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特許7614786トナー用外添剤の製造方法、及びトナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】トナー用外添剤の製造方法、及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20250108BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20250108BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20250108BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20250108BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/097 372
G03G9/097 371
C08F20/18
C08L33/14
C08K5/5415
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020181727
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072349
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】白川 潤
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和香
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晶夫
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-514423(JP,A)
【文献】特開平09-197706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
C08F 20/18
C08L 33/14
C08K 5/5415
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー用外添剤の製造方法であって、
前記製造方法が、
6.≦pH≦7.5の条件下において、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル及びビニルトリメトキシシランからなる群より選択されるいずれか一の化合物を含有するモノマー原料のラジカル重合反応を行うラジカル重合工程、
記ラジカル重合工程の後に、前記化合物中の加水分解性基であるメトキシ基或いはエトキシ基の加水分解反応及び重縮合反応を行い、重縮合物の粒子を得る、縮合工程、及び
前記重縮合物の粒子をヘキサメチルジシラザンで疎水化する疎水化工程、
を有することを特徴とするトナー用外添剤の製造方法。
【請求項2】
前記ラジカル重合工程において、前記モノマー原料が、さらにスチレンを含有する請求項1に記載のトナー用外添剤の製造方法。
【請求項3】
前記縮合工程が、2.0≦pH≦4.0の条件下において反応を行う工程A、及び
前記工程Aの後に、10.0≦pH≦12.0の条件下において、反応を行う工程Bを有する
請求項1または2に記載のトナー用外添剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1~の何れか一項に記載のトナー用外添剤の製造方法でトナー用外添剤を製造する工程と、
製造されたトナー用外添剤をトナー粒子に外添する工程と、
を含有するトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の製造方法、及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法を用いた画像形成装置には、更なる高画質化、高速化が要求されている。これらの要求に伴い、高速の印字においても高画質を得るため、種々のトナー材料が検討されている。
【0003】
特許文献1では、トナー用添加剤として有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を有する有機質-無機質複合体粒子の製造方法が開示されている。該トナー用添加剤をトナーに含有させることにより、トナーの転写特性等が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-197706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法で製造されたトナーについて本発明者らが検討した結果、トナーの帯電量、及び連続した画像出力を行った場合におけるトナーの帯電量の経時的な変化についてより一層の改善が必要であることを認識した。
【0006】
本発明は、高い帯電量を有し得るとともに、連続した画像出力を行った場合においてもトナーの帯電量が経時的に変化しにくいトナー、即ち、優れた帯電維持性を有し得るトナーが得られる粒子の製造方法の提供に向けたものである。また、優れた帯電維持性を有し得るトナーの製造方法の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粒子の製造方法であって、
前記製造方法が、
6.0≦pH≦8.0の条件下において、下記式(1)で示される化合物を含有するモノマー原料のラジカル重合反応を行うラジカル重合工程、
SiX4-m ・・・ (1)
