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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】基板保持部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250108BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H01L21/68 P
G03F7/20 521
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020162626
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055179
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 教夫
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-179747(JP,A)
【文献】特開2019-114588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部材であって、
上面に開口する1または複数の通気孔を有する平板状の基体と、
前記基体の上面から上方に突出して形成される複数の凸部と、を有し、
前記凸部は、
前記基体の上面の外周に沿って環状に形成される環状凸部と、
前記環状凸部の内側に形成され、前記環状凸部の上端より前記基体の上面から遠い位置に上端を有する複数の内側凸部と、
前記基体上に基板が保持された際に、前記基板よりも外側、かつ、前記環状凸部の外側に形成され、前記環状凸部の上端より前記基体の上面から遠い位置に上端を有する環状、円弧状または線分状の外側凸部と、を備え
前記外側凸部は、複数の部分外側凸部により形成され、
前記複数の部分外側凸部は、環状に配置されることを特徴とする基板保持部材。
【請求項2】
前記外側凸部は、前記基体の中心を通るすべての直線上に外側凸部が存在する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の基板保持部材。
【請求項3】
前記外側凸部は、円環状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の基板保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置等において、シリコンウエハやガラス等の基板を支持する基板保持部材が用いられている。基板保持部材を構成する基体は、基板の裏面を支持するため、基体の表面に形成された通気孔を通じて真空排気することにより基板が支持される。近年、半導体製品の超微細化および超高精度化が進んでいる。基体と基板との間にパーティクルが介在してしまうと、基板の局所的な盛り上がりが発生し、基板の露光による回路パターン形成工程において、基板に形成される回路パターンが短絡するなどの不具合が発生し、半導体製品の歩留まりが低下する。そのためこのような不具合を回避する必要がある。このようなパーティクルの噛みこみリスクを低減するため、基板と基体との接触面積を低減するため、基板を支持する領域を複数のピン状凸部とする基板保持部材が使用されている。
【0003】
特許文献1では、よりパーティクルの噛みこみリスクを低減するため、複数のピン状凸部を取り囲むように形成された環状シール用土手部(環状凸部)の高さを、基板の平面矯正のために必要な真空度が得られる程度に複数のピン状凸部よりも僅かに低い高さで形成している。さらに特許文献1では、基板の外周部が下方向(基体方向)に下がることを抑制する目的として、シール用縁堤部よりさらに外側に基板の支持面として構成する(負圧領域に形成された複数のピン状凸部と同一高さの)ピン状凸部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-185607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の吸着は、基体に形成された通気孔に接続された吸引ポンプの負圧力により、基板裏面と基体表面の空間が減圧されることで吸着されるが、環状の凸部が複数のピン状の凸部より高さが低いことから、基板の吸着動作中は、常に基体の外側から大気が流入している状態にある。
【0006】
