(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法及びプレス成形装置
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20250108BHJP
B21D 5/01 20060101ALI20250108BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20250108BHJP
B21D 37/08 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D5/01 D
B21D5/01 M
B21D22/26 D
B21D24/00 F
B21D37/08
(21)【出願番号】P 2020144292
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-08-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306019122
【氏名又は名称】株式会社エイチワン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 亘浩
(72)【発明者】
【氏名】高木 勝城
(72)【発明者】
【氏名】寺西 康明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 修平
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特許第6183468(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/012588(WO,A1)
【文献】特開2002-172423(JP,A)
【文献】特開2010-099700(JP,A)
【文献】特開2006-289480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/00 - 24/00
B21D 37/08
B21D 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一金型と第二金型との間で、第一の断面ハット形状屈曲板体におけるハット形状の山高部を形成する側壁からハット形状のフランジにわたってハット形状の周長方向に沿うように前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁と前記フランジの両方を面内圧縮することによって第二の断面ハット形状屈曲板体を得
るプレス成形品の製造方法
であって、
前記第一金型は、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁に対応するように形成される第一壁面と、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記フランジに対応するように形成される第二壁面とが第一角部をなして連続するパンチからなり、
前記第二金型は、前記第一壁面に平行な第三壁面と、前記第二壁面に平行な第四壁面とが第二角部をなして連続するダイからなり、
前記第一壁面と前記第三壁面との間に前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁を配置するとともに、前記第二壁面と前記第四壁面との間に前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記フランジを配置する第一工程と、
前記第一の断面ハット形状屈曲板体における前記フランジの前記第一角部側とは反対の端部を前記第一角部側に向けて押圧する第二工程と、
前記第一角部と前記第二角部とを近付けて、前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁と前記フランジとを、前記第一壁面と前記第三壁面との間、及び前記第二壁面と前記第四壁面との間にて圧縮する第三工程と、
を有し、
前記第三工程に並行して前記第二工程を行うことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項2】
第一金型と第二金型との間で第一の断面ハット形状屈曲板体を圧縮して第二の断面ハット形状屈曲板体を得るプレス成形装置であって、
断面ハット形状屈曲板体は、ハット形状の山高部に対応するように形成されて前記山高部の高さ方向に延びる側壁と、ハット形状の鍔部に対応するように形成されて前記山高部の開口側で前記側壁の端部から外側に離れる方向に張り出すように延びるフランジと、を有し、
前記第一金型は、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁に対応するように形成される第一壁面と、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記フランジに対応するように形成される第二壁面とが第一角部をなして連続するパンチからなり、
前記第二金型は、前記第一壁面に平行な第三壁面と、前記第二壁面に平行な第四壁面とが第二角部をなして連続するダイからなり、
前記第一角部と前記第二角部とを近付けて、前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁と前記フランジとを、前記第一壁面と前記第三壁面との間、及び前記第二壁面と前記第四壁面との間にて圧縮する圧縮機構と、
前記第一の断面ハット形状屈曲板体における前記フランジの前記第一角部側とは反対の端部を前記第一角部側に向けて押圧する第一押圧機構と、
前記第一の断面ハット形状屈曲板体における前記側壁の前記第一角部側とは反対の端部を前記第一角部側に向けて押圧する第二押圧機構と、
を備えることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプレス成形装置において、
前記第一押圧機構と前記第二押圧機構とは、カム機構を介して連動することを特徴とするプレス成形装置。
【請求項4】
請求項2に記載のプレス成形装置において、
前記パンチは、前記第一角部の反対側で前記第二壁面に対して交差する外側端面を有し、
前記第一押圧機構は、前記第一角部と前記第二角部とが相対的に近付くほど、前記パンチの前記外側端面に近付く第五壁面を有していることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプレス成形装置において、
