(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換システム、移動体及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/46 20230101AFI20250108BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20250108BHJP
H04N 25/704 20230101ALI20250108BHJP
【FI】
H04N25/46
H04N25/76
H04N25/704
(21)【出願番号】P 2020093404
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-05-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】小林 大祐
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208139(JP,A)
【文献】特開2015-142364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
H04N 23/40-23/76
G02B 7/28- 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのマイクロレンズと複数の光電変換素子とを含む光電変換ユニットと、
複数の光電変換素子のうちの一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第1の信号と、複数の光電変換素子のうちの他の一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第2の信号とを読み出す読み出し回路部と、
前記第1の信号及び前記第2の信号の少なくとも1つの信号に対して飽和レベルであることを示す情報を含む判定結果に応じて、前記第1の信号と前記第2の信号を加算して得られる第3の信号を出力するか、又は前記第3の信号を、前記第3の信号とは別の信号であって、前記第1の信号と前記第2の信号を加算した信号の飽和レベルに相当する第4の信号に置換して出力する信号処理部と
を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記判定結果が、前記第1の信号又は前記第2の信号が飽和レベルであることを示す場合に、前記第4の信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第4の信号は、前記第1の信号の飽和レベルと、前記第2の信号の飽和レベルとを加算して得られるレベルの信号である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記読み出し回路部は、AD変換器を有し、
前記第1の信号及び前記第2の信号は前記AD変換器から出力されたデジタル信号であり、
前記飽和レベルは、前記デジタル信号の上限値である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
複数の前記光電変換ユニットを有する光電変換領域を有し、
前記信号処理部は、前記複数の光電変換ユニットのうちの第1の光電変換ユニットから読み出された前記第1の信号及び前記第2の信号の少なくとも1つに基づく判定結果に応じて、前記複数の光電変換ユニットのうちの第2の光電変換ユニットに対応する前記第3の信号又は前記第4の信号を出力する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記光電変換領域は、前記複数の光電変換ユニットの各々に対応して配され、複数の色のうちの1つの色を有するカラーフィルタを更に有し、
前記第1の光電変換ユニットに対応する前記カラーフィルタの色と、前記第2の光電変換ユニットに対応する前記カラーフィルタの色とが互いに異なる
ことを特徴とする請求項5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
複数の前記光電変換ユニットと、
前記複数の光電変換ユニットの各々に対応して配され、複数の色のうちの1つの色を有するカラーフィルタと、
を有する光電変換領域を有し、
前記飽和レベルは、前記カラーフィルタの色に応じて異なる
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記判定結果は、前記第1の信号と前記第2の信号の差に関する第2情報をさらに含み、前記信号処理部は、前記情報および前記第2情報に応じて前記第3の信号又は前記第4の信号を出力する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、前記判定結果が、前記第1の信号が飽和レベルであり、かつ、前記第1の信号と前記第2の信号の差の絶対値が所定の閾値よりも小さいことを示す場合に、前記第4の信号を出力する
ことを特徴とする請求項8に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記信号処理部は、前記判定結果が、前記第1の信号が飽和レベルであり、かつ、前記第2の信号が所定の閾値以上であることを示す場合に、前記第4の信号を出力する
ことを特徴とする請求項8に記載の光電変換装置。
【請求項11】
移動体であって、
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
【請求項12】
1つのマイクロレンズと複数の光電変換素子とを含む光電変換ユニットと、複数の光電変換素子のうちの一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第1の信号と、複数の光電変換素子のうちの他の一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第2の信号とを読み出す読み出し回路部と、を有する光電変換装置と、
前記第1の信号及び前記第2の信号の少なくとも1つの信号に対して飽和レベルであることを示す情報を含む判定結果に応じて、前記第1の信号と前記第2の信号を加算して得られる第3の信号を出力するか、又は前記第3の信号を、前記第3の信号とは別の信号であって、前記第1の信号と前記第2の信号を加算した信号の飽和レベルに相当する第4の信号に置換して出力する信号処理部と
を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項13】
1つのマイクロレンズと複数の光電変換素子とを含む光電変換ユニットから出力される信号を処理する信号処理方法であって、
複数の光電変換素子のうちの一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第1の信号と、複数の光電変換素子のうちの他の一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第2の信号とを読み出すステップと、