(式(1)中、Xは加水分解性基であり、mは1~3の整数であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~20の有機基であり、少なくとも1つのRが炭素数1~20のラジカル重合性基である。)
前記ラジカル重合工程の後に、前記化合物中の加水分解性基の加水分解反応及び重縮合反応を行い、重縮合物の粒子を得る、縮合工程、及び
前記重縮合物の粒子をアルキルシリル化剤で疎水化する疎水化工程、
を有することを特徴とする粒子の製造方法である。
【0008】
また、本発明の態様の1つは、本発明に係る粒子の製造方法で粒子を製造する工程と、
製造された粒子をトナー粒子に外添する工程と、
を含有するトナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い帯電量を有し得るとともに、優れた帯電維持性を有し得るトナーが得られる粒子の製造方法を提供できる。また、該粒子を外添したトナーの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0011】
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0012】
本発明に係る粒子は、トナー用粒子であることが好ましく、トナー用外添剤であることがより好ましい。また、粒子は、有機無機複合粒子であることが好ましい。有機無機複合粒子とは、分子レベルで、有機成分及び無機成分を有する粒子を意味する。
【0013】
<帯電量及び帯電維持性が十分でない場合がある原因>
特許文献1に係る製造方法で製造されたトナー用添加剤を外添したトナーの帯電量及び帯電維持性ついてより一層の改善が必要である理由を本発明者らは以下のように考えている。
【0014】
特許文献1のトナー用添加剤の製造方法で製造された粒子は、粒子表面の疎水化度が十分でないためにトナーの帯電量及び帯電維持性が十分でない場合がある。これは、ケイ素に結合した加水分解性基の加水分解及び重縮合を行った後にビニル重合を行うため、粒子表面に樹脂部分が存在すると考えられるが、一部、残存したシラノール構造が露出しやすく、その部分から電荷がリークしやすいためであると考えられる。
【0015】
また、疎水化度を向上させるため、上記の粒子にアルキルシリル化剤による疎水化処理を行ったトナー用添加剤をトナーに外添した場合にも、帯電維持性が十分でないことが分かった。これは、ビニル重合を後に行うために、疎水化処理剤としてのアルキルシリル化剤と化学結合できる反応サイト(ヒドロキシ基など)が、粒子表面に存在しにくいために、十分に疎水化が行われないためであると、本発明者らは推測している。
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記の構成要件を有する製造方法で製造された粒子を外添したトナーは、高い帯電量を有し得るとともに、優れた帯電維持性を有し得るトナーとなりやすいことを見出した。以下に、推測しているメカニズム及び、それぞれの構成要件について詳細に説明する。
【0017】
<本発明の効果が発現するメカニズム>
本発明の効果が発現するメカニズムについて、本発明者らは以下のように考えている。
【0018】
6.0≦pH≦8.0の条件下において、加水分解性基及びラジカル重合性基を有するモノマーを含むモノマー原料のラジカル重合反応を行うことで、加水分解反応が進行しにくい状態で、ラジカル重合が起こり、ビニル樹脂の分子鎖が形成される。
【0019】
また、その後に、上記の加水分解性基の加水分解反応及び重縮合反応を行って粒子を得ることで、粒子表面にアルキルシリル化剤による疎水化処理が可能な反応サイトを有しやすい状態で、粒子中にポリシロキサン骨格を形成させやすいと考えられる。その結果、塑性変形しにくい粒子が得られやすく、該粒子とトナー粒子との間で摩擦帯電が生じやすくなるために、該粒子を外添したトナーは高い帯電量を有し得る。
【0020】
さらに、該粒子をアルキルシリル化剤で疎水化処理をすることで、上記の反応サイトと反応するため、粒子表面の疎水化度が高まりやすく、該粒子を外添したトナーは高い帯電量を有し得るとともに、優れた帯電維持性を有し得る。
【0021】
<粒子の製造方法>
粒子の製造方法は以下の(1)~(3)の工程を経て実施される。
(1)中性付近の条件において、下記式(1)で示される化合物を含有するモノマー原料のラジカル重合を行うラジカル重合工程
(2)系中の加水分解性基を加水分解する加水分解反応及び重縮合反応を行って、重縮合物の粒子を得る縮合工程
(3)粒子の表面をアルキルシリル化剤で疎水化する疎水化工程
<ラジカル重合工程>
ラジカル重合工程は、6.0≦pH≦8.0の条件下において、下記式(1)で示される化合物を含有するモノマー原料のラジカル重合反応を行う工程である。
【0022】
ラジカル重合工程におけるラジカル重合反応を行う方法としては、乳化重合法であることが好ましい。
【0023】
乳化重合法は、水等の媒体と、媒体に難溶なモノマーと乳化剤(界面活性剤)あるいはイオン性コモノマーとを混合し、そこに上記媒体に溶解可能な重合開始剤(通常ラジカル発生剤)を加えて行う重合法である。上記の乳化重合法は、界面活性剤を用いない、ソープフリー乳化重合法であってもよい。
【0024】
ラジカル重合工程は、下記式(1)で示される化合物を含有するモノマー原料のラジカル重合反応を行う工程である。
【0025】
SiX4-m ・・・ (1)
(式(1)中、Xは加水分解性基であり、mは1~3の整数であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~20の有機基であり、少なくとも1つのRが炭素数1~20のラジカル重合性基である。)
より好ましくは、Rは炭素数1~15の有機基であり、さらに好ましくは、Rは炭素数1~10の有機基である。
