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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/00 20060101AFI20250108BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20250108BHJP
   B60L 13/00 20060101ALI20250108BHJP
   B60L 15/42 20060101ALI20250108BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20250108BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250108BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250108BHJP
   B61C 7/04 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B60L1/00 G
B60L3/00 H
B60L13/00 D
B60L15/42
B60L50/16
B60L50/60
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
B61C7/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020179976
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070742
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 智洋
(72)【発明者】
【氏名】河野 真也
(72)【発明者】
【氏名】上村 悠介
(72)【発明者】
【氏名】吉川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】今井 桂一郎
(72)【発明者】
【氏名】江崎 浩康
(72)【発明者】
【氏名】町田 泰亮
(72)【発明者】
【氏名】豊崎 康博
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-065340(JP,A)
【文献】特開2016-082691(JP,A)
【文献】特開2012-121570(JP,A)
【文献】特表2014-516507(JP,A)
【文献】特開2017-011966(JP,A)
【文献】特開2019-092373(JP,A)
【文献】特開2013-150524(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024285(WO,A1)
【文献】特開2019-092310(JP,A)
【文献】特開2014-091504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0157593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
H02J 7/00
B61C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから供給される機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機から供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンクへ出力するコンバーターと、
前記直流リンクに接続され、直流電力を交流電力に変換して電動機の駆動電力を出力するインバーターと、
直流電力を出力するバッテリー装置と、
交流電力が供給される負荷と、
前記直流リンク又は前記バッテリー装置から供給される直流電力を交流電力に変換して交流電力を前記負荷へ出力する補助電源装置と、
前記補助電源装置から前記負荷へ交流電力を供給する電力供給経路の電気的接続状態を切り替える第1切替スイッチと、
外部電源から前記負荷へ交流電力を供給する電力供給経路の電気的接続状態を切替える第2切替スイッチと、
前記補助電源装置の故障が検出されたときに、前記第1切替スイッチを開放し前記第2切替スイッチを投入する制御装置と、を備えた車両駆動装置。
【請求項2】
前記外部電源から供給される交流電力を直流電力に変換して前記直流リンクに供給する整流器と、
前記第2切替スイッチと前記整流器との間において前記外部電源から前記整流器へ交流電源を供給する電力供給経路の電気的接続状態を切り替える充電用スイッチと、を備える、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記コンバーターは、前記発電機を駆動して、前記エンジンを始動させ得る請求項1または請求項2に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、空調機器や照明機器などの補機へ電力を供給するための電源として、補助電源装置が搭載されている。このような車両において、補助電源装置が故障すると、ユーザは空調機器や照明機器を利用することができなくなる。そこで、例えば補助電源装置が故障した鉄道車両の補機へ、健全な車両の補助電源装置から電力を供給する、延長給電システムを採用することが提案されている。
