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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20250108BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20250108BHJP
   G03G 9/083 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/087 325
G03G9/097 368
G03G9/083 302
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020188685
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077719
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 大
(72)【発明者】
【氏名】福留 航助
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 梢
(72)【発明者】
【氏名】水口 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】小宮 友太
(72)【発明者】
【氏名】杉田 朋子
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-058849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/087
G03G 9/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、炭化水素ワックス及びエステルワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂を含有しており、
該トナーの下記測定条件による加熱IR測定において結着樹脂に帰属されるピーク強度(696cm -1 のピーク強度)に対する炭化水素ワックスに帰属されるピーク強度(2922cm -1 のピーク強度)の比をIとしたとき、
100℃に加熱した初期のピーク強度比をI(ini)とし、100℃に加熱して保持し10分経過したときのピーク強度比をI(10min)とした場合に、該I(ini)及び該I(10min)が下記式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
I(ini)/I(10min)≦ 0.95 ・・・(1)
測定条件:
測定法:ATR結晶としてダイアモンドを用いたATR法
測定試料:トナー300mgに15kNの圧力を1分間加えて成形した直径1cmのトナーペレット
昇温条件:室温から40℃に昇温し、1分保持、その後、10℃/minで100℃まで昇温し、100℃で10分保持
【請求項2】
前記結着樹脂が、下記式(St)で表されるモノマーユニットを含有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記結着樹脂中の、前記式(St)で表されるモノマーユニットの含有量が50質量%以上であり、
前記I(10min)が、0.30以上である請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記トナー粒子が、疎水化処理剤で疎水化処理された無機粒子を含有する請求項1~3
のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記無機粒子が、磁性体である請求項4に記載のトナー。
【請求項6】
前記疎水化処理剤が、アルキル鎖を有し、
前記炭化水素ワックスのSP値(SPa)(cal/cm1/2と該アルキル鎖のSP値(SPc)(cal/cm1/2の差(SPa-SPc)をΔSP1とし、前記エステルワックスのSP値(SPb)(cal/cm1/2と前記炭化水素ワックスのSP値(SPa)の差(SPb-SPa)をΔSP2としたとき、
下記式(2)~(4)を満たす請求項4又は5に記載のトナー。
ΔSP1-ΔSP2≦0.10 ・・・(2)
0.41≦ΔSP2≦1.00 ・・・(3)
0.10≦ΔSP1≦0.82 ・・・(4)
【請求項7】
前記疎水化処理剤が、アルキル鎖を有し、
前記エステルワックスのSP値(SPb)(cal/cm1/2と該アルキル鎖のSP値(SPc)(cal/cm1/2の差(SPb-SPc)をΔSP3としたとき、
該ΔSP3が、1.05以下である請求項4~6のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項8】
前記疎水化処理剤が、アルキル鎖を有し、
該アルキル鎖のSP値(SPc)(cal/cm1/2が、7.50~8.50である請求項4~7のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項9】
前記疎水化処理剤が、下記式(I)で示される、アルキルトリアルコキシシランカップリング剤を含有する請求項4~8のいずれか1項に記載のトナー。
2p+1-Si-(OC2q+1 (I)
式(I)中、pは6以上12以下の整数を示し、qは1以上3以下の整数を示す。
【請求項10】
前記エステルワックスの分子量が、500~1000である請求項1~9のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項11】
前記エステルワックスの含有量が、前記結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上35.0質量部以下である請求項1~10のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項12】
前記炭化水素ワックスの含有量が、前記結着樹脂100.0質量部に対して、3.0質量部以上15.0質量部以下である請求項1~11のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項13】
前記エステルワックスが、炭素数2以上6以下のジオールと炭素数16以上22以下の脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物である請求項1~12のいずれか1項に記載のトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真法のような画像形成方法に使用されるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターなどの電子写真画像形成装置においては、高速化、高画質化、長寿命化に対するユーザー要望が益々高まるとともに地球環境保全の気運の高まりから省エネルギー性も益々重要視されている。また資源保護の世界的な時流により両面印刷モードを優先的に使用するユーザーも増加しており、ユーザーの多種多様な使用環境にも安定的な性能を発現する必要がある。
本体サイズは省スペースの観点から小型化が求められている。本体の小型化にはデッドスペースをなくすための各構成部品の最適な配置と必要最小限の構成点数にする必要があり、そのため冷却ファンや風路などは削減の対象となりやすい。そのような場合、本体内の熱が冷めにくい構成となり、さらにプリントスピードが高速化することによってトナーがプリントされた用紙は定着時の熱が冷めないまま次々に排紙トレイに積み重ねられることになる。
【0003】
そのような電子写真画像形成装置においてトナーに求められる性能は低温定着性の向上と排紙トレイでの紙同士の接着の防止である。前述のとおり、本体の小型化と高速化によって熱が冷めないまま排紙トレイに印刷後の紙が積載される状況では排紙トレイでトナーが固まらないため、重ねた紙が接着する画像のはりつきが起こりやすい。特に、低温定着性を向上させたトナーはより低い温度で溶融することになるため、その影響は顕著となる。
【0004】
例えば、特許文献1では低温定着性の向上のために結着樹脂に対して可塑性の高いワックスと離型性の高いワックスを併用し、結着樹脂を溶融しやすくしたトナーが提案されている。
また、特許文献2では結着樹脂に対して可塑性の高いワックス及び結晶性ポリエステル樹脂を含有させ、さらに100℃、60℃、50℃での貯蔵弾性率を一定の範囲に制御することにより低温定着性の向上と排紙張り付き抑制を両立させたトナーが提案されている。この技術を用いることで低温定着性の向上と排紙張り付き抑制を両立させることに対して一定の効果はある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-086642号公報
【文献】特開2018-173499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によって低温定着性は大幅に改善するが、排紙張り付き抑制との両立には不十分である。
また、特許文献2に関し、前述したような小型化・高速化した本体において、両面印刷モードで排紙トレイに紙を積載させるような使用環境の下では、低温定着性と排紙張り付き抑制を両立させるためにはより一層の改良が必要である。
本開示は、小型化・高速化した画像形成装置本体において、両面印刷モードで排紙トレイに紙を積載させるような使用環境下で、低温定着性と排紙張り付き抑制を両立可能なトナーを提供する。
具体的には高速プロセスにおいても定着性(耐テープ剥離性)が良好であり、両面印刷モードで画像の排紙張り付きが起こりにくいトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、結着樹脂、炭化水素ワックス及びエステルワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂を含有しており、
該トナーの下記測定条件による加熱IR測定において結着樹脂に帰属されるピーク強度(696cm -1 のピーク強度)に対する炭化水素ワックスに帰属されるピーク強度(2922cm -1 のピーク強度)の比をIとしたとき、
100℃に加熱した初期のピーク強度比をI(ini)とし、100℃に加熱して保持し10分経過したときのピーク強度比をI(10min)とした場合に、該I(ini)及び該I(10min)が下記式(1)を満たすトナーに関する。
I(ini)/I(10min)≦ 0.95 ・・・(1)
測定条件:
測定法:ATR結晶としてダイアモンドを用いたATR法
測定試料:トナー300mgに15kNの圧力を1分間加えて成形した直径1cmのトナーペレット
昇温条件:室温から40℃に昇温し、1分保持、その後、10℃/minで100℃まで昇温し、100℃で10分保持
【発明の効果】
【0008】
本開示により、小型化・高速化した画像形成装置本体において、両面印刷モードで排紙トレイに紙を積載させるような使用環境下で、低温定着性と排紙張り付き抑制を両立可能なトナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
本発明者らは小型化・高速化したプリンタにおいて低温定着性に優れ、両面印刷モードでの排紙トレイ積載時に画像の張り付きが起こりにくいトナーについて鋭意検討を行った。
