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  • 特許-ゴム組成物およびトレッドを含むタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびトレッドを含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20250108BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250108BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250108BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20250108BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20250108BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
C08L9/06
C08K3/36
C08K3/04
C08L91/00
C08L9/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020125666
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2021021064
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】62/878,492
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・オサンポ
(72)【発明者】
【氏名】クロード・チャールズ・ヤコビー
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0376427(US,A1)
【文献】米国特許第07335692(US,B2)
【文献】国際公開第2018/110456(WO,A1)
【文献】特表2013-544935(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0267640(US,A1)
【文献】国際公開第2019/131405(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/158509(WO,A1)
【文献】特表2009-504810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫可能なゴム組成物であって、-50℃~-85℃の範囲内にあるガラス転移温度を有する溶液重合スチレン-ブタジエンゴム80phr~100phr;シリカ100phr~140phr;ならびに炭化水素樹脂15phr~40phrとオイル5phr~25phrとを含む可塑剤組成物を含み、ここで、前記炭化水素樹脂の量と前記オイルの量の合計が35phr~50phrの範囲内にあり、かつ前記炭化水素樹脂が60~75℃の範囲内のガラス転移温度を有するテルペン樹脂であることを特徴とする加硫可能なゴム組成物。
【請求項2】
-85℃~-115℃の範囲内にあるガラス転移温度を有するポリブタジエンゴムをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項3】
カーボンブラックをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項4】
前記ポリブタジエンゴムが最大20phrの量で存在することを特徴とする、請求項2に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックが最大10phrの量で存在することを特徴とする、請求項3に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項6】
前記炭化水素樹脂の量と前記オイルの量の合計が35phrから45phrの間にあることを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項7】
前記炭化水素樹脂が20phr~35phrの範囲内にあるレベルで存在し、前記オイルが5phr~20phrの範囲内にある量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項8】
前記オイルと前記炭化水素樹脂の比が1:1.5~1:3.5の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項9】
前記オイルが、-70℃~-115℃の範囲内にあるガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項10】
前記オイルがトリグリセリド油であることを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項11】
前記トリグリセリド油が、ヒマワリ油、大豆油およびキャノーラ油からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項12】
前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、-55℃~-65℃の範囲内にあるガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項13】
前記ポリブタジエンゴムが5phr未満のレベルで存在することを特徴とする、請求項2に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項14】
前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが85phr~100phrの範囲内にあるレベルで存在し、前記ポリブタジエンゴムが15phr以下の量で存在することを特徴とする、請求項2に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項15】
