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特許7614750送電装置、プログラムおよび無線電力伝送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】送電装置、プログラムおよび無線電力伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20250108BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20250108BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20250108BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20250108BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
H02J50/40
H02J50/80
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020110818
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022020085
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 元
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-056959(JP,A)
【文献】特開2017-070074(JP,A)
【文献】特開2018-078700(JP,A)
【文献】特開2020-089134(JP,A)
【文献】特表2017-529823(JP,A)
【文献】特表2019-510454(JP,A)
【文献】特表2019-515629(JP,A)
【文献】特表2020-513728(JP,A)
【文献】特表2022-515589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0116296(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0268815(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0336804(US,A1)
【文献】The Qi Wireless Power Transfer System Power Class 0 Specification Part 1 and 2 : Interface Definitio,wireless power consortum,2016年04月,pages.86-90,102,URL:http://gbgc.or.kr/wireless/upload//20171110025640061.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/124
H02J 50/10
H02J 50/40
H02J 50/60
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルと、
コイルを介してPingを送信する送信手段と、
受電装置の識別情報を取得する取得手段と、
前記複数のコイルのうち前記受電装置に対する特定のコイルを介して無線で送電を行う送電手段と、を有し、
前記送信手段は、前記特定のコイルを介して前記受電装置に無線で送電されている、前記複数のコイルのうち、前記特定のコイルの近傍にあるコイルを介して、Pingを送信しないことを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記Pingは、前記受電装置を起動する信号であることを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記Pingは、Wireless Power Consortiumの規格で規定されるDigital Pingであることを特徴とする請求項1又は2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記Pingは、物体検出のための信号であることを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項5】
前記Pingは、Wireless Power Consortiumの規格で規定されるDigital Pingであることを特徴とする請求項1又は4に記載の送電装置。
【請求項6】
前記送電手段は、前記特定のコイルを介して前記受電装置に無線で送電している、前記複数のコイルのうち、前記特定のコイルの近傍にあるコイルを介して、送電を行わないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記複数のコイルそれぞれを介して複数の受電装置の識別情報を取得することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項8】
コンピュータを請求項1から7のいずれか1項に記載の送電装置として機能させるプログラム。
【請求項9】
複数のコイルを有する送電装置の無線電力伝送方法であって、
コイルを介してPingを送信する送信工程と、
受電装置の識別情報を取得する取得工程と、
前記複数のコイルのうち前記受電装置に対する特定のコイルを介して無線で送電を行う送電工程と、を有し、
前記特定のコイルを介して前記受電装置に無線で送電されている、前記複数のコイルのうち、前記特定のコイルの近傍にあるコイルを介して、Pingが送信されないことを特徴とする無線電力伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1には、無線充電規格の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(WPC規格)に準拠した送電装置および受電装置が開示されている。また、特許文献2には、WPC規格における、異物検出(Foreign Object Detection)の方法が開示されている。ここで異物とは、金属片などの導電性の物体である。WPC規格ではまず、送電装置における送電電力と受電装置における受電電力との差分から、送電装置-受電装置間の異物がない状態の電力損失を事前に算出し、当該算出値を送電処理中の通常状態(異物がない状態)における電力損失であるとする。そのうえで、その後の送電中に算出した送電装置-受電装置間の電力損失が、基準となる前記通常状態の電力損失から閾値以上離れた場合に異物がある又は異物が存在する可能性があると判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-56959号公報
【文献】特開2017-70074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の受電装置に充電が可能な送電装置において、送電装置と第1の受電装置間の電力損失と、送電装置と第2の受電装置間の電力損失は異なるため、基準となる通常状態の電力損失として、同一の電力損失を用いると異物検出精度が低下するという課題があった。また、送電装置上に第1の受電装置と第2の受電装置が載置された場合、送電装置と第1の受電装置間の電力損失は、第2の受電装置の影響を受ける可能性がある。また同様に、送電装置と第2の受電装置間の電力損失は、第1の受電装置の影響を受ける可能性がある。よって、送電装置上に載置される受電装置の状態(台数等)に変化があった場合、事前に算出した通常状態の送電-受電装置間の電力損失にも変化が生じ、異物検出精度が低下するという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、送電装置から複数の受電装置へ適切に送電することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための一手段として、本発明の送電装置は以下の構成を有する。すなわち、
複数のコイルと、
コイルを介してPingを送信する送信手段と、
受電装置の識別情報を取得する取得手段と、
前記複数のコイルのうち前記受電装置に対する特定のコイルを介して無線で送電を行う送電手段と、を有し、
前記送信手段は、前記特定のコイルを介して前記受電装置に無線で送電されている、前記複数のコイルのうち、前記特定のコイルの近傍にあるコイルを介して、Pingを送信しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
送電装置から複数の受電装置へ適切に送電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】送電装置の構成例を示すブロック図である。
図2】受電装置の構成例を示すブロック図である。
図3】送電装置の制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態1における送電装置により実行される処理のフローチャートである。
図5】実施形態1におけるPower Transferフェーズの処理のフローチャートである。
図6】実施形態2における送電装置により実行される処理のフローチャートである。
図7】実施形態2におけるPower Transferフェーズの処理のフローチャートである。
