(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】金車
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20250108BHJP
B66D 3/04 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H02G1/02
B66D3/04 B
(21)【出願番号】P 2020213706
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505312730
【氏名又は名称】株式会社電力機材サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 良幸
(72)【発明者】
【氏名】北村 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆英
(72)【発明者】
【氏名】青木 佳明
(72)【発明者】
【氏名】袴塚 功男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 教昌
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/065183(WO,A1)
【文献】実公昭33-018454(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B66D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープのかかる金車であって、
金属ホイールと、
前記金属ホイールの外周に取り付けられる樹脂ホイールを備え、
前記樹脂ホイールの外周に前記ワイヤロープがかかる溝が形成されていて、
前記樹脂ホイールの内周は前記溝の底よりも前記金属ホイールの中心側にあり、
前記樹脂ホイールの内周の縁には、前記金属ホイールの外周の縁部に沿う形状のフランジが形成されていることを特徴とする金車。
【請求項2】
前記樹脂ホイールは、円周方向に分割されたブロックを組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1に記載の金車。
【請求項3】
前記樹脂ホイールの内周中央には前記金属ホイールの外周中央に沿う形状のリブが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープのかかる金車に関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔の建設や整備などにおいて、鉄塔に電線を張る架線工事においては、金属製の滑車(以下、金車と称する)が頻繁に使用される。鉄塔で使用される金車としては、特許文献1の滑車を例示することができる。特許文献1の滑車は主として上下方向にワイヤロープを動かすものであり、資材や工具等を地表から高所へ引き上げるために使用される。特許文献1の滑車では、滑車用巻込防止装置を索輪から2方向に延びるワイヤロープの両方側に一対備えている。かかる構成によれば、ワイヤロープを円滑に通過させつつ索輪への異物の巻込みを防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に金車は、アルミダイキャスト製の索輪と鉄製のフレームによって構成される。このため、作業員が一人で取り扱える重量を超えてしまう。すると、鉄塔上部の電線取付点付近の足場が不安定な作業現場では、作業員に多大な負荷がかかってしまう。このため、金車の軽量化が求められていた。
【0005】
また金車の重量が重いと、ワイヤロープの水平角によって横方向の荷重がかかった際に、金車も傾斜するものの、ワイヤロープがその動きに追従することができない、すると、ワイヤロープが索輪の縁に乗り上げて脱線し、索輪とフレームとの間に挟まり、損傷が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、金車の軽量化を図ることができ、作業員の負荷を大幅に軽減しつつ、脱線によるワイヤロープの損傷を防ぐことが可能な金車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる金車の代表的な構成は、ワイヤロープのかかる金車であって、金属ホイールと、金属ホイールの外周に取り付けられる樹脂ホイールを備え、樹脂ホイールの外周にワイヤロープがかかる溝が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、索輪として金属ホイールを用いることで大幅な軽量化を図ることができる。更に金属ホールの外周に取り付けられる部材として樹脂ホイールを用いることにより、金車全体の更なる軽量化を達成することができる。したがって、作業員の負荷を大幅に軽減することが可能となる。その結果、脱線によるワイヤロープの損傷を防ぐことも可能となる。
【0009】
上記樹脂ホイールは、円周方向に分割されたブロックを組み合わせて構成されるとよい。かかる構成によれば、金属ホイールに対し樹脂ホイールを容易に取り付けることが可能となる。したがって、作業員の煩雑な作業を軽減することが可能となる。
【0010】
上記樹脂ホイールの内周中央には金属ホイールの外周中央に沿う形状のリブが形成されているとよい。これにより、樹脂ホイールは、リブにおいて金属ホイールに密着する。したがって、ワイヤロープからかかった荷重を金属ホイールに効率的に伝達することが可能となる。
【0011】
上記樹脂ホイールの内周の縁には金属ホイールの外周の縁部に沿う形状のフランジが形成されているとよい。これにより、ワイヤロープから偏った荷重がかかった際に生じる横方向偏心荷重を金属ホイールに効率的に伝達することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金車の軽量化を図ることができ、作業員の負荷を大幅に軽減することが可能な金車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態にかかる金車を説明する全体斜視図である。