この大気流入と同時に、外側からパーティクルの侵入を許し、侵入したパーティクルが基板の裏面とピン状の凸部の間に挟まってしまうと、局所的に平面度が悪化するといった不具合が発生することがある。しかしながら、特許文献1は、外側からのパーティクルの侵入を考慮していない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基板と基体との接触面積を低減しつつ、外側からのパーティクルの侵入を抑制することができる基板保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の基板保持部材は、基板保持部材であって、上面に開口する1または複数の通気孔を有する平板状の基体と、前記基体の上面から上方に突出して形成される複数の凸部と、を有し、前記凸部は、前記基体の上面の外周に沿って環状に形成される環状凸部と、前記環状凸部の内側に形成され、前記環状凸部の上端より前記基体の上面から遠い位置に上端を有する複数の内側凸部と、前記環状凸部の外側に形成され、前記環状凸部の上端より前記基体の上面から遠い位置に上端を有する環状、円弧状または線分状の外側凸部と、を備え、前記外側凸部は、複数の部分外側凸部により形成され、
前記複数の部分外側凸部は、環状に配置されることを特徴としている。このように、基体の上面に複数の内側凸部より低い環状凸部を備え、そのさらに外側に、環状凸部より高い環状、円弧状または線分状の外側凸部を備えることで、外周領域に壁ができる。その結果、吸着動作時の大気流入が制限されるので、基板と基体との接触面積を低減しつつ、外側からのパーティクルの侵入を抑制することができる。
【0009】
(2)また、本発明の基板保持部材において、前記外側凸部は、前記基体の中心を通るすべての直線上に外側凸部が存在する位置に配置されることを特徴としている。このように、外側凸部を、基体の中心を通るすべての直線上に外側凸部が存在する位置に配置することで、大気流入時のパーティクルの侵入をより抑制することができる。
【0010】
(3)また、本発明の基板保持部材において、前記外側凸部は、円環状に形成されることを特徴としている。これにより、環状凸部の外側が円環状に形成された外側凸部により全体的に覆われるため、パーティクル侵入の抑制効果がさらに高くなる。
【0011】
(4)上述のように、本発明の基板保持部材において、前記外側凸部は、複数の部分外側凸部により形成され、前記複数の部分外側凸部は、環状に配置されることを特徴としている。このように、部分外側凸部を環状に配置することで、隣接する部分外側凸部の間隙が空気の流入口となり、外側から流入する空気の量が増加することにより、基板処理後の取り外し性(デチャック性)が向上する。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基体の上面に複数の内側凸部より低い環状凸部を備え、そのさらに外側に、環状凸部より高い外側凸部を備えることで、外周領域に壁ができる。その結果、吸着動作時の大気流入が制限されるので、基板と基体との接触面積を低減しつつ、外側からのパーティクルの侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る基板保持部材の上面の一例を示した模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板保持部材の一例を示した部分断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る基板保持部材の上面の変形例を示した模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る基板保持部材の上面の変形例を示した模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る基板保持部材の上面の変形例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0015】
[実施形態]
本発明の実施形態に係る基板保持部材について図1および図2を参照して、説明する。図1は、本発明の実施形態に係る基板保持部材の上面の一例を示した模式図である。また、図2は、基板保持部材の一例を示した部分断面図である。基板保持部材100は、基板(ウエハ)Wを吸着保持するための略平板状の基体10を備えている。基体10は、セラミックス焼結体により略平板状に形成されている。基体10は略円板状のほか、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。
【0016】
基体10は、上面12に開口する1または複数の通気孔14を有する。通気孔14が複数ある場合、通気孔14は基体10の内部を通る通気路を介して連通してもよい。通気孔14は、真空吸引装置(図示略)に接続される。通気孔14の位置、形状、および大きさは、後述する環状凸部22等によって定まる吸着面の領域の形状、基板Wの形状や種類、真空吸引した際の吸着力等、基板保持部材100の設計に応じて異なる。
【0017】
基体10は、上面12から上方に突出して形成される複数の凸部20を有する。複数の凸部20は、環状凸部22、内側凸部24、外側凸部26を備える。
【0018】
環状凸部22は、基体10の上面の外周に沿って環状に形成される。例えば、基体10が円板状に形成される場合、環状凸部22は、基体10の上面の外周から外側凸部26を形成する所定の範囲を空けて中心側に寄った位置に、上方から見たとき円環状に連続して形成されることが好ましい。
