(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】送電装置、送電装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20250108BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250108BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20250108BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20250108BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20250108BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20250108BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J7/00 301D
H02J50/60
H02J50/90
H02J50/10
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2020188572
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】七野 隆広
(72)【発明者】
【氏名】森友 和夫
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 元
(72)【発明者】
【氏名】平松 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】志村 元
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085929(JP,A)
【文献】特開2012-100491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 7/00
H02J 50/60
H02J 50/90
H02J 50/10
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置に無線で送電を行うために使用される複数のコイルと、
前記複数のコイルのうち少なくとも1つを使用して、第1の領域における受電装置に無線で送電を行う第1の送電手段と、
前記複数のコイルのうち少なくとも1つを使用して、第2の領域における受電装置に無線で送電を行う第2の送電手段と、
前記第1の送電手段により前記第1の領域と前記第2の領域とが重複する共通領域における第1の受電装置に送電が行われている間に、前記第1の領域のうち前記共通領域ではない領域に第2の受電装置が載置されることに基づいて、前記第1の送電手段による前記第1の受電装置への送電を停止させ、前記第1の受電装置に、前記第2の送電手段により送電が行われるように制御する制御手段と
を有
し、
前記複数のコイルは、前記第1の領域と前記第2の領域の少なくとも一方に含まれ、
前記複数のコイルのうち前記共通領域に含まれるコイルは、前記第1の送電手段と前記第2の送電手段によって、前記受電装置への送電に使用され得、
前記複数のコイルのうち前記第1の領域に含まれ前記共通領域に含まれないコイルは、前記第1の送電手段により前記受電装置への送電に使用され、前記第2の送電手段によっては前記受電装置への送電に使用されず、
前記複数のコイルのうち前記第2の領域に含まれ前記共通領域に含まれないコイルは、前記第2の送電手段により前記受電装置への送電に使用され、前記第1の送電手段によっては前記受電装置への送電に使用されないことを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2の受電装置に、前記第1の送電手段により送電が行われるように制御することを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記第1の送電手段は、前記第1の領域において第1の数の受電装置に送電可能であり、
前記制御手段は、前記第1の送電手段により、前記第1の領域において、前記共通領域における前記第1の受電装置を含む前記第1の数の受電装置に送電が行われている間に、前記第1の領域のうち前記共通領域ではない領域に前記第2の受電装置が載置される場合、前記第1の受電装置に、前記第2の送電手段により送電が行われるように制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記第2の送電手段は、前記第2の領域において第2の数の受電装置に送電可能であり、
前記制御手段は、前記第2の送電手段により、前記第2の領域において前記第2の数の受電装置に送電が行われている場合、前記第2の受電装置には送電がされないように制御する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の送電装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線電力伝送の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。そして、無線充電規格の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(以下、WPC規格という)に準拠した送電装置及び受電装置が提供されている。
【0003】
また、特許文献1には、複数の送電コイルを有する送電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、複数の送電コイルの配置については開示されているが、複数の送電コイルを有する送電装置の無線電力伝送の制御方法については考慮されていない。
【0006】
本開示は、複数の送電コイルを有する送電装置において、無線電力伝送に関する適切な制御を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る送電装置は、受電装置に無線で送電を行うために使用される複数のコイルと、前記複数のコイルのうち少なくとも1つを使用して、第1の領域における受電装置に無線で送電を行う第1の送電手段と、前記複数のコイルのうち少なくとも1つを使用して、第2の領域における受電装置に無線で送電を行う第2の送電手段と、前記第1の送電手段により前記第1の領域と前記第2の領域とが重複する共通領域における第1の受電装置に送電が行われている間に、前記第1の領域のうち前記共通領域ではない領域に第2の受電装置が載置されることに基づいて、前記第1の送電手段による前記第1の受電装置への送電を停止させ、前記第1の受電装置に、前記第2の送電手段により送電が行われるように制御する制御手段とを有し、前記複数のコイルは、前記第1の領域と前記第2の領域の少なくとも一方に含まれ、前記複数のコイルのうち前記共通領域に含まれるコイルは、前記第1の送電手段と前記第2の送電手段によって、前記受電装置への送電に使用され得、前記複数のコイルのうち前記第1の領域に含まれ前記共通領域に含まれないコイルは、前記第1の送電手段により前記受電装置への送電に使用され、前記第2の送電手段によっては前記受電装置への送電に使用されず、前記複数のコイルのうち前記第2の領域に含まれ前記共通領域に含まれないコイルは、前記第2の送電手段により前記受電装置への送電に使用され、前記第1の送電手段によっては前記受電装置への送電に使用されないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の送電コイルを有する送電装置において、無線電力伝送に関する適切な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】無線電力伝送システムの構成を説明するための図である。
【
図2】送電装置の機能構成の一例を説明するための図である。
【
図3】受電装置の機能構成の一例を説明するための図である。
【
図4】送電装置が有する送電コイル群の構成の一例を説明するための図である。
【
図5】WPC規格に準拠した送電装置及び受電装置が行う処理を説明するための図である。
【
図6】複数の送電コイルを有する送電装置が行う処置を説明するための図である。
【
図7】実施形態1における送電装置が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】実施形態1における送電装置及び受電装置が行う処理を説明するためのシーケンス図である。
【
図9】実施形態2における送電装置及び受電装置が行う処理を説明するためのシーケンス図である。
【
図10】実施形態2における送電装置が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】送電装置及び送電装置が有する送電コイル群の構成の一例を説明するための図である。
【
図12】実施形態3における送電装置が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【
図13】実施形態3における送電装置及び受電装置が行う処理を説明するためのシーケンス図である。
【
図14】送電コイル群及び受電装置の配置の一例を示す図である。
【
図15】実施形態4における送電装置が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【
図16】送電装置が行う送電及び検出用信号の送信のタイミングを表す図である。
【
図18】実施形態5における送電装置が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【
図19】実施形態5における送電装置及び受電装置が行う処理を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態に記載される構成要素は、本開示の実施の形態の一例を示すものであり、本開示をそれらのみに限定するものではない。
【0011】
(実施形態1)
[システムの構成]
図1に本実施形態に係る無線電力伝送システムの一例を示す。本実施形態における無線電力伝送システムは、送電装置100及び受電装置(第一受電装置101a及び第二受電装置101b)を含んで構成される。本実施形態における送電装置100は、自身が送電可能な範囲内に載置された第一受電装置101aと第二受電装置101bとを同時に充電する機能を有する。なお、
図1では2台の受電装置が送電装置上に存在する例が示されるが、これに限定されない。例えば、送電装置100は1台に対して充電を行ってもよい。また、送電装置100は、3台以上の受電装置を同時に充電可能な構成としてもよい。
【0012】
なお、本実施形態において、受電装置が載置される、というのは、以下のような状態を含む。受電装置が載置される状態は、例えば、受電装置が送電装置の送電可能な範囲内の面上に置かれる(設置される)場合を含む。しかしながら、本実施形態において説明する方法は、少なくとも、送電装置が送電可能な範囲の中に受電装置が含まれている状態において適用可能であり、例えば受電装置と送電装置とが非接触の状態でもよい。また、受電装置が載置され得る面は、水平面だけでなく、垂直面や傾斜のある面であってもよい。
【0013】
[装置構成]
図2は、送電装置100の機能構成を説明するためのブロック図である。送電装置100は、制御部201、電源部202、第一送電回路203、第一通信部204、第二送電回路205、第二通信部206、メモリ207、選択部208、及び、送電コイル群210を有する。また、送電コイル群210は、複数の送電コイル209a~209nを有する。なお、送電コイル209a~209bの数は、2以上でありうる。また、以下の説明では、特に区別する必要がない場合は単に送電コイル209と表記する。以下、各処理部について説明する。
【0014】
制御部201は、送電装置100全体の制御を行う。制御部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、後述の処理を実行するように構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を含んでもよい。
【0015】
電源部202は、制御部201、第一送電回路203、及び、第二送電回路205が動作するため電力を供給する電源である。電源部202は、例えば、商用電源から電力の供給を受ける有線受電回路やバッテリ等でありうる。
【0016】
第一送電回路203及び第二送電回路205は、後述する送電コイル群210に含まれる任意の送電コイル209に、交流電圧及び交流電流を発生させる。第一送電回路203及び第二送電回路205は、例えば、電源部202が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transistor)を使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路を用いて交流電圧に変換する。この場合、送電回路203は、FETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。
【0017】
第一通信部204は、後述する受電装置の通信部との間で、Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(以下、WPC規格という)に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。本実施形態では、第1通信部204は、第一送電回路203が発生させる交流電圧又は交流電流を負荷変調し、送電する電力に通信データを重畳することにより、通信データを受電装置に送信する。また、第一通信部204は、後述する受電装置の通信部により変調された交流電圧又は交流電流を復調することにより、受電装置から送信される通信データを受信する。この処理により、制御通信が実現される。第二通信部206は、第一通信部204と同様に、第二送電回路205が発生させる交流電圧又は交流電流を負荷変調又は復調し、通信データの送受信を行うことにより、制御通信を実現する。
【0018】
メモリ207は、送電装置100、及び、無線電力伝送システムの各要素及び全体の状態を記憶する。
【0019】
送電コイル群210は、複数の送電コイル209を有する。複数の送電コイル209のうち任意の1つ又は複数の送電コイル209は、第一送電回路203又は第二送電回路205に接続される。選択部208は、送電コイル群210が有する任意の1つまたは複数の送電コイル209と、第一送電回路203又は第二送電回路205とを接続する。選択部208は、第一送電回路203を任意の1つ又は複数の送電コイル209に接続し、第二送電回路205を他の1つ又は複数の送電コイル209に接続する。第一送電回路203及び第二送電回路205といずれの送電コイル209とを接続させるかは、制御部201が選択部208を制御することにより決定される。選択部208は、制御部201による制御に応じて、第一送電回路203及び第二送電回路205と送電コイルとの接続を切り替える。第一送電回路203及び第二送電回路205と送電コイルとの接続の制御については、後述する。
【0020】
本実施形態における第一送電回路203及び第二送電回路205は独立して動作可能であり、それぞれ同時に最大1つの受電装置に充電のための電力を送電することができる。つまり、送電装置100は最大2台の受電装置を同時に充電することが可能である。