低温定着については高速プロセスの中で定着ローラにより、トナーが一瞬で溶融することが必要である。保存性や耐久性とのバランスを考えると、微分散した結晶性材料、つまり、結着樹脂に対して可塑性をもったワックスをトナー粒子の内部に含有させることにより、高速プロセスにおいても低温での溶融を達成できる。さらに、離型ワックスを含有させることにより、離型ワックスが定着時に画像の表面に移行し、定着ローラに対して離型効果を発揮することで低温定着を達成できる。
これらのワックスの含有量はバランスが重要である。可塑性を持ったワックスは少なすぎると低温での溶融の効果を発揮できず、多すぎると耐熱保存性が低下し、定着時にホットオフセットが発生する。ホットオフセットに関しては離型ワックスにより定着ローラとの離型性を確保できるが、離型ワックスが少なすぎると離型効果を発揮できず、多すぎると紙との間にも離型効果が発現し、逆に定着を阻害することになる。
つまり、可塑ワックスと離型ワックスの両者が最適な量とタイミングでそれぞれの役割を発現させることにより小型化及び高速化したプロセスにおいても低温定着性は達成できる。
【0011】
しかしながら、そのような低温定着性が向上したトナーであるが故に両面印刷時の排紙張り付きを抑制することが困難になってきている。小型化及び高速化したプリンタでは両面印刷モードで連続プリントを実施し、排紙トレイに紙を積載した場合、排紙直後の紙は100℃程度に達し、紙束の中心付近の温度は80℃程度に達する場合がある。
積載した紙の坪量や積載枚数によっても変わるが、その熱はなかなか冷めず、印刷されたトナーは10分以上温められた状態となることがわかった。その状態ではワックスは溶融状態であり、トナーは柔らかい状態で保持されるため、重ねられた紙の中でトナー-紙間の排紙はりつき(文字画像の両面印刷で起こりやすい)また、さらにはトナー-トナー
間の排紙はりつき(ベタ画像の両面印刷で起こりやすい)が生じやすい。
【0012】
このような課題を解決するため、本発明者らは離型ワックスの作用に着目した。具体的には排紙トレイの紙束の中でトナーが溶融状態であっても離型ワックスの離型効果を最大限に発揮できれば、排紙はりつきの発生を抑えられると着想した。そこでまず定着ニップ内から排紙トレイ上における離型ワックスのふるまいについて検討した。
その結果、離型ワックスは定着時にトナー表面に移行し、定着ローラ表面に対する離型効果を発揮するが、そのとき接触した定着ローラに離型ワックスの大部分が移行してしまうことが確認された。そのため、画像表面に残る離型ワックスは減少しており、排紙トレイ積載時のトナー溶融状態において離型効果を発揮することが難しくなっていると本発明者らは考えた。
これに対して、排紙トレイにおいても離型効果を持続させるために単純にトナー粒子が含有する離型ワックスの量を増やした場合、前述のように、紙との間の離型効果が大きくなり、逆に定着性を低下させる。また、離型ワックスが多すぎると、トナーの品質に与える悪影響が大きく、耐久性の低下などを引き起こす。
【0013】
そこで本発明者らは低温定着性と排紙張り付き抑制を両立させるために、離型ワックスのトナー表面への移行量を段階的に制御する手段を着想した。つまり、定着ニップ内では離型ワックスの必要十分量だけが表面に移行し、その後の排紙トレイでの蓄熱放置によって表面の離型ワックス量を増やすことができるトナーに想到した。これにより、定着ニップ内と排紙トレイ積載時の両段階で離型ワックスの離型効果を効率的に発揮できることを見出した。この効果により、低温定着性と両面印刷時の排紙はりつきの抑制を両立できる。
【0014】
つまり、トナー粒子内部に離型ワックスと可塑ワックスを含有させ、トナー表面の離型ワックス量について、100℃に加熱した初期から10分後にかけて離型ワックスのトナー表面への移行量を特定の範囲に制御することによって低温定着性と両面印刷時の排紙張り付きの両方が良好となることを見出し、上記トナーを完成するに至った。
【0015】
すなわち本開示は、結着樹脂、炭化水素ワックスA及びエステルワックスBを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該トナーを100℃で10分保持する加熱IR測定において結着樹脂に帰属されるピーク強度に対する炭化水素ワックスAに帰属されるピーク強度の比をIとしたとき、
100℃に加熱した初期のピーク強度比をI(ini)とし、100℃に加熱して保持し10分経過したときのピーク強度比をI(10min)とした場合に、該I(ini)及び該I(10min)が下記式(1)を満たすトナーに関する。
I(ini)/I(10min)≦ 0.95 ・・・(1)
【0016】
加熱IR測定の詳細については後述するが、この方法により加熱中のトナー表面における炭化水素ワックスAの量の変化を捉えることができる。I値は加熱IR測定における結着樹脂に帰属されるピーク強度に対する炭化水素ワックスAに帰属されるピーク強度の比であり、トナー表面(近傍)における炭化水素ワックスAの量の指標である。
そして、トナーを100℃に加熱した初期のI値をI(ini)、100℃に加熱保持し、10分経過したときのI値をI(10min)とする。I(ini)の値とI(10min)の値が式(1)を満たすことが必要である。
I(ini)/I(10min)が0.95以下であることにより、離型効果を持った炭化水素ワックスAの一部が定着ニップ内でトナー表面に移行して定着ローラに対する離型効果を発揮する。その後排紙トレイ上で蓄熱放置されている間にも徐々に表面移行することになり積載された画像間でも離型効果が発現し、両面印刷時においても排紙貼り付きを抑制することが可能となる。
また、I(ini)/I(10min)は0.94以下であることが好ましく、0.93以下であることがさらに好ましい。I(ini)/I(10min)の下限は、特に制限されないが、好ましくは0.70以上であり、より好ましくは0.78以上であり、さらに好ましくは0.80以上である。
【0017】
上記特性を発揮する手段の一つとして、トナー粒子が疎水化処理剤で疎水化処理された無機粒子Cを含有することが好ましい。疎水化処理剤が、アルキル鎖を有することが好ましい。
そして、炭化水素ワックスAの以降の制御のために、炭化水素ワックスAとエステルワックスB、及び無機粒子Cにおける疎水化処理剤のアルキル鎖のSP値を制御することが好ましい。
また、I(ini)/ I(10min)を好ましい範囲とするためには、ΔSP1及びΔSP2が以下の式(2)~(4)を満たすことが好ましい。
ΔSP1は、炭化水素ワックスAのSP値(SPa)(cal/cm1/2と無機粒子Cにおける疎水化処理剤のアルキル鎖のSP値(SPc)(cal/cm1/2の差(SPa-SPc)である。
また、ΔSP2は、エステルワックスBのSP値(SPb)(cal/cm1/2と炭化水素ワックスAのSP値(SPa)の差(SPb-SPa)である。
ΔSP1-ΔSP2≦0.10 ・・・(2)
0.41≦ΔSP2≦1.00 ・・・(3)
0.10≦ΔSP1≦0.82 ・・・(4)
【0018】
SP値は、溶解度パラメータともいい、ある物質がある物質にどのくらい溶解するかを示す溶解性や親和性の指標として用いられる数値である。SP値が近いもの同士は溶解性や親和性が高く、SP値が離れているものは溶解性や親和性が低い。なお、SP値は一般的によく用いられているFedorsの方法[Poly.Eng.Sci.,14(2)147(1974)]に基づいて算出した値を用いる。またSP値の単位は(cal/cm1/2である。
【0019】
炭化水素ワックスAのSP値(SPa)は、通常8.30~8.50程度である。
炭化水素ワックスAのSP値とエステルワックスBのSP値と無機粒子Cにおける疎水化処理剤のアルキル鎖のSP値を上記の範囲に設計することによって、100℃加熱後10分時点でトナー表面(近傍)において炭化水素ワックスを増加させやすくなる。
【0020】
上記式(3)を満たすことによって、炭化水素ワックスAはエステルワックスBとの親和性により、定着時にトナー表面に移行する作用が抑えられ、内部に留められる。ΔSP2を0.41以上にすることでドメインを有したまま混ざり合わず、ΔSP2を1.00以下にすることで適した親和性が働く。
エステルワックスBは結着樹脂と相溶するため、高温時の溶融状態では結着樹脂と混ざり合った状態となる。そのため、炭化水素ワックスAはエステルワックスBにより内部に留められる作用が働く。ΔSP2は、より好ましくは0.43以上0.60以下である。
【0021】
ΔSP1を0.10以上0.82以下の範囲にすることによって炭化水素ワックスAは無機粒子Cの疎水化処理剤のアルキル鎖との親和性により無機粒子に引き寄せられることになる。ΔSP1を0.10以上にすることで完全には混ざり合わず、ΔSP1を0.82以下にすることで適した親和性が働く。ΔSP1は、より好ましくは0.15以上0.55以下である。
【0022】
さらに、ΔSP1-ΔSP2≦0.10の関係にすることにより、相互作用に差をつけ勾配を作ることで、炭化水素ワックスAが、エステルワックスBと無機粒子Cによって引
き寄せられ合いながら、無機粒子Cの方へ引き出される駆動力が生じる。その駆動力は、エステルワックスB又は無機粒子Cとの親和性によりトナー内部に留められた炭化水素ワックスAを排紙トレイで蓄熱放置された画像においてその表面に移行させる。
ΔSP1-ΔSP2は、より好ましくは0.08以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは-0.60以上であり、より好ましくは-0.50以上である。
【0023】
このように各成分のSP値を上記範囲に設定することが、式(1)の関係を満たすために好ましい。
式(1)の関係式を成立させることによって、定着時には定着ローラとの離型に必要十分な量の炭化水素ワックスAだけがトナー表面に移行して離型効果を発揮する。さらに排紙トレイで積載された紙束内の蓄熱放置された画像で炭化水素ワックスAがトナー表面に移行することで排紙張り付きも抑制される。
【0024】
トナー粒子は、エステルワックスBを含有する。エステルワックスBは定着時に結着樹脂を可塑する効果があり、低温定着を達成するために必要である。エステルワックスBの可塑効果は結着樹脂と相溶することにより実現する。エステルワックスBとしては上記特性を有するものであれば特に限定されることなく、公知のワックスを用いることができる。
例えば、1官能エステルワックスの他、2官能エステルワックスをはじめ、4官能や6官能などの多官能エステルワックスを用いることもできる。具体的には、アルコール成分としてはラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの1官能のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの2官能のアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多官能アルコールとパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの脂肪族モノカルボン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
長鎖脂肪酸又はアルコールの炭化水素鎖の炭素数は、10以上30以下が好ましく、12以上24以下がより好ましい。特に、2官能エステルワックスが好ましく、後述するSP値の範囲としては7.0~10.0が好ましく、8.4~9.0がより好ましい。
【0025】