【0003】
また近年では、安全性・快適性の向上や環境負荷の低減などを目的として、エンジンで発電した電力とバッテリーの電力とを組み合わせ、主電動機を駆動して走行するハイブリッド方式の車両が注目されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「JR 東日本 HB-E210 系一般形ディーゼルハイブリッド車両」山田 孝夫、車両技術250号 2015年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ハイブリッド方式の車両の場合、走行中は主にエンジンで発電した電力を補助電源装置に供給して空調機器や照明機器を稼働しているが、駅停車時は、バッテリーの電力を補助電源装置に供給することで、エンジンを停止することが可能である(アイドリングストップ)。アイドリングストップを行うことで、乗客のサービス低下を抑えながら、ホーム上や駅周辺への騒音と排ガスの低減が可能となることから、駅停車時は毎回アイドリングストップを行うことが多い。また駅発車時は、エンジンに直結された発電機をバッテリーの電力によって回転させてエンジンを始動することが一般的である。そのようなバッテリーの電力によりアシストされることにより主電動機が駆動される車両において、バッテリーやバッテリーから主発電機への電力供給経路に介在する機器が故障した場合、エンジンを始動させることができず、車両が停止してしまう可能性があった。車両が停止すると、故障車両に連結された健全な車両の発電電力とバッテリー電力だけで編成全体を走行させるため、加速力や速度が通常時より低下することからダイヤが遅れる要因となり、故障車両のユーザだけでなく他の多くのユーザに影響を与えることとなるため、回避すべきである。
【0006】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、信頼性の高い車両駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による車両駆動装置は、エンジンから供給される機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機から供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンクへ出力するコンバーターと、前記直流リンクに接続され、直流電力を交流電力に変換して主電動機の駆動電力を出力するインバーターと、直流電力を出力するバッテリー装置と、交流電力が供給される負荷と、前記交流リンク又は前記バッテリー装置から供給される直流電力を交流電力に変換して交流電力を前記負荷へ出力する補助電源装置と、前記補助電源装置から前記負荷へ交流電力を供給する電力供給経路の電気的接続状態を切り替える第1切替スイッチと、外部電源から前記負荷へ交流電力を供給する電気供給経路の電気的接続状態を切り替える第2切替スイッチと、前記補助電源装置の故障が検出されたときに、前記第1切替スイッチを開放し前記第2切替スイッチを投入する制御装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の車両駆動装置を搭載した車両の一構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、車両の補助電源装置が故障した際の動作の一例を説明するための図である。
図3図3は、車両のバッテリー装置又はチョッパー回路が故障した際の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、一実施形態の車両駆動装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態の車両駆動装置を搭載した車両の一構成例を概略的に示す図である。
車両100は、エンジン1と、発電機2と、負荷(空調・照明等)9と、主電動機51、52と、車両制御回路10と、車両駆動装置と、を備えている。本実施形態の車両駆動装置は、コンバーター3と、インバーター4と、バッテリー装置BTと、チョッパー回路6と、補助電源装置8と、コンデンサーC1-C4と、電磁接触器EC1-EC6と、抵抗器R1、R2と、を備えている。なお、電磁接触器EC1-EC6は、電力供給経路の電気的接続状態を切り替えるスイッチである。
【0010】
エンジン1は、例えば燃料の熱エネルギーを機械エネルギーに変換して、発電機2に機械エネルギーを供給する内燃機関である。
発電機2は、エンジン1と接続されている。発電機2は、エンジン1から供給された機械エネルギーを電気エネルギーに変換して、コンバーター3に電気エネルギーを供給する回転機である。本実施形態では、発電機2は、3相交流電力を車両駆動装置に供給する。
【0011】
車両駆動装置は、発電機2と主電動機51、52との間に介在している。車両駆動装置は、車両の力行時に、発電機2から供給された3相交流電力と、後述するバッテリー装置BTに蓄えられたエネルギーとを利用して、主電動機51、52を駆動することができる。また、車両駆動装置は、ブレーキ時に、主電動機51、52で発電した電力(回生電力)を負荷(空調や照明等)9へ供給するとともに、バッテリー装置BTに充電することができる。なお、余剰の回生電力により発電機を回転させてエンジン1を回し、排気ブレーキによって余剰分の電力を熱として消費させる。車両駆動装置は、車両の駅停車中、エンジン1を停止(アイドリングストップ)し、バッテリー装置BTに蓄えられたエネルギーを車両内の負荷(空調や照明等)9に使用することができる。車両駆動装置の各構成については後に詳細に説明する。
