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特許7614869不揮発性メモリ回路、半導体装置及び不揮発性メモリの読出し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-07
(45)【発行日】2025-01-16
(54)【発明の名称】不揮発性メモリ回路、半導体装置及び不揮発性メモリの読出し方法
(51)【国際特許分類】
   G11C 17/16 20060101AFI20250108BHJP
   G11C 17/06 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G11C17/16
G11C17/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021018403
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121190
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-009728(JP,A)
【文献】特開2013-222474(JP,A)
【文献】特開2011-210316(JP,A)
【文献】特開2010-225259(JP,A)
【文献】特開2020-166345(JP,A)
【文献】特開2019-046526(JP,A)
【文献】特開2007-193933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 17/16
G11C 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの電圧の印加により物理的に状態が変化する素子を夫々備えることで値を記憶する複数の記憶素子部からなる第1の記憶部と、
前記素子を夫々備えることで値を記憶する複数の記憶素子部からなる第2の記憶部と、
前記第1の記憶部からの読出し時に、前記複数の記憶素子部からの電流値と閾値との比較により各前記記憶素子部が記憶する値を判定するディテクターと、
前記ディテクターへ閾値として所定の電流値の電流を供給する判定回路と、
を備え、
前記第1の記憶部の前記複数の記憶素子部の入力端は、前記複数の記憶素子部へデータを書き込む際の電圧を供給する書込み用電源または前記複数の記憶素子部からデータを読み出す際の電圧を供給する読出し用電源に接続されるように共通接続され、
前記第1の記憶部の前記複数の記憶素子部の出力端は、前記複数の記憶素子部からの電流値により各前記記憶素子部が記憶する値を判定するディテクターの入力端に共通接続され、
前記第1の記憶部からの読出し時に、前記複数の記憶素子部の各々に含まれる前記入力端に、前記読出し用電源の電圧が供給されてから所定期間経過した時点で、前記複数の記憶素子部の各々を選択する選択指示信号が順次入力されることで、選択された前記複数の記憶素子部の前記出力端が前記ディテクターの入力端に接続され、
前記ディテクターによる判定に用いられる前記閾値を設定するデータが、前記第2の記憶部に記憶される、不揮発性メモリ回路。
【請求項2】
前記第2の記憶部は、前記データとして、前記ディテクターへ閾値として所定の電流値の電流を流すための抵抗を選択するための選択値と、該選択値の検査のための検査値と、を記憶する、請求項1に記載の不揮発性メモリ回路。
【請求項3】
前記素子を夫々備えることで値を記憶する複数の記憶素子部からなる第3の記憶部をさらに備え、
前記第2の記憶部は、前記データとして、前記ディテクターへ閾値として所定の電流値の電流を流すための抵抗を選択するための選択値を記憶し、
前記第3の記憶部は、前記選択値を反転した反転値を記憶する、請求項1に記載の不揮発性メモリ回路。
【請求項4】
前記ディテクターは、前記反転値を用いて前記選択値を判定する、請求項3に記載の不揮発性メモリ回路。
【請求項5】
前記記憶素子部は、ツェナーザップ素子、及びデータ読出し時に前記ツェナーザップ素子のアノードを出力端に接続するスイッチ部を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の不揮発性メモリ回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の不揮発性メモリ回路と、
前記不揮発性メモリ回路を用いてデータの書込み及び読出しの何れか一方又は双方を行なう中央処理装置と、
を備える半導体装置。
【請求項7】
外部からの電圧の印加により物理的に状態が変化する素子の夫々の入力端に読出し用電源を供給し、
前記素子の1つを含む第1の記憶素子部を選択して該素子に記憶された情報に基づくデータを出力して記憶された情報を読み出し、
前記第1の記憶素子部とは異なる前記素子の1つを含む第2の記憶素子部を選択して、該素子に記憶された情報に基づくデータを出力し、
前記第2の記憶素子部から出力されたデータに基づいて閾値を設定し、
設定された前記閾値に基づいて、前記第1の記憶素子部から出力されたデータの値を判定する、
不揮発性メモリの読出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性メモリ回路、半導体装置及び不揮発性メモリの読出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ツェナーザップ素子は、例えば特許文献1に記載のように、N半導体層の表面層にPウェル領域を形成し、当該Pウェル領域内にPアノード領域とNカソード領域を形成し、これらのPアノード領域及びNカソード領域にそれぞれアノード電極及びカソード電極を接続した構成からなるザップダイオードに、降伏電圧以上の逆バイアス電圧を印加することによりPN接合を破壊して、アノード電極とカソード電極との間を短絡して抵抗とするものである。
【0003】
このツェナーザップ素子を1ビット分の記憶ユニットに用いた不揮発性メモリ回路の技術として、例えば特許文献2がある。特許文献2には、ツェナーザップ素子を用いた不揮発性メモリ回路の大容量化に伴う面積の増大及び読出し時間の増大を回避する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-204069号公報