前記第五壁面は、前記ダイに形成されていることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項6】
請求項2に記載のプレス成形装置において、
第二押圧機構は、前記断面ハット形状屈曲板体のハット形状の頂部に対応するように配置されるとともに、前記第一角部と前記第二角部とが相対的に近付く際に、前記ハット形状の前記頂部を前記パンチ側に向けて押圧するパッドであることを特徴とするプレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形品の製造方法及びプレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素板に曲げ加工などを施して得られる断面コ字状のブランクに対し、コ字形状の開側となる縦壁部の下端を下型に当接させた状態で、上型と下型との間で縦壁部を上下方向に圧縮するプレス成形品の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような製造方法によれば、縦壁部同士が開くように働くスプリングバックが防止されることによって、得られるプレス成形品の寸法精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に車体フレームなどに使用される長尺部材としては、断面ハット形状の半体(ハーフシェル)同士を貝合わせにしてハット形状の鍔部に対応するフランジ同士を溶接した閉断面構造を有するものが多い。したがって、このような断面ハット形状のプレス成形品の製造方法においてもスプリングバックを防止することができるものが望ましい。
しかしながら、断面ハット形状のプレス成形品の製造方法においては、縦壁部同士が開くように働くスプリングバックのみならず、縦壁部とフランジ部とのなす角度が開くように働くスプリングバックについても防止されなければならない。よって、従来のプレス成形品の製造方法(例えば、特許文献1参照)では、断面ハット形状のプレス成形品の寸法精度を十分に高めることができない。
【0005】
本発明の課題は、スプリングバックが十分に抑制されて、優れた寸法精度を有する断面ハット形状のプレス成形品を、簡素な工程で得ることができるプレス成形品の製造方法及びプレス成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明は、第一金型と第二金型との間で、第一の断面ハット形状屈曲板体におけるハット形状の山高部を形成する側壁からハット形状のフランジにわたってハット形状の周長方向に沿うように前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁と前記フランジの両方を面内圧縮することによって第二の断面ハット形状屈曲板体を得るプレス成形品の製造方法であって、前記第一金型は、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁に対応するように形成される第一壁面と、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記フランジに対応するように形成される第二壁面とが第一角部をなして連続するパンチからなり、前記第二金型は、前記第一壁面に平行な第三壁面と、前記第二壁面に平行な第四壁面とが第二角部をなして連続するダイからなり、前記第一壁面と前記第三壁面との間に前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁を配置するとともに、前記第二壁面と前記第四壁面との間に前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記フランジを配置する第一工程と、前記第一の断面ハット形状屈曲板体における前記フランジの前記第一角部側とは反対の端部を前記第一角部側に向けて押圧する第二工程と、前記第一角部と前記第二角部とを近付けて、前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁と前記フランジとを、前記第一壁面と前記第三壁面との間、及び前記第二壁面と前記第四壁面との間にて圧縮する第三工程と、を有し、前記第三工程に並行して前記第二工程を行うことを特徴とする。
【0007】
また、前記課題を解決した本発明のプレス成形装置は、第一金型と第二金型との間で第一の断面ハット形状屈曲板体を圧縮して第二の断面ハット形状屈曲板体を得るプレス成形装置であって、断面ハット形状屈曲板体は、ハット形状の山高部に対応するように形成されて前記山高部の高さ方向に延びる側壁と、ハット形状の鍔部に対応するように形成されて前記山高部の開口側で前記側壁の端部から外側に離れる方向に張り出すように延びるフランジと、を有し、前記第一金型は、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁に対応するように形成される第一壁面と、前記第二の断面ハット形状屈曲板体の前記フランジに対応するように形成される第二壁面とが第一角部をなして連続するパンチからなり、前記第二金型は、前記第一壁面に平行な第三壁面と、前記第二壁面に平行な第四壁面とが第二角部をなして連続するダイからなり、前記第一角部と前記第二角部とを近付けて、前記第一の断面ハット形状屈曲板体の前記側壁と前記フランジとを、前記第一壁面と前記第三壁面との間、及び前記第二壁面と前記第四壁面との間にて圧縮する圧縮機構と、前記第一の断面ハット形状屈曲板体における前記フランジの前記第一角部側とは反対の端部を前記第一角部側に向けて押圧する第一押圧機構と、前記第一の断面ハット形状屈曲板体における前記側壁の前記第一角部側とは反対の端部を前記第一角部側に向けて押圧する第二押圧機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スプリングバックが十分に抑制されて、優れた寸法精度を有する断面ハット形状のプレス成形品を、簡素な工程で得ることができるプレス成形品の製造方法及びプレス成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る製造方法にて得ることができるプレス成形品の一例を示す部分斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプレス成形装置の構成説明図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係るプレス成形品の製造方法における工程説明図であり、パンチに圧縮材料としての予備成形品(第一の断面ハット形状屈曲板体)を配置する工程を示す図である。