【0019】
環状凸部の上端22aは、内側凸部の上端24aより基体10の上面12に近い位置にある。すなわち、環状凸部22の高さは、内側凸部24の高さより低い。これにより、基板Wの吸着動作中において、常に基体10の外側から大気が流入することとなり、環状凸部22の近傍でベルヌーイ効果を発揮させ基板Wの縁の沈み込みを抑制できる。なお、環状凸部22の高さとは、基体10の上面12から環状凸部の上端22aまでの距離をいう。環状凸部22の高さは、内側凸部24の高さに対して、1μm以上5μm以下低いことが好ましい。例えば、内側凸部24の高さが100μmであるとき、環状凸部の高さは95μm以上99μm以下であることが好ましい。環状凸部22の幅は、0.05mm以上8mm以下であることが好ましい。また、環状凸部22の幅は、隣接する内側凸部24の中心間の距離以下であることが好ましい。また、環状凸部の上端22aは、平面で形成されていることが好ましい。その場合、環状凸部の上端22aの平面(上端面)の表面粗さは、Ra0.2μm以下であることが好ましい。
【0020】
内側凸部24は、環状凸部22の内側に複数形成される。複数の内側凸部24は、基板Wを支持する。複数の内側凸部の上端24aは、略面一に形成される。すなわち、複数の内側凸部の上端24aにより形成される平面(基準面)30が決定される。これにより、複数の内側凸部の上端24aと基板Wとが当接し、基板Wが支持される。なお、複数の内側凸部24のうち、上端が基板Wと当接しないものがあってもよい。これは、そのような凸部があっても、周りの内側凸部24の配置によっては、基板Wを支持することが可能だからである。
【0021】
内側凸部の上端24aは、環状凸部の上端22aより基体10の上面12から遠い位置にある。すなわち、内側凸部24の高さは、環状凸部22の高さより高い。内側凸部の上端24aは、所定の大きさの平面になっていることが好ましい。その場合、内側凸部の上端24aの平面の最大径は、100μm以上500μm以下であることが好ましい。内側凸部の上端24aの平面の表面粗さは、Ra0.01μm以上0.50μm以下であることが好ましい。内側凸部24の形状は、円柱形、角柱形、円錐台形、角錐台形などであってもよいし、下部よりも上部の断面積が小さくなるような段差付き形状となっていてもよい。また、内側凸部24は、高アスペクト比の急峻な円錐台形状であってもよい。
【0022】
内側凸部24の配置は、三角格子上、正方格子状、同心円状など規則的な配置のほか、局部的に疎密が生じているような不規則的な配置であってもよい。内側凸部24の高さは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。なお、内側凸部24の高さとは、基体10の上面12から内側凸部の上端24aまでの距離をいう。また、隣接する内側凸部24の間隔は、中心間の距離が1.5mm以上8mm以下であることが好ましい。
【0023】
外側凸部26は、環状凸部22の外側に形成される。外側凸部の上端26aは、環状凸部の上端22aより基体10の上面12から遠い位置にある。すなわち、外側凸部26の高さは、環状凸部22の高さより高い。これにより、基体10の外周領域に壁ができるため、吸着動作時の大気流入が制限されパーティクルの侵入を抑制することができる。なお、外側凸部26の高さとは、基体10の上面12から外側凸部の上端26aまでの距離をいう。外側凸部26の高さは、50μm以上1500μm以下であることが好ましい。
【0024】
外側凸部の上端26aは、基準面30と同一の面を形成してもよい。これにより、外側凸部の形成が容易になる。また、外側凸部の上端26aは、基準面30より1.0mm基体10の上面12から遠い位置にあってもよく、0.77mm遠い位置にあってもよい。言い換えると、外側凸部26の高さから内側凸部24の高さを引いた差は、0.0mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.0mm以上0.77mm以下であることがより好ましい。外側凸部の上端26aが形成する面は、吸着する基板Wの上面よりも高くならないことが好ましい。外側凸部の上端26aが形成する面は、吸着する基板Wの上面よりも高くなると、基板Wの吸着時に、外側凸部26の内周側と基板Wの端部近傍において、流入する大気の異常な対流が生じやすくなり、基板Wの端部を反り上げてしまう、または下げてしまい、基板の端部の平面度が悪化する虞が生じるからである。そのため、外側凸部26の高さは、吸着する基板Wの厚さに応じて決定してもよい。
【0025】
外側凸部26は、環状、円弧状または線分状に形成される。外側凸部26の形状の詳細は後述する。外側凸部26の幅は、0.2mm以上2.0mm以下であることが好ましい。外側凸部26の幅は、設計の容易性から環状凸部22と同様であってもよく、環状凸部22の幅と異なっていてもよい。また、外側凸部の上端26aは、平面で形成されていることが好ましい。その場合、外側凸部の上端26aの平面(上端面)の表面粗さは、Ra0.2μm以下であることが好ましい。