【文献】特開2013-222474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ツェナーザップ素子を用いた不揮発性メモリ回路では、データの読出し時に、ツェナーザップ素子を流れる電流値が閾値以上か否かによって、データの二値(“0”又は“1”)のいずれであるかが判定される。しかし、既存のツェナーザップ素子を用いた不揮発性メモリ回路は、レーザリペア工程によって閾値が設定されていたが、閾値を設定する抵抗の値にバラつきがあり、期待通りの閾値を設定できない場合があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、レーザリペア工程を用いずに読み出し時の判定に用いられる閾値を調整することが可能な、不揮発性メモリ回路、半導体装置及び不揮発性メモリの読出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る不揮発性メモリ回路は、外部からの電圧の印加により物理的に状態が変化する素子を夫々備えることで値を記憶する複数の記憶素子部からなる第1の記憶部と、前記素子を夫々備えることで値を記憶する複数の記憶素子部からなる第2の記憶部と、前記第1の記憶部からの読出し時に、前記複数の記憶素子部からの電流値と閾値との比較により各前記記憶素子部が記憶する値を判定するディテクターと、前記ディテクターへ閾値として所定の電流値の電流を供給する判定回路と、を備え、前記第1の記憶部の前記複数の記憶素子部の入力端は、前記複数の記憶素子部へデータを書き込む際の電圧を供給する書込み用電源または前記複数の記憶素子部からデータを読み出す際の電圧を供給する読出し用電源に接続されるように共通接続され、前記第1の記憶部の前記複数の記憶素子部の出力端は、前記複数の記憶素子部からの電流値により各前記記憶素子部が記憶する値を判定するディテクターの入力端に共通接続され、前記第1の記憶部からの読出し時に、前記複数の記憶素子部の各々に含まれる前記入力端に、前記読出し用電源の電圧が供給されてから所定期間経過した時点で、前記複数の記憶素子部の各々を選択する選択指示信号が順次入力されることで、選択された前記複数の記憶素子部の前記出力端が前記ディテクターの入力端に接続され、前記ディテクターによる判定に用いられる前記閾値を設定するデータが、前記第2の記憶部に記憶される。
【0008】
本発明の第2態様に係る不揮発性メモリ回路は、第1の態様の不揮発性メモリ回路であって、前記第2の記憶部は、前記データとして、前記ディテクターへ閾値として所定の電流値の電流を流すための抵抗を選択するための選択値と、該選択値の検査のための検査値と、を記憶する。
【0009】
本発明の第3態様に係る不揮発性メモリ回路は、第1の態様の不揮発性メモリ回路であって、前記素子を夫々備えることで値を記憶する複数の記憶素子部からなる第3の記憶部をさらに備え、前記第2の記憶部は、前記データとして、前記ディテクターへ閾値として所定の電流値の電流を流すための抵抗を選択するための選択値を記憶し、前記第3の記憶部は、前記選択値を反転した反転値を記憶する。
【0010】
本発明の第4態様に係る不揮発性メモリ回路は、第3の態様の不揮発性メモリ回路であって、前記ディテクターは、前記反転値を用いて前記選択値を判定する。
【0011】
本発明の第5態様に係る不揮発性メモリ回路は、第1の態様から第4の態様のいずれかの不揮発性メモリ回路であって、前記記憶素子部は、ツェナーザップ素子、及びデータ読出し時に前記ツェナーザップ素子のアノードを出力端に接続するスイッチ部を含む。
【0012】
本発明の第6態様に係る半導体装置は、第1態様から第5態様のいずれかの不揮発性メモリ回路と、前記不揮発性メモリ回路を用いてデータの書込み及び読出しの何れか一方又は双方を行なう中央処理装置と、を備える。
【0013】
本発明の第7態様に係る不揮発性メモリの読出し方法は、外部からの電圧の印加により物理的に状態が変化する素子の夫々の入力端に読出し用電源を供給し、前記素子の1つを含む第1の記憶素子部を選択して該素子に記憶された情報に基づくデータを出力して記憶された情報を読み出し、前記第1の記憶素子部とは異なる前記素子の1つを含む第2の記憶素子部を選択して、該素子に記憶された情報に基づくデータを出力し、前記第2の記憶素子部から出力されたデータに基づいて閾値を設定し、設定された前記閾値に基づいて、前記第1の記憶素子部から出力されたデータの値を判定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、閾値を設定するためのデータを素子に記憶させることで、レーザリペア工程を用いずに読み出し時の判定に用いられる閾値を調整することが可能となる。そして、本発明によれば、抵抗の値にバラつきが大きい場合でも、閾値を調整することで不揮発性メモリ回路の歩留まり損を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路の回路構成例を示す図である。
図2】第2の記憶部のユニットセルの具体例を示す図である。
図3】判定用リファレンス供給回路の回路構成例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路のアドレスマップの割り振り例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路におけるTRMデータの書き込み方法の例を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路におけるTRMデータ書き込み後の、ユーザデータ読出し方法の例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路の回路構成例を示す図である。
図8】第3の記憶部のユニットセルの具体例を示す図である。
図9】第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路のアドレスマップの割り振り例を示す図である。