【0012】
主電動機51、52は、車両駆動装置から供給される三相交流電力により駆動され、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、車両を駆動する動力を出力する。本実施形態では、主電動機51、52は例えば永久磁石同期機であって、各々が独立して制御され得る。
【0013】
車両制御回路10は、例えば上位装置(例えば運転台(図示せず))など外部からの指令に基づいて、車両100に搭載された機器の動作を協調制御する。車両制御回路10は、例えば、少なくとも1つのプロセッサーと、プロセッサーにより実行されるプログラムが記録されたメモリと、を備え、ソフトウエアにより又はソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、車両100の制御を実現することが可能である。なお、運転台などの外部から、車両100の各構成に対する制御指令が直接入力される場合には、車両制御回路10は省略してもよい。
【0014】
次に、車両駆動装置の各構成について説明する。なお、本実施形態の車両駆動装置は、シリーズハイブリッド方式の駆動方式を採用している。
コンバーター3は、発電機2から供給された三相交流電力を直流電力に変換して直流リンクへ出力する。本実施形態では、コンバーター3は、PWM方式の整流装置である。PWM方式の整流装置によれば、エンジン1の負荷状況に応じてエンジン回転数を可変にすることができ、燃費向上や騒音低減が可能となる。
コンデンサーC1は、コンバーター3の直流側の入出力端(直流リンク間)に接続されたフィルタコンデンサーである。
【0015】
インバーター4は、直流リンクを介してコンバーター3に電気的に接続されている。インバーター4は、直流リンクを介してコンバーター3から供給された直流電力を三相交流電力に変換して主電動機51、52へ供給する。本実施形態では、インバーター4は、VVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバーターである。なお、図1では、車両駆動装置は、複数の主電動機へ交流電力を供給する1台のインバーター4を備えているが、複数の主電動機のそれぞれに対応する複数のインバーター回路を備え得る。
コンデンサーC4は、インバーター4の直流側の入力端(直流リンク間)に接続されたフィルタコンデンサーである。
【0016】
バッテリー装置BTは、チョッパー回路6を介して、コンバーター3とインバーター4との間の直流リンクに電気的に接続されている。バッテリー装置BTは、例えばリチウムイオンバッテリーのセルを複数備え、車両制御回路10により放電および充電の動作を制御される。バッテリー装置BTは、蓄えたエネルギーを直流電力として放電するとともに、チョッパー回路6を介して供給されるエネルギーを充電することができる。
【0017】
バッテリー装置BTとチョッパー回路6とは、高電位側の直流ラインと低電位側の直流ラインとにより電気的に接続される。高電位側の直流ラインは、電磁接触器EC1、EC2により電気的接続が切り替えられる。すなわち、電磁接触器EC1、EC2は、電力供給経路の接続状態を切り替えるスイッチである。
【0018】
電磁接触器EC1と抵抗器R1とは、高電位側の直流ラインにおいて直列に接続している。電磁接触器EC2は、高電位側の直流ラインにおいて、電磁接触器EC1と抵抗器R1とに並列に接続されている。フィルタコンデンサーC1-C4を充電する際には、車両制御回路10により、電磁接触器EC1が閉じた状態となり、電磁接触器EC2が開いた状態となり、バッテリー装置BTに大電流が流れることが抑制される。
【0019】
チョッパー回路6は、バッテリー装置BTから供給された直流電力の電圧を昇圧して、コンバーター3とインバーター4との間の直流リンクへ昇圧後の直流電力を供給する。また、チョッパー回路6は、直流リンクから供給された直流電力の電圧を降圧して、バッテリー装置BTへ降圧後の直流電力を供給する。
コンデンサーC2は、チョッパー回路6の高電圧側の入出力端に接続されたフィルタコンデンサーである。
なお、コンバーター3によって直流リンクの電圧を変えてバッテリー装置BTの充電および放電電力を制御する場合は、チョッパー回路6を省略することも可能である。
【0020】
補助電源装置8は、直流リンク、又は、チョッパー回路6を介してバッテリー装置BTから供給される直流電力を、定電圧であり定周波数の交流電力に変換して、負荷(空調・照明等)へ交流電力を供給する。補助電源装置8は、例えば静止型インバーターである。
コンデンサーC3は、補助電源装置8の直流側の入出力端に接続されたフィルタコンデンサーである。
【0021】
なお、本実施形態では、負荷(空調・照明等)9には、補助電源装置8から、又は、電磁接触器EC6を介して外部から電力が供給され得る。すなわち、負荷(空調・照明等)9の電源入力端は、電磁接触器EC3を介して補助電源装置8と電気的に接続され得るとともに、電磁接触器EC6を介して外部電源と電気的に接続され得る。
【0022】