前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが85phr~90phrの範囲内にあるレベルで存在し、前記ポリブタジエンゴムが10phr~15phrの範囲内にあるレベルで存在することを特徴とする、請求項2に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項16】
前記シリカが105phr~125phrの範囲内にあるレベルで存在することを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項17】
前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴムが、ブタジエン含有量を基準にして4重量%~20重量%の範囲内であるスチレン含有量、および10重量%~40重量%の範囲内にあるビニル含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項18】
タイヤであって、外周にトレッドを有する概して環状形のカーカス、間隔を開けて配置された2つのビード、ビードからビードまで延在する少なくとも1つのプライ、および前記トレッドから前記ビードに放射状に延在し前記トレッドを前記ビードと連結するサイドウォールを有し、ここで、前記トレッドは接地に適合されており、前記トレッドが請求項1に記載のゴム組成物で構成されることを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、特に、好ましくはタイヤトレッド用の加硫可能なゴム組成物を対象とする。さらに、本発明は、特にタイヤトレッド中にそのようなゴム組成物を含むタイヤを対象とする。
【背景技術】
【0002】
タイヤ業界で知られているように、少なくとも別の特性との相当なトレードオフなしで複数のタイヤ特性を同時に改善するのは伝統的に難しかった。そのような矛盾のひとつは転がり抵抗と湿潤性能の間に存在する。転がり抵抗が改善される場合、一般に湿潤グリップにおいてトレードオフがある。しかしながら、転がり抵抗の制約はエネルギー効率を増やすため決定的である。同様に、一般に湿潤性能とスノー性能間に矛盾がある。スノー性能を改善することが目標であるなら、湿潤性能においてやはりトレードオフがある。したがって、改善されたスノーおよび湿潤グリップの両方の性能を提供する先進的な冬用タイヤの開発は、困難であることが分かっている。転がり抵抗およびスノー性能を一緒に改善することになると、このことがさらに一層当てはまる。
【0003】
摩耗および湿潤性能の妥協を可能にし、同時に先進的なスノー性能を提供する冬季トレッドコンパウンドの1例が米国特許第9,764,594号に示唆されている。
冬季性能の側面を含む相異なるタイヤ特性間の妥協を見つけることを目指す他のコンパウンドは国際特許第2017/117056号に示唆されている。
【0004】
上述の性質のすべてにおいて改善を達成することが必ずしも可能とは限らないが、先進的な冬用トレッドコンパウンドの開発において改善のかなりの余地が残る。したがって、改善された摩耗特性、乾燥、湿潤、スノーおよび凍結面での優れた牽引、ならびに燃費改善のための低減された転がり抵抗の組み合わせを提示する冬用タイヤに対して必要性が長いあいだ感じられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9,764,594号
【文献】国際特許第2017/117056号
【文献】米国特許第6,608,125号
【文献】米国特許出願公開第2003/0130535号
【文献】米国特許第7,214,731号
【文献】米国特許第4,704,414号
【文献】米国特許第6,123,762号
【文献】米国特許第6,573,324号
【文献】米国特許第6,242,534号
【文献】米国特許第6,207,757号
【文献】米国特許第6,133,364号
【文献】米国特許第6,372,857号
【文献】米国特許第5,395,891号
【文献】米国特許第6,127,488号
【文献】米国特許第5,672,639号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts, 2003年、62版、the Institute of Petroleum, United Kingdom
【文献】“Hydrocarbon Resins” by R. Mildenberger, M. Zander and G. Collin (New York , VCH, 1997, ISBN- 3-527-28617-9)
【文献】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【文献】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978), 344~346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、特に、冬用タイヤおよび/またはオールシーズンタイヤのトレッドに適切な先進的ゴム組成物を提供することとすることができる。
本発明の別の目的は、湿潤性能および摩滅におけるトレードオフが全くないかまたは少なくとも限定的な、先進的スノーおよび/または転がり抵抗性能を有するゴム組成物を提供することとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このようにして、本発明の一態様において、加硫可能なゴム組成物が提供される。ゴム組成物は、エラストマー100重量部(phr)を基準にして、-50℃~-85℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1種の溶液重合スチレン-タジエンゴム(SSBR)80phr~100phr、任意に-85℃~-115℃の範囲のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリブタジエンゴム0phr~20phr、シリカ100phr~150phr(好ましくは100phr~140phr)、任意にカーボンブラック0phr~10phr、少なくとも1種の樹脂、好ましくは少なくとも1種の炭化水素樹脂15phr~40phr、および少なくとも1種のオイル5phr~25phrを含み、樹脂の量とオイルの量の合計は35phr~50phrの範囲内にある。