図10】第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路におけるTRMデータの書き込み方法の例を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路におけるTRMデータ書き込み後の、ユーザデータ読出し方法の例を示すフローチャートである。
図12】従来の不揮発性メモリ回路の回路構成を示す図である。
図13】第1の記憶部のユニットセルの具体例を示す図である。
図14】判定用リファレンス供給回路の回路構成例を示す図である。
図15】従来の不揮発性メモリ回路におけるトリミング抵抗方式でのトリミングテーブルの設定方法の例を示すフローチャートである。
図16】第1実施形態及び第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路を用いた半導体装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
以下の説明では、ツェナーザップ素子を用いた記憶回路のことを「ZapFuse」とも呼ぶ。
【0018】
(既存技術)
本発明の実施形態の一例の説明に入る前に、実施形態の前提となる既存技術の説明を行う。
【0019】
図12は、従来の不揮発性メモリ回路の回路構成を示す図である。
【0020】
図12に示した不揮発性メモリ回路9は、書込み用電源供給回路40、読出し用電源供給回路50、書込み用電源供給回路40からのデータ書込み用の電圧または読出し用電源供給回路50からのデータ読出し用の電圧を選択的に供給するための電源線(以下、ノード0ともいう)11、電源線11と、図示していない接地レベルに接続された基準電源線との間に各々並列に接続された、1ビットのデータを記憶するn+1(nは1以上の整数)個の記憶素子部としてのユニットセル12-0~12-n、外部に設けられた制御部から入力される各信号(db,rdb,selb0~selbn)を各ユニットセル12-0~12-nに入力する信号線13、14、15-0~15-n、データの読出し時にユニットセル12-0~12-nからの出力電流が出力線(以下、ノード1ともいう)16を介して入力されるディテクター60、及びディテクター60に判定用のリファレンス電流を供給する判定用リファレンス供給回路70を備えている。電源線11、ユニットセル12-0~12-n、信号線13、14、15-0~15-n、及び出力線16で第1の記憶部10が構成される。
【0021】
図12における不揮発性メモリ回路9に設けられた記憶素子部としての各ユニットセル12-0~12-nは同一の構成であるので、図13において、1つのユニットセルについて説明する。
【0022】
ユニットセルの各々は、ノード0(電源線11)にカソードが接続されるツェナーザップ素子ZAP0、ツェナーザップ素子ZAP0のアノードに接続されて、データ書込み時にツェナーザップ素子ZAP0を接地レベルの基準電位VSSの基準電源線に接続するNMOSトランジスタからなるトランジスタNMOS0、及び、ツェナーザップ素子ZAP0のアノードに接続されて、データ読み出し時にツェナーザップ素子ZAP0をノード1(出力線16)に接続するNMOSトランジスタからなるトランジスタNMOS1を備えている。さらに、図13に示した構成において、ユニットセルは、データの書込み動作と読み出し動作に応じてトランジスタNMOS0とトランジスタNMOS1を制御するNOR回路NOR0と、NOR回路NOR1と、を備えている。
【0023】
1ビットの記憶素子部としてのユニットセルは、1つのツェナーザップ素子、2つのツェナーザップ素子選択トランジスタ、及び、2つのNORゲートを備えている。
【0024】
図13における信号dbは書込み指示信号であり、信号selbkはk番目(0≦k≦n)のユニットセルを選択するための選択指示信号であり、信号rdbは読出し指示信号である。各指示信号は、不揮発性メモリ回路9の外部から、図12に示す信号線13、信号線15-k、信号線14を介して、NOR回路NOR0及びNOR回路NOR1の各々の端子に入力される。また、トランジスタNMOS0及びトランジスタNMOS1はNチャネルMOSトランジスタであり、基準電位VSSは接地レベル(グランド)である。
【0025】
ツェナーザップ素子ZAP0は、カソードが電源線(ノード0)に、アノードがトランジスタNMOS0及びトランジスタNMOS1の各々のドレインに、共通に接続されている。
【0026】
トランジスタNMOS0のゲートは、NOR回路NOR0の出力端子と接続され、ソースは基準電源線18を介して基準電位VSS(接地レベル)に接続されている。トランジスタNMOS1のゲートは、NOR回路NOR1の出力端子と接続され、ソースは出力線(ノード1)16と接続されている。
【0027】
NOR回路NOR0の一方の入力端子には信号dbが入力され、他方の入力端子はNOR回路NOR1の一方の入力端子と共通に接続され、信号selbkが入力される。また、NOR回路NOR1の他方の入力端子には信号rdbが入力される。
【0028】
ツェナーザップ素子ZAP0は、書込み前はダイオードとして動作するためカソードからアノードへ電流を流さず、書込み後はショートするため、カソードからアノードへ電流を流す。ツェナーザップ素子ZAP0からのデータの読出し時には、電源電圧よりも低い読出し用の電圧(以降、IVCともいう)をカソードに印加して、ツェナーザップ素子ZAPkに流れた電流を検出してデータを読出す。また、ツェナーザップ素子ZAP0のデータの書込み時には、電源電圧よりも高い書込み用の電圧(以降、HVともいう)をカソードに印加してツェナー破壊させることでデータを書込む。
【0029】
信号selbkは、k番目のツェナーザップ素子ZAP0を選択する際に接地レベル(以降、Lともいう)となり、非選択時に電源電圧レベル(以降、Hともいう)となる。信号dbは、ツェナーザップ素子ZAP0の書込み時にLとなり、それ以外の時にHとなる。信号rdbは、ツェナーザップ素子ZAP0の読出し時にLとなり、それ以外の時にHとなる。
【0030】
ノード0(電源線11)は、読出し時にIVCとなり、書込み時にHVとなり、読出し時及び書込み時以外で接地レベルとなる。ノード1(出力線16)は、読出し時に0.3V程度のディテクター60の入力電圧レベルとなり、読出し時以外で接地レベルとなる。