【0026】
上記モノマー原料とは、構造中にラジカル反応性の二重結合を有するモノマーを意味する。該モノマーは1種であっても、複数種であってもよい。
【0027】
また、モノマー原料中の上記式(1)で示される化合物の含有割合は60.0~100.0質量%であることが好ましい。該含有割合が上記範囲内であることで、粒子中に十分な量のポリシロキサン骨格を形成させやすく、重縮合物の粒子表面にアルキルシリル化が可能な反応サイトを十分に存在させやすいと考えられるため好ましい。
【0028】
上記の加水分解性基とは、上記の化合物の加水分解後に、ヒドロキシ基に変換される官能基又はヒドロキシ基を意味する。
【0029】
加水分解性基の種類としては、ヒドロキシ基、ハロゲン官能基、アルコキシ基、及びアシルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基が挙げられる。上記の中でも好ましくはアルコキシ基、アセトキシ基であり、さらに好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びアセトキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基である。これらの加水分解性基が加水分解されると、上記の化合物がシラノール構造を有するため、そこから重縮合されることによりポリシロキサン骨格を形成させやすいと考えられるため好ましい。
【0030】
また、ラジカル重合性基とは、構造中にラジカル反応性の二重結合を有する置換基を意味する。
【0031】
上記のラジカル重合性基は、下記式(2)で示される置換基であることが好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
(式(2)中、Rは水素またはメチル基であり、Rは炭素数1~10のアルキレン基である。)
式(2)で示されるラジカル重合性基を持つ、式(1)で示される化合物は、ラジカル重合工程における反応性が高く、中性条件下において加水分解、重縮合反応が進行する前にラジカル重合が進行しやすいと考えられる。その結果、ラジカル重合反応が十分進行した後に、加水分解、重縮合反応が進行するため、得られる粒子の表面に、アルキルシリル化剤によって疎水化処理される反応サイトを残しておくことができると考えられる。
【0034】
上記式(1)で示される化合物、即ち、ラジカル重合性基と加水分解性基の両方を含むモノマーの具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、1-ヘキセニルトリメトキシシラン、1-オクテニルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン化合物、オルガノトリアセトキシシラン、ビス(γ-アクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ-メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン化合物、トリス(γ-アクリロキシプロピル)メトキシシラン、トリス(γ-アクリロキシプロピル)エトキシシラン、トリス(γ-メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、トリス(γ-メタクリロキシプロピル)エトキシシラン、ビス(γ-アクリロキシプロピル)ビニルメトキシシラン、ビス(γ-メタクリロキシプロピル)ビニルメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン等のトリオルガノアルコキシシラン化合物など。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0035】
上記モノマーのうち、特に好ましくは、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランである。
【0036】
上記ラジカル重合工程は、6.0≦pH≦8.0の条件下において行われる。より好ましくは6.5≦pH≦7.5である。この理由としては、ラジカル重合工程において、pHが中性から離れるほど、ラジカル重合反応に対し、加水分解性基の加水分解、重縮合反応が進行しやすくなるためである。その結果、粒子表面上の、アルキルシリル化剤と結合する反応サイトが減少しやすくなると考えられる。そのため、ラジカル重合反応においては、緩衝溶液中で反応を行うことが好ましい。中性付近のpHを示す緩衝溶液であれば種類は特に限定されないが、好ましい緩衝溶液としては、りん酸緩衝液、2-モルホリノエタンスルホン酸緩衝液(MES緩衝液)である。
【0037】
また、ラジカル重合反応において、上記式(1)に該当しないモノマーをモノマー原料に含有させてもよく、例えば以下のものが挙げられる。
【0038】
アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、イタコン酸エステル類、マレイン酸エステル類、フマール酸エステル類等の不飽和カルボン酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、スチレン、α-スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物等のビニル化合物類。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合可能な基を2個以上含有するジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等のモノマーを用いてもよい。上記の中でも、スチレンをモノマー原料に含有させることが、安定な粒子形成と形成される粒子の表面物性の観点から特に好ましい。また、モノマー原料中のスチレンの含有割合は、20.0~40.0質量%であることが好ましい。