エステルワックスBの分子量は500~1000であることが好ましく、550~800であることがより好ましい。分子量をこの範囲にすることによって結着樹脂への可塑効果が上がり、低温定着性への寄与が大きくなる。具体的には、ジオールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物を含有することがより好ましい。
また、エステルワックスBは、炭素数2以上6以下のジオールと炭素数16以上22以下の脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物であることが好ましい。
炭素数2以上6以下のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
炭素数16以上22以下の脂肪族モノカルボン酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
エステルワックスBの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上45.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以上35.0質量部以下であることがより好ましく、10.0質量部以上30.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0026】
エステルワックスBの分子量の分析手法としては特に方法は限定しないが、エステルワックスの質量を検出するために適した手法であればよい。例えば、ThermoFisherScientific製の質量分析装置ISQと直接資料導入法を用いて分子イオンを検出する方法やBrukerDaltonics製のMALDI-TOFMSによりマ
トリックスとして2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)、イオン化剤としてトリフルオロ酢酸ナトリウムを用いて分子イオンを検出する方法がある。
エステルワックスBのSP値(SPb)は、好ましくは8.60以上9.20以下であり、より好ましくは8.80以上9.00以下である。
【0027】
また、トナー粒子は、炭化水素ワックスAを含有する。前述のとおり、炭化水素ワックスAは定着ニップ内では定着ローラ表面との間に離型効果を発揮し、排紙トレイ上で蓄熱放置された画像においてはトナー-紙間、トナー-トナー間での離型効果を持たせるために必要である。
炭化水素ワックスAとしては公知のものが使用できるが、石油系ワックス、炭化水素ワックス、ポリオレフィンワックスなどが挙げられる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどが挙げられる。
炭化水素ワックスAの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましく、4.0質量部以上10.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0028】
また、トナー粒子は疎水化処理された無機粒子Cを含有することが好ましい。
無機粒子としてはFe、Si、Ti、Sn、Zn、Al、Ceのような金属の金属酸化物が挙げられ、公知のものが使用可能である。無機粒子の表面を被覆処理する方法は、通常、表面疎水化処理剤を用いる処理方法であれば特に限定されない。
例えば、ボールミルやサンドグラインダーなどのメカノケミカル型のミルで水や有機溶剤などの溶媒中に処理すべき粉体を分散させた後、疎水化処理剤を混合し、溶媒を除去して乾燥する湿式法;ヘンシルミキサーやスーパーミキサーなどで、処理すべき粉体と疎水化処理剤を混合後、乾燥する乾式法;ジェットミルのような高速気流中で、処理すべき粉体と表面疎水化処理剤を接触させて処理を行う方法、ミックスマラーなどのホイール形混練機によるせん断作用と圧縮作用によって粒子の凝集を解きながら、粒子表面と疎水化処理剤との密着性を高める方法などを例示することができる。
【0029】
また疎水化処理された無機粒子Cは磁性体であることがより好ましい。
磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、並びにこれらの混合物が挙げられる。
これらの中でも、マグネタイトが好ましく、その形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、燐片状などがあるが、6面体、球形などの磁性体同士の接触面積が小さいものが、凝集性が抑えられるために画像濃度を高める上で好ましい。
【0030】
無機粒子Cの一次粒子の個数平均粒径は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましく、150nm以上250nm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
無機粒子Cが磁性体である場合、磁性体の含有量は、結着樹脂を100質量部に対し、35質量部以上100質量部以下であることが好ましく、45質量部以上95質量部以下であることがより好ましい。
なお、トナー中の磁性体の含有量は、パーキンエルマー社製熱分析装置TGA Q5000IRを用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱し、100℃~750℃の減量質量を、ト
ナーから磁性体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性体量とする。
【0032】
磁性体の製造方法として、以下を例示することができる。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性体の芯となる種晶をまず生成する。
【0033】
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5~10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。このとき、任意のpH及び反応温度、攪拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性酸化鉄粒子を定法により濾過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
【0034】
無機粒子Cの疎水化処理は特に制限されるものではないが、後述する式(I)で示した比較的炭素数の大きい疎水化処理剤を用いて表面処理を施された無機粒子Cであることが好ましい。
これにより疎水化処理剤を無機粒子Cの粒子表面に均一に反応させて高い疎水性を発現できる。
【0035】
無機粒子Cは下記式(I)で示される、アルキルトリアルコキシシランカップリング剤を疎水化処理剤として用いて疎水化処理された無機粒子であることが好ましい。無機粒子Cは、好ましくは無機粒子と、該無機粒子表面の疎水化処理剤の反応物とを有する。
2p+1-Si-(OC2q+1 (I)
式(I)中、pは6以上12以下(好ましくは8以上12以下、より好ましくは10以上12以下)の整数を示し、qは1以上3以下(好ましくは1又は2、より好ましくは1)の整数を示す。
上記式におけるpが6以上であることで疎水性を十分に付与することができ、一方でpが12以下であることで、無機粒子の表面において均一に処理させることができ、無機粒子の合一を抑制できるため好ましい。
【0036】
無機粒子Cにおける疎水化処理剤のアルキル鎖のSP値は、7.50~8.50が好まく、7.80~8.20がより好ましい。
無機粒子Cにおける疎水化処理剤のアルキル鎖とは、好ましくは無機粒子Cの表面に存在する疎水化処理剤(及びその反応物)におけるアルキル鎖を示し、より好ましくは式(I)で示される疎水化処理剤(及びその反応物)のSiに結合したアルキル基である。
疎水化処理剤の量は、未処理の無機粒子100質量部に対し0.3質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、0.6質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましい。
【0037】
このように疎水化処理した無機粒子は後述する懸濁重合法でトナーを製造した場合、トナー化の過程でアルキル置換基による疎水性と残存する水酸基の親水性の効果により、界面活性剤のように無機粒子はトナー粒子の表面近傍に偏って存在するようになる。磁性体が表面近傍に存在することは40℃95%RHなどの過酷な環境に置かれた時にワックスのトナー表面への染み出しを抑制する効果がある。
放置によりトナー表面へワックスが染み出すと、排紙トレイで蓄熱放置された画像において炭化水素ワックス表面移行量の増加が起こりにくくなる。無機粒子を表面近傍に存在させることは過酷環境への放置によるトナー表面へのワックスの染み出しを抑制すること
で、排紙はりつきの抑制効果をより維持できる。
【0038】
また、結着樹脂はエステルワックスの可塑効果を十分に作用させるために、スチレンに由来するモノマーユニットを含有することが好ましい。
さらに好ましくはスチレンアクリル系共重合体を含有する。スチレンアクリル系共重合体は、スチレン系単量体とアクリル系単量体(アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのアルキルエステル)との共重合体である。より好ましくは、スチレン及びアルキル基の炭素数1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマーの共重合体である。さらに好ましくは、スチレン及びアルキル基の炭素数1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル並びに必要に応じて添加される架橋剤の共重合体である。
ここで、スチレンアクリル系共重合体は、スチレンアクリル系共重合体のみから構成された状態で結着樹脂中に含有されていてもよいし、他の重合体などとのブロック共重合体、グラフト共重合体、又はそれらの混合物の状態で結着樹脂中に含有されていてもよい。
【0039】
スチレンに由来するモノマーユニットを含有する結着樹脂、特にスチレンアクリル系共重合体を含有する樹脂とすることによりエステルワックスの可塑効果が強く発揮され、低温定着化への寄与が大きくなる。
スチレンに由来するモノマーユニットは、下記式(St)で表されるモノマーユニットである。
【0040】
【化1】
【0041】
結着樹脂中のスチレンに由来するモノマーユニットの含有量は、好ましくは50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは65質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。
また、トナーを100℃に加熱保持し、10分経過したときのI値であるI(10min)が0.30以上であることが好ましい。より好ましくは0.32以上であり、さらに好ましくは0.35以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは0.60以下であり、より好ましくは0.50以下である。
上記含有量、及びI(10min)を満たすことは、定着後の排紙トレイにおける画像表面の炭化水素ワックスの量が、張り付きを抑制するために十分であることを示している。
【0042】