電磁接触器EC3は、車両制御回路10により動作を制御され、補助電源装置8と負荷(空調・照明等)9との間の電気的接続状態を切り替える負荷接触器である。
【0023】
整流器7は、車両100の外部から供給された交流電力を直流電力に変換して、直流リンクに直流電力を供給するAC-DCコンバーターである。整流器7の交流側の入力端は、電磁接触器EC5および電磁接触器EC6を介して、若しくは、電磁接触器EC4、抵抗器R2および電磁接触器EC6を介して、外部電源と電気的に接続され得る。
【0024】
電磁接触器EC5は、整流器7の交流側の入力端と電磁接触器EC6との間において、電磁接触器EC4および抵抗器R2と並列に接続されている。すなわち、電磁接触器(充電用接触器)EC4、EC5により、電磁接触器EC6と整流器7の交流側の入力端との間の電力供給経路の電気的接続状態を切り替えることができる。電磁接触器EC4、EC5は、車両制御回路10により動作を制御される。
【0025】
電磁接触器EC6は、整流器7および負荷(空調・照明等)9と、外部電源との間において電力供給経路の電気的接続状態を切り替える電源誘導接触器である。電磁接触器EC6は、車両制御回路10により動作を制御される。
【0026】
次に、図1に示す車両および車両駆動装置の動作について説明する。
車両100が力行時には、最初に、バッテリー装置BTからチョッパー回路6を介して出力された直流電力によりフィルタコンデンサーC1を充電し、エンジン1および発電機2に電力を供給して起動させる。
【0027】
エンジン1および発電機2が起動すると、エンジン1から出力される機械エネルギーにより発電機2が回転し、発電機2で発電される三相交流電力がコンバーター3に供給される。コンバーター3は三相交流電力を直流電力に変換しインバーター4に供給し、インバーター4において直流電力が三相交流電力に変換されて主電動機51、52が駆動される。
【0028】
このとき、発電機2の出力能力や主電動機51、52の駆動に必要な電力に応じて、車両制御回路10は、バッテリー装置BTからの出力電力を直流リンクに供給し、バッテリー装置BTに蓄えられたエネルギーにより主電動機51、52の駆動をアシストする。
【0029】
車両100のブレーキ時には、主電動機51、52で発電した電力(回生電力)が、インバーター4により直流電力に変換され、直流リンクに供給される。直流リンクに供給された直流電力は、チョッパー回路6を介してバッテリー装置BTに充電されるとともに、補助電源装置8を介して負荷(空調・照明等)9へ供給される。
【0030】
なお、バッテリー装置BTでの充電や負荷(空調・照明等)9での消費電力を差し引いた余剰の回生電力が生じる場合には、余剰の回生電力がコンバーター3を介して発電機2に供給される。発電機2を回転させることによりエンジン1が回り、排気ブレーキによって余剰分の電力が熱として消費される。
【0031】
車両100の停車中には、エンジン1は停止(アイドリングストップ)され、バッテリー装置BTに充電されたエネルギーがチョッパー回路6および補助電源装置8を介して負荷(空調・照明等)9に供給される。
【0032】
なお、車両制御回路10は、車両100の走行中にバッテリー装置BTのSOC(充電状態:State of Charge)が不足したり、過剰になったりしないよう、バッテリー装置BTの充電および放電をさせる。例えば、車両制御回路10は、バッテリー装置BTのSOCが所定の閾値以下となったときに、発電機2で発電されるエネルギーによりバッテリー装置BTを充電してSOCを回復させる。また、バッテリー装置BTのSOCが所定の閾値以上となると、車両制御回路10は、例えばバッテリー装置BTに蓄えられたエネルギーにより主電動機51、52の駆動をアシストするだけでなく、バッテリー装置BTから補助電源装置8にも給電させてSOCの増加を抑制する。なお、車両制御回路10は、バッテリー装置BTのSOCの調整は、車両100の停車中やだ行運転中に行い、バッテリー装置BTによるアシストや回生充電が行われない期間で実施される。
【0033】
次に、車両100の構成に故障が生じたときの動作の例について説明する。
図2は、車両の補助電源装置が故障した際の動作の一例を説明するための図である。
ここでは、複数の車両100が連結された編成のうちの1つの車両(故障車)100において、補助電源装置8が故障したときの動作の一例について説明する。なお、図2および後述する図3では、説明のため、コンデンサーC4、インバーター4および主電動機51、52の記載を省略しているが、車両100および車両駆動装置の構成は図1と同様である。
【0034】
補助電源装置8が故障すると、補助電源装置8から負荷(空調・照明等)9へ電力供給が行われなくなる。また、負荷9には車両100の冷却系統が含まれ得、補助電源装置8から負荷9への給電が停止すると、車両100全体の動作を停止せざる得ない状況となり得る。
【0035】
そこで、本実施形態の車両駆動装置では、補助電源装置8の故障が検出されたときに、車両(故障車)100の車両制御回路10は、車両(故障車)100の電磁接触器EC3を開放するとともに電磁接触器EC6を投入する。また、車両制御回路10は、補助電源装置8の故障を上位装置(例えば運転台)に通知する。隣接車両(健全車)100の車両制御回路10は、上位装置(例えば運転台)からの制御指令に従って、電磁接触器EC6を投入する。このことにより、故障車と健全車との電磁接触器EC6を介して隣接車両(健全車)100の補助電源装置(外部電源)8から故障車の負荷(空調・照明等)9への電力供給を可能としている。