【0026】
外側凸部26は、基体の中心16を通るすべての直線上に外側凸部26が存在する位置に配置されることが好ましい。通常、基板Wを均一に吸着するために通気孔14はバランスよく配置されているが、その場合、環状凸部22を越えて内部に流入する気体は、概ね中心方向に向かって流入していると仮定できる。そのため、外側凸部26をこのように配置することで、大気流入時のパーティクルの侵入をより抑制することができる。なお、基体の中心16は、基体10の上面の形状が円の場合、円の中心、長方形や正多角形の場合、それらが内接している円の中心、楕円の場合、長軸の中点とする。また、円等の一部を切断した形状等の場合、基体10の中心は、元の図形の中心とする。
【0027】
外側凸部26は、円環状に形成されることが好ましい。円環状に形成されるとは、上方から見たときに、外側凸部26が連続する円周を形成することをいう。これにより、環状凸部22の外側が円環状に形成された外側凸部26により全体的に覆われるため、パーティクル侵入の抑制効果がさらに高くなる。例えば、基体10が円板状に形成される場合、外側凸部26は、基体10の上面の外周から一定の距離中心側に寄った位置に、上方から見たとき円環状に連続して形成されることが好ましい。
【0028】
外側凸部26は、複数の部分外側凸部28により形成され、複数の部分外側凸部28は、環状に配置されることが好ましい。このように、部分外側凸部28を環状に配置することで、隣接する部分外側凸部28の間隙が空気の流入口となり、外側から流入する空気の量が増加することにより、基板処理後の取り外し性(デチャック性)が向上する。部分外側凸部28は、上端の中心線に沿った長さが、幅の3倍以上であることが好ましい。部分外側凸部28は、それぞれが円弧状または線分状に形成されることが好ましい。複数の部分外側凸部28が環状に配置されるとは、複数の部分外側凸部28が連続した環状の凸部の周の一部を形成している配置であることをいう。例えば、連続した円環状の凸部をスリットで複数の部分外側凸部に分離した場合の部分外側凸部の配置は、環状に配置される場合に含まれる。また、この配置で、複数の部分外側凸部の一部または全部を同様の長さを有する線分状の部分外側凸部に置き換えた配置も、環状に配置される場合に含まれる。
【0029】
図3から図5は、本発明の実施形態に係る基板保持部材の上面の変形例を示した模式図である。図3から図5に示される変形例は、いずれも外側凸部26が複数の部分外側凸部28により形成されている。図3に示されるように、環状の外側凸部26がスリットにより複数の部分外側凸部28として形成されていてもよい。このように部分外側凸部28が1重の環状に配置される場合、スリットの幅およびその合計が大きくなるとデチャック性は向上するものの、パーティクル侵入の抑制効果が小さくなるので、スリットの幅の合計は、同じ位置にスリットのない連続した環状の外側凸部26を形成する場合の外側凸部26の長さの30%以下であることが好ましい。また、環状の外側凸部26がスリットにより複数の部分外側凸部28として形成されている場合、スリットは、スリットのない連続した環状の外側凸部26を同じ位置に形成する場合の外側凸部26の全体に均等に配置されることが好ましい。それぞれのスリットの幅は、0.05mm以上8mm以下であることが好ましい。
【0030】
図4に示されるように、2重の環状の外側凸部26がスリットによりそれぞれ複数の部分外側凸部28として形成されていてもよい。この場合、内側の外側凸部26のスリットと外側の外側凸部26のスリットは、重ならないように配置されることが好ましい。図4は、そのような配置の例を示している。また、図4の例は、基体の中心16を通るすべての直線上に外側凸部26が存在する位置に配置されている例を示している。このように配置する場合、スリットの幅およびその合計が大きくなってもパーティクル侵入の抑制効果が保たれるので、内側および外側のそれぞれのスリットの幅の合計は、スリットのない連続した環状の外側凸部26をそれぞれ同じ位置に形成する場合のそれぞれの外側凸部26の長さの50%以下であることが好ましい。これは、部分外側凸部28が2重の環状に配置される場合は、1重の場合と比較してスリット幅の合計を大きくしてもパーティクルの侵入リスクを低減しつつ、デチャック性の向上ができるからである。また、3重以上の環状の外側凸部26がスリットによりそれぞれ複数の部分外側凸部28として形成されていてもよい。
【0031】