【0021】
図2では、制御部201、電源部202、第一送電回路203、第一通信部204、第二送電回路205、第二通信部206、メモリ207、選択部208、及び送電コイル群210がそれぞれ別個のブロックとして記載されているが、これに限定されない。上記のうちの2つ以上のブロックが1つのチップ等によってまとめられてもよい。また、1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよい。
【0022】
図3は、第一受電装置101a及び第二受電装置101bの機能構成を説明するためのブロック図である。本実施形態における第一受電装置101a及び第二受電装置101bは同様の機能構成を有するものとし、特に区別する必要がない場合は、単に受電装置101と表記する。ただし、第一受電装置101aと第二受電装置101bとは、種類の異なるデバイスであってもよい。受電装置101は、制御部301、受電部302、通信部303、メモリ304、受電コイル305、充電部306、及び、バッテリ307を有する。以下、各処理部について説明する。
【0023】
制御部301は、受電装置101全体の制御を行う。制御部301は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、後述の処理を実行するように構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を含んでもよい。制御部301は、送電装置100から所定の電力を受電することにより起動する。
【0024】
受電部302は、送電コイル群210に含まれる任意の1以上の送電コイル209からの送電によって受電コイル305に生じた交流電圧及び交流電流を取得する。また、受電部302は、取得した交流電圧及び交流電流を、制御部301及び充電部306等が動作するための直流電圧及び直流電流に変換する。
【0025】
通信部303は、送電装置100の第一通信部204又は第二通信部206との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送のための制御通信を行う。通信部303は、受電コイル305で受電された交流電圧及び交流電流を負荷変調することにより、通信データを送電装置100に送信する。また、通信部303は、送電装置100により変調された交流電圧及び交流電流を復調することにより、送電装置100から送信される通信データを受信する。
【0026】
充電部306は、受電部302から供給される直流電圧と直流電流を利用して、バッテリ307を充電する。メモリ304は、受電装置101及び無線電力伝送システムの各要素及び全体の状態を記憶する。
【0027】
図3では制御部301、受電部302、通信部303、メモリ304、及び充電部306がそれぞれ別個のブロックとして記載されているが、これに限定されない。上記のうちの2つ以上のブロックが1つのチップ等によってまとめられてもよい。また、1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよい。
【0028】
なお、受電装置101と送電装置100は無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。受電装置101の一例はスマートフォンであり、送電装置100の一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。受電装置101及び送電装置100は、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、受電装置101及び送電装置100は、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、送電装置100がスマートフォンであってもよい。この場合、受電装置101は、別のスマートフォンでもよいし、無線イヤフォンであってもよい。また、送電装置100は、自動車内のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
【0029】
次に、本実施形態における送電装置100が有する送電コイル群210の構成を、
図4を使用して説明する。
図4は、送電コイル群210を上面視した図を表している。すなわち、
図4は、2次元平面であるxy平面上における複数の送電コイル209の配置である。ただし、実際の複数の送電コイル209は、高さ方向を含む3次元空間に配置され得る。なお、
図4が示す複数の送電コイルの配置は一例であり、これに限定されるものではない。また、以下の説明における送電コイル400~411は、送電コイル210を構成する複数の送電コイル209に対応する。
【0030】
図4(a)、(b)は送電コイル群210の一部を上面視した図である。
図4(a)は、送電コイル400~405の6つの円形コイルの配置を示す。送電コイル400、送電コイル401及び送電コイル402は、それぞれ、送電コイルの円周が他の2つのコイルに接するように配置される。同様に、送電コイル403、送電コイル404及び送電コイル405は、それぞれ、送電コイルの円周が他の2つのコイルに接するように配置される。同様に、送電コイル402、送電コイル403及び送電コイル404は、それぞれ、送電コイルの円周が他の2つのコイルに接するように配置される。
【0031】
図4(b)は、送電コイル406~411の6つの円形コイルの配置を示す。
図4(a)が示す送電コイル406~411の配置は、
図4(b)が示す送電コイル400~405の配置を左右反転させた配置に対応する。送電コイル409、送電コイル410及び送電コイル411は、それぞれ、送電コイルの円周が他の2つのコイルに接するように配置される。同様に、送電コイル406、送電コイル407及び送電コイル408は、それぞれ、送電コイルの円周が他の2つのコイルに接するように配置される。同様に、送電コイル408、送電コイル409及び送電コイル411は、それぞれ、送電コイルの円周が他の2つのコイルに接するように配置される。
【0032】
図4(c)は、送電コイル群210全体を上面視した図である。送電コイル群210は
図4(b)に示す送電コイル406~411の上部に、
図4(a)に示す送電コイル400~405を重ねて配置することにより構成される。
【0033】
図4(d)は、送電コイル同士の位置関係を説明するための図である。
図4(d)には、
図4(c)に示す送電コイル群210のうち、送電コイル400、401、410、411が示される。送電コイル400と送電コイル410とは、上面視した場合に重なっている。このような位置関係を有する送電コイルは「重複する」と表現する。同様に、送電コイル401及び送電コイル410は重複する。一方、送電コイル400と送電コイル411とは、上面視した場合に重なっていない。このような位置関係を有する送電コイルは「重複しない」と表現する。また、距離412は、送電コイル400の円周の接線と、送電コイル411の円周の接線との距離である。各接線は、送電コイル400の円の中心と送電コイル411の円の中心とを結ぶ直線と各送電コイルの円周との交点を通る。すなわち、距離412は、送電コイル400と送電コイル411との最短距離であり、送電コイル400と送電コイル411とが距離412だけ離れていることを示す。なお、本実施形態においては、送電コイルどうしの距離の定義として、複数の送電コイルを上面視した場合における送電コイル上の位置どうしの距離であるものとしたが、距離の定義はこれに限定されない。例えば、送電コイルの重心などを基準点とし、送電コイルの基準点どうしの距離を、送電コイルどうしの距離としてもよい。また、
図4(d)における距離412はxy平面上における距離であるが、複数のコイルはz軸方向を含む3次元空間の任意の位置に配置され得る。この場合も同様に、送電コイルどうしの距離は、xyz空間における送電コイルどうしの最短距離であってもよいし、送電コイルどうしの基準点どうしの距離であってもよい。
【0034】
また、送電コイルを円形コイルで説明したが、形状はこれに限られない。送電コイルは例えば四角形の矩形形状を有するコイルであってもよい。
【0035】
図4(e)は、第一送電回路203及び第二送電回路205が送電可能な範囲を説明するための図である。本実施形態における第一送電回路203は、送電コイル400、401、402、403、405、408、409、410、411と接続可能であるものとする。これにより、第一送電回路203は、点線により示される領域413に載置される受電装置101に送電を行うことが可能となる。また、本実施形態における第二送電回路205は、送電コイル402、403、404、405、406、407、408、409、411と接続可能であるものとする。これにより、第二送電回路205は、一点鎖線により示される領域414に載置される受電装置101に送電を行うことが可能となる。
【0036】
領域415は、領域413と領域414とが重複する共通領域である。領域415は、送電コイル402、403、405、408により送電可能な範囲であり、これらの送電コイルは、第一送電回路203と第二送電回路205のいずれとも接続可能である。すなわち、領域415に載置された受電装置101は、第一送電回路203と第二送電回路205とのいずれかから送電される。以下の説明においては、領域415を共用領域415と表現する。また、領域413のうち共用領域415を除いた領域を、第一送電回路203の専用領域416と表現する。専用領域416に載置された受電装置101は、第一送電回路203のみから充電可能である。また、領域414のうち共用領域415を除いた領域を、第二送電回路205の専用領域417と表現する。領域417に載置された受電装置101は、第二送電回路205のみから充電可能である。
【0037】
次に、本実施形態における送電装置100と受電装置101との制御の流れについて説明する。まず、WPC規格に準拠した無線電力伝送の制御について説明する。
図5は、WPC規格v1.2.3に準拠した送電装置及び受電装置の制御の流れを示すシーケンス図である。
図5に示すシーケンスは、本実施形態のように複数の送電コイル及び複数の送電回路を有する送電装置100に限らず、WPC規格に適合する構成を有する送電装置により実行される制御である。以下の説明では、送電装置100が任意の送電コイル209を使用して受電装置101に送電を行うものとして説明する。なお、以下では、送電装置や受電装置がWPC規格v1.2.3に準拠する場合について説明するが、これに限られない。つまり、本開示の送電装置や受電装置は、WPC規格v1.2.3以降のバージョンのWPC規格に準拠していてもよいし、WPC規格v1.2.3より前のバージョンに準拠していてもよい。
【0038】
WPC規格では、充電用の送電が実行されるPower Transferフェーズと、充電用の送電が行われる前のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定される。電力伝送が行われる前のフェーズは、(1)Selectionフェーズ、(2)Pingフェーズ、(3)Identification&Configurationフェーズ、(4)Negotiationフェーズ、(5)Calibrationフェーズを含む。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0039】
Selectionフェーズにおいて、送電装置100は、送電コイル209の近傍に存在する物体を検出する為にAnalog Ping(以下、A-Pingという)を送電する(F500)。なお、本実施形態のA-Pingの制御方法については後述する。A―Pingはパルス状の電力で、物体を検出するための電力である。また、受電装置がA―Pingを受電したとしても、受電装置101の制御部301を起動することができないほど微小な電力である。送電装置100は、A―Pingを間欠的に送電する。ここで、送電装置100の送電可能範囲に物体が載置される場合と、物体が載置されていない場合とでは、送電コイル209に印加される電圧や電流に変化が生じる。そこで、送電装置100の制御部201は、A―Pingを送信した時の送電コイル209の電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出する。制御部201は、検出した電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判定し、Pingフェーズに遷移する。
【0040】
Pingフェーズにおいて、送電装置100は、A―Pingにより物体が載置されたことを検出すると、送電コイル209のQ値(Quality Factor)を測定する(F501)。送電装置100は、Q値測定が終了すると、Digital Ping(以下、D-Pingという)の送電を開始する(F502)。D―Pingは受電装置101の制御部301を起動させるための電力で、A―Pingよりも大きい電力である。以降、送電装置100は、D―Pingの送電を開始してから(F502)、受電装置101から送電停止を要求するEPT(End Power Transfer)パケットを受信するまで(F522)、D―Ping以上の電力を送電し続ける。受電装置101の制御部301は、D―Pingを受電して起動すると、受電したD―Pingの電圧値を格納したデータであるSignal Strengthパケットを送電装置100に送信する(F503)。送電装置100は、D-Pingを受信した送電装置101からSignal Strengthパケットを受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体が受電装置であることを認識する。送電装置100は、Signal Strengthパケットを受信すると、I&Cフェーズに遷移する。
【0041】
I&Cフェーズにおいて、受電装置101は、受電装置101が準拠しているWPC規格のバージョン情報やデバイス識別情報を含むIDを格納したデータを送信する(F504)。また、受電装置101は、受電部302が負荷(充電部306)へ供給する電力の最大値を示す情報等を含むConfigurationパケットを送電装置100に送信する(F505)。送電装置100は、ID及びConfigurationパケットを受信することによって、受電装置101が自身の準拠するWPC規格に対応するバージョンであるかを判定し、ACKを送信する。具体的には、送電装置100は、受電装置101がWPC規格 v1.2以降の拡張プロトコル(後述するNegotiationフェーズにおける処理を含む)に対応していると判定すると、ACKで応答する(F506)。受電装置101はACKを受信すると、送受電する電力の交渉などを行うNegotiationフェーズに遷移する。
【0042】
Negotiationフェーズにおいて、受電装置101は、送電装置100に対してFOD Statusデータを送信する(F507)。本実施形態では当該FOD StatusデータをFOD(Q)と表現する。送電装置100は、受信したFOD(Q)に格納されているQ値とQ値測定で測定したQ値に基づいて異物検出を行い、異物がない可能性が高いと判定したことを示すACKを受電装置に送信する(F508)。
【0043】