【0009】
この組成物は、特に上記の目的を考慮すると、有利であると分かり、転がり抵抗/スノー性能と湿潤性能/トレッド摩耗の間の先進的なバランスを支援する。
一実施形態において、ゴム組成物は、-85℃~-115℃の範囲内にあり、好ましくは-100℃~-115℃の範囲内にあるガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリブタジエンゴムをさらに含む。
【0010】
好ましい実施形態において、ポリブタジエンゴムは最大20phrのレベル(量)、例えば、1phr~18phrの範囲内にあるレベル、または5phr~15phrの範囲内にあるレベルで存在する。
【0011】
別の好ましい実施形態において、樹脂の量およびオイルの量の合計が、35phrから45phrの範囲内、または35phrから43phrの間にある。
別の実施形態において、樹脂は20phr~35phrの範囲内にあるレベルで存在し、および/または、オイルは5phr~20phrの範囲内にあるレベルで存在する。
【0012】
別の好ましい実施形態において、オイルと樹脂の重量比は、1:1.5~1:3.5、または好ましくは1:1.5~1:3(すべてphrで)の範囲内にある。そのような比が最も望ましいことがわかった。
【0013】
なお別の実施形態において、前記樹脂は、30℃~80℃、好ましくは60℃~75℃、またははるかに好ましくは60℃~70℃の範囲内にあるガラス転移温度(Tg)を有する。この比較的高いTg範囲の樹脂を提供することによって、さらなる湿潤性能の改善を援助し得る。
【0014】
好ましい実施形態において、樹脂はテルペン樹脂である。好ましくは上記のTgの性質と組み合せたこの樹脂タイプは、特に好ましい。
別の実施形態において、前記オイルは-70℃~-115℃の範囲内にあるガラス転移温度を有する。これは、比較的低い温度範囲である。
【0015】
また別の好ましい実施形態において、オイルはトリグリセリド油、好ましくは植物油である。好ましくは、オイルは、ヒマワリ油、大豆油およびキャノーラ油の1つまたは複数から選択され、ヒマワリ油は特に好ましい。
【0016】
また別の実施形態において、溶液重合スチレン-タジエンゴムは、-55℃~-65℃の範囲内にあるガラス転移温度を有する。
別の好ましい実施形態において、ゴム組成物は、1:1.5から1:3.5(好ましくは3またはさらに2.5)の間のオイルと樹脂の比を有し、ここで、炭化水素樹脂は50℃~80℃の範囲のガラス転移温度を有し、オイルは-70℃から-115℃の間の範囲のガラス転移温度を有する。SSBR、およびもし使用されればPBDの比較的低いガラス転移温度を合わせれば、スノー性能、トレッド摩耗および湿潤グリップの間のバランスを改善することができる。オイルのガラス転移温度は、ASTM E1356または同等のものに従って示差走査熱量計(DSC)によって毎分10℃の昇温速度でピーク中点として適切に求めることができる。
【0017】
なお別の実施形態において、組成物はポリブタジエンゴムを5phr未満含む。そのような実施形態において、ポリブタジエンの量を最小限にし、例えば、SSBRを選ぶことが望ましい。
【0018】
別の実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、85phr~100phrの範囲内にあるレベルで存在し、ポリブタジエンゴムは15phr以下のレベルで存在する。
【0019】
また別の実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、85phr~90phrの範囲内にあるレベルで存在し、ポリブタジエンゴムは10phr~15phrの範囲内のレベルで存在する。
【0020】
なお別の実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは85phr~95phrの範囲内にあるレベルで存在し、ポリブタジエンゴムは5phr~15phrの範囲内にあるレベルで存在する。
【0021】
なお別の実施形態において、シリカは、100phr~140phr、好ましくは105phr~125phr、またははるかに好ましくは105~120phrの範囲内にあるレベルで存在する。
【0022】
また別の実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、ブタジエン含有量を基準にして4重量%~20重量%の範囲内にあるスチレン含有量および/または10重量%~40重量%の範囲内にあるビニル含有量を有する。
【0023】
別の実施形態において、適切なオイルは、芳香族、パラフィン、ナフテンおよびMES、TDAE、SRAEおよび重質ナフテン油などの低PCA油を含む様々なオイルを含んでもよい。適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有量を有するものを含む。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts, 2003年、62版に見いだすことができる。特に、オイルは、植物油または植物油の誘導体(ヒマワリ油、大豆油またはキャノーラ油などの)または複数のオイル、特にヒマワリ油のブレンドであってもよい。使用することができる植物油の幾つか代表的な例は、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ(菜種)油、トウモロコシ油、ヤシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、落花生油およびサフラワー油を含む。好ましい実施形態において、前記オイルは、-70℃から-115℃、好ましくは-75℃(またはさらに-80℃)~-115℃の間の範囲のガラス転移温度を有する。特に、オイルの低いTgはスノー性能を支援し得る。単なる例として、H&R社のPionier(商標)TP 130 BまたはPionier(商標)TP 130Cのような低Tgオイルが利用可能である。