【0031】
図12の不揮発性メモリ回路9は、図13に示すユニットセルを、電源線11(ノード0)と出力線16(ノード1)との間にn+1個並列接続された構成を有する。
【0032】
書込み用電源供給回路40は、ツェナーザップ素子の書込み時に外部電源からの書込み用電圧(HV)を供給する回路である。読出し用電源供給回路50は、ツェナーザップ素子の読出し時に外部電源からの読出し用電圧(IVC)を供給する回路である。ディテクター60は、ツェナーザップ素子を流れた電流を検出して電圧に変換する回路である。
【0033】
図12における信号dbが伝送される信号線13は、各ユニットセル12-0~12-nの、図13に例示するNOR回路NOR0における信号dbが入力される端子へ共通に接続される。また、図12における信号selb0~selbnが伝送される信号線15-0~15-nは、ユニットセル12-0~12-nの、図13に例示するNOR回路NOR0とNOR回路NOR1における信号selbkが入力される各々の端子に接続される。また、図12における信号rdbが伝送される信号線14は、ユニットセル12-0~12-nの図13に例示するNOR回路NOR1における信号rdbが入力される端子へ共通に接続される。
【0034】
電源線11は、図13に例示するノード0として各ユニットセル12-0~12-nに共通に接続される。また、出力線16は、各ユニットセル12-0~12-nとディテクター60へ共通に接続される。
【0035】
図14は、判定用リファレンス供給回路70の回路構成例を示す図である。判定用リファレンス供給回路70は、電力供給部71、又はリファレンス電流外部印加供給回路75から、リファレンス電流をディテクター60に供給する。電力供給部71は、PMOSトランジスタ72、NMOSトランジスタ73、トリミング抵抗R0~Rn、NMOSトランジスタ74-0~74-nからなる。
【0036】
図14のrdbにLが入力されると、PMOSトランジスタ72がオンになり、ノード2に読み出し用電源供給回路50のノード0と同様のIVCの電位が供給され、トリミング抵抗R0~Rnを流れた電流がディテクター60へ供給される。この電流値よりも、各ユニットセル12-0~12-nから出力される電流のほうが小さい場合、ディテクター60でデータが“0”と判定され、大きい場合、ディテクター60でデータが“1”と判定される。
【0037】
ウエハ時は、電力供給部71から電流をディテクター60に供給するトリミング抵抗方式と、リファレンス電流外部印加供給回路75から電流をディテクター60に供給するリファレンス電流外部印加方式のいずれも使用可能ある。しかし、製造後はリファレンス電流外部印加供給回路75からの出力がピンとして出ないので、ユーザ動作及びテスト時のどちらも、トリミング抵抗方式でデータの判定が行われる。トリミング抵抗方式の抵抗値は、trm<0>~<n>までトリミングテーブルがあり、テストモード時はtrm<0>~<n>が選択して使えるようになっている。trm<0>~<n>のいずれかが選択されることで、対応するNMOSトランジスタ74-0~74-nのいずれかがオンとなり、電力供給部71における抵抗値が決まる。対して、ユーザ動作の初期値はヒューズで設定したトリミングテーブルが使われる構成になっている。
【0038】
図15は、不揮発性メモリ回路9におけるトリミング抵抗方式でのトリミングテーブルの設定方法の例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、トリミングテーブルにtrm<0>~<n>の中から決め打ちの値trm<m>(mは0からnの間の整数)が選択され、trm<m>がリペアデータに記録される(ステップS901)。続いて、ステップS901で選択された決め打ちの値trm<m>で、レーザリペア工程でヒューズが選択される。そして、ZapFuseに書き込まれた後の“0”又は“1”の判定のための閾値を設定するための抵抗を選択するトリミングテーブルが決定される(ステップS902)。
【0040】
しかし、上記の方法ではZapFuseの読み出し時のデータを判定するための閾値(判定閾値)をヒューズで設定するため、レーザリペア工程が必要である。また、書き込み後のZapFuseの抵抗値は、同じウエハ内の同じチップ内のものでもバラつきがあり、TEG(Test Element Group)評価時の決め打ちの判定閾値では期待通りにデータが“1”であると判定できず、製造後のファイナルテストで歩留まりが低下してしまっていた。また、データが“0”であると判定する場合も同様に、ウエハプロセスのバラつきにより、抵抗値が書き込み前から低いZapFuseがあった場合、書き込み前に先落としが行われてしまうことで歩留まり損も発生していた。
【0041】
以下においては、レーザリペア工程を省略し、精度よくデータを判定できる不揮発性メモリ回路の具体例を説明する。
【0042】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路1の回路構成例を示す図である。
【0043】
図1に示した不揮発性メモリ回路1は、書込み用電源供給回路40、読出し用電源供給回路50、書込み用電源供給回路40からのデータ書込み用の電圧または読出し用電源供給回路50からのデータ読出し用の電圧を選択的に供給するための電源線(以下、ノード0ともいう)11、電源線11と、図示していない接地レベルに接続された基準電源線との間に各々並列に接続された、1ビットのデータを記憶するn+1(nは1以上の整数)個の記憶素子部としてのユニットセル12-1~12-n、外部に設けられた制御部から入力される各信号(db,rdb,selb0~selbn)を各ユニットセル12-0~12-nに入力する信号線13、14、15-0~15-n、データの読出し時にユニットセル12-0~12-nからの出力電流が出力線(以下、ノード1ともいう)16を介して入力されるディテクター60、反転素子INV0、NMOSトランジスタNMOS3、及びディテクター60に判定用のリファレンス電流を供給する判定用リファレンス供給回路70を備えている。電源線11、ユニットセル12-0~12-n、信号線13、14、15-0~15-n、出力線16、反転素子INV0及びNMOSトランジスタNMOS3で第1の記憶部10が構成される。第1の記憶部10は、ユーザデータ書き込み用ZapFuse回路である。