図8】実施形態3における送電装置により実行される処理のフローチャートである。
図9】実施形態3におけるPower Transferフェーズの処理のフローチャートである。
図10】パワーロス手法に基づく異物検出方法を説明する図である。
図11】無線電力伝送システムの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
[実施形態1]
<パワーロス手法に基づく異物検出方法>
はじめに、WPC(Wireless Power Consortium)規格で規定されているパワーロス手法に基づく異物検出方法について、図10を用いて説明する。図10は、パワーロス手法に基づく異物検出方法を説明する図である。図10において、横軸は送電装置の送電電力、縦軸は受電装置の受電電力を示す。異物とは、金属片などの導電性の物体であり、受電装置とは異なる物体である。つまり、複数の受電装置が送電対象の場合、それ以外の受電装置が異物となる。送電中の受電装置や、送電を行うための通信を行う受電装置が送電対象とされてもよい。
【0011】
まず、送電装置が受電装置に対して送電を行い、送電装置は、受電装置が受電した受電電力値Pr1を、受電装置から受信する。そして送電装置はその時の送電電力値Pt1を記憶する(点1000)。ここで、送電電力値Pt1又は受電電力値Pr1は、予め定められた最小の送電電力又は受電電力である。このとき、受電装置は、受電する電力が最小の電力となるように、負荷を制御する。例えば、受電装置は、受電した電力が負荷(充電回路及びバッテリ等)に供給されないように、受電アンテナから負荷を切断しうる。なお、この状態は、Light Load状態(軽負荷状態)と呼ばれうる。この時送電装置は、送電電力としてPt1を送電したときの、送電装置と受電装置間の電力損失はPt1-Pr1(Ploss1)である、として認識することができる。次に、送電装置は、受電装置が受電した受電電力値Pr2の値を受電装置から受信する。このとき、受電装置は、受電した電力を負荷に供給する。そして送電装置はその時の送電電力値Pt2を記憶する(点1001)。ここで、送電電力値Pt2又は受電電力値Pr2は、予め定められた最大の送電電力又は受電電力である。このとき、受電装置は、受電する電力が最大の電力となるように、負荷を制御する。たとえば、受電装置は、受電した電力が負荷に供給されるように、受電アンテナと負荷とを接続する。なお、この状態は、Connected Load状態(負荷接続状態)と呼ばれうる。この時送電装置は、送電電力としてPt2を送電したときの、送電装置と受電装置間の電力損失はPt2-Pr2(Ploss2)である、として認識することができる。そして送電装置は、点1000と点1001を直線補間し直線1002を作成する。直線1002は送電装置と受電装置の周辺に異物が存在しない状態における送電電力と受電電力の関係を示している。よって、送電装置は送電電力値と直線1002から異物がない状態における受電電力を予想することができる。例えば、送電電力値がPt3の場合は、送電電力値がPt3を示す直線1002上の点1003から、受電電力値はPr3であると予想することができる。
【0012】
ここで、送電装置がPt3の送電電力で受電装置に対して送電した場合に、送電装置が受電装置から受電電力値Pr3’という値を受信したとする。送電装置は当該異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から実際に受電装置から受電した受電電力値Pr3’を引いた値Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)を算出する。このPloss_FOは、送電装置と受電装置間に異物が存在する場合に、その異物で消費される電力損失と考えることができる。よって、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOがあらかじめ決められた閾値以上の場合に、“異物あり”又は“異物が存在する可能性あり”と判断する。
【0013】
あるいは送電装置は、事前に、当該異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から、送電装置と受電装置間の電力損失Pt3-Pr3(Ploss3)を求めておく。そして次に、異物が存在する状態において受電装置から受電した受電電力値Pr3’から、異物が存在する状態での送電装置と受電装置間の電力損失Pt3-Pr3’(Ploss3‘)を求める。そして、Ploss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)で、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOを求めてもよい。
【0014】
以上述べたように、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOの求め方としては、Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)として求めてもよいし、Ploss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)として求めてもよい。以下の本明細書中においては、基本的にPloss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)として求める方法について述べるが、Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)として求める方法においても適用可能である。以上がパワーロス手法に基づく異物検出の説明である。
【0015】
<本実施形態による異物検出方法の概要>
次に、複数の受電装置に対して送電が可能な送電装置における異物検出方法について説明する。図11に、本実施形態における無線電力伝送システムの構成例を示す。以下では、送電装置をTXと呼び、受電装置をRXと呼ぶ場合がある。なお、TX100とRX200~220の構成はそれぞれ図1図2に示し、詳細は後述する。
【0016】
TX100は、送電アンテナ105a、105b、105cを介して、TX100上(例えば、送電アンテナ105a、105b、105cに近接して配置された充電台(載置面)上)に載置されたRX200、210、220に対して送電を行う。RX200、210、220はそれぞれ、受電アンテナ205を介してTX100から送電された電力を受電する。なお、TXと各RX間の通信も、送電アンテナと受電アンテナを介して行われる。
【0017】
図11(a)に示すTX100は、送電アンテナ105a~105bを有し、例えば、図11(b)に示すように、RX200とRX210に送電を行う。また、図11(c)に示すTX100は、送電アンテナ105a~105cを有し、例えば、図11(d)~(f)に示すように、RX200~220に送電を行う。
【0018】
ここで、TXと複数のRX間における各TX-RX間の電力損失について考える。複数のRX(例えば第1のRXと第2のRX)に送電(充電)が可能なTXにおいて、TX-第1のRX間の電力損失と、TX-第2のRX間の電力損失は異なる。例えば、図11(c)に示すTX100は、送電アンテナ105aおよびRX200が有する受電アンテナ205を介して、RX200に送電を行う。さらに、図11(c)に示すTX100は、送電アンテナ105bおよびRX210が有する受電アンテナ205を介して、RX210に送電を行う。このとき、TX100-RX200間の電力損失と、TX100-RX210間の電力損失は異なる。その理由としては、送電アンテナの特性、受電アンテナの特性、TX(送電アンテナ)とRXの位置関係、RX200が送電アンテナ105bの電気特性に与える影響、RX210が送電アンテナ105aの電気特性に与える影響、RX内の回路の状態(たとえば受電アンテナと負荷(充電回路やバッテリなど)の接続状態等)等々がある。このため、TXとRX間に異物が存在しない時のTX-RX間の電力損失、あるいは図10に示したような送電電力と受電電力の関係を示す直線を、TXと第1のRX間と、TXと第2のRX間で同一のものを用いると、異物検出精度が低下するという課題が生じる。
【0019】
また、TX上に第1のRXと第2のRXが載置された場合、TX-第1のRX間の電力損失は、第2のRXの影響を受ける可能性がある。また同様に、TX-第2のRX間の電力損失は、第1のRXの影響を受ける可能性がある。よって、TX上に載置されるRXの状態(台数、載置される位置等)に変化があった場合、事前に算出したTXとRX間に異物が存在しない時のTX-RX間の電力損失、あるいは図10に示したような送電電力と受電電力の関係を示す直線にも変化が生じ、異物検出精度が低下するという課題が生じる。
【0020】
このような課題を解決するために、TXは、事前に算出する異物がない状態でのTX-RX間の電力損失として、「異物がない状態でのTX-第1のRX間の電力損失」と「異物がない状態でのTX-第2のRX間の電力損失」を別々に算出する。そしてTXは、第1のRXへの送電時には、「異物がない状態でのTX-第1のRX間の電力損失」を基準とし、送電中に算出したTX-第1のRX間の電力損失が当該「異物がない状態でのTX-第1のRX間の電力損失」から閾値以上はなれた場合に”異物あり”又は“異物が存在する可能性あり”と判定する。同様に、TXは、第2のRXへの送電時には、「異物がない状態でのTX-第2のRX間の電力損失」を基準とし、送電処理中に算出したTX-第2のRX間の電力損失が当該「異物がない状態でのTX-第2のRX間の電力損失」から閾値以上はなれた場合に”異物あり”又は“異物が存在する可能性あり”と判定する。