【
図4B】本発明の実施形態に係るプレス成形品の製造方法における工程説明図であり、圧縮材料としての予備成形品(第一の断面ハット形状屈曲板体)におけるスプリングバックしたフランジの端部を面方向に押圧する工程を示す図である。
【
図4C】本発明の実施形態に係るプレス成形品の製造方法における工程説明図であり、予備成形品(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁の圧縮工程説明図である。
【
図4D】本発明の実施形態に係るプレス成形品の製造方法における工程説明図であり、予備成形品(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁が面内圧縮される様子を示す図である。
【
図4E】本発明の実施形態に係るプレス成形品の製造方法における工程説明図であり、金型内にプレス成形品(第二の断面ハット形状屈曲板体)が得られた様子を示す図である。
【
図5A】本発明のプレス成形装置の変形例の構成説明図である。
【
図5B】
図5Aの変形例に係るプレス成形装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(本実施形態)のプレス成形品の製造方法(以下、単にプレス成形方法と称することがある)及びこの方法を実施するプレス成形装置について適宜図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態のプレス成形方法は、例えば鋼板などの板材からなる断面ハット形状の予備成形品を金型内で面内圧縮して断面ハット形状の最終成形品を得るものである。
【0011】
以下では、本実施形態にて得られるプレス成形品の一例について説明した後に、プレス成形装置とプレス成形方法とについて説明する。なお、以下の説明における上下の方向は、プレス成形装置の上下の方向を基準とする。また、プレス成形品における上下の方向は、プレス成形装置内で得られるプレス成形品の上下方向に一致させている。
【0012】
<プレス成形品>
図1は、本実施形態に係るプレス成形方法にて得ることができるプレス成形品10の一例を示す部分拡大斜視図である。
本実施形態でのプレス成形品10は、自動車の車体フレームなどに使用される高張力鋼板からなる長尺構造部材を想定しているがこれに限定されるものではなく、各種分野にて使用される種々の金属材料からなる構造部材に適用することができる。なお、
図1のプレス成形品10は、横断面を表す作図の便宜上、部分的に切り欠いて表している。
【0013】
図1に示すように、プレス成形品10は、一方向に長い部材(長尺部材)であり、長手方向に交差する横断面がハット形状を呈している。
ハット形状は、周知のとおり、山高部11の側面を構成する一対の側壁13a,13bと、これら一対の側壁13a,13bの一端側(上端側)同士を連結する山高部11の頂部14と、鍔部12(ブリム)を構成する一対のフランジ15a,15bと、を備えている。
山高部11は、一対の側壁13a,13b同士の一端側が頂部14側で閉じるとともに、側壁13a,13bの他端側(下端側)が開く略コ字状(略U字状)を呈している。そして、フランジ15a,15bは、略コ字状(略U字状)を呈する山高部11の開口側で、一対の側壁13a,13bのそれぞれの端縁(下縁)から外側に(開口から離れる方向に)張り出すように形成されている。
【0014】
本実施形態における山高部11の頂部14は、一対の側壁13a,13bの一端のそれぞれに面取り部17a,17bを介して渡し掛けられる横壁16を有して構成されている。
なお、本実施形態での頂部14を形成する面取り部17a,17bは、一対の側壁13a,13bの一端のそれぞれから上方に向かうほど面取り部17a,17b同士の幅が徐々に狭まる傾斜面にて形成されているが、これら傾斜面に代えて上方に膨らむ湾曲面(R面)にて形成することもできる。
また、頂部14は、面取り部17a,17bや湾曲面(図示を省略)を介さずに、横壁16が側壁13a,13bの一端に対して所定の角度をなして接続される態様とすることもできる。
【0015】
また、本実施形態でのプレス成形品10は、長手方向の全体にわたってハット形状の横断面を有しているものを想定しているが、長手方向の一部にハット形状の横断面を有するものであってもよい。また、側壁13a,13b及び横壁16のそれぞれは、長手方向に沿う平板状のものに限定されずに長手方向に対して反るように湾曲する湾曲面を含むものも許容される。また、側壁13a,13b及び横壁16のそれぞれは、面方向に形成された段差、ビードなどの多少の凹凸を含むものであってもよい。また、側壁13a,13b及び横壁16のそれぞれには、板厚方向に貫通する穴部が形成されていてもよい。
【0016】
また、本実施形態でのプレス成形品10は、一対の側壁13a,13bのうち、一方の側壁13aの山高部11の高さ方向(上下方向)の長さが、他方の側壁13bよりも短いものを想定しているが、一対の側壁13a,13b同士の長さは、同じであってもよい。
また、本実施形態でのプレス成形品10は、一対のフランジ15a,15b同士の横幅(長手方向に交差する方向の長さ)が同じであるものを想定しているが、一対のフランジ15a,15b同士の横幅は相互に異なっていてもよい。
【0017】
本実施形態でのプレス成形品10は、他に準備された部材(図示省略)にフランジ15a,15bがスポット溶接などで接続されることによって、他に準備された部材と山高部11の内側との間に閉断面を形成する。
ちなみに、他に準備された部材としては、例えば、車体のフロアパネル、ダッシュボードロアなどを形成するパネル材や、このプレス成形品10が半体として貝合わせに接合される他のハット形状部材(他の半体)などの立体構造体が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0018】
このような最終成形品としてのプレス成形品10は、後に説明するプレス成形装置30(
図2参照)を使用して成形されたものであり、特許請求の範囲にいう「第二の断面ハット形状屈曲板体」に相当する。
そして、プレス成形品10は、これを得るためにプレス成形装置30に材料として供給される予備成形品20(
図4A参照)とは異なる。この予備成形品20は、特許請求の範囲にいう「第一の断面ハット形状屈曲板体」に相当するものである。予備成形品20については、「プレス成形方法」の説明とともに後に詳しく説明する。
【0019】
<プレス成形装置>
図2は、本実施形態に係るプレス成形装置30の構成説明図である。