【0024】
また別の実施形態において、ゴム組成物は、硫黄含有有機ケイ素化合物またはシラン1phr~10phrをさらに含む。そのようなシランは、ゴムマトリックスに対するシリカの結合を改善するのを援助することができる。本事例において、そのような量のシランが望ましいことがわかった。別の好ましい実施形態において、シランの量はシラン5phr~10phrの範囲である。特に、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物/シランの例は、式:
Z-Alk-S-Alk-Z
であり、Zは:
【0025】
【化1】
【0026】
からなる群から選択される
[式中、Rは、1~4炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;Rは、1~8炭素原子のアルコキシ、または5~8炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは1~18炭素原子の二価炭化水素であり、nは2~8の整数である。]。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。別の実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、および/または、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって、式Iに関して、Zは、
【0027】
【化2】
【0028】
であってもよい[式中、Rは2~4炭素原子、代替として2個の炭素原子のアルコキシであり;Alkは、2~4炭素原子の、代替として3個の炭素原子を有する二価炭化水素であり;nは2~5、代替として2または4の整数である。]。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示される化合物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)-S-CHCHCHSi(OCHCHを含み、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されている。別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussaからのSi-363である。ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤のレベルに依存して様々であってもよい。
【0029】
別の実施形態において、ゴム組成物は、30℃を超える、好ましくは50℃を超える、より好ましくは60℃を超える、場合によって100℃未満のTgを有する炭化水素樹脂を含む。そのような炭化水素樹脂は、“Hydrocarbon Resins” by R. Mildenberger, M. Zander and G. Collin (New York , VCH, 1997, ISBN- 3-527-28617-9)に記載されている。代表的な炭化水素樹脂は、例えばクマロン-インデン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、アルファメチルスチレン樹脂およびその混合物を含む。特に、そのような比較的高い樹脂Tgは、湿潤グリップに有益であるが、転がり抵抗への影響は限定的と考えられる。
【0030】
クマロン-インデン樹脂は、10℃~160℃(環球法によって測定して)の範囲の融点を有する多くの形で市販されている。好ましくは融点は30℃~100℃の範囲である。クマロン-インデン樹脂はそういうものとしてよく知られている。様々な分析によると、そのような樹脂は主としてポリインデンであることを示すが、しかし、一般にメチルインデン、クマロン、メチルクマロン、スチレンおよびメチルスチレンに由来した任意のポリマー単位を含む。
【0031】
10℃~120℃の範囲の軟化点を有する石油樹脂が市販されている。好ましくは軟化点は30℃~100℃の範囲である。適切な石油樹脂は芳香族、非芳香族の両方のタイプを含む。幾つかのタイプの石油樹脂が利用可能である。幾つかの樹脂は、低い不飽和度および高い芳香族含有量を有するが、高度に不飽和性であって、それにもかかわらず、芳香族構造を全く含まないものもある。樹脂における違いは主として樹脂が由来する原料中のオレフィンによる。そのような樹脂中の通常の誘導体は、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、イソプレンおよびピペリレンなどのそれらの二量体およびジオレフィンを含む。
【0032】
好ましい実施形態において、テルペン樹脂は本組成物で使用される。テルペンポリマー(または樹脂)は、一般にアルファまたはベータピネンの重合から工業的に製造することができる。特に、アルファピネン系樹脂が使用されてもよい。10℃~135℃の範囲の様々な融点のテルペン樹脂が供給されてもよい。テルペン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定して、例えば1000g/mol未満、好ましくは950g/mol未満の、または200g/molから950g/molの間の範囲の分子量Mを有していてもよい。アルファピネン系樹脂の例は、約900g/molの分子量Mを有するDRT社のDercolyte(商標)A115である。
【0033】