受電装置はACKを受信すると、送電装置100の能力を問い合わせるデータであり、WPC規格で規定されているGeneral Requestの1つであるGeneral Request(Capabiliy)パケットを送信する(F535)。以降、General Request(Capabiliy)パケットをGRQ(CAP)パケットと表現する。送電装置100はGRQ(CAP)パケットを受信すると、自身が対応している能力情報を格納したCapabilityパケット(以下、CAPという)を送信する(F536)。
【0044】
受電装置101は、受電を要求する電力値の最大値であるGuaranteed Power(以下、GPという)の交渉を行う。具体的には、Guaranteed Powerは、送電装置100との交渉で合意された、受電装置101が利用可能な電力量を表す。すなわち、GPは、受電装置101の負荷に供給するために使用することができる電力(充電部306が消費する電力)の最大値である。交渉は、WPC規格で規定されているSpecific Requestパケットの内、受電装置が要求するGuaranteed Powerの値を格納したパケットを送電装置100に送信することにより実現される(F509)。本実施形態では当該データをSRQ(GP)パケットと表現する。
【0045】
送電装置100は自身の送電能力等を考慮して、SRQ(GP)パケットに応答する。送電装置100は、Guaranteed Powerを受け入れられると判定した場合、当該要求を受入れたことを示すACKを送信する(F510)。受電装置101は、Guaranteed Powerを含む複数のパラメータの交渉が終了すると、Specific Requestの内、交渉の終了(End Negotiation)を要求するSRQ(EN)を送電装置に送信する(F511)。送電装置100は、SRQ(EN)パケットに対してACKを送信し(F512)、Negotiationを終了し、パワーロス手法に基づく異物検出を実施するための基準を作成するCalibrationフェーズに遷移する。なお、異物検出とは、送電装置100の送電可能範囲内に、受電装置とは異なる物体(以下、異物という)が存在する、又は、異物が存在する可能性があるか否かを判定する処理である。
【0046】
Calibrationフェーズにおいて、受電装置101は、受電部302と負荷(バッテリ307)とを接続しない状態で、受電装置101がD―Pingを受電したときの受電電力値R1を送電装置100に通知する。このとき、受電装置100は、受電電力値R1を格納したReceived Powerパケット(mode1)(以下、PR1という)を送電装置100に送信する。送電装置100は、RP1を受信すると、ACKを受電装置101に送信する(F514)。この時送電装置100は、自身の送電電力値T1を計測し、パワーロスであるT1とR1の差分Δ1を計算する。受電装置101は、ACKを受信後、受電部302と負荷とを接続した状態で、送電装置100に対して受電電圧の増減を送電装置100に要求するControl Errorパケット(以後、CEと表現する)を送電装置100に送信する。CEには符号及び数値が格納され、CEに格納される数値の符号がプラスであれば受電電圧を上げることを、マイナスであれば受電電圧を下げることを、数値がゼロであれば受電電圧を維持することを要求することを意味する。ここでは受電装置は、受電電圧を上げることを示すCE(+)を送電装置100に送信する(F515)。
【0047】
送電装置100はCE(+)を受信すると、送電回路の設定値を変更し送電電圧を上げる(F516)。受電装置100は、CE(+)に応答して受電電力が上昇すると、受電した電力を負荷である充電部306に供給し、RP2(Received Powerパケット(mode2)(以下、RP2という)を送電装置100に送信する(F517)。ここでRP2には、受電装置101が受電部302の出力を負荷(バッテリ307)に供給した状態における受電電力値R2が格納されている。
【0048】
送電装置100は、RP2を受信すると、ACKを受電装置に送信する(F514)。この時送電装置100は、自身の送電電力値T2を計測し、パワーロスであるT2とR2の差分Δ2を計算する。送電装置100は、受電部302と負荷を接続せず負荷の消費電力が0である場合のパワーロスΔ1と、受電部302と負荷を接続し負荷の消費電力が0でない場合のパワーロスΔ2を基準として、パワーロスに基づく異物検出を行う。具体的には、送電装置100はΔ1とΔ2から任意の受電電力値において異物がない状態におけるパワーロスを予測し、実際に受信した受電電力値と送電電力値に基づいて異物検出を行うことができる。送電装置100はRP2に対してACKを送信すると、Power Transferフェーズに遷移する。
【0049】
Power Transferフェーズにおいて、送電装置100は、受電装置がNegotiationフェーズで交渉した最大15ワットを受電可能な電力を送電する。受電装置101は、送電装置100に対して、CE及び現在の受電電力値を格納したRP0(Received Powerパケット(mode0)(以下、RP0という)を送電装置100に定期的に送信する(F519、F520)。送電装置100は、受電装置からRP0を受信すると、前記Δ1とΔ2から任意の受電電力におけるパワーロスを予測し異物検出を行う。送電装置100は、異物検出の結果、異物がない可能性が高いと判定した場合、ACKを受電装置に送信する(F521)。ここで、異物がある可能性が高いと判定した場合は、送電装置100はNAKを受電装置に送信する。
【0050】
受電装置101は、バッテリ307への充電が終了すると、送電装置100に対して送電を停止することを要求するEPT(End Power Transfer)パケットを送信する(F522)。以上がWPC規格v1.2.3に準拠した送電装置100及び受電装置の制御の流れである。
【0051】
次に、WPC規格に基づき、複数の送電コイル209を有する送電装置100が送電を行う際の制御の例を、
図6を使用して説明する。本実施形態における送電装置100が有する第一送電回路203及び第二送電回路205は、それぞれが
図5に示す処理を行うことができる。なお、
図6では説明の簡略のためいくつかの処理の記載を省略しているが、実際は
図5に示す処理と同様の処理が実行されるものとする。
【0052】
まず、第一送電回路203及び第二送電回路205は、それぞれ、自身が接続された送電コイル209を使用して、送電装置100の送電可能範囲に載置される受電装置を検出するためのA-Pingを間欠的に送電する(F541)。本実施形態のA-Pingの制御方法については後述する。ここで、第一送電回路203が接続される送電コイル209の近傍に、第一受電装置101aが載置されると、第一受電装置203は、第一受電装置101aに対してD-Pingを送電する(F542、543)。また、第一送電回路203は、上述した制御通信を行い、Power Transferフェーズに遷移して第一受電装置101aに充電用の送電を行う(F544)。このとき、第二送電回路205は、A-Pingを送電し続けるものとする(F545)。
【0053】
そして、第二送電回路205が接続される送電コイル209の近傍に、第二受電装置101bが載置されると、第二受電装置205は、第二受電装置101bに対してD-Pingを送電する(546)。また、第二送電回路205は、上述した制御通信を行い、Power Transferフェーズに遷移して第二受電装置101bに充電用の送電を行う(F547)。以上説明した処理により、送電装置100は、複数の受電装置に対して同時に充電を行うことができる。
【0054】
[送電装置における処理]
本実施形態において解決すべき課題について説明する。第一送電回路203及び第二送電回路205が、それぞれ制御通信及び送電を行う場合に、一方の送電回路に接続される送電コイルが送電する電力が、他方の送電回路に接続される送電コイルの電力に重畳されることがある。この現象を本実施形態では干渉と表現する。干渉する、干渉しない、の定義について説明する。2つの送電コイルは「干渉しない」場合は以下の通りである。すなわち、2つの送電コイルの一方で送受信される変調信号の電圧・電流振幅変動又は周波数変動量が他方の送電コイルで観測されない場合、又は観測されるレベルが所定値以下であり他方の変調信号を通信部が復調する際の復調性能に影響を与えない場合である。また、2つの送電コイルは「干渉する」場合は以下の通りである。すなわち、2つの送電コイルの一方で送受信される変調信号の電圧・電流振幅変動又は周波数変動が他方の送電コイルで観測される場合、又は観測されるレベルが所定値より大きく他方の変調信号を通信部が復調する際の復調性能に影響を与える場合である。
【0055】
また、電磁的に結合された(つまり、結合係数がゼロでない)2つの送電コイルのうち一方の送電コイルに印加される高周波電圧または高周波電流に基づいて、干渉の有無を表現してもよい。すなわち、一方の送電コイルに印加される高周波電圧又は高周波電流の変動が、他方の送電コイルに誘起されない、又は誘起されるレベルが所定値以下である場合は「干渉しない」とし、そうでない場合は「干渉する」としてもよい。
【0056】
上述した干渉は、例えば、第一送電回路203及び第二送電回路205が同時に制御通信あるいは送電を行う場合に発生しうる。干渉を発生させないためには、例えば第一送電回路203及び第二送電回路205が制御通信あるいは送電を行うタイミングをずらす方法でもよい。以下では、干渉を生じさせないように、複数の送電コイルを使用してA-Pingを出力して物体検出を行う方法について説明する。この方法によれば、異なる位置の送電コイルからA-Pingを同時に出力するため、短時間で効率よく物体を検出することができる。
【0057】
干渉の度合いは、2つの送電コイルの位置関係によって異なる。本実施形態では、2つの送電コイルが所定の距離D以上離れていれば2つの送電コイルは干渉しないものとする。今、
図4(d)に示す送電コイル400と送電コイル411との距離412は、Dであるものとする。この場合、送電コイル400と送電コイル411は干渉しない送電コイルと言える。また、送電コイル400と送電コイル410、送電コイル401と送電コイル410はそれぞれ重複しており、それぞれ距離D以上離れていないので、互いに干渉する送電コイルと言える。
【0058】
なお、所定の距離Dは、例えば、干渉が発生しない送電コイル同士の距離を測定することにより、予め設定されるものとする。例えば、複数の送電コイルのうち所定の送電コイルに電圧又は電流を印加し、このときの他の送電コイルにおける電圧又は電流の変動を測定する。この測定により、変動が発生しない、又は変動が所定の量以下である送電コイルを特定し、所定の送電コイルとの距離を測定すれば、干渉が発生しない距離Dを取得することができる。また、例えば、複数の送電コイルのうち所定の送電コイルに印加した電圧又は電流の振幅又は周波数を変動させ、このときの他の送電コイルにおける電圧又は電流の振幅又は周波数の変動を測定する。この測定により、変動が発生しない、又は変動が所定の量以下である送電コイルを特定し、所定の送電コイルとの距離を測定すれば、干渉が発生しない距離Dを取得することができる。干渉の有無の判定に使用される所定値、及び、所定の距離Dは、WPC規格で規定されてもよい。
【0059】
なお、干渉が発生しない所定の距離Dは、送電コイルどうしの距離の定義によって異なる値となりうる。例えば、送電コイルどうしの距離が、送電コイルの基準点(例えば、重心等)どうしの距離である場合と、送電コイルどうしの最短距離である場合とでは、所定の距離Dは異なる値となりうる。また、
図4のように2次元平面上に配置されるだけでなく、3次元空間に(例えば、高さ方向に)配置される場合もありうる。本実施形態は、いずれの条件においても、同様の方法によって干渉の発生しない所定の距離Dを取得し、後述する制御を実施することができる。
【0060】
上述したように、所定の位置関係にある送電コイルから同時に送電が行われることにより、送電コイルが互いに干渉し、それぞれの送電コイルの送電や制御通信に影響を及ぼす場合がある。したがって、本実施形態における送電装置100は、第一送電回路203及び第二送電回路205に接続する送電コイルを選択する際に、互いに干渉しないような、所定の距離D以上離れた位置にある送電コイルを選択するように動作する。これにより、複数の送電コイルを使用した送電においても、適切な送電を行うことができるようになる。
【0061】
なお、本開示において、具体的な所定の距離Dを決めない方法を用いることも可能である。具体的には、ある送電コイルへの送電によって干渉が生じる他の送電コイルが特定されていればよい。つまり、ある送電コイルへの送電に伴い、干渉する他の送電コイル、あるいは干渉しない他の送電コイルを予め特定し、その特定した結果を保持するようにしてもよい。この特定の結果を基に、ある送電コイルを選択する際に、干渉しないと特定した送電コイルを選択する。選択されたそれらの送電コイルを用いて動作させればよい。
【0062】
図7は、本実施形態における送電装置100により実行される処理を説明するためのフローチャートである。また、
図8は本実施形態における送電装置100により実行される処理を示すフシーケンス図である。
図7に示すフローチャート及び
図8に示すシーケンス図は、送電装置100の制御部201がメモリ207に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算及び加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現され得る。
【0063】
送電装置100の電源をONにすると(S601)、制御部201は、送電コイル群210の中から、第一送電回路203及び第二送電回路205に接続する送電コイルを選択する処理を行う。このとき、送電装置100がすでに充電のための送電処理を実施中か否かによって処理が変わる(S602)。ここでは、送電装置100は電源ON直後であることから、送電処理は実施されていないとし、S603へ処理を進める。制御部201は、第一送電回路203、第二送電回路205が同時に使用しても干渉が発生しないコイルを選択する。
【0064】
ここで干渉が発生しないコイルの選択方法について説明する。
図4(d)を用いて説明したように、2つの送電コイルが距離D以上離れていれば、コイル間の干渉は発生しない。制御部201は、
図4(d)に示す送電コイル400と送電コイル411のように、互いに距離D以上離れている送電コイルの組み合わせを決定する。一例として、制御部201は、
図4(c)に示す送電コイル群210において干渉が発生しない送電コイルの組み合わせを(400、411)、(401、409)、(402、404)、(403、407)、(405、406)、(408、410)とする。なおこの組み合わせ例は一例にすぎず、他の組み合わせが決定されてもよい。選択部208は、制御部201が決定した組み合わせに従い、干渉しない位置関係の2つの送電コイルを、それぞれ第一送電回路203及び第二送電回路205に接続する(S603)。
【0065】
送電装置100は、受電装置が送電装置100に載置されるのを待つ(S605)。