図2は、プレス成形装置30を正面から見た様子を概略的に示している。
図2に示すように、プレス成形装置30は、パンチ31と、一対のダイ32a,32bと、ダイ32a,32bのそれぞれを駆動するカム機構40と、パンチ31上に配置した後記の予備成形品20(
図4A参照)の保持と側壁23a,23b(
図4A参照)の押圧とを行うパッド35aと、を主に備えて構成されている。
本実施形態のプレス成形装置30は、パンチ31と、ダイ32a,32bと、パッド35aとによって、後に詳しく説明するように、予備成形品20(
図4A参照)における側壁23a,23b(
図4A参照)とフランジ25a,25b(
図4A参照)とを面内圧縮するように構成されている。
【0020】
(パンチ及びダイ)
本実施形態でのパンチ31は、固定金型を想定しており、特許請求の範囲にいう「第一金型」に相当する。また、本実施形態でのダイ32a,32bは、可動金型を想定しており、特許請求の範囲にいう「第二金型」に相当する。なお、プレス成形装置30においては、ダイ32a,32bを固定側に設定し、パンチ31を可動側に設定することもできる。
【0021】
図3は、
図2におけるIII部の部分拡大図である。
図3に示すように、本実施形態でのパンチ31は、断面ハット形状で一方向に長い前記のプレス成形品10(
図1参照)の凸面18及び凹面19のうち、凹面19側を模る圧縮成形面を有している。
【0022】
そして、このパンチ31(
図3参照)は、プレス成形品10(
図1参照)に合わせて一方向(
図3の紙面に垂直な方向)に長いレール状に形成されている。
具体的には、パンチ31は、
図3に示すように、長尺の略直方体からなるベース部31aと、長尺の略直方体からなる突出部31bと、を有している。そして、突出部31bは、ベース部31aの幅方向(
図3の紙面の左右方向)の中央で、ベース部31aよりも狭い幅で上方に突出するように形成されている。
【0023】
このような本実施形態のパンチ31は、プレス成形品10の山高部11(
図1参照)における側壁13a,13b(
図1参照)のそれぞれに対応する突出部31bの第一壁面53a,53bと、フランジ15a,15b(
図1参照)に対応するベース部31aの第二壁面55a,55bと、を有している。
そして、第一壁面53aは、第一角部58aを介して第二壁面55aと連続し、第一壁面53bは、第一角部58bを介して第二壁面55bと連続している。
【0024】
なお、ベース部31aは、第一角部58aの反対側で第二壁面55aに対して交差する外側端面36aを有している。また、ベース部31aは、第一角部58bの反対側で第二壁面55bに対して交差する外側端面36bを有している。これらの外側端面36a,36bは、鉛直方向に沿うように形成されている。
そして、ベース部31aにおけるそれぞれの外側端面36a,36bには、後記するダイ32a,32bの下死点で圧縮ブロック34a,34bの第五壁面37a,37bが当接可能となっている。
【0025】
パンチ31は、プレス成形品10(
図1参照)の頂部14(
図1参照)に対応するように頂部31cが形成されている。具体的には、パンチ31は、プレス成形品10(
図1参照)の横壁16(
図1参照)に対応するように横壁面56が形成されている。また、パンチ31は、プレス成形品10(
図1参照)の面取り部17a,17b(
図1参照)に対応するように傾斜壁面57a,57bが形成されている。そして、傾斜壁面57a,57bは、所定角度をなして第一壁面53a,53bに連続している。
【0026】
このようなパンチ31の一方の第二壁面55a、第一角部58a、第一壁面53a、及び傾斜壁面57aから、横壁面56を介して、他方の傾斜壁面57b、第一壁面53b、第一角部58b、及び第二壁面55bにわたる長さ、つまりパンチ31の周長は、これに対応するプレス成形品10の周長に等しくなるように設定されている。
【0027】
次に、ダイ32a,32bについて説明する。
図2に示すように、本実施形態でのダイ32a,32bのそれぞれは、パンチ31の圧縮成形面に対して所定角度で進退可能なカム機構40の後記するカムスライダ41a,41bのそれぞれと一体になっている。
ダイ32a,32bのそれぞれは、パンチ31の突出部31bを中央にして横方向(
図2の紙面の左右方向)から挟む位置に一対配置されている。つまり、ダイ32a,32bのそれぞれは、レール状のパンチ31に対応するように、一方向(
図2の紙面に垂直な方向)に長い長尺部材にて構成されている。
【0028】
具体的には、
図3に示す正面視で、ダイ32a及びダイ32bのそれぞれは、上下方向に延びる突出部31bの中心軸Axに対して略線対称となるように配置されている。なお、本実施形態での突出部31bの中心軸Axは、横壁面56における横方向(
図2の紙面の左右方向)の中央を、鉛直方向(
図3の上下方向に一致)に延びる軸線で規定することができる。
【0029】
ダイ32aは、ダイ本体33aと、このダイ本体33aに一体に取り付けられる圧縮ブロック34aと、を備えている。ダイ32bは、ダイ本体33bと、このダイ本体33bに一体に取り付けられる圧縮ブロック34bと、を備えている。
【0030】
パンチ31における一方の第一壁面53aに対応するように配置される一方のダイ本体33aは、この第一壁面53aに平行に対向する第三壁面63aを有している。また、パンチ31における他方の第一壁面53bに対応するように配置される他方のダイ本体33bは、この第一壁面53bに平行に対向する第三壁面63bを有している。
【0031】
また、一方のダイ本体33aは、パンチ31の一方の第二壁面55aと平行であって、第三壁面63aと第二角部68aを介して連続する第四壁面65aを有している。そして、他方のダイ本体33bは、パンチ31の他方の第二壁面55bと平行であって、第三壁面63bと第二角部68bを介して連続する第四壁面65bを有している。
このような一方のダイ本体33aにおける第三壁面63aから第二角部68aを介して第四壁面65aへと続くダイ本体33aの周長は、パンチ31の第一壁面53aから第一角部58aを介して第二壁面55aへと続くパンチ31の周長に等しくなるように設定されている。
また、他方のダイ本体33bにおける第三壁面63bから第二角部68bを介して第四壁面65bへと続くダイ本体33bの周長は、パンチ31の第一壁面53bから第一角部58bを介して第二壁面55bへと続くパンチ31の周長に等しくなるように設定されている。
【0032】
次に、圧縮ブロック34a,34bについて説明する。