前記第1の信号及び前記第2の信号の少なくとも1つの信号に対して飽和レベルであることを示す情報を含む判定結果に応じて、前記第1の信号と前記第2の信号を加算して得られる第3の信号を出力するか、又は前記第3の信号を、前記第3の信号とは別の信号であって、前記第1の信号と前記第2の信号を加算した信号の飽和レベルに相当する第4の信号に置換して出力するステップと
を有することを特徴とする信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、光電変換システム、移動体及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換装置において、複数の光電変換素子により生成された信号を1つの画素信号として処理する場合がある。特許文献1には、その際に用いられる技術として、複数の光電変換素子間のポテンシャルバリアを下げることによって、複数の光電変換素子間に感度又は入射光量の差がある場合にも適切な信号を得られるようにすることが記載されている。
【0003】
特許文献1のような技術において、複数の光電変換素子の各々から出力される信号の品質が飽和により低下する場合がある。特許文献2には、信号の飽和による信号品質の低下を軽減し得る技術が開示されている。特許文献2では、一方の光電変換素子に基づく第1の信号の飽和時に、他方の光電変換素子に基づく第2の信号を補正して得られた第3の信号によって第1の信号を置き換えることで、これを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-149743号公報
【文献】特開2016-208139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されている技術において、第2の信号の補正処理をするためには、補正用のデータを多く準備する必要がある。したがって、特許文献2とは別の手法により信号の飽和による信号品質への影響を低減することが求められる場合もあった。
【0006】
本発明の目的は、信号の飽和による信号品質への影響を低減し得る光電変換装置、光電変換システム、移動体及び信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、1つのマイクロレンズと複数の光電変換素子とを含む光電変換ユニットと、複数の光電変換素子のうちの一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第1の信号と、複数の光電変換素子のうちの他の一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第2の信号とを読み出す読み出し回路部と、前記第1の信号及び前記第2の信号の少なくとも1つの信号に対して飽和レベルであることを示す情報を含む判定結果に応じて、前記第1の信号と前記第2の信号を加算して得られる第3の信号を出力するか、又は前記第3の信号を、前記第3の信号とは別の信号であって、前記第1の信号と前記第2の信号を加算した信号の飽和レベルに相当する第4の信号に置換して出力する信号処理部とを有することを特徴とする光電変換装置が提供される。
【0008】
本発明の他の一観点によれば、1つのマイクロレンズと複数の光電変換素子とを含む光電変換ユニットと、複数の光電変換素子のうちの一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第1の信号と、複数の光電変換素子のうちの他の一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第2の信号とを読み出す読み出し回路部と、を有する光電変換装置と、前記第1の信号及び前記第2の信号の少なくとも1つの信号に対して飽和レベルであることを示す情報を含む判定結果に応じて、前記第1の信号と前記第2の信号を加算して得られる第3の信号を出力するか、又は前記第3の信号を、前記第3の信号とは別の信号であって、前記第1の信号と前記第2の信号を加算した信号の飽和レベルに相当する第4の信号に置換して出力する信号処理部とを有することを特徴とする光電変換システムが提供される。
【0009】
本発明の他の一観点によれば、1つのマイクロレンズと複数の光電変換素子とを含む光電変換ユニットから出力される信号を処理する信号処理方法であって、複数の光電変換素子のうちの一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第1の信号と、複数の光電変換素子のうちの他の一の光電変換素子が蓄積した電荷に基づく第2の信号とを読み出すステップと、前記第1の信号及び前記第2の信号の少なくとも1つの信号に対して飽和レベルであることを示す情報を含む判定結果に応じて、前記第1の信号と前記第2の信号を加算して得られる第3の信号を出力するか、又は前記第3の信号を、前記第3の信号とは別の信号であって、前記第1の信号と前記第2の信号を加算した信号の飽和レベルに相当する第4の信号に置換して出力するステップとを有することを特徴とする信号処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号の飽和による信号品質への影響を低減し得る光電変換装置、光電変換システム、移動体及び信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態による固体撮像装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるデジタルシグナルプロセッサの構成例を示す概略図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による固体撮像装置を含む撮像ユニットの一例を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による信号処理を実施する前の入出力特性の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明の第1実施形態による固体撮像装置における信号処理方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1実施形態による信号処理を実施した後の入出力特性の一例を示すグラフである。
【
図7】本発明の第1実施形態による固体撮像装置の他の構成例を示す概略図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による固体撮像装置の更に他の構成例を示す概略図である。
【
図9】本発明の第2実施形態による固体撮像装置における信号処理方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第2実施形態による固体撮像装置における信号処理方法により取得した入出力特性の一例を示すグラフである。
【
図11】本発明の第3実施形態による固体撮像装置における信号処理方法を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第3実施形態による固体撮像装置における信号処理方法により取得した入出力特性の一例を示すグラフである。
【
図13】本発明の第4実施形態による撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【