結着樹脂中のスチレンに由来するモノマーユニットの含有量は核磁気共鳴分光法(以後、NMR)により簡易的に求めることができる。トナーを重クロロホルムに加え、溶解した結着樹脂のプロトンのNMRスペクトルを測定する。得られたNMRスペクトルから各モノマーのモル比及び質量比を算出し、スチレンに由来するモノマーユニットの含有量を求めることができる。
たとえば、スチレンアクリル共重合体の場合はスチレンモノマーに由来する6.5ppm付近のピークと3.5-4.0ppm付近のアクリルモノマーに由来するピークをもとに組成比と質量比を算出することができる。
また例えば、トナーの結着樹脂として一般的に知られているポリエステル樹脂を含有する場合にはポリエステル樹脂を構成する各モノマーに由来するピークとスチレンアクリル共重合体に由来するピークも併せてモル比及び質量比を算出し、スチレンに由来するモノマーユニットの含有量を求める。
【0043】
エステルワックスBのSP値(SPb)と無機粒子Cにおける疎水化処理剤のアルキル鎖のSP値(SPc)の差(SPb-SPc)をΔSP3としたとき、ΔSP3は1.05以下が好ましく、1.02以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0.45以上が好ましく、0.55以上がより好ましい。この範囲にあると低温定着性(テープ剥離性)が良化する傾向がある。
これはエステルワックスBと無機粒子Cの親和性が高まることによって結着樹脂を可塑する効果が高まることによると考えている。また、後述する懸濁重合法で作製したトナーにおいて、無機粒子Cはトナー粒子の表面付近に偏って存在しやすいが、それに伴って親和性の高いエステルワックスBは表面近傍に存在率が高くなる。
トナー表面近傍の溶融特性は内部の溶融特性よりも定着性への寄与がより大きいと想定されるため、トナー表面近傍に可塑効果の大きいエステルワックスBが存在することは低温定着性の向上に大きく貢献する。
【0044】
トナー粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。
負帯電用の荷電制御剤としては、有機金属錯化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯化合物;アセチルアセトン金属錯化合物;芳香族ハイドロキシカルボン酸又は芳香族ダイカルボン酸の金属錯化合物などが例示される。
市販品の具体例として、Spilon Black TRH、T-77、T-95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S-34、S-44、S-54、E-84、E-88、E-89(オリエント化学工業(株))が挙げられる。
該荷電制御剤は単独、又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
該荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電量の点から、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。
【0045】
トナー粒子は、顔料や染料などの着色剤を含有してもよい。これらは単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。
顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1、3、20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。
顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、16、17、60、62、66など、C.I.バットブルー6、C.I.
アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。
顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、48;2、48;3、48;4、49、50、51、52、53、54、55、57、57;1、58、60、63、64、68、81、81;1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254など、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35が挙げられる。
マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、52、58、63、81、82、83、84、100、109、111、121、122など、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27など、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40など、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
【0046】
着色剤(無機粒子C以外のもの)の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
【0047】
トナーは、トナー粒子及び外添剤を有していてもよい。
外添剤としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、酸化亜鉛微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子、酸化セリウム微粒子及び炭酸カルシウム微粒子の金属酸化物微粒子(無機微粒子)を挙げることができる。また、2種類以上の金属を用いた複合酸化物微粒子を用いることもできるし、これらの微粒子群の中から任意の組み合わせで選択される2種以上を用いることもできる。
また、樹脂微粒子や、樹脂微粒子と無機微粒子の有機無機複合微粒子を用いることもできる。
外添剤は、シリカ微粒子及び有機無機複合微粒子からなる群から選択される少なくとも一を有することがより好ましい。
【0048】
シリカ微粒子は、ゾルゲル法で作製されるゾルゲルシリカ微粒子、水性コロイダルシリカ微粒子、アルコール性シリカ微粒子、気相法により得られるフュームドシリカ微粒子、溶融シリカ微粒子などが挙げられる。
樹脂微粒子としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂のような樹脂粒子が挙げられる。
有機無機複合微粒子としては、樹脂微粒子と無機微粒子で構成された有機無機複合微粒子が挙げられる。
有機無機複合微粒子であれば、無機微粒子としての良好な耐久性及び帯電性を維持しつつ、定着時においては、熱容量の低い樹脂成分により、トナー粒子の合一を阻害しにくく、定着阻害を生じにくい。その為、耐久性と定着性の両立を図りやすい。
【0049】
有機無機複合微粒子は、好ましくは、樹脂成分である樹脂微粒子(好ましくはビニル系
樹脂微粒子)の表面に埋め込まれた無機微粒子で構成された凸部を有する複合微粒子である。より好ましくは、ビニル系樹脂粒子の表面に無機微粒子が露出している構造を有する複合微粒子である。さらに好ましくは、ビニル系樹脂微粒子の表面に、無機微粒子に由来する凸部を有する構造を有する複合微粒子である。
有機無機複合微粒子を構成する無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、酸化亜鉛微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子、酸化セリウム微粒子及び炭酸カルシウム微粒子などの微粒子を挙げることができる。
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0050】
外添剤は、疎水化処理剤により疎水化処理がされていてもよい。
疎水化処理剤としては、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのクロロシラン類;
テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン類;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザンなどのシラザン類;
ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、及び、末端反応性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル;
ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン類;
脂肪酸及びその金属塩として、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸、前記脂肪酸と亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩が挙げられる。
【0051】
これらの中でも、アルコキシシラン類、シラザン類、シリコーンオイルは、疎水化処理を実施しやすいため、好ましく用いられる。これらの疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.05質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0053】
以下に、トナーの製造方法について例示する。
トナーの製造方法としては粉砕法、重合法など、公知の方法を採用しうる。例えば分散重合法、会合凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法、乳化凝集法などが挙げられる。
懸濁重合法は、トナー粒子の表面近傍内部に無機粒子Cを存在させやすく、好適な物性を満たしたトナーが得られやすくより好ましい。
【0054】
トナーを懸濁重合法で製造する場合における好ましい態様について以下に記載する。
懸濁重合法では、例えば、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、炭化水素ワックスAとエステルワックスB、並びに、必要に応じて、無機粒子C、着色剤、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤及びその他の添加剤を、均一に分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に、適当な攪拌器を用いて、得られた重合性単量体組成物を分散・造粒し、重合開始剤を用いて重合反応を行い、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。
【0055】
重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エチルスチレンなどのスチレン系単量体。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル類。
その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどの単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、又は混合して使用し得る。
【0056】