図3に示すように、圧縮ブロック34aは、後記するカムスライダ41a側に位置するダイ本体33aの基端であって、ダイ本体33aの下方でこのダイ本体33aと一体となるように配置されている。また、圧縮ブロック34bは、後記するカムスライダ41b側に位置するダイ本体33bの基端であって、ダイ本体33bの下方でこのダイ本体33bと一体となるように配置されている。
【0033】
本実施形態での圧縮ブロック34a,34bのそれぞれは、プレス成形品10に対応するように、一方向(
図3の紙面に垂直な方向)に長い略直方体からなるブロック体を想定している。ちなみに、本実施形態での圧縮ブロック34a,34bは、ダイ本体33a,33bと別体のものをこのダイ本体33a,33bに取り付けた構成を想定している。しかしながら、圧縮ブロック34a,34bのそれぞれは、ダイ本体33a,33bのそれぞれに一体に成形されたものであってもよい。
【0034】
このような圧縮ブロック34aには、ベース部31aの外側端面36aに平行に対向する第五壁面37aが形成されている。また、圧縮ブロック34bには、ベース部31aの外側端面36bに平行に対向する第五壁面37bが形成されている。
このような圧縮ブロック34a,34bの第五壁面37a,37bのそれぞれは、後記するように、ダイ32a,32bの下死点でパンチ31の外側端面36a,36bのそれぞれに当接可能となっている。
【0035】
(カム機構)
次に、カム機構40(
図2参照)について説明する。
図2に示すように、カム機構40は、前記のダイ32a,32bのそれぞれに対応するように設けられる一対のカムスライダ41a,41bと、これらのカムスライダ41a,41bに対応するように設けられる一対のカムベース42a,42bと、カムスライダ41a,41bに対応するように設けられる一対のカムドライバ43a,43bと、を主に備えて構成されている。
ちなみに、これらのカムスライダ41a,41b、カムベース42a,42b、及びカムドライバ43a,43bは、ダイ32a,32bに対応するように一方向(
図2の紙面に垂直な方向)に長い長尺部材で形成されている。
【0036】
カムスライダ41aは、カムベース42aの傾斜面45aを傾斜方向に昇降することによって、ダイ32aをパンチ31に向かって移動させ、又はダイ32aをパンチ31から離反するように移動させる。
また、カムスライダ41bは、カムベース42bの傾斜面45bを傾斜方向に昇降することによって、ダイ32bをパンチ31に向かって移動させ、又はダイ32bをパンチ31から離反するように移動させる。
【0037】
つまり、カムスライダ41a,41bのそれぞれは、水平面Hpとそれぞれの傾斜面45a,45bとが狭角側でなす角度θa,θbにて、ダイ32a,32bのそれぞれをパンチ31側に移動させる。
ちなみに、角度θa,θbは、0度を超え、90度未満の範囲(0°(deg)<θa,θb<90°(deg))でそれぞれ設定することができるが、好ましくは15度以上、60度以下、特に、15度前後が好ましい。このような角度θaと角度θbとは、互いに同一でも異なっていてもよい。なお、本実施形態での角度θa,θbのそれぞれは、ともに15度を想定している。
【0038】
カムベース42a,42bのそれぞれは、傾斜面45a,45bに沿ってスライド移動可能にカムスライダ41a,41bのそれぞれを支持している。
なお、本実施形態でのカムベース42a,42bは、一体に形成されている。そして、カムベース42a,42b同士が繋がる中央部は、パンチ31の支持部をも兼ねている。
【0039】
また、カムベース42a,42bのそれぞれは、カムスライダ41a,41bのそれぞれをパンチ31から離反させる方向に付勢するコイルばねなどを利用した付勢手段46a,46bを備えている。ちなみに、これらの付勢手段46a,46bとしては、特に制限はなく、例えばカムベース42aとカムスライダ41aとの間、及びカムベース42bとカムスライダ41bとの間にスプリングSを配置した周知の構造で構わない。このスプリングSとしては、例えばガススプリング、コイルスプリングなどが挙げられる。
このような付勢手段46a,46bは、カムベース42a,42bのそれぞれの長手方向(
図2の紙面に垂直な方向)に沿って複数並ぶように配置されたものを想定している。
【0040】
本実施形態でのカムドライバ43a,43bは、後記するパッド35aを含むパッドユニット35と一体になって、
図2に示すプレス成形装置30の正面視で、下方に開く略E字状を呈している。つまり、カムドライバ43a,43bのそれぞれは、後記する昇降機構39の下方で水平方向に延びた上下に移動可能なパッド支持部35cに接続されている。
具体的には、カムドライバ43a,43bのそれぞれは、パッドユニット35を中央に挟んで配置されるように上端部がパッド支持部35cに接続されている。そして、カムドライバ43a,43bは、パッド支持部35c側から下方に延びてカムスライダ41a,41bを駆動するカム面44a,44bを形成している。
【0041】
カム面44a,44bは、カムスライダ41a,41bと対向するカムドライバ43a,43bの下端面に形成されている。
これらカム面44a,44bのそれぞれは、中央に挟むパッド35aから離れるほど徐々に下方に変位する傾斜面にて構成されている。
そして、カムスライダ41a,41bのそれぞれの上面には、カム面44a,44bに対して摺動することで、このカム面44a,44bに沿ってカムスライダ41a,41bを案内するスライド部材47a,47bが取り付けられている。
【0042】
このようなカムドライバ43a,43bは、例えば油圧シリンダなどを備える昇降機構39がパッド支持部35cを下方に移動させる際に、カム面44a,44bを介してカムスライダ41a,41bのそれぞれをパンチ31側に移動させる。つまり、カム面44a,44bのそれぞれは、付勢手段46a,46bの付勢力に抗してカムスライダ41a,41bのそれぞれをパンチ31側に向けて前記の角度θa,θbにて推し進める。
【0043】
これとは逆に、昇降機構39がパッド支持部35cを上方に移動させると、カム面44a,44bのカムスライダ41a,41bに対する押圧力(推進力)が開放される。これによりカムスライダ41a,41bは、付勢手段46a,46bの付勢力によって元の位置に復元する。
【0044】
(パッド)
次に、パッド35a(
図2参照)について説明する。
本実施形態でのパッド35aは、プレス成形品10(
図1参照)に対応するように、一方向(
図2の紙面に対して垂直な方向)に長い略直方体のブロックで構成されている。
そして、パッド35aは、
図2に示すように、パンチ31の上方に位置するように、パッド支持部35cに、後に説明するクッション部材35bを介して取り付けられている。