図8を用いて、A-Pingの制御について、詳しく説明する。選択部208は、決定された送電コイルの組み合わせに基づき、まず、第一送電回路203とコイル400、第二送電回路205とコイル411とを接続する。また、制御部201は、コイル400とコイル411とからA-Pingを同時に出力することにより、物体の検出処理を行う(F701)。送電コイル400と送電コイル411とは、互いに干渉しない位置関係であるので、第一送電回路203及び第二送電回路205が同時にA-Pingを送電するように制御しても、送電コイルどうしの干渉は発生しない。なお、2つの送電コイルそれぞれからA-Pingが出力されるタイミングや期間が一致していてもいいし、一致していなくてもよい。2つの送電コイルそれぞれからA-Pingが出力される期間どうしが少なくとも一部の期間で重なっていればよい。なお、干渉を発生させないためには、複数の送電コイルそれぞれからA-Pingが出力される期間が重ならないようにする方法を用いてもよい。
【0066】
ここで受電装置が検出されなかった場合は、選択部208は次に、第一送電回路203とコイル401、第二送電回路205とコイル409とを接続して、受電装置の検出処理を行う。このように、送電装置100は、受電装置が検出されるまで、決定したコイルの組み合わせに基づいて第一送電回路203及び第二送電回路205それぞれと送電コイルとを接続し、物体の検出処理を行う。
【0067】
F702において、送電装置100の上に受電装置が載置された場合、その時点でA-Pingを送信している送電装置100のコイル400における電圧又は電流の変化が検出される。そして送電装置100は、上述したPingフェーズにおけるD-Pingを送電する。そして、Pingフェーズにおける通信により、送電装置100は、その物体が受電装置101であると特定する。こうして、受電装置101が検出される(F703)。
【0068】
図7に戻り、送電装置100の制御部201は、受電装置が載置されたことを検出すると(S506でYes)、第一送電回路203はWPC規格で規定された複数のフェーズを経て送電処理を実施する(S606)。ここでは、送電装置100は、第一送電回路203に接続された送電コイル400を介して、受電装置101の載置を検出したとする。送電装置100は、受電装置を検出した送電コイル400を使用して、充電用の送電を行う。制御部201は、送電コイル群210において送電処理に使用される送電コイル(ここでは、送電コイル400)と干渉を起こすコイルの使用を禁止とする。具体的には、
図4(c)にて、送電コイル400と距離D以上離れていない送電コイルは(401、402、409、410)である。よってこれらのコイルは送電コイル400が使用中は使用禁止とする(S607)。
【0069】
一方、第二送電回路205は受電装置の載置を検出していないので(S608でNo)、S602以降の処理を再度行うことにより、コイル群210から送電コイルを選択して受電装置の載置を検出する。すでに第一送電回路203が送電処理実施中であるため(S602でYes)、第二送電回路205は、コイル群210から、使用禁止とした送電コイル以外の送電コイルを選択して、受電装置の載置を検出するまで検出処理を行う(S610)。すなわち、第二送電回路205は、第一送電回路203が充電用の送電に使用している送電コイル400と干渉しない位置関係を有する送電コイルを使用して、新たに載置される受電装置を検出する。
【0070】
図8を用いて詳しく説明する。送電装置100は、送電コイル400で受電装置が載置されたことを検出すると、(F703)、送電コイル400を使用して充電用の送電を開始する(F704)。また、送電装置100は、送電コイル400と干渉する送電コイルの使用を禁止する(F705)。送電装置100は、使用禁止された送電コイル以外の送電コイルと第二送電回路205とを順に接続し、受電装置の検出のためのA-Pingの送電を実行する(F706)。
【0071】
図7に戻り、第二送電回路205が受電装置を検出した場合は、前記したWPC規格で規定された複数のフェーズを経て送電処理を実施する(S606)。送電装置100は、全ての送電回路が充電用の送電を行っている場合(S608でYes)、送電のための制御処理を終了する。なお、受電装置からEPTパケットを受信するなどして送電処理を終了した送電回路は、再度S602以降の処理を実行し、新たな受電装置の検出及び送電を行う。
図7に示す処理は、送電装置100の電源がOFFになるまで繰り返し行われるものとする。
【0072】
以上説明したように、本実施形態における送電装置100は、複数の送電コイルのうち、互いに所定の距離離れた位置よりも近い位置に配置される2つの送電コイルからは同時にA-Pingが出力されないように制御する。本実施形態によれば、複数の送電コイルが隙間なく敷き詰められた構成であっても、送電コイルどうしの干渉を発生させないようにしつつ、効率よく送電の制御を行うことが可能となる。これにより、送電装置100は、送電装置100上の任意の場所に複数の受電装置が載置されても、適切に検出及び送電を行うことができる。
【0073】
なお、充電用の送電には、物体(受電装置)を検出した送電コイルを用いて行う例を説明したが、本開示はこれに限られない。効率的な送電を行うために、物体(受電装置)を検出した送電コイルとは異なるコイルを用いて充電用の送電を行うようにしてもよい。その場合、充電用に用いられる送電回路とは異なる送電回路は、充電用の送電を行う送電コイルと干渉しない送電コイルを用いて、A-Pingを送信するようにする。つまり、充電用の送電に用いられる送電コイルと干渉しない送電コイルを特定し、その送電コイルを用いてA-Pingを送信するようにすればよい。
【0074】
また、本実施形態においては、送電回路が2つである例について説明したが、本実施形態で説明した方法は、送電回路が3つ以上の場合においても適用可能である。例えば、送電装置100が、第一送電回路203及び第二送電回路205の他に、不図示の第三送電回路の3つの送電回路を有する場合は、送電装置100は以下のような処理を行う。すなわち、送電装置100の制御部201は、それぞれの送電回路を使用して物体検出のための信号を出力させる場合に、各送電回路に接続される3つの送電コイル209として互いに所定の距離D以上離れた位置に配置されたものが使用されるようにする。
図4(c)に示す送電コイル群210の例においては、例えば、3つの送電コイルとして送電コイル400、403、411が選択される。この3つの送電コイルは、それぞれが互いに距離D以上離れているため、同時にA-Pingを送電しても干渉が発生しない。このように各送電回路に接続する送電コイル209を選択することにより、送電装置100は、3つの送電コイル209からA-Pingを出力しても、互いに干渉が発生しないようにすることができる。送電回路が4つ以上の場合も同様である。
【0075】
(実施形態2)
上述した実施形態1においては、第一送電回路203及び第二送電回路205の送電能力は同じでもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、送電装置が有する複数の送電回路の送電能力が異なる場合の制御について説明する。送電能力の異なる複数の送電回路を有する送電装置を使用して受電装置に送電を行う場合、以下のような問題が発生しうる。例えば、受電装置が送電装置上に載置された場合に、受電装置が受電可能な電力を十分に送電することができない(送電能力が低い)送電回路により送電処理が行われる場合がある。これにより、受電装置の充電が効率よく行われないという問題がある。このように、送電能力の異なる送電回路を有する送電装置を使用して受電装置に送電を行う際に、適切な送電がされない場合がある。
【0076】
本実施形態では、送電回路の送電能力と、受電装置の受電能力を基に、いずれの送電回路を送電に使用するかを判定することにより、受電装置に対して十分な電力を供給することができるようにする方法について説明する。本実施形態において、実施形態1と同様の構成については、同じ名称及び符号を使用する。
【0077】
[送電装置における処理]
以下、送電装置100が実行する処理について、
図9、10を用いて説明する。
図9(a)の処理は、
図5に示す処理に、本実施形態において説明する送電回路の切替え処理を加えたものである。F505において、送電装置100は、受電装置101からConfigurationパケットを取得すると、取得したパケットから受電装置101の受電能力を取得する。ここでいう受電能力とは、受電装置101の受電部302が負荷(充電部306)へ供給する電力の最大値等に基づく、受電装置101が受電可能な電力であり、具体的には、WPC規格におけるMaximum Powerに相当する電力に相当する電力である。送電装置100は、受電装置を充電するために自身が送電可能な最大電力(送電能力)と、取得した受電装置101の受電能力とに基づいて、切替え処理を実行する(F826)。この切替え処理は、Power Transferフェーズに遷移する前に実行されてもよい。
【0078】
図10は、本実施形態による送電装置の送電回路切り替え処理の処理フローである。
図10に示す処理は、
図9のF826において行われる。今、送電装置100は、第一送電回路203により受電装置101を検出し、受電装置101からConfigurationパケットを取得したものとする。まず、送電装置100は、受電装置と制御通信を行っている第一送電回路203よりも送電能力の高い他の送電回路が送電に使用可能かを判定する(S901)。つまり、送電装置100は、第一送電回路203よりも送電能力が高く、且つまだ他の受電装置に対して送電を行っていない送電回路が存在するかを判定する。ここで、第二送電回路205は第一送電回路203よりも送電能力が高く、且つ送電を行っていないものとする。なお、受電装置と制御通信を行っている送電回路が第二送電回路の場合、そもそも第二送電回路よりも送電能力の高い送電回路が存在しないので、S901の判定においては、Noとなる。
【0079】
該当する送電回路が送電に使用可能である場合(S901でYes)、送電装置100は、現在受電装置と制御通信を行っている送電回路の送電能力が、受電装置の受電能力より低いか否かを判定する(S902)。ここでは、Configurationパケットに含まれるMaximus Powerを満たす送電を送電装置100が行うことができない場合に、受電能力よりも送電能力が低いものとする。送電能力が受電能力より低い場合(S902でYes)、送電装置100は、受電装置101と制御通信を行っている第一送電回路203を、より送電能力の高い他の送電回路に切り替える(S903)。ここでは、送電装置100は、選択部208を使用して、受電装置101と制御通信を行う送電コイルの接続を、第一送電回路203から第二送電回路205に切り替える。一方、送電能力が受電能力よりも高い場合(S902でNo)、処理を終了する。
【0080】
また、S901において該当する他の送電回路が存在しない場合(S901でNo)についても説明する。S901においてNo場合、送電装置100は、送電能力がより低い他の送電回路を有し、且つ当該他の送電回路が使用可能か否かを判定する(S906)。送電能力がより低い他の送電回路が使用可能である場合(S906においてYes)、S904へ処理を進める。一方、送電能力のより低い他の送電回路が使用可能でない場合は、送電回路の切り替えをせずに処理を終了する。送電装置100は、送電能力がより低い他の送電回路の送電能力が、受電装置の受電能力以上であるか否かを判定する(S904)。すなわち、送電装置100は、他の送電回路の送電可能な最大電力が、受電装置が受電可能な電力以上であるか否かを判定する。他の送電回路の送電能力が受電能力以上である場合、第一送電装置100は、受電装置と制御通信を行っている送電コイルの接続を、より送電能力の低い他の送電回路に切り替える(S905)。受電能力より低い場合、処理を終了する。ここで説明した処理を行うことにより、後述するような2台目の受電装置が載置された場合に、2台目の受電装置に対して十分な電力を送電することができるようになり、送電装置100の送電能力を有効に活用することができるという効果がある。
【0081】
ここで、具体例を用いて本実施形態の送電装置の処理を説明する。今、第一送電回路の送電能力15w、第二送電回路の送電能力60wである送電装置100に受電能力が60wである第一受電装置101aが置かれた場合について、受電装置に対して十分な電力を供給する方法について説明する。送電装置100は、
図9(a)のF500において、第一送電回路203を介してA-Pingを送る。第一受電装置101aが載置されると、第一送電装置100と第一受電装置101aはシーケンスF509からF506までを実行する。ここで、第一送電装置100はF505において、Configurationパケットに含まれる最大の受電電力の値により、第一受電装置101aの受電能力は60wであることを知ることができる。送電装置100は、第一送電回路203を介して送電を行っているため、第一受電装置101aに対して十分な電力を供給することができない。そこで、第一送電装置100は送電回路切り替え処理F826を行う。送電装置100は、
図10のS901において、送電能力が60wである第二送電回路205が存在するので、処理をS902に進める。続いて、送電装置100はS902において、現在送電を行っている第一送電回路203の送電能力が受電装置の受電能力である60w以下であるため、処理をS903に進める。送電装置100はS903において、送電を停止し第一受電装置101aに送電を行う送電回路を第二送電回路205に切り替える。送電装置100は、第二送電回路205を使用して、F507以降の処理を行う。また、第一送電回路203は受電装置と通信を行っていないので、新たな受電装置を検出するためのA-Pingを送電する。このように、複数の能力の異なる送電回路を持つ送電装置において、受電装置の受電能力と送電回路の送電能力を基に、受電装置に送電を行う送電回路を切り替えることで、受電装置に対して十分な電力を供給することが可能になる。
【0082】
図9(b)は、各送電回路の動作、及び、2台目の受電装置が載置された場合の処理を説明するためのシーケンス図である。
図9に示す処理において、
図5及び
図9(a)に示す処理と同様の処理については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図9(b)において、第一送電回路203が受電装置101aの載置を検出すると(F542)、第一送電回路203は受電装置101aにD-Pingを送電し、制御通信を行う(F543)。第一送電回路203は、第一受電装置101aからConfigurationパケットを取得すると(F505)、第一受電装置101aにACKを送信し(F506)、
図10に示す送電回路の切替え処理を行う(F826)。これにより、以降の処理は第二送電回路205により行われる。
【0083】
第二送電回路205は、
図9(a)のF507以降の処理を行い、第一受電装置101aに充電用の送電を行う(F827)。なお、送電装置100は、第一送電回路203を介して第一受電装置101aに関する情報をすでに取得しているので、第二送電回路205は再度Configurationパケット等の情報を取得することなく送電の処理を行うことができる。一方、第一送電回路203は、新たな受電装置の載置を検出するため、A-Pingの送電を行う(F828)。ここで、第一送電回路203は、新たに第二受電装置101bが載置されたことを検出すると、第二受電装置101bにD-Pingを送信して制御通信を行い(F829)、充電用の送電を開始する(F830)。