【0036】
すなわち、複数の車両100が連結された編成では、故障車の電磁接触器EC6と健全車の電磁接触器EC6との間が電気的に接続された状態である。したがって、故障車と健全車との電磁接触器EC6を投入することにより、隣接車両の補助電源装置8から故障車の負荷9へ交流電力(例えばAC440V)を供給することが出来る。この結果、1つの車両100において補助電源装置8が故障した場合であっても、車両100全体の動作を停止させる必要がなくなり、車両100および車両駆動装置の信頼性を担保することが可能となる。
【0037】
次に、車両100の構成に故障が生じたときの動作の他の例について説明する。
図3は、車両のバッテリー装置又はチョッパー回路が故障した際の動作の一例を説明するための図である。
【0038】
ここでは、複数の車両100が連結された編成のうちの1つの車両(故障車)100において、バッテリー装置BTとチョッパー回路6との少なくともいずれか一方が故障したときの動作の一例について説明する。
【0039】
バッテリー装置BTとチョッパー回路6との両方若しくは一方が故障すると、バッテリー装置BTから直流リンクへ電力を供給できなくなり、エンジン1を始動させることができず、主電動機51、52を駆動することができなくなる。
【0040】
そこで、本実施形態の車両駆動装置では、バッテリー装置BTから発電機2へ電力供給ができない故障が検出されたときに、車両(故障車)100の車両制御回路10は、バッテリー装置BT等の故障を上位装置(例えば運転台)へ通知し、電磁接触器EC6を投入するとともに電磁接触器EC4を投入する。隣接車両(健全車)100の車両制御回路10は、上位装置(例えば運転台)からの制御指令に基づいて、隣接車両(健全車)100の電磁接触器EC6を投入する。このことにより、隣接車両(健全車)100の補助電源装置(外部電源)8から供給される電力(例えばAC440V)を、整流器7を介して直流リンクへ供給し、コンデンサーC1を充電することができる。続いて、車両(故障車)100の車両制御回路10は、電磁接触器EC5を投入し、整流器7およびコンバーター3を介して発電機2へ駆動電力を供給する。
【0041】
すなわち、複数の車両100が連結された編成では、故障車の電磁接触器EC6と健全車の電磁接触器EC6との間が電気的に接続された状態である。したがって、故障車と健全車との電磁接触器EC6、および、故障車の電磁接触器EC5、EC4を投入することにより、隣接車両100の補助電源装置8から車両(故障車)100の整流器7を介して直流リンクへ電力を供給することが可能となる。この結果、車両(故障車)100のコンデンサーC1を充電するとともに、エンジン1および発電機2を始動させ、車両(故障車)100の主電動機51、52を駆動することが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、車両100の故障率の悪化を冗長性向上により改善し、信頼性の高い車両駆動装置を提供することができる。
【0042】
なお、上述の実施形態では、バッテリー装置BT又はチョッパー回路が故障した際の動作の一例を説明したが、バッテリー装置BT又はチョッパー回路6ではなく、エンジン1又は発電機2又はコンバーター3が故障した場合は、同様に隣接車両(健全車)100の補助電源装置8から車両(故障車)100の整流器7を介して直流リンクへ電力を供給することで、車両(故障車)のバッテリー装置BTを充電することも可能となる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
なお、以下に本願の出願当初の特許請求の範囲の記載を付記する。
[C1]
エンジンから供給される機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機から供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンクへ出力するコンバーターと、
前記直流リンクに接続され、直流電力を交流電力に変換して電動機の駆動電力を出力するインバーターと、
直流電力を出力するバッテリー装置と、
外部電源から供給される交流電力を直流電力に変換して前記直流リンクに供給する整流器と、
前記外部電源と前記整流器との間の電力供給経路の電気的接続状態を切り替えるスイッチと、を備えた車両駆動装置。
[C2]
前記スイッチは、前記外部電源と前記負荷との間において電力供給経路の電気的接続状態を切り替える電源誘導スイッチと、前記電源誘導スイッチと前記整流器との間において電力供給経路の電気的接続状態を切り替える充電用スイッチと、を備える、[C1]記載の車両駆動装置。
[C3]
前記コンバーターは、前記発電機を駆動して、前記エンジンを始動させ得る[C1]または[C2]に記載の車両駆動装置。
【符号の説明】
【0044】
1…エンジン、2…発電機、3…コンバーター、4…インバーター、6…チョッパー回路、7…整流器、8…補助電源装置、9…負荷(空調・照明等)、10…車両制御回路、51、52…主電動機、100…車両、BT…バッテリー装置、C1-C4…コンデンサー、EC1-EC6…電磁接触器、R1、R2…抵抗器
図1
図2
図3