【0045】
図3に示すように、パッド35aは、パンチ31に対向する下端部に、パンチ31の頂部31cが嵌り込む溝部35dを有している。この溝部35dは、プレス成形品10(
図1参照)に対応するように一方向(
図3の紙面に対して垂直な方向)に延びるように形成されている。
具体的には、溝部35dは、プレス成形品10(
図1参照)の横壁16(
図1参照)に対応するように形成される底面35d1と、プレス成形品10(
図1参照)の面取り部17a,17b(
図1参照)に対応するように形成される側面35d2,35d3とを有している。
【0046】
本実施形態でのクッション部材35b(
図2参照)は、コイルスプリングを想定しているが、このクッション部材35bとしては、ガススプリングなどの他のスプリングを使用することもできる。
本実施形態でのクッション部材35bは、
図2に示すように、溝部35dの上方で、パッド35aの上下方向に延びるように形成された円柱状空間35eに収容されている。そして、クッション部材35bは、下端が円柱状空間35eの底部に設けられたバネ座(図示を省略)に取り付けられるとともに、上端がパッド支持部35cに取り付けられている。
なお、このようなクッション部材35bは、パッド35aの長手方向(
図3の紙面に対して垂直な方向)に複数配置されている。
【0047】
そして、クッション部材35bは、
図2に示すようにパンチ31からパッド35aが離反した状態から、後記するようにパッド35a(
図4C参照)が予備成形品20(
図4C参照)の頂部24(
図4C参照)に対する圧縮成形を開始する状態となるまでの間は、縮み代を有するようにばね定数が調節されている。また、クッション部材35bは、頂部24(
図4C参照)に対する圧縮成形を開始する状態(
図4C参照)から少なくともパッド35aの下死点に至った状態(
図4E参照)となるまでは収縮不能となっている。そして、クッション部材35bは、
図2に示す状態から
図4Cに示す状態までは、パッド35aが予備成形品20(
図4A参照)の頂部24(
図4A参照)を保持できるようにばね定数が調節されている。
【0048】
<プレス成形方法>
次に、本実施形態に係るプレス成形装置30(
図2参照)の動作について説明しながらこのプレス成形装置30によって実施される本実施形態に係るプレス成形方法について説明する。
図4Aから
図4Eは、プレス成形方法の工程説明図である。
図4Aは、予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)をパンチ31に配置する工程(第一工程)を示す図である。
図4Bは、予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)におけるスプリングバックしたフランジ25a,25bの端部をその面方向に押圧する工程(第二工程)を示す図である。
図4Cは、予備成形品(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁23a,23bを圧縮する工程(第三工程)の説明図である。
図4Dは、予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁23a,23bが面内圧縮される様子を示す図である。
図4Eは、金型(パンチ31、ダイ32a,32b)内にプレス成形品10(第二の断面ハット形状屈曲板体)が得られた様子を示す図である。
【0049】
(第一工程)
図4Aに示すように、本実施形態でのプレス成形方法の第一工程においては、予備成形品20がパンチ31上に配置される。
この予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)は、前記したように、特許請求の範囲にいう「第一の断面ハット形状屈曲板体」に相当する。
なお、
図4Aは、
図2に示すようにパッド35aとパンチ31とが離反している状態で予備成形品20をパンチ31上に配置した後、昇降機構39を降下させてパッド35aにて予備成形品20の頂部24を保持した状態を示している。
【0050】
プレス成形品10(
図1参照)を得る材料たる予備成形品20は、例えばプレス成形品10の凸面18(
図1参照)側を模った圧縮成形面を有するダイ(図示を省略)と、プレス成形品10の凹面19(
図1参照)側を模った圧縮成形面を有するパンチ(図示を省略)とを備えたプレス成形装置に、例えば高張力鋼板などのブランクを供給して製造することができる。
このような予備成形品20は、主にブランクの曲げ部に生起した応力によって、いわゆるスプリングバックを発生させる。
【0051】
具体的には、予備成形品20は、
図4Aに示すように、パッド35aにて頂部24をパンチ31の上部に保持した際に、予備成形品20の側壁23a,23bのそれぞれは、パンチ31の第一壁面53a,53bのそれぞれから浮き上がった状態となる。
なお、本実施形態での第一工程においては、
図4Aに示すように、側壁23a,23bのそれぞれがプレス成形品10(
図1参照)の側壁13a,13b(
図1参照)よりも長い予備成形品20が用意される。また、予備成形品20のフランジ25a,25bのそれぞれの長さは、プレス成形品10(
図1参照)におけるフランジ15a,15b(
図1参照)のそれぞれの長さと同程度となっている。
ただし、予備成形品20は、これに限定されるものではなく、本発明の他の実施形態として後に説明するように、フランジ25a,25bの長さを変更することもできる。
【0052】
(第二工程)
次に、本実施形態でのプレス成形方法の第二工程について説明する。
この第二工程においては、
図4Bに示すように、圧縮ブロック34a,34bがスプリングバックしたフランジ25a,25bの外側端部28a,28bを押圧する。
この第二工程においては、まず、パッド35aの位置が
図4Aに示す状態から、昇降機構39(
図2参照)がパッド支持部35c(
図2参照)を下方に移動させると、パッド35aは、
図4Bに示すように、予備成形品の頂部24に当接する。この際、
図4Bに示すように、クッション部材35bは、縮小しつつ、パッド35aを介して予備成形品20の頂部24をさらに強く押圧する。
【0053】
その一方で、
図2に示すカムドライバ43a,43bは、昇降機構39(
図2参照)がパッド支持部35c(
図2参照)を下方に移動させることによって、カムスライダ41a,41bのそれぞれをパンチ31に向けて移動させる。
これによりカムドライバ43a,43bに設けられたダイ32a,32bは、
図4Bに示すように、パンチ31に近接する。