【0039】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合の際に用いられるラジカル重合開始剤としては特に限定されないが、好ましくはアゾ化合物、過酸化物等から選ばれる少なくとも1つの化合物である。上述したラジカル重合開始剤の量は、特に限定されないが、ラジカル重合反応を十分に進行させ、且つ反応熱を制御しやすいため、原料モノマーの合計質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.3~5質量%である。ラジカル重合させる際の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって適宜選択可能であるが、反応の制御のし易さから30~100℃、好ましくは、50~70℃の範囲である。
【0040】
<縮合工程>
縮合工程は、ラジカル重合工程の後に、上記式(1)で示される化合物中の加水分解性基の加水分解反応及び重縮合反応を行い、重縮合物の粒子を得る工程である。
【0041】
上記の工程は、ラジカル重合して得られた粒子を含むエマルジョンに酸、塩基などの触媒を添加することにより、そのまま加水分解、重縮合してもよい。また、ラジカル重合して得られた粒子を瀘過、遠心分離、減圧濃縮等の方法を用いてエマルジョンから単離した後、触媒を添加して加水分解、重縮合させてもよいが、これらに限定されるものではない。即ち、上記のラジカル重合工程は、モノマー原料のラジカル重合反応を行い、重合物の粒子を得る工程であってもよい。
【0042】
また、加水分解反応が進行しやすく、重縮合物の粒子の表面にヒドロキシ基が多く含有されやすいと考えられるため、加水分解工程及び重縮合工程の反応溶媒として、水を用いることが好ましい。
【0043】
反応溶媒中には、水や触媒以外の有機溶剤が含有されていてもよい。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記式(1)で示される化合物中の加水分解性基は、酸性条件下において加水分解されやすいと考えられる。また、上記式(1)で示される化合物が加水分解された構造、即ち、シリルアルコール構造は、塩基性条件下において重縮合反応が進行しやすいと考えられる。即ち、縮合工程が、酸性条件下において反応を行う工程A、及び工程Aの後に、塩基性条件下において、反応を行う工程Bを有することが好ましい。また、縮合工程が、2.0≦pH≦4.0の条件下において反応を行う工程A、及び工程Aの後に、10.0≦pH≦12.0の条件下において、反応を行う工程Bを有することがより好ましい。
【0045】
加水分解や重縮合反応をさせるにあたり使用する触媒としては、酢酸、塩酸、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。
【0046】
重縮合反応を進行させるにあたり、上述した触媒を用いても良いが、縮合をより促進させる点で好ましい触媒としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジイソプロポキシ-ビス(アセチルアセトネート)チタネート等の有機チタン化合物、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリsec-ブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド-ビスアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物、ジルコニウムテトラブトキシド、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジマレエート等の有機錫化合物、酸性リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、または、2種以上を併用してもよい。中でも、有機錫化合物及び酸性リン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0047】
加水分解、重縮合反応の反応温度は、0~100℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは30~80℃の範囲である。また、好ましい反応時間は、3~24時間の範囲であることが好ましい。
【0048】
<疎水化工程>
疎水化工程は、重縮合物の粒子をアルキルシリル化剤で疎水化する工程である。該工程は、重縮合して得られた重縮合物の粒子を含むエマルジョンに、加水分解、重縮合反応時の酸、塩基などの触媒が残留したままアルキルシリル化剤を添加して、そのままアルキルシリル化してもよい。また、重縮合して得られた粒子を瀘過、遠心分離、減圧濃縮等の方法を用いてエマルジョンから単離した後、有機溶媒に溶解させたアルキルシリル化剤を添加してアルキルシリル化させてもよい。また、アルキルシリル化剤の蒸気を生成させ、その蒸気にエマルジョンから単離された粒子を曝すことでアルキルシリル化をしてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
アルキルシリル化剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0050】