【0021】
このように、TXは、RX毎に事前に異物がない状態での電力損失を算出し、RX毎に送電時に電力損失を算出して、比較を行い、異物の有無を判定する。これにより、TXが複数のRXに対して送電を行う無線電力伝送システムにおいても、適切に異物検出を行うことが可能になる。
【0022】
なお、図10を用いて上述したように、TXは、異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から実際にRXから受電した受電電力値Pr3’を引いた値Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)を算出し、所定の閾値以上か否かで、異物の存在を判断することも可能である。つまり、TXは、事前に、異物がない状態で、「異物がない状態での第1のRXからの受電電力値」と「異物がない状態での第2のRXからの受電電力値」を別々に取得する。そしてTXは、第1のTXへの送電時には、「異物がない状態での第1のRXからの受電電力値」と、送電中に取得したRXからの受電電力値との差分が閾値以上の場合に “異物あり”又は“異物が存在する可能性あり”と判定する。同様に、TXは、第2のRXへの送電時には、「異物がない状態での第2のRXからの受電電力値」と、送電中に取得したRXからの受電電力値との差分が閾値以上の場合に”異物あり”又は“異物が存在する可能性あり”と判定する。このように異物の有無を判定することで、TXが複数のRXに対して送電を行う無線電力伝送システムにおいても、適切に異物検出を行うことが可能になる。
【0023】
また、異物がない状態でのTX-RX間の電力損失を事前に算出する時(あるいはRXから受電電力値を受信する時)と、送電中にTX-RX間の電力損失を算出する時(あるいはRXから受電電力値を受信する時)の、送受電状態は、同じである必要がある。送受電状態とは、例えば、送電アンテナの特性、受電アンテナの特性、TX(送電アンテナ)とRXの位置関係、RX200が送電アンテナ105bの電気特性に与える影響、RX210が送電アンテナ105aの電気特性に与える影響、RX内の回路の状態(たとえば受電アンテナと負荷(充電回路やバッテリなど)の接続状態)である。
【0024】
これを実現するために、例えばまず、異物が存在しない状態のTX-RX間の電力損失を事前に算出する際(あるいはRXから受電電力値を受信する際)には、TXは、複数のRXから対象(ターゲット)とする1つのRX(対象RX)を選択する。TXは、対象外のRXはTXから送電される電力が充電あるいは給電がされない状態になるように制御する。送電される電力が充電あるいは給電がされない状態とは、例えば負荷(充電回路やバッテリなど)への接続が切断される状態である。そして、TXは、対象RXに送電が可能な送電アンテナを用いて、TX-対象RX間の電力損失算出を行う。TX-RX間の電力損失を送電中に算出する際(あるいはRXから受電電力値を受信する際)も同様な状態において、TXは、対象RXに送電が可能な送電アンテナを用いて、TX-対象RX間の電力損失算出を行う。そのあと、TXは、送電中に算出されたTX-対象RX間の電力損失と、事前に算出した異物がない状態でのTX-対象RXの電力損失を比較し、対象RXとの間の異物有無の判定を行う。あるいは、TXは、送電中に受信した対象RXの受電電力値と、異物がない状態での対象RXの受電電力値との差分から、対象RXとの間の異物有無の判定を行う。
【0025】
このように、異物がない状態のTX-RX間の電力損失を事前に算出する時の状態と、TX-RX間の電力損失を送電中に算出する時の送受電状態(上述のように、送電アンテナの特性等)を合わせることで、TXが複数のRXに対して送電を行う無線電力伝送システムにおいても、適切に異物検出を行うことが可能になる。また、TXは、送受電状態が変化したことを検出した場合、前述の「TX-RX間の電力損失」の算出をやり直す。
【0026】
そうすることで、異物がない状態でのTX-RX間の電力損失を事前に算出する時と、送電中にTX-RX間の電力損失を算出する時とにおいて、送受電状態(送電アンテナの特性、受電アンテナの特性、TX(送電アンテナ)とRXの位置関係、RX200が送電アンテナ105bの電気特性に与える影響、RX210が送電アンテナ105aの電気特性に与える影響、RX内の回路の状態(たとえば受電アンテナと負荷(充電回路やバッテリなど)の接続状態)等々の状態)を同じにすることが可能となる。よって、TXが複数のRXに対して送電を行う無線電力伝送システムにおいて、適切に異物検出を行うことが可能になる。
【0027】
[システムの構成]
図11に示した本実施形態における無線電力伝送システムについてより詳細に説明する。TX100とRX200、210、220は、WPC規格に準拠している。RX200、210、220は、TX100より電力を受電し、バッテリへの充電を可能とする。TX100は、TX100上に載置されたRX200、210、220に対して無線で送電する電子機器である。以下では、RX200、210、220がTX100上に載置された場合を例にして説明を行う。ただし、TX100がRX200、210、220に送電するうえで、RX200、210、220はTX100の送電可能範囲の中に存在していれば、TX100上に載置されなくてもよい。
【0028】
また、RX200、210、220とTX100は、非接触充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RX200、210、220の一例はスマートフォンであり、TX100の一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RX200、210、220及びTX100は、タブレットや、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RX200、210、220及びTX100は、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、TX100がスマートフォンであってもよい。この場合、RX200、210、220は、別のスマートフォンでもよいし、無線イヤホンであってもよい。また、TX100は、自動車内のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
【0029】
本システムは、WPC規格に基づいて、非接触充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、RX200、210、220とTX100は、RX200、210、220の受電アンテナ205とTX100の送電アンテナ(送電コイル)105a~105cとの間で、WPC規格に基づく非接触充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムに適用される無線電力伝送方式(非接触電力伝送方式)は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が非接触充電に用いられるものとするが、非接触充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0030】
ここで、TXとしてTX100、RXとしてRX200、210、220を例に、WPC規格に従う電力伝送制御について説明する。WPC規格では、RX200、210、220がTX100から受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばRX200、210、220とTX100の位置関係が変動して受電アンテナと送電アンテナとの間の送電効率が低下したとしても、RX200、210、220の負荷(例えば、充電用の回路、バッテリー等)への出力が保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電アンテナと送電アンテナの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TX100は、RX200、210、220内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
【0031】
またWPC規格では、TX100が、TX100の周囲に(受電アンテナ近傍に)RXではない物体(異物)が存在することを検出する手法が規定されている。より詳細には、TX100における送電電力とRX200、210、220における受電電力の差分により異物を検出するパワーロス手法と、TX100における送電アンテナ(送電コイル)の品質係数(Q値)の変化により異物を検出するQ値計測手法が規定されている。パワーロス手法による異物検出は、電力伝送(送電)中(後述のPower Transferフェーズ)に実施される。また、Q値計測手法による異物検出は、電力伝送前(後述のNegotiationフェーズまたはRenegotiationフェーズ)に実施される。
【0032】