図14】本発明の第5実施形態による撮像システム及び移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1実施形態による固体撮像装置及び信号処理方法について、
図1乃至
図8を用いて説明する。本実施形態においては、本発明が適用され得る光電変換装置の一種である固体撮像装置の例を説明するが、これに限定されるものではない。本発明が適用され得る光電変換装置としては、固体撮像装置、焦点検出装置、測距装置、TOF(Time-Of-Flight)カメラ等が例示され得る。
【0013】
図1は、本実施形態による固体撮像装置の構成例を示す概略図である。
図2は、本実施形態によるデジタルシグナルプロセッサの構成例を示す概略図である。
図3は、本実施形態による固体撮像装置を含む撮像ユニットの一例を示す概略断面図である。
図4は、本実施形態による信号処理を実施する前の入出力特性の一例を示すグラフである。
図5は、本実施形態による固体撮像装置における信号処理方法を示すフローチャートである。
図6は、本実施形態による信号処理を実施した後の入出力特性の一例を示すグラフである。
図7は、本実施形態による固体撮像装置の他の構成例を示す概略図である。
図8は、本実施形態による固体撮像装置の更に他の構成例を示す概略図である。
【0014】
はじめに、本実施形態による固体撮像装置の構造について、
図1乃至
図3を用いて説明する。本実施形態の固体撮像装置、例えばCMOSイメージセンサは、
図1に示すように、複数の光電変換ユニット103が行方向及び列方向に沿って2次元アレイ状に配列された撮像領域100(光電変換領域)を有している。撮像領域100は、特に限定されるものではないが、例えば1080行×1920列の光電変換ユニット103のアレイを含むことができる。なお、
図1には、これらのうち、4行×4列の光電変換ユニット103のアレイを抜き出して示している。
【0015】
それぞれの光電変換ユニット103は、2つの光電変換素子101、102と、1つのマイクロレンズ104と、不図示のカラーフィルタとを含む。各光電変換ユニット103において、マイクロレンズ104を通過した光は、複数の色のうちの1つの色を有するカラーフィルタを通過し、光電変換素子101及び光電変換素子102により検出される。このような構造にすることによって、光電変換素子101から得られた信号と光電変換素子102から得られた信号とを用いて位相差方式の焦点検出を行うことができる。また、光電変換素子101から得られた信号と光電変換素子102から得られた信号とを加算することにより、撮像画像を形成する画素用の信号データを得ることができる。
【0016】
図1の光電変換素子101、102内に示している符号a、bは、それぞれ、左右に瞳分割して得られた色信号であるA信号とB信号とを意図している。すなわち、光電変換素子101がA信号を取得するための光電変換素子であり、光電変換素子102がB信号を取得するための光電変換素子である。また、符号R、G、Bは、カラーフィルタの色を表しており、Rは赤フィルタ、Gは緑フィルタ、Bは青フィルタである。1つの各光電変換ユニット103を構成する2つの光電変換素子101、102には、同じ色のカラーフィルタが割り当てられている。なお、
図1には、いわゆるベイヤ配列によりカラーフィルタを配置した例を示しているが、カラーフィルタの配置は、これに限定されるものではない。
【0017】
撮像領域100には、列方向に延在して、複数の信号出力線105が配されている。信号出力線105は、各列に2本ずつ配置されている。この2本の信号出力線105は、一方が列方向に並ぶ光電変換ユニット103の光電変換素子101からA信号を出力するための信号線であり、他方が列方向に並ぶ光電変換ユニット103の光電変換素子102からB信号を出力するための信号線である。なお、A信号及びB信号は、それぞれ、光電変換ユニット103内に設けられた不図示の画素内読み出し回路を介して、光電変換素子101、102から信号出力線105へと出力される。
【0018】
それぞれの信号出力線105は、増幅率が可変又は固定の列アンプ106を介して、AD変換器(ADC)107に接続されている。以降の説明では、列アンプ106とAD変換器107とを総括して「回路部」又は「読み出し回路部」と表記することもある。AD変換器107には、デジタルシグナルプロセッサ(以下、「DSP」と表記する)108が接続されている。AD変換器107は、列アンプ106から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換してDSP108に出力する。
【0019】
図2は、本実施形態に係るDSP108の構成例である。DSP108は、光電変換ユニット103の列に対応して配された処理ユニット108-1、108-2、108-3、…を有している信号処理部である。処理ユニット108-1は、着目する1列の光電変換ユニット103に対応するブロックである。処理ユニット108-2、3は、処理ユニット108-1に対応する光電変換ユニット103に隣接する列の光電変換ユニット103に対応するブロックである。以下では、主として処理ユニット108-1について説明するが、他の処理ユニットも同様の構成を有している。
【0020】
処理ユニット108-1は、2つのゲイン付加部110、2つのオフセット付加部111、信号判定部116及び加算器120を有している。AD変換器107から出力された信号は、光電変換素子101に対応する出力線107-1又は光電変換素子102に対応する出力線107-2を介して処理ユニット108-1に入力される。
【0021】
出力線107-1から入力された信号は、第1のゲイン付加部110、第1のオフセット付加部111及び配線117を介して加算器120に入力される。出力線107-2から入力された信号は、第2のゲイン付加部110、第2のオフセット付加部111及び配線118を介して加算器120に入力される。
【0022】
また、出力線107-1、107-2から入力された信号は、信号判定部116にも入力される。信号判定部116は、配線112、113、114、115、119を介して2つのゲイン付加部110、2つのオフセット付加部111及び加算器120を制御する。
【0023】
ゲイン付加部110は、入力された信号に対して信号判定部116からの制御に応じたゲインを付加して出力する。オフセット付加部111は、入力された信号に対して信号判定部116からの制御に応じたオフセットを付加して出力する。ゲイン付加部110及びオフセット付加部111は、これらの信号処理を行うことにより、AD変換器107から出力された信号に対し線形性の補正及びオフセットの補正を行うことができる。
【0024】
加算器120は、入力された信号を加算することにより、撮像画像を形成する画素用の信号データを生成し、共通の出力線130に出力する機能を有している。また、加算器120は、入力された信号を所定の電圧を示す信号に置換する機能を更に有している。出力線130から出力された信号データは、不図示の出力回路を介して固体撮像装置の外部に出力される。また、加算器120での処理に用いられた信号レベル、判定結果等の情報は、配線121、122を介して他の処理ユニット108-2、108-3の加算器に供給され得る。