一実施形態において、樹脂はスチレンおよびアルファメチルスチレンに由来する。スチレン-ブタジエンエラストマーの存在を含むゴムブレンドを含むスチレン/アルファメチルスチレン樹脂の存在は、異なる温度/周波数/歪みでの、複素および貯蔵弾性率、損失弾性率、タンジェントデルタならびに損失コンプライアンスなどの、観察されるトレッドゴム組成物の粘弾性のため、有益であると考えられる。複素および貯蔵弾性率、損失弾性率、タンジェントデルタならびに損失コンプライアンスの性質は、一般にそのような当業者に周知のことと理解されている。樹脂の分子量分布は、本明細書において樹脂の分子量平均(Mw)と分子量数平均(Mn)値の比として視覚化され、比較的小幅であると考えられる約1.5/1~約2.5/1の範囲にあると考えられる。これは、ポリマーマトリクスとの選択的な相溶性のため、また広い温度範囲にわたる湿潤および乾燥条件におけるタイヤの企図された使用のために有利であると考えられる。コポリマー樹脂のガラス転移温度Tgは、本明細書において約20℃~約100℃、代替として約50℃~約70℃の範囲にあると考えられる。樹脂としてのTgの適切な測定はASTM D6604または同等のものによるDSCである。スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、本明細書において約0.40~約1.50の範囲のスチレン/アルファメチルスチレンモル比を有するスチレンとアルファメチルスチレンのコポリマーであると考えられる。一態様において、そのような樹脂は、例えば炭化水素溶媒中でのスチレンおよびアルファメチルスチレンのカチオン共重合によって適切に調製することができる。このようにして、企図されたスチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、例えばその化学構造、すなわちそのスチレンおよびアルファメチルスチレンの含有量、および軟化点、ならびにまた、所望の場合、そのガラス転移温度、分子量および分子量分布を特徴とすることができる。一実施形態において、スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、スチレンに由来する約40~約70パーセント単位、および対応してアルファメチルスチレンに由来する約60~約30パーセント単位で構成される。一実施形態において、スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、約80℃~約145℃の範囲の、ASTM No.E-28による軟化点を有する。適切なスチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、EastmanからResin 2336、またはArizona ChemicalからSylvares SA85として市販されている。
【0034】
別の実施形態において、ゴム組成物は、シリカ105phr~125phr、場合によって、シリカ105phr~120phrを含む。そのような比較的大量のシリカは、特に湿潤牽引の改善を可能にする、本組成物において特別に興味深いことであることが見いだされた。シリカ量の減少は、結果的に転がり抵抗の改善をもたらし得る。ゴムコンパウンドにおいて使用されてもよい一般に使用される珪質顔料は、例えば従来の火成性および沈降性珪質顔料(シリカ)を含む。一実施形態において、沈降シリカが使用される。従来の珪質顔料は、例えば可溶性ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られたものなどの沈降シリカであってもよい。そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定してBET表面積を有することを特徴とすることができる。一実施形態において、BET表面積は1グラム当たり40~600平方メートルの範囲にあってもよい。別の実施形態において、BET表面積は1グラム当たり80~300平方メートルの範囲にあってもよい。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。また従来のシリカは、100~400、代替として、150~300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することを特徴としてもよい。従来のシリカは、例えば電子顕微鏡によって求めて0.01~0.05ミクロンの範囲の平均究極粒子寸法を有すると予想されてもよいが、シリカ粒子は、寸法がさらに小さくてよく、またはことによるとより大きくてもよい。様々な市販のシリカ、例えば本明細書において例示のみでありこれらに限定されないが、PPG Industriesからの名称210、315G、EZ160Gなどを有するHi-Sil商標の下で市販されているシリカ;Solvayからの、例えば名称Z1165MPおよびPremium200MPなどを有する市販のシリカ、ならびにEvonik AGからの、例えば名称VN2およびUltrasil 6000GR、9100GRなどを有する市販のシリカなどが使用されてもよい。別の実施形態において、シリカは、100m/gから250m/gの間のBET表面積を有する。
【0035】
別の実施形態において、シリカは予備疎水化(または予備シラン化)沈降シリカであってもよい。予備疎水化は、シリカが前処理されていることを意味し、すなわち、予備疎水化沈降シリカは、ゴム組成物に添加する前に、少なくとも1種のシランを用いる処理によって疎水化されている。適切なシランは、アルキルシラン、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシリルポリスルフィドおよびオルガノメルカプトアルコキシシランを含むがこれらに限定されない。代替実施形態において、予備疎水化沈降シリカは、ゴム内にシリカカップリング剤と沈降シリカをインサイチューで反応させる代わりに、ゴムと前処理されたシリカをブレンドする前に、例えばアルコキシオルガノメルカプトアルコキシシランまたはアルコキシシランとオルガノメルカプトアルコキシシランの組み合わせで構成されたシリカカップリング剤を用いて前処理されてもよい。例えば、米国特許第7,214,731号を参照すること。予備疎水化沈降シリカは、任意に、シリカ分散助剤を用いて処理されてもよい。そのようなシリカ分散助剤は、脂肪酸、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水素化または非水素化C5またはC6糖の脂肪酸エステル、および水素化または非水素化C5またはC6糖の脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体などのグリコールを含んでいてもよい。