本実施形態によるRX200、210、220とTX100は、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと実際の電力伝送が行われる前の1以上のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定され、各フェーズにおいて必要な送受電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含みうる。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0033】
Selectionフェーズでは、TX100が、Analog Pingを間欠的に送信し、物体がTX100に載置されたこと(例えばTX100の充電台にRX200、210、220や導体片等が載置されたこと)を検出する。TX100は、Analog Pingを送信した時の送電アンテナの電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
【0034】
Pingフェーズでは、TX100が、Analog Pingより大きい電力が大きいDigital Pingを送信する。Digital Pingの大きさは、TX100の上に載置されたRX200、210、220の制御部201(図2)が起動するのに十分な電力である。RX200、210、220は、受電電圧の大きさをTX100へ通知する。このように、TX100は、そのDigital Pingを受信したRX200、210、220からの応答を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRX200、210、220であることを認識する。TX100は、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。
【0035】
I&Cフェーズでは、TX100は、RX200、210、220を識別し、RX200、210、220から機器構成情報(能力情報)を取得する。そのため、RX200、210、220は、ID Packet及びConfiguration PacketをTX100に送信する。ID PacketにはRX200、210、220の識別情報が含まれ、Configuration Packetには、RX200、210、220の機器構成情報(能力情報)が含まれる。ID Packet及びConfiguration Packetを受信したTX100は、アクノリッジ(ACK、肯定応答)で応答する。そして、I&Cフェーズが終了する。
【0036】
Negotiationフェーズでは、RX200、210、220が要求するGPの値やTX100の送電能力等に基づいてGPの値が決定される。またTX100は、RX200、210、220からの要求に従って、Q値計測手法を用いた異物検出処理を実行する。また、WPC規格では、一旦Power Transferフェーズに移行した後、RXの要求によって再度Negotiationフェーズと同様の処理を行う方法が規定されている。Power Transferフェーズから移行してこれらの処理を行うフェーズのことをRenegotiationフェーズと呼ぶ。
【0037】
Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、RX200、210、220が所定の受電電力値(軽負荷状態における受電電力値/最大負荷状態における受電電力値)をTX100へ通知し、TX100が、効率よく送電するための調整を行う。TX100へ通知された受信電力値は、パワーロス手法による異物検出処理のために使用されうる。
【0038】
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及びエラーや満充電による送電停止等のための制御が行われる。TX100とRX200、210、220は、これらの送受電制御のために、WPC規格に基づいて無線電力伝送を行う際に使用するものと同じ送電アンテナ(送電コイル)、受電アンテナ(受電コイル)を用いて、送電アンテナあるいは受電アンテナから送信される電磁波に信号を重畳する通信を行う。なお、TX100とRX200、210、220との間で、WPC規格に基づく通信が可能な範囲は、TX100の送電可能範囲とほぼ同様である。
【0039】
[送電装置と受電装置の構成]
続いて、本実施形態による送電装置と受電装置の構成について図1図2を用いて説明する。図1は、本実施形態によるTX(送電装置)100の構成例を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態によるRX(受電装置)200の構成例を示すブロック図である。なお、RX210とRX220はRX200と同様の構成を有する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。また、以下に示す各機能ブロックは、ソフトウェアプログラムとして機能が実施されるものとするが、本機能ブロックに含まれる一部または全部がハードウェア化されていてもよい。
【0040】
まず、TX100(図1)について説明する。図1に示すように、TX100は、制御部101、電源部102、送電部103、通信部104、送電アンテナ105a~105c、メモリ106、アンテナ切替え部107を有する。図1では制御部101、電源部102、送電部103、通信部104、メモリ106、アンテナ切替え部107は別体として記載しているが、これらの内の任意の複数の機能ブロックは、同一チップ内に実装されてもよい。
【0041】
制御部101は、例えばメモリ106に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX100全体を制御する。また、制御部101は、TX100における機器認証のための通信を含む送電制御に関する制御を行う。さらに、制御部101は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(MicroProcessor Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部101は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部101は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(Field Programmable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部101は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ106に記憶させる。また、制御部101は、タイマ(不図示)を用いて時間を計測しうる。
【0042】
電源部102は、各機能ブロックに電源を供給する。電源部102は、例えば、商用電源又はバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
【0043】
送電部103は、電源部102から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換し、その交流周波数電力を送電アンテナ105a~105cへ入力することによって、RXに受電させるための電磁波を発生させる。例えば、送電部103は、電源部102が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transister)を使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。この場合、送電部103は、FETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。
【0044】
送電部103は、制御部101による制御により、送電アンテナ105a~105cに入力する電圧(送電電圧)又は電流(送電電流)、又はその両方を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧又は送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧又は送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部103は、制御部101の指示に基づいて、送電アンテナ105a~105cからの送電が開始又は停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。また、送電部103はWPC規格に対応したRXの充電部(RX200~220の場合、充電部206(図2))に15ワット(W)の電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。
【0045】
通信部104は、制御部101による制御により、RXとの間で、上述のようなWPC規格に基づく送電制御のための通信を行う。通信部104は、送電アンテナ105a~105cから出力される電磁波を変調し、RXへ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部104は、送電アンテナ105a~105cから出力されてRXにおいて変調された電磁波を復調してRXが送信した情報を取得する。すなわち、通信部104で行う通信は、送電アンテナ105a~105cから送信される電磁波に信号が重畳されて行われる。また、通信部104は、送電アンテナ105a~105cとは異なるアンテナを用いたWPC規格とは異なる規格による通信でRXと通信を行ってもよいし、複数の通信を選択的に用いてRXと通信を行ってもよい。