【0025】
信号判定部116は、光電変換素子101、102に対応する信号の各々について、信号レベルに基づいて飽和を判定する機能を有する。信号判定部116は、信号レベル又は飽和の判定結果に基づいて、配線112、113、114、115、119を介して2つのゲイン付加部110、2つのオフセット付加部111及び加算器120を制御する。
【0026】
なお、処理ユニット108-1の構成、処理ユニット108-1で行われる信号処理等は、本実施形態で説明したものに限定されるものではない。また、
図1及び
図2では、出力線107-1、107-2、配線117、118及び出力線130の各々は、1本の配線で示されているが、信号の伝送形式によっては、複数の配線である場合もある。
【0027】
図3は、本実施形態の固体撮像装置201を含む撮像ユニットを示す概略断面図である。撮影レンズの射出瞳202を通過した光は、射出瞳距離208を隔てて配置された固体撮像装置201に入射する。固体撮像装置201は、前述のように、2つの光電変換素子203、204を含む光電変換ユニット205と、マイクロレンズ206とを有する。なお、説明の便宜上、
図3では
図1と同一の構成要素に対して別の符号を付している。
図3における2つの光電変換素子203、204は、
図1の光電変換素子101、102に対応し、光電変換ユニット205は、
図1における光電変換ユニット103に対応する。また、マイクロレンズ206は、
図1におけるマイクロレンズ104に対応する。以降の説明についても同様である。なお、以下の説明において、光電変換ユニット205-1等のように符号に枝番を付して複数の光電変換ユニット205のうちの1つを指す場合がある。
【0028】
通常、撮影レンズの射出瞳202のサイズはミリメートルオーダーであるのに対し、光電変換ユニット205のサイズはマイクロメートルオーダーである。実際の比率で図示すると説明に支障があるので、固体撮像装置201の構成要素に関しては、一部を抜き出し拡大して示すものとする。すなわち、
図3において、光電変換ユニット205-3は像高0の中央部、光電変換ユニット205-1、205-5は左右像高が高い位置、光電変換ユニット205-2、205-4は左右像高が中程度の位置における光電変換ユニット205の拡大図である。撮影レンズの射出瞳202は、マイクロレンズ206によって光電変換ユニット205の表面に射出瞳像207を形成する。像高の高い位置において、射出瞳距離208とマイクロレンズ206のピッチが特定の条件を満たしている場合を除き、射出瞳像207の中心と光電変換ユニット205の中心とは一致しない。このため、1つの光電変換ユニット205に含まれる2つの光電変換素子203、204の間において、入射光量差、すなわち感度差が発生する。なお、特定の条件とは、射出瞳像207の中心と光電変換ユニット205の中心とが一致するときの、射出瞳距離208とマイクロレンズ206のピッチとの関係である。
【0029】
図3において、光電変換素子203、204に示した網掛け部分の面積が、各光電変換素子203、204に蓄積された信号電荷の量によって決まる感度に対応している。この図では、上述の特定の条件を満たす場合よりも像高方向(ここでは水平方向)に見たマイクロレンズ206のピッチに対する射出瞳距離208が短いときの、像高に応じて光電変換素子間の感度差が変化する様子を概念的に示している。なお、射出瞳像207の中心位置が変化する要因として、撮像レンズの射出瞳距離208と水平像高209とがあり、射出瞳像207の径が変化する要因として、撮像レンズの瞳径210がある。射出瞳像207の中心位置と径とによって、光電変換素子203と光電変換素子204との間の感度差の量が決まる。
【0030】
前述の通り、撮像画像を形成する画素用の信号データは、光電変換素子203からの信号データと光電変換素子204からの信号データとを加算することによって得られる。光電変換素子203と光電変換素子204との間に感度差が存在すると、撮像条件によっては一方の光電変換素子の信号が他方の光電変換素子の信号よりも大幅に大きくなり、当該一方の光電変換素子からの信号データのみが飽和することがある。一方の光電変換素子からの信号データに飽和が生じると、撮像画像の明部において入出力特性の線形性が低下し、色ずれ等の画質低下を引き起こすことになる。
【0031】
図4は、相対的に感度の高い光電変換素子203の入出力特性301、相対的に感度の低い光電変換素子204の入出力特性302、及び入出力特性301、302を合成した入出力特性303の一例を示すグラフである。横軸が入力光量を示し、縦軸がAD変換後のデジタルデータの信号レベルを示している。
【0032】
図4の例において、入力光量がある一定の入力光量Iaを超えると、光電変換素子203からの出力信号は、回路部で飽和する。回路部で飽和したときの信号レベルが、信号レベルV1である。光電変換素子204からの出力信号は、入力光量Iaよりも大きい入力光量Icを越えると、回路部で飽和する。このような場合、入出力特性301、302を合成した入出力特性303は、
図4に示すように、入力光量Ia以上において傾きが小さくなり、線形性が低下する。なお、入出力特性303は、入力光量Ic以上において、光電変換素子203からの出力信号の回路飽和を示す信号レベルV1と、光電変換素子204からの出力信号の回路飽和を示す信号レベルV1とを加算した信号レベルV2(=2×V1)となる。
【0033】
回路部での飽和としては、一例としてAD飽和が挙げられる。AD飽和とは、出力信号がデジタル信号の上限値に達していることを意味する。デジタル信号の上限値は、通常、nビットであれば2n-1の信号レベルに相当する。回路部で飽和が生じる信号レベルは、回路部の構成に応じて決定される所定の信号レベルである。なお、以後の説明では、簡略化のために回路部での飽和を「AD飽和」と表記することもあるが、この表記は回路部での飽和がAD飽和に限定されることを意図するものではない。アナログ信号の場合にも、回路のダイナミックレンジの上限値において電圧飽和することがある。本発明において、回路部での飽和は、AD飽和のみならずアナログ信号の電圧飽和をも含むものである。
【0034】
このように、一方の光電変換素子からの出力データにAD飽和が生じると、2つの光電変換素子203、204からの出力データを加算した画像データの線形性が低下する。本実施形態による信号処理方法は、一方の光電変換素子の出力データがAD飽和することにより生じる画像データの線形性低下による画質への影響を低減するものである。
【0035】
次に、本実施形態による信号処理方法について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態による信号処理方法を示すフローチャートである。図中、信号OUT1(第1の信号)は、光電変換ユニット205を構成する第1の光電変換素子203からAD変換器107を経てDSP108に入力されるデジタル信号を表すものとする。また、信号OUT2(第2の信号)は、光電変換ユニット205を構成する第2の光電変換素子204からAD変換器107を経てDSP108に入力されるデジタル信号を表すものとする。