【0044】
また、図1に示した不揮発性メモリ回路1は、電源線21、電源線21と、図示していない接地レベルに接続された基準電源線との間に各々並列に接続された、1ビットのデータを記憶するn+1(nは1以上の整数)個の記憶素子部としてのユニットセル22-0~22-n、外部に設けられた制御部から入力される各信号(trmdb,trmrdb,trmselb0~trmselbn)を各ユニットセル22-0~22-nに入力する信号線23、24、25-0~25-n、データの読出し時にユニットセル22-0~22-nからの出力電流がディテクター60に供給される出力線(以下、ノード3ともいう)26、反転素子INV2、及びNMOSトランジスタNMOS5を備えている。電源線21、ユニットセル22-0~22-n、信号線23、24、25-0~25-n、出力線26、反転素子INV2及びNMOSトランジスタNMOS5で第2の記憶部20が構成される。第2の記憶部20は、TRMデータ書き込み用ZapFuse回路である。TRMデータは、ディテクター60へのリファレンス電流を設定するためのデータである。
【0045】
図1に示した不揮発性メモリ回路1は、ディテクター60と判定用リファレンス供給回路70との間にNMOSトランジスタNMOS4が接続されている。NMOSトランジスタNMOS4のゲートには反転素子INV1が接続され、信号rdbの状態に応じてNMOSトランジスタNMOS4のオンとオフとが切り替わる。
【0046】
ユニットセル12-0~12-nは、既存技術として説明した図13の構成と同等であるため、説明を省略する。図13において、dbとして各ユニットセルに入力される信号は、trmdbとなり、rdbとして各ユニットセルに入力される信号は、trmrdbとなり、selbkとして各ユニットセルに入力される信号は、trmselbkとなる。ユニットセル22-0~22-nに対する書き込み及びユニットセル22-0~22-nからの読出し動作は、図13を用いた説明におけるdb、rdb、selbkを、それぞれtrmdb、trmrdb、trmselbkに置き換えることで説明が可能である。
【0047】
図2は、第2の記憶部20のユニットセルの具体例を示す図である。第2の記憶部20のユニットセルの各々は、ノード0(電源線21)にカソードが接続されるツェナーザップ素子ZAP1、ツェナーザップ素子ZAP1のアノードに接続されて、データ書込み時にツェナーザップ素子ZAP1を接地レベルの基準電位VSSの基準電源線に接続するNMOSトランジスタからなるトランジスタNMOS7、及び、ツェナーザップ素子ZAP1のアノードに接続されて、データ読み出し時にツェナーザップ素子ZAP1をノード3(出力線26)に接続するNMOSトランジスタからなるトランジスタNMOS8を備えている。トランジスタNMOS8はスイッチ部の一例である。さらに、図2に示した構成においては、データの書込み動作と読み出し動作に応じてトランジスタNMOS7とトランジスタNMOS8を制御するNOR回路NOR2とNOR回路NOR3とを備えている。
【0048】
ツェナーザップ素子ZAP1の読み出し動作を説明する。
【0049】
まず、図1の端子db、rdb、selb0~n、trmdb、trmrdb、trmselb0~nにそれぞれHの信号が入力され、ノード0及びノード1は接地レベルとする。読み出し動作の前には、図1及び図2のselb、db、rdb、trmselb、trmdb、trmrdbは全てHのため,NOR回路NOR0、NOR1、NOR2、NOR3、NOR4は全てLを出力し、トランジスタNMOS5、NMOS6、NMOS7、NMOS8は全てOFFとなる。
【0050】
ツェナーザップ素子ZAP1の読み出し時には、図1のtrmrdbにLが入力される。trmrdbにLが入力されると、読み出し用電源供給回路50からノード0にIVCの電位が供給され、ディテクター60からノード3に0.3V程度の電位が供給される。この状態で、ユニットセル22-0を読み出す場合、図1のtrmselb0がLとなる。ユニットセル22-0では、図2のtrmselbがL、trmdbはH、trmrdbはLのため、NOR回路NOR2はLを出力し、NOR回路NOR3はHを出力する。NOR回路NOR2がLを出力し、NOR回路NOR3がHを出力するため、トランジスタNMOS7はOFF、トランジスタNMOS8はONとなる。ツェナーザップ素子ZAP1が未書き込み(データ“0”)の場合、ツェナーザップ素子ZAP1の抵抗によりノード0からノード3へ電流は流れないが、ツェナーザップ素子ZAP1が書き込み済み(データ“1”)の場合、ノード0からノード3へ電流が流れる。この時点において、図1のtrmrdbがLの為、INV2はHを出力する。INV2がHのため、NMOS5はONとなる。trmrdbのL入力により、ツェナーザップ素子ZAP1を通ってディテクター60へ電流が流れる。
【0051】
反転素子INV0、INV1には、信号rdbが供給される。信号rdbは、図12及び図13の信号rdbと同じ機能を持つ信号であり、第1の記憶部10からのデータの読み出し時にLとなる信号である。
【0052】
反転素子INV2には、信号trmrdbが供給される。信号trmrdbは、第2の記憶部20からのデータの読み出し時にLとなる信号である。
【0053】
図3は、判定用リファレンス供給回路70の回路構成例を示す図である。判定用リファレンス供給回路70は、電力供給部71、又はリファレンス電流外部印加供給回路75から、リファレンス電流をディテクター60に供給する。電力供給部71は、PMOSトランジスタ72、NMOSトランジスタ73、トリミング抵抗R0~Rn、NMOSトランジスタ74-0~74-nからなる。
【0054】
判定用リファレンス供給回路70の構成は図14に示したものと同等であるが、NMOSトランジスタ74-0~74-nのゲートは、第1の記憶部10及び第2の記憶部20の記憶領域に対応するアドレスマップの所定のアドレスからの信号が供給されるように接続されている。本実施形態では、上記所定のアドレスはアドレス16、17としているが、アドレスは係る例に限定されるものでは無い。