上述の単量体の中でも、スチレン系単量体を単独で、又はアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類など他の単量体と混合して使用することがトナー構造を制御し、トナーの現像特性及び耐久性を向上し易い点から好ましい。特に、スチレンとアクリル酸エステル又は、スチレンとメタクリル酸エステルを主成分として使用することがより好ましい。すなわち、結着樹脂がスチレンアクリル樹脂を50質量%以上含有することが好ましい。
アクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類からなる群から選択される少なくとも一、並びにスチレンを含むモノマーの重合体が好ましい。
【0057】
重合法によるトナー粒子の製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30時間以下であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下の添加量で用いることが好ましい。そうすると、分子量5000以上50000以下の間に極大を有する重合体を得ることができ、トナーに好ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。
【0058】
具体的な重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニ
トリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネートなどの過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
この中でも、t-ブチルパーオキシピバレートが好ましい。
【0059】
トナーを重合法により製造する場合は、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては以下のものが挙げられる。
ジビニルベンゼン、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(A200)、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(A400)、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(A600)、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート(A1000);
ジプロピレングリコールジアクリレート(APG100)、トリプロピレングリコールジアクリレート(APG200)、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート(APG400)、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート(APG700)、ポリテトラプロピレングリコール#650ジアクリレート(A-PTMG-65)。
添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.05質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、0.10質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましく、0.20質量部以上5.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0060】
上記重合性単量体組成物には、極性樹脂を含有させてもよい。
極性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-ポリエステル共重合体、ポリアクリレート-ポリエステル共重合体、ポリメタクリレート-ポリエステル共重合体、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
これらを単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。また、これらポリマー中にアミノ基、カルボキシ基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基などの官能基を導入してもよい。これらの樹脂の中でも、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0061】
ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はその両者を適宜選択して使用することが可能である。
ポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオー
ル、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、又は式(A)で表されるビスフェノール誘導体;下記式(A)で表される化合物の水添物、下記式(B)で示されるジオール又は、式(B)の化合物の水添物のジオールが挙げられる。
【0062】
【化3】

式(A)中、Rはエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、x+yの平均値は2~10である。
【0063】
【化4】
【0064】
2価のアルコール成分としては、帯電特性、環境安定性が優れておりその他の電子写真特性においてバランスのとれた上記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が特に好ましい。
この化合物の場合には、定着性やトナーの耐久性の点においてアルキレンオキサイドの平均付加モル数は2以上10以下が好ましい。
【0065】
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸又はその無水物;炭素数6~18のアルキル又はアルケニル基で置換されたコハク酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。
【0066】
さらに、3価以上のアルコール成分としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルを例示することができ、3価以上の酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物などを例示することができる。
ポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分との合計を100モル%としたとき、45モル%以上55モル%以下がアルコール成分であることが好ましい。
【0067】
ポリエステル樹脂は、スズ系触媒、アンチモン系触媒、チタン系触媒などいずれの触媒を用いて製造することができるが、チタン系触媒を用いることが好ましい。
また、極性樹脂は、現像性、耐ブロッキング性、耐久性の観点から、数平均分子量が2500以上25000以下であることが好ましい。
極性樹脂の酸価は、1.0mgKOH/g以上15.0mgKOH/g以下であることが好ましく、2.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
極性樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0068】
重合性単量体組成物が分散される水系媒体には分散安定剤を含有させてもよい。
分散安定剤としては、公知の界面活性剤、有機分散剤、及び無機分散剤が使用できる。
中でも無機分散剤は、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えにくいため、好ましく使用できる。
無機分散剤の具体例としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトなどのリン酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物が挙げられる。
【0069】
無機分散剤の添加量は、重合性単量体100.0質量部に対して、0.2質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。また、分散安定剤は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用してもよい。
無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用してもよいが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて無機分散剤の微粒子を生成させて用いることができる。
例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速攪拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸カルシウムの微粒子を生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。
【0070】
界面活性剤としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。
重合性単量体を重合する工程において、重合温度は通常40℃以上、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定するとよい。この温度範囲で重合を行うと、例えば、離型剤などが相分離により析出して内包化がより完全となる。
その後、50℃以上90℃以下程度の反応温度から冷却し、重合反応工程を終了させる冷却工程がある。その際に、離型剤と結着樹脂の相溶状態を保つように徐々に冷却するとよい。
重合性単量体の重合終了後、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。トナー粒子に、外添剤を混合してトナー粒子の表面に付着させることで、トナーを得てもよい。また、該製造工程に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
【0071】
トナーの各種物性の測定方法について以下に説明する。
<加熱IRによるI(ini)及びI(10min)の測定方法>
トナー300mgにニュートンプレスにより15kNの圧力を1分間加えて直径1cmのトナーペレットを作製する。
そのトナーペレットをサンプルとして下記条件で加熱IR測定を実施する。
装置:FT-IR PerkinElmer社 Frontier
加熱ユニット: Specac社 MKII GoldenGate Single Reflection ATR System
加熱プログラム:室温から40℃に昇温、40℃で1分保持、10℃/minで100℃まで昇温、100℃で10分保持
IRスペクトル取得条件:分解能 4cm-1、測定範囲 4000-550cm-1、積算回数 5
スペクトル取得間隔: 30秒
得られたIRスペクトルより炭化水素ワックスAに帰属されるピーク2922cm-1及び結着樹脂に帰属されるピークの高さを測定し、結着樹脂に対する炭化水素ワックスAのピーク高さ比Iを算出する。結着樹脂の組成に応じて、結着樹脂に帰属されるピークの位置を選択すればよい。結着樹脂の組成は、後述する「結着樹脂の組成分析」により得ることができる。