【0036】
ステップS11において、信号判定部116は、信号OUT1又は信号OUT2がAD飽和しているか否かを判定する。この判定処理は、例えば、信号OUT1又は信号OUT2の値がデジタル信号の上限値(飽和レベル)に達しているか否かを判定するものであってもよく、信号OUT1又は信号OUT2の値が所定の判定閾値を超えているか否かを判定するものであってもよい。信号判定部116は、判定結果に基づいて加算器120を制御する。
【0037】
ステップS11において信号OUT1又は信号OUT2がAD飽和していると判定された場合(ステップS11におけるYES)、処理はステップS12に移行する。ステップS11において信号OUT1及び信号OUT2がいずれもAD飽和していないと判定された場合(ステップS11におけるNO)、処理はステップS13に移行する。
【0038】
ステップS13において、加算器120は、信号OUT1が示す信号レベルと信号OUT2が示す信号レベルとを加算した信号OUT1+OUT2(第3の信号)を出力する。これにより、信号OUT1+OUT2は出力線130を介して外部に出力される。
【0039】
ステップS12において、加算器120は、信号OUT1+OUT2を信号レベルがV2であることを示す信号(第4の信号)に置換して出力する。この信号は出力線130を介して外部に出力される。信号レベルV2は、
図4に示されているように、信号OUT1+OUT2の飽和時のレベルである。すなわち、信号レベルV2は、信号OUT1の飽和レベルと信号OUT2の飽和レベルとを加算して得られるレベルに相当する。
【0040】
なお、信号判定部116は、判定結果に基づいてゲイン付加部110及びオフセット付加部111を更に制御してもよい。これにより、判定結果に応じてゲイン付加部110及びオフセット付加部111での補正処理を調整することができる。
【0041】
図6は、
図4の入出力特性に対して本実施形態の信号処理方法を実施した後の入出力特性を示すグラフである。
図6に示す入出力特性において、光電変換素子203からの出力がAD飽和する入力光量Ia未満では、合成後の入出力特性401は、
図4に示す入出力特性303と同等である。しかしながら、入力光量Ia以上、又は信号レベルV3以上では、入出力特性401は飽和時の信号レベルV2となる。
【0042】
図4に示す入出力特性303では、入力光量Ia以上の光量において、線形性が低下する。加算後の入出力特性の線形性の低下が生じると、光量が大きい被写体、又は信号レベルの値が大きい被写体の撮像時において、暗部から明部の切り替わり具合が実際と異なる撮像画像が得られる場合がある。本実施形態の構成では、
図6に示すように入力光量Ia以上で信号レベルをV2とすることにより、線形性が低下する領域の出力特性が撮像画像に影響しにくくすることができるため、入出力特性の線形性低下の影響が低減される。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、信号の飽和による信号品質への影響を低減し得る光電変換装置が提供される。
【0044】
また、
図4に示す入出力特性303においては、加算後の撮像画像に色ずれが生じる場合がある。これは、
図1のように複数の色のカラーフィルタを配置した固体撮像装置において発生し得る。通常、カラーフィルタは、色ごとに透過率が異なるように設計される。通常の被写体においては、各色の感度は、G>R>Bの関係になる。このため、同一光量で比較すると、Gのカラーフィルタが配置される光電変換ユニット103の信号レベルが、他のR、Bのカラーフィルタが配置される光電変換ユニット103の信号レベルに比して相対的に大きくなる。したがって、入出力特性303の線形性が低下し始める入力光量Iaは、通常の被写体においては、Gのカラーフィルタが配置される光電変換ユニット103において最も小さくなる。
【0045】
一般的な画像処理は、R、G及びBの感度の比率及び線形性が所定の光量範囲内で一定であることを前提としている。そのため、ある光量でGのみの線形性が低下すると、Gの感度とR又はBとの感度の比率が崩れ、撮像画像の画像処理後の色が被写体の実際の色からずれる場合がある。例えば白色の被写体において、Gの線形性が低下して相対的にR及びBの感度が大きくなると、実際は白色である被写体の色がマゼンタに近づいて見えるような色ずれが生じることがある。
【0046】
本実施形態では、
図2の処理ユニット108-2、108-3の加算器は、配線121、122により処理ユニット108-1の加算器120と接続されている。これにより、加算器120での処理に用いられた信号レベル、判定結果等の情報が相互に共有され得る。この共有された情報に基づいて、処理ユニット108-1と、隣接列の処理ユニット108-2、108-3とが連動して同じ内容の信号処理を行ってもよい。
【0047】
例えば、処理ユニット108-1の信号判定部116での判定結果に基づいて、
図5のステップS12の処理、すなわち、V2を出力する処理がなされたとする。このとき、処理ユニット108-2、108-3の加算器120は、入力された信号OUT1、OUT2の信号レベルに関わらず処理ユニット108-1と同様にV2を出力する処理を行ってもよい。また、処理ユニット108-1でのV2を出力する処理と同様の出力が処理ユニット108-2、108-3でも得られるように、処理ユニット108-2、108-3のゲイン付加部110及びオフセット付加部111により補正処理を行ってもよい。これらの例では、ある列の第1の光電変換ユニット103から読み出された画素信号が信号レベルV2に置換された際に、隣接する列の第2の光電変換ユニット103から読み出された画素信号に対しても信号レベルがV2に置換又は補正処理される。これにより、ある色の画素信号と隣接列の他の色の画素信号とが連動してV2に置換又は補正処理されるため、色ずれを低減することができる。
【0048】
また、色ごとに飽和の判定閾値を異ならせてもよい。例えば、R、G、Bの感度差による出力の比率に応じて判定閾値を異ならせることにより、各色の信号レベルがV2に置換される光量を近づけることができる。これにより、色ずれの影響を低減することができる。
【0049】
本実施形態では、信号OUT1+OUT2を、光電変換素子203からの出力信号の回路飽和を示す信号レベルV1と、光電変換素子204からの出力信号の回路飽和を示す信号レベルV1とを加算した信号レベルV2に置換又は補正処理する例を説明した。他の例として、光電変換素子203、204で飽和レベルが異なる場合には、光電変換素子203、204の回路飽和レベルを示す信号レベルを加算した信号レベルとすればよい。また、本実施形態の置換又は補正処理は、必ずしも光電変換素子203、204の回路飽和レベルを加算した信号レベルに一致させる必要は無い。つまり、信号OUT1+OUT2を、実質的に飽和レベルと言える範囲の信号レベルに置換又は補正する処理も、本実施形態の範疇に含まれる。
【0050】
なお、
図1では、R、G、Bの3色のカラーフィルタを含む一般的なベイヤ配列を例示したがこれに限定されるものではなく、これ以外の配列であってもよく、カラーフィルタの種類がこれと異なっていてもよい。
