に有用となる互いに異なるmiRNAプールを生じた。従って、正常/コントロールに対する互いに異なるステージにおける発現レベルを比較した結果により、有益なmiRNAのプールがより大きくなった。
【0179】
明らかに、後期のステージよりも前期のステージ1で同定されたmiRNAの数が少なかった。AUC値が最も高くランクされたmiRNAの素性は、全てのステージでいつも同じではなかった(
図8)。より多くの数のmiRNAが制御されていた(表8~11)。そして、似た素性が、複数のステージに渡って繰り返して見いだされた(
図10)。たった一つのmiRNA(hsa-miR-27a-5p)が、4つのステージ全ての間で共通であったことが判明した。これらの差のあるmiRNA(表8~11)は、個々に使用可能であり、そして、複数のmiRNAの結果を集めることが、がんのステージが診察時に未知である臨床設定において胃がんの診断に有用である場合がある。
【0180】
上記試験から、各ステージに特異的なmiRNAリスト由来の少なくとも一つのmiRNAからなるバイオマーカーパネルは、被験者が胃がんを有する尤度を決定する代替方法を提供可能である。
【0181】
III多変量バイオマーカーパネルの探索
多変量パネルを組立てるための重要な評価基準は、がんの各ステージ用の特異的リストから少なくとも一つのmiRNAを含ませて、全てのがんサブグループをカバーすることを保証することである。しかしながら、がんの4つのステージを定義するmiRNAは、完全に異なるものではなかった。というのも、同じmiRNAがそれらステージ間に同様に見出されるからだ(
図9)。同時に、多数のがん関連miRNAと非関連miRNAは正の相関があることが分かり(
図6,7)、このことは、胃がん診断用の最適なmiRNAの組合せの選択を難しくしている。
【0182】
この課題の複雑さを見て、本試験では、SFFS(sequence forward floating search)アルゴリズムを使用して最も高いAUCを有するmiRNAパネルを同定する必要があることを決断した。最先端の線形サポートベクターマシン(変数パネルを構築することに関する、よく利用され且つ認識されているモデリングツール)を、当該分野で使用して、miRNAの組合せの選択の補助をすることも知られていた。このモデルは、各メンバーの発現レベルとその加重値を説明する一次式に基づくスコアを生成する。この線形モデルは、臨床実務で容易に受け入れられて適用される。
【0183】
このような過程の成功の重要要件は、質の高いデータの利用可能性である。多数のよく規定された臨床サンプル中の全ての検出されるmiRNAの定量的データは、結果の正確性と精密性を改善するのみならず、さらに、qPCRを使用する臨床応用のための同定されたバイオマーカーパネルの一貫性をも保証した。
【0184】
臨床サンプルの数が多い(500+)状況では、モデリングにおけるデータの過剰なフィッティングの問題が最小化された。というのは、選択されるべきなのは191個の特徴候補しかないからだ。また、結果の正確度を保証するために、4重交差検証を複数回実施して、発見セット(各重においてサンプルの3/4)に基づく、検証サンプルの独立セット(各重においてサンプルの残りの1/4)における同定済みバイオマーカーパネルの性能を検定した。交差検証プロセス中、サンプルを、性別、サブタイプ、およびステージに関して適合させた。
【0185】
結果(発見相と検証相の両方のバイオマーカーパネルのAUC)の箱ひげ図を、
図10に示した。予想通り、各探索に関する検証セットのAUC値の減少があった(0.04~0.06)。箱のサイズは、検証相のデータではより大きくなったが(値の幅が広がったことを示している)、AUC値の差は≦0.1であった。この値の幅の広がりは、分析に含まれるバイオマーカー数が6より多い場合には、より狭くさえあった(<0.05)。この観察は、より強固な結果がmiRNAの数が6以上で得られたことを示していた。
【0186】
結果をより定量的に表したものを、
図11に示した。そこでは、分析に含まれるバイオマーカー数が7より大きい場合には、AUC値の改善は観察されなかった。6種類のmiRNAからなるバイオマーカーパネルと7種類のmiRNAからなるバイオマーカーパネルとの間の差は統計学的に有意であるが、そのAUC値の改善はほんの0.02であった。従って、6種類のmiRNAからなるパネルを使用して得たAUC値0.855は、臨床で使用するために十分である。
【0187】
IV多変量miRNAバイオマーカーパネルの組成
多変量バイオマーカーパネルの組成を調べるために、6~10種類のmiRNAを含む全てのパネルにおけるmiRNAの存在率をカウントしたが、上位10%と下位10%のAUCを有するパネルは除外した。上位10%と下位10%のAUCを有するものを除外して、交差検証分析の無作為化プロセスによって生まれた亜集団由来の不正確なデータを適用することに起因する偽発見バイオマーカーをカウントすることを避けた。カウントが4未満である場合のこれらmiRNAを除外する場合、総数で55種類のmiRNAを、発見プロセスで選択した(表12)。そこでは、これらの内43種類の発現ががんで有意に変化していたことも判明した。他の12種類(がんでは変化が無かったが)を含めると、AUC値が有意に改善することが分かった。全てのmiRNA標的を直接的かつ定量的に測定せずには、これらのmiRNAは、ハイスループットスクリーニング法(マイクロアレイ、シークエンシング)では決して選択されなかっただろうし、qPCR検証用には除外されていたであろう。これらのmiRNAは無作為に選択されたものではない。というのも、上位二つのmiRNA(hsa-miR-532-5p、hsa-miR-30e-5p)は、これらパネルの57.8%と48.4%に一貫して見られたからだ。
【0188】
【0189】
【0190】