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラノール、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α-クロルエチルトリクロルシラン、β-クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N-トリメチルシリルイミダゾール及びN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド。
【0051】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記の中でもより好ましくは、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラノール、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、及びヘキサデシルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0053】
アルキルシリル化反応をさせるにあたり使用する触媒としては、酢酸、塩酸、アンモニア、尿素、エタノールアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。
【0054】
粒子表面のアルキルシリル化処理を行う際の温度は、0~100℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは50~70℃の範囲である。また、処理を行う時間は3~24時間の範囲であることが好ましい。
【0055】
<トナー>
また、本発明に係る粒子は、トナー粒子の表面に含有されることが好ましい。即ち、本発明の態様の1つとして、本発明に係る粒子の製造方法で粒子を製造する工程と、製造された粒子をトナー粒子に外添する工程と、を含有するトナーの製造方法であることが好ましい。即ち、本発明に係る粒子が、トナー用外添剤であることが好ましい。また、トナーに外添する際の、適切な体積平均粒径とするため、本発明に係る粒子の体積分布基準の50%粒径をD50としたとき、該D50が、60~250nmであることが好ましい。
【0056】
トナー粒子の表面には、本発明に係る粒子以外の粒子が含有されてもよい。該粒子としては荷電制御剤や流動化剤などが挙げられるが、特に、トナーの流動性や帯電性を向上させるため、流動化剤が含有されることが好ましい。荷電制御剤及び流動化剤の例は後述する。
【0057】
トナー粒子は結着樹脂を含有することが好ましい。該結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0058】
結着樹脂は、保存安定性の観点から、ガラス転移点(Tg)が45~70℃であることが好ましい。
【0059】
<トナー粒子の製造方法>
本発明に係るトナー粒子の製造方法は特に限定されず、例えば粉砕法や、乳化重合法、懸濁重合法及び溶解懸濁法などの重合法を用いることができる。
【0060】
粉砕法では、まず、トナー粒子を構成する結着樹脂、着色剤、ワックス、荷電制御剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分に混合する。次いで、得られた混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得ることができる。
【0061】
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニーダールーダー(日本スピンドル社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
【0062】
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
【0063】
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
【0064】
懸濁重合法では、まず、結着樹脂の材料となる重合性単量体、及び必要に応じて各種添加物を混合し、分散機を用いて、これらを溶解又は分散させた単量体組成物を調製する。各種添加物としては、着色剤、ワックス、荷電制御剤、重合開始剤、連鎖移動剤などが挙げられる。分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機が挙げられる。次いで、単量体組成物を、難水溶性の無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機又は超音波分散機などの高速分散機を用いて、単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。その後、該液滴中の重合性単量体を重合してトナー粒子を得る(重合工程)。重合開始剤は、単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に単量体組成物中に混合してもよい。また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。重合性単量体を重合して結着樹脂を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー粒子を得ることができる。
【0065】
<トナーの製造方法>
本発明に係る粒子及び流動化剤を含む所望の外添剤を、トナー粒子とともにヘンシェルミキサーの如き混合機により充分混合し、本発明に係るトナーを得ることができる。
【0066】
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
【0067】
<各種添加剤等>
トナーは、必要により、着色剤、ワックス、磁性体、荷電制御剤、流動化剤などから選ばれる1種以上の添加剤を含有してもよい。トナーに用いられる各種添加剤について具体的に記載する。