【0084】
ここで、
図9(b)の処理の具体例について説明する。今、第一送電回路の送電能力15w、第二送電回路の送電能力5wである送電装置100に、受電能力が5wである第一受電装置101aが置かれた後、受電能力が15wである受電装置が置かれたものとする。第一送電装置100は、F541において、第一送電回路203を介してA-Pingを送る。第一受電装置101aが載置されると、第一送電装置100はF506において第一受電装置101aからConfigurationパケットを取得し、第一受電装置101aの受電能力は5wであることを知ることができる。第一送電装置100は
図10に示す送電回路切り替え処理を行う(F826)。送電装置はS901において、制御通信を行っている送電回路高い送電能力を持つ他の送電回路が存在しないので、処理をS906に進める。S906において、送電装置100は、制御通信を行っている送電回路よりも送電能力の低い他の送電回路(第二送電回路205)が使用可能であるので、S904へ処理を進める。続いて、送電装置100はS904において、他の送電回路の送電能力が、受電装置の受電能力以上であるため、処理をS905に進める。送電装置はS905において、第一受電装置101aに送電を行う送電回路を第二送電回路205に切り替える。
【0085】
第一送電装置100は、F828において、第一送電回路203を介してA-Pingを送る。その後、受電能力が15wである第二受電装置101bが載置されると、第二受電装置101bに対してD-Pingを送信し(F829)、充電用の送電を開始する(F830)。ここで、第二送電回路205は、
図9(b)には不図示であるが、F828の後に第二受電装置101bからConfigurationパケットを取得し、同様に切替え処理を行うものとする。ただし、送電装置100はすでに第一送電回路203による送電が行われ、第二送電回路205以外に使用可能な送電回路が存在しないことを把握しているため、切替え処理を省略してもよい。
【0086】
上述した処理により、送電装置100は新たに載置された第二受電装置101bに対して十分な電力を供給することができる。このように、複数の能力の異なる送電回路を持つ送電装置において、受電装置の受電能力と送電回路の送電能力を基に、受電装置に送電を行う送電回路を切り替えることで、十分な電力を供給することが可能になる。本実施形態では、送電回路の切り替えを、送電が停止しないように選択部208を用いて送電回路を切り替えたが、他の方法でもよい。例えば、送電装置100は第一受電装置101aにEPTを送信し、送電を停止した後、選択部208を用いて送電回路を切り替え、A-Pingから処理を再開する。これにより、瞬時に送電回路を切り替えることのできない送電装置においても、受電装置に対して十分な電力を供給することができるようになる。また、送電装置100は、受電装置からConfigurationパケットを受信した場合に、ACKで応答する前に切り替え処理を行ってもよい。
【0087】
なお、本実施形態では、I&Cフェーズにおいて送電装置100が取得するConfigurationパケットに含まれる情報に基づいて、送電回路の切り替えの判定を行うものとしたが、これに限定されない。送電装置100は、例えば、Negotiationフェーズにおいて受電装置101から取得されるGPの情報に基づいて、送電回路の切り替えの判定を行う構成であってもよい。送電装置100は、送電回路が送電可能な電力と、受電装置101から取得されるSRQ(GP)パケットに含まれるGPにより表される電力とを比較し、送電回路の切り替え判定を行う。送電装置100は、GPに相当する電力を送電することができない場合は、送電能力がより高い送電回路に切り替える(
図10のS902でYes、S903)。また、送電回路100は、送電能力がより低い他の送電回路が送電可能な電力がGPよりも大きい場合は、送電能力がより低い他の送電回路に切り替える(
図10のS904でYes、S905)。この場合、
図9(a)のシーケンスにおいて、送電装置100はF511でSRQ(GP)パケットを取得した後、又はF512でSRQ(GP)パケットに対する応答としてACKを送信した後に切り替え処理を行う。
【0088】
また、送電装置100は、送電中にGPが変更された場合に、変更されたGPを基に送電回路切り替え処理を行ってもよい。送電装置100及び受電装置101は、再交渉(Renegotiation)を行うことにより、GPを変更可能な構成とすることができる。この場合に、送電装置100は、再交渉によって決定したGPに相当する電力が送電できない場合は、より高い送電能力を有する送電回路に切り替える。これにより、送電中の送電回路では十分な電力を供給できない場合に、送電回路を切り替えることで十分な電力を供給することができるようになる。また、送電装置100は、送電能力の低い他の送電回路が送電可能な電力が、再交渉によって決定したGPに相当する電力よりも大きい場合、より低い送電能力を有する他の送電回路に切り替える。これにより、新たな受電装置が載置された場合に、新たな受電装置に対して送電能力の高い送電回路を使用した送電を行うことができる。この結果、送電装置100は送電回路の送電能力を有効に活用することができる。
【0089】
また、送電装置100は、I&Cフェーズにおいて送電に使用する送電回路を決定したのち、さらにNegotiationフェーズにおいて取得したSRQパケットに含まれる情報に基づいて送電回路を切り替えてもよい。また、送電装置100は、さらに再交渉(Renegotiation)において取得される情報に基づいて送電回路を切り替えてもよい。
【0090】
また、受電装置の受電能力は、最大の受電電力の値やGPとしたが、これに限らない。例えば、受電装置の識別番号、受電装置の種別を特定可能な情報、及び、WPCのバージョンの情報等を基に、受電装置の受電能力を取得し、送電回路切り替え処理を行ってもよい。例えば、送電装置は、受電装置の識別番号に基づいて、過去に送電したことのある受電装置であることを特定し、過去の送電記録に従って使用する送電回路を決定することができる。また例えば、送電装置は、受電装置の種別を特定し、受電装置がスマートフォンである場合とPCである場合とで送電装置を切り替えることができる。なお、ここで述べた受電装置の種別は一例であり、上記以外の種別の受電装置であってもよい。また、受電装置から取得される上述したような情報のうち任意の数の情報に基づいて、切替え処理が行われる構成であってもよい。
【0091】
また、本実施形態で説明した方法は、
図2及び
図4に示すような複数の送電コイルを有する送電装置でなくても適用可能である。すなわち、本実施形態は、送電能力の異なる複数の送電回路を有する送電装置に適用可能である。例えば、一つの送電コイルに対して、送電能力の異なる複数の送電回路を接続可能な送電装置であってもよい。また、本実施形態の方法は、少なくとも送電能力の異なる2つの送電回路を含む複数の送電回路を有する送電装置に適用可能である。例えば、2つ以上の送電回路を有する送電装置においても、
図10に示す処理を適用することにより、適切な送電回路を使用した送電を行うことができる。
【0092】
(実施形態3)
本実施形態では、複数の送電回路を有する送電装置が、1台以上の受電装置に対して送電中に別の受電装置を検出する場合を考える。この時、受電装置に対して送電中に、別の受電装置を検出するために定常的に各送電コイルからA-Pingを送信した場合、放射ノイズが増大し、周辺の機器(既存の送電)に悪影響を与えてしまうという課題がある。また、複数の送電コイルからA-Pingを送電し続けるため、別の受電装置が載置されない間、送電装置は不要な電力を消費するという課題がある。このように、複数の送電コイルを有する送電装置が受電装置の検出を行う際に、送電コイル間で悪影響を及ぼす恐れがある。
【0093】
この課題を解決するため、本実施形態における送電装置は、受電装置に送電中か否かを判定し、送電中の場合は送電コイルにおけるA-Pingの送信を停止し、物体検出用コイルにおける物理量(物理パラメータ)の変化に基づいて物体の検出を行う。そして、物体検出用コイルにより物体を検出した場合にのみ、各送電コイルからのA-Pingの送信を行う。これにより、不要なA-Pingの送信を抑制することで、放射ノイズの発生による既存の送電に対する悪影響を軽減しながら、新たな受電装置の載置を検出することができる。また、不要な電力消費を抑制することができる。
【0094】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同じ名称及び符号を使用する。
【0095】
[装置の構成]
図11は、本実施形態における送電装置200の構成を説明するための図である。
図11(a)に示すように、送電装置200は、送電コイル群210の送電範囲全体を包含するように構成された物体検出用コイル211をさらに有するものとする。物体検出用コイルの構成例を
図11(b)に示す。物体検出用コイル211は、例えば、
図4(c)に示す伝送コイル群210を囲むように構成されるコイルである。すなわち、物体掲出用コイル211が送電可能な領域は、送電コイル群210が送電可能な領域を包含する。なお、物体検出用コイル211の形状は
図11(b)に限定されない。
【0096】
[送電装置における処理]
続いて、送電装置200が実行する処理の流れについて説明する。
図12に、送電装置200に実行される処理のフローチャートを示す。本処理は、例えば送電装置の制御部201がメモリ207から読み出したプログラムを実行することによって、実現されうる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、送電装置200の電源がオンとされたことに応じて、送電装置200のユーザが非接触充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、又は、送電装置200が商用電源に接続され電力供給を受けていることに応じて、実行されうる。また、他の契機によって本処理が開始されてもよい。なお、送電装置200は、複数の送電コイル209を用いて本処理を実行するが、そのうちの1つを逐次選択して用いて実行してもよいし、そのうちの複数または全ての送電コイルにおいて並行して実行してもよい。
【0097】
なお、以下の説明において、1台以上の受電装置が送電装置200上(例えば、送電装置200において複数の送電コイルに近接するように構成された充電台(載置面)上)に載置される場合を想定するが、これに限定されない。1台以上の受電装置が、例えば当該送電装置200の送電可能範囲の中に存在する場合を想定してもよい。
【0098】
まず、送電装置200は、受電装置に送電中であるか否かの判定を行う(S1001)。受電装置へ送電中である場合(S1001でYes)、処理はS1002へ進み、受電装置へ送電中でない場合(S1001でNo)、処理はS1005へ進む。次に、S1002において、送電装置200は物体検出用コイル211から物体検出用信号を送信し、処理はS1003へ進む。このとき、送電装置200は、例えば1秒間などの所定の時間長の間に物体を検出するためには、物体検出用コイル211から1秒に一回物体検出用信号としてA-Pingを送信する。
【0099】
ここで、物体検出信号は、WPC規格のA-Pingでありうるが、他の信号であってもよい。S1003において、送電装置200は物体検出用コイル211における物理量の変化量の算出を行い、処理はS1004へ進む。ここで、物理量の変化量は、物体検出用コイル211の状態が変化することにより生じる物体検出用コイル211の電流値を計測し、前回計測した値との差分を求めることにより算出しうるが、これに限らない。例えば、物体検出用コイル211にかかる電圧値の差分や、物体検出用コイル211の共振周波数のシフト量、物体検出用コイル211の特性インピーダンスの差分であってもよい。このように、物体検出用信号の送信により、物体検出用コイル211内の状態に変化があった場合には、コイルに生じる電流や電圧、共振周波数等の少なくともいずれかに変化が生じる。送電装置200の制御部201は、この変化に基づき新たに受電装置が載置された可能性があることを検出することができる。コイル内の電流や電圧、共振周波数等が変化するのは、物体検出用コイル211内の状態に変化が生じることで、コイル内の磁束が変化する、あるいは特性インピーダンスが変化するためである。
【0100】
S1004において、送電装置200は物体検出用コイル211において算出した物理量の変化量が閾値以上であるか否か、すなわち、新たに受電装置が載置された可能性があるか否かの判定を行う。物理量の変化量が閾値以上である場合(S1004でYes)、処理はS1005へ進み、物理量の変化量が閾値未満である場合(S1004でNo)、処理はS1001へ戻る。物理量の変化量が閾値以上である場合とは、新たに物体が送電装置200上に載置されることを意味する。
【0101】
次に、S1005において、送電装置200は上述したWPC規格のSelectionフェーズとして規定されている処理を開始する。送電装置200は、送電コイル209から順次A-Pingを送信し、送電可能範囲内に存在する物体の位置を検知する。このとき、送電装置200は、例えば1秒間などの所定の時間長の間に物体の位置を検知するためには、1秒間に複数の送電コイル209のそれぞれからA-Pingを送信する必要がある。したがって、この場合の送電装置200は、例えば(1/N)秒(Nは送電コイル209の数)ごとに複数の送電コイル209から順次A-Pingを送信する。
【0102】
送電装置200は、送電可能範囲内にある物体を検知すると、WPC規格のPingフェーズへ移行し、物体を検出した送電コイル209を用いて、D-Pingを送信する。送電装置200は、D-Pingに対する所定の応答があった場合に、検知された物体が受電装置であり、受電装置が対象送電コイル上に載置されたと判定し、記憶する(S1006)。送電装置200は、受電装置が載置されたことを検知すると、上述したWPC規格のI&Cフェーズへ移行し、受電装置の識別子情報や能力情報を取得する(S1007)。続いて、送電装置200は、上述したWPC規格のNegotiationフェーズへ移行し、受電装置との間でGPの値を決定する(S1008)。送電装置200は、GPの決定後、上述したWPC規格のCalibrationフェーズへ移行する。ここで、送電装置200は、受電装置が所定の受電電力値(軽負荷状態における受信電力値/最大負荷状態における受信電力値)を送電装置200へ通知し、送電装置200が効率よく送電するための調整を行う。
【0103】
次に、送電装置200は、上述したWPC規格のPower Transferフェーズへ移行し、送電の継続、及び、エラーや満充電による送電停止等のための制御を行い(S1010)、処理はS1001へ戻る。なお、送電装置200への電源供給が停止されれば、送電装置100は、処理を終了する。
【0104】
以上のように、本実施形態の送電装置は、受電装置へ送電中で且つ物体の載置を検出していない場合は、送電コイルにおける物体検出のための処理、すなわち、上述したWPC規格のSelectionフェーズとして規定されている処理を開始しない。これにより、放射ノイズの発生による既存の送電に対する悪影響を軽減することができる。また、不要な電力消費を抑制することができる。
【0105】