【0051】
図7は、第1実施形態による固体撮像装置の他の構成例を示す概略図である。
図7に示されているように、一部の光電変換ユニット103において、緑色のカラーフィルタ(G)の代わりに、赤外線を透過し、可視光を遮断する赤外フィルタ(
図7におけるIr)が配されていてもよい。
【0052】
図8は、第1実施形態による固体撮像装置の他の構成例を示す概略図である。
図8に示されているように、一部の光電変換ユニット103において、緑色のカラーフィルタ(G)の代わりに、R、G、Bの3色の光をいずれも透過する白フィルタ(
図8におけるW)が配されていてもよい。
【0053】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による固体撮像装置及び信号処理方法について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図1乃至
図8に示す第1実施形態による固体撮像装置及び信号処理方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0054】
図9は、本実施形態による固体撮像装置における信号処理方法を示すフローチャートである。
図10は、本実施形態による固体撮像装置における信号処理方法により取得した入出力特性の一例を示すグラフである。
【0055】
第1実施形態では、一方の光電変換素子からの出力がAD飽和と判定された場合に、撮像画像を形成する画素用の信号データのレベルを飽和レベルに置換する処理を行う信号処理方法を説明した。しかしながら、撮像装置の光学系又は被写体によっては、2つの光電変換素子で生成される電荷量の差が大きい場合がある。2つの光電変換素子で生成される電荷量の差が大きい場合、第1実施形態で説明した信号レベルV3が低くなる。これは、光電変換素子203と光電変換素子204の感度差が大きい場合、
図6における入出力特性302の入力光量Iaが低くなるためである。このような理由により、加算後の入出力特性401の出力レンジが小さくなることがある。本実施形態の固体撮像装置は、信号処理方法を第1実施形態に対して変更することにより、置換処理が出力レンジに与える影響を低減するものである。
【0056】
図9を参照して本実施形態による信号処理方法を説明する。ステップS11において、信号判定部116は、第1実施形態と同様の判定処理を行う。ステップS11において信号OUT1又は信号OUT2がAD飽和していると判定された場合(ステップS11におけるYES)、処理はステップS21に移行する。ステップS11において信号OUT1及び信号OUT2がいずれもAD飽和していないと判定された場合(ステップS11におけるNO)、処理はステップS13に移行する。ステップS13において、加算器120は、信号OUT1が示す信号レベルと信号OUT2が示す信号レベルとを加算した信号OUT1+OUT2を出力する。
【0057】
ステップS21において、信号判定部116は、信号OUT1が示す信号レベルと信号OUT2が示す信号レベルとの差分の絶対値(|OUT1-OUT2|)を計算し、その差分の絶対値と判定閾値である信号レベルV4とを比較する。
【0058】
ステップS21において差分の絶対値が信号レベルV4未満であると判定された場合(ステップS21におけるYES)、処理はステップS12に移行する。ステップS12において、加算器120は、信号OUT1+OUT2を信号レベルがV2であることを示す信号に置換して出力する。
【0059】
ステップS21において差分の絶対値が信号レベルV4以上であると判定された場合(ステップS21におけるNO)、処理はステップS13に移行する。ステップS13において、加算器120は、信号OUT1が示す信号レベルと信号OUT2が示す信号レベルとを加算した信号OUT1+OUT2を出力する。
【0060】
図10は、本実施形態の信号処理方法により取得された入出力特性の一例を示すグラフである。
図10における入出力特性402、403は、
図6における入出力特性401、302にそれぞれ対応している。
図10は、入出力特性403に示される光電変換素子204の感度が
図6の入出力特性302に示される光電変換素子204の感度よりも大きい場合を示している。すなわち、
図10の入力光量Iaにおける入出力特性402の信号レベルV5は、
図6の入力光量Iaにおける入出力特性401の信号レベルV3よりも大きい。
【0061】
本実施形態では、
図10のように信号OUT1が示す信号レベルと信号OUT2が示す信号レベルとの差分の絶対値が十分に小さい場合にのみ信号OUT1+OUT2を置換する処理を行い、
図6のように差分の絶対値が大きい場合にはこの置換処理を行わない。すなわち、置換処理に起因する出力レンジの減少量が大きくなり過ぎる場合には、置換処理を行わないようにする判定が行われている。これにより、本実施形態によれば、置換処理が出力レンジに与える影響を低減することができる固体撮像装置が提供される。
【0062】
なお、信号レベルV4は、出力レンジの減少量の許容量等の設計制約を考慮して、適宜設定することができる。また、ステップS21の場面においては、信号OUT1と信号OUT2の一方はステップS11においてAD飽和していると判定済みであるため、ステップS21の処理は、AD飽和していない他方の信号の絶対値を判定する処理であってもよい。このときの判定処理は、AD飽和していない他方の信号の絶対値が所定の閾値以上の場合にステップS12に移行し、信号OUT1+OUT2を信号レベルがV2であることを示す信号に置換するというものであり得る。
【0063】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による固体撮像装置及び信号処理方法について、
図11及び
図12を用いて説明する。
図1乃至
図8に示す第1実施形態による固体撮像装置及び信号処理方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0064】
図11は、本実施形態による固体撮像装置における信号処理方法を示すフローチャートである。
図12は、本実施形態による固体撮像装置における信号処理方法により取得した入出力特性の一例を示すグラフである。
【0065】
第1実施形態では、一方の光電変換素子からの出力がAD飽和と判定された場合に、撮像画像を形成する画素用の信号データの入出力特性を処理する信号処理方法を説明した。第1実施形態の信号処理では、加算器120が、信号OUT1+OUT2を出力するための加算処理と、出力信号を信号レベルV2の信号に置換する置換処理とを行い得る。したがって、第1実施形態においては、加算器120が2つの信号処理を行う必要があるため、加算器120の回路規模が大型化し得る。これにより、DSP108の回路規模も大型化し得る。本実施形態の固体撮像装置は、信号処理方法を第1実施形態に対して変更することによりDSP108の回路規模を低減するものである。
【0066】
図11を参照して本実施形態に寄る信号処理方法を説明する。ステップS31において、信号判定部116は、信号OUT1がAD飽和しているか否かを判定する。ステップS31において信号OUT1がAD飽和していると判定された場合(ステップS31におけるYES)、処理はステップS32に移行する。ステップS31において信号OUT1がAD飽和していないと判定された場合(ステップS31におけるNO)、処理はステップS33に移行する。