例示の脂肪酸はステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸を含む。例示の水素化または非水素化C5またはC6糖(例えばソルボース、マンノースおよびアラビノース)の脂肪酸エステルは、ソルビタンモノオレエート、ジオレエート、トリオレエートおよびセスキオレエートなどのソルビタンオレエート、ならびにラウリン酸、パルミチン酸およびステアリン酸の脂肪酸ソルビタンエステルを含むがこれらに限定されない。水素化または非水素化C5またはC6糖の脂肪酸エステルの例示のポリオキシエチレン誘導体は、ポリソルベートおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルを含むがこれらに限定されず、これらは、エチレンオキシド基がヒドロキシル基のそれぞれに位置するという点を除いて上記の水素化または非水素化糖の脂肪酸エステルと類似している。使用される場合、任意選択のシリカ分散助剤は、シリカの重量を基準にして、約0.1重量%~約25重量%の範囲の量で存在し、約0.5重量%~約20重量%が適切であり、シリカの重量を基準にして約1重量%~約15重量%もまた適切である。様々な前処理された沈降シリカについて、例えば、米国特許第4,704,414号、米国特許第6,123,762号および米国特許第6,573,324号を参照すること。
【0036】
実施形態において、ゴム組成物はカーボンブラックを含んでもよい。そのようなカーボンブラックの代表的な例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991等級を含む。これらのカーボンブラックは、9~145g/kgの範囲のヨウ素吸収量、および34cm/100g~150cm/100gの範囲のDBP数を有する。しかし、カーボンブラックの量は本組成物においてやや少ないことが望ましく、実施形態において、組成物は5phrよりはるかに少ないカーボンブラック、好ましくは1phrから5phrの間のカーボンブラックを含む。
【0037】
別の実施形態において、さらに、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む微粒子充填剤、米国特許第6,242,534号;米国特許第6,207,757号;米国特許第6,133,364号;米国特許第6,372,857号;米国特許第5,395,891号;および米国特許第6,127,488号に開示されているものを含むがこれらに限定されない架橋微粒子ポリマーゲル、ならびに米国特許第5,672,639号に開示されているものを含むがこれらに限定されない可塑化デンプン複合充填剤を含むがこれらに限定されない他の充填剤がゴム組成物に使用されてもよい。
【0038】
一実施形態において、シス1,4-ポリブタジエンゴム(BRまたはPBD)は、例えば1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製されてもよい。BRは、一般に好都合には、例えば少なくとも90パーセントのシス1,4-含有量を有することを特徴とする。The Goodyear Tire & Rubber CompanyからBudene(登録商標)1207、Budene(登録商標)1208またはBudene(登録商標)1223高cis-1,4-ポリブタジエンゴムなどの適切なブタジエンゴムが市販されている。また別の実施形態において、ポリブタジエンは-100℃~-115℃、または-100℃~-110℃のガラス転移温度を有する。ポリブタジエンの比較的低いTgは、とりわけ冬季の性質に好ましいTg範囲にコンパウンドを保つための目的である。
【0039】
一般に、エラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度、すなわちTgへの言及は、本明細書において言及される場合、未硬化状態における、それぞれのエラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度を表わす。Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、例えばASTM D3418または同等のものに従って毎分10℃の昇温速度でピーク中央値として求められる。
【0040】
本明細書においておよび慣行的実務に従って使用される「phr」という用語は、ゴムまたはエラストマー100重量部当たりのそれぞれの材料の重量部を指す。一般に、この慣例を使用して、ゴム組成物はゴム/エラストマー100重量部で構成される。
【0041】
特許請求範囲の組成物は、特許請求範囲のゴム/エラストマーのphr値が特許請求範囲のphr範囲に一致し、組成物中のすべてのゴム/エラストマーの量が全体でゴム100部になることを前提として、特許請求範囲中で明示的に挙げられるよりゴム/エラストマーをさらに含んでもよい。例として、組成物は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、SSBR、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、PBD、天然ゴム(NR)および/または合成ポリイソプレンなどの1種または複数の追加のジエン系ゴム1phr~5phrをさらに含んでもよい。別の例において、組成物は、わずかに、5phr未満、好ましくは3phr未満の追加のジエン系ゴムを含んでもよく、または、またそのような追加のジエン系ゴムを基本的に含まなくてもよい。「コンパウンド」および「組成物」という用語は、他に示さない限り本明細書において交換して使用されてもよい。本明細書において、原料の量が「最大」を用いて挙げられる場合、これは、その原料の0(ゼロ)phr、または「0から」の選択肢も含むものとする。
【0042】