[システム全体の処理]
次に、
図13、14を用いて送電装置200の動作シーケンスについて説明する。ここでは、説明の簡略のため、送電装置200は、
図14(a)で示すように3つの送電コイル209a~209c、及び物体検出用コイル211を有するものとする。なお、初期状態として、受電装置は送電装置200に載置されておらず、送電装置200は受電装置の要求するGPでの送電を実行可能な程度の十分な送電能力を有しているものとする。また、物体検出用コイルで算出する物理量の変化量に対する閾値は、所定値としてあらかじめ送電装置200に設定されているものとする。なお、当該閾値は、ユーザによる入力操作等により設定されてもよい。また、以下の説明における、送電装置200の送電コイル209上に受電装置が載置される、という表現は、以下の場合を含む。すなわち、受電装置が載置される、とは、当該送電コイル209に近接して構成される充電台(載置面)に受電装置が載置されることや、当該送電コイル209の近傍(送電可能範囲)に受電装置が配置されることと同義である。
【0106】
本実施形態では、送電装置200が第一受電装置101aの載置を検知し、送電を開始する。この時、送電装置200は第一受電装置101aへ送電を開始したことを契機に、送電コイル209におけるA-Pingの送信を停止し、物体検出用コイル211における物体検出用信号の送信による物体検出を開始する。そして、第二受電装置101bが載置されると、物体検出用コイル211の状態が変化することにより物理量が変化し、その差分が閾値以上となるため、送電装置200は物体が載置されたと判定する。送電装置200は、送電コイル209におけるA-Pingの送信を再開して第二受電装置101bの載置を検知し、送電を開始する。その後、送電装置200は、再度送電コイル209におけるA-Pingの送信を停止、物体検出用コイル211における物体検出用信号の送信による物体検出を再開する。
【0107】
図13において、送電装置200は、受電装置に送電をしていないため、送電コイル209a~209cにおいて、順次A-Pingを送信することによって物体が載置されるのを待つ(S1001でNo、F1101)。送電装置200は、第一受電装置300が載置されることにより、送電コイル209aから送信したA-Pingに変化が生じ、これにより物体が載置されたことを検出する(F1102、F1103、F1104)。第一受電装置300は、続くD-Pingにより、第一受電装置300自身が送電装置200上(送電コイル209aの近傍)に載置されたことを検知する(F1105、F1106)。また、送電装置200は、D-Pingの応答により、載置された物体が受電装置(第一受電装置300)であることを検知し、送電コイル209a上に載置されたことを記憶する(S1005、S1006)。
【0108】
続いて、I&Cフェーズの通信により、送電装置200は、第一受電装置300から識別情報及び能力情報を取得する(S1007、F1107)。次に、送電装置200と第一受電装置300は、Negotiationフェーズの通信を実行し、GP=15Wに決定されたものとする(S1008、F1108)。続いて、送電装置200及び第一受電装置300は、Calibrationフェーズの通信により、Calibrationデータの導出を行う(S1009、F1109)。その後、送電装置200は、第一受電装置101aへの送電を実行する(S1010、F1110)。
【0109】
続いて、送電装置は第一受電装置300へ送電中であるため、送電コイル209におけるA-Pingの送信を停止し、物体検出用コイル211から物体検出用信号の送信を行い、物理量の変化量を算出する(S1001~1003、F1111~1113)。この時、新たな受電装置は載置されておらず、算出した物理量の変化量は閾値未満となるため、新たな物体は検知されていないと判定する。また、送電装置200は、物体検出用信号の送信と物理量の変化量の算出を所定の間隔で繰り返し実行する(S1004でNo、S1001~1003、F1112~1113)。その後、第二受電装置310が載置されると、送電装置200は算出した物理量の変化量が閾値以上となるため、新たな物体を検知したと判定する。送電装置200は、送電中の送電コイル209aを除く209b~209cにおけるA-Pingの送信を再開する(S1004でYes、F1114~1116)。送電装置200は、第二受電装置101bが載置されることにより、送電コイル209cから送信したA-Pingに変化が生じ、これにより物体が送電コイル209c上に載置されたことを検出する(F1117、F1118)。以降、F1119~F1124の処理は、F1105~F1110と同様のため、説明を省略する。送電コイル209cを介して第二受電装置310への送電を実行すると、送電装置200は第一受電装置101a及び第二受電装置101bへ送電中であるため、送電コイル209におけるA-Pingによる物体検出を再度停止する。また、送電装置200は、物体検出用コイル211から物体検出用信号の送信を行い、物理量の変化量を算出する(S1001でYes、S1002~1003、F1125~1127)。
【0110】
以上説明した動作によれば、送電装置200は受電装置への送電開始後、各送電コイル209からA-Pingの送信を停止し、物体検出用コイルでの物体検出を開始する。そして、送電装置200は、物体検出用コイルを使用して物体を検出したことに基づいて、各送電コイル209から物体検出用信号(A-Ping)を送信することにより、受電装置を検出する。この時、物体検出用コイルは送電コイル群の送電範囲全体を包含するように構成されている。このため、所定の時間長において物体検出用コイルから物体検出用信号を送信する回数は、同じ所定の時間長において各送電コイルからA-Pingを送信する回数の合計よりも少なくなる。これにより、相対的に放射ノイズ等の発生を抑制することが可能となり、既存の受電装置への送電に対する悪影響を軽減しながら、新たな受電装置の載置を検出することができる。また、物体検出用コイルのみからA-Pingを送電することにより、各送電コイルからA-Pingを送信するよりも相対的に消費電力を少なくすることができる。
【0111】
上述した実施形態において、送電装置は受電装置への送電を開始すると、各送電コイルからのA-Pingの送信を停止し、物体検出用コイルから物体検出用信号を送信して物理量の変化量を算出するようにしたが、物体検出用信号を送信しなくてもよい。この時、送電装置は送電中の送電コイルから送信される電力により生じる物体検出用コイル内の状態の変化により生じる物理量の変化量を算出しうる。これにより、物体検出用信号を送信した場合と比べて、より放射ノイズ等の発生の抑制、及び、不要な消費電力の抑制を行うことができる。
【0112】
なお、上述した実施形態において、送電装置は受電装置へ送電中でない場合は、各送電コイルから順次A-Pingを送信するようにしたが、これに限定されない。すなわち、送電装置200は、受電装置へ送電中でない(受電装置が1台も載置されていない)場合も、物体検出用コイル211から物体検出用信号を送信し、物理量の変化量を算出することにより物体検出を行ってもよい。これにより、受電装置へ送電中でない場合であっても、不要な消費電力を抑制することができる。
【0113】
また、上述した実施形態において、送電装置は送電コイル群の送電範囲全体を包含するように構成された物体検出用コイルを有するものとしたが、これに限定されない。例えば、送電装置200は、送電中の送電コイル209以外の特定の送電コイル209を選択し、決定した特定の送電コイル209からA-Pingを送信するようにしてもよい。これにより、複数の送電コイルからA-Pingを順次送信する場合と比べて、放射ノイズ等の発生の抑制、及び、不要な消費電力の抑制を行うことができる。また、この構成の場合は、送電装置200は、送電コイル群210を囲むような物体検出用コイル211を有していなくともよい。
【0114】
また、上述した実施形態において、送電装置は送電コイル群の送電範囲全体を包含するように構成された物体検出用コイルを1つ有するものとしたが、これに限定されない。送電装置200は、物体検出用コイルを複数有していてもよい。例えば、各送電回路が送電可能な領域(例えば、
図4の専用領域416及び専用領域417)をそれぞれ包含するような複数の物体検出用コイルが配置される場合について説明する。この場合、送電装置200は、送電中ではない送電回路が送電可能な領域を包含する物体検出用コイルでのみ物体検出を開始し、物体を検出した場合には当該物体検出用コイルが包含する領域の送電コイルでのみA-Pingを送信しうる。このように、物体を検出したと判定された領域でのみA-Pingを送信することで、送電範囲全体でA-Pingを順次送信する場合と比べて、信号の送信回数は少なくなる。これにより、相対的に放射ノイズ等の発生を抑制することが可能となり、既存の受電装置への送電に対する悪影響をより軽減しながら、新たな受電装置の載置を検出することができる。
【0115】
(実施形態4)
上述の実施形態1において説明したように、複数の送電コイルから同時に送電が行われる場合、適切に送電コイルを適切に選択しないと、各送電コイルから送電される電力によって、お互いが干渉してしまうという課題があった。実施形態1では、干渉しない位置関係を有する(所定の距離D以上離れている)送電コイルを使用して送電を行うことにより、干渉を抑制する方法について説明した。本実施形態では、送電コイルどうしの干渉を抑制するための他の方法について説明する。本実施形態では、特に、送電コイルで充電用の送電が行われている間に、他の送電コイルが物体検出のためのA-Pingを送信する場合における送電コイルどうしの影響(干渉)を抑制するための方法について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同じ名称及び符号を使用する。
【0116】
[送電装置における処理]
図15は、送電装置100により実行される処理を示すフローチャートである。
図15に示すフローチャートは、送電装置100の制御部201がメモリ207に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算及び加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現され得る。
【0117】
まず、送電装置の電源がONになると処理が開始される(S1301)。送電装置100は、制御部201を介して、送電コイル群210の中から第一送電回路203が送電に使用する第一の送電コイルと、第二送電回路205が送電に使用する第二の送電コイルとを選択し、各送電回路と各送電コイルとを接続する(S1302)。ここで、送電装置100は、第一送電回路と第二送電回路から同時にA-Pingの送電が行われた場合においても、お互いの干渉が発生しない送電コイルを選択する。このときの選択方法は、例えば実施形態1に記載の方法を用いてもよい。
【0118】
次に、送電装置100は、送電回路が送電中か否かを判定する(S1303)。ここでは送電装置は電源ON直後であることから、いずれの送電回路においても送電は実施されていないとする(S1303でNo)。次に、送電装置100は、各送電回路に接続される各送電コイルから、上述したA-Pingを送信(送電)する(S1304)。当該A-Pingの電力は、送電時の送電電力に比べて、小さな電力である。
【0119】
次に、送電装置100は、送電装置のコイル上に、受電装置が載置されたか否かを判定する(S1305)。ここで、送電装置100は、A-Pingで送電装置に物体が載置されていることを検知した場合、上述したSelectionフェーズ、Pingフェーズ、I&Cフェーズを経て、受電装置の載置を検出する。
【0120】
次に、送電装置はS1305で検出された受電装置に対して、上述したWPC規格で規定された複数のフェーズを経て送電処理を実施し、送電を開始する(S1306)。
【0121】
次に、送電装置100は、送電装置の送電回路がすべて使用されているかを判定する(S1307)。すべて使用されている場合には、送電装置100は、送電のための制御を終了する。なお、
図15には表されていないが、送電装置100は、例えば受電装置のバッテリが満充電になる等して、受電装置からの送電停止のコマンド(EPT)を受信するまで、充電用の送電を行う。また、送電装置100は、充電用の送電を終了すると、新たな受電装置を検出するため、S1303以降の処理を再度実行する。S1303以降の処理は、送電装置100の電源がOFFになるまで繰り返し実行されるものとする。また、S1305で、所定の時間が経過するまでに受電装置が検出されなかった場合にも、所定の時間経過後、S1303へ戻る。
【0122】
次に、S1303で、送電装置が送電中である、と判定された場合について述べる。ここでは、第一送電回路203及び第二送電回路205が、それぞれ第一の送電コイル及び第二の送電コイルを用いて送電可能な構成であるとする。ここで説明する制御を行う理由は以下の通りである。すなわち、第一の送電コイルからの送電と、第二の送電コイルからの物体検出用信号であるA-Pingの送信とが同時に行われると、電力として小さいA-Pingは、電力の大きい送電の電力により乱されてしまう場合がある。このため、第二の送電コイルから送信されるA-Pingは、検出用信号として正しく機能しなくなり、物体の誤検出につながる可能性がある。本実施形態における送電装置100は、以降の処理を行うことにより、A-Pingが乱されてしまう問題を抑制する。
【0123】
S1303で、送電装置が送電中である、と判定された場合(S1303でYes)、送電装置100は、第一送電回路203からの送電を一時的に瞬断し、送電を停止する。そして、送電装置100が送電を停止している期間(瞬間)に、送電に使用されていない他の送電コイルから検出用信号を送信する。ここでは、第二の送電コイルは、送電に使用されていないものとし、検出用信号を第二の送電コイルから送信されるものとする。送電装置100は、送電を行っている第一の送電コイルからの送電を所定の期間停止(瞬断)する(S1308)。そして、第一の送電コイルからの送電が停止されている期間に、送電を行っていない第二の送電コイルから、検出用信号を送信する(S1309)。つまり、送電を行う第一送電回路203からの送電を停止する期間に、送電を行っていない第二送電回路205を用いて、A-Pingを送信する。そして、送電装置100は、所定の期間送電を停止した後、送電を再開する(S1310)。このとき、第二送電回路205が物体検出のために出力するA-Pingが、第一送電回路203が行う送電と重ならないようにする必要がある。つまり、第一の送電コイルからの送電が停止されている期間は、第二の送電コイルから検出用信号が送信されている期間よりも長い期間となるように制御する。このため、送電が停止される所定の期間は、第二送電回路205が物体の検出を行うための期間よりも長い期間となる。この処理によって、第一の送電コイルから送電される充電用の電力と、第二の送電コイルから送信される検出用信号送信とが重なることなく、第二の送電コイルから送信される検出用信号を送信することができる。
【0124】