【0067】
ステップS32において、ゲイン付加部110又はオフセット付加部111は、信号OUT2を信号レベルがV1であることを示す信号に置換して、置換後の信号を加算器120に出力する。なお、ステップS31において信号OUT1もAD飽和していることから信号OUT1の信号レベルもV1であるため、加算器120に入力される信号OUT1及び信号OUT2の信号レベルはいずれもV1である。
【0068】
ステップS33において、信号判定部116は、信号OUT2がAD飽和しているか否かを判定する。ステップS33において信号OUT2がAD飽和していると判定された場合(ステップS33におけるYES)、処理はステップS34に移行する。ステップS33において信号OUT2がAD飽和していないと判定された場合(ステップS33におけるNO)、処理はステップS13に移行する。
【0069】
ステップS34において、ゲイン付加部110又はオフセット付加部111は、信号OUT1を信号レベルがV1であることを示す信号に置換して、置換後の信号を加算器120に出力する。なお、ステップS33において信号OUT2もAD飽和していることから信号OUT2の信号レベルもV1であるため、加算器120に入力される信号OUT1及び信号OUT2の信号レベルはいずれもV1である。
【0070】
ステップS13において、加算器120は、信号OUT1が示す信号レベルと信号OUT2が示す信号レベルとを加算した信号OUT1+OUT2を出力する。これにより、信号OUT1+OUT2は出力線130を介して外部に出力される。
【0071】
ここで、ステップS31又はステップS33のいずれかでYESと判定された場合には、加算器120に入力される信号OUT1及び信号OUT2の信号レベルはいずれもV1であるため、加算器120の出力は2×V1、すなわちV2である。ステップS31又はステップS33のいずれにおいてもNOと判定された場合には、信号OUT1と信号OUT2はいずれも飽和しておらず、これらが加算された信号OUT1+OUT2がそのまま加算器120から出力される。したがって、
図11における信号OUT1及び信号OUT2の飽和の有無と出力信号の関係は第1実施形態の場合と同じ結果となる。
【0072】
図12は、本実施形態の信号処理方法により取得された入出力特性の一例を示すグラフである。
図12における入出力特性404は、
図6における入出力特性302に対応している。
図12に示されている入出力特性404では、入力光量Ia以上において信号レベルがV1に置換されている。これにより、入出力特性401は、第1実施形態の
図6に示すものと同様に、入力光量Ia以上、又は信号レベルV3以上で信号レベルV2となる。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に信号の飽和による信号品質への影響を低減し得る光電変換装置が提供される。また、本実施形態では、加算器120では信号OUT1+OUT2を出力するための加算処理が行われるものの、加算器120では、出力信号を信号レベルV2の信号に置換する置換処理は行われない。この置換処理の機能は、加算器120ではなく、ゲイン付加部110又はオフセット付加部111において信号OUT1又は信号OUT2に対して行われているためである。したがって、加算器120の回路規模が低減され、これにより、DSP108の回路規模が低減される。
【0074】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による撮像システムについて、
図13を用いて説明する。
図13は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
図13に示す固体撮像装置10は、上述の第1乃至第3実施形態で述べた固体撮像装置である。すなわち、本実施形態による撮像システム500は、上述の第1乃至第3実施形態で述べた固体撮像装置(光電変換装置)が適用され得る光電変換システムの一例である。なお、第1乃至第3実施形態においては、DSP108が固体撮像装置に含まれるものとしていたが、
図13では、DSP108に対応する信号処理部508が固体撮像装置10と別のブロックとして図示されている。
【0075】
本実施形態による撮像システム500は、特に限定されるものではないが、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、カメラヘッド、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星等に適用可能である。
【0076】
撮像システム500は、
図13に示すように、固体撮像装置10、レンズ502、絞り504、バリア506、信号処理部508、タイミング発生部520、全体制御・演算部518を有している。撮像システム500は、また、メモリ部510、記録媒体制御I/F部516、外部I/F部512を有している。
【0077】
レンズ502は、被写体の光学像を固体撮像装置10の撮像領域100に結像するためのものである。絞り504は、レンズ502を通った光量を可変にするためのものである。バリア506は、レンズ502の保護のためのものである。固体撮像装置10は、先の実施形態で説明した固体撮像装置であって、レンズ502により結像された光学像に基づく信号を信号処理部508に出力するものである。固体撮像装置10から出力される信号には、光電変換ユニット103の光電変換素子101から出力されるA信号と光電変換素子102から出力されるB信号とが含まれる。
【0078】
信号処理部508は、固体撮像装置10より出力される信号に対して、所望の処理、補正、データ圧縮等を行うものである。信号処理部508には、DSP108が含まれる。信号処理部508により行われる処理には、先の実施形態で説明した信号処理による補正が施された画像データの生成や、A信号及びB信号に基づいて被写体までの距離情報を取得する処理などが含まれる。信号処理部508は、固体撮像装置10と同じ基板に搭載されていてもよいし、別の基板に搭載されていてもよい。また、信号処理部508の一部の機能が固体撮像装置10と同じ基板に搭載され、信号処理部508の他の一部の機能が別の基板に搭載されていてもよい。また、固体撮像装置10はデジタル信号ではなく、AD変換前のアナログ信号を出力するものであってもよい。その場合、信号処理部508には、AD変換器107が更に含まれ得る。
【0079】
タイミング発生部520は、固体撮像装置10及び信号処理部508に、各種タイミング信号を出力するためのものである。全体制御・演算部518は、撮像システム500の全体の駆動及び演算処理を司る制御部である。ここで、タイミング信号等の制御信号は撮像システム500の外部から入力されてもよく、撮像システム500は、少なくとも固体撮像装置10と、固体撮像装置10から出力された信号を処理する信号処理部508とを有していればよい。
【0080】