【0054】
具体的には、ダイ32a,32bの第二角部68a,68bは、パンチ31の第一角部58a,58bに近接するように移動する。
そして、圧縮ブロック34a,34bの第五壁面37a,37bのそれぞれは、予備成形品20のフランジ25a,25bの外側端部28a,28bのそれぞれを、パンチ31の第一角部58a,58b側に向けて押圧する。
なお、フランジ25a,25bを押圧するダイ32a,32b(圧縮ブロック34a,34b)、カム機構40、及び昇降機構39は、特許請求の範囲にいう「第一押圧機構」を構成する。
【0055】
(第三工程)
次に、予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁23a,23bを圧縮する第三工程について説明する。
この第三工程においては、
図4Cに示すように、パンチ31と、予備成形品20の頂部24との間に隙間Gが形成される。
この隙間Gは、
図4Bに示す圧縮ブロック34a,34bの位置から、圧縮ブロック34a,34bのそれぞれがフランジ25a,25bの外側端部28a,28bをさらに押圧することで形成される。
つまり、この隙間Gは、
図4Cに示すように、圧縮ブロック34a(圧縮ブロック34bは図示省略)にてダイ32a(ダイ32bは図示省略)とパンチ31との間に押し込められた予備成形品20の余剰分の逃げ代として、予備成形品20の頂部24がパッド35aを上方に持ち上げて形成される。
【0056】
そして、パッド35aの位置が
図4Cに示す状態から、昇降機構39(
図2参照)がパッド支持部35cを下方に移動させると、収縮不能なクッション部材35bによって、パッド35aは、予備成形品の頂部24を下方に押圧する。これにより側壁23a,23bの上側端部29a,29bは、パンチ31の第一角部58側に向けて押圧される。
このように側壁23a,23bの上側端部29a,29bを押圧するパッド35a、及び昇降機構39(
図2参照)は、特許請求の範囲にいう「第二押圧機構」を構成する。
【0057】
この第三工程においては、カムドライバ43a,43b(
図2参照)は、昇降機構39(
図2参照)がパッド支持部35c(
図2参照)を下方に移動させる。これによって、
図4Dに示すように、カムスライダ41a,41bに設けられたダイ32a,32bは、第二角部68a,68bがパンチ31の第一角部58a,58bに近接するように移動する。これにより予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁23a,23bとフランジ25a,25bとは、パンチ31との間にて圧縮される。
【0058】
そして、本実施形態のプレス成形方法は、
図4Dに示す予備成形品20の側壁23a,23bとフランジ25a,25bとをダイ32a,32bとパンチ31との間で圧縮する第三工程と並行して、
図4Bに示す予備成形品20のフランジ25a,25bの外側端部28a,28bをパンチ31の第一角部58に向けて押圧する第二工程を行う構成となっている。
つまり、
図4Dに示すように、パンチ31上においては、このパンチ31の周長よりも長い周長の予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)がパンチ31の周長に合わせて余剰の長さ分が解消されるように押し込められていく。
これにより予備成形品20のフランジ25a,25bと側壁23a,23bとは、予備成形品20のハット形状の周長方向に面内圧縮されることとなる。
【0059】
そして、
図4Eに示すように、面内圧縮されたフランジ25a,25bと側壁23a,23bのそれぞれは、フランジ15a,15bと側壁13a,13bとを形成し、パンチ31とダイ32a,32bとパッド35aとからなる型内には、プレス成形品10が形成されることとなる。
【0060】
≪作用効果≫
次に、本実施形態のプレス成形方法及びプレス成形装置30の奏する作用効果について説明する。
【0061】
本実施形態のプレス成形法においては、プレス成形品10(第二の断面ハット形状屈曲板体)は、予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁23a,23bとフランジ25a,25bとが、ハット形状の周長方向に沿うように面内圧縮されることによって得られる。
このようなプレス成形法によれば、側壁23a,23bとフランジ25a,25bとがハット形状の周長方向に沿うように面内圧縮される際に、ハット形状における曲げ部に生じた応力が打ち消される。これにより本実施形態でのプレス成形法は、従来の深絞り加工による従来のプレス成形法(例えば、特許文献1参照)と異なって、圧縮成形加工といった簡素な工程で、予備成形品20に生起したスプリングバックを消去することができる。
そして、このプレス成形法により得られたプレス成形品10は、スプリングバックが抑制されることによって寸法精度に優れたものとなる。
【0062】
また、本実施形態のプレス成形法は、予備成形品20の側壁23a,23bとフランジ25a,25bとをダイ32とパンチ31との間で圧縮する第三工程と並行して、予備成形品20のフランジ25a,25bの外側端部28a,28bをパンチ31の第一角部58に向けて押圧する第二工程を行う。
このようなプレス成形法によれば、より簡素な工程で予備成形品20(第一の断面ハット形状屈曲板体)の側壁23a,23bとフランジ25a,25bとに面内圧縮を付与することができる。
【0063】
本実施形態のプレス成形装置30は、予備成形品20の側壁23a,23bとフランジ25a,25bとを圧縮するダイ32a,32bとパンチ31とからなる圧縮機構と、フランジ25a,25bの外側端部28a,28bを押圧する第一押圧機構と、側壁23a,23bの上側端部29a,29bを押圧する第二押圧機構と、を備えている。
このようなプレス成形装置30によれば、前記のプレス成形法の作用効果を奏することができるとともに、簡素な構成で前記のプレス成形法を実施することができる。
【0064】
本実施形態のプレス成形装置30においては、前記第一押圧機構と前記第二押圧機構とは、カム機構40を介して連動している。
このようなプレス成形装置30によれば、フランジ25a,25bと側壁23a,23bとを圧縮工程を実行する際に、これに併せて行うフランジ25a,25bの外側端部28a,28bを押圧する工程と、側壁23a,23bの上側端部29a,29bを押圧する工程との制御が簡単になる。これによりフランジ25a,25bと側壁23a,23bとの面内圧縮をより正確に実行することができる。
【0065】