図5に示されるように、外側凸部26が複数の部分外側凸部28により形成される場合に、それぞれの部分外側凸部28が、基体10の周方向に延びる凸部を所定の角度傾斜させたものであってもよい。このような構成とすることで、デチャック性の向上の効果に加えて、内側凸部24表面の研磨加工の際、外周より投入される遊離砥粒の流路が確保され、研磨効率が向上する。図5に示されるような、それぞれの部分外側凸部28が、基体10の周方向に延びる凸部を所定の角度傾斜させた配置も、環状に配置される場合に含まれることとする。このような配置であっても、本発明の効果が得られるからである。所定の角度は、0°より大きく60°以下であることが好ましい。なお、図5の例は、基体の中心16を通るすべての直線上に外側凸部26が存在する位置に配置されている例を示しているが、このような特徴が満たされなくてもよい。また、外側凸部26は、同心円状に2以上形成する場合は、外側に周方向に延びるスリットを有する凸部を形成し、その内側に一定傾斜する凸部を形成する、またはその逆であるハイブリッド構造でもよい。
【0032】
このように、外側凸部26が環状、円弧状または線分状であるとは、外側凸部26が連続する環状である場合、および外側凸部26が円弧状または線分状に形成された複数の部分外側凸部28で構成され、部分外側凸部28が環状に配置される場合を含む。
【0033】
環状凸部22に最も近い位置にある外側凸部26の環状凸部22との間隔は、近すぎると基板Wが外側凸部26に接触する虞が増大するため、外側凸部の上端26aの周上の点(上端が面でない場合は上端の点)と環状凸部の上端22aの周上の点(上端が面でない場合は上端の点)との基準面30に平行な方向の最短距離は、1mm以上であることが好ましい。また、外側凸部26は、環状凸部22からの距離が大きくても横方向からのパーティクル侵入の抑制効果を発揮するため、特に上限は設ける必要はないが、製造の容易さ等を考慮すると、環状凸部22に最も近い位置にある外側凸部26の環状凸部22との間隔は、外側凸部の上端26aの周上の点と環状凸部の上端22aの周上の点との基準面30に平行な方向の最短距離は、15mm以下であることが好ましい。
【0034】
なお、図1から図5に示される基板保持部材10は、リフトピン孔やその周囲の凸部等は図示していない。
【0035】
[基板保持部材の製造方法]
周知の方法により、原料粉末から平板状の成形体が作成され、この成形体を焼成することにより平板状のセラミック焼結体が得られる。図1などでは円板形状の基板保持部材が図示されているが、多角形形状、楕円形状など、どんな形状でもよい。セラミック焼結体としては、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどが用いられる。
【0036】
次に、セラミック焼結体の上面となる面に通気孔、環状凸部、内側凸部、外側凸部等を形成する。形成方法としては、ブラスト加工、ミリング加工、レーザ加工等によって形成することが可能である。また、複数の凸部を形成した後に、各凸部の上端面を研磨等してもよい。
【0037】
複数の内側凸部の上端は、環状凸部の上端より基体の上面から遠い位置に上端を有するように、略面一に形成される。また、外側凸部の上端は、環状凸部の上端より基体の上面から遠い位置に上端を有するように形成される。
【0038】
環状凸部は、基体の上面の外周に沿って環状に形成される。環状凸部の基体の上面からの突出量は、内側凸部の基体の上面からの突出量に応じて決定されることが好ましい。例えば、内側凸部の高さに対して、1μm以上5μm以下低く形成されることが好ましい。環状凸部の幅は、0.05mm以上8mm以下の範囲で形成されることが好ましい。
【0039】
内側凸部は、環状凸部の内側に複数形成される。内側凸部の配置、形状、突出高さなどは特に限定されない。既知の形態またはそれに類似する形態であればよく、例えば、配置は、三角格子上、正方格子状、同心円状など規則的な配置のほか、局部的に疎密が生じているような不規則的な配置であってもよい。また、形状は、柱形状、錐形状であればよく、さらに下部よりも上部の断面積が小さくなるような段差付き形状となっていてもよい。また、内側凸部は、例えば、突出量は50μm以上500μm以下、凸部径は100μm以上2mm以下、凸部間隔は1.5mm以上8mm以下の範囲で、吸着する基板等の条件に応じて設計することが好ましい。
【0040】
外側凸部は、環状凸部の外側に形成される。外側凸部は、設計に応じて、連続した環状の凸部として形成してもよいし、部分外側凸部の集合として形成してもよい。外側凸部は、例えば、基体の上面からの突出量50μm以上1500μm以下、幅0.2mm以上2.0mm以下の範囲で、吸着する基板等の条件に応じて設計することが好ましい。
【0041】
このようにして、本発明の基板保持部材を製造することができる。
【0042】
[実施例および比較例]
(実施例1)
実施例1は、図1に示されるような、外側凸部が円環状に形成された基板保持部材である。炭化ケイ素の焼結体からなる、径φ310mm、厚さt1.5mmの略円板状の基体を準備し、ブラスト加工により、通気路、複数の内側凸部、環状凸部、外側凸部が形成された。複数の内側凸部は、高さ150μm、凸部上端面の径φ300μmで、各凸部の中心間間隔が3mmの三角格子状となるように形成された。続いて、遊離砥粒によるラップ研磨を行い、複数の内側凸部の表面粗さRaが0.03μmとなるように仕上げ加工を行った。