別の実施形態において、SSBRは、例えば5%~50%、好ましくは9%~36%の範囲の結合スチレン含有量を有してもよい。また別の実施形態において、SSBRは、ブタジエン含有量を基準にして10重量%から20重量%の間の範囲のスチレン含有量、および20重量%から40重量%の間の範囲のビニル含有量を有する。また別の実施形態において、SSBRは、ブタジエン含有量を基準にして4重量%から15重量%の間の範囲のスチレン含有量、および10重量%から25重量%の間の範囲のビニル含有量を有する。また別の実施形態において、溶液スチレン-ブタジエンゴムは、スズカップリング化ポリマーである。また別の実施形態において、SSBRは、例えば、シリカとの相溶性の改善のために官能化される。さらに、または代替として、SSBRはチオ官能化される。これは、コンパウンドの剛性および/またはそのヒステリシス挙動を改善するのを支援することができる。したがって、例えば、SSBRは、ブタジエンおよびスチレンのチオ官能化および/またはスズカップリング化溶液重合コポリマーであってもよい。
【0043】
ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、ならびにオイルなどの加工添加剤、粘着付与樹脂を含む樹脂および可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な硫黄加硫可能なの構成要素ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合することができることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫可能な材料および硫黄加硫された材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。一実施形態において、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、例えば0.5phr~8phrの範囲、代替として1phr~3phrの範囲の量で使用されてもよい。典型的な量の抗酸化剤は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含む。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978), 344~346頁に開示されているものなどであってもよい。典型的な量のオゾン劣化防止剤は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでいてもよい。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、例えば0.5phr~3phrを含んでいてもよい。ワックスの典型的な量は、使用される場合、例えば1phr~5phrを含んでいてもよい。多くの場合、微晶質のワックスが使用される。釈解剤の典型的な量は使用される場合、例えば0.1phr~1phrを含む。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0044】
加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の性質を改善するために、好ましくは促進剤が使用されるが、しかし必ずしも使用されなくてもよい。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤(複数可)は、0.5phr~4phr、代替として0.8phr~1.5phrの範囲の合計量において使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の性質を改善するために0.05phr~3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な性質に相乗効果を生み出すと予想されてもよく、どちらかの促進剤の単独使用によって作製されたものより多少良好である。さらに、通常の加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤が使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、例えばアミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。一実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、例えばグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物であってもよい。適切なグアニジンはジフェニルグアニジンなどを含む。適切なチウラムは、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドおよびテトラベンジルチウラムジスルフィドを含む。
【0045】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、通常、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な段階、続いて生産的混合段階において混合されてもよい。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、通常、従来、「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合されてもよく、ここで、通常、先行する非生産的混合段階(複数可)の混合温度(複数可)より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知されている。実施形態において、ゴム組成物は、熱力学的混合ステップにかけられてもよい。熱力学的混合ステップは、一般に、例えば140℃から190℃の間のゴム温度を生ずるように適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱力学的作業の好適な継続時間は、運転条件および成分の量および性質の関数として変わる。例えば、熱力学的作業は1~20分であってもよい。