図16を用いて、送電装置100による充電用の送電の停止のタイミングと、検出用信号送信のタイミングについて説明する。上述した実施形態では、送電装置100は、2つの送電回路と、それぞれに接続される2つの送電コイルを使用して送電処理を行う場合について述べた。しかしながらこれに限定されず、さらに多くの送電回路及び送電コイルを使用した送電処理においても、本実施形態は適用可能である。今、第一送電回路203が第一の送電コイルを使用して、充電用の送電を行っているものとする。また、第二送電回路205は、第二の送電コイル、第三の送電コイル、及び第四の送電コイルと順次接続され、それぞれの送電コイルからA-Pingを送信するものとする。
【0125】
図16において、第一の送電コイルは送電に使用されており、受電装置に対して送電を行う。そして、所定の時間経過後、第一送電回路203は、第一のタイミングにおいて第一の送電コイルからの送電を所定の期間停止(瞬断)する(S1308)。そして、送電が停止された期間に、第二送電回路205は、第二の送電コイルを使用してA-Pingを送信する(S1309)。第一の送電コイルに接続される第一の送電回路は、所定の期間送電を瞬断したのち、送電を再開する(S1310)。第二送電回路205により受電装置が検出されなかった場合(S1305)、所定の時間経過後、第一送電回路203は、第二のタイミングにおいて第一の送電コイルからの送電を所定の期間停止(瞬断)する(S1308)。そして、送電が停止された期間に、第二送電回路205は、第三の送電コイルを使用してA-Pingを送信する(S1309)。そして第一の送電回路203は、所定の期間送電を停止したら、送電を再開する(S1310)。第二送電回路205により受電装置が検出されなかった場合(S1305)、所定の時間経過後、第一送電回路203は、第三のタイミングにおいて第一の送電コイルからの送電を所定の期間停止(瞬断)する(S1308)。そして、送電が停止された期間に、第二送電回路205は、第三の送電コイルを使用してA-Pingを送信する(S1309)。そして第一の送電回路203は、所定の期間送電を停止したら、送電を再開する(S1310)。
【0126】
以上述べた処理は、第二送電回路205が受電装置を検出するまで繰り返し行われる。第二送電回路205がA-Pingで送電装置に載置される物体を検知し、所定の複数のフェーズを経て受電装置を検出した場合(S1305)、送電装置は第二送電回路205により、S1305で検出された受電装置に対して送電を開始する(S1306)。
【0127】
このように、送電装置100は、充電用の送電を停止しつつ他の送電コイルから順番に検出用信号を送信することによって、定期的に各送電コイルの近傍に受電装置が存在しないかどうかを確認することが可能となる。なお、送電装置100が充電用の送電を停止するタイミングは、送電装置100にあらかじめ設定されてもよい。また、送電装置100が送電を停止する所定の期間は、受電装置の受電処理に影響を及ぼさない長さに設定されるようにしてもよい。あるいは、送電装置100は、充電用の送電を行っている受電装置のバージョン等により、送電を瞬断しても問題ないかを判定したうえで上記の処理を行う構成でもよい。また、送電装置100は、例えばNegotiationフェーズにおいて、送電を瞬断するタイミングを表す情報を受電装置に送信する、又は当該情報を受電装置から取得することにより、送電を瞬断するタイミングを互いに共有するようにしてもよい。
【0128】
また、送電回路と送電コイルの構成は上述したものに限定されない。例えば、4つの送電回路を使用し、第一の送電コイルは第一の送電回路に接続され、第二の送電コイルは第二の送電回路に接続され、第三の送電コイルは第三の送電回路に接続され、第四の送電コイルは第四の送電回路に接続される構成でもよい。また、送電コイルの数も任意の数であって良い。
【0129】
また、上述した実施形態では、送電装置100は送電に使用していない送電コイルから順番に検出用信号を送信することとしたが、検出用信号であるA-Pingは複数のコイルから同時に送信されてもよい。すなわち、送電装置は第一の送電コイルからの送電を一時的に停止(瞬断)し、その送電を停止した期間に、第二の送電コイルと、第三の送電コイルと、第四の送電コイルとから同時にA-Pingを送信するようにしてもよい。あるいは、第一の送電回路には、第一の送電コイル、第二の送電コイルに接続可能であり、第二の送電回路には、第三の送電コイルが接続され、第三の送電回路には、第四の送電コイルが接続されている構成でもよい。そして、上記構成において、送電装置100は、第一の送電コイルからの送電を一時的に停止(瞬断)し、第一の送電回路は第二の送電コイルに接続して、第二の送電コイル、第三の送電コイル、及び第四の送電コイルから同時にA-Pingを送信してもよい。なお、このとき同時にA-Pingを送信する送電コイルの組み合わせは、例えば上述した実施形態1の方法を使用して決定されてもよい。
【0130】
また、上述の本実施形態では、送電装置から送信される検出用信号は、受電装置を検出するための信号として述べた。しかし、当該検出用信号は、受電装置とは異なる異物(物体)を検出するために使用されてもよい。送電装置上に、例えば導体の異物が存在すると、送電装置が送電を行った際に、当該異物で電力が消費され、異物が発熱する可能性がある。よって、送電装置100は、S1304あるいはS1309において送信されるA-Pingで物体があることを検出し、「異物有り」あるいは「異物が存在する可能性あり」と判定された場合には、送電を停止するように制御してもよい。異物の有無の判定は、上述したPingフェーズ、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズを経ることで行うことができる。これにより、
図14に示した送電装置は、送電に使用していない送電コイルから、順番に検出用信号を送信することによって、定期的に、各送電コイルの近傍に異物が存在しないかどうかを確認することが可能となる。よって、送電装置は送電装置上の異物を高精度に検出することが可能となる。
【0131】
また、送電を瞬断する際の送電コイルにおける電圧または電流の過渡応答に基づいて、異物を検出するようにしてもよい。
【0132】
また、上述した実施形態においては、第一の送電回路と、第二の送電回路との両方から、受電装置に対して同時に送電が可能な構成について述べた。しかし、各送電回路から同時に送電せずに、どちらか一方の送電回路からのみ、送電を行う構成にしてもよい。すなわち、第一の送電コイルにより第一の受電装置が存在することを検知し、第二の送電コイル近傍にも第二の受電装置が存在することを検知した場合(S1305)、S1305の後に、所定の条件に基づいて、どちらか一方の受電装置を選択する。ここで、受電装置が選択される所定の条件として、例えば、送電対象となるべき優先度(優先順位)に基づいて選択されてもよい。優先度は、送電装置が、第一の受電装置及び第二の受電装置と通信を行い、優先度を決定するための情報である。送電装置が送電対象としてどちらか一方の受電装置を選定する理由は、以下の通りである。例えば、第一の送電回路と第二の送電回路から送電される送電電力が非常に大きい場合、送電に使用する送電コイルの選択を適切に行っても、第一送電回路から送電される電力と、第二送電回路から送電される電力で干渉が発生する場合がある。これにより、送電装置と受電装置との間の通信エラー等が発生するおそれがあるからである。また、複数の送電回路から送電されることによって、発生するノイズが基準値よりも大きくなるおそれがある。したがって、「受電装置の選択」を実施し、選択した受電装置に対する送電を行うことにより、電力の干渉を抑制する。
【0133】
また、複数の送電回路から送電を行うと送電装置のハードウェアの電力供給能力を超えてしまう場合においても、「受電装置の選択」を行うことで適切に送電を行うことが可能となる。また、このような「受電装置の選択」を行う場合も、本実施形態の方法により、送電装置に新たな受電装置が載置されていないかを定期的に確認し、例えば優先度の高い受電装置が新たに載置された場合でも、早期に検出及び送電を開始することが可能となる。
【0134】
(実施形態5)
本実施形態では、第一受電装置101a及び第二受電装置101bが送電コイル群210の上に載置された場合の送電装置100の動作について説明する。
図17を使用して、本実施形態で解決すべき課題について説明する。
図17は送電コイル群210と受電装置の配置構成図である。なお、本実施形態における送電装置の構成は実施形態1と同様であり、送電装置100が有する第一送電回路203及び第二送電回路205は、それぞれ最大1台の受電装置に対して送電可能であるものとする。
【0135】
図17(a)は共用領域415に第一受電装置101aが載置されており、第一送電回路203の専用領域416及び第二送電回路205の専用領域417に受電装置は載置されていない。
図17(b)は、
図17(a)の状態から、さらに第二受電装置101bが第一送電回路203の専用領域416に載置されたことを示している。ここで、
図17(a)において共用領域415に載置された第一受電装置101aに対して第一送電回路203が送電しているものとする。この場合、
図17(b)のように第二受電装置101bが新たに第一送電回路203の専用領域に載置された場合には、第一送電回路203は第二受電装置101bに送電することができない。なぜなら、第一送電回路203は同時に送電できる受電装置の最大数は1だからである。このように、送電装置100自体は2つの送電回路を有し、同時に2台の受電装置に送電可能な構成であっても、受電装置の載置の順番及び載置される位置によっては、1台の受電装置にしか送電できないという課題がある。
【0136】
以下では、複数の受電装置に送電可能な送電装置において、受電装置の載置条件によらずに、適切に送電の制御が行われるようにするための実施形態について説明する。なお、上述した他の実施形態と同様の構成については、同じ名称及び符号を使用する。
【0137】
[送電装置における処理]
本実施形態における送電装置が行う処理を、
図17、18を使用して説明する。なお、本処理は、送電回路203が電源部202から電源供給を受ける等によって電源が投入されて起動したことに応じて開始されうる。また、本処理は、制御部201が、メモリ207に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。ただし、これらに限られず、例えばユーザによる所定のボタンの押下等の操作によって電力伝送機能が起動されたことに応じて、本処理が実行されてもよい。また、
図18に示される処理の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。少なくとも一部の処理がハードウェアによって実現される場合、例えば、その処理ステップを実現するためのプログラムから、所定のコンパイラを用いてFPGA上に自動的に生成された専用回路が用いられうる。また、FPGAと同様に、Gate Array回路によって、所定の処理ステップを実行するためのハードウェアが実現されてもよい。
【0138】
図18において、送電装置100が電源ONとなることにより、処理が開始される。送電装置100は、A-Pingを送信し、受電装置が載置されたかを判定する(S1600)。ここで、
図17(a)に示すように、第一受電装置101aが共用領域415に載置されたとする。送電装置100は、受電装置の載置を検出すると(S1600でYes)、S1602へ処理を進める。
【0139】
送電装置100は、D-Pingを送信し、Signal Strengthパケットを受信すると、第一受電装置101aを検出したと判定する。ここでは、前記D-Pingは第一送電回路203が送電したものとする。ここで送電装置100は現在送電している(Power Transferフェーズである)受電装置数と、送電回路が送電可能な受電装置の台数の上限値を比較する(S1602)。
図17(a)の例では、第一送電回路203は第一受電装置101aにD-Ping送電してはいるが、Power Transferフェーズで送電中の受電装置はないため、受電装数は0である。また、第一送電回路203の上限値は前述のとおり1である。受電装置数より上限値の方が大きいので(S1602でYes)、送電装置100はS1611へ処理を進める。送電装置100は、受電装置を検出した領域において送電中の受電装置数と、受電装置を検出した領域における送電可能な受電装置の上限値とを比較する(S1611)。ここでは、共用領域415における受電装置数と、第一送電回路203が共用領域415において送電可能な受電装置の台数を表す上限値とが比較される。今、共用領域415において送電中の受電装置は存在しないので、受電装置数は0である。また、第一送電回路203が共用領域415で送電可能な受電装置の上限値は1である。受電装置の数は領域の上限値より小さいので(S1611でYes)、送電装置100は第一受電装置101aを検出した第一送電回路203が第一受電装置101aに送電を行うと決定し(S1607)、処理を終了する。受電装置に送電する送電回路が決まったので、送電装置100は
図5のフローに基づいて、第一受電装置101aに送電する。
【0140】
続いて、
図17(b)に示すように、第二受電装置101bが第一送電回路203の専用領域416にさらに載置されたとする。送電装置100は、A-Pingを使用して、第二受電装置101bを検出する(S1600でYes)。送電装置100は第一受電装置101aに送電中ではあるが、実施形態3に示す物体検出用コイルで第二受電装置101bを検出してもよい。また、送電装置100は、実施形態4に示すように、第一送電回路が共用領域416で第一受電装置101aに対して行っている送電を瞬断している間に第二受電装置101bを検出してもよい。具体的には、送電装置100は前記瞬断している間に専用領域416に含まれる送電コイルを用いて専用領域416に載置された第二受電装置101bを検出してもよい。
【0141】
送電装置100は第二受電装置101bを検出すると、受電装置数と上限値とを比較する(S1602)。第一送電回路203は第一受電装置101aに送電中なので、受電装置数は1である。第一送電回路203の上限値は1であるので、上限値は受電装置数より大きくないと判定される(S1602でNo)。そして送電装置100は送電中の受電装置も含めて検出した受電装置の載置領域を取得する(S1601)。受電装置がいずれの領域に載置されているかどうかは、
図4(e)のいずれの送電コイルでSignal Strength Packetを受信したかによって判定できる。
【0142】
今、第一送電回路203が第一受電装置101aに共用領域415で送電中なので(S1603でYes)、送電装置100は共用領域415で送電可能な他の送電回路を選択する(S1604)。ここでは、第二送電回路205が共用領域415で送電可能なので、送電装置100は第二送電回路205を選択し(S1604)、第二送電回路205が送電中の受電装置数と、送電可能な受電装置の台数の上限値とを比較する(S1605)。この時点で第二送電回路205はいずれの受電装置にも送電していないので、上限値(=1)は受電装置数(=0)より大きい(S1605でYes)。次に送電装置は現在の共用領域における送電中の受電装置数と共用領域における送電可能な受電装置の上限値を比較する。共用領域415において第一受電装置101aに送電中であるので、受電装置数は1である。また、選択されている第二送電回路205が共用領域415において送電可能な受電装置の台数の上限値は1である。したがって、受電装置の数は領域の上限値以下なので(S1610でYes)、送電装置100は共用領域415に載置されている第一受電装置101aは現在選択している第二送電回路205が送電すると決定する(S1606)。