【0043】
環状凸部は、最外径がφ296mm、幅が0.5mmで形成され、追加工により複数の内側凸部より3μm低くなるように形成された。外側凸部は、最外径がφ305mm、幅が0.5mmで環状に形成され、複数の内側凸部と同様の高さとなる基板保持部材を作製した。環状凸部の上端の周上の点と外側凸部の上端の周上の点との基準面に平行な方向の最短距離は、4mmであった。
【0044】
(実施例2)
実施例2は、図3に示されるような、外側凸部が環状に形成され、スリットで複数の部分外側凸部に分けられた基板保持部材である。実施例1の外側凸部を所定間隔に分断する複数のスリットを形成したことを除き、実施例1と同様に構成された基板保持部材が作製された。
【0045】
実施例1の外側凸部の円周長さ約960mm中、約3mmのスリットを64箇所等間隔で形成した。スリットを形成する前の環状の外側凸部の全周に対するスリットの幅の合計は、約20%であった。環状凸部の上端の周上の点と外側凸部の上端の周上の点との基準面に平行な方向の最短距離は、4mmであった。なお、図3は、実施例2の形状を模式的に示しているだけであり、スリットの幅や個数等の形状の詳細は異なっている。
【0046】
(実施例3)
実施例3は、図4に示されるような、外側凸部が2重の環状に形成され、それぞれの外側凸部がスリットで複数の部分外側凸部に分けられた基板保持部材である。外側凸部として、最外径がそれぞれφ305mm、φ308mm、幅はいずれも0.5mmで形成され、所定間隔に分断する複数のスリットを形成したことを除き、実施例1と同様に構成された基板保持部材が作製された。なお、このとき内側のスリットと外側のスリットは、隣り合う同心円において重ならない位置に形成した。
【0047】
最外径がφ305mmの外側凸部は、実施例2と同様に、外側凸部約960mm中、約3mmのスリットを64箇所等間隔で形成した。スリットを形成する前の環状の外側凸部の全周に対するスリットの幅の合計は、約20%であった。最外径がφ308mmの外側凸部は、外側凸部約968mm中、約3mmのスリットを64箇所等間隔で形成した。スリットを形成する前の環状の外側凸部の全周に対するスリットの幅の合計は、約19.8%であった。内側の外側凸部の上端の周上の点と外側の外側凸部の上端の周上の点との基準面に平行な方向の最短距離は、1mmであった。なお、図4は、実施例3の形状を模式的に示しているだけであり、スリットの幅や個数等の形状の詳細は異なっている。
【0048】
(比較例1)
比較例1は、外側凸部を形成しないことを除き、実施例1と同様に構成された基板保持部材が作製された。
【0049】
(比較例2)
比較例2は、外側凸部の高さを100μm(環状凸部より47μm低い)としたことを除き、実施例1と同様に構成された基板保持部材が作製された。
【0050】
(評価方法)
得られた基板保持部材にφ300mm、厚さt0.7mmの基板を吸着し、基板の平面度を測定した。測定は非接触式のレーザ干渉計を用いて、保持された基板の上面の全面を一辺20mmの正方形に分割し、全ての一辺20mmの正方形内の領域のPV値を測定し、このPV値の最大値を基板保持部材のローカルフラットネス(LF)とした。評価の合否は、LFが0.1μm以下であった場合、特に良好な平面度を有すると判断し、LFが0.1μmより大きく0.3μm以下であった場合、良好な平面度を有すると判断し、LFが0.3μmより大きい場合は、平面度が悪いと判断した。
【0051】
実施例1および実施例3では、LFが0.1μm以下であり特に良好な平面度が得られた。実施例2では、LFが0.1μm以下とはならなかったが、0.3μm以下に抑えられており良好な平面度を有していた。
【0052】
比較例1および比較例2は、基板外周部の一部においてLFが0.3μmを超える部分が発生していた。比較例1は、第2の環状凸部を形成しなかったことによるものと推定される。また、比較例2は、外側凸部の高さが環状凸部の高さより低かったため、外部からのパーティクルの侵入を抑制する効果が得られなかったことによるものと推定される。
【0053】
以上により、本発明の基板保持部材は、基板と基体との接触面積を低減しつつ、外側からのパーティクルの侵入を抑制することができることが確かめられた。
【0054】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0055】
10 基体
12 上面
14 通気孔
16 基体の中心
20 凸部
22 環状凸部
22a 環状凸部の上端
24 内側凸部
24a 内側凸部の上端
26 外側凸部
26a 外側凸部の上端
28 部分外側凸部
30 基準面
100 基板保持部材
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5