【0046】
本発明のさらなる態様において、タイヤ、上記第1の態様および/またはその実施形態の1つによるゴム組成物を含むタイヤが提供される。
好ましい実施形態において、ゴム組成物はトレッドゴム組成物である。
【0047】
本発明のさらなる態様において、ゴム組成物を含むトレッドを有するタイヤが提供され、ここで、ゴム組成物は、エラストマー100重量部(phr)を基準にして、-50℃~-85℃の範囲のガラス転移温度Tgを有するSSBR80phr~100phr;-85℃~-115℃の範囲のガラス転移温度Tgを有するポリブタジエン0phr~20phr;シリカ100phr~150phr(好ましくは140phr);カーボンブラック0phr~10phr;炭化水素樹脂15phr~40phrの量Aおよびオイル5phr~25phrの量Bを含み、量Aおよび量Bの合計は35phrから50phrの間にある。好ましい実施形態において、AおよびBは可塑剤である。
【0048】
特に、タイヤは、ラジアルタイヤ、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤ、トラックタイヤおよび乗用車タイヤのうちの1つであってもよい。タイヤは、例えば冬用タイヤであっても、および/またはスリーピークマウンテン・スノーフレークマーク(3PMSF)(three peak mountain snow flake symbol)を有していてもよい。したがって、タイヤには複数の溝を有する複数のトレッドブロックがあってもよい。
【0049】
本発明の空気入りタイヤの加硫は、例えば100℃~200℃の範囲の従来の温度で実行されてもよい。一実施形態において、加硫は110℃~180℃の範囲の温度で行われる。プレスまたは型中での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫方法のうちのいずれを使用してもよい。そのようなタイヤは、知られている様々な方法によって組み立て、成形、成型および硬化することができ、当業者にとって容易に明白になる。
【0050】
1つまたは複数の態様、実施形態またはその特徴が、本発明の範囲内で他のものと組み合わせてもよいことは強調される。
添付の図面に関連して得られる以下の記載を鑑みれば、本発明の構造、作用および利点はより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】トレッドおよびさらなるゴム成分を含むタイヤの概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1はタイヤ1の概略の断面図である。タイヤ1は、トレッド10、インナーライナー13、4つのベルトプライ11を含むベルト構造、カーカスプライ9、2つのサイドウォール2、およびビードフィラーアペックス5およびビード4を含む2つのビード領域3を有する。例示のタイヤ1は、例えば車両、例えばトラック、乗用車のリムへの取付けに適切である。図1において示されるように、ベルトプライ11はオーバーレイプライ12によってカバーされてもよい。カーカスプライ9は、1対の軸方向に向かい合う端部6を含み、そのそれぞれが、ビード4の1つずつと組み合わされている。カーカスプライ9の各軸方向端部6は、各軸方向端部6をつなぎ留める位置へ各ビード4のまわりに巻き上げられてもよい。カーカスプライ9の巻き上げ部6は、2つのフリッパー8の軸方向外側表面、および2つのチッパー7の軸方向内側表面と繋がっていてもよい。図1に示されるように、例示のトレッド10は、4つの周溝を有し、各溝は、トレッド10のU字型の穴を基本的に画定することができる。トレッド10は、本発明の実施形態による本明細書に記載の1種または複数のトレッドコンパウンドを含む。
【0053】
図1の実施形態が、例えば、アペックス5、チッパー7、フリッパー8およびオーバーレイ12を含む複数のタイヤ構成部材を示唆しているが、そのような構成部材は本発明に必須ではない。またカーカスプライ9の巻き上げ端は、本発明に必要ではなく、またはビード区域3の対向面を通過し、ビード4の軸方向外側の代わりにビード4の軸方向内側で終端するのでもよい。タイヤの溝は、また例えば4つより多くても少なくてもよい。特に、本発明は基本的に、タイヤトレッド10、および例えばそのようなトレッド10に使用することができる加硫可能なゴム組成物を対象とする。したがって、本発明は、図1に描かれ記述されるタイヤ1の例に限定されないものとする。
【0054】
本発明の好ましい実施形態によるタイヤトレッド10としてのゴム組成物の好ましい例は、対照試料と比較した表1に示される。対照試料と比較して、SSBRの量はかなり増やし、ポリブタジエンゴムの量は3つの発明実施例において減少させた。さらに、シリカの量は対照と比べて減少させた。樹脂およびオイルの合計量は、対照と比較して同様に減少させた。
【0055】
【表1】
【0056】
表2は、表1に開示した対照組成物および発明実施例1~3について機械試験結果を開示する。すべての測定温度で反発値が改善した。-10℃でのより低い反発測定は湿潤性能についてわずかに改善されたことを示すが、23℃のより高い反発試験値は著しく良好な転がり抵抗を示す。また、発明実施例を対照試料と比較すると、100℃のタンジェントデルタ値は著しく減少し、また、改善されたヒステリシス挙動、したがって発明実施例についてより少ない転がり抵抗を示すと考えることができる。対照試料に対して規格化した摩滅試験結果は、発明実施例1についてほとんど平坦なままであるが、発明実施例2および発明実施例3については著しい改善が観察された。最後に、貯蔵弾性率E’は、改善されたスノー性能としての予測因子と見なすことができる低温(-40℃)でまた著しい進歩を示す(E’の小さな値はその性質にとって望ましい。)。要約すると、対照と比較して、発明実施例は、転がり抵抗およびスノー性能を有意に改善しつつ良好な湿潤およびトレッド摩耗性能を示唆する。
【0057】
したがって、本発明の実施例のトレッド組成物は、オールシーズントレッドゴムコンパウンドまたは冬用トレッドゴムコンパウンドについて好ましい候補であり得る。
【0058】
【表2】
図1