【0055】
図4は、ウエハ時のCP(Chip Probing)テストと、製造後のファイナルテストとでそれぞれ書き込みが行われる不揮発性メモリ回路1のアドレスマップの割り振り例を示す図である。
【0056】
アドレス16、17の2バイトは、従来技術ではヒューズに設定していた判定閾値のトリミングテーブルを書き込む領域である。トリミングテーブルのデータはTRMデータ+CRC値で構成される。NMOSトランジスタ74-0~74-nの中のどれをオンとするか、すなわち、ノード2からの電流がどのトリミング抵抗R0~Rnを通ってディテクター60に供給されるかを決定するためのデータが、アドレス16、17の2バイトに書き込まれる。
【0057】
なお、アドレス0~15の16バイトはユーザ動作時の第1の記憶部10から読み出されたデータの“0”又は“1”を判定する閾値のトリミング抵抗のテーブルを決めるためのテスト用領域で、CPテストで書き込まれる。アドレス18~63の46バイトはユーザ動作で使用するための情報が書き込まれる領域であり、ファイナルテストでデータが書き込まれる。
【0058】
図5は、不揮発性メモリ回路1におけるTRMデータの書き込み方法の例を示すフローチャートである。
【0059】
まず、不揮発性メモリ回路1のCP工程で、ZapFuseのCP用の16バイトのデータの書き込みが行われる(ステップS101)。
【0060】
ステップS101に続いて、書き込まれた16バイトのZapFuseの抵抗値は決め打ちの抵抗値より低いかどうかが判定される(ステップS102)。
【0061】
ZapFuseの抵抗値が決め打ちの抵抗値より低い場合は(ステップS102;Yes)、続いて、trm<0>~<n>までのトリミングテーブルの中から、TRMデータとして決め打ちのtrm<m>が選択される(ステップS103)。
【0062】
一方、ZapFuseの抵抗値が決め打ちの抵抗値以上の場合は(ステップS102;No)、続いて、trm<0>~<n>までのトリミングテーブルの中から、TRMデータとして適切なtrm<m>が選択される(ステップS104)。
【0063】
ステップS103、又はステップS104に続いて、TRMデータを基にCRC値が生成される(ステップS105)。CRC値の生成は、図1には図示されない外部に設けられた制御部で行われる。
【0064】
CRC値が生成されると、ZapFuseのアドレス16、17に、TRMデータ及びCRC値が書き込まれる(ステップS106)。
【0065】
本実施形態に係る不揮発性メモリ回路1は、判定閾値のトリミングテーブルを、TEG評価時に決め打ちで選択していたトリミングテーブルから、適切なトリミングテーブルにチップ毎に個別に選択できる。
【0066】
図6は、不揮発性メモリ回路1におけるTRMデータ書き込み後の、ユーザデータ読出し方法の例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、ZapFuseのアドレス16,17に書き込まれたTRMデータ及びCRC値が読み出される(ステップS111)。
【0068】
TRMデータ及びCRC値が読み出されると、続いて、読み出されたTRMデータから演算したCRC値と、読み出されたCRC値とが一致するかどうかが判定される(ステップS112)。当該判定処理は、図1には図示されない外部に設けられた制御部で行われる。
【0069】
ステップS112の判定の結果、読み出されたTRMデータから演算したCRC値と、読み出されたCRC値とが一致していれば(ステップS112;Yes)、続いて、読み出されたTRMデータに基づきトリミングテーブルが選択される(ステップS113)。トリミングテーブルが選択されると、続いて、選択されたトリミングテーブルに基づいて設定されたトリミング抵抗を用いた、FT領域のZapFuseに書き込まれたデータの読み出しが行われる(ステップS114)。
【0070】
一方、ステップS112の判定の結果、読み出されたTRMデータから演算したCRC値と、読み出されたCRC値とが一致していなければ(ステップS112;No)、続いて、アドレス16、17のみを対象としたデータ判定の閾値のソフトトリミングの実施により、TRMデータ及びCRC値が読み出される(ステップS115)。
【0071】
ステップS115に続いて、読み出されたTRMデータから演算したCRC値と、読み出されたCRC値とが一致するかどうかが判定される(ステップS116)。当該判定処理は、図1には図示されない外部に設けられた制御部で行われる。
【0072】
ステップS116の判定の結果、読み出されたTRMデータから演算したCRC値と、読み出されたCRC値とが一致していれば(ステップS116;Yes)、選択されたトリミングテーブルに基づいて設定されたトリミング抵抗を用いた、FT領域のZapFuseに書き込まれたデータの読み出しが行われる(ステップS114)。一方、ステップS116の判定の結果、読み出されたTRMデータから演算したCRC値と、読み出されたCRC値とが一致していなければ(ステップS116;No)、ステップS115のソフトトリミングの実施に戻る。
【0073】
以上のように第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路は、CP工程で試し書きしたZapFuseの抵抗値を基にトリミングテーブルを選択し、ZapFuseにTRMデータ及びCRC値が書き込まれる。第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路は、レーザリペア工程を削除し、書き込み後のZapFuseの抵抗値が高いチップの場合であっても、ZapFuseに書き込まれたデータのユーザ動作での読み出し結果を向上させることができる。
【0074】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路2の回路構成例を示す図である。
【0075】
図7に示した不揮発性メモリ回路2は、図1に示した不揮発性メモリ回路1に、第3の記憶部30が追加された構成を有する。
【0076】