【0068】
<着色剤>
着色剤の例を以下に挙げる。
【0069】
黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック、グラフト化カーボンや以下に示すイロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられる。シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。
【0070】
本発明に係る着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
【0071】
<ワックス>
ワックスの例を以下に挙げる。
【0072】
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物、及びそれらの酸化物が挙げられる。
【0073】
より具体的な例としては、ビスコール330-P、550-P、660-P、TS-200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP-1、HNP-3、HNP-9、HNP-10、HNP-11、HNP-12(日本精蝋社)、ユニリン350、425、550、700、ユニシッド、ユニシッド350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(セラリカNODA社)が挙げられる。
【0074】
<磁性体>
磁性粒子を含有させ磁性トナーとしても使用してもよい。この場合、磁性粒子は着色剤の役割をかねることもできる。
【0075】
本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性粒子としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ビスマス、カルシウム、マンガン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物が挙げられる。
【0076】
これらの磁性酸化鉄粒子は平均粒子径が2μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.05μm以上0.5μm以下である。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対し20質量部以上200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは結着樹脂100質量部に対し40質量部以上150質量部以下である。
【0077】
<流動化剤>
流動化剤としては例えば、以下のものが挙げられる。
【0078】
フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシラン化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ;酸化亜鉛、酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物等。
【0079】
上記の中でも、好ましい流動化剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式製法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl+2H+O→SiO+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、シリカとしてはそれらも包含する。
【0080】
流動化剤の、個数基準での粒度分布における平均1次粒径は5nm以上30nm以下であると、高い帯電性及び流動性を持たせることができることができるので好ましい。
【0081】
さらには、本発明に係る粒子以外に用いることができる流動化剤としては、上記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。疎水化処理は、上記の疎水化工程で挙げた方法等が挙げられる。
【0082】
<現像剤>
トナーは、一成分現像剤として用いてもよく、キャリアと併用して二成分現像剤として用いてもよい。
【0083】
二成分現像剤として用いる場合のキャリアとしては、例えば、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物が好ましくは使用される。
【0084】
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステルの物質を付着又は被覆させたものが好ましく使用される。
【0085】
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては、本発明に用いられる結着樹脂の末端に存在する酸基あるいは水酸基と中心金属が相互作用し易い、有機金属錯体、キレート化合物が有効である。例えば、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩が挙げられる。
【0086】
使用できる具体的な例としては、Spilon Black TRH、T-77、T-95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S-34、S-44、S-54、E-84、E-88、E-89 (オリヱント化学社)が挙げられる。また、荷電制御樹脂も上述の荷電制御剤と併用することもできる。
【0087】
<微粒子試料の体積分布基準の50%粒径(D50)の測定方法>