【0046】
メモリ106は、制御プログラムを記憶するほかに、TX100及びRXの状態(受信電力値等)なども記憶しうる。例えば、TX100の状態は制御部101により取得され、RXの状態はRX制御部(RX200~220の場合、制御部201(図2))により取得され、通信部104を介して受信されうる。
【0047】
アンテナ切替え部107には、複数の送電アンテナ(コイル)105a~105cが接続される。アンテナ切替え部107は、複数のアンテナ(コイル)のうち、1つ以上を選択し、切り替える。なお、図1では3つの送電アンテナ105a~105cを示しているが、送電コイルの数はこの数に限定されない。また、以下の説明において、送電アンテナ105a~105cを送電アンテナ105と総称する場合がある。
【0048】
次に、RX200(図2)について説明する。前述したように、RX210とRX220は、RX200と同様の構成を有する。図2に示すように、RX200は、制御部201、UI(ユーザインタフェース)部202、受電部203、通信部204、受電アンテナ205、充電部206、バッテリ207、メモリ208、スイッチ部209を有する。なお、図2に示す複数の機能ブロックを1つのハードウェアモジュールとして実現してもよい。
【0049】
制御部201は、例えばメモリ208に記憶されている制御プログラムを実行することによりRX200全体を制御する。すなわち、制御部201は、図2で示す各機能部を制御する。さらに、制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201の一例は、CPU又はMPU等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201が実行しているOS(Operating System)との協働によりRX200全体(RX200がスマートフォンである場合には当該スマートフォン全体)を制御するようにしてもよい。
【0050】
また、制御部201は、ASIC等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部201は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ208に記憶させる。また、制御部201は、タイマ(不図示)を用いて時間を計測しうる。
【0051】
UI部202は、ユーザに対する各種の出力を行う。ここでいう各種の出力とは、画面表示、LEDの点滅や色の変化、スピーカーによる音声出力、RX200本体の振動等の動作である。UI部202は液晶パネル、スピーカー、バイブレーションモーター等により実現される。
【0052】
受電部203は、受電アンテナ205において、TX100の送電アンテナ105から放射された電磁波による発生する電磁誘導により生じた交流電力(交流電圧及び交流電流)を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流又は所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ207を充電するための処理を行う充電部206に電力を出力する。すなわち、受電部203は、RX200における負荷に対して電力を供給する。上述のGPは、受電部203から出力されることが保証される電力量である。受電部203は、充電部206がバッテリ207を充電するための電力を供給し、充電部206に15ワットの電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。スイッチ部209は、受電した電力をバッテリ(負荷)に供給するか否かを制御するためのものである。充電部206とバッテリ207を、スイッチ部209が接続すれば、受電した電力はバッテリ207に供給される。スイッチで充電部206とバッテリ207を、スイッチ部209が切断すれば、受電した電力はバッテリ207に供給されない。なお、スイッチ部209は、図2においては、充電部206とバッテリ207の間に配置されているが、受電部203と充電部206の間に配置されてもよい。あるいは、図2ではスイッチ部209を一つのブロックとし手記載しているが、スイッチ部を充電部206の一部として実現することも可能である。通信部204は、TX100が有する通信部104との間で、上述したようなWPC規格に基づく受電制御ための通信を行う。通信部204は、受電アンテナ205から入力された電磁波を復調してTX100から送信された情報を取得する。そして、通信部204は、その入力された電磁波を負荷変調することによってTX100へ送信すべき情報に関する信号を電磁波に重畳することにより、TX100との間で通信を行う。なお通信部204は、受電アンテナ205とは異なるアンテナを用いたWPC規格とは異なる規格による通信でTX100と通信を行ってもよいし、複数の通信を選択的に用いてTX100と通信を行ってもよい。
【0053】
メモリ208は、制御プログラムを記憶するほかに、TX100及びRX200の状態なども記憶する。例えば、RX200の状態は制御部201により取得され、TX100の状態はTX100の制御部101により取得され、通信部204を介して受信されうる。
【0054】
[送電装置の制御部の機能構成]
次に、本実施形態によるTX(送電装置)100の制御部101の機能構成について、図3を用いて説明する。図3は、制御部101の機能構成例を示すブロック図である。制御部101は、通信制御部301、送電制御部302、異物検出部303、算出部304を有する。
【0055】
通信制御部301は、通信部104を介してWPC規格に基づいたRXとの制御通信を行う処理部である。送電制御部302は、送電部103を制御し、RXへの送電を制御する処理部である。異物検出部303は、送電部103における送電電力や、送電アンテナ105におけるQ値を計測して異物を検出する処理部である。異物検出部303は、パワーロス手法による異物検出機能と、Q値計測手法による異物検出機能を実現しうる。また異物検出部303は、その他の手法を用いて異物検出処理を行ってもよく、例えばNFC(Near Feald Communication)通信機能を備えるTXにおいては、NFC規格による対向機検出機能を用いて異物検出処理を行ってもよい。また、異物検出部303は、異物を検出する以外の機能として、TX100上の状態が変化したことを検出することもできる。例えば、TX100上のRXの台数の増減も、検出することが可能である。算出部304は、送電部103を介してRXに対して出力する電力を計測し、単位時間ごとに平均出力電力値を計算する。異物検出部303は、算出部304による計算結果と通信制御部301を介してRXから受信する受電電力情報をもとに、パワーロス手法による異物検出処理を行う。
【0056】
通信制御部301、送電制御部302、異物検出部303、算出部304は、制御部101において動作するプログラムとしてその機能が実現される。各処理部は、それぞれが独立したプログラムとして構成され、イベント処理等によりプログラム間の同期をとりながら並行して動作しうる。
【0057】
[送電装置による処理の流れ]
続いて、TX100が実行する処理の流れについて説明する。図4に、本実施形態におけるTX100により実行される処理のフローチャートを示す。本処理は、例えばTX100の制御部101がメモリ106から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。
【0058】
TX100が起動することにより、本処理は開始する(S401)。あるいは、TX100のユーザが非接触充電アプリケーションの開始指示を入力部(不図示)を介して入力したことに応じて、又は、TX100が商用電源に接続され電力供給を受けていることに応じて、本処理は開始されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。本処理が開始されると、TX100のアンテナ切替え部107は、制御部101の制御により、複数の送電アンテナ(送電コイル)から一つの送電アンテナを選択する(S402)。次にTX100はSelectionフェーズに移行し、通信制御部301はAnalog Pingを送信して(S403)、物体が検出されたかどうかを判定する(S404)。物体が検出されない場合には、通信制御部301は定期的にAnalog Pingを送信し続ける。S404で物体を検出した場合には(S404でYes)、TX100はPingフェーズに移行し、通信制御部301は、Digital Pingを送信する(S405)。そして、異物検出部303は、検出された物体がRXであることを認識する。次に、TX100は、Identification & Configurationフェーズに移行し、通信制御部301は、RXからRXの情報(機器構成情報(能力情報)やRXの識別情報)を取得する(S406)。次に、S407において、制御部101は、S406で得られたRXの情報と、当該RXを検出した送電アンテナを対応付けた情報をメモリ106に保存する。
【0059】
次に、S408で、制御部101は、全ての送電アンテナの選択、切り替えが完了したかの判定を行う。ここですべてのアンテナの切り替えが完了していない場合には、処理はS402に移行し、制御部101は、別の送電アンテナを選択するようにアンテナ切替え部107を制御する。S408で、全ての送電アンテナの選択、切り替えが完了したと判定した場合には、処理はS409に進む。