【0143】
送電装置100は、現在共用領域415で送電している第一送電回路203の送電を停止する(S1609)。また、第二送電回路205は
図5に示すフローに基づいて、共用領域415における第一受電装置101aに送電する。ここで、第一送電回路203はいずれの受電装置にも送電していない状態となる。送電装置100は、第一送電回路203を使用して専用領域416に載置された第二受電装置101bを検出し(S1600)、送電中の受電装置数と、送電可能な受電装置の台数の上限値とを比較する(S1602)。比較の結果、第一送電回路203の上限値(=1)は、送電中の受電装置数(=0)よりも大きいと判定し、S1611に処理を進める。なお、送電装置100はすでに第二受電装置101bを検出済みであるので、ここでの検出処理は省略してもよい。送電装置100は、送電中の受電装置数(=0)と、専用領域416において送電可能な受電装置の台数の上限値(=0)とを比較し(S1611)、第二受電装置101bに送電を行う(S1607)。
【0144】
以上が、本実施形態における送電装置100が行う送電の制御処理である。上述した制御を行うことにより、複数の送電回路を使用して複数の受電装置に効率よく送電を行うことが可能となる。
【0145】
また、送電制御の他の例について説明する。ここでは、
図17(b)において、最初に第二受電装置101bが第一送電回路203の専用領域416に載置され、そのあとに第一受電装置101aが共用領域415に載置されたものとする。この場合、送電装置100は、まず、第一送電回路203を使用して第二受電装置101bに送電を行う。続いて、送電装置100は、第一受電装置101aが共用領域415に載置されたときに、第一送電回路203又は第二送電回路205により第一受電装置101aを検出する。第一送電回路203が第一受電装置101aを検出した場合は、S1602においてNoとなるので、送電装置100はS1604にて第二送電回路205を選択し、第二送電回路205を使用して第一受電装置101aに送電する。また、第二送電回路205が第一受電装置101aを検出した場合は、S1602においてYesとなるので、S1607にて第二送電回路205が第一受電装置101aに送電する。
【0146】
また、図示はしないが、
図17(b)の状態から第二送電回路205の専用領域417に第三受電装置が載置されたとする。この場合、第二送電回路205が送電可能な受電装置の台数の上限値(=1)は、送電中の受電装置数(=1)より大きくない(S1605でNo)。よって送電装置100は第三受電装置に対してはいずれの送電回路も送電しないと判定する(S1608)。なお、第三受電装置を検出するさいにも、送電装置100は実施形態3に示す物体検出用コイルで第二受電装置101bを検出してもよい。また、実施形態4で説明したように、第一送電回路203が専用領域416で、第二送電回路205が共用領域416で行っていた送電を瞬断し、
図15のフローに基づいて動作してもよい。具体的には、第一送電回路203は定期的に前記瞬断している間に専用領域416及び共用領域416に含まれる送電コイルを用いてA-Pingを送電する。第二送電回路205は定期的に前記瞬断している間に専用領域417及び共用領域416に含まれる送電コイルを用いてA-Pingを送電し、第三受電装置を検出してもよい。
【0147】
また、
図15(c)のように、第一受電装置101a及び第二受電装置101bが第一送電回路203及び第二送電回路205のそれぞれの専用領域に載置された場合は、以下のような動作となる。すなわち、第一送電回路203及び第二送電回路205がそれぞれS1602、S1611、S1607の処理に従い、第一受電装置101a及び第二受電装置101bに送電する。
【0148】
また、
図15(d)のように、最初に第一受電装置101aが第一送電回路203の専用領域416に載置され第一送電回路203が第一受電装置101aに送電中に、第二受電装置101bが第一送電回路203の専用領域416に載置された場合を考える。この場合は、送電装置100は上述した実施形態3あるいは実施形態4で説明した方法を視よして第二受電装置101bを検出する。この場合、第二受電装置101bが載置された時点で、専用領域416においてこれ以上受電装置に送電できないので(S1610でNo)、送電装置100は検出した第二受電装置101bにはいずれの送電回路も送電しないと決定する(S1608)。
【0149】
[システム全体の処理]
図17(a)、(b)、及び
図19を使用して、システム全体の処理を説明する。送電装置100は、第一送電回路203及び第二送電回路205を使用してA-Pingを送電し(F1701)、受電装置の検出処理を行う。ここで、第一受電装置101aが共用領域415に載置され、第一送電回路203が送信したA-Pingにより検出されたものとする。第一送電回路203は、D-Pingを第一受電装置101aに送電し(F1701)、
図5に示すフローに従って、充電用の送電を行う(F1702)。ここで、第一送電回路203の専用領域416に第二受電装置101bがさらに載置され、第一送電回路203が送電したA-Pingにより検出されたものとする(F1703)。第一送電回路203は、D-Ping(F1711)を送電し、
図18のS1602の処理を行う。第一送電回路203は、すでに第一受電装置101aに送電中であるため(S1602でNo)、送電装置100はS1604にて第二送電回路205を選択し、第二送電回路205を使用して第一受電装置101aに対し送電を行うように制御する(S1609)。また、送電装置100は第一送電回路203による第一受電装置101aへの送電を停止させる(S1609、F1704)。なお、
図19ではF1711にてD-Pingを送信するものとしたが、D-Pingを送電せずにF1704にて送電停止を行う構成でもよい。
【0150】
第二送電回路205は、A-Ping(S1705)及びD-Ping(F1706)を送電し、第一受電装置101aに送電を行う(F1707)。第一送電回路203はA-Ping(S1708)及びD-Ping(F1709)を送電し、第二受電装置101bに送電を行う(F1710)。
【0151】
以上のように、本実施形態における送電装置は受電装置が載置された場合に、送電回路が送電可能な受電装置数の上限値と、載置された領域とに基づいて載置された受電装置に送電する送電回路を決定する。これにより、例えば
図17(b)に示すように受電装置が載置された場合であっても、複数台の受電装置に対して同時に送電することが可能となる。
【0152】
上述した方法によれば、送電装置100は送電回路が送電可能な受電装置数の上限値と、載置された領域とに基づいて、載置された受電装置に送電する送電回路を決定する。しかしこれに限定されず、送電装置100は、送電回路が受電装置に対して所定の処理を行っていることに基づいて、受電装置に送電する送電回路を決定してもよい。例えば、送電回路が同時に送電可能な受電装置数が1の場合、送電装置100は、送電回路が下記の処理を行っているか否かを判定する。すなわち、送電装置100は、送電回路がA-Pingを送電している(Selectionフェーズである)、又はD-Pingを送電している(Negotiationフェーズ、Power Transferフェーズである)かを判定する。送電装置100は、
図18に示すS1602及びS1605の処理において、送電回路がA-PingまたはD-Pingを送電している場合はNo、送電していない場合はYesと判定する。これにより、送電回路100は、すでにA-Ping又はD-Pingを送電している送電回路はこれ以上新たな受電装置に対して送電ができないものと判定されることとなる。
【0153】
また、本実施形態の送電装置100は送電したD-Pingに対してSignal Strength Packetを受信すると、第一受電装置101aを検出したと判定したが、これはA-Pingで物体が近傍に存在すると判定してもよい。
【0154】
なお、
図15(d)のように、送電回路が送電可能な上限値または同じ領域に当該領域で送電可能な受電装置の上限値を超える数の受電装置が載置された場合は、以下のような処理が行われてもよい。例えば、送電装置100は、送電装置100が後から載置された第二受電装置101bに対して、通信部を使用して「受電装置数」に関するメッセージを送信してもよい。具体的には、「送電装置ないし送電回路が同時に送電可能な受電装置数の上限値を超えていること」または「送電装置ないし送電回路が同一の領域で送電可能な受電装置数の上限値を超えていること」を示すメッセージでよい。または、単に「多い(many,much)」「多すぎる(too much)」というメッセージであってよい。また、当該メッセージは「複数の受電装置間の距離」に関するものでよい。具体的には「載置されている複数の受電装置間の距離が近いこと」または単に「近い(close)」「近すぎる(too close)」というメッセージでよい。こうすることで、送電装置100は受電装置に送電を行わない理由を通知することができる。また受電装置は送電装置100が送電を行わない理由を認識することができる。
【0155】
さらに、当該メッセージを受電した受電装置は受電装置のUIに当該受電装置に送電が可能になるように受電装置を送電コイル群210の異なる位置に載置することを促す表示をしてもよい。例えば、「充電デバイスを別の場所においてください」「ワイヤレス充電を行うには他の充電デバイス(受電装置)との距離が近すぎます」「ワイヤレス充電を行うには他の充電デバイス(受電装置)との距離を離して置いてください」等の表示がされてもよい。
【0156】
また充電デバイス(受電装置)の属性を、WPC規格で規定されている前記Identificationパケット、Extended Identificationパケット、Configurationパケットで検出し、当該属性をUI表示してもよい。例えば第一受電装置101aがスマートフォンで第二受電装置101bがスマートウォッチだった場合は、スマートウォッチのUIに以下のような表示がされる。例えば「ワイヤレス充電を行うにはスマートフォンと別の場所においてください」「ワイヤレス充電を行うにはスマートフォンとの距離が近すぎます」「ワイヤレス充電を行うにはスマートフォンとの距離を離して置いてください」等の表示がされる。
【0157】
上述したようなメッセージを確認したユーザが、例えば
図15(d)における第二受電装置101bを共用領域415に移動させれば、送電装置100は第二受電装置101bに送電することが可能となる。このように、送電装置は送電できない理由を受電装置に通知し、通知された受電装置は送電できない理由または送電できるようにするための方法に加え、機器の属性をUIに表示するようにした。こうすることで、受電装置に送電を行うことが可能となる。同様のメッセージは、図示はしないが例えば第一受電装置101aと第二受電装置101bがともに共用領域416に載置され、他の受電装置は載置されていないという場合も同様の効果が得られる。
【0158】
また、
図15(b)において送電装置100は第一受電装置101aに送電する送電回路を第一送電回路203から第二送電回路205に切り替えた。そして第二送電回路205は
図5のフローに従いA-Pingの送電(S500、F1705)、つまりSelectionフェーズから開始した。しかしこれは、送電回路は第一送電回路203から第二送電回路205に切り替わるものの、第一受電装置101aの情報は送電装置100がすでに把握しているので、第二送電回路205は
図5のフローの途中から開始してもよい。具体的にはNegotiation処理やCalibration処理を省略し、Power Transferフェーズの送電を開始してもよい。そうすることで、第一受電装置101aへの送電を早期に開始することができる。
【0159】
また、第一受電装置101aがスマートフォンのように表示部を有する装置で、第二受電装置101bが無線イヤフォンのように表示ができない装置である場合に、送電装置が充電中のスマートフォンに以下のような情報を表示させてもよい。送電装置がスマートフォンに表示させる情報は、例えば、送電装置が送電可能な受電装置の台数の上限値、同一の領域で送電可能な上限値を超えている旨のメッセージ、及び、充電できないデバイスの情報等である。そして、送電装置は、充電中のスマートフォンの表示部に、無線イヤフォンに関する情報を表示してもよい。例えば「無線イヤフォンをワイヤレス充電するにはスマートフォンと別の場所においてください」「無線イヤフォンをワイヤレス充電するにはスマートフォンとの距離が近すぎます」という表示がされてもよい。また、例えば「無線イヤフォンをワイヤレス充電するにはスマートフォンとの距離を離して置いてください」という表示がされてもよい。これによい、ユーザは、表示部を有しないデバイス(無線イヤフォン等)の情報も確認することが可能となる。
【0160】
また、送電装置100は、後から載置された第二受電装置101bに対して、通信部が送電可能な上限値または同一の領域で送電可能な上限値を超えている旨のメッセージを送信してもよい。そして、送電装置は、送電回路が送電可能な上限値または同一の領域で送電可能な上限値を超えている場合は送電できない理由を送電できないデバイスの表示部に表示させてもよい。例えば、送電装置は「同時にワイヤレス充電できるデバイスの数を超えています」「ワイヤレス充電を行うには他のデバイスのワイヤレス充電を終了してください」と表示させる。
【0161】
また、共用領域416に存在する送電コイル402、送電コイル403、送電コイル405、送電コイル408、送電コイル409、送電コイル411は第一送電回路203及び第二送電回路205のいずれとも排他的に接続可能とした。しかしこれは、第一送電回路203または第二送電回路205が共用領域416に置かれた受電装置に第一送電回路203または第二送電回路205のいずれかが送電できれば、各送電回路が上記の送電コイルすべてに接続できなくてよい。例えば、第一送電回路203は送電コイル402、送電コイル403、送電コイル405に接続可能で、第二送電回路205は送電コイル408、送電コイル409、送電コイル411に接続可能な構成でもよい。
【0162】
また、受電装置は送電装置の通信部が送信するメッセージに基づいてUI表示を行うようにしたが、当該メッセージは通信部とは異なる別の通信部でWPC規格外の通信部が送信してもよい。当該通信部はBluetooth Low Energy規格、もしくはWi-Fi規格もしくはNFC規格に準拠した通信部でよい。
【0163】
また、本実施形態では送電回路が第一送電回路203と第二受電装置101bの2つで、共用領域415が1つの送電装置100を例に説明を行った。しかしこれは、任意の数の送電回路と任意の数の共用領域415及び専用領域があっても適用可能であることは明らかである。
【0164】
(その他の実施形態)
上述した実施形態1~5は、任意の実施形態を組み合わせて実施することが可能である。
【0165】
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0166】
100 送電装置
201 制御部
203 第一送電回路
205 第二送電回路
209 送電コイル
210 送電コイル群