実施例における、微粒子試料の体積分布基準の50%粒径(D50)の測定には、動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いる。具体的には、レンジを0.001μm~10μmに設定し、以下の手順に従って測定する。
【0088】
水溶液中に測定試料を分散させた、分散液を投入して撹拌する。測定試料を分散させる際は、必要に応じて分散剤を用いても良い。撹拌後、測定試料を上記装置に注入し、2回測定を行ってその平均値を求める。
【0089】
測定条件としては、測定時間を30秒とし、試料粒子屈折率を1.49とし、分散媒を水とし、分散媒屈折率を1.33とする。
【0090】
測定試料の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒子径側からの累積体積が50%になる粒子径を、各微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)とする。
【実施例
【0091】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味するものとする。
【0092】
<粒子1の製造例>
工程(1):温度計、pHメーター、還流冷却器、窒素ガス導入管、攪拌器を装着したガラス製反応器に下記材料を投入した。
・りん酸緩衝液(pH=7.0、キシダ化学社製のりん酸二水素ナトリウム(二水和物)及びりん酸水素二ナトリウム(十二水和物)から調製) 200部
・p-スチレンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学社製) 0.13部
・メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業社製) 11.0部
・スチレン(東京化成工業社製) 4.7部
続いて窒素ガスを通気しながら65~70℃に加温し、30分撹拌した後、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)0.51部を添加し、6時間撹拌を続け粒子を形成させた。この工程中の反応系のpHは6.7~7.3の範囲であった。
【0093】
工程(2):このようにして得られたエマルジョンに酢酸(キシダ化学社製)0.32部を添加しエマルジョンのpHを3.0にして温度50℃にて3時間撹拌し、粒子中に含まれる加水分解性基の加水分解を行った。続いて、28質量%アンモニア水(キシダ化学社製)25.2部を添加してエマルジョンのpHを11.0にし、温度50℃にて3時間撹拌することで加水分解された加水分解性基の重縮合を行った。その後、過剰な溶質を除去するために限外濾過を行い、濃縮/濾過を計5回繰り返し行った。
【0094】
工程(3):疎水化処理剤として、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(以下、HMDSとも記載する。キシダ化学社製)27.0部を添加し、温度50℃にて24時間撹拌することで、粒子表面を疎水化処理した。その後スプレードライにより乾燥し、D50が130nmの粒子1を得た。
【0095】
<粒子2~5の製造例>
使用するラジカル重合性モノマーの種類と量を、表1に示すように変更したこと以外は、粒子1の製造例と同様にして、D50がそれぞれ145nm、89nm、125nm、217nmの粒子2~5を得た。
【0096】
<粒子6の製造例>
粒子1の製造例において、りん酸緩衝液をフタル酸水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(pH=5.4、東京化成工業社製)に変更したこと以外は、粒子1の製造例と同様の操作を行い、D50が256nmの粒子6を得た。ラジカル重合工程におけるpHは、5.3~5.9の間であった。
【0097】
<粒子7の製造例>
粒子1の製造例において、りん酸緩衝液を、ほう酸-塩化カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液(pH=8.6、東京化成工業社製)に変更したこと以外は、粒子1の製造例と同様の操作を行い、D50が282nmの粒子7を得た。ラジカル重合工程におけるpHは、8.1~8.7の間であった。
【0098】
<粒子8の製造例>
28質量%アンモニア水46.7部、及び脱イオン水2114部を混合した溶液中に、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル22.1部、メタノール(キシダ化学社製)73.7部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65、東京化成工業社製)0.12部を混合した溶液を添加してメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルの加水分解と縮合を行った。次に窒素ガスを通気しながら70~75℃に加温し、2時間撹拌することでビニル重合を行った。その後、過剰な溶質を除去するために限外濾過を行い、濃縮/濾過を計5回繰り返し行った。疎水化処理剤として、HMDS(キシダ化学社製)53.9部を添加し、温度50℃にて24時間撹拌することで、粒子表面を疎水化処理した。その後スプレードライにより乾燥し、D50が120nmの粒子8を得た。
【0099】
<粒子9の製造例>
工程(3)において、27.0部のHMDSを、ジメチルシリコーンオイル(KF-96-50CPS、信越化学工業社製)31.7部に変更したこと以外は粒子1の製造例と同様にして、D50が129nmの粒子9を得た。
【0100】
<粒子10の製造例>
工程(3)の疎水化処理工程を行わなかったこと以外は粒子1の製造例と同様の操作を行い、D50が131nmの粒子10を得た。
【0101】