【0060】
TX100は、S401からS408までの処理を実施することで、TX100が有する各々の送電アンテナ(送電コイル)と、それぞれの送電アンテナが認識可能なRXを対応づけることが可能となる。また、TX100は、TX100上に存在するすべてのRXの情報を認識することが可能となる。
【0061】
次に、S409では、制御部101は、S401からS408の結果から、TX100上に載置されたRXは複数であるかどうかを判定する。S409で、TX100上に載置されたRXは複数であると判定した場合には(S409でYes)、処理はS410に進み、TX100上に載置されたRXは1つと判定した場合には(S409でNo)、処理はS413に進む。S410では、制御部101は、複数のRXからRXを1つ選択する。以下、図4の説明において、S410で選択した1つのRXを対象RXと称する。そして、S411では、通信制御部301は、対象RX以外のRX(対象外のRX)に対して、選択されなかった旨を認識させるためのメッセージを送信する。
【0062】
このメッセージは、対象RX(選択されたRX)の情報をすべてのRXに対して通知するためのメッセージであってもよいし、対象外のRX(選択されなかったRX)の情報をすべてのRXに通知するためのメッセージであってもよい。これらのメッセージは、TX100上にある複数のRXすべてに通知する必要があるため、TX100が有する複数の送電アンテナ105全てから送信される。あるいは、対象外のRXを宛先にして、選択されなかった旨を示す情報を通知するものであってもよい。このメッセージは、少なくとも対象外のRXに対して通信が可能な送電アンテナ105から送信される。あるいは、対象RXを宛先にして、選択された旨を示す情報を通知するものであってもよい。この場合は、対象外のRXは、所定の時間選択された旨を示す情報を通知するメッセージが届かなかったことをもって、選択されなかった旨を認識する。また、このメッセージは、少なくとも対象RXに対して通信が可能な送電コイルから送信される。
【0063】
対象外のRXは、当該メッセージを受信すると、TX100から充電あるいは給電がされない状態(例えば、負荷(充電回路とバッテリなど)への接続を切断)になるように制御する。すなわち、RXはスイッチ部209(図2)において負荷(充電回路とバッテリなど)を切断するように制御し、受電した電力を負荷(充電回路とバッテリなど)に供給しない。
【0064】
次に、S412で、TX100の制御部101は、対象RXに対して送電可能な(対象RXに対応する)送電アンテナ(送電コイル)を選択し、当該アンテナで、対象RXに対して通信、送電が可能となる状態にする。次に、TX100は、Negotiationフェーズに移行し(S413)、Calibrationフェーズに移行(S414)する。Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、対象RXが所定の受電電力値(軽負荷状態における受信電力値/最大負荷状態における受信電力値)をTX100へ通知し、TX100が、効率よく送電するための調整を行う。TX100へ通知された受電電力値は、パワーロス手法による異物検出処理のために使用されうる。
【0065】
Calibrationフェーズでは、TX100は、図10を用いて前述したように、異物がない状態における、送電電力に対する受電電力の関係を導出する。具体的には、TX100の異物検出部303は、WPC規格に基づいて、RXから取得した所定の受電電力値(軽負荷状態/Ligh Load状態における受電電力値、最大負荷状態/Connected Load状態における受電電力値を含む)を用いて、異物がない状態でのTX-RX間の電力損失を示すデータ(電力損失のデータ)を導出する(図10における直線1002に対応)。以下、当該電力損失のデータを、Calibrationデータと呼ぶ。当該Calibrationデータは、パワーロス手法による異物検出処理のために使用することができる。パワーロス手法に基づく異物検出の説明は上述の通りである。すなわち、Calibrationデータと送電中に受信したRXにおける受電電力値をもとに算出した、送電中のTX-RX間の電力損失が、所定の閾値以上の場合に、TXは”異物あり”又は“異物が存在する可能性あり”と判定する。
【0066】
S415では、制御部101は、Calibrationフェーズで取得したCalibrationデータと、対象RXの情報(S407)とを対応させてメモリ106に保存する。そして、S416では、制御部101は、TX100上に載置される全てのRXのCalibrationデータを取得したかどうかを判定する。これは、TX100がS401からS408において、TX100上の全てのRXの情報を得ているため、当該RXの情報と、S415で取得した、Calibrationデータとが全て対応されているかを確認することで判定が可能である。
【0067】
以上のS409からS416の処理により、TX100は、TX100上に載置される全てのRXについて、RX毎のCalibrationデータを時分割で個別に取得(導出)することが可能となる。次に、S417で、TX100は、Power Transferフェーズに移行する。そして、S418で処理は終了する。
【0068】
Power Transferフェーズ(S417)では、TX100は、TX100上に載置される複数のRXに対して、時分割方式により送電を行うように制御する。以下、Power Transferフェーズでの詳細な動作に関して、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態におけるPower Transferフェーズの処理のフローチャートである。なお、時分割方式では、複数の受電装置のそれぞれに対して異なる送電期間が割り当てられ、割り当てられた送電期間内で、一つの受電装置に対して送電が行われる。
【0069】
TX100は、Power Transferフェーズを開始する(S501)と、制御部101は、TX100上に載置されている複数のRXの中から、送電対象とする一つのRXを選択する(S502)。以下、図5の説明において、S502で選択した1つのRXを対象RXと称する。そして、S503では、通信制御部301は、対象RX以外のRX(対象外のRX)に対して、選択されなかった旨を認識させるためのメッセージを送信する。当該メッセージは、図4のS411の通知で用いたメッセージと同様であるため、説明を省略する。
【0070】
対象外のRXは、当該メッセージを受信すると、TX100から充電あるいは給電がされない状態(例えば、負荷(充電回路とバッテリなど)への接続を切断)になるように制御する。すなわち、対象外のRXはスイッチ部209(図2)において負荷(充電回路とバッテリなど)を切断するように制御し、受電した電力を負荷(充電回路とバッテリなど)に供給しない。次に、S504で、TX100の制御部101は、対象RXに対して送電可能な(対象RXに対応する)送電アンテナ(送電コイル)を選択し、当該アンテナで、対象RXに対して通信、送電が可能となる状態にする。続いて、S505で、送電制御部302は、対象RXに対して送電を行う。
【0071】
送電中は、異物検出部303は、TX100の送電可能範囲における送受電状態の変化(例えばTX100上の状態変化)を検出する(S506)。例えば、異物検出部303は、Calibrationフェーズ(図4のS414)で取得した対象のRXのCalibrationデータを用いて、前述のパワーロス手法により異物を検出する。異物が検出された場合には(S506でYes)、図4のS402の処理(TX起動後の処理)に戻る。また一方で、送受電状態の変化が異物によるものではなく、TX100上に載置されるRXの数の増減によるものである可能性もある。TX100上のRXの数の増減によっても、上述した電力損失に変化が生じるため、異物検出部303は、パワーロス手法を用いて、TX100上のRXの数の増減を検出することは可能である。
【0072】
S506で送受電状態の変化が検出された場合に、図4の処理フロー中の、TX起動後に戻ることで、例えばTX100上に載置されるRXの数の増減があった場合にも、適切に全てのRXに送電が行われるようになる。TX100の異物検出部303は、送電制御部302による送電中は、送電が終了するまで、定期的に送受電状態の変化を監視する(S506でNo、S507でNo)。TX100は、送受電状態の変化を検出せずに送電を終了すると(S507でYes)、対象RX(送電が完了したRX)の情報をメモリ106に保存する。そして処理はS508に進み、制御部101は、すでに保存しているRXの情報と照合して、全てのRXに対して送電が完了したかを判定する。全てのRXに対して送電が完了した場合には、S509で終了し、全てのRXに対して送電が完了していない場合には、処理はS502(Power Transferフェーズ開始後)に戻る。なお、送電が完了したことは、TX100の通信制御部301が、送電対象のRXからWPC規格のEnd Power Transferを受信することにより、確認されうる(以下の説明でも同様である)。
【0073】
以上のS501からS509の処理により、TX100は、TX100上に載置される複数のRXに対して時分割で送電を行うことにより、全てのRXに対して適切に送電を完了することが可能となる。
【0074】