多変量パネルを形成するように選択されるmiRNA(表12)は、各種ステージのがんを検出する際には、違いを示した(表8~11)。上位10個のしばしば選択されるmiRNAであって、存在率が20%より高いものとしてリストにあるものに関しては、それらの内たった3つ(hsa-miR-21-5p、hsa-miR-27a-5p、hsa-miR-142-5p)しか、がんの二つより多い異なるステージにおいて共通して制御されていないことが判明した。一方、残りのものに関しては、hsa-miR-103a-3pがステージ1のみに有意であり、hsa-miR-181a-5pがステージ4のみに有意であり、hsa-miR-26a-5pがステージ1&4に有意であり、hsa-miR-20a-5とhsa-miR-17-5pがステージ2&4に有意であり、そして、hsa-miR-616-5pとhsa-miR-30a-5pがステージ3&4に有意であった。多くの数のmiRNAが他の3つのステージのリストと重複していたステージ4(
図9)を除外して、ステージ1~3の各々に特異的な2種類のmiRNAが、しばしば選択された。
【0191】
診断マーカーとして多変量パネル用に選択された複数のmiRNAと単一miRNAの素性を比較する場合、それらは必ずしも同一ではなかった。例えば、全てのがんに関して(
図5)最も上位のアップレギュレートされたmiRNA(hsa-miR-532-5p)とダウンレギュレートされたmiRNA(hsa-miR-30e-5p)の両者は、リストには含まれなかった。従って、各種ステージ用に同定されたベストバイオマーカーを単に組み合させて最適なバイオマーカーパネルを形成することはできなかったし、むしろ、マーカーパネルは、最良の結果を与える相補的情報を提供した。
【0192】
興味深いことに、5種類のmiRNA(>48%の出現率を有するもの、表12を参照されたい)が、多変量パネルにしばしば選択された。これらの内三つ(hsa-miR-21-5p、hsa-miR-103a-3p、およびhsa-miR-20a-5p)はがん特異的であり、そして、二つ(非有意群;hsa-miR-532-5pおよびhsa-miR-30e-5p)は他の群に由来した。全ての多変量パネルでこれら5種類のmiRNAが同時に存在する率を解析した(表13)。すると、85.9%のパネルは、hsa-miR-532-5pまたはhsa-miR-30e-5pのいずれかを有していた。従って、これら二種類のmiRNAのいずれか一つの使用が、多変量インデックスパネルにおけるAUC値を増加させるのに十分有用である可能性がある。
【0193】
全体では、miRNAバイオマーカーパネルの93.8%が、各群からの少なくとも一つのmiRNAを有していた。従って、一つの例では、被験者が胃がんを有する尤度を決定する多変量法は、これら二つのしばしば選択されるmiRNA群の各々由来の少なくとも一つのmiRNAを含む場合がある。
【0194】
【0195】
がんリスクスコアの計算
miRNAを組み合わせて、バイオマーカーパネルを形成して、がんリスクスコアを計算することができる(式1)。例えば、出現率が>20%であって、多変量バイオマーカーパネル同定プロセスでしばしば選択される12種類のmiRNA(表21)を、組み合わせてバイオマーカーパネルを形成して、がんリスクスコアを計算することができる。ここの式は、胃がんリスク予測のための線形モデルの使用を示し、(各被験者に対してユニークな)がんリスクスコアは、被験者が胃がんを有する尤度を示す。この計算は、12種類のmiRNAの測定値に加重したものと定数50とを合計することにより行う。
式1-
【0196】
【数1】
log
2コピー数_miRNA
i-12種類の個々のmiRNAのコピー数をlog変換したもの。K
i-表21に見ることができる、複数のmiRNA標的を加重するのに使用される係数。K
iの値を、サポートベクターマシン法を用いて最適化し、0~100の範囲になるように調整した。0より低いがんリスクスコアを有する被験者は0と見なし、そして、100より高いがんリスクスコアを有する被験者は100と見なす。
【0197】
【0198】
本試験のコントロール被験者とがん被験者は、前記式に基づいて計算された互いに異なるがんリスクスコア値を有する(
図15A)。コントロール被験者とがん被験者のがんリスクスコアを確率分布に適合させたものは、
図15Bに見ることができて、この二群間で明らかに分離していることが見出され得る。本試験では、コントロール被験者は、ハイリスク集団から選択された非がん被験者であった。そして、胃がんを有する確率は0.0067である。この事前確率と
図15Bの確率分布に適合させたものに基づいて、未詳の被験者ががんを有する確率(リスク)を、それらのがんリスクスコア値に基づいて計算することができる(
図15C)。スコアが高いほど、被験者は胃がんを有するリスクがより高くなる。さらにまた、ハイリスク集団の胃がん発生率と比較すると、がんリスクスコアによって、未詳の被験者が胃がんを有する確率(リスク)の変化倍率を見分けることができる(
図15D)。例えば、未詳のハイリスク被験者であって、がんリスクスコアが70のものは、胃がんを有する確率が14.6%であり、これは、ハイリスク集団の平均リスクよりも約22倍高い。
【0199】
二つの閾値40および70をさらに適用することによって、被験者を、がんリスクスコアに基づく3つのカテゴリーへと定義することができる(
図15C、D)。がんリスクスコアが0~40の範囲の被験者は、がんリスクが低い群に属し、その群が胃がんを有する確率は0.052%である。これは、ハイリスク集団の平均がん発生率よりも13倍低い。がんリスクスコアが40~70の範囲の被験者は、がんリスクが中程度の群に属し、その群が胃がんを有する確率は1.4%である。これは、ハイリスク集団の平均がん発生率よりも2倍高い。がんリスクスコアが70~100の範囲の被験者は、がんリスクが高い群に属し、その群が胃がんを有する確率は12.2%である。これは、ハイリスク集団の平均がん発生率よりも18倍高い。
【配列表】