粒子1~10の製造条件及び粒子のD50を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1中の略号は以下の通り。
MA-TMSP:メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル
MA-TESP:メタクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル
AA-TMSP:アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル
VTMS:ビニルトリメトキシシラン
St:スチレン
KPS:ペルオキソ二硫酸カリウム
V-65:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)
HMDS:1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン
表1中のD50は、上記した測定方法で測定した。
【0104】
<トナー粒子1の製造例>
下記の非晶性ポリエステル1を100部、磁性酸化鉄粒子を75部、フィッシャートロプッシュワックス(サゾール社製C105、融点:105℃)を2部、荷電制御剤(保土谷化学社製、T-77)を2部、をヘンシェルミキサーで前混合し、前混合物を得た。その後、2軸押出機(商品名:PCM-30、池貝鉄工所社製)を用いて、吐出口における溶融物温度が150℃になるように、温度を設定し、前混合物を溶融混練した。
・非晶性ポリエステル1:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体/テレフタル酸=50/50の重縮合体、数平均分子量:3000、酸価:12
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機(商品名:ターボミルT250、ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径7.2μmのトナー粒子1を得た。
【0105】
<トナー1の製造例>
トナー粒子1への粒子の外添は乾式で行った。ヘンシェルミキサーに100部のトナー粒子1、3部の粒子1、及びヒュームドシリカ(BET比表面積:200m/g)を1.5部添加し外添混合した。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、粒子1がトナー粒子1に外添されたトナー1を得た。
【0106】
<トナー2~10の製造例>
トナー1の製造例において、粒子1を表2に示すように変更したこと以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2~10を得た。
【0107】
【表2】
【0108】
<実施例1>
トナー1を用いて下記の評価を実施した。
【0109】
<トナーの帯電量の評価>
評価試料として1gのトナー1と、シリコーン樹脂で表面コートしたフェライトキャリア(平均粒径42μm)9gとを、プラスチックボトルに秤量し、温度23℃、湿度55%RHの環境下で24時間静置した。その後、振盪器(YS-LD、(株)ヤヨイ製)を用いて、温度23℃、湿度55%RHの環境下で、1分間に150往復の速さで30分間振盪し、トナーとキャリアからなる二成分現像剤を調製するとともに、トナー1を帯電させた。
【0110】
トナー1の帯電量は、ホソカワミクロン社製のEspartアナライザーを用いて測定した。Espartアナライザーの測定部に試料粒子として上記二成分現像剤を導入し、トナー1の帯電量を測定した。評価結果を表3に示す。トナーの帯電量が-25μC/g以下であるものを、本発明の効果が得られているものを判断した。
【0111】
Espartアナライザーは、電場と音響場を同時に形成させた検知部(測定部)に試料粒子を導入し、レーザードップラー法で粒子の移動速度を測定して、粒径と帯電量を測定する装置である。装置の測定部に入った試料粒子は、音響場と電場の影響を受け、水平方向に偏倚しながら落下し、この水平方向の速度のビート周波数がカウントされる。カウント値は、コンピュータに割り込みで入力され、リアルタイムでコンピュータ画面に粒子径分布又は単位粒径当たりの帯電量分布が示される。そして、所定の個数分の帯電量が測定されると画面は停止し、その後、帯電量と粒子径の3次元分布や粒径別の帯電量分布、平均帯電量(クーロン/質量)などが画面に表示される。
【0112】
<トナーの帯電維持性の評価>
トナーの帯電維持性の評価は、上記の評価を行った後に実施した。
【0113】
画像形成装置として、HP LaserJet Enterprise M609dn(HP社製)を用い、カートリッジにトナー1を入れ、以下の条件で5000枚の画像出力を行った。
・環境:温度23℃/湿度55%RH
・紙:GFC-081(81.0g/m)(キヤノンマーケティングジャパン社)
・紙上のトナーの載り量:0.35mg/cm
・プロセススピード:377mm/秒
その後、カートリッジ内の残留トナーを取り出し、残留トナーに対し、上記と同様にトナーの帯電量を測定して、その値を耐久後のトナーの帯電量とした。上記のトナーの帯電量の評価で得られた値を、耐久前のトナーの帯電量として、下記式で示される変動率を算出し、その値を用いてトナーの帯電維持性を評価した。
【0114】
変動率(%)=(耐久前のトナーの帯電量-耐久後のトナーの帯電量)/耐久前のトナーの帯電量×100
該変動率が20%以下であるものを、本発明の効果が得られているものと判断した。
【0115】
<実施例2~5、比較例1~5>
トナー2~10を用いて実施例1と同様の評価を実施した。評価結果を表3に示す。
【0116】
【表3】