このように、本実施形態では、まず、TX100は、TX100上に載置される複数のRXのうち、特定のRXを対象RXとして設定し、対象外のRXに対しては、TX100から充電あるいは給電がされない状態になるように制御した上で、対象RXのCalibrationデータを導出(取得)する(図4)。そして、TX100は、全てのRXについてのCalibrationデータを取得する。その後、Power Transferフェーズにおいて、TX100は、TX100上に載置される複数のRXのうち、特定のRXを対象RXとして設定し、対象外のRXに対しては、TX100から充電あるいは給電がされない状態になるように制御した上で、すでに導出したCalibrationデータを用いて、対象RXに対して送電を行う(図5)。これにより、Calibrationデータ導出時の各RXの状態と、送電時の各RXの状態を一致させることにより、TX100は、全てのRXに対して適切に送電を完了することが可能となる。
【0075】
[実施形態2]
実施形態1では、複数のRXに対して適切に送電を行うための制御方法について述べた。本実施形態では、複数のRXに対して適切に送電を行うための別の制御方法について述べる。以下、実施形態1と異なる点について説明し、共通の部分については説明を省略する。
【0076】
[送電装置による処理の流れ]
図6に、本実施形態におけるTX100により実行される処理のフローチャートを示す。本処理は、例えばTX100の制御部101がメモリ106から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。
【0077】
S601~S606の処理は、実施形態1で説明した図4のS401~S406と同様のため、説明を省略する。S607では、制御部101は、RXを1つ選択する。当該RXは、S602で選択した送電アンテナを用いて検出されたRXでありうる。以下、図6の説明において、S607で選択した1つのRXを対象RXと称する。そして、S608では、通信制御部301は、対象RX以外のRX(対象外のRX)に対して、選択されなかった旨を認識させるためのメッセージを送信する。当該メッセージは、図4のS411の通知で用いたメッセージと同様であるため、説明を省略する。
【0078】
対象外のRXは、当該メッセージを受信すると、TX100から充電あるいは給電がされない状態(例えば、負荷(充電回路とバッテリなど)への接続を切断)になるように制御する。すなわち、対象外のRXはスイッチ部209(図2)において負荷(充電回路とバッテリなど)を切断するように制御し、受電した電力を負荷(充電回路とバッテリなど)に供給しない。
【0079】
次に、TX100は、Negotiationフェーズに移行し(S609)、Calibrationフェーズに移行(S610)する。Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、対象RXが所定の受電電力値(軽負荷状態における受信電力値/最大負荷状態における受信電力値)をTX100へ通知し、TX100の送電制御部302が、効率よく送電するための調整を行う。TX100へ通知された受電電力値は、パワーロス手法による異物検出処理のために使用されうる。Calibrationフェーズでの処理は、図4のS414の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
S611では、制御部101は、Calibrationフェーズで取得したCalibrationデータと、S606で取得した対象RXの情報(機器構成情報(能力情報)やRXの識別情報))とを対応させてメモリ106に保存する。そして、S612では、制御部101は、全ての送電アンテナの選択、切り替えが完了したかの判定を行う。
【0081】
以上のS602からS612の処理により、TX100は、TX100上に載置される全てのRXについて、RX毎のCalibrationデータを時分割で個別に取得(導出)することが可能となる。次に、S613で、TX100は、Power Transferフェーズに移行する。そして、S614で処理は終了する。
【0082】
Power Transferフェーズ(S613)では、TX100は、TX100上に載置される複数のRXに対して、時分割で送電を行うように制御する。以下、Power Transferフェーズでの詳細な動作に関して、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態におけるPower Transferフェーズの処理のフローチャートである。S701~S704の処理は、図5のS501~S504と同様のため、説明を省略する。S704の処理の後、S705で、送電制御部302は、対象RXに対して送電を行う。
【0083】
送電中は、異物検出部303は、TX100の送電可能範囲における送受電状態の変化(例えばTX100上の状態変化)を検出する(S706)。例えば、異物検出部303は、Calibrationフェーズ(図6のS610)で取得した対象のRXのCalibrationデータを用いて、前述のパワーロス手法により異物を検出する。異物が検出された場合には、図6のS602の処理(TX起動後の処理)に戻る。また一方で、送受電状態の変化が異物によるものではなく、TX100上に載置されるRXの数の増減によるものである可能性もある。TX100上のRXの数の増減によっても、上述した電力損失に変化が生じるため、異物検出部303は、パワーロス手法を用いて、TX100上のRXの数の増減を検出することは可能である。
【0084】
S706で送受電状態の変化が検出された場合には、図6のフロー中の、TX起動後に戻ることで、例えばTX100上に載置されるRXの数の増減があった場合にも、適切に全てのRXに送電が行われるようになる。送受電状態の変化が検出されない場合には、処理はS707進み、制御部101は、所定のカウンタ(所定のカウンタで指定される期間)が終了したかどうかを判定する。このカウンタは、例えば時間や、間欠的に行う送電の送電回数、あるいは通信のパケット数やフレーム数等をカウントするカウンタである。S707でカウンタが終了した場合(例えば、所定の条件/数を満たした場合)には(S707でYes)、処理はS702に戻り、TX100は別のRXを選択して送電を行う。
【0085】
S707で所定のカウンタが終了していない場合には(S707でNo)、処理はS708に進み、制御部101は、対象RXに対する送電が完了したかどうかを判定する。判定の結果、例えばまだ満充電ではなく、送電が完了していない場合には、処理はS705に戻り、送電制御部302は、送電を継続する。S708で対象RXに対する送電が完了していると判定された場合には、処理はS709に進み、制御部101は、全てのRXに対する送電が完了したかどうかを判定する。すべてのRXに対する送電が完了していない場合には、処理はS702に戻り、制御部101は、送電が完了していない別のRXを選択して、送電制御部302は、当該選択されたRX(対象RX)に対して送電を行う。TX100上に載置されるすべてのRXに対する送電が完了した場合には、処理はS710に進み、終了する。
【0086】
このように、本実施形態では、まず、TX100は、TX100上に載置される複数のRXのうち、特定のRXを対象RXとして設定し、対象外のRXに対しては、TX100から充電あるいは給電がされない状態になるように制御した上で、対象RXのCalibrationデータを導出(取得)する(図6)。そして、TX100は、全てのRXについてのCalibrationデータを取得する。その後、Power Transferフェーズにおいて、TX100は、TX100上に載置される複数のRXのうち、特定のRXを対象RXとして設定し、対象外のRXに対しては、TX100から充電あるいは給電がされない状態になるように制御した上で、すでに導出したCalibrationデータを用いて、対象RXに対して送電を行う(図7)。これにより、Calibrationデータ導出時の各RXの状態と、送電時の各RXの状態を一致させることにより、TX100は、全てのRXに対して適切に送電を完了することが可能となる。
【0087】
なお、実施形態1では図4図5のフローに基づき説明をし、実施形態2では図6図7のフローに基づき説明をした。しかし、この組み合わせは変更可能であり、図4図6図5図7のフローを組み合わせた処理を実現することも可能である。
【0088】
[実施形態3]
実施形態1と実施形態2では、複数のRXに対して適切に送電を行うための制御方法について述べた。本実施形態では、複数のRXに対して適切に送電を行うための別の制御方法について述べる。以下、実施形態1、2と異なる点について説明し、共通の部分については説明を省略する。
【0089】
[送電装置による処理の流れ]
図8に、本実施形態におけるTX100により実行される処理のフローチャートを示す。本処理は、例えばTX100の制御部101がメモリ106から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。
【0090】
S801~S806の処理は、実施形態1で説明した図4のS401~S406と同様のため、説明を省略する。S807では、制御部101は、RXを1つ選択する。当該RXは、S802で選択した送電アンテナを用いて検出されたRXでありうる。以下、図8の説明において、S807で選択した1つのRXを対象RXと称する。そして、S808では、通信制御部301は、対象RX以外のRX(対象外のRX)に対して、選択されなかった旨を認識させるためのメッセージを送信する。当該メッセージは、図4のS411の通知で用いたメッセージと同様であるため、説明を省略する。