図7に示した不揮発性メモリ回路2における第3の記憶部30は、電源線31、電源線31と、図示していない接地レベルに接続された基準電源線との間に各々並列に接続された、1ビットのデータを記憶するn+1(nは1以上の整数)個の記憶素子部としてのユニットセル32-0~32-n、外部に設けられた制御部から入力される各信号(trmdb,trmrrdb,trmselb0~trmselbn)を各ユニットセル32-0~32-nに入力する信号線33、34、35-0~35-n、データの読出し時にユニットセル32-0~32-nからの出力電流がディテクター60に供給される出力線(以下、ノード4ともいう)36、反転素子INV3、及びNMOSトランジスタNMOS6を備えている。第3の記憶部30は、TRMデータの反転値の書き込み用のZapFuse回路である。
【0077】
ユニットセル12-0~12-nは、既存技術として説明した図13の構成と同等であるため、説明を省略する。また、ユニットセル22-0~22-nは、第1実施形態と同等であるため、説明を省略する。図13において、dbとして各ユニットセルに入力される信号は、trmdbとなり、rdbとして各ユニットセルに入力される信号は、trmrdbとなり、selbkとして各ユニットセルに入力される信号は、trmselbkとなる。ユニットセル22-0~22-n、ユニットセル32-0~32-nに対する書き込み及びユニットセル22-0~22-n、ユニットセル32-0~32-nからの読出し動作は、図13を用いた説明におけるdb、rdb、selbkを、それぞれtrmdb、trmrdb、trmselbkに置き換えることで説明が可能である。
【0078】
図8は、第3の記憶部30のユニットセルの具体例を示す図である。第3の記憶部30のユニットセルの各々は、ノード0(電源線31)にカソードが接続されるツェナーザップ素子ZAP2、ツェナーザップ素子ZAP2のアノードに接続されて、データ書込み時にツェナーザップ素子ZAP2を接地レベルの基準電位VSSの基準電源線に接続するNMOSトランジスタからなるトランジスタNMOS9、及び、ツェナーザップ素子ZAP2のアノードに接続されて、データ読み出し時にツェナーザップ素子ZAP2をノード4(出力線36)に接続するNMOSトランジスタからなるトランジスタNMOS10を備えている。トランジスタNMOS10はスイッチ部の一例である。さらに、図8に示した構成においては、データの書込み動作と読み出し動作に応じてトランジスタNMOS9とトランジスタNMOS10とを制御するAND回路AND0とNOR回路NOR4とを備えている。
【0079】
ツェナーザップ素子ZAP2の読み出し動作を説明する。
【0080】
まず、図7の端子db、rdb、selb0~n、trmdb、trmrdb、trmselb0~nにそれぞれHの信号が入力され、ノード0及びノード1は接地レベルとする。読み出し動作の前には、図7及び図2のselb、db、rdb、trmselb、trmdb、trmrdbは全てHのため,NOR回路NOR0、NOR1、NOR2、NOR3、NOR4は全てLを出力し、トランジスタNMOS5、NMOS6、NMOS7、NMOS8は全てOFFとなる。
【0081】
ツェナーザップ素子ZAP1からの電流に基づいて“0”又は“1”を判定するための判定電流は第3の記憶部30から供給される。図7のtrmselb0がLなので、ユニットセル32-0において、図8のtrmselbがL、trmdbはH、trmrdbはLのため、AND回路AND0はLを出力、NOR回路NOR4はHを出力する。AND回路AND0がLを出力、NOR回路NOR4がHを出力するため、トランジスタNMOS9はOFF、トランジスタNMOS10はONとなる。ユニットセル22-0のツェナーザップ素子ZAP1にTRMデータが書かれる時、ユニットセル32-0には、当該TRMデータの反転値が書かれる。ユニットセル22-0のツェナーザップ素子ZAP1が未書き込み(データ“0”)の場合、ユニットセル32-0のツェナーザップ素子ZAP2は書き込み済み(データ“1”)となる。ユニットセル22-0のツェナーザップ素子ZAP1が書き込み済み(データ“1”)の場合、ユニットセル32-0のツェナーザップ素子ZAP2は未書き込み(データ“0”)である。
【0082】
ツェナーザップ素子ZAP1が未書き込みの場合は、ツェナーザップ素子ZAP1の抵抗値が高く、電流はほぼ流れない。ツェナーザップ素子ZAP1が書き込み済みの場合はZapFuseの抵抗値が未書き込みの場合に比べ低くなっており、電流は流れる。以上の特性から、ツェナーザップ素子ZAP1が書き込み済みの場合、ツェナーザップ素子ZAP1を通ってディテクター60に電流は流れるが、その判定電流であるツェナーザップ素子ZAP2は未書き込みなので、ノード0からツェナーザップ素子ZAP2を通る電流はディテクター60にほぼ流れない。従って、第2の記憶部20及び第3の記憶部30からの電流値に基づいて、ディテクター60においてデータ“1”が判定される。ツェナーザップ素子ZAP1がデータ“0”の場合も同様に、第2の記憶部20及び第3の記憶部30からの電流値に基づいて、ディテクター60においてデータ“0”が判定される。
【0083】
図8に示したユニットセルは、図2に示したユニットセルと異なり、データ書込み時にツェナーザップ素子ZAP2を接地レベルの基準電位VSSの基準電源線に接続するNMOS9のゲートに、AND回路AND0が接続されている。
【0084】
反転素子INV3には、信号trmrdbが供給される。信号trmrdbは、第2の記憶部20及び第3の記憶部30からのデータの読み出し時にLとなる信号である。
【0085】
図9は、ウエハ時のCPテストと、製造後のファイナルテストとでそれぞれ書き込みが行われる不揮発性メモリ回路2のアドレスマップの割り振り例を示す図である。
【0086】
アドレス16の1バイトは、従来技術でヒューズに設定していた判定閾値のTRMデータを書き込むための領域である。アドレス17の1バイトは、アドレス16に書き込むTRMデータを期待通りに読み出すためのTRMデータの判定を期待通りに行うために、TRMデータの反転値を書き込むための領域である。
【0087】
なお、アドレス0~15の16バイトはユーザ動作時の第1の記憶部10から読み出されたデータの“0”又は“1”を判定する閾値のトリミング抵抗のテーブルを決めるためのテスト用領域で、CPテストで書き込まれる。アドレス18~63の46バイトはユーザ動作で使用するための情報が書き込まれる領域であり、ファイナルテストでデータが書き込まれる。