本実施形態のプレス成形装置30においては、前記第一押圧機構は、パンチ31の第一角部58a,58bにダイ32a,32bの第二角部68a,68bが相対的に近付くほど、パンチ31の外側端面36a,36bに近付く第五壁面37a,37bを有している。つまり、前記第一押圧機構を構成する圧縮ブロック34a,34bの第五壁面37a,37bが、ダイ本体33a,33bと一体になってダイ32a,32bを構成している。
このようなプレス成形装置30によれば、ダイ32a,32bとパンチ31とからなる圧縮機構と、フランジ25a,25bの外側端部28a,28bを押圧する第一押圧機構とを連動させることができる。
これにより圧縮機構と第一押圧機構との構成を簡素化することができ、プレス成形装置30のコンパクト化を図ることができる。
【0066】
本実施形態のプレス成形装置30においては、前記の第二押圧機構は、パンチ31の第一角部58a,58bにダイ32a,32bの第二角部68a,68bが相対的に近付く際に、予備成形品20の頂部31cを押圧するパッド31cである。
このようなプレス成形装置30によれば、ダイ32a,32bとパンチ31とからなる圧縮機構と、パッド35cからなる第一押圧機構とを連動させることができる。
これにより圧縮機構と第二押圧機構との構成を簡素化することができ、プレス成形装置30のコンパクト化を図ることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。
【0068】
図5Aは、プレス成形装置30の第一変形例の構成説明図である。
図5Bは、
図5Aの第一変形例に係るプレス成形装置30の動作説明図である。
図5Aに示すように、第一変形例に係るプレス成形装置30は、パンチ31が、上側パンチ311と下側パンチ312とに二分されている。
そして、上側パンチ311と下側パンチ312との間には、リフタ313が配置されている。ちなみに、リフタ313は、例えばコイルばねなどのクッション部材で構成されている。
このリフタ313は、
図4Aに示す第一工程が行われる際に、パッド35aとの間で、予備成形品20の頂部24を保持する上側パンチ311を、付勢力によって上方に所定の隙間を開けて持ち上げる構成となっている。
【0069】
そして、第一変形例に係るプレス成形装置30は、
図5Bに示すように、パッド35aがリフタ313の付勢力に抗して予備成形品20の頂部24を押し下げると、上側パンチ311と下側パンチ312との間の隙間が消失する。
これによりパッド35aは、パンチ31とダイ32a,32bとの間で側壁23a,23bとフランジ25a,25bとを圧縮する際に、側壁23a,23bの上側端部29a,29bをパンチ31の第一角部58a,58bに向けて押圧する。
【0070】
このような第一変形例に係るプレス成形装置30によれば、パッド35aによる上側端部29a,29bの押下げ量が、上側パンチ311と下側パンチ312との間の隙間で規定することができるので、押下げ量の定量化を図ることができる。
なお、
図5B中、符号34a,34bは、圧縮ブロックである。
【0071】
また、前記実施形態のプレス成形装置30(
図3参照)は、パンチ31の第一壁面53a,53b同士が上方に向かうほど間隔が徐々に狭まるように傾斜しているが、第一壁面53a,53bの相対的な傾きに特に制限はない。
つまり、プレス成形装置30においては、圧縮ブロック34a,34bがダイ32a,32b側に配置されているため、第一壁面53a,53b同士は、
図3に示すプレス成形装置30の正面視で、互いに平行であってもよいし、
図3に示す第一壁面53a,53bとは逆にアンダーカットになっていても構わない。
ちなみに、アンダーカットになっている第一壁面53a,53bは、見込み成形を施すことができる。
また、図示は省略するが、直壁や直壁に近い壁があるプレス成形品の精度保証は、アンダーカット形状の金型によらなければならないところ、既存のプレス成形装置ではこの加工が不可能となっている。これに対して本実施形態のプレス成形装置30は、カム機構40と圧縮ブロック34a,34bとの組み合わせによって、このようなアンダーカット形状の金型を使用した構成が可能となっている。
【0072】
また、前記実施形態のプレス成形方法においては、予備成形品20として、その側壁23a,23bが、プレス成形品10の側壁13a,13bよりも長いものが用意された。しかしながら、予備成形品20はこれに限定されるものではない。
つまり、本発明のプレス成形方法においては、前記のように、第三工程と並行して第二工程が行われる際に、パンチ31上に、パンチ31の周長よりも長い周長の予備成形品20が配置されればよい。したがって、予備成形品20のフランジ25a,25bの長さは、前記のように原則としてプレス成形品10のフランジ15a,15bと同程度の長さに設定するところ、パンチ31の周長よりも予備成形品20が長い周長を有することを前提に、プレス成形品10(
図1参照)のフランジ15a,15bの長さに対して多少の増減は可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 プレス成形品
11 山高部
12 鍔部
13a 側壁
13b 側壁
14 頂部
15a,15b フランジ
16 横壁
18 凸面
19 凹面
20 予備成形品
23a,23b 側壁
24 頂部
25a,25b フランジ
28a,18b 外側端部
29a,29b 上側端部
30 プレス成形装置
31 パンチ
31a ベース部
31b 突出部
31c 頂部
32 ダイ
32a ダイ
32b ダイ
33a ダイ本体
33b ダイ本体
34 圧縮ブロック
34a 圧縮ブロック
34b 圧縮ブロック
35 パッドユニット
35a パッド
35b クッション部材
35c パッド支持部
35d 溝部
35e 円柱状空間
36a 外側端面
36b 外側端面
37 第五壁面
37a 第五壁面
37b 第五壁面
39 昇降機構
40 カム機構
41a カムスライダ
41b カムスライダ
42a カムベース
42b カムベース
43a,43b カムドライバ
44a,44b カム面
45a 傾斜面
45b 傾斜面
46a 付勢手段
47a スライド部材
53a 第一壁面
53b 第一壁面
55a 第二壁面
55b 第二壁面
56 横壁面
57a 傾斜壁面
57b 傾斜壁面
58 第一角部
58a 第一角部
58b 第一角部
63a 第三壁面
63b 第三壁面
65a 第四壁面
65b 第四壁面
68a 第二角部
68b 第二角部
35d1 底面
35d2 側面
Ax 中心軸
G 隙間
Hp 水平面
S スプリング