例えば、結着樹脂が、スチレンアクリル樹脂の場合はスチレンに由来するピーク696cm-1の高さを測定し、結着樹脂に対する炭化水素ワックスAのピーク高さ比Iを算出する。100℃に到達時点のIの値をI(ini)とし、100℃に到達後10分保持した後のIの値をI(10min)とする。サンプル3点の相加平均値を採用する。
【0072】
<SP値の算出方法>
溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorsの式(2)を用いて求める。
下記Δei、及び、Δviの値は、「コーティングの基礎科学、54~57頁、1986年(槇書店)」の表3-9に記載された、原子及び原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)を参考にする。
なお、SP値の単位は、(cal/cm1/2であるが、1(cal/cm1/2=2.046×10(J/m1/2によって(J/m1/2の単位に換算することができる。
δi=(Ev/V)1/2=(Δei/Δvi)1/2 式(2)
Ev:蒸発エネルギー
V:モル体積
Δei:i成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:i成分の原子又は原子団のモル体積
【0073】
<質量分析によるエステルワックスBの分子量測定>
・トナーからワックスの分離
トナーのままでも測定可能であるが、分離操作を行った方がより好ましい。
トナーに対して貧溶媒であるエタノールにトナーを分散させ、ワックスの融点を超える温度まで昇温させる。この時必要に応じて加圧してもよい。この操作により融点を超えたワックスはエタノールに中に溶融・抽出されている。加温、さらに加圧している場合は加圧したまま固液分離することにより、トナーからワックスを分離できる。次いで、抽出液を乾燥・固化することによりワックスを得る。
【0074】
・熱分解GCMSによるワックスの同定と分子量測定
質量分析装置:ThermoFisherScinetific社 ISQ
GC装置:ThermoFisherScinetific社 FocusGC
イオン源温度:250℃
イオン化方法:EI
質量範囲: 50-1000 m/z
カラム:HP-5MS[30m]
熱分解装置:日本分析工業社 JPS-700
590℃のパイロホイルに抽出操作により分離したワックス少量と水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)1μLを加える。サンプルに対し上記条件で熱分解GCMS測
定を実施し、エステル化合物由来のアルコール成分、カルボン酸成分のそれぞれについてのピークを得る。メチル化剤であるTMAHの作用によりアルコール成分、カルボン酸成分はメチル化物として検出される。
得られたピークを解析し、エステルワックスの構造を同定することにより分子量を得ることができる。
また、炭化水素ワックスは、炭化水素の分解パターンによる分布を持ったピークが現れる。このピークの確認と解析により、炭化水素ワックスの同定をすることができる。
【0075】
・直接導入法によるワックスの同定と分子量測定
質量分析装置:ThermoFisherScinetific社 ISQ
イオン源温度:250℃ 電子エネルギー:70eV
質量範囲: 50-1000 m/z(CI)
Reagent Gas:メタン(CI)
イオン化方法: ThermoFisherScinetific社 Direct Exposure Probe DEP
0 mA(10 sec)-10 mA/sec-1000 mA(10sec)
抽出操作により分離したワックスをDEPユニットのフィラメント部分に直接載せて測定する。得られたクロマトグラムの0.5分~1分付近の主成分ピークのマススペクトルの分子イオンを確認し、エステルワックスを同定し分子量を得る。
また、炭化水素ワックスは14m/z刻みの分布を持った特徴的なマススペクトルを持つため、それにより確認することができる。
【0076】
・MALDI-TOFMSによるエステルワックスの同定と分子量測定
抽出操作により分離したワックスを2mg精秤し、クロロホルム2mlを加えて溶解させてサンプル溶液を作製する。次に、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)20mgを精秤し、クロロホルム1mlを添加して溶解させてマトリックス溶液を調製する。また、トリフルオロ酢酸NA(NATFA)3mgを精秤した後、アセトンを1ml添加して溶解させてイオン化助剤溶液を調製する。
このようにして調製したサンプル溶液25μl、マトリックス溶液50μl、イオン化助剤溶液5μlを混合して、MALDI分析用のサンプルプレート上に滴下させ、乾燥させることで測定サンプルとする。サンプルを下記条件で測定し、マススペクトルを得る。得られたマススペクトルからエステルワックスを同定し分子量を得る。
装置:Bruker社 Flextreme
条件:Tof検出モード Reflectモード
測定範囲: 100-2000 m/z
レーザー強度: 60%
積算回数: 3000
【0077】
<結着樹脂の組成分析>
・結着樹脂の分離方法
トナー100mgをクロロホルム3mlに溶解する。次いで、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えば、マイショリディスクH-25-2(東ソー社製)を使用)を取り付けたシリンジで吸引ろ過することで不溶分を除去する。
分取HPLC(装置:日本分析工業社製 LC-9130 NEXT 分取カラム[60cm] 排除限界:20000、70000、2本連結)に可溶分を導入しクロロホルム溶離液を送液する。得られるクロマトグラフの表示でピークが確認できたら、単分散ポリスチレン標準試料で分子量2000以上となるリテンションタイムを分取する。得られた文画の溶液を乾燥・固化し結着樹脂を得る。
【0078】
・核磁気共鳴分光法(NMR)による組成比及び質量比の測定
トナー20mgに重クロロホルム1mLを加え、溶解した結着樹脂のプロトンのNMRスペクトルを測定する。得られたNMRスペクトルから各モノマーのモル比及び質量比を算出し、スチレンに由来するモノマーユニットの含有量を求めることができる。
たとえば、スチレンアクリル共重合体の場合はスチレンモノマーに由来する6.5ppm付近のピークと3.5~4.0ppm付近のアクリルモノマーに由来するピークをもとに組成比と質量比を算出することができる。
また、例えばトナーの結着樹脂として一般的に知られているポリエステル樹脂を含有する場合にはポリエステル樹脂を構成する各モノマーに由来するピークとスチレンアクリル共重合体に由来するピークも併せてモル比及び質量比を算出し、スチレンに由来するモノマーユニットの含有量を求める。
NMR装置:JEOL RESONANCE ECX500
観測核:プロトン 測定モード:シングルパルス
【0079】
<無機粒子Cの同定>
(無機粒子Cが磁性体である場合)
トナー100mgにクロロホルム10mLを添加し、ホモジナイザーに10分かけることで結着樹脂を溶解する。その後、磁石により磁性体(無機粒子C)を回収する。この操作を数回繰り返すことにより磁性体を単離する。
得られた磁性体を前述の条件で熱分解GCMSにかける。測定結果より疎水化処理剤の熱分解物が得られるため、主成分から疎水化処理剤の炭素数を求める。熱分解物は疎水化処理剤のアルキル置換基、あるいはその二重結合変性物、アルキルシランなどとして検出される。
【0080】
(無機粒子Cが磁性体以外の場合)
トナー100mgにクロロホルム1mLを添加し、ホモジナイザーに10分かけることで結着樹脂を溶解・膨潤させる。そこにメタノールを10mL加えることにより、樹脂成分は再沈、上澄みに無機粒子Cが分散する。静置後の上澄みを回収し、乾燥させることで無機粒子Cを単離する。
得られた無機粒子Cを前述の条件で熱分解GCMSにかける。測定結果より疎水化処理剤の熱分解物が得られるため、主成分から疎水化処理剤の炭素数を求める。熱分解物は疎水化処理剤のアルキル置換基、あるいはその二重結合変性物、アルキルシランなどとして検出される。
【実施例
【0081】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。実施例及び比較例中で使用する「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0082】
<エステルワックスB1の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、ステアリン酸100部と、エチレングリコール10部とを加え、窒素気流下、180℃で反応水を留去しつつ、15時間常圧で反応させた。
この反応によって得られたエステル化粗生成物100部に対して、トルエン20部と、エタノール4部とを加え、攪拌後30分間静置した後、エステル相から分離した水相(下層)を除去することによって、前記エステル化粗生成物を水洗した。水相のpHが7になるまで、上記水洗を4回繰り返した。その後、170℃、5kPaの減圧条件下で、水洗されたエステル相から溶媒を留去し、エステルワックスB1を得た。
【0083】
<エステルワックスB2の製造例>
酸モノマーをステアリン酸からベヘン酸に変更した以外はエステルワックスB1の製造
と同様の操作を行い、エステルワックスB2を得た。
【0084】
<エステルワックスB3の製造例>
アルコールモノマーをエチレングリコールからペンタエリスリトールに変更した以外はエステルワックスB1の製造と同様の操作を行い、エステルワックスB3を得た。
【0085】
<エステルワックスB4の製造例>
アルコールモノマーをエチレングリコールからジペンタエリスリトールに変更し、酸モノマーをラウリン酸に変更した以外はエステルワックスB1の製造と同様の操作を行い、エステルワックスB4を得た。
【0086】
<エステルワックスB5の製造例>
アルコールモノマーをエチレングリコールからジペンタエリスリトールに変更した以外はエステルワックスB1の製造と同様の操作を行い、エステルワックスB5を得た。
【0087】
<エステルワックスB6の製造例>
アルコールモノマーをエチレングリコールからベヘニルアルコールに変更し、酸モノマーをセバシン酸に変更した以外はエステルワックスB1の製造と同様の操作を行い、エステルワックスB6を得た。
【0088】
【表1】

以下も含め、表中のSP値の単位は、(cal/cm1/2である。
【0089】
<無機粒子C1の製造例>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0当量の苛性ソーダ溶液(Feに対しP換算で1質量%のヘキサメタリン酸ナトリウムを含有)を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
次いで、該スラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し1.0当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた。スラリー液をpH8に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応を進め、酸化反応の終期にpHを6に調整し、水洗、乾燥を行って、球状マグネタイト粒子であり、一次粒子の個数平均粒径が200nmである磁性酸化鉄を得た。