【
図4】金属ホイールに樹脂ホイールを取り付けた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図5は、従来の金車10を説明する図である。
図5に示すように、金車10は、鉄塔20の腕金22に吊り下げられ、鉄塔20にワイヤロープ30等、最終的には電線(不図示)を張るために用いられる。
【0016】
このとき、金車10に対して横方向に通されたワイヤロープ30(延線ロープとも称される)に水平角が生じることがある。水平角が生じると金車10に水平荷重が作用するため、矢印F方向に金車10が傾くことになる。しかしワイヤロープ30は電線に比して極端に軽いため、張力も弱く、ワイヤロープ30の水平荷重では金車10の振れ角(垂直からの傾斜角)が小さい。このためワイヤロープ30が索輪12の縁に乗ってしまい、索輪12の回転に伴って索輪12から外れていき、索輪12から外れて索輪12とフレーム14の間に挟まってしまう、いわゆる脱線を生じることがある。
【0017】
また金車10は、一般にアルミダイキャスト製の索輪12と鉄製のフレームによって構成される。このため、作業員が一人で取り扱える重量を超えてしまう。すると、鉄塔上部の電線取付点付近の足場が不安定な作業現場では、作業員に多大な負荷がかかってしまう。
【0018】
図1は、本実施形態にかかる金車100を説明する全体斜視図である。
図1に示す本実施形態の金車100には、ワイヤロープ30(
図5参照)がかけられる。金車100の索輪102は、金属ホイール110および樹脂ホイール130を含んで構成される。索輪102の両面には、金属製(例えば鉄製)のフレーム120が配置されている。索輪102は、このフレーム120によって支持される。フレーム120の上部には、上方が開口した断面コの字状の吊下金具140が設けられている。これにより、金車100が鉄塔20の腕金22(
図5参照)に吊り下げられる。
【0019】
図2は、索輪102の分解斜視図である。金属ホイール110は、例えば自動二輪車のホイールに似て、外周にリム112を有する車輪である。金属ホイール110の材質はアルミダイキャスト製を例示することができるが、頑丈な材質であれば様々な材質を適用することができる。
【0020】
樹脂ホイール130は、円周方向に分割されたブロック130aから構成されていて、金属ホイール110のリム112の外周に取り付けられる。樹脂ホイール130は、金属ホイール110ほど頑丈でなくてもよく、金属ホイール110より軽い材質であればよい。この分割式の樹脂ホイール130を金属ホイール110の外周で連結することにより、かかる樹脂ホイール130の外周にワイヤロープ30がかかる溝132が形成される。図示を省略しているが、ブロック130a同士およびブロック130aと金属ホイール110とは、ボルトで締結する。かかる構成によれば、金属ホイール110に対し樹脂ホイール130を容易に取り付けることが可能となる。したがって、作業員の煩雑な作業を軽減することが可能となる。
【0021】
なお、本実施形態では樹脂ホイール130が5つに分割されている構成を例示したが、これに限定するものではない。樹脂ホイール130の分割数については、任意に設定することが可能である。
【0022】
本実施形態の金車100によれば、金属ホイール110および樹脂ホイール130によって索輪102を構成することにより、従来に比して索輪102ひいては金車100全体の大幅な軽量化を図ることが可能となる。するとワイヤロープ30の低張力でも金車100が傾きやすくなり、ワイヤロープ30が樹脂ホイール130の溝から外れにくくなる。したがって、作業員の負荷を大幅に軽減しつつ、脱線によるワイヤロープ30の損傷を防ぐことも可能となる。
【0023】
図3は、樹脂ホイールのブロック130aの4面図である。
図3に示すように、ブロック130aは円の一部を切り取った円弧形状をしている。またブロック130aのうち、内周面(金属ホイール110に当接する面)には、リブ134およびフランジ136が設けられている。
【0024】
図4は、金属ホイール110に樹脂ホイール130を取り付けた状態の断面図である。リブ134は、樹脂ホイール130の内周中央に形成されていて、金属ホイール110のリム112の外周中央112aに沿って当接する。これにより、樹脂ホイール130は、リブ134において金属ホイール110に密着するため、ワイヤロープ30からかかった荷重を金属ホイール110に効率的に伝達することが可能となる。
【0025】
フランジ136は、樹脂ホイール130の内周の縁に形成されていて、金属ホイール110のリム112の外周縁部112bに沿って当接する。これにより、ワイヤロープ30から水平方向に偏った荷重がかかった際に生じる横方向偏心荷重を金属ホイール110に効率的に伝達することが可能となる。
【0026】
また本実施形態では、溝132は、幅W1の領域と幅W2の領域が連結した2段溝となっている。これにより、径が細いワイヤロープ30を幅W1の領域で保持し、径が太い電線を幅W2の領域で保持することができる。したがって、ワイヤロープ30の遊びを好適に防ぐことが可能となる。
【0027】
上記説明したように、本発明にかかる金車100は、2段溝でワイヤロープ30や電線の圧力を確実に受け、リブ134やフランジ136によって荷重を金属ホイール110に伝達することができる。したがって金属ホイール110と樹脂ホイール130を組み合わせた構造であるにもかかわらず、必要な剛性を担保することができ、またワイヤロープ30や電線を確かに支持することが可能である。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、ワイヤロープのかかる金車として利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…金車、12…索輪、20…鉄塔、22…腕金、30…ワイヤロープ、100…金車、110…金属ホイール、120…フレーム、130…樹脂ホイール、132…溝、134…リブ、136…フランジ、140…吊下金具