メモリ部510は、画像データを一時的に記憶するためのフレームメモリ部である。記録媒体制御I/F部516は、記録媒体514への記録或いは記録媒体514からの読み出しを行うためのインターフェース部である。外部I/F部512は、外部コンピュータ等と通信するためのインターフェース部である。記録媒体514は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体である。
【0081】
このようにして、第1乃至第3実施形態による固体撮像装置及び信号処理方法を適用した撮像システム500を構成することにより、ダイナミックレンジの広い高品質の画像を取得し得る高性能の撮像システムを実現することができる。
【0082】
[第5実施形態]
図14(a)及び
図14(b)は、本実施形態による撮像システム600及び移動体の構成を示す図である。
図14(a)は、車載カメラに関する撮像システム600の一例を示したものである。撮像システム600は、上述の第1乃至第3実施形態のいずれかに記載の固体撮像装置の一例である固体撮像装置10を有する。撮像システム600は、固体撮像装置10により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部612と、撮像システム600により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差算出部614を有する。また、撮像システム600は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離計測部616と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部618と、を有する。ここで、視差算出部614及び距離計測部616は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部618はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0083】
撮像システム600は、車両情報取得装置620と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム600には、衝突判定部618での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU630が接続されている。すなわち、制御ECU630は、距離情報に基づいて移動体を制御する移動体制御手段の一例である。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置640とも接続されている。例えば、衝突判定部618の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU630はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置640は、音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与える等によりユーザに警告を行う。
【0084】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム600で撮像する。
図14(b)に、車両前方(撮像範囲650)を撮像する場合の撮像システム600の構成を示す。車両情報取得装置620は、撮像システム600を動作させ撮像を実行させるように指示を送る。
【0085】
このようにして、第1乃至第3実施形態による固体撮像装置及び信号処理方法を適用した撮像システム600及び移動体を構成することにより、高品質の画像を取得し得る高性能の撮像システム及び高精度に制御を行い得る移動体を実現することができる。
【0086】
以上の説明では、他の車両と衝突しないように制御する例を述べたが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機、産業用ロボット等の移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0087】
[変形実施形態]
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。
【0088】
例えば、上述の実施形態では、AD変換器107の後段のDSP108で飽和を検出しているが、AD変換後のデジタル信号だけでなく、AD変換前のアナログ信号についても回路のダイナミックレンジの上限値において電圧飽和することがある。したがって、上述の実施形態は、デジタル信号の飽和を検出する代わりに、アナログ信号の電圧飽和を検出するように構成してもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、光電変換ユニット103を左右に2分割した光電変換素子101、102により構成する例を示したが、上下に2分割した光電変換素子により構成するようにしてもよい。また、上下と左右の分割を併用してもよいし、分割数が3以上であっても構わない。分割した光電変換素子からの出力信号の用途は、焦点検出に限定されるものではなく、三次元画像、距離検出センサ、ライトフィールドセンサ等の用途にも適用可能である。
【0090】
また、上述の実施形態では、各列に2本ずつの信号出力線105を配置し、A信号とB信号とを別々の信号出力線105を介して出力する構成としたが、各列に1本の信号出力線105を配置するように固体撮像装置を構成してもよい。この場合、例えば、A信号とA+B信号とを別々のタイミングで読み出し、A+B信号からA信号を減算してB信号を算出すればよい。その後の信号処理は、上述の実施形態と同様である。
【0091】
また、第1実施形態では、光電変換素子203からの出力信号が回路部で飽和する場合について説明したが、回路部で飽和する前に光電変換素子203で飽和が生じる場合においても第1実施形態と同様の信号処理を適用することができる。
【0092】
また、多数の画素を有する固体撮像装置では、一部の画素に欠陥が発生することがある。一般的な画素欠陥の補正では、あらかじめ欠陥画素のデータを取得しておき、撮影環境に応じて、欠陥画素の周辺の無欠陥画素の信号によって欠陥画素の箇所に対応する信号を補間するなどの処理が行われている。上述の実施形態の信号処理方法を用いれば、A信号を出力する画素及びB信号を出力する画素のうちの一方が欠陥画素であった場合に、先に述べたような信号処理によって他方の信号レベルを算出することも可能である。
【0093】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0094】
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した実施形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した実施形態も本発明を適用し得る実施形態であると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0095】
101、102…光電変換素子
103…光電変換ユニット
104…マイクロレンズ
107…AD変換器
108…DSP