シンプソン・ミックスマラー(新東工業株式会社製 型式MSG-0L)に該磁性酸化鉄を10.0kg投入し、30分間解砕処理を行った。
その後、同装置内にシランカップリング剤として、n-デシルトリメトキシシランを95g添加し、1時間作動することにより、上記磁性酸化鉄の粒子表面を上記シランカップリング剤で疎水化処理することで無機粒子C1を得た。
【0090】
<無機粒子C2~C6の製造例>
無機粒子C1の製造例において、表2に示すように疎水化処理剤の種類を変更した以外は無機粒子C1の製造例と同様にして、無機粒子C2~C6を得た。
【0091】
<無機粒子C7の製造例>
無機粒子C1の製造例において、解砕処理、疎水化処理の装置として、シンプソン・ミックスマラーの代わりに、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製 型式FM-10)を用い、疎水化処理剤としてアルキルアルコキシシランの代わりにアルキル変性シリコーンオイル(ジメチルシリコーン及びオクチルメチルシリコーン共重合体)を使用した以外は、無機粒子C1の製造例と同様にして、無機粒子C7を得た。
【0092】
<無機粒子C8の製造例>
無機粒子C7の製造例において、疎水化処理する無機粒子として磁性酸化鉄の代わりに一次粒子の個数平均粒径が100nmシリカ粒子を使用した以外は、無機粒子C7の製造例と同様にして、無機粒子C8を得た。
【0093】
【表2】

表中、平均一次粒径は無機粒子Cの一次粒子の個数平均粒径を示す。
【0094】
<ポリエステル樹脂の製造例>
・テレフタル酸 30.0部
・トリメリット酸 5.0部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2モル)付加物 160.0部
・ジブチルスズオキシド 0.1部
上記材料を加熱乾燥した二口フラスコに入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち撹拌しながら昇温した。その後、140℃から220℃に約12時間かけて昇温させながら縮重合反応させた後、210℃~240℃の範囲で減圧しながら重縮合反応を進行させ、ポリエステル樹脂を得た。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は21200、重量平均分子量(Mw)は84500、ガラス転移温度(Tg)は79.5℃であった。
【0095】
<結晶性ポリエステル1の製造>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、酸モノマー1としてセバシン酸100.0部、アルコールモノマーとして1,12-ドデカンジオール89.3部、を投入した。撹拌しながら140℃に昇温し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。
次いで、ジオクチル酸スズを0.57部加えた後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。さらに、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5k
Pa以下に減圧して200℃で分子量を見ながら反応させて結晶性ポリエステル1を得た。得られた結晶性ポリエステル1を分析したところ、重量平均分子量38000であった。
【0096】
<トナー粒子1の製造例>
イオン交換水720部に0.1mol/L-NaPO水溶液450部を投入し温度60℃に加温した後、1.0mol/L-CaCl水溶液67.7部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 75.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・1,6-ヘキサジオール-ジアクリレート(HDDA) 1.0部
・ポリエステル樹脂 4.0部
・無機粒子C1 65.0部
上記処方をアトライター(日本コークス工業(株))を用いて均一に分散混合した。
得られた単量体組成物を温度60℃に加温し、そこに以下の材料を混合及び溶解し、重合性単量体組成物とした。
・炭化水素ワックス 6.0部
(フィッシャートロプッシュワックス(HNP-51:日本精蝋(株)製))
・エステルワックスB1 20.0部
・重合開始剤 10.0部
(t-ブチルパーオキシピバレート(25%トルエン溶液))
水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、温度60℃、窒素雰囲気下においてT.K.式ホモミクサー(特殊機化工業(株))にて12,000rpmで15分間攪拌し、造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌し、反応温度70℃にて300分間重合反応を行った。反応終了後、懸濁液を100℃まで昇温させ、2時間保持した。
その後、冷却工程として、懸濁液に0℃の水を投入し、200℃/分の速度で懸濁液を30℃まで冷却した後、昇温し、55℃で3時間保持した。その後、25℃まで室温で自然冷却して冷やした。その際の冷却速度は、2℃/分であった。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥してトナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1の結着樹脂中のスチレンに由来するモノマーユニットの含有量は72質量%であった。得られたトナー粒子1の重量平均粒径(D4)をコールター・カウンターMultisizer3(ベックマン・コールター社製)で確認したところ、7.3μmであった。なお、炭化水素ワックスHNP-51のSP値(SPa)は8.37であった。
【0097】
<トナー1の製造例>
100部のトナー粒子1に、一次粒子の個数平均粒径が115nmのゾルゲルシリカ微粒子を0.3部添加し、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)を用い混合した。その後、さらに一次粒子の個数平均粒径が12nmのシリカ微粒子にヘキサメチルジシラザンで処理をした後にシリコーンオイルで処理し、処理後のBET比表面積値が120m/gの疎水性シリカ微粒子0.9部を添加し、同様にFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)を用い混合し、トナー1を得た。得られたトナー1の処方及び諸物性を表3及び表4に示す。
【0098】
<トナー2~19及びトナー25~32の製造例>
トナー粒子1及びトナー1の製造例において、表3に記載の材料の種類、部数を変更した以外は同様にして、トナー2~19及びトナー25~32を得た。処方及び諸物性を表3及び表4に示す。
【0099】
<トナー21の製造例>
イオン交換水720部に0.1mol/L-NaPO水溶液450部を投入し温度60℃に加温した後、1.0mol/L-CaCl水溶液67.7部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 75.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・1,6-ヘキサジオール-ジアクリレート(HDDA) 1.0部
上記処方をアトライター(日本コークス工業(株))を用いて均一に分散混合した。
得られた単量体組成物を温度60℃に加温し、そこに以下の材料を混合及び溶解し、重合性単量体組成物とした。
・重合開始剤 10.0部
(t-ブチルパーオキシピバレート(25%トルエン溶液))
水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、温度60℃、窒素雰囲気下においてT.K.式ホモミクサー(特殊機化工業(株))にて12,000rpmで15分間攪拌し、造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌し、反応温度70℃にて300分間重合反応を行った。
その後、得られた懸濁液を毎分3℃で室温まで冷却し、塩酸を加えて分散剤を溶解し、濾過、水洗、乾燥して樹脂粒子1を得た。
【0100】
・樹脂粒子1 101.5部
・無機粒子C1 65.0部
・ポリエステル樹 4.0部
・炭化水素ワックス 6.0部
(フィッシャートロプッシュワックス(HNP-51:日本精蝋(株)製))
・エステルワックスB1 20.0部
上記材料をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で前混合した後、2軸押出機(商品名:PCM-30、池貝鉄工所社製)を用いて、吐出口における溶融物温度が150℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機(商品名:ターボミルT250、ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、トナー粒子21を得た。得られたトナー粒子21の結着樹脂中のスチレンに由来するモノマーユニットの含有量は73質量%であった。また、得られたトナー粒子21の重量平均粒径(D4)をコールター・カウンターMultisizer3(ベックマン・コールター社製)で確認したところ、7.3μmであった。なお、炭化水素ワックスHNP-51のSP値(SPa)は8.37であった。
得られたトナー粒子21を用いトナー1の製造方法と同様にして、トナー21を得た。得られたトナー21の処方及び諸物性を表3及び表4に示す。
【0101】
<トナー22の製造例>
・ビスフェールAエチレンオキサイド付加物(2.0mol付加) 50.0mol部
・ビスフェールAプロピレンオキサイド付加物(2.3mol付加)50.0mol部
・テレフタル酸 60.0mol部
・無水トリメリット酸 20.0mol部
・アクリル酸 10.0mol部
上記ポリエステルモノマーの混合物70部を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で撹拌した。そこに、ビニル重合体部位を構成するビニル系重合モノマー(スチレン:90.0mol部、ブチルアクリレート:10.0mol部)30部と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.0mol部を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。
その後、160℃で5時間反応した後、20℃に昇温してテトライソブチルチタネートを0.05質量部添加し、所望の粘度となるように反応時間を調節した。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕してハイブリッド樹脂を得た。
【0102】
・ハイブリッド樹脂 101.5部
・無機粒子C1 65.0部
・ポリエステル樹 4.0部
・炭化水素ワックス 6.0部
(フィッシャートロプッシュワックス(HNP-51:日本精蝋(株)製))
・エステルワックスB1 20.0部