【0091】
対象外のRXは、当該メッセージを受信すると、TX100から充電あるいは給電がされない状態(例えば、負荷(充電回路とバッテリなど)への接続を切断)になるように制御する。すなわち、対象外のRXはスイッチ部209(図2)において負荷(充電回路とバッテリなど)を切断するように制御し、受電した電力を負荷(充電回路とバッテリなど)に供給しない。
【0092】
次に、TX100は、Negotiationフェーズに移行し(S809)、Calibrationフェーズに移行(S810)する。Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、対象RXが所定の受電電力値(軽負荷状態における受信電力値/最大負荷状態における受信電力値)をTX100へ通知し、TX100の送電制御部302が、効率よく送電するための調整を行う。TX100へ通知された受電電力値は、パワーロス手法による異物検出処理のために使用されうる。Calibrationフェーズでの処理は、図4のS414の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
S811では、制御部101は、Calibrationフェーズで取得したCalibrationデータと、S806で取得した対象RXの情報(機器構成情報(能力情報)やRXの識別情報))とを対応させてメモリ106に保存する。
【0094】
次に、S812で、TX100はPower Transferフェーズに移行する。そして、S813では、制御部101は、全ての送電アンテナの選択、切り替えが完了したかの判定を行う。全てのアンテナの切り替えが完了していない場合には、処理はS802に戻り、制御部101は、別のまだ選択されていないアンテナを選択する。すべてのアンテナの切り替えが完了した場合には、S814に進み、終了する。
【0095】
Power Transferフェーズ(S812)では、TX100は、TX100上に載置される複数のRXに対して、時分割で送電を行うように制御する。以下、Power Transferフェーズでの詳細な動作に関して、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態におけるPower Transferフェーズの処理のフローチャートである。
【0096】
TX100は、Power Transferフェーズを開始する(S901)と、送電制御部302は、対象RXに対して送電を行う(S902)。送電中は、異物検出部303は、TX100の送電可能範囲における送受電状態の変化(例えばTX100上の状態変化)を検出する(S706)。例えば、異物検出部303は、Calibrationフェーズ(図8のS810)で取得した対象のRXのCalibrationデータを用いて、前述のパワーロス手法により異物を検出する。異物が検出された場合には、図8のS802の処理(TX起動後の処理)に戻る。また一方で、送受電状態の変化が異物によるものではなく、TX100上に載置されるRXの数の増減によるものである可能性もある。TX100上のRXの数の増減によっても、上述した電力損失に変化が生じるため、異物検出部303は、パワーロス手法を用いて、TX100上のRXの数の増減を検出することは可能である。
【0097】
S903で送受電状態の変化が検出された場合には、図8のフロー中の、TX起動後に戻ることで、例えばTX100上に載置されるRXの数の増減があった場合にも、適切に全てのRXに送電が行われるようになる。受電状態の変化が検出されない場合には、処理はS904進み、制御部101は、対象RXに対する送電が完了したかどうかを判定する。例えばRXが満充電になった等により、送電が完了したと判定された場合には、処理はS905進み、完了する。送電が完了していないと判定された場合には、処理はS902進み、送電制御部302は、送電を継続する。
【0098】
このように、本実施形態では、まず、TX100は、TX100上に載置される複数のRXのうち、特定のRXを対象RXとして設定し、対象外のRXに対しては、TX100から充電あるいは給電がされない状態になるように制御した上で、対象RXのCalibrationデータを導出(取得)する(図8)。そして、TX100は、全てのRXについてのCalibrationデータを取得する。その後、Power Transferフェーズにおいて、TX100は、TX100上に載置される複数のRXのうち、特定のRXを対象RXとして設定し、対象外のRXに対しては、TX100から充電あるいは給電がされない状態になるように制御した上で、すでに導出したCalibrationデータを用いて、対象RXに対して送電を行う(図9)。これにより、Calibrationデータ導出時の各RXの状態と、送電時の各RXの状態を一致させることにより、TX100は、全てのRXに対して適切に送電を完了することが可能となる。
【0099】
以上、3つの実施形態を挙げて、複数のRXに対して適切に送電を行うための制御方法について説明した。なお、上記の実施形態では、異物検出機能として、パワーロス手法で送電装置上の状態変化を検出する方法について述べたが、TX上のRXの数の増減によってQ値は変化するため、Q値計測手法でもTX上のRXの数の増減を検出することは可能である。よって、Negotiationフェーズで行われるQ値計測手法において、TXが送受電状態の変化(例えばTX上の状態変化)を検出した場合には、TX起動後の動作に戻るように制御してもよい。すなわち、実施形態1では、処理は図5のS506から図4のS402へ戻り、実施形態2では、処理は図7のS706から図6のS602へ戻り、実施形態3では、処理は図9のS903から図8のS802へ戻ることになる。
【0100】
あるいは、Q値計測手法の代わりに、送電アンテナの共振周波数、共振曲線の鋭さ、あるいは送電アンテナのインダクタ値や、送電アンテナとTX上に載置される物体との結合係数、TXの送電アンテナを含む送電部の電気的特性等の測定結果、あるいは、TXに実装された光電センサ、渦電流式変位センサ、接触式変位センサ、超音波センサ、画像判別センサ、重量センサ等のセンサによる測定結果に基づいて、TXにおける送受電状態の変化が検出された場合に、TX起動後の動作に戻るように制御してもよい。また、TXは、RXに対して通信・送電を行う送電アンテナ以外の送電アンテナから、定期的にAnalog Pingを送信し、物体が載置されたことを検出した場合には、TX起動後の動作に戻るように制御してもよい。これらの場合には、新たなRXや異物が送電アンテナの近傍に存在する可能性があるからである。
【0101】
このように、TXは、TXの送電範囲内に存在する複数のRXに対して、TX-RX間の異物がない状態の電力損失を時分割で個別のRX毎に測定し、また時分割で個別のRX毎に送電を行うことで、送電処理中の異物検出精度を向上させることが可能となる。
【0102】
[その他の実施形態]
実施形態1~3においては、送電装置は、一つの送電部に、複数の送電アンテナから選択された一つの送電アンテナが接続される構成の場合について説明した。しかし、一つの送電アンテナには、複数の送電部が接続される構成であってもよい。すなわち、送電装置は、第一の送電部(送電回路)と第二の送電部(送電回路)を有し、第一の送電アンテナと第二の送電アンテナを有する場合、第一の送電アンテナには、第一の送電部、あるいは第二の送電部のどちらかが接続可能な構成であってもよい。ここで、第一の送電アンテナに第一の送電部(送電回路)が接続されており、受電装置に送電を実施していたが、第一の送電アンテナに接続する送電部(送電回路)を、第一の送電部(送電回路)から第二の送電部(送電回路)に切り替える場合について考える。第一の送電部と第二の送電部の電気特性が同一である場合、上述したCalibrationデータは変わらないので、すでに取得済みのCalibrationデータを用いて、実施形態1~3で述べた方法で、第二の送電部(送電回路)から受電装置に対して送電を実施することが可能である。一方で、第一の送電部と第二の送電部の電気特性が異なる場合は、上述したCalibrationデータも変化するため、すでに取得済みのCalibrationデータを用いて送電を行うことはできない。よって、実施形態1~3で述べた方法で、再度Calibrationデータを導出(取得)し、当該Calibrationデータを用いて第二の送電部(送電回路)から受電装置に対して送電を実施することが可能になる。
なおこの時、送電装置は、送電対象のRXの情報と、送電に使用する送電アンテナの情報と、送電に使用する送電部(送電回路)の情報を対応付けた情報をメモリに保存しておく。
【0103】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0104】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0105】
100 送電装置(TX)、200~220 受電装置(RX)
図1
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図3
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図10
図11