【0088】
図10は、不揮発性メモリ回路2におけるTRMデータの書き込み方法の例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、不揮発性メモリ回路2のCP工程で、ZapFuseのCP用の16バイトのデータの書き込みが行われる(ステップS201)。ここで書き込まれるデータは全て1である。
【0090】
ステップS201に続いて、書き込まれた16バイトのZapFuseの抵抗値は決め打ちの抵抗値より低いかどうかが判定される(ステップS202)。
【0091】
ZapFuseの抵抗値が決め打ちの抵抗値より低い場合は(ステップS202;Yes)、続いて、trm<0>~<n>までのトリミングテーブルの中から、TRMデータとして決め打ちのtrm<m>が選択される(ステップS203)。
【0092】
一方、ZapFuseの抵抗値が決め打ちの抵抗値以上の場合は(ステップS202;No)、続いて、trm<0>~<n>までのトリミングテーブルの中から、TRMデータとして適切なtrm<n>が選択される(ステップS204)。
【0093】
ステップS203、又はステップS204に続いて、ZapFuseのアドレス16にTRMデータが、アドレス17にTRMデータの反転値が書き込まれる(ステップS205)。
【0094】
本実施形態に係る不揮発性メモリ回路2は、判定閾値のトリミングテーブルを、TEG評価時に決め打ちで選択していたトリミングテーブルから、適切なトリミングテーブルにチップ毎に個別に選択できる。
【0095】
図11は、不揮発性メモリ回路2におけるTRMデータ書き込み後の、ユーザデータ読出し方法の例を示すフローチャートである。
【0096】
まず、ZapFuseのアドレス16に書き込まれたTRMデータが読み出される(ステップS211)。
【0097】
ステップS211に続いて、ステップS211で読み出されたTRMデータ及び反転値に基づきトリミングテーブルが選択される(ステップS212)。
【0098】
ステップS212に続いて、選択されたトリミングテーブルに基づいて設定されたトリミング抵抗を用いた、FT(Final Test)領域のZapFuseに書き込まれたデータの読み出しが行われる(ステップS213)。
【0099】
以上のように第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路は、CP工程で試し書きしたZapFuseの抵抗値を基にトリミングテーブルを選択し、ZapFuseにTRMデータ及びTRMデータの反転値が書き込まれる。第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路は、レーザリペア工程を削除し、書き込み後のZapFuseの抵抗値が高いチップの場合であっても、ZapFuseに書き込まれたデータのユーザ動作での読み出し結果を向上させることができる。
【0100】
第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路は、ZapFuseに書き込まれたTRMデータの読み出し判定に、読み出しデータの反転値のZapFuseの抵抗値を用いるので、第1実施形態に係る不揮発性メモリ回路のようにソフトトリミングを行うこと無く、期待通りのトリミングテーブルのデータを読むことが可能である。従って、第2実施形態に係る不揮発性メモリ回路は、ユーザ動作でのZapFuseに書き込まれたデータの読み出し結果をより向上させることができる。
【0101】
NOR回路NOR0及びNOR回路NOR1を含む論理回路は、ユニットセルを選択する信号selbkに基づき書込み時には、対応するトランジスタNMOS0をオンさせるように動作し、読出し時には、対応するトランジスタNMOS1をオンさせるように動作するものであれば、当構成に限定されない。
【0102】
また、上記実施形態ではツェナーザップ素子を用いた不揮発性メモリ回路を示したが、外部からの電圧の印加により物理的に状態が変化する素子を備えた不揮発性メモリ回路であればツェナーザップ素子に限定されるものでは無い。すなわち、本発明は、外部からの電圧の印加等により物理的に状態が変化することで値を書き込むことができる不揮発性メモリ回路に同様に適用することができる。
【0103】
次に、このような不揮発性メモリ回路1、2を用いた半導体装置に関して、図16を用いて説明する。
【0104】
図16に示した半導体装置80は、CPU81、RAM82、上記実施形態に係る不揮発性メモリ回路であるPROM(Programmable Read Only Memory)83、タイマー(図中、「TIMER」と記載)84、シリアルインターフェース(図中、「SERIAL IF」と記載)85、パラレルインターフェース(図中、「PARALLEL IF」と記載)86、ADコンバータ(図中、「A/D」と記載)87、及びDAコンバータ(図中、「D/A」と記載)88が、BUS89を介して接続されている。
【0105】
例えば、RAM82は1024バイト、PROM83は60Kバイト等の容量からなる。CPU81(中央処理装置)は、シリアルインターフェース85、またはパラレルインターフェース86を介して接続された外部装置からの制御信号に基づき、PROM83に対してプログラム等の書込み及びデータの読出しを行なう。
【0106】
このような半導体装置80は、例えば、自動車制御用の各種コントロール基板、製造装置の各種コントロール基板、携帯電話、ゲーム機等の各種電子機器に設けられる。
【符号の説明】
【0107】
1、2 不揮発性メモリ回路
10 第1の記憶部
11 電源線
13、14、15-0~15-n 信号線
16 出力線
18 基準電源線
20 第2の記憶部
21 電源線
23、24、25-0~25-n 信号線
26 出力線
30 第3の記憶部
31 電源線
33、34、35-0~35-n 信号線
36 出力線
ZAP0、ZAP1、ZAP2 ツェナーザップ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16