上記材料をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で前混合した後、2軸押出機(商品名:PCM-30、池貝鉄工所社製)を用いて、吐出口における溶融物温度が150℃になるように、温度を設定し、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、粉砕機(商品名:ターボミルT250、ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、トナー粒子22を得た。得られたトナー粒子22の結着樹脂中のスチレンに由来するモノマーユニットの含有量は26質量%であった。また、得られたトナー粒子22の重量平均粒径(D4)をコールター・カウンターMultisizer3(ベックマン・コールター社製)で確認したところ、7.2μmであった。
得られたトナー粒子22を用いトナー1の製造方法と同様にして、トナー22を得た。得られたトナー22の処方及び諸物性を表3及び表4に示す。
【0103】
<トナー23、33、34の製造例>
トナー21の製造例において、表3に記載の材料の種類、部数を変更した以外は同様にして、トナー23、33、34を得た。処方及び諸物性を表3及び表4に示す。
【0104】
<トナー24の製造例>
トナー粒子21の製造例において、表3に記載のように無機粒子C8を5部、さらに銅フタロシアニン5部添加し、それ以外は同様にしてトナー粒子24を得た。得られたトナー粒子24を用い、トナー1の製造例と同様にしてトナー24を得た。得られたトナー24の処方及び諸物性を表3及び表4に示す。
【0105】
<トナー20の製造例>
下記の手順に従い、乳化凝集法によってトナー20を製造した。
(樹脂粒子分散液Aの作製)
イオン交換水720部に0.1mol/L-NaPO水溶液450部を投入し温度60℃に加温した後、1.0mol/L-CaCl水溶液67.7部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 75.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・1,6-ヘキサジオール-ジアクリレート(HDDA) 1.0部
上記処方をアトライター(日本コークス工業(株))を用いて均一に分散混合した。
得られた単量体組成物を温度60℃に加温し、そこに以下の材料を混合及び溶解し、重合性単量体組成物とした。
・重合開始剤 10.0部
(t-ブチルパーオキシピバレート(25%トルエン溶液))
水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、温度60℃、窒素雰囲気下においてT.K.式ホモミクサー(特殊機化工業(株))にて12,000rpmで15分間攪拌し、造粒した。その後、パドル攪拌翼で攪拌し、反応温度70℃にて300分間重合反応を行った

その後、得られた懸濁液を毎分3℃で室温まで冷却し、塩酸を加えて分散剤を溶解し、濾過、水洗、乾燥して樹脂粒子1を得た。
【0106】
下記成分を丸底フラスコに投入し、撹拌した。
・樹脂粒子1 100.0部
・酢酸エチル 60.0部
・イソプロピルアルコール 15.0部
樹脂粒子1が十分に混合されたのを確認してから、10%アンモニア水溶液3.0部を添加した。その後、イオン交換水1000部を滴下し、転相乳化させることで樹脂乳液を得た。次に、エバポレータを用いて減圧下にて有機溶剤(酢酸エチル、イソプロピルアルコール)を除去することで樹脂粒子分散液Aを得た。粒度測定装置(堀場製作所製、LA-700)を用いて分散液A中の樹脂粒子の大きさを測定したところ、平均粒径は0.15μmであった。
【0107】
(ワックス分散液Aの調製)
下記成分を所定の容器内に投入した。
・炭化水素ワックス(HNP-51,日本精蝋社製) 100.0部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬) 10.0部
・イオン交換水 390.0部
次に、投入物を、95℃に加熱しながらホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理することで、ワックス成分を分散させてなるワックス分散液Aを調製した。粒度測定装置(堀場製作所製、LA-700)を用いて測定したところ、平均粒径は0.30μmであった。
【0108】
(ワックス分散液Bの調製)
下記成分を所定の容器内に投入した。
・エステルワックスB1 100.0部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬) 10.0部
・イオン交換水 390.0部
次に、投入物を、95℃に加熱しながらホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理することで、ワックス成分を分散させてなるワックス分散液Bを調製した。粒度測定装置(堀場製作所製、LA-700)を用いて測定したところ、平均粒径は0.30μmであった。
【0109】
(磁性体分散液の調製)
下記記成分を、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて30分間分散することで、磁性体分散液を得た。
・無機粒子C1 100.0部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC) 10.0部
・イオン交換水
【0110】
(トナー粒子20の調製)
下記成分及び固形分濃度15%になる量のイオン交換水を、撹拌装置、冷却管及び温度計を装着したセパラブルフラスコに投入した。
・樹脂粒子分散液A 固形分として100.0部
・ワックス分散液A 固形分として6.0部
・ワックス分散液B 固形分として20.0部
・磁性体分散液 固形分として65.0部
次に、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いてフラスコの
内容物を十分に混合した。その後、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム0.36部を徐々に加えた後、ホモジナイザーによる分散を30分間継続した。30分後、上記内容物を50℃まで加熱し、樹脂粒子分散液Bを固形分として25.0部緩やかに投入した。
その後、水酸化ナトリウム水溶液を適量投入して系内のpHを6.9としてから、撹拌しつつ85℃まで加温して3時間保持した。冷却後、ろ過、イオン交換水で固形分を充分洗浄した後、この固形分を乾燥し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級することで、トナー粒子20を得た。
得られたトナー粒子20の結着樹脂中のスチレンに由来するモノマーユニットの含有量は73質量%であった。また、得られたトナー粒子1の重量平均粒径(D4)をコールター・カウンターMultisizer3(ベックマン・コールター社製)で確認したところ、7.1μmであった。
【0111】
<トナー20の製造>
得られたトナー粒子20を用い、トナー1の製造例と同様にしてトナー20を得た。得られたトナー20の処方及び諸物性を表3及び表4に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
HP製プリンタ(Color LaserJet Enterprise M552)のプロセススピードを1.5倍とし、定着ニップ圧力がデフォルト設定の80%となるように改造して評価用電子写真装置として使用した。またトナーカートリッジとしてはCF230Xを用い、トナーを150g充填し、下記評価を実施した。
低温定着の評価における印刷用紙にはA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製 Red Label 80g/m)を用いた。この紙は普通紙の中では厚い紙のため、定着にとっては厳しい評価ができる。
排紙はりつきの評価における印刷用紙にはA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、70g/m)を用いた。この紙は比較的薄いため、熱がトナー層に伝わりやすい。
そのため、トナーは溶融しやすく、画像のはりつきが発生しやすいため、より厳しい条件で評価できる。評価結果を表5に示す。
【0115】
<耐テープ剥離性(低温定着性)低温低湿環境>
耐テープ剥離性の評価は、低温定着性の評価に厳しい環境である、低温低湿環境(温度15℃、相対湿度10%)にて行った。
具体的には、定着温度を5℃刻みで変更し、各温度において、先端余白250mm、左右余白80mmで、4ドットの縦線を5mm間隔で10本配置した画像を出力した。
そして各温調で得られた画像の縦線10本部分に対してポリエステルテープ(No.5515 ニチバン社製)を貼り付け、ポリエステルテープ上において、100gの荷重を3往復して、ポリエステルテープを画像に密着させた。そして、ポリエステルテープをはがした後、欠けや剥がれが発生しているラインの本数が1本以下となる温度を、定着下限温度とし、定着下限温度が低いほど、定着性が良好であると判定した。
A.定着下限温度が190℃未満である。
B.定着下限温度が190℃以上200℃未満である。
C.定着下限温度が200℃以上210℃未満である。
D.定着下限温度が210℃以上である。
【0116】
<両面印刷モード 排紙はりつきの評価 両面文字印刷画像 トナー-紙間の接着>
上述の低温定着性の評価で得られた下限温度を定着温度に設定し、両面印刷モードで文字画像を連続で200枚印刷を行った。排紙部分から排紙された紙束は積載された状態で30分以上放置し、室温まで冷却した。
その後、紙束の76枚目から125枚目の50枚に対して一枚ずつ表と裏の画像を確認し、白く抜けた箇所の個数によって画像張り付きの評価を行った。ここで文字画像を連続して印刷した場合の張り付きはトナー-紙間の接着の評価である。
排紙はりつきが抑制できている場合、文字画像の白く抜けた箇所の個数は少ない。一方、排紙はりつきを抑制できていない場合は、トナー-紙間で接着することにより紙束を引きはがした時に白く抜けるため、白く抜けた箇所の個数が増大する。
A.白く抜けた箇所の個数が5個未満である。
B.白く抜けた箇所の個数が5個以上20個未満である。
C.白く抜けた箇所の個数が20個以上40個未満である。
D.白く抜けた箇所の個数が40個以上である。
【0117】
<両面印刷モード 排紙はりつきの評価 両面ベタ印刷画像 トナー-トナー間の接着>
上述の低温定着性の評価で得られた下限温度を定着温度に設定し、両面印刷モードでベタ画像を連続で200枚印刷を行った。排紙部分から排紙された紙束は積載された状態で30分以上放置し、室温まで冷却した。
その後、紙束の76枚目から125枚目の50枚に対して一枚ずつ表と裏の画像を確認し、白く抜けた箇所の個数によって画像張り付きの評価を行った。ここでベタ画像を連続して印刷した場合の張り付きはトナー-トナー間の接着の評価である。
排紙はりつきのが抑制できている場合、ベタ画像の白く抜けた箇所の個数は少ない。一方、排紙はりつきを抑制できていない場合は、トナー-トナー間で接着することにより紙束を引きはがした時に白く抜けるため、白く抜けた箇所の個数が増大する。
A.白く抜けた箇所の個数が5個未満である。
B.白く抜けた箇所の個数が5個以上20個未満である。
C.白く抜けた箇所の個数が20個以上40個未満である。
D.白く抜けた箇所の個数が40個以上である。
【0118】
<高温高湿苛酷放置後両面印刷モード 排紙はりつきの評価 両面文字印刷画像 トナー-紙間の接着>
45℃95%RHの高温高湿環境にトナー150gを30日間放置した。そのトナーをトナーカートリッジに入れて、上記方法と同様にして、両面文字印刷画像の排紙はりつきの評価を実施